説明

硬貨処理装置

【課題】機体11の幅方向寸法を小さくできる硬貨処理装置を提供する。
【解決手段】機体11内の下部域に、所定枚数重積した硬貨を包装して棒金16を形成する包装部17を配置する。包装部17の上部域には、硬貨を収納および繰り出す硬貨収納繰出部14と、棒金16を収納および送出する棒金収納送出部18とを、機体11の幅方向に並べて配置する。このレイアウトによって機体11の幅方向寸法を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨およびこの硬貨を所定枚数重積して包装した棒金を処理する硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関等で使用される現金出納機として、硬貨およびこの硬貨を所定枚数重積して包装した包装硬貨である棒金を処理する硬貨処理装置がある。
【0003】
この硬貨処理装置では、機体内に投入される硬貨を硬貨受入処理部に受け入れて識別し、正常と識別された硬貨を一時保留部に一時保留し、収納操作にて一時保留した硬貨を金種別の硬貨収納繰出部に収納している。また、硬貨収納繰出部に収納している硬貨は、1枚ずつ繰り出すことができ、硬貨の出金に使用したり、硬貨を機体内に配置されている包装部へ送り込み所定枚数重積して包装した棒金とし、その棒金を機体内に配置されている棒金収納送出部に収納したり、棒金収納送出部から棒金を送り出して出金することが可能となっている。
【0004】
このような硬貨処理装置では、機体内の上部域に硬貨受入処理部が配置され、この硬貨受入処理部の下部域に一時保留部が配置され、この一時保留部の下部域に硬貨収納繰出部が配置され、この硬貨収納繰出部の側部に並んで包装部が配置され、包装部の上部域に棒金収納送出部が配置されている。つまり、機体の下部域に、硬貨収納繰出部および包装部が機体の前面から見て幅方向に並んで配置されたレイアウトとなっている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−228080号公報(第7頁、図1−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、硬貨処理装置は、幅方向寸法が比較的大きく、小規模の金融機関等では機体の幅方向寸法の大きさが硬貨処理装置の導入の障害となる理由の1つとしてあり、機体の幅方向寸法が小さい硬貨処理装置が要望されている。
【0006】
しかしながら、従来の硬貨処理装置では、包装部が硬貨収納繰出部や棒金収納送出部に比べて比較的大きな幅方向の寸法を必要とするため、この包装部と硬貨収納繰出部とが機体の幅方向に並んで配置されたレイアウトとなっており、機体の幅方向寸法を小さくするのが難しい問題がある。
【0007】
しかも、包装部と硬貨収納繰出部とが機体の幅方向に並んで配置されているため、硬貨収納繰出部内の硬貨を包装部に送り込むには、硬貨収納繰出部内の硬貨を上方へ搬送して包装部に送り込むための何らかの経路が必要となり、機体の幅方向寸法を小さくする妨げとなっている。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、機体の幅方向寸法を小さくできる硬貨処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の硬貨処理装置は、機体と、この機体内の下部域に配置され、所定枚数重積した硬貨を包装して棒金を形成する包装部と、この包装部の上部域に配置され、前記機体内に受け入れた硬貨を金種別に収納し、収納した硬貨を前記包装部に繰出可能とする硬貨収納繰出部と、前記包装部の上部域に配置され、前記包装部で形成された棒金を収納し、収納した棒金を送出可能とする棒金収納送出部とを具備しているものである。
【0010】
請求項2記載の硬貨処理装置は、請求項1記載の硬貨処理装置において、前記硬貨収納繰出部は、前記機体の奥行き方向に沿って金種別に並んで配置され、前記棒金収納送出部は、前記機体の奥行き方向に沿って複数の棒金を並べて収納し、これら硬貨収納繰出部と棒金収納送出部とが前記機体の幅方向に並んで配置されているものである。
