説明

硬貨取扱装置

【課題】搬送路上を搬送されている硬貨を撮像する撮像部を備える硬貨取扱装置において、正常な搬送姿勢で硬貨の撮像を行う。
【解決手段】硬貨取扱装置100は、硬貨CNを載せて搬送する搬送ベルト10,20と、搬送ベルト20の上方に設けられ、搬送ベルト20上を搬送されている硬貨CNを撮像するCCDカメラ30と、搬送ベルト20における硬貨CNの搬送方向についてのCCDカメラ30よりも上流側の上方に設けられ、搬送ベルト20上における硬貨CNの搬送姿勢を安定化させるための姿勢安定化機構であって、硬貨CNの少なくとも一部が搬送ベルト20の表面から浮き上がったときに、その硬貨CNと衝突して硬貨CNを搬送ベルト20上に落下させるための硬貨安定板40を有する姿勢安定化機構と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨取扱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現金自動取引装置(ATM;Automated teller machine)や自動販売機等の現金を取り扱う各種機器には、硬貨の取り扱いを行うための硬貨取扱装置が搭載される。そして、硬貨取扱装置には、硬貨の画像を光学的に取得して、この取得した画像と予め記憶されている各種金種の真貨の画像とを比較することによって、硬貨の金種および真贋の判定を行う機能を有するタイプのものがある。このタイプの硬貨取扱装置は、硬貨を載せて搬送する搬送路と、この搬送路の上方に設けられ、搬送路上を搬送されている硬貨を撮像する撮像部(例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等)と、を備えることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−206842号公報
【特許文献2】特開平10−124731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の硬貨取扱装置では、硬貨の搬送中に、硬貨の少なくとも一部が搬送路の表面から浮き上がり、硬貨の搬送姿勢が不安定になる場合がある。例えば、搬送路の一部において、搬送ベルトと搬送ローラとの間に硬貨を挟んで硬貨の搬送を行う場合、搬送ローラからの圧力が硬貨のエッジ部分のみに作用して、搬送ベルトの表面から、硬貨がジャンプしたり、硬貨の一部が浮き上がったりする場合がある。そして、硬貨がジャンプした状態で、撮像部によって硬貨を撮像すると、硬貨の一方の表面の全面が搬送路の表面に接触している正常な搬送姿勢の場合よりも撮像部と硬貨との距離が近くなるので、硬貨が大きく撮像される。また、硬貨の一部が浮き上がった状態で、撮像部によって硬貨を撮像すると、硬貨が歪んで撮像される。そして、これらの場合、硬貨の金種や真贋の判定精度の低下を招く。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、搬送路上を搬送されている硬貨を撮像する撮像部を備える硬貨取扱装置において、正常な搬送姿勢で硬貨の撮像を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
硬貨取扱装置であって、
硬貨を載せて搬送する搬送路と、
前記搬送路の上方に設けられ、前記搬送路上を搬送されている硬貨を撮像する撮像部と、
前記搬送路における前記硬貨の搬送方向についての前記撮像部よりも上流側の上方に設けられ、前記搬送路上における前記硬貨の搬送姿勢を安定化させるための姿勢安定化機構であって、前記硬貨の少なくとも一部が前記搬送路の表面から浮き上がったときに、該硬貨と衝突して、該硬貨の姿勢を、該硬貨の一方の表面が前記搬送路の表面に接触する姿勢に変化させるための部材を有する姿勢安定化機構と、
を備える硬貨取扱装置。
【0008】
適用例1の硬貨取扱装置では、上記姿勢安定化機構によって、硬貨が撮像部によって撮像される前に、搬送路上における硬貨の搬送姿勢を、正常な搬送姿勢、すなわち、硬貨の一方の表面が搬送路の表面に接触する姿勢で安定化させることができる。したがって、正常な搬送姿勢で硬貨の撮像を行うことができる。
【0009】
[適用例2]
適用例1記載の硬貨取扱装置であって、
前記部材は、前記硬貨と衝突する衝突面であって、前記搬送路の表面との距離が、前記搬送路における前記硬貨の搬送方向についての上流から下流に向かうにつれて小さくなるように傾斜して設けられた衝突面を有する、
