説明

硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構

【課題】硬貨堆積部の開放されている上部空間スペースを活用し、硬貨堆積部の側部壁の厚みを変えることなく、堆積硬貨の硬貨ブリッジ現象を確実に解消でき、かつ硬貨処理機の小型化要望にも応えることができる硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構を提供する。
【解決手段】硬貨堆積部34A〜34Gに隣接配置されて第1の変位位置と第2の変位位置とに変位可能な駆動部47と、駆動部47の第1の変位位置への変位に応じて第1の動作位置に移動して硬貨堆積部34A〜34Gの底部35に当接するとともに、駆動部47の第2の変位位置への変位に応じて硬貨堆積部34A〜34Gの開放されている上部の第2の動作位置に復帰移動するアーム状動作部64とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆積硬貨による硬貨ブリッジ現象を効果的に解消する硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば入出金処理可能な硬貨処理機において、入金された硬貨を一時貯留部に一時保留し、入金承認または入金不承認に応じて一時貯留部に一時保留した硬貨を放出して出金用貯留部に収納したり返却したりしている。また、出金用貯留部に収容された硬貨についても、出金承認または全回収承認に応じて出金用貯留部に収納された硬貨を出金したり全回収したりしている。
【0003】
このような硬貨堆積部である一時貯留部または出金用貯留部では、少なくとも三方が鉛直方向に沿った壁面で構成されるとともに底部には搬送可能な搬送ベルトや開閉可能な底板が設けられ、堆積した硬貨を搬送または放出している。
【0004】
ところで、搬送ベルトの搬送力を利用して堆積硬貨を搬送、または底板を開放して堆積硬貨を放出する際、側部壁間で堆積硬貨が架橋状態となる硬貨ブリッジ現象が発生し、硬貨が残留してしまうことがある。
【0005】
上記堆積硬貨による硬貨ブリッジ現象を解消するために、側部壁自体を揺動可能な構成にし強制的に側部壁をテーパー状にすることにより、硬貨ブリッジ現象を解消するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−84265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年の硬貨処理機においては、小型化の要望が強まっており従来の硬貨ブリッジ解消機構では、特に硬貨を金種別に堆積するために複数の硬貨堆積部を並列配置する場合にあっては必然的に硬貨堆積部の側部壁厚みが増し、硬貨処理機の小型化要望には応えられない構成に成らざるを得なかった。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、硬貨堆積部の開放されている上部空間スペースを活用し、硬貨堆積部の側部壁の厚みを変えることなく、堆積硬貨の硬貨ブリッジ現象を確実に解消でき、かつ硬貨処理機の小型化要望にも応えることができる硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構は、鉛直方向に沿った側部壁と搬送ベルトからなる底部と後部壁とを備えた硬貨堆積部と、前記硬貨堆積部に隣接配置されて第1の変位位置と第2の変位位置とに変位可能な駆動部と、前記駆動部の前記第1の変位位置への変位に応じて第1の動作位置に移動して前記硬貨堆積部の底部に当接するとともに、前記駆動部の前記第2の変位位置への変位に応じて前記硬貨堆積部の開放されている上部の第2の動作位置に復帰移動するアーム状動作部とを具備しているものである。
【0010】
請求項2記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構は、請求項1に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構において、前記駆動部が、前記硬貨堆積部に隣接するモータと、前記硬貨堆積部の上方近傍に支持される回転軸と、前記モータと前記回転軸とを連動させる連動部材と、前記アーム状動作部を前記第1の動作位置へ移動付勢する第1付勢部材と、前記回転軸に固着されて前記アーム状動作部を下側から受け、前記第1付勢部材によって前記アーム状動作部に連結される連結部材とを具備しているものである。
【0011】
請求項3記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構は、請求項2に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構において、前記アーム状動作部が、一端が前記回転軸に回動自由に結合され、他端に前記搬送ベルト上を回転可能な回転部材を具備しているものである。
【0012】
請求項4記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構は、請求項2に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構において、前記アーム状動作部が、一端が前記回転軸に回動自由に結合される第1アームと、一端に前記搬送ベルト上を回転可能な回転部材を備え、略中間部が前記第1アームの他端と回転自在に連結された第2アームと、前記第1の動作位置に移動する過程に連動して前記第1アームと第2アームとを側面視略T字状とする第2付勢部材とを具備しており、前記硬貨堆積部の上方近傍には、前記アーム状動作部が前記第2の動作位置に復帰動作する際に前記第2アームの他端を当接させる固定軸が支持されているものである。
【0013】
請求項5記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構は、請求項3または4に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構において、前記回転部材が合成ゴムにより形成されているものである。
【0014】