【0011】
請求項3記載の硬貨処理装置は、請求項1または2記載の硬貨処理装置において、前記硬貨収納繰出部は、硬貨を収納する硬貨収納部、およびこの硬貨収納部の下部から硬貨を繰り出す硬貨繰出部を備えているものである。
【0012】
請求項4記載の硬貨処理装置は、請求項1ないし3いずれか記載の硬貨処理装置において、前記包装部および前記棒金収納送出部の前部域に配置され、前記包装部で形成された棒金を前記棒金収納送出部に搬送する棒金搬送部を具備しているものである。
【0013】
請求項5記載の硬貨処理装置は、請求項1ないし4いずれか記載の硬貨処理装置において、前記機体内の上部域に配置され、前記機体外から硬貨を受け入れて識別する硬貨受入処理部と、この硬貨受入処理部の下部域でかつ前記硬貨収納繰出部の上部域に配置され、前記硬貨受入処理部で識別された硬貨を一時保留し、一時保留した硬貨の収納時に前記硬貨収納繰出部に放出する一時保留部とを具備しているものである。
【0014】
請求項6記載の硬貨処理装置は、請求項1ないし5いずれか記載の硬貨処理装置において、前記包装部は、前記硬貨収納繰出部から繰り出された硬貨を受け入れるとともに受け入れた硬貨を1枚ずつ繰り出す包装用回転円盤と、この包装用回転円盤から1枚ずつ繰り出される硬貨を搬送する包装用硬貨通路と、この包装用硬貨通路で搬送してくる硬貨を上方へ向けて順次重積させる重積部と、この重積部に所定枚数重積した硬貨を包装して棒金を形成する包装機構とを備えているものである。
【0015】
請求項7記載の硬貨処理装置によれば、請求項6記載の硬貨処理装置の効果に加えて、前記包装部の前記包装用回転円盤が前記硬貨収納繰出部の下部域に配置され、前記重積部および前記包装機構が棒金収納送出部の下部域に配置されているものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の硬貨処理装置によれば、機体内の下部域に包装部を配置し、この包装部の上部域に硬貨収納繰出部および棒金収納送出部を配置したため、このレイアウトによって機体の幅方向寸法を小さくでき、さらに、硬貨収納繰出部内の硬貨を上方へ搬送して包装部に送り込む経路が不要になり、機体の幅方向寸法を小さくするのに寄与できる。
【0017】
請求項2記載の硬貨処理装置によれば、請求項1記載の硬貨処理装置の効果に加えて、硬貨収納繰出部が機体の奥行き方向に沿って金種別に並んで配置され、棒金収納送出部が機体の奥行き方向に沿って複数の棒金を並べて収納するため、これら硬貨収納繰出部と棒金収納送出部とを機体の幅方向に並べて配置しても、機体の幅方向寸法を小さくできる。
【0018】
請求項3記載の硬貨処理装置によれば、請求項1または2記載の硬貨処理装置の効果に加えて、硬貨収納繰出部では、硬貨を収納する硬貨収納部の下部から硬貨を繰り出し、下方の包装部に送り込むため、重力の方向に硬貨を処理でき、処理速度を向上できる。
【0019】
請求項4記載の硬貨処理装置によれば、請求項1ないし3いずれか記載の硬貨処理装置の効果に加えて、包装部および棒金収納送出部の前部域に配置された棒金搬送部により、包装部で形成された棒金を棒金収納送出部に搬送できるため、包装部で形成された棒金を、例えば横方向に搬送する場合に比べて、迅速に棒金収納送出部に収納させることができ、処理速度を向上できる。
【0020】
請求項5記載の硬貨処理装置によれば、請求項1ないし4いずれか記載の硬貨処理装置の効果に加えて、機体内の上部域に硬貨受入処理部を配置し、硬貨受入処理部の下部域でかつ硬貨収納繰出部の上部域に一時保留部を配置したため、このレイアウトにより硬貨受入部、一時保留部、硬貨収納繰出部および包装部が縦方向に並び、機体の幅方向寸法を小さくできる。
【0021】
請求項6記載の硬貨処理装置によれば、請求項1ないし5いずれか記載の硬貨処理装置の効果に加えて、包装部の重積部で、硬貨を上方へ向けて順次重積するとともに、所定枚数重積した硬貨を包装するため、硬貨を下方へ向けて順次重積するとともに所定枚数重積した硬貨をさらに下方へ移動させてから包装する場合に比べて、上下方向に必要なスペースを少なくでき、小型化できる。
