説明

硬貨処理装置

【課題】回転部材のロックが発生しても駆動伝達部品の損傷を防止できることが可能な硬貨処理装置を提供する。
【解決手段】硬貨を収容する硬貨収容部と、前記硬貨収容部内に設けられ、回転することにより前記硬貨を移動させる円形状の回転部材と、前記回転部材を回転させる動力を前記回転部材に伝達する駆動部と、前記回転部材の外周面に形成され、前記駆動部の動力伝達部材と連結して前記動力を受ける動力受け部と、を備えることを特徴とする、硬貨処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨処理装置に関し、より詳細には、硬貨を収容する硬貨収容部内に設けられ、駆動部の動力を受けて回転する回転部材を備える硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硬貨処理装置は、例えば店舗等に設置されたレジスターの硬貨を管理する装置である。この硬貨処理装置は、硬貨を一括して受け入れた後、各硬貨の硬貨認識を行って金種を判別し、判別結果に応じて硬貨を振り分けて出金する。
【0003】
上記の硬貨処理装置は、例えば硬貨の振り分け等を行うために、硬貨を収容する硬貨収容部と、硬貨収容部内に設けられ、回転することにより硬貨を移動させる円形状の回転部材と、を有する。回転部材は、ギア等の駆動伝達部品を介して駆動部からの動力を受けて回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−108100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回転部材は硬貨収容部内に設けられているため、例えば硬貨の移動に伴い回転部材に過大な負荷が作用し、回転中の回転部材がロックする事象が発生することがある。かかる事象の下では、駆動源の動作が停止するまでに、ギアや締結部品等の駆動伝達部品に大きな負荷が作用してしまい、駆動伝達部品が損傷する恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、回転部材のロックが発生しても駆動伝達部品の損傷を防止できることが可能な、新規かつ改良された硬貨処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、硬貨を収容する硬貨収容部と、前記硬貨収容部内に設けられ、回転することにより前記硬貨を移動させる円形状の回転部材と、前記回転部材を回転させる動力を前記回転部材に伝達する駆動部と、前記回転部材の外周面に形成され、前記駆動部の動力伝達部材と連結して前記動力を受ける動力受け部と、を備えることを特徴とする、硬貨処理装置が提供される。
【0008】
かかる硬貨処理装置によれば、回転部材の外周面に形成された動力受け部が、連結した動力伝達部材から動力を直接受けることで、アイドルギアや締結部品等の強度が弱い駆動伝達部品を別途設けることが不要となる。この結果、駆動伝達部品の損傷を防止することができる。
【0009】
また、前記駆動部は、モータと、前記モータの軸に固定された前記動力伝達部材としてのモータギアと、を有し、前記動力受け部は、前記モータギアと噛み合うギア部であることとしても良い。
【0010】
また、前記硬貨収容部の前記モータギアに対向する側面に、前記モータギア部の幅に対応した切り欠き部が形成され、前記ギア部は、前記切り欠き部で前記モータギアと噛み合うこととしても良い。
【0011】
また、前記硬貨は、前記回転部材の上面に集積可能であり、前記硬貨収容部は、前記側面から前記回転部材の前記上面に対向する方向に延びるように形成され、前記ギア部を覆う被覆部を有することとしても良い。
【0012】
また、前記回転部材は、前記硬貨収容部内に水平方向に交差するように斜めに設けられ、前記モータギアは、前記回転部材の鉛直方向の最も高い位置にて前記ギア部と噛み合うこととしても良い。
【0013】
また、前記回転部材及び前記モータギアは、金属製であることとしても良い。
【0014】