請求項6記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構は、請求項3ないし5のいずれか一項に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構において、前記硬貨堆積部が、金種別に複数並列に設けられ、それぞれの前記硬貨堆積部に、前記アーム状動作部と、これに支持される前記回転部材とを有し、前記回転部材が、多角形状とされているものである。
【0015】
請求項7記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構は、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構において、前記硬貨堆積部が、硬貨処理機の出金用貯留部であるものである。
【0016】
請求項8記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構は、請求項7に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構において、出金時であって、所定時間硬貨の放出を確認できなかった場合に、前記駆動部を作動させる制御部をさらに有するものである。
【0017】
請求項9記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構は、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構において、前記硬貨堆積部が、硬貨処理機の一時貯留部であるものである。
【0018】
請求項10記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構は、請求項9に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構において、一時保留解消の都度、前記駆動部を作動させる制御部をさらに有するものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構によれば、硬貨堆積部の開放されている上部空間スペースを活用し、駆動部と駆動部に連動するアーム状動作部とが硬貨ブリッジを解消することで、硬貨堆積部側部壁の厚みを変えることなく目的達成を可能にし、硬貨ブリッジ解消とともに硬貨処理機の小型化要望にも応えることができる。
【0020】
請求項2記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構によれば、請求項1に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構の効果に加えて、硬貨堆積部そのものの構成を大きく変えることなく、硬貨ブリッジ解消機構の駆動部を設置することが可能となり、硬貨処理機の小型化要望にも応えることができる。
また、駆動部とアーム状動作部とをバネに代表される第1付勢部材で連結させることで、実際の硬貨堆積時にアーム状動作部が当接した際の過負荷を搬送ベルトにかけない、いわゆる「逃げ機構」をもたせることもできる。
つまり、駆動部を第1の変位位置(アーム状動作部をその先端が搬送ベルトに当接する第1の動作位置)まで硬貨の堆積の有無にかかわらず駆動すると、実際に硬貨が堆積していない際には別段、堆積した際には堆積硬貨の厚さ分はアーム状動作部が変位せず、堆積硬貨を通じて当接する搬送ベルトに過圧力をかけることになり損傷をきたしかねない。該弊害を防止するため、駆動部の連結部材でアーム状動作部を下側から受け、連結部材とアーム状動作部とを第1付勢部材で連結することにし、堆積硬貨に当接した際は、第1付勢部材を変位させることで過圧力を回避している。また、第2の変位位置(アーム状動作部を格納する第2の動作位置)へは、一端が回転軸に固着された連結部材の復帰動作に連動して行われるので、アーム状動作部自体が駆動部を備える必要がない。
【0021】
請求項3記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構によれば、請求項2に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構の効果に加えて、第1の動作位置(搬送ベルトとアーム状動作部の先端が当接する位置)にアーム状動作部が変位する過程で、回転部材が硬貨ブリッジに当接してこれを解消できるとともに、回転部材は回転可能であるので、接する硬貨に過負荷をかけずに目的を達成することができる。
また、アーム状動作部が第1の動作位置に変位した際に、回転部材が搬送ベルトに当接しても、回転可能であるので搬送ベルトに対しても過負荷をかけることを回避している。
なお、回転部材は回転可能であればよく、断面形状については、三角形、四角形、六角形をはじめとする多角形でも構わない。
【0022】
請求項4記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構によれば、請求項2に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構の効果に加えて、アーム状動作部の可動域を拡げることが可能となり、特に、硬貨処理機の前方または後方のいずれかに向けて上方傾斜する形状の搬送ベルトを採用する硬貨堆積部をもつ硬貨処理機には有効である。
つまり、第2の動作位置(アーム状動作部の格納位置)では第2アームの他端が固定軸に当接し、第1アームの他端を中心として第2付勢部材の付勢力に反して略90度回転し、側面視略T字状ではなく略一直線状に格納される。ここで、第1の動作位置(搬送ベルトとアーム状動作部の一端が当接する位置)に第1アームが変位する過程においては、第2付勢部材の付勢力によって略T字状に戻ろうとする力が働き、機体前方または後方のいずれかに向けて上方傾斜する形状の搬送ベルト上においては、第2アームが略T字状に戻りきる前に前方または後方のいずれかの搬送ベルトに当接し、以後、戻りきるまで搬送ベルトに回転部材が当接することになる。したがって、広範囲にわたって確実に硬貨ブリッジを解消できる。
【0023】