【0022】
請求項7記載の硬貨処理装置によれば、請求項6記載の硬貨処理装置の効果に加えて、包装部の包装用回転円盤を硬貨収納繰出部の下部域に配置し、重積部および包装機構を棒金収納送出部の下部域に配置するため、硬貨収納繰出部の硬貨を包装用回転円盤へ送り込む硬貨の経路、および重積部および包装機構で作成した棒金を棒金収納送出部へ収納させる経路をそれぞれ簡単にでき、小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は硬貨処理装置の内部構造を示す正面図、図2は硬貨処理装置の内部構造を示す平面図、図3は硬貨処理装置の内部構造を示す左側面図、図4は硬貨処理装置の内部構造を示す右側面図である。
【0025】
これら図1ないし図4に示すように、硬貨処理装置は、機体11を有し、この機体11内には、前面(図1)から見て、上部左側域に機体11外から硬貨を受け入れて識別および分類する硬貨受入処理部12が配置され、この硬貨受入処理部12の下部域に硬貨受入処理部12で金種別に分類された硬貨を一時保留する一時保留部13が配置され、この一時保留部13の下部域に一時保留部13からの硬貨を収納したり繰り出す硬貨収納繰出部14と一時保留部13からの硬貨を返却する返却箱15とが配置され、これら硬貨収納繰出部14および返却箱15の下部域に所定枚数重積した硬貨を包装して包装硬貨である棒金16を形成する包装部17が配置され、包装部17の上部右側域に棒金16を収納したり送り出す棒金収納送出部18が配置され、これら包装部17および棒金収納送出部18の前部域に棒金16を搬送する棒金搬送部19が配置されている。したがって、機体11内の下部域に包装部17が配置され、この包装部17の上部域に硬貨収納繰出部14と棒金収納送出部18とが機体11の左右方向である幅方向に並んで配置され、さらに、硬貨収納繰出部14の上部域に一時保留部13および硬貨受入処理部12が順に配置されている。
【0026】
機体11の前部側には、一時保留部13の前部域にリジェクト硬貨を返却するための返却口20が配置され、包装部17の前部域に出金箱21が着脱可能に配置され、包装部17の下部域に硬貨を回収するための回収部22が着脱可能に配置され、棒金収納送出部18の前部域に棒金16を出金する棒金出金口23および棒金16を一括収納する棒金一括収納部24が着脱可能に配置され、包装部17の前部域に棒金16を機外に投出する棒金投出口25が配置されている。
【0027】
そして、硬貨受入処理部12は、機体11の上面に形成された投入口31から投入されるばら状態の硬貨を受け入れる供給円盤32、この供給円盤32から適量ずつ硬貨が供給される回転円盤33、およびこの回転円盤33から1枚ずつ繰り出す硬貨を搬送する硬貨通路34を備えている。
【0028】
硬貨通路34は、回転円盤33から機体11の幅方向に沿って延設された識別通路部35、およびこの識別通路部35から機体11の奥行き方向へ向けて延設された分類通路部36を有し、通路上には硬貨を搬送する図示しない搬送ベルトが配置されている。
【0029】
識別通路部35には、搬送する硬貨の金種、真偽、正損等を識別する識別部37が配置されている。
【0030】
分類通路部36には、上流側から下流側にかけて、リジェクト硬貨分岐部38、任意硬貨分岐部39、金種別硬貨分岐部40が順に配置されている。金種別硬貨分岐部40は、5円硬貨分岐部40a、1円硬貨分岐部40b、50円硬貨分岐部40c、100円硬貨分岐部40d、10円硬貨分岐部40e、および500円硬貨分岐部40fを有している。各分岐部38〜40には、該当する硬貨を落とし込ませて分岐する分岐孔41がそれぞれ形成されている。リジェクト硬貨分岐部38、任意硬貨分岐部39および5円硬貨分岐部40aは、ソレノイド等の電気的駆動手段により強制的に硬貨を分岐孔41へ落とし込ませることができる。各金種別分岐部40b〜40fは、小径硬貨から大径硬貨の順に径選別して該当する分岐孔41へ落とし込ませることができる。
