説明

硬化性組成物

【課題】脂環式エポキシ化合物を用いた硬化組成物を硬化させて得られた硬化物に柔軟性を付与し、接着性を改良する。
【解決手段】少なくとも一種の2官能エポキシ化合物と、少なくとも一種の脂環式エポキシ化合物と、少なくとも一種の硬化剤とを含有する硬化性組成物において、前記2官能エポキシ化合物が、下記一般式(1)で表される部分構造を有することを特徴とする硬化性組成物。
【化1】


(式中、Xは2価の有機基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性および硬化速度に優れるエポキシ化合物、該エポキシ化合物を含有する硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ化合物は種々の硬化剤で硬化させることにより、硬化時の寸法安定性、電気絶縁性、耐薬品性などに優れるという特徴から接着剤分野、エレクトロニクス分野や高機能塗料分野において広く使用されている。かかるエポキシ化合物の分野においては環状構造を有するエポキシ化合物(いわゆる脂環式エポキシ化合物)が用いられる(例えば、特許文献1参照)ことが多い。特にLEDや半導体などの封止の場合、エポキシ化合物と酸無水物を共存させ、これに一定時間高温下に放置することで硬化させる方法が用いられている。しかしながら、硬化収縮が大きく硬化条件によってはその歪により電子材料の破壊を引き起こしたり、硬化後の熱や湿度に対する耐久性にも問題を有していた。またしかしながら、脂環式エポキシ化合物を用いた場合、硬化物が脆く柔軟性に欠ける為、接着強度が不足するという問題があった場合がある。
【0003】
一方、一般的なエポキシ化合物(例えばビスフェノールAタイプやFタイプ、もしくはノボラック樹脂など)とオキセタン化合物の共存化で、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などの酸発生剤を開始剤とする重合性組成物が知られて(例えば特許文献1参照)いる。この重合性組成物は、一定のエネルギーを付与することで、急速に硬化し短時間で硬化が終了することが知られている。特に熱による硬化は、ある特定の条件で急速に硬化し、硬化収縮に関しては比較的小さく、内部応力などの発生は小さくなるものの、やはり固脆いという性質を有するものであった。
【0004】
また、オキセタン化合物と環状エポキシ化合物からなる組成物で、初期粘度が1000mPa・s以下となるような接着剤に関する技術が開示されて(例えば、特許文献2参照)いる。薄膜塗布接着などに適してはいるが、電子材料の接着などの場合、接着剤をシリンジに入れ、空圧などの制御により極微量の塗布をすることがあるが、このような場合は粘度が低いとタレなどが発生し、接着剤が付着してはならない部分に塗布されてしまうなどの問題があった。
【特許文献1】特開平7−53711号公報
【特許文献2】特開2005−113123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、脂環式エポキシ化合物を用いた硬化組成物を硬化させて得られた硬化物に柔軟性を付与し、接着性を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、前記高分子量型の2官能性エポキシ化合物と脂環式エポキシ化合物とを併用することにより、前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
1.少なくとも一種の2官能エポキシ化合物と、少なくとも一種の脂環式エポキシ化合物と、少なくとも一種の硬化剤とを含有する硬化性組成物において、前記2官能エポキシ化合物が、下記一般式(1)で表される部分構造を有することを特徴とする硬化性組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Xは2価の有機基を表す。)
2.前記一般式(1)におけるXが、エチレンオキシエチル基、ジ(エチレンオキシ)エチル基、トリ(エチレンオキシ)エチル基、プロピレンオキシプロピル基、ジ(プロピレンオキシ)プロピル基、トリ(プロピレンオキシ)プロピル基及び炭素原子数2〜15のアルキレン基から選ばれる何れかの基であることを特徴とする前記1記載の硬化性組成物。
【0010】
3.前記一般式(1)におけるXがシクロアルカン骨格を有する炭素原子数6〜17の脂肪族炭化水素基であることを特徴とする前記1記載の硬化性組成物。
【0011】
4.前記一般式(1)で表される部分構造を有する2官能エポキシ化合物が下記一般式(2)で表される2官能エポキシ化合物であることを特徴とする前記1記載の硬化性組成物。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R3〜R6はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、塩素原子、又は臭素原子を表す。Xは前記一般式(1)Xと同義の基を表す。nは自然数でありその平均は1.2〜5である。)
5.前記一般式(1)で表される部分構造を有する2官能エポキシ化合物が下記一般式(3)で表される2官能エポキシ化合物であることを特徴とする前記1記載の硬化性組成物。
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R1〜R6はそれぞれ前記一般式(2)のR1〜R6と同義の基を表し、X3はシクロアルカン骨格を有する炭素原子数6〜17の脂肪族炭化水素基を表す。nは前記一般式(2)の自然数と同義の自然数である。)
6.前記一般式(1)で表される部分構造を有する2官能エポキシ化合物が下記一般式(4)で表される2官能エポキシ化合物であることを特徴とする前記1記載の硬化性組成物。
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、R3〜R6はそれぞれ前記一般式(2)のR3〜R6と同義の基を表し、X4はそれぞれ独立にシクロアルカン骨格を有する炭素原子数6〜17の脂肪族炭化水素基を表す。nは前記一般式(2)の自然数と同義の自然数である。)
7.前記一般式(1)で表される部分構造を有する2官能エポキシ化合物が下記一般式(5)で表される2官能エポキシ化合物であることを特徴とする前記1記載の硬化性組成物。
【0018】
【化5】