また、前記動力受け部は、プーリー部であり、前記駆動部は、モータと、前記モータの軸に固定されたモータプーリーと、前記モータプーリーと前記プーリー部に張架された前記動力伝達部材としてのベルトと、を有することとしても良い。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、回転部材のロックが発生しても駆動伝達部品の損傷を防止できることが可能な硬貨処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態に係る硬貨処理装置を正面から見た概略断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る硬貨処理装置を側面から見た概略断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る金種別出金ホッパの構成図である。
【図4】図3のA−A矢視図である。
【図5】図3の部分Dを拡大した部分拡大図である。
【図6】繰り出しベアリングと繰り出しアームによる硬貨の繰り出す動作を説明するための図である。
【図7】比較例に係る金種別出金ホッパの概略構成図である。
【図8】第2の実施形態に係る金種別出金ホッパの構成図である。
【図9】図8のB−B矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
<1.第1の実施形態>
(1−1.硬貨処理装置の構成)
図1及び図2を参照しながら、第1の実施形態に係る硬貨処理装置1の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る硬貨処理装置1を正面から見た概略断面図である。図2は、第1の実施形態に係る硬貨処理装置1を側面から見た概略断面図である。
【0019】
硬貨処理装置1は、硬貨を一括して受け入れた後、各硬貨の硬貨認識を行って金種を判別する。その後、硬貨処理装置1は、判別結果に応じて金種毎に硬貨を選別し、選別した硬貨を出金する。
【0020】
図1と図2に示すように、硬貨処理装置1は、硬貨受領部10と、硬貨繰り出し部20と、硬貨判別部30と、選別搬送路40と、リジェクト硬貨収容部50と、金種別ホッパ60と、出金ゲート70と、硬貨出金箱80と、硬貨回収庫84と、制御ユニット90とを有する。
【0021】
硬貨受領部10は、投入される硬貨Cを受ける部分である。硬貨受領部10は、硬貨処理装置1の上方、かつ前面側に位置する。硬貨受領部10は、硬貨Cが投入される投入口11を有する。投入口11は、大量の硬貨Cを一括して投入し易いように、広く開口している。硬貨受領部10に投入された硬貨Cは、硬貨繰り出し部20に落下する。
【0022】
硬貨繰り出し部20は、硬貨受領部10の下方に位置し、硬貨受領部10から落下した硬貨Cを一枚ずつ繰り出す。硬貨繰り出し部20内には、例えば回転円盤(不図示)が設けられている。硬貨繰り出し部20内の硬貨Cは、回転円盤が回転する際の遠心力により移動して、一枚ずつ硬貨判別部30へ繰り出される。
【0023】
硬貨判別部30は、硬貨繰り出し部20から繰り出された硬貨Cの真偽、金種等の判別を行う。硬貨判別部30は、硬貨Cを認識するセンサ(不図示)を有し、センサで検出した硬貨Cの特徴に基づいて、硬貨の真偽、金種等を判別する。硬貨判別部30は、判別した硬貨Cを選別搬送路40に搬送する。
【0024】
選別搬送路40は、硬貨判別部30による判別結果に基づいて、硬貨Cを選別して搬送する。選別搬送路40は、搬送路上流側に位置するリジェクト口41と、搬送路下流側に位置する金種別の受入口42a〜42fとを有する。硬貨判別部30において真貨で無いと判別された硬貨Cは、リジェクト口41を通過する。真貨であると判別された硬貨Cは、金種別に受入口42a〜42fを通過する。
【0025】
リジェクト硬貨収容部50は、リジェクト口41を通過した硬貨を収容する。リジェクト口41の下方には、リジェクト口41を通過した硬貨をリジェクト硬貨収容部50へ導くリジェクトシュートが配置(図2に示す矢印Rのルートで配置)されている。リジェクト硬貨収容部50は、硬貨処理装置1の前面に開閉可能な蓋51を有する。蓋51が開いた際に、操作者はリジェクト硬貨収容部50の内部にアクセスできる。
【0026】
金種別ホッパ60は、金種別の受入口42a〜42fを通過した硬貨を収容する。金種別ホッパ60は、本実施形態では6個(金種別ホッパ60a〜60f)設けられている。金種別ホッパ60a〜60fの各々は、図2に示すように、対応する金種別の受入口42a〜42fの下方に一例に配置している。金種別ホッパ60a〜60fと金種別の受入口42a〜42fの間には、金種別の受入口42a〜42fを通過した硬貨を金種別ホッパ60a〜60fへ導く硬貨落下シュートが配置(図2に示す矢印Sのルートで配置)されている。また、金種別ホッパ60a〜60fは、硬貨Cを一枚ずつ出金ゲート70へ繰り出す手段を有する。なお、金種別ホッパ60a〜60fの詳細構成については、後述する。