【0031】
リジェクト硬貨分岐部38の下部には、リジェクト硬貨を返却口20に導く返却シュート42が配置されている。
【0032】
任意硬貨分岐部39の下部にはシュート43が配置され、このシュート43の下部に袋取り用シュート44とダイレクト包装用シュート45が配置されているとともに、シュート43からの硬貨を袋取り用シュート44またはダイレクト包装用シュート45のいずれか一方に選択的に導く切換板46が配置されている。袋取り用シュート44は、機体11の前面に配置される図示しない袋装着部に装着される袋へ硬貨を導いて収納させる。
【0033】
また、一時保留部13は、機体11の奥行き方向に沿って金種別に並んで配置され、金種別硬貨分岐部40で金種別に分岐される硬貨を受け入れて金種別に一時保留可能とする。一時保留部13は、金種別の保留筒49、およびこの保留筒49の底面を一括して開閉する底部材50を有している。これら保留筒49および底部材50が、それぞれ移動機構51,52によって機体11の幅方向に独立して移動可能に構成されている。
【0034】
図1に示すように、保留筒49が分類通路部36の金種別硬貨分岐部40の下方に位置するとともに保留筒49の底面を底部材50が閉塞した状態で、硬貨を一時保留可能とする。一時保留した硬貨を収納する場合には、保留筒49のみが左方向の硬貨収納繰出部14の上部域に移動し、保留筒49の底面を開放して保留筒49内の硬貨を硬貨収納繰出部14へ放出する。一方、一時保留した硬貨を返却する場合には、底部材50のみが返却箱15の上部域から左方向に移動し、保留筒49の底面を開放して保留筒49内の硬貨を返却箱15に放出する。
【0035】
また、硬貨収納繰出部14は、機体11の奥行き方向に金種別に並んで配置されており、一時保留部13から放出される硬貨を受け入れて収納する金種別の硬貨収納部56、およびこれら硬貨収納部56の下部から硬貨を1枚ずつ繰り出す硬貨繰出部57を有している。
【0036】
硬貨繰出部57では、例えば、硬貨が1枚ずつ入り込む複数の繰出孔を有する繰出用回転円盤58を用い、この繰出用回転円盤58の回転により、繰出孔に入り込んだ硬貨を1枚ずつ繰出用回転円盤58の周辺部から側方へ繰り出すように構成されている。
【0037】
硬貨収納繰出部14の側部には、硬貨収納繰出部14の下部から繰り出される硬貨を受け入れるコンベヤ59が機体11の奥行き方向に沿って配置されている。このコンベヤ59の中央域にはコンベヤ上から硬貨を払い出す払出機構60が配置され、コンベヤ59の前端側には硬貨を1層1列状態にする図示しない逆転ローラおよび1層1列状態となった硬貨を識別する出金識別部61が配置されている。そして、硬貨の包装時には、コンベヤ59上の中央域より前側域に繰り出された硬貨をコンベヤ59の中央域への搬送と払出機構60によってコンベヤ59上から払い出し、またはコンベヤ59上の中央域より後側域に繰り出された硬貨をコンベヤ59の中央域への搬送と払出機構60とによってコンベヤ59上から払い出し、コンベヤ59上から払い出した硬貨をシュート62で包装部17へ送り込む。
【0038】
また、硬貨の出金時または回収時には、コンベヤ59上に受け入れた硬貨を前方へ搬送し、出金識別部61による識別後に、シュート63で出金箱21に送り込む。
【0039】
また、返却箱15は、機体11の奥行き方向に長く、機体11の前面から着脱可能に配置されている。
【0040】
また、包装部17には、シュート62で導かれる硬貨収納繰出部14から繰り出された硬貨またはダイレクト包装用シュート45で導かれる任意硬貨分岐部39で分岐されたダイレクト包装用の硬貨を受け入れる包装用回転円盤65、およびこの包装用回転円盤65の回転によって1枚ずつ繰り出される硬貨を受け入れて搬送する包装用硬貨通路66が配設されている。包装用硬貨通路66には硬貨を搬送する搬送ベルト67が配置されている。包装用硬貨通路66は、金種設定によって通路幅が包装する金種に対応して調整設定され、包装金種より大径金種の硬貨が包装用硬貨通路66に進入するのを規制し、包装金種より小径金種の硬貨を包装用硬貨通路66の通路面に設けられた図示しない排除口から排除する。排除口から排除した硬貨はシュート68を通じて回収部22に回収する。