【0019】
(式中、Rは水素原子、或いは炭素数1〜4のアルキル基であり、X5はエチレンオキシエチル基、ジ(エチレンオキシ)エチル基、トリ(エチレンオキシ)エチル基、プロピレンオキシプロピル基、ジ(プロピレンオキシ)プロピル基、トリ(プロピレンオキシ)プロピル基、ブチレンオキシブチル基、ジ(ブチレンオキシ)ブチル基、トリ(ブチレンオキシ)ブチル基、炭素原子数2〜15のアルキレン基、及びシクロアルカン骨格を有する炭素原子数6〜17の脂肪族炭化水素基から選ばれる何れかの基を表す。)
8.前記一般式(1)で表される部分構造を有する2官能エポキシ化合物が下記一般式(6)で表される2官能エポキシ化合物であることを特徴とする前記1記載の硬化性組成物。
【0020】
【化6】

【0021】
(式中、Rは前記一般式(5)のRと同義の基を表し、X5は前記一般式(5)のX5と同義の2価の有機基を表し、X6は炭素数2〜10のアルキレン基、フェニレン基、トリレン基、メチレンビスフェニル基を表す。nは前記一般式(2)の自然数と同義の自然数である。)
9.前記2官能エポキシ化合物が下記一般式(7)で表される部分構造を有することを特徴とする前記1記載の硬化性組成物。
【0022】
【化7】

【0023】
(式中、X5は前記一般式(5)のX5と同義の2価の有機基を表す。)
10.前記2官能エポキシ化合物が下記一般式(8)で表される部分構造を有することを特徴とする前記1記載の硬化性組成物。
【0024】
【化8】