請求項5記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構によれば、請求項3または4のいずれか一項記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構の効果に加えて、第1の動作位置にアーム状動作部が変位する過程において、摩擦係数の高い回転部材が堆積硬貨に接しやすくなり、より確実に硬貨ブリッジを解消できる。なお、回転部材は合成ゴムでなくても摩擦係数が高い素材であればよい。
【0024】
請求項6記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構によれば、請求項3ないし5のいずれか一項記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構の効果に加えて、例えば、金種別に複数並列に設けられた硬貨堆積部を有する硬貨処理機において、堆積硬貨のない一の硬貨堆積部でアーム状動作部の回転部材が搬送ベルト上に当接して回転した場合、回転部材が多角形状であることから、アーム状動作部または搬送ベルト、さらには、側部壁を含む周辺機構に振動を与えることとなって、この振動が隣接する他の硬貨堆積部の側部壁を含むアーム状動作部または回転部材などを振動させて隣接する他の硬貨堆積部の硬貨ブリッジをさらに解消しやすくできる。
【0025】
請求項7記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構によれば、請求項1ないし6のいずれか一項記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構の効果に加えて、硬貨処理機の出金用貯留部に適用することにより、出金用貯留部での硬貨残留を確実に防止できる。
【0026】
請求項8記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構によれば、請求項7に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構の効果に加えて、制御部を構成することにより、全回収時や金額、枚数指定有りの回収動作での計数不一致が発生し、任意の所定時間硬貨の放出がなかった場合、出金用貯留部での硬貨残留を確実に防止できる。
【0027】
請求項9記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構によれば、請求項1ないし6のいずれか一項記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構の効果に加えて、硬貨処理機の一時貯留部に適用することにより、一時貯留部での硬貨残留を確実に防止できる。
【0028】
請求項10記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構によれば、請求項9に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構の効果に加えて、一時保留解消の都度稼動させる制御を設定すれば、一時貯留部での硬貨残留を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】硬貨処理機の内部構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る硬貨ブリッジ解消機構および出金用貯留部等の側断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る硬貨ブリッジ解消機構および出金用貯留部等の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る硬貨ブリッジ解消機構および出金用貯留部等の正断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る硬貨ブリッジ解消機構および出金用貯留部等の側断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る硬貨ブリッジ解消機構および出金用貯留部等の平面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る硬貨ブリッジ解消機構および出金用貯留部等の正断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る硬貨ブリッジ解消機構および出金用貯留部等の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施形態に係る硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構を図面を参照して以下に説明する。
【0031】
図1は、硬貨処理機の内部構成を示すもので、その機体前部には、機外から金種混在の状態でバラ硬貨が投入される入金口ホッパ(入金部)11が設けられている。この入金口ホッパ11は、その底部を構成する回転円盤12と、この回転円盤12の外周部から立ち上がる円弧状の立壁部13と、この立壁部13の切り欠き部分に配置されて回転円盤12との間に硬貨一枚のみを通過可能な隙間を形成する分離部14とを有している。この入金口ホッパ11は、回転円盤12上に投入された硬貨を回転円盤12が回転することにより生じる遠心力で分離部14と回転円盤12との隙間を通過させることで一枚ずつに分離して繰り出す。
【0032】
また、硬貨処理機の機体前部側には、入金口ホッパ11に隣接して屈曲形状の入金搬送路17が形成されている。この入金搬送路17は、回転円盤12の接線方向に沿い且つ機体左右方向に沿って延在する第1通路部18と、第1通路部18の入金口ホッパ11とは反対側から機体後方に向け延出する第2通路部19と、第2通路部19の第1通路部18とは反対側から第1通路部18と平行をなすように延在する第3通路部20とを有している。入金搬送路17は、入金口ホッパ11から一枚ずつに分離されて繰り出された硬貨を第1通路部18に受け入れることになり、受け入れた硬貨を水平に沿う姿勢のまま、その上方に設けられた図示略の入金搬送ベルトにより第1通路部18から第2通路部19、第3通路部20の順に搬送する。