【0041】
包装用硬貨通路66には、搬送する硬貨の枚数を検知したり硬貨の通過を検知するセンサ、センサの検知に基づいて包装用硬貨通路66から下流域へ搬送する所定の重積枚数目の硬貨の次の硬貨を停止させるストッパ等が配設されている。
【0042】
包装用硬貨通路66の下流域には、包装用硬貨通路66から送り込まれる硬貨を下部側から上方へ順次重積していって所定枚数の硬貨を重積する重積部69が配設されている。この重積部69は、包装機構70の3本の包装ローラ71の間でかつ包装用硬貨通路66の通路面と同一面に配置された図示しない重積底板に対して略垂直に形成されている。重積部69の下部には重積底板から上方に突出する図示しない重積ローラが配設され、この重積ローラの回転によって、包装用硬貨通路66から送り込まれる硬貨を重積部69の下部に取り込むとともにこの硬貨の送込み方向の後端を包装用硬貨通路66の通路面および重積底板の上面より上昇させ、続いて送り込まれる硬貨の送込み方向の先端を重積部69の下部に位置する硬貨の下側に取り込んで重積する。
【0043】
包装機構70では、所定枚数重積した重積硬貨を通路底板から上方に突出する図示しない支持ロッドで所定の包装位置まで押し上げ、3本の包装ローラ71で重積硬貨の周面を挟持して回転させ、重積硬貨の周面に図示しない包装紙を巻き込むことにより、この包装紙を重積硬貨の周囲に巻き付けるとともに包装紙の端部を重積硬貨の端面にかしめ、棒金16を形成する。
【0044】
したがって、包装部17は、硬貨を重積する重積位置と、重積硬貨を包装する包装位置とが同一位置に配置されている。
【0045】
通路底板、重積ローラおよび支持ロッド等は、重積部69の下方位置から退避し、形成した棒金16を下方へ放出可能としている。
【0046】
重積部69の下方には、包装部17から長手方向(重積方向)が上下方向に向く状態で放出される棒金16を受け入れてその長手方向が機体11の前面に平行でかつ水平となる状態に変換しつつ前方へ向けて転がるように導く棒金シュート72が配設されている。この棒金シュート72の先端側には、横搬送部73が配置されているとともに、この横搬送部73から前方の棒金搬送部19への棒金16の放出と放出規制とを切り換える切換部材74が配設されている。
【0047】
横搬送部73は、機体11の側部に別の棒金収納装置を設置する場合に、その棒金収納装置との間で棒金16を搬送するのに用いられる。
【0048】
また、棒金収納送出部18には、複数の棒金16を収納する金種別で複数の棒金トレイ77が、前方へ下降傾斜した状態で、上下方向に複数段配置されている。この棒金トレイ77は、機体11の奥行き方向に長く、棒金16の長手方向が機体11の前面に平行でかつ水平となる状態で、複数の棒金16を機体の奥行き方向に並べて収納するとともに、棒金トレイ77の傾斜によって収納した棒金16を前方に寄せて整列状態に収納する。各棒金トレイ77は、それぞれ図示しない棒金トレイ駆動手段により、棒金トレイ77の前端部が棒金搬送部19に前進する前進位置とこの前進位置から後方へ後退した後退位置との間で、傾斜方向に沿って移動可能としている。
【0049】
複数の棒金トレイ77の前部域で棒金搬送部19との間には、各棒金トレイ77に対応して複数のストッパ部78を設けたストッパ79が上下方向に移動可能に配置されている。このストッパ79は、下降位置において、前進する棒金トレイ77の最前部の棒金16にストッパ部78が接触し、上昇位置において、前進する棒金トレイ77の棒金16にストッパ部78が接触しない。
【0050】
また、棒金搬送部19は、長手方向が機体11の前面に平行でかつ水平となる状態で棒金16を搬送する棒金搬送ベルト82を有し、この棒金搬送ベルト82が上下のローラ83にわたって上下方向に回動可能に張設されている。この棒金搬送ベルト82の周面には、棒金16を支持して搬送する複数の棒金支持部84が突設されている。また、棒金搬送ベルト82の周囲には、棒金搬送ベルト82との間で棒金16をガイドするガイド体85が配置されている。