【0027】
出金ゲート70は、金種別ホッパ60a〜60fの各々に設けられ、金種別ホッパ60a〜60fから繰り出された硬貨Cの出金先を分岐する。出金ゲート70は、図1の矢印Tで示すルートに配置される出金箱ダクト72と、図1の矢印Uで示すルートに配置される硬貨回収庫ダクト74と、を有する。
【0028】
硬貨出金箱80は、出金される硬貨を収納する。硬貨出金箱80は、出金箱ダクト72の先に設けられ、出金箱ダクト72を落下した硬貨を収納する。硬貨出金箱80は、金種別に硬貨を収納する複数の小箱を有しても良い。
【0029】
硬貨回収庫84は、回収される硬貨を収納する。硬貨回収庫84は、硬貨回収庫ダクト74の先に設けられ、硬貨回収庫ダクト74を落下した硬貨を収納する。
【0030】
制御ユニット90は、硬貨処理装置1の全体動作を制御する。制御ユニット90は、上述した各構成要素の動作を制御する制御部と、制御部が実行するプログラムや各種のデータを記憶する記憶部と、を有する。
【0031】
(1−2.金種別出金ホッパの詳細構成)
図3〜図5を参照しながら、金種別出金ホッパ60の詳細構成について説明する。なお、金種別出金ホッパ60a〜60fの構成は同様であるので、以下においては、一の金種別出金ホッパ60a(説明の便宜上、金種別出金ホッパ60と呼ぶ)を例に挙げて説明する。
【0032】
図3は、第1の実施形態に係る金種別出金ホッパ60の構成図である。図4は、図3のA−A矢視図である。図5は、図3の部分Dを拡大した部分拡大図である。
【0033】
図3に示すように、金種別出金ホッパ60は、硬貨収容部の一例であるタンク部210と、回転部材の一例である回転ディスク220と、駆動部230と、搬送ガイド240と、ゲート250と、磁気センサ260とを有する。
【0034】
タンク部210は、金種別の受入口42a〜42fから落下した硬貨Cを収容する部材である。タンク部210は、硬貨Cを所定量(例えば2500枚)収容可能である。タンク部210の下部212には回転ディスク220が設けられており、下部212の内周面は、回転ディスク220が回転可能なように、回転ディスク220の外周に沿った形状に形成されている。タンク部210の下部212は、斜めの形状をしている。これにより、タンク部210内の硬貨Cが、図3に示す部分にたまりやすくなる。
【0035】
回転ディスク220は、タンク部210内に水平方向に交差するように斜めに配置された金属製の円形状の部材である。回転ディスク220の上面220aには、タンク部210に落下した硬貨Cが集積される。回転ディスク220は、回転可能に軸221に支持され、回転することによりタンク部210に収容された硬貨Cを移動させて分離する。
【0036】
回転ディスク220には、硬貨Cの外形に対応した筒状の複数の貫通孔222(図4では4つの貫通孔222)が形成されている。タンク部210内の硬貨Cは、貫通穴222を通過する。上述したように回転ディスク220が斜めに配置されているので、硬貨Cが貫通穴222を通過しやすくなる。貫通孔222の内径は、流通している硬貨Cの外形に応じて設定される。
【0037】
回転ディスク220の裏面かつ貫通孔222の周囲には、搬送用突起223(図5)が形成されている。搬送用突起223は、回転ディスク220が回転する際に硬貨Cを支持する。このため、搬送用突起223に支持された硬貨Cは、回転ディスク220の所定方向(図4に示す反時計方向)の回転に連動して、搬送される。なお、タンク部210の下部212の内周面は、搬送される硬貨Cをガイドする機能を有し、硬貨Cが金種別出金ホッパ60の外に出ないようにしている。
【0038】
回転ディスク220の外周面には、動力受け部の一例であるギア部224(図5)が形成されている。ギア部224は、下部212の側面に形成された切り欠き部214で、駆動部230のモータギア234と噛み合っている。これにより、タンク部210に収容された硬貨Cがギア部224とモータギア234に接触することを抑制でき、硬貨Cがタンク部210の外に出ることを防止できる。
【0039】