【0033】
入金搬送路17の第1通路部18には、入金口ホッパ11に投入され入金搬送路17で搬送される硬貨の真偽および金種を識別し計数する識別部24が設けられている。
【0034】
入金搬送路17の第2通路部19には、開閉可能なリジェクト部25が設けられており、入金口ホッパ11に投入された硬貨の計数および収納を行う入金計数処理時に、識別部24の識別結果から受け入れ不可と識別された硬貨をリジェクト部25が開いて第1通路部18の下側の所定の装着部26に装着された着脱可能なカルトン(返却部)27に案内する。
【0035】
入金搬送路17の第3通路部20には、入金計数処理時に識別部24の識別結果から受け入れ可能と識別された硬貨を金種別に選別する選別部29が設けられている。この選別部29は、硬貨を小径のものから順に落下させる金種別の選別孔30A〜30Fを有している。つまり、第3通路部20には、最も上流側に1円硬貨のみを落下させる選別孔30Aが、その下流側に50円硬貨のみを落下させる選別孔30Bが、その下流側に5円硬貨のみを落下させる選別孔30Cが、その下流側に100円硬貨のみを落下させる選別孔30Dが、その下流側に10円硬貨のみを落下させる選別孔30Eが、その下流側に500円硬貨のみを落下させる選別孔30Fが、それぞれ形成されている。
【0036】
入金搬送路17の第3通路部20の下側には、識別部24で識別され選別孔30A〜30Fで金種別に選別された硬貨を一時貯留する金種別の一時貯留部33A〜33Fが設けられている。つまり、選別孔30Aの下側に1円硬貨のみを貯留する機体前後方向に長い一時貯留部33Aが、選別孔30Bの下側に50円硬貨のみを貯留する機体前後方向に長い一時貯留部33Bが、選別孔30Cの下側に5円硬貨のみを貯留する機体前後方向に長い一時貯留部33Cが、選別孔30Dの下側に100円硬貨のみを貯留する機体前後方向に長い一時貯留部33Dが、選別孔30Eの下側に10円硬貨のみを貯留する機体前後方向に長い一時貯留部33Eが、選別孔30Fの下側に500円硬貨のみを貯留する機体前後方向に長い一時貯留部33Fが、それぞれ配置されている。そして、入金計数処理時に、識別部24の識別結果から受け入れ可能と識別された硬貨が選別孔30A〜30Fによって金種別の一時貯留部33A〜33Fに振り分けられる。なお、金種別の一時貯留部33A〜33Fに貯留しきれないオーバーフロー硬貨に関しては、図示略の一括貯留部に金種に無関係に一括して貯留されるようになっている。
【0037】
一時貯留部33A〜33Fの機体後部側の下方には、一時貯留部33A〜33Fおよび図示略の一括貯留部に一時貯留された硬貨を収納する硬貨堆積部である金種別の出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gが設けられている。つまり、入金計数処理時に図示略の収納開閉ゲートを開状態として、図示略の一時貯留モータの正転で図示略の貯留部搬送ベルトをその搬送面が機体後方に向かう方向に正転駆動すると、一時貯留部33Aの硬貨が下方の出金用貯留部34Aに、一時貯留部33Bの硬貨が下方の出金用貯留部34Bに、一時貯留部33Cの硬貨が下方の出金用貯留部34Cに、一時貯留部33Dの硬貨が下方の出金用貯留部34Dに、一時貯留部33Eの硬貨が下方の出金用貯留部34Eに、一時貯留部33Fの硬貨が下方の出金用貯留部34Fに、それぞれ落下して収納される。また、図示略の一括貯留部の硬貨がオーバーフロー用貯留部34Gに落下して収納される。
【0038】
ここで、出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gは、略同様の構成となっており、図2に示すように機体前後方向に長く長さ方向に硬貨を搬送する機体前方に向けて上方傾斜する形状の無端の搬送ベルト35を有するベルトコンベア36と、図3および図4に示すように搬送ベルト35の幅方向の両縁側に隣接して配置された搬送ベルト35と略同長の鉛直に沿う側部壁37と、図2に示すように搬送ベルト35の長さ方向の一端部である機体後部側の端部に配置された機体後方に向けて上方傾斜する形状の後部壁38とを有している。出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gは、それぞれの底部が搬送ベルト35からなっている。
【0039】
なお、搬送ベルト35は、両端側がプーリ40に掛けられてベルトコンベア36を構成しており、出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gのすべてのベルトコンベア36の機体前部側のプーリ40が共通の一本の駆動軸41に固定されている。そして、この駆動軸41がその下側に設けられたコンベアモータ42および駆動力伝達機構43で駆動されることになり、これにより出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gのすべての搬送ベルト35が同期回転する。なお、コンベアモータ42は正逆回転可能なリバーシブルモータであり搬送ベルト35が正逆回転可能となっている。
【0040】
出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gの後部壁38の上方近傍には、出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gに共通の一本の回転軸45が機体左右方向に延在するようにして位置固定で回転可能に支持されている。そして、出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gのそれぞれの後部壁38の上部近傍には、略同様の構成で、第1アーム46の一端がこの共通の回転軸45に回動自由に結合されている。
【0041】