【0051】
ここで、棒金トレイ77、ストッパ79および棒金搬送部19による、棒金トレイ77への棒金16の収納、および棒金トレイ77からの棒金16の送り出しについて説明する。
【0052】
棒金トレイ77への棒金16の収納時には、包装部17で包装されて前方へ放出される棒金16を棒金搬送ベルト82の棒金支持部84に支持して上方へ搬送し、その棒金16を収納する棒金トレイ77の位置より上方に一旦通過させた後、棒金16を収納する金種の棒金トレイ77を前進させ、前進する棒金トレイ77の最前部の棒金16を下降位置にあるストッパ79のストッパ部78で押さえ、棒金トレイ77の最前部に棒金16を収納するためのスペースを形成した後、棒金搬送ベルト82で棒金16を下降させて棒金トレイ77の最前部のスペースに受け渡し、棒金トレイ77を後退させる。
【0053】
棒金トレイ77からの棒金16の送出時には、棒金トレイ77の棒金16に対してストッパ79のストッパ部78が接触しないように上方位置へ退避させた状態で、棒金トレイ77を前進させ、棒金トレイ77の最前部の棒金16を棒金搬送ベルト82の棒金支持部84ですくい上げ、棒金トレイ77を後退させる。
【0054】
また、棒金搬送ベルト82の前部域には、棒金出金口23、棒金一括収納部24および棒金投出口25が配置され、各位置に対応して、棒金搬送ベルト82で搬送する棒金16を選択的に棒金出金口23、棒金一括収納部24および棒金投出口25へ送り込む切換板86,87,88がそれぞれ配置されている。
【0055】
また、出金箱21は、機体11の前面から着脱可能に配置され、底板91が開閉可能に構成されている。出金箱21の装着場所の下部域には、出金箱21の底板91の開放によって放出される硬貨を回収部22に導く回収シュート92が配設されている。
【0056】
また、回収部22は、機体11に対して着脱可能に設けられている。
【0057】
回収部22には返却箱95が並設され、硬貨収納繰出部14の硬貨の包装時に包装部17からシュート68を通じて排除された硬貨は切換板96によって回収部22に回収し、ダイレクト包装時に包装部17からシュート68を通じて排除された硬貨を切換板96によって返却箱に収納する。この返却箱95は、機体11の前面から着脱可能とする。
【0058】
次に、硬貨処理装置の作用を説明する。
【0059】
図5は硬貨処理装置の硬貨の流れを示す説明図である。
【0060】
まず、硬貨の入金処理時には、投入口31に投入された硬貨を回転円盤から1枚ずつ硬貨通路34に繰り出し、硬貨通路34で搬送する硬貨を識別部37によって識別する。
【0061】
識別の結果、リジェクト硬貨は、リジェクト硬貨分岐部38で分岐し、返却シュート42で返却口20へ送り込む。正常な硬貨は、金種別硬貨分岐部40で金種別に分岐し、一時保留部13に金種別に一時保留する。
【0062】
一時保留後の収納指令により、一時保留部13に一時保留した硬貨を硬貨収納繰出部14に金種別に収納する。
【0063】
一時保留後の返却指令により、一時保留部13に一時保留した硬貨を返却箱15に送り込み、返却箱15を機体11から取り外すことで、返却箱15内の返却硬貨を取り出せる。
【0064】
次に、硬貨の出金処理時には、硬貨収納繰出部14から硬貨をコンベヤ59上に繰り出し、コンベヤ59で搬送して出金識別部61で識別し、出金箱21へ送り込む。このとき、出金箱21の底板91は閉じており、送り込まれる硬貨を出金箱21に保留する。
【0065】
出金識別部61で出金箱21に送り込んだ出金分の硬貨が全て正常と識別されれば、出金箱21のロックを解除し、出金箱21を機体11から取り外すことで、出金箱21内の出金硬貨を取り出せる。
【0066】
出金識別部61で例えば異金種などの異常硬貨が識別されれば、出金箱21の底板91を開放し、出金箱21に送り込まれた硬貨およびコンベヤ59上の硬貨を回収部22に回収する。その後、硬貨収納繰出部14から出金分の硬貨を再び繰り出し、出金処理を再度行う。