【0025】
(式中、Rは前記一般式(5)のRと同義の基を表し、X5は前記一般式(5)のX5と同義の2価の有機基を表し、X6は前記一般式(6)のX6と同義の2価の有機基を表す。)
11.更にオキセタン化合物を含有することを特徴とする前記1〜10のいずれか1項記載の硬化性組成物。
【0026】
12.更に微粒子フィラーを含有することを特徴とする前記1〜11のいずれか1項記載の硬化性組成物。
【0027】
13.25℃における粘度が1,000〜200,000mPa・sであることを特徴とする前記1〜12のいずれか1項記載の硬化性組成物。
【0028】
14.前記1〜13のいずれか1項記載の硬化性組成物が接着剤用に調製されていることを特徴とする接着剤用の硬化性組成物。
【0029】
15.前記1〜13のいずれか1項記載の硬化性組成物がLED封止材料用に調製されていることを特徴とする電子機器LED封止材料用の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、脂環式エポキシ化合物を用いた硬化組成物を硬化させて得られた硬化物に柔軟性を付与し、接着性を改良することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明を更に詳しく説明する。
【0032】
(2官能エポキシ化合物)
本発明の一般式(2)〜(4)で表される2官能エポキシ化合物は、まず、一般式(1)における、Xで表される2価の有機基を有するジビニルエーテル化合物とビスフェノール化合物を反応させて、2官能フェノールを合成する。次に、得られた2官能フェノールにエピハロヒドリンを反応させることにより目的とする2官能性エポキシ化合物を製造することができる。ここで、エピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン及びエピブロムヒドリンが挙げられる。
【0033】
一般式(1)における、Xで表される2価の有機基を有するジビニルエーテル化合物の具体的化合物として、例えば、一般式(2)で表される化合物の原料としては、エチレンオキシエチルジビニルエーテル、ジ(エチレンオキシ)エチルジビニルエーテル、トリ(エチレンオキシ)エチルジビニルエーテル、プロピレンオキシプロピルジビニルエーテル、ジ(プロピレンオキシ)プロピルジビニルエーテル等、また、炭素原子数2〜15のアルキレンジビニルエーテルとして、例えばポリテトラメチレングリコールジビニルエーテル、1、3−ブチレングリコールジビニルエーテル、1、4−ブタンジジオールジビニルエーテル、1、6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1、9−ノナンジオールジビニルエーテル、1、10−デカンジオールジビニルエーテル等の直鎖状アルキレン基のジビニルエーテル、及びネオペンチルグリコールジビニルエーテル等の分岐状アルキレン基のジビニルエーテル等を挙げることができる。又、一般式(3)及び(4)で表される化合物の原料としては、1、4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1、4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリシクロデカンジオールジビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジオールジビニルエーテル等のシクロアルカン構造を含有するジビニルエーテルを挙げることができる。
【0034】
本発明で用いることの出来る好ましいビスフェノール化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。
【0035】
本発明に係る一般式(2)で表される2官能エポキシ化合物の具体的化合物としては、例えば、特開2004−156024号公報の段落番号0034〜0036に記載されているEa−1〜Ea−17を挙げることができる。
【0036】
本発明に係る一般式(3)で表される2官能エポキシ化合物の具体的化合物としては、例えば、同号公報の段落番号0041に記載されているEb−1〜Eb−8を挙げることができる。
【0037】
本発明に係る一般式(4)で表される2官能エポキシ化合物の具体的化合物としては、例えば、同号公報の段落番号0042に記載されているEb−9〜Eb−12を挙げることができる。
【0038】
本発明の一般式(5)で表される2官能エポキシ化合物は、下記ジビニルエーテル化合物とグリシドール類の水酸基とのアセタール化反応より得られる。
【0039】
ジビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレンレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレンレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、テトラプロピレンレングリコールジビニルエーテル、ジブチレングリコールジビニルエーテル、トリブチレングリコールジビニルエーテル、テトラブチレングリコールジビニルエーテル等のポリオキシアルキレン基を含有するジビニルエーテル類;1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,9−ノナンジオールジビニルエーテル、1,10−デカンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジビニルエーテル等のアルキレン基を有するジビニルエーテル類;1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリシクロデカンジオールジビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジオールジビニルエーテル等のシクロアルカン構造を含有するジビニルエーテル類;ビスフェノールAジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールFジビニルエーテル、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールFジビニルエーテルのようなジビニルエーテル類などが挙げられる。
【0040】
本発明に係る一般式(5)で表される2官能エポキシ化合物の具体的化合物としては、例えば、特開2006−111716号公報の段落番号0045〜0053に記載されているA−1〜A−3を挙げることができる。
【0041】
本発明の一般式(6)で表される2官能エポキシ化合物は、まず、上述した一般式(5)における、ジビニルエーテル化合物とビスフェノール化合物を反応させて、2官能フェノールを合成する。次に、得られた2官能フェノールにエピハロヒドリンを反応させることにより目的とする2官能性エポキシ化合物を製造することができる。ここで、エピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン及びエピブロムヒドリンが挙げられる。
【0042】
本発明に係る一般式(6)で表される2官能エポキシ化合物の具体的化合物としては、例えば、特開2006−111810号公報の段落番号0061〜0067に記載されているE1〜E3を挙げることができる。
【0043】
一般式(7)において、X5で表される2価の有機基としては、上述したX5で表される2価の有機基を挙げることができる。
【0044】
本発明の一般式(7)で表される部分構造を有する2官能エポキシ化合物は、イソシアネート類とヒドロキシビニルエーテル類とグリシドール類とを反応させて得ることができる。
【0045】
好ましくは、一般式(8)で表される2官能エポキシ化合物を挙げることができる。Rは前記一般式(5)のRと同義の基を表し、X5は前記一般式(5)のX5と同義の2価の有機基を表し、X6は前記一般式(6)のX6と同義の2価の有機基を表す。
【0046】
具体的には、ジイソシアネート類とヒドロキシビニルエーテル類とグリシドール類とを反応させて得る。
【0047】
ジイソシアネート類としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)等のトリレンジイソシアネート類、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、フェニレンジイソシアネート(PDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族ポリイソシアネート、例えば、1,3−キシリレンジイソシアネート(1,3−XDI)、1,4−キシリレンジイソシアネート(1,4−XDI)等の芳香脂肪族ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート類(炭素数2〜10のアルキル鎖末端ジイソシアネート類)、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、1,3−又は1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、2,5−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタンまたは2,6−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン(NBI)等の脂環族ポリイソシアネート類等のジイソシアネート類、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(多核体混合物、クルードMDI、ポリメリックMDI)や前記ジイソシアネート類の多量体であるイソシアヌレート型のポリイソシアネート等のポリイソシアネート類などが挙げられる。
【0048】
ヒドロキシビニルエーテル類としては、1分子中に水酸基とビニルエーテル基とをそれぞれ1個以上含有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ヒドロキシメチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、ヒドロキシペンチルビニルエーテル、ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシヘプチルビニルエーテル、ヒドロキシオクチルビニルエーテル、ヒドロキシノニルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロへキシルビニルエーテル、3−ヒドロキシシクロへキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシシクロへキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル(CHMVE)、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテルなどが挙げられる。
【0049】
グリシドール類としては、無置換型のグリシドール、又はアルキル基置換型のグリシドールが使用できるが、入手の安易さなどから、無置換型のグリシドールが好ましい。
【0050】
本発明に係る一般式(8)で表される2官能エポキシ化合物の具体的化合物としては、例えば、特開2006−111809号公報の段落番号0051に記載されている構造式(2)〜(5)を挙げることができる。
【0051】
(脂環式エポキシ化合物)
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0052】
本発明においてもっとも好ましい脂環式エポキシドとしては、たとえば、特開2004−315778号、特開2005−28632号公報に記載のものが挙げられる。
【0053】
例示化合物を以下に記載する。
【0054】
【化9】