出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gの後部壁38の後方外側には、図2および図5に示すように駆動部47が隣接配置されている。この駆動部47は、出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gに共通の上記した回転軸45と、一端がこの回転軸45に固着され、その他端が第1アーム46を下側から受け、第1付勢部材48によって第1アーム46と連結される連結部材49と、一端が回転軸45に固着されるとともに後部壁38の外側に延出し、延出側の他端が第2連動部材(連動部材)51の一端とピン52を介して回転自由に連結される側面視略逆L字状の第1連動部材(連動部材)53と、後部壁38の外側に配置されるとともに、一端が第1連動部材53とピン52を介して回転自由に連結され、その他端が第3連動部材(連動部材)56の一端とピン55を介して回転自由に連結される側面視略I字状の第2連動部材51と、後部壁38の外側に配置されるとともに、一端が第2連動部材51とピン55を介して回転自由に連結され、その他端が駆動モータ59の回転軸60に固着される側面視略I字状の第3連動部材56と、出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gに隣接するように後部壁38の外側に配置されるとともに回転軸60が第3連動部材56に固着された駆動モータ(モータ)59とを有している。なお、駆動モータ59はステッピングモータであり、回転角度や回転速度が制御されている。
【0042】
上記した駆動モータ59、第3連動部材56、ピン55、第2連動部材51、ピン52および第1連動部材53は、回転軸45と同様、出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gに共用で設けられており、第1アーム46、連結部材49および第1付勢部材48は、出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gのそれぞれに個別に設けられている。
【0043】
駆動部47は、図2に示す待機位置である第2の変位位置から、駆動モータ59の駆動により、これに連動して第3連動部材56を図2,図5の反時計回り方向に所定角度回転させることで、図5に示すようにピン55を上昇旋回させて、これに連動して第2連動部材51、ピン52および第1連動部材53の下部を押し上げて回転軸45および連結部材49を図2,図5の反時計回り方向に回転させる第1の変位位置(図5に示す位置)と、この状態から、駆動モータ59の駆動により、これに連動して第3連動部材56を図2,図5の時計回り方向に所定角度回転させることで、図2に示すようにピン55を下降旋回させて、これに連動して第2連動部材51、ピン52および第1連動部材53の下部を下降させて回転軸45および連結部材49を図2,図5の時計回りに回転させる第2の変位位置(図2に示す位置)とに変位可能となっている。よって、駆動部47が第1の変位位置に変位すると、連結部材49で下側から支持されている第1アーム46は、第1付勢部材48の付勢力で基本的に連結部材49と一体に回転することになり、その回転軸45とは反対側の端部を下方つまり搬送ベルト35側に移動させることになる。また、駆動部47が第2の変位位置に変位すると、第1アーム46は、連結部材49で押し上げられてその回転軸45とは反対側の端部を上方つまり搬送ベルト35とは反対側に移動させることになる。よって、第3連動部材56、ピン55、第2連動部材51、ピン52および第1連動部材53を含む駆動部47は、第1の変位位置と第2の変位位置との間の変位に応じて第1アーム46を連動させるリンク機構となっている。
【0044】
駆動部47は、図3および図4に示すように出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gのそれぞれに個別に設けられた上記した第1アーム46を含むアーム状動作部64を駆動するものである。アーム状動作部64は、略同様の構成で、図2,図5に示すように、一端が共通の回転軸45に回転自在に連結され、その他端が第2アーム65の略中間部とピン66を介して回転自在に連結している上記した第1アーム46と、一端に回動自在の回転部材68を備え、略中間部で第1アーム46の他端と回転自在に連結され、第1アーム46とで側面視略T字状となることが可能に形成された第2アーム65と、第1アーム46の略中間部と第2アーム65の略中間部とに設けられて第1アーム46と第2アーム65とを側面視略T字状になるよう付勢する第2付勢部材70とを備えている。一端が回転軸45に結合されたアーム状動作部64の他端に位置する回転部材68は、搬送ベルト35上を回転可能であり、断面形状が円形状をなすもので、合成ゴムからなっている。なお、回転部材68は回転可能であれば、断面形状について、三角形、四角形、六角形をはじめとする多角形でも構わなく、素材については合成ゴムでなくても摩擦係数が高い素材であればよい。
【0045】
出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gの中間部上方近傍には、第2アーム65の回転部材68とは反対の他端が当接する、出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gに共通の一本の固定軸71が側部壁37に支持されている。
【0046】
ここで、駆動部47は、図5に示す第1の変位位置から図2に示す第2の変位位置に復帰動作する際に、その変位に応じて、その連結部材49で支持しているアーム状動作部64を上昇方向に回動させて、図2〜図4に示すように、出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gの開放されている上部の第2の動作位置に復帰動作させることになる。その際に、固定軸71は、第1アーム46の他端に連結された第2アーム65の他端を当接させて第2アーム65を第2付勢部材70の付勢力に抗して回転させて第1アーム46に沿う姿勢とする。
【0047】
また、駆動部47は、図2に示す第2の変位位置から図5に示す第1の変位位置に変位する際に、その変位に応じて、その連結部材49で支持しているアーム状動作部64を下降方向に回動させて、図5〜図7に示すように、第1付勢部材48の付勢力と合わせて搬送ベルト35側の第1の動作位置に移動させることになるが、この過程に連動して、固定軸71は、第1アーム46の先端に連結された第2アーム65の他端を離間させて第2アーム65を第2付勢部材70の付勢力で回転させて第1アーム46と側面視T字状になる姿勢とする。この状態で、第2アーム65は回転部材68を搬送ベルト35に当接させる。