ギア部224は、タンク部210の、回転ディスク220の上面220aに対向するように形成された被覆部216(図5)によって覆われている。この被覆部216は、下部212の側面から、上面220aに対向する方向に沿って延びるように形成されている。これにより、回転ディスク220の上面220a上に位置する硬貨Cが、ギア部224に接触することを防止できる。
【0040】
駆動部230は、回転ディスク220を回転させる回転駆動力を回転ディスク220に伝達する。駆動部230は、モータ232と、動力伝達部材の一例であるモータギア234とを有する。モータギア234は、モータ232のDカットされたモータ軸に固定され、軸方向の移動が規制されている。
【0041】
モータギア234は、下部212のモータギア234に対向する側面に形成されモータギア234の幅に対応した切り欠き部214で、回転ディスク220のギア部224と噛み合っている。そして、モータ232は、互いに噛み合ったモータギア234とギア部224を介して回転駆動力を回転ディスク220に伝達し、回転ディスク220を回転させる。
【0042】
モータギア234とギア部224が噛み合っている位置は、図3に示すように、斜めに配置された回転ディスク220の鉛直方向の最も高い位置である。かかる場合に、回転ディスク220で搬送される硬貨Cが自重で鉛直下方に移動するので、硬貨Cは、回転ディスク220の上方に位置するモータギア234に接触することを防止できる。
【0043】
モータギア234は、回転ディスク220と同様に金属製である。これにより、モータギア234の強度が高くなり、仮に回転ディスク220がロックするような事象が発生しても、モータギア234の損傷を抑制できる。また、モータギア234の歯数は、回転ディスク220のギア部224の歯数に比べて十分に小さい。これにより、モータギア234とギア部224の間にアイドルギアを設けなくても、十分に減速させることができる。
【0044】
搬送ガイド240は、回転ディスク220の下方に位置している。搬送ガイド240は、ガイド部223及び回転ディスク220と共に、回転ディスク220が硬貨Cを搬送する際の搬送路242を形成している。搬送路242は、硬貨Cを一枚搬送できるスペースに形成されている。また、前述したようにモータギア234は切り欠き部214でギア部224と噛み合っているため、搬送路242内の硬貨Cがモータギア234に接触することを防止できると共に、搬送路242内の硬貨が、切り欠き部214から金種別出金ホッパ60の外に出ることが無い。また、搬送ガイド240も、回転ディスク220と同様に斜めに配置されているため、搬送路242内の硬貨Cは、自重によりゲート250に向かって滑りやすくなる。
【0045】
ゲート250は、回転ディスク220により搬送される硬貨Cを一枚ずつ送り出すための開口である。ゲート250の搬送方向下流部には、繰り出しベアリング252と、繰り出しアーム254とが設けられている。繰り出しアーム254は、不図示の支点を中心に移動可能である。繰り出しアーム254は、スプリング(不図示)によって繰り出しベアリング252側に引っ張られている。この際、繰り出しアーム254は、移動規制部によって、繰り出しアーム254との距離を一定に保たれている。かかる構成の繰り出しアーム254の移動に伴い、繰り出しベアリング252と繰り出しアーム254の間に挟まれる硬貨Cが、繰り出される。
【0046】
磁気センサ260は、搬送路242において繰り出しベアリング252と繰り出しアーム254によって繰り出された硬貨Cを検出する。磁気センサ260は、搬送ガイド240の外側に設けられており、搬送路242内の硬貨Cに接触することは無い。
【0047】
磁気センサ260の搬送方向下流には、上述した出金ゲート70(図3)が配置されている。出金ゲート70は、出金箱ダクト72又は硬貨回収庫ダクト74に硬貨を振り分ける為のブレード76を分岐点に有する。ブレード76は、不図示の駆動源により、図3に示すポジションEとポジションFの間を回動する。ブレード76がポジションFに位置する際には、磁気センサ260を通過した硬貨Cは、出金箱ダクト72を経由して硬貨出金箱80(図1)に落下する。ブレード76がポジションEに位置する際には、硬貨Cは、硬貨回収庫ダクト74を経由して硬貨回収庫84(図1)に落下する。
【0048】
(1−3.硬貨処理装置の動作)