【0055】
【化10】

【0056】
【化11】

【0057】
【化12】

【0058】
【化13】

【0059】
【化14】

【0060】
【化15】

【0061】
本発明の脂環式エポキシ化合物は硬化性組成物中に5〜70質量%、好ましくは、15〜50質量%配合される。
【0062】
(硬化剤)
次に、本発明の硬化性組成物における硬化剤について説明する。硬化剤としては、各種のエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができ、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物などが挙げられる。
【0063】
アミン系化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン類や、分子量200〜500のポリプロピレングリコールジアミンなどの高分子量アミン、メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン類や、1、3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミンなどの脂環族ポリアミン類等や、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂が挙げられる。
【0064】
酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。
【0065】
フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂やこれらの変性物等が挙げられる。また潜在性触媒として、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体なども挙げられる。
【0066】
また、これらのアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物等の硬化剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0067】
尚、アンダーフィル材等の用途や一般塗料用途においては、前記酸無水物系化合物又はアミン系化合物を用いることが好ましい。接着剤などの用途ではアミン系化合物が好ましい。また、フレキシル配線基板用途においてはアミン系化合物、特にジシアンジアミドが作業性、硬化性の点から好ましい。更に、硬化物に柔軟性が求められる分野においては硬化剤として前記高分子量アミンを用いることが好ましい。また、半導体封止材料用途においては硬化物の耐熱性の点から固形タイプのフェノール系化合物が好ましい。
【0068】
本発明において硬化剤の使用量は、硬化が円滑に進行し、良好な硬化物性が得られることから、組成物中の全エポキシ成分のエポキシ基1当量に対して、硬化剤中の活性水素基が0.7〜1.5当量になる範囲であることが好ましい。
【0069】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、更に硬化促進剤を適宜使用することもできる。硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩、等が挙げられ、これらは単独のみならず2種以上の併用も可能である。例えば、半導体封止材料用途としては、リン系ではトリフェニルホスフィン、アミン系ではDBUなどが、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性などが優れるために好ましい。
【0070】
(酸発生剤)
硬化剤として、酸発生剤を用いることもできる。酸発生剤としては、公知のスルホニウム塩、アンモニウム塩などの他、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられ、特開平8−143806号公報、同8−283320号公報などに記載のものから適宜選択して使用することができる。また、光・熱酸発生剤は市販品をそのまま使用することができる。光酸発生剤の代表例として、商品名CI−1370、CI−2064、CI−2397、CI−2624、CI−2639、CI−2734、CI−2758、CI−2823、CI−2855及びCI−5102の下に入手可能な市販品(いずれも日本曹達株式会社製)、商品名PHOTOINITIATOR2074の下に入手可能な市販品(ローディア社製)、商品名UVI−6974及びUVI−6990の下に入手可能な市販品(いずれもユニオンカーバイト社製)、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172の下に入手可能な市販品(アデカ製)などを挙げることができる。
【0071】
また熱酸発生剤としては例えば、商品名サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、サンエイドSI−150Lの下に入手可能な市販品(三新化学社製)、商品名アデカオプトンCP−66、アデカオプトンCP−77の下に入手可能な市販品(アデカ製)などを挙げることができる。
【0072】
上記酸発生剤は、硬化性組成物中に0.001〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%配合されることが好ましい。
【0073】
(光増感剤等)
本発明の硬化性組成物には、光による重合の場合に増感剤として、光重合開始剤や、例えば、光源(エネルギー源)の波長に適合するよう、増感色素を併用することも可能で、例えばシアニン、フタロシアニン、メロシアニン、ポルフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体等が挙げられ、更に欧州特許568,993号、米国特許4,508,811号、同5,227,227号、特開2001−125255号、特開平11−271969号等に記載の化合物も用いられる。かかる光増感剤の使用量は、硬化性組成物中0.01〜10.00質量%の範囲が好ましい。
【0074】
(オキセタン)
本発明に係るオキセタン環を有する化合物について、以下説明する。
【0075】
本発明で用いることのできるオキセタン化合物は、分子内に1以上のオキセタン環を有する化合物である。具体的には、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成(株)製商品名OXT101等)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(同OXT121等)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(同OXT211等)、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテル(同OXT221等)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(同OXT212等)等を好ましく用いることができ、特に、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテルを好ましく用いることができる。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
本発明のオキセタン化合物は硬化性組成物中に30〜95質量%、好ましくは50〜85質量%配合される。
【0077】
(その他カチオン重合性モノマー)
本発明においてはカチオン重合性化合物としてさらに、ビニルエーテル化合物を併用することもできる。例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジまたはトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0078】
(微粒子)
本発明の硬化性組成物は、適度なチキソ性を有していることが好ましく、チキソ比としては1.1以上5.0以下が好ましい。
【0079】
チキソ性を付与する目的で、または粘度や硬化性、密着性などの諸物性を制御する目的で、各種微粒子、いわゆるフィラーを適宜用いることができる。添加可能なフィラーとしては、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、亜鉛華、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ホウアルミニウム、セピオライトなどが挙げられる。また、光半導体封止などに用いられる場合には、必要に応じて蛍光体などを添加することもできる。
【0080】
フィラーとして好ましくはシリカ、炭酸カルシウムであり、特に好ましくはシリカが挙げられる。
【0081】