【0048】
このような硬貨処理機において、上記した金種別の出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gは、収納している硬貨を出金処理時に計数しつつ機体前部側に繰出可能となっており、出金処理時に出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gから繰り出された硬貨は、装着部26に装着されたカルトン27に放出される。
【0049】
上記出金処理時、出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gに堆積した硬貨を繰り出すには搬送ベルト35の搬送力を利用している状況において、側部壁37間で堆積した硬貨が架橋状態となる硬貨ブリッジ現象が発生し、硬貨が残留してしまうことがある。
【0050】
このような硬貨ブリッジ現象を解消する、上記した駆動部47およびアーム状動作部64からなる硬貨ブリッジ解消機構75の動作について説明する。
【0051】
出金処理時、例えば全回収指示時や金額、枚数指定有りの回収動作での計数不一致が発生した場合には、上記硬貨ブリッジ現象が発生していると考えられるが、その多くは出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gの後部側、つまり後部壁38の周辺で発生している。本実施形態の硬貨ブリッジ解消機構75は、図示しない制御部によって任意に稼動設定可能だが、上記全回収時や計数不一致が発生し、任意の所定時間硬貨の放出がなかった場合などは、予め自動的に稼動するように設定しておくことが好ましい。
【0052】
硬貨ブリッジ解消機構75は、駆動部47が、待機位置である第2の変位位置から第1の変位位置に変位するにあたって、まず駆動モータ59が予め任意に設定された位置まで予め任意に設定された速度で駆動する。その駆動に連動して第3連動部材56、第2連動部材51、第1連動部材53が動作し、第1連動部材53の一端と固着している回転軸45が連動して回転する。すると、一端が回転軸45と固着している連結部材49が連動して回転軸45を中心に側面視略下向きに回転する。このような駆動部47の第1の変位位置への変位に応じて、連結部材49に下側から支持されるとともに連結部材49に第1付勢部材48で当接させられているアーム状動作部64が第1の動作位置に向け移動する。つまり、アーム状動作部64の第1アーム46が、第1付勢部材48の付勢力によって、連結部材49に連動して回転軸45を中心に側面視略下向きに回転する。上記第1アーム46が変位する過程において、第1アーム46と第2付勢部材70で連結された第2アーム65にあっては、固定軸71から離間することで、第2付勢部材70の付勢力によって第1アーム46の他端を中心として側面視略T字状に戻ろうとする力が働き、機体前方に向けて上方傾斜する形状の搬送ベルト35上において、第2アーム65が略T字状に戻りきる前に前方の搬送ベルト35に当接し、以後、戻りきるまで搬送ベルト35に回転部材68が当接することになる。したがって、駆動モータ59が駆動する予め任意に設定された位置は、第2アーム65が第2付勢部材70の付勢力によって略T字状に戻りきった際にも第2アーム65の一端に備えた回転部材68が搬送ベルト35に当接する位置に設定、制御されることが好ましい。搬送ベルト35に当接すると回転部材68は、搬送ベルト35の上で、搬送ベルト35の駆動力によって連れ回りする。
【0053】
実際に硬貨ブリッジを解消する際は、回転部材68が硬貨ブリッジの一部に当接することで、直接硬貨ブリッジを崩し解消することもあれば、当接した硬貨が搬送ベルト35上を搬送され後部壁38に乗り上げた際の反動を利用し硬貨ブリッジを解消することもある。したがって、硬貨ブリッジ解消機構75が稼動する際には、搬送ベルト35も図示しない制御部によって同時に制御し正転逆転を繰り返すように設定するのが好ましい。また、上記の通り回転部材68については、搬送ベルト35に当接した際に、搬送ベルト35の正転逆転に合わせ回転可能な断面形状であれば円に限られることなく、三角形、四角形、六角形をはじめとする多角形でも構わなく、素材については合成ゴムでなくても摩擦係数が高い素材であればよい。なお、例えば、回転部材68の断面形状が円ではなく多角形状であって、金種別に複数並列に設けられた出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gを有する硬貨処理機において、堆積硬貨のない一の出金用貯留部でアーム状動作部64の回転部材68が搬送ベルト35上に当接し回転した場合、アーム状動作部64または搬送ベルト35、さらには、側部壁37を含む周辺機構に振動を与えることとなって、この振動が隣接する他の出金用貯留部の側部壁37を含むアーム状動作部64または回転部材68などを振動させて隣接する他の出金用貯留部の硬貨ブリッジをさらに解消しやすくできる。
【0054】
ここで、駆動部47は第1の変位位置まで硬貨の堆積の有無にかかわらず駆動されるが、実際に硬貨が堆積していない際には別段、堆積している際には堆積硬貨の厚さ分はアーム状動作部64が第1の動作位置まで変位せず、堆積硬貨を通じて当接する搬送ベルト37に過圧力をかけることになり損傷をきたしかねない。該弊害を防止するため、アーム状動作部64と駆動部47とを第1付勢部材48で連結することにし、堆積硬貨に当接した際は、第1付勢部材48を変形させることで過圧力がかかることを回避している。つまり、連結部材49を含めた駆動部47が第1の変位位置まで移動しても、図8に示すように、回転軸45に回転可能に支持され連結部材49に下側から支承されたアーム状動作部64は、堆積硬貨Cに応じた位置で停止すると、それ以後は、第1付勢部材48を変形させながら連結部材49から離れることで、搬送ベルト37に過圧力がかかることを回避する。
【0055】