次に、上述した構成の硬貨処理装置1の動作例について説明する。なお、硬貨処理装置1の動作は、制御ユニット90の制御部によって実行される。すなわち、制御部は、記憶部に記憶されたプログラムを実行することで、下記に説明する動作を実行する。
【0049】
硬貨受領部10に硬貨Cが一括して投入されると、投入された硬貨Cは硬貨繰り出し部20に落下する。硬貨繰り出し部20は、落下した硬貨Cを一枚ずつ硬貨判別部30に繰り出す。硬貨判別部30は、繰り出された硬貨Cの真偽、金種等を判別し、判別した硬貨Cを選別搬送路40に搬送する。
【0050】
硬貨判別部30により真貨で無いと判別された硬貨Cは、選別搬送路40内のリジェクト口41に搬送されて、リジェクト硬貨収容部50に落下する。一方で、真貨であると判別された硬貨Cは、選別搬送路40内の金種別の受入口42a〜42fに搬送されて、金種別ホッパ60a〜60fに落下する。
【0051】
そして、硬貨を出金する場合には、以下の動作が行われる。
まず、制御部により各金種の出金枚数及び出金先(硬貨出金箱80又は硬貨回収庫84)が設定される。出金ゲート70のブレード76は、設定された出金先に対応した位置(ポジションE又はポジションF)に位置する。
【0052】
その後、金種別ホッパ60a〜60fのモータ232が、回転する。これにより、モータ232からモータギア234を介して回転ディスク220のギア部224に駆動が伝達され、回転ディスク220が回転する。回転ディスク220の回転に伴い、タンク部210に収容された硬貨Cは、回転ディスク220の貫通穴222に入り、搬送ガイド240上で搬送用突起223に支持される。そして、回転ディスク220の回転の際に突起223に支持された硬貨Cは、タンク部210の下部212の内周面に沿ってゲート250に搬送される。
【0053】
ゲート250に搬送された硬貨Cは、図6(a)に示すように、繰り出しベアリング252と、繰り出しアーム254と、搬送用突起223とに挟まれる。その後、図6(b)に示すように、繰り出しアーム254が矢印Xの方向に移動すると、硬貨Cは磁気センサ260側に移動を開始する。
【0054】
その後、図6(c)に示すように、硬貨Cの中心が、繰り出しベアリング252と繰り出しアーム254の中心を結んだ仮想線よりも磁気センサ260側に移動すると、繰り出しアーム254は、不図示のスプリングによって矢印Yの方向に移動する。そして、繰り出しアーム254の矢印Yの方向への移動に伴い、硬貨Cは、はじき飛ばされて(繰り出されて)、磁気センサ260を通過する。磁気センサ260が通過する硬貨Cを検出すると、制御部は硬貨が一枚繰り出されたことをカウントする。なお、図6は、繰り出しベアリング252と繰り出しアーム254による硬貨の繰り出す動作を説明するための図である。
【0055】
磁気センサ260を通過した硬貨Cは、ブレード76がポジションFに位置する際には、出金箱ダクト72を経由して硬貨出金箱80に落下して、硬貨出金箱80に収納される。一方で、ブレード76がポジションEに位置する際には、硬貨Cは、硬貨回収庫ダクト74を経由して硬貨回収庫84に落下して、硬貨回収庫84に収納される。そして、所定枚数の硬貨が出金されると、硬貨処理装置1の動作は終了する。
【0056】
(1−4.硬貨処理装置の有効性)
上述したように、第1の実施形態においては、回転ディスク220の外周面に形成されたギア部224(動力受け部に相当)が、モータ232の軸に固定されたモータギア234(動力伝達部に相当)と噛み合うことで、モータ232からの動力が回転ディスク220に伝達されるようになっている。かかる構成によって、回転中の回転ディスク220に過大な負荷が作用して回転ディスク220がロックしても、回転ディスク220とモータ232の間の駆動伝達部品の損傷を防止することが可能となる。
【0057】
以下においては、図7に示す比較例を説明しながら、第1の実施形態に係る硬貨処理装置1の有効性について、詳細に説明する。
【0058】
図7は、比較例に係る金種別出金ホッパ160の概略構成図である。比較例においては、回転ディスク220は、ディスクギア291が締結部品(例えばネジ)292で締結された回転軸293に固定されており、回転軸293の回転に連動して回転する。また、ディスクギア291は、軸295に回転可能に支持されたアイドルギア296と噛み合っている。アイドルギア296は、モータギア234とも噛み合っている。このため、モータ232の動力は、モータギア234、アイドルギア296、及びディスクギア291を介して、回転ディスク220に伝達される。