(添加剤)
本発明の硬化性組成物には、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。また、保存安定性を改良する目的で、公知のあらゆる塩基性化合物を用いることができるが、代表的なものとして塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などが挙げられる。前記の塩基性アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属のアルコラート(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等)が挙げられる。前記の塩基性アルカリ土類金属化合物としては、同様にアルカリ土類金属の水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、アルカリ金属のアルコラート(マグネシウムメトキシド等)が挙げられる。
【0082】
塩基性有機化合物としては、アミンならびにキノリンおよびキノリジンなど含窒素複素環化合物などが挙げられるが、これらの中でも、光重合性モノマーとの相溶性の面からアミンが好ましく、例えば、オクチルアミン、ナフチルアミン、キシレンジアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルアニリン、キヌクリジン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0083】
塩基性化合物を存在させる際のその濃度は、重合性化合物の総量に対して10〜1000質量ppm、特に20〜500質量ppmの範囲であることが好ましい。なお、塩基性化合物は単独で使用しても複数を併用して使用してもよい。
【0084】
本発明の硬化性組成物には耐熱性を向上させるために、酸化防止剤を配合することが好ましい、該酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が使用でき、例えば、スチレン化フェノール、2,6−ジ−tブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−tブチル−ハイドロキノン、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−tブチルフェノール)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト等が挙げられる。
【0085】
上記酸化防止剤の配合量は、本発明の硬化性組成物の100質量部に対して、0.01質量部〜5質量部の範囲内が好ましく、0.1質量部〜1質量部の範囲内がより好ましい。
【0086】
本発明の硬化性組成物には、さらに必要に応じて、その他の化合物や副資材を含んでいてもよい。
【0087】
上記その他の化合物や副資材としては、例えば、溶剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、着色顔料、染料、可塑剤、エラストマー、硬化遅延剤等が挙げられる。
その他の化合物や副資材の量は、発明の効果を損なわない範囲であれば良く、組成物中の0.01質量%〜50質量%の範囲内が好ましい。
【0088】
本発明の硬化性組成物の25℃における粘度は1000〜200000mPa・sであることが好ましい。本発明の組成物が接着剤用途して使用される場合、シリンジからの射出塗布方式により使用される場合が多く、安定して射出されるためにはある程度高粘度であることが要求される。粘度としてより好ましくは、5,000〜150,000mPa・sである。接着剤用途としてさらに好ましくは10,000〜50,000mPa・sである。一方、本発明の組成物が封止材用途として使用される場合、泡の巻き込みなどを考慮すると比較的低粘度であることが要求される。粘度として好ましくは、1000〜7,000mPa・sである。封止剤用途としてさらに好ましくは、5,000mPa・s以下である。即ち、本発明の硬化性組成物は、エポキシ当量が比較的大きいにも拘わらず、粘度が低く固形化しない特徴を具備するものであり、柔軟で接着性密着性が良好であると共に作業性に優れたエポキシ化合物を含有する硬化性組成物である。
【0089】
(硬化条件)
硬化条件は、60℃以上110℃未満が好ましい。60℃未満では、硬化時間が長くなり、110℃以上では、添加剤、硬化物の量、容器等の条件により着色する場合がある。更に好ましくは、70℃以上100℃未満である。
【0090】
また、紫外線や電子線などのエネルギー線照射による硬化も可能である。光源としては特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプ及び特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。ここで、紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザー、冷陰極管、熱陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、熱陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましい。
【0091】
また、硬化は、複数温度条件を組み合わせて行ってもよい。その場合、比較的低い温度で不完全に硬化させた後、高温で完全硬化することが好ましい。さらには複数エネルギー線照射条件を組み合わせてもよく、エネルギー線照射を行った後、加熱して硬化することも可能である。
【実施例】
【0092】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
実施例1
(本発明の化合物11の合成)
温度計、撹拌機を取り付けたフラスコにビスフェノールA228g(1.00モル)とトリエチレングリコールジビニルエーテル(ISP社製:商品名Rapi−Cure DVE−3)172g(0.85モル)を仕込み、120℃まで1時間要して昇温した後、さらに120℃で6時間反応させて透明半固形の変性多価フェノール(P−1)400gを得た。
【0094】
得られた変性多価フェノール(P−1)は、NMRスペクトル(13C)と、マススペクトルから下記P−1で表される構造をもつであることが確認された。これの水酸基当量は364g/eq.、粘度は40mPa・s(150℃,ICI粘度計)、水酸基当量より算出されるP−1中のnの平均値は、n≧1の成分で3.21、及びn≧0の成分で1.16であった。
【0095】
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、得られた変性多価フェノール(P−1)400g(水酸基当量364g/eq.)、エピクロルヒドリン925g(10モル)、n−ブタノール185gを仕込み溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、65℃に昇温した後に、共沸する圧力までに減圧して、49%水酸化ナトリウム水溶液122g(1.5モル)を5時間かけて滴下した。次いでこの条件下で0.5時間撹拌を続けた。この間、共沸で留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離して、水層を除去し、有機層を反応系内に戻しながら反応した。その後,未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留して留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン1000gとn−ブタノール100gを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液20gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水300gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し精密濾過を経た後に溶媒を減圧下で留去して透明液体のエポキシ樹脂の化合物11を457gを得た。
【0096】
得られた化合物11は、NMRスペクトル(13C)とマススペクトルで下記化合物11で表される構造のエポキシ樹脂を含有することが確認された。尚、得られた化合物11は、n=0の化合物と、n=1以上の化合物との混合物であり、GPCで確認したところ該混合物中n=0の化合物を20質量%の割合で含有するものであった。また、化合物11のエポキシ当量は462g/eq.、粘度は12000mPa・s(25℃,キャノンフェンスケ法)、エポキシ当量から算出される化合物11中のnの平均値は、n≧1の成分で2.97、及びn≧0の成分で1.35であった。
【0097】
【化16】