【0067】
次に、投入する硬貨を入金せずに計数して取り出す計数時には、投入口31に投入された硬貨を回転円盤から1枚ずつ硬貨通路34に繰り出し、硬貨通路34で搬送する硬貨を識別部37によって識別し、硬貨通路34の任意硬貨分岐部39で分岐し、袋取り用シュート44から機体11の前面に配置される図示しない袋装着部に装着される袋へ硬貨を導いて収納させる。
【0068】
次に、硬貨収納繰出部14の硬貨を回収する回収処理時には、出金箱21の底板91を開放し、硬貨収納繰出部14から硬貨をコンベヤ59上に繰り出し、コンベヤ59、出金箱21および回収シュート92を通じて、回収部22へ送り込む。
【0069】
次に、硬貨収納繰出部14の硬貨を包装する包装処理時には、硬貨収納繰出部14から硬貨をコンベヤ59上に繰り出し、このコンベヤ59上の硬貨を包装部17へ送り込み、包装部17で棒金16を作成する。包装部17で作成した棒金16を棒金搬送部19の棒金搬送ベルト82に受け渡し、棒金搬送ベルト82で棒金を上方に搬送して棒金収納送出部18の該当金種の棒金トレイ77に収納する。
【0070】
次に、棒金収納送出部18に収納されている棒金16の出金時あるいは回収時には、棒金搬送ベルト82で必要な棒金トレイ77から棒金16を取り出し、棒金出金口23または棒金一括収納部24に送り込む。
【0071】
次に、投入する硬貨を入金せずに包装して取り出すダイレクト包装時には、投入口31に投入された硬貨を回転円盤から1枚ずつ硬貨通路34に繰り出し、硬貨通路34で搬送する硬貨を識別部37によって識別し、硬貨通路34の任意硬貨分岐部39で分岐し、ダイレクト包装用シュート45を通じて包装部17へ送り込み、包装部17で棒金16を作成する。包装部17で作成した棒金16を棒金搬送部19の棒金搬送ベルト82に受け渡し、棒金搬送ベルト82で棒金16を搬送して棒金投出口25から機外に投出する。
【0072】
このように構成された硬貨処理装置は、機体11内の下部域に包装部17を配置し、この包装部17の上部域に硬貨収納繰出部14および棒金収納送出部18を配置したため、このレイアウトによって機体11の幅方向寸法を小さくでき、さらに、硬貨収納繰出部14内の硬貨を上方へ搬送して包装部17に送り込む経路が不要になり、機体11の幅方向寸法を小さくするのに寄与できる。
【0073】
また、硬貨収納繰出部14が機体11の奥行き方向に沿って金種別に並んで配置され、棒金収納送出部18が機体11の奥行き方向に沿って複数の棒金16を並べて収納するため、これら硬貨収納繰出部14と棒金収納送出部18とを機体11の幅方向に並べて配置しても、機体11の幅方向寸法を小さくできる。
【0074】
また、硬貨収納繰出部14では、硬貨を収納する硬貨収納部56の下部から硬貨を繰り出し、下方の包装部17に送り込むため、重力の方向に硬貨を処理でき、処理速度を向上できる。
【0075】
また、包装部17および棒金収納送出部18の前部域に配置された棒金搬送部19により、包装部17で形成された棒金16を棒金収納送出部18に搬送できるため、包装部17で形成された棒金16を、例えば横方向に搬送する場合に比べて、迅速に棒金収納送出部18に収納させることができ、処理速度を向上できる。
【0076】
また、機体11内の上部域に硬貨受入処理部12を配置し、硬貨受入処理部12の下部域でかつ硬貨収納繰出部14の上部域に一時保留部13を配置したため、このレイアウトにより硬貨受入部12、一時保留部13、硬貨収納繰出部14および包装部17が縦方向に並び、機体11の幅方向寸法を小さくできる。
【0077】
また、包装部17の重積部69で、硬貨を上方へ向けて順次重積するとともに、所定枚数重積した硬貨を包装するため、硬貨を下方へ向けて順次重積するとともに所定枚数重積した硬貨をさらに下方へ移動させてから包装する場合に比べて、上下方向に必要なスペースを少なくでき、小型化できる。
【0078】