【0059】
比較例の構成においては、仮に回転中の回転ディスク220がロックすると、回転ディスク220に比べて強度が弱いアイドルギア296、軸295、ディスクギア291、締結部品292等に、モータ232が停止するまで過大な力が作用する。そして、モータ232が停止するまでの時間が長くなると、上記の駆動伝達部品が損傷する恐れがある。
【0060】
これに対して、第1の実施形態においては、回転ディスク220の外周面に形成されたギア部224が直接モータギア234と噛み合う構成であるので、アイドルギアや締結部品等の強度が弱い駆動伝達部品が不要となる。この結果、駆動伝達部品の損傷を防止することができると共に、部品点数を削減することができる。また、比較例では、金種別出金ホッパ160の下方に駆動部を設けるスペースが必要であるが、第1の実施形態では、回転ディスク200の横にモータ232が配置されるので、金種別出金ホッパ160の下方のスペースを有効に活用できる。
【0061】
また、ギア部224及びモータギア234が金属製であるので、ギア部224及びモータギア234の強度が強くなる。このため、仮にディスク220がロックしてギア部224とモータギア234に負荷が作用しても、ギア部224とモータギア234の損傷を防止できる。
【0062】
また、ギア部224とモータギア234がタンク部210の切り欠き部214で噛み合うことにより、タンク部210に収容された硬貨Cがギア部224とモータギア234に接触することを抑制できる。
【0063】
また、ギア部224は、回転ディスク220の上面220aに対向する被覆部216によって覆われているので、上面220aに集積される硬貨Cがギア部224に接触することを防止できる。この結果、硬貨Cが回転中のギア部224に接触してディスク220がロックされることを防止できる。
【0064】
また、ギア部224とモータギア234は、斜めに配置された回転ディスク220の鉛直方向の最も高い位置にて噛み合っている(モータギア234は、回転ディスク220よりも鉛直方向において上方に位置する)。このため、回転ディスク220によって搬送される硬貨Cが、モータギア234に接触することを防止できる。
【0065】
さらに、ディスク220の外周面にギア部224を形成することで、ギア部224の歯数がモータギア234の歯数よりも小さくなるので、アイドルギアを用いなくても減速することができる。
【0066】
<2.第2の実施形態>
図8及び図9を参照しながら、第2の実施形態に係る金種別出金ホッパ60の構成について説明する。図8は、第2の実施形態に係る金種別出金ホッパ60の構成図である。図9は、図8のB−B矢視図である。
【0067】
第1の実施形態ではディスク220の外周面に動力受け部としてギア部224が形成されているが、第2の実施形態では、ギア部224に代えてプーリー部228が形成されている。また、第2の実施形態では、モータギア234に代えてモータプーリー236が設けられ、プーリー部228とモータプーリー236にベルト238(動力伝達部材に相当)が張架されている。なお、上述した構成以外の構成は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0068】
上記の構成において、モータ232(モータプーリー236)の回転に伴いベルト238が回転し、ベルト238の回転に伴いプーリー部228も回転する。そして、プーリー部228の回転に連動して、回転ディスク220も回転する。
【0069】
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、アイドルギアや締結部品等の強度が弱い駆動伝達部品が不要となる。この結果、駆動伝達部品の損傷を防止することができる。また、第2の実施形態のようにベルトを用いることで、モータ232の配置の自由度を高めることができる。
【0070】
なお、モータプーリー236とプーリー部228の間で、かつベルト238の内側に、ベルト238のテンションを調整するプーリーを設けても良い。
【0071】
<3.まとめ>