【0098】
(本発明の化合物12の合成)
温度計、撹拌機を取り付けたフラスコにビスフェノールA228g(1.00モル)と1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(日本カーバイト工業社製:商品名CHDVE)144gを仕込み、120℃まで1時間要して昇温した後、さらに120℃で6時間反応させて透明固形のフェノール樹脂(P−2)372gを得た。その樹脂は、NMRスペクトル(13C)とマススペクトルから下記構造式P−2で表される構造をもつ目的の2官能性フェノール樹脂であることが確認された。これの水酸基当量は389g/eq.、150℃における溶融粘度は140mPa・s(ICI粘度計)、水酸基当量より算出されるP−2のnの平均値は、n≧1の成分で2.66、及びn≧0の成分で1.30であった。
【0099】
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに得られた変性多価フェノール類(P−2)372g、エピクロルヒドリン925g(10モル)、n−ブタノール185gを仕込み溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、65℃に昇温した後に、共沸する圧力までに減圧して、49%水酸化ナトリウム水溶液122g(1.5モル)を5時間かけて滴下した。次いでこの条件下で0.5時間撹拌を続けた。この間,共沸で留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離して、水層を除去し、有機層を反応系内に戻しながら反応した。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留して留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン1000gとn−ブタノール100gを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液20gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水300gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し精密濾過を経た後に溶媒を減圧下で留去して透明液体のエポキシ樹脂の化合物12を422gを得た。
【0100】
得られた化合物12は、NMRスペクトル(13C)とマススペクトルで下記化合物12で表される構造のエポキシ樹脂を含有することが確認された。尚、得られた化合物12は、n=0の化合物と、n=1以上の化合物との混合物であり、GPCで確認したところ該混合物中n=0の化合物を15質量%の割合で含有するものであった。また、化合物12のエポキシ当量は490g/eq.、150℃における溶融粘度は130mPa・s(ICI粘度計)、エポキシ当量から算出される化合物12中のnの平均値は、n≧1の成分で2.66及びn≧0の成分で1.51であった。
【0101】
【化17】

【0102】
(本発明の化合物13の合成)
前記化合物11の合成において、原料のビスフェノールAをジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂(新日石化学株式会社製:商品名日石特殊フェノール樹脂DPP−6085)294gに、前記DVE−3を1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(日本カーバイト工業社製:商品名CHDVE)に変更した以外は、化合物11の合成と同様にして、褐色固形の2官能性フェノール樹脂(P−3)358gを得た。その樹脂は、NMRスペクトル(13C)とマススペクトルから下記構造式P−3で表される構造をもつ目的の2官能性フェノール樹脂であることが確認された。これの水酸基当量は265g/eq.、150℃における溶融粘度は710mPa・s(ICI粘度計)、水酸基当量より算出される前記構造式P−3中のnの平均値は、n≧1の成分で1.37、及びn≧0の成分で0.41であった。
【0103】
原料の変性多価フェノールを(P−1)から(P−3)358gに変更した以外は、化合物11の合成と同様にして、褐色固形の2官能性エポキシ樹脂の化合物13429gを得た。その樹脂は、NMRスペクトル(13C)とマススペクトルから化合物13であることが確認された。得られた化合物13におけるn=0の化合物と、n=1以上の化合物との混合物であり、GPCで確認したところ該混合物中n=0の化合物を35質量%の割合で含有するものであった。
【0104】
またこれのエポキシ当量は353g/eq.、150℃における溶融粘度は190mPa・s(ICI粘度計)、エポキシ当量から算出される化合物13中のnの平均値は、n≧1の成分で1.44、及びn≧0の成分で0.53であることが確認された。
【0105】
【化18】