硬貨取扱装置。
【0010】
適用例2の硬貨取扱装置では、上記衝突面に硬貨が衝突したときに、その硬貨には、鉛直下方向きの反力が作用する。したがって、上記衝突面に衝突した硬貨を速やかに搬送路上に落下させることができる。
【0011】
[適用例3]
適用例1記載の硬貨取扱装置であって、
前記部材は、前記硬貨と衝突する衝突面であって、前記搬送路の表面とほぼ平行に設けられた衝突面を有する、
硬貨取扱装置。
【0012】
適用例3の硬貨取扱装置では、搬送路の表面から硬貨が浮き上がるときの姿勢を制限することができる。
【0013】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれかに記載の硬貨取扱装置であって、
前記部材は、平板である、
硬貨取扱装置。
【0014】
適用例4の硬貨取扱装置によって、姿勢安定化機構を簡素化することができる。
【0015】
[適用例5]
適用例1記載の硬貨取扱装置であって、
前記部材は、前記搬送路の幅方向に亘って設けられた回転軸を有するローラであって、前記回転軸を中心として回転自在に構成されているローラである、
硬貨取扱装置。
【0016】
適用例5の硬貨取扱装置では、硬貨が上記ローラに衝突したときに、上記ローラは、硬貨が衝突したときに作用する力によって、上記回転軸を中心として回転して、上記ローラに作用する力を吸収することができる。そして、硬貨に作用する反力を弱めることができる。したがって、硬貨の搬送姿勢を速やかに安定化させることができる。
【0017】
[適用例6]
適用例1ないし5のいずれかに記載の硬貨取扱装置であって、
前記姿勢安定化機構は、前記硬貨が前記部材に衝突したときに、前記部材に作用する力を吸収するための緩衝部材を有する、
硬貨取扱装置。
【0018】
適用例6の硬貨取扱装置では、硬貨が上記部材に衝突したときに、上記緩衝部材によって、上記部材に作用する力を吸収することができる。そして、硬貨に作用する反力を弱めることができる。したがって、硬貨の搬送姿勢を速やかに安定化させることができる。
【0019】
[適用例7]
適用例1記載の硬貨取扱装置であって、
前記部材は、可撓性を有し、前記搬送路の上方から垂下された垂下部材である、
硬貨取扱装置。
【0020】
適用例7の硬貨取扱装置では、硬貨が上記垂下部材に衝突したときに、上記垂下部材は、硬貨が衝突したときに作用する力によって撓んで、上記垂下部材に作用する力を吸収することができる。そして、硬貨に作用する反力を弱めることができる。したがって、硬貨の搬送姿勢を速やかに安定化させることができる。なお、上記垂下部材は、例えば、布状であってもよいし、紐状であってもよいし、鎖状であってもよい。
【0021】
本発明は、上述した種々の特徴を必ずしも全て備えている必要はなく、その一部を省略したり、適宜、組み合わせたりして構成することができる。また、本発明は、上述の硬貨取扱装置としての構成の他、硬貨取扱装置を備える各種機器(現金自動取引装置、自動販売機等)の発明として構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施例の硬貨取扱装置100の概略構成を示す説明図である。
【図2】硬貨安定板40の機能を示す説明図である。
【図3】硬貨取扱装置100が硬貨安定板40を備えない場合に生じる硬貨CNの撮像時の不具合の一例を示す説明図である。
【図4】第2実施例の硬貨取扱装置100Aの要部を示す説明図である。
【図5】第3実施例の硬貨取扱装置100Bの要部を示す説明図である。
【図6】第4実施例の硬貨取扱装置100Cの要部を示す説明図である。
【図7】第1実施例の硬貨取扱装置100の変形例としての硬貨取扱装置の要部を示す説明図である。
【図8】第3実施例の硬貨取扱装置100Bの変形例としての硬貨取扱装置の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
A.第1実施例:
図1は、本発明の第1実施例の硬貨取扱装置100の概略構成を示す説明図である。図1では、硬貨取扱装置100の要部側面図を示した。この硬貨取扱装置100は、銀行などの金融機関等に設置される現金自動取引装置(ATM;Automated teller machine)等の硬貨を扱う各種機器に搭載される。
【0024】