また、包装部17の包装用回転円盤65を硬貨収納繰出部14の下部域に配置し、重積部69および包装機構70を棒金収納送出部18の下部域に配置するため、硬貨収納繰出部14の硬貨を包装用回転円盤65へ送り込む経路、および重積部69および包装機構70で作成した棒金16を棒金収納送出部18へ収納させる経路をそれぞれ簡単にでき、小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施の形態を示す硬貨処理装置の内部構造を示す正面図である。
【図2】同上硬貨処理装置の内部構造を示す平面図である。
【図3】同上硬貨処理装置の内部構造を示す左側面図である。
【図4】同上硬貨処理装置の内部構造を示す右側面図である。
【図5】同上硬貨処理装置の硬貨の流れを示す説明図である。
【符号の説明】
【0080】
11 機体
12 硬貨受入処理部
13 一時保留部
14 硬貨収納繰出部
16 棒金
17 包装部
18 棒金収納送出部
19 棒金搬送部
56 硬貨収納部
57 硬貨繰出部
65 包装用回転円盤
66 包装用硬貨通路
69 重積部
70 包装機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
この機体内の下部域に配置され、所定枚数重積した硬貨を包装して棒金を形成する包装部と、
この包装部の上部域に配置され、前記機体内に受け入れた硬貨を金種別に収納し、収納した硬貨を前記包装部に繰出可能とする硬貨収納繰出部と、
前記包装部の上部域に配置され、前記包装部で形成された棒金を収納し、収納した棒金を送出可能とする棒金収納送出部と
を具備していることを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記硬貨収納繰出部は、前記機体の奥行き方向に沿って金種別に並んで配置され、
前記棒金収納送出部は、前記機体の奥行き方向に沿って複数の棒金を並べて収納し、
これら硬貨収納繰出部と棒金収納送出部とが前記機体の幅方向に並んで配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記硬貨収納繰出部は、硬貨を収納する硬貨収納部、およびこの硬貨収納部の下部から硬貨を繰り出す硬貨繰出部を備えている
ことを特徴とする請求項1または2記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記包装部および前記棒金収納送出部の前部域に配置され、前記包装部で形成された棒金を前記棒金収納送出部に搬送する棒金搬送部を具備している
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記機体内の上部域に配置され、前記機体外から硬貨を受け入れて識別する硬貨受入処理部と、
この硬貨受入処理部の下部域でかつ前記硬貨収納繰出部の上部域に配置され、前記硬貨受入処理部で識別された硬貨を一時保留し、一時保留した硬貨の収納時に前記硬貨収納繰出部に放出する一時保留部とを具備している
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記包装部は、
前記硬貨収納繰出部から繰り出された硬貨を受け入れるとともに受け入れた硬貨を1枚ずつ繰り出す包装用回転円盤と、
この包装用回転円盤から1枚ずつ繰り出される硬貨を搬送する包装用硬貨通路と、
この包装用硬貨通路で搬送してくる硬貨を上方へ向けて順次重積させる重積部と、
この重積部に所定枚数重積した硬貨を包装して棒金を形成する包装機構とを備えている
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記包装部の前記包装用回転円盤が前記硬貨収納繰出部の下部域に配置され、前記重積部および前記包装機構が棒金収納送出部の下部域に配置されている
ことを特徴とする請求項6記載の硬貨処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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