【0106】
表1に従って各材料化合物を配合、混合、混練、脱泡して、液状硬化性組成物を作製した。添加量は全て質量部で記載した。尚、化合物14は常温で固体であるため、90℃に加熱溶融した後、他のエポキシモノマー、オキセタンモノマーと混合した。
【0107】
以下に使用した化合物を説明する。
化合物14:EPICLON N−770(商品名、大日本インキ工業株式会社製 フェノールノボラック型エポキシモノマー)
化合物15:YX−8000(商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製 水添ビスフェノールA型エポキシモノマー)
化合物16:セロキサイド2021P(商品名、ダイセル化学工業株式会社製 脂環式エポキシモノマー)
化合物21:OXT−221(商品名、東亞合成株式会社製 アロンオキセタンOXT−221)
化合物22:OXT−101(商品名、東亞合成株式会社製 アロンオキセタンOXT−101)
化合物23:OXT−212(商品名、東亞合成株式会社製 アロンオキセタンOXT−212)
化合物31: UVI−6992(商品名、ダウケミカル株式会社製 酸発生剤)
化合物32:TAS−1(酸発生剤)(特開2005−139425号記載;TAS−13)
【0108】
【化19】

【0109】
化合物33:アデカオプトマー172(商品名、株式会社アデカ製 酸発生剤)
化合物34:サンエイドSI−100L(商品名、三新化学工業株式会社製 酸発生剤)
化合物35:アデカオプトンCP−77(商品名、株式会社アデカ製 酸発生剤)
化合物41:DEA(商品名、川崎化成株式会社製 光増感剤)
化合物42:アデカオプトマーSP−100(商品名、株式会社アデカ製 光増感剤)
(試料101〜109の作製)
表1に示す試料101〜109の処方の混合物を、バーコーターを用いてガラス基板上に約20μmの厚さに塗布し試料101〜109を得た。
【0110】
(評価方法)
下記の照射条件により紫外線照射を行って硬化させた。
【0111】
UV照射条件
ランプ:80W/cm高圧水銀ランプ
ランプ高さ:10cm
コンベアスピード:10m/min
照射雰囲気:大気中
得られた試料101〜109について、以下のような評価を行った。
【0112】
(硬化性評価)
前記硬化条件で硬化させ、表面のタックがなくなるまでの照射回数を測定した。
【0113】
(鉛筆硬度)
前記照射条件で5回の紫外線照射を行って硬化膜を得た。この硬化膜を25℃60%RHの環境下に24時間放置した後、JIS−K−5400に準じて表面の鉛筆硬度を測定した。
【0114】
(接着性)
前記照射条件で5回の紫外線照射を行って硬化膜を得た。この硬化膜をJIS−K−5400に準拠する碁盤目テープ方法で、接着性を評価した。
【0115】
(曲げ試験)
基材を20μm厚の耐熱PETフィルム上にバーコーターを用いて、厚さ20μmの塗膜を得た。その後、上記条件で紫外線を5回照射し、硬化膜を得た。その後、25℃60%RHの環境下に24時間放置した。これを、外径50mmのコアに、塗膜が外側になるように10周分巻きつけてロール状とし、さらに55℃40%RHの環境下に30日放置した。その後巻いていたシートを引き出し、膜の状態を目視観察した。評価結果は以下のように表現した。
【0116】
◎:全面に渡り何の問題もない
○:端部にわずかにヒビが認められる
△:端部に多く、それ以外は全面にヒビが点在している
×:全体にわたり、ヒビが多数ある。
(耐熱性)
試料101〜109について前記条件で硬化させ、試料を120℃で500時間保存したものの黄変を目視評価した。評価結果は、以下のように表現した。
【0117】
◎:ほとんど黄変しない
○:わずかに黄変が認められる
△:黄変が認められる
×:強く黄変する。
【0118】
以上得られた結果を表1に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
表1より、エポキシモノマーとして本発明以外の化合物を使用した試料101や103、また、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた試料102に比べ、本発明の試料104から109はいずれも、硬化性に優れていることがわかる。また曲げ強度、鉛筆硬度の結果からも柔軟性が高いこともわかる。特にフェノールノボラック樹脂を用いた試料108においても高い柔軟性を示している。本発明の試料は接着性も高く、耐熱性も優れていることもわかる。
【0121】
実施例2
表2に従って各材料化合物を配合、混合、混練、脱泡して、液状硬化性組成物を作製した。添加量は全て質量部で記載した。尚、化合物14は常温で固体であるため、90℃に加熱溶融した後、他のエポキシモノマー、オキセタンモノマーと混合した。
【0122】
以下に表2で新たに使用した化合物を説明する。
化合物51:アエロジルRY−200S(商品名、デグッサ株式会社製 フュームドシリカ)
化合物52:サイリシア350(商品名、富士シリシア株式会社製 無定形シリカ)
化合物53:ホワイトンB(商品名、白石カルシウム株式会社製 炭酸カルシウム)
化合物54:A−43−M(商品名、昭和電工株式会社製 微粒アルミナ)
(試料201〜209の作製及び接着強度の評価)
予めコロナ放電処理をした、幅25mm×長さ60mm×厚さ5mmのポリカーボネート製の試験片を用いた。その試験片の一方の端の幅25mm×長さ10mmの面積部分に、表2に示す試料201〜209の混合物を、それぞれ塗布した。その部分に別の試験片の端の同じ面積を貼り合わせた。その際、接着層の厚みが全ての試料で同じになるように、間に直径100μmのワイヤのリングを挟んで、2個のダブルクリップ(登録商標)ではさんで固定した。得られた試料201〜209を、80℃で1時間加熱し、接着させた。この貼り合わせた2枚の試験片を接着面に平行方向に引っ張り、せん断接着強度を評価した。剥れた瞬間のせん断接着強度を表2に示す。
【0123】
【表2】