上述したように、硬貨処理装置1の回転ディスク220の外周面に形成された動力受け部(ギア部224、プーリー部228)が、駆動部230の動力伝達部材(モータギア234、ベルト238)と連結し、回転ディスク220を回転させる動力を受ける。かかる構成によって、アイドルギアや締結部品等の強度が弱い駆動伝達部品が不要となる。この結果、駆動伝達部品の損傷を防止することができる。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0073】
上記では、金種別出金ホッパ60の回転ディスク220の外周面に動力受け部が形成されていることとしたが、これに限定されない。例えば、硬貨繰り出し部20内に設けられた回転円盤の外周面に動力受け部を形成し、当該動力受け部が、回転円盤を駆動する駆動部の動力伝達部材と連結することとしても良い。かかる場合にも、上述した効果が奏されることになる。
【0074】
まあ、上記では、回転ディスク220がタンク部210内に斜めに配置されていることとしたが、これに限定されず、例えば、回転ディスク220がタンク部210内に水平に配置されても良い。かかる場合でも、回転ディスク220の外周面にギア部やプーリー部を設けることで、上述した効果が奏される。
【符号の説明】
【0075】
1 硬貨処理装置
60 金種別ホッパ
210 タンク部
212 下部
214 切り欠き部
216 被覆部
220 回転ディスク
220a 上面
221 軸
222 貫通穴
223 搬送用突起
224 ギア部
228 プーリー部
230 駆動部
232 モータ
234 モータギア
236 モータプーリー
238 ベルト
240 搬送ガイド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨を収容する硬貨収容部と、
前記硬貨収容部内に設けられ、回転することにより前記硬貨を移動させる円形状の回転部材と、
前記回転部材を回転させる動力を前記回転部材に伝達する駆動部と、
前記回転部材の外周面に形成され、前記駆動部の動力伝達部材と連結して前記動力を受ける動力受け部と、
を備えることを特徴とする、硬貨処理装置。
【請求項2】
前記駆動部は、モータと、前記モータの軸に固定された前記動力伝達部材としてのモータギアと、を有し、
前記動力受け部は、前記モータギアと噛み合うギア部であることを特徴とする、請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記硬貨収容部の前記モータギアに対向する側面に、前記モータギア部の幅に対応した切り欠き部が形成され、
前記ギア部は、前記切り欠き部で前記モータギアと噛み合うことを特徴とする、請求項2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記硬貨は、前記回転部材の上面に集積可能であり、
前記硬貨収容部は、前記側面から前記回転部材の前記上面に対向する方向に延びるように形成され、前記ギア部を覆う被覆部を有することを特徴とする、請求項3に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記回転部材は、前記硬貨収容部内に水平方向に交差するように斜めに設けられ、
前記モータギアは、前記回転部材の鉛直方向の最も高い位置にて前記ギア部と噛み合うことを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記回転部材及び前記モータギアは、金属製であることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項に記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記動力受け部は、プーリー部であり、
前記駆動部は、モータと、前記モータの軸に固定されたモータプーリーと、前記モータプーリーと前記プーリー部に張架された前記動力伝達部材としてのベルトと、を有することを特徴とする、請求項1に記載の硬貨処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−69133(P2013−69133A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207392(P2011−207392)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】