次に、駆動部47が第1の変位位置から第2の変位位置に変位するにあたって、まず駆動モータ59が予め任意に設定された位置まで予め任意に設定された速度で駆動される。その駆動に連動して第3連動部材56、第2連動部材51、第1連動部材53が動作し、第1連動部材53の一端と固着している回転軸45が連動して回転する。すると、一端が回転軸45と固着している連結部材49が連動して回転軸45を中心に側面視略上向きに回転する。このような駆動部47の第2の変位位置への変位に応じて、連結部材49に下側から支持されるとともに連結部材49に第1付勢部材48で当接させられるアーム状動作部64が、回転軸45を中心に側面視略上向きに回転し第2の動作位置に向け移動する。
【0056】
上記第1アーム46が変位する過程において、図2に示すように、第2アーム65の他端が固定軸71に当接し、第1アーム46の他端を中心として第2付勢部材70の付勢力に反して略90度回転し、第2の動作位置においては、側面視略T字状ではなく略一直線状に格納される。これにより、堆積硬貨の搬送時に巻き込みをすることなく好適である。なお、第2アーム65の上部面および第1アーム64の上部面に堆積硬貨の巻き込み防止用板材を取り付けるとなお好ましい。
【0057】
以上に述べた本実施形態の硬貨ブリッジ解消機構75によれば、出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gの開放されている上部空間スペースを活用し、駆動部41と駆動部41に連動するアーム状動作部64とが硬貨ブリッジを解消することで、出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gの側部壁37の厚みを変えることなく、堆積硬貨の硬貨ブリッジ現象を確実に解消できるとともに硬貨処理機の小型化要望にも応えることができる。
【0058】
また、出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gのそのものの構成を大きく変えることなく、駆動部41を設置することが可能となり、硬貨処理機の小型化要望にも応えることができる。
【0059】
また、駆動部41とアーム状動作部64とをバネに代表される第1付勢部材3で連結させることで、実際の硬貨堆積時にアーム状動作部64が当接した際の過負荷を搬送ベルト35にかけない、いわゆる「逃げ機構」をもたせることもできる。つまり、駆動部41を第1の変位位置(アーム状動作部64をその先端が搬送ベルト35に当接する第1の動作位置)まで硬貨の堆積の有無にかかわらず駆動すると、実際に硬貨が堆積していない際には別段、堆積した際には堆積硬貨の厚さ分はアーム状動作部64が変位せず、堆積硬貨を通じて当接する搬送ベルト35に過圧力をかけることになり損傷をきたしかねない。該弊害を防止するため、駆動部41の連結部材49でアーム状動作部64を下側から受け、連結部材49とアーム状動作部64とを第1付勢部材48で連結することにし、堆積硬貨に当接した際は、第1付勢部材48を変位させることで回避している。また、第2の変位位置(アーム状動作部64を格納する第2の動作位置)へは、一端が回転軸45に固着された連結部材49の復帰動作に連動して行われるので、アーム状動作部64自体が駆動部を備える必要がない。
【0060】
また、第1の動作位置(搬送ベルト35とアーム状動作部64の先端が当接する位置)にアーム状動作部64が変位する過程で、回転部材68が硬貨ブリッジに当接してこれを解消できるとともに、回転部材68は回転可能であるので、接する硬貨に過負荷をかけずに硬貨ブリッジを解消することができる。
【0061】
また、アーム状動作部64が第1の動作位置に変位した際に、回転部材68が搬送ベルト35に当接しても、回転可能であるので搬送ベルト35に対しても過負荷をかけることを回避することができる。
【0062】
また、アーム状動作部64の可動域を拡げることが可能となり、特に、硬貨処理機の前方または後方のいずれかに向けて上方傾斜する形状の搬送ベルト35を採用する硬貨堆積部をもつ硬貨処理機には有効である。つまり、第2の動作位置(アーム状動作部64の格納位置)では第2アーム65の他端が固定軸71に当接し、第1アーム46の他端を中心として第2付勢部材70の付勢力に反して略90度回転し、側面視略T字状ではなく略一直線状に格納される。ここで、第1の動作位置(搬送ベルト35とアーム状動作部64の一端が当接する位置)に第1アーム46が変位する過程においては、第2付勢部材70の付勢力によって略T字状に戻ろうとする力が働き、機体前方または後方のいずれかに向けて上方傾斜する形状の搬送ベルト35上においては、第2アーム65が略T字状に戻りきる前に前方または後方のいずれかの搬送ベルト35に当接し、以後、戻りきるまで搬送ベルト35に回転部材68が当接することになる。したがって、広範囲にわたって確実に硬貨ブリッジを解消できる。
【0063】
また、第1の動作位置にアーム状動作部64が変位する過程において、摩擦係数の高い回転部材68が堆積硬貨に接しやすくなり、より確実に硬貨ブリッジを解消できる。なお、回転部材68は合成ゴムでなくても摩擦係数が高い素材であればよい。
【0064】
また、金種別に複数並列に設けられた出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gを有する硬貨処理機において、堆積硬貨のない一の出金用貯留部でアーム状動作部64の回転部材68が搬送ベルト35上に当接して回転した場合、回転部材35が多角形状とすることで、アーム状動作部64または搬送ベルト35、さらには、側部壁37を含む周辺機構に振動を与えることとなって、この振動が隣接する他の出金用貯留部の側部壁37を含むアーム状動作部64または回転部材68などを振動させて隣接する他の出金用貯留部の硬貨ブリッジをさらに解消しやすくできる。
【0065】
また、硬貨処理機の出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gに適用することにより、出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gでの硬貨残留を確実に防止できる。
【0066】