【0124】
表2より明らかなように、本発明の接着剤は、接着強度が十分高いことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の2官能エポキシ化合物と、少なくとも一種の脂環式エポキシ化合物と、少なくとも一種の硬化剤とを含有する硬化性組成物において、前記2官能エポキシ化合物が、下記一般式(1)で表される部分構造を有することを特徴とする硬化性組成物。
【化1】

(式中、Xは2価の有機基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)におけるXが、エチレンオキシエチル基、ジ(エチレンオキシ)エチル基、トリ(エチレンオキシ)エチル基、プロピレンオキシプロピル基、ジ(プロピレンオキシ)プロピル基、トリ(プロピレンオキシ)プロピル基及び炭素原子数2〜15のアルキレン基から選ばれる何れかの基であることを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)におけるXがシクロアルカン骨格を有する炭素原子数6〜17の脂肪族炭化水素基であることを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される部分構造を有する2官能エポキシ化合物が下記一般式(2)で表される2官能エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物。
【化2】

(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R3〜R6はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、塩素原子、又は臭素原子を表す。Xは前記一般式(1)Xと同義の基を表す。nは自然数でありその平均は1.2〜5である。)
【請求項5】
前記一般式(1)で表される部分構造を有する2官能エポキシ化合物が下記一般式(3)で表される2官能エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物。
【化3】

(式中、R1〜R6はそれぞれ前記一般式(2)のR1〜R6と同義の基を表し、X3はシクロアルカン骨格を有する炭素原子数6〜17の脂肪族炭化水素基を表す。nは前記一般式(2)の自然数と同義の自然数である。)
【請求項6】
前記一般式(1)で表される部分構造を有する2官能エポキシ化合物が下記一般式(4)で表される2官能エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物。
【化4】

(式中、R3〜R6はそれぞれ前記一般式(2)のR3〜R6と同義の基を表し、X4はそれぞれ独立にシクロアルカン骨格を有する炭素原子数6〜17の脂肪族炭化水素基を表す。nは前記一般式(2)の自然数と同義の自然数である。)
【請求項7】
前記一般式(1)で表される部分構造を有する2官能エポキシ化合物が下記一般式(5)で表される2官能エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物。
【化5】

(式中、Rは水素原子、或いは炭素数1〜4のアルキル基であり、X5はエチレンオキシエチル基、ジ(エチレンオキシ)エチル基、トリ(エチレンオキシ)エチル基、プロピレンオキシプロピル基、ジ(プロピレンオキシ)プロピル基、トリ(プロピレンオキシ)プロピル基、ブチレンオキシブチル基、ジ(ブチレンオキシ)ブチル基、トリ(ブチレンオキシ)ブチル基、炭素原子数2〜15のアルキレン基、及びシクロアルカン骨格を有する炭素原子数6〜17の脂肪族炭化水素基から選ばれる何れかの基を表す。)
【請求項8】
前記一般式(1)で表される部分構造を有する2官能エポキシ化合物が下記一般式(6)で表される2官能エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物。
【化6】

(式中、Rは前記一般式(5)のRと同義の基を表し、X5は前記一般式(5)のX5と同義の2価の有機基を表し、X6は炭素数2〜10のアルキレン基、フェニレン基、トリレン基、メチレンビスフェニル基を表す。nは前記一般式(2)の自然数と同義の自然数である。)
【請求項9】
前記2官能エポキシ化合物が下記一般式(7)で表される部分構造を有することを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物。
【化7】

(式中、X5は前記一般式(5)のX5と同義の2価の有機基を表す。)
【請求項10】
前記2官能エポキシ化合物が下記一般式(8)で表される部分構造を有することを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物。
【化8】

(式中、Rは前記一般式(5)のRと同義の基を表し、X5は前記一般式(5)のX5と同義の2価の有機基を表し、X6は前記一般式(6)のX6と同義の2価の有機基を表す。)
【請求項11】
更にオキセタン化合物を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の硬化性組成物。
【請求項12】
更に微粒子フィラーを含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の硬化性組成物。
【請求項13】
25℃における粘度が1,000〜200,000mPa・sであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載の硬化性組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項記載の硬化性組成物が接着剤用に調製されていることを特徴とする接着剤用の硬化性組成物。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項記載の硬化性組成物がLED封止材料用に調製されていることを特徴とする電子機器LED封止材料用の硬化性組成物。

【公開番号】特開2009−108183(P2009−108183A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281499(P2007−281499)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】