制御部の制御により、全回収時や金額、枚数指定有りの回収動作での計数不一致が発生し、任意の所定時間硬貨の放出がなかった場合、出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gでの硬貨残留を確実に防止できる。
【0067】
本実施形態の硬貨ブリッジ解消機構75の構成は、後部壁38の後方と後部壁38の上方近傍に駆動部47を設け、後部壁38の上部近傍にアーム状動作部64の一端を配置するようにして、後部壁38の上部近傍の回転軸45を中心として、アーム状動作部64の他端を下方に旋回させるようにしたが、回転軸45を出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gの上部空間スペースの中央部近傍上部に配置し、アーム状動作部64の他端に回転部材68を配置してもよく、出金用貯留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gの構造によって配置を適宜変更することができる。
【0068】
また、本実施形態の硬貨ブリッジ解消機構75の構成は、出金用保留部34A〜34Fおよびオーバーフロー用貯留部34Gに限らず、金種別に選別された硬貨を一時貯留する金種別の一時貯留部、さらには、金種に関わらない共用の一時貯留部などにも適用でき、例えば、一時保留解消の都度稼動させる制御を設定すれば、一時貯留部での硬貨残留を確実に防止できる。
【符号の説明】
【0069】
34A〜34F 出金用貯留部(硬貨堆積部)
34G オーバーフロー用貯留部(硬貨堆積部)
35 搬送ベルト
37 側部壁
38 後部壁
45 回転軸
46 第1アーム
47 駆動部
48 第1付勢部材
49 連結部材
51 第2連動部材(連動部材)
53 第1連動部材(連動部材)
56 第3連動部材(連動部材)
59 駆動モータ(モータ)
64 アーム状動作部
65 第2アーム
68 回転部材
70 第2付勢部材
71 固定軸
75 硬貨ブリッジ解消機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に沿った側部壁と搬送ベルトからなる底部と後部壁とを備えた硬貨堆積部と、
前記硬貨堆積部に隣接配置されて第1の変位位置と第2の変位位置とに変位可能な駆動部と、
前記駆動部の前記第1の変位位置への変位に応じて第1の動作位置に移動して前記硬貨堆積部の底部に当接するとともに、前記駆動部の前記第2の変位位置への変位に応じて前記硬貨堆積部の開放されている上部の第2の動作位置に復帰移動するアーム状動作部と、
を具備する硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構。
【請求項2】
前記駆動部は、
前記硬貨堆積部に隣接するモータと、
前記硬貨堆積部の上方近傍に支持される回転軸と、
前記モータと前記回転軸とを連動させる連動部材と、
前記アーム状動作部を前記第1の動作位置へ移動付勢する第1付勢部材と、
前記回転軸に固着されて前記アーム状動作部を下側から受け、前記第1付勢部材によって前記アーム状動作部に連結される連結部材と、
を具備する請求項1に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構。
【請求項3】
前記アーム状動作部は、一端が前記回転軸に回動自由に結合され、他端に前記搬送ベルト上を回転可能な回転部材を具備する請求項2に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構。
【請求項4】
前記アーム状動作部は、
一端が前記回転軸に回動自由に結合される第1アームと、
一端に前記搬送ベルト上を回転可能な回転部材を備え、略中間部が前記第1アームの他端と回転自在に連結された第2アームと、
前記第1の動作位置に移動する過程に連動して前記第1アームと第2アームとを側面視略T字状とする第2付勢部材と、
を具備しており、
前記硬貨堆積部の上方近傍には、前記アーム状動作部が前記第2の動作位置に復帰動作する際に前記第2アームの他端を当接させる固定軸が支持されている請求項2に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構。
【請求項5】
前記回転部材が合成ゴムにより形成されている請求項3または4に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構。
【請求項6】
前記硬貨堆積部は、金種別に複数並列に設けられ、
それぞれの前記硬貨堆積部に、前記アーム状動作部と、これに支持される前記回転部材とを有し、
前記回転部材が、多角形状である請求項3ないし5のいずれか一項に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構。
【請求項7】
前記硬貨堆積部は、硬貨処理機の出金用貯留部である請求項1ないし6のいずれか一項に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構。
【請求項8】
出金時であって、所定時間硬貨の放出を確認できなかった場合に、前記駆動部を作動させる制御部をさらに有する請求項7に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構。
【請求項9】
前記硬貨堆積部は、硬貨処理機の一時貯留部である請求項1ないし6いずれか一項に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構。
【請求項10】
一時保留解消の都度、前記駆動部を作動させる制御部をさらに有する請求項9に記載の硬貨処理機の硬貨ブリッジ解消機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−8442(P2011−8442A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150264(P2009−150264)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(500265501)ローレル精機株式会社 (191)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】