図示するように、硬貨取扱装置100は、搬送ベルト10,20と、搬送ローラ22と、CCD(Charge Coupled Device)カメラ30と、硬貨安定板40と、を備えている。
【0025】
搬送ベルト10,20は、平ベルトであり、その表面に硬貨CNを載せて駆動することによって、図中に矢印で示した搬送方向に硬貨CNを連続的に搬送する。なお、図1では、硬貨CNの搬送方向を水平方向としているが、硬貨CNの搬送方向を傾斜した方向としてもよい。搬送ローラ22は、搬送ベルト10から搬送ベルト20に硬貨CNが受け渡される時に、搬送ベルト20と搬送ローラ22との間に硬貨CNを挟んで、硬貨CNの搬送方向についての下流側に硬貨CNを送り出すことが可能な位置に配置されている。搬送ベルト20は、[課題を解決するための手段]における搬送部に相当する。
【0026】
CCDカメラ30は、搬送ベルト20の上方に設けられ、搬送ベルト20上を搬送されている硬貨CNを撮像する。CCDカメラ30は、[課題を解決するための手段]における撮像部に相当する。なお、図示および詳細な説明は省略するが、CCDカメラ30によって撮像された硬貨CNの画像は、予めメモリに記憶されている各種金種の真貨の画像と比較されて、硬貨CNの金種および真贋の判定に利用される。
【0027】
硬貨安定板40は、搬送ベルト20における硬貨CNの搬送方向についてのCCDカメラ30よりも上流側であって、搬送ローラ22とCCDカメラ30との間の上方に設けられている。本実施例では、硬貨安定板40は、硬貨取扱装置100に固定されているものとした。硬貨安定板40は、後述するように、硬貨CNの少なくとも一部が搬送ベルト20の表面から浮き上がったときに、硬貨CNと衝突して硬貨CNを搬送ベルト20上に落下させて、搬送ベルト20上における硬貨CNの搬送姿勢を正常な搬送姿勢で安定化させる。ここで、正常な搬送姿勢とは、硬貨CNの一方の表面の全面が搬送ベルト20の表面に接触している姿勢を意味している。なお、本実施例では、硬貨安定板40は、硬貨CNと衝突する衝突面40fと搬送ベルト20の表面とのなす角度θが鋭角となるように設置されている。すなわち、硬貨安定板40は、搬送ベルト20の表面との距離が、搬送ベルト20における硬貨CNの搬送方向についての上流から下流に向かうにつれて小さくなるように傾斜して設けられた衝突面40fを有している。硬貨安定板40は、[課題を解決するための手段]における姿勢安定化機構に相当する。
【0028】
図2は、硬貨安定板40の機能を示す説明図である。硬貨取扱装置100において、搬送ベルト20上を硬貨CNが搬送される様子を時系列的に示した。
【0029】
図2(a)に示したように、搬送ベルト20上において、硬貨CNは、搬送ベルト20と搬送ローラ22との間に挟まれて搬送される。そして、図2(b)に示したように、搬送ローラ22からの圧力が硬貨CNのエッジ部分のみに作用すると、搬送ベルト20の表面から硬貨CNがジャンプしたり、硬貨CNの一部が浮き上がったりする。すると、硬貨CNは、硬貨安定板40の衝突面40fに衝突する。このとき、硬貨CNには、鉛直下方向きの反力が作用する。そして、硬貨CNは、図2(c)に示したように、搬送ベルト20上に速やかに落下し、搬送ベルト20上における硬貨CNの搬送姿勢は、正常な搬送姿勢で安定化する。その後、硬貨CNは、正常な搬送姿勢で、CCDカメラ30によって撮像される。
【0030】
図3は、硬貨取扱装置100が硬貨安定板40を備えない場合に生じる硬貨CNの撮像時の不具合の一例を示す説明図である。図3(a)に示したように、硬貨CNが搬送ベルト20の表面からジャンプすると、硬貨CNの搬送姿勢が正常な搬送姿勢である場合よりもCCDカメラ30と硬貨CNとの距離が近くなる。そして、図3(b)に示したように、搬送ベルト20の表面からジャンプした状態で撮像された硬貨CNの画像Imaは、正常な搬送姿勢で撮像された硬貨CNの画像Imsよりも大きくなる。また、図3(c)に示したように、硬貨CNの一部が搬送ベルト20の表面から浮き上がった状態で、CCDカメラ30によって硬貨CNを撮像すると、図3(d)に示したように、この状態で撮像された硬貨CNの画像Imbは、歪んだ形状となる。そして、これらの場合、硬貨CNの金種や真贋の判定精度の低下を招く。
【0031】
これに対し、以上説明した第1実施例の硬貨取扱装置100によれば、硬貨安定板40によって、硬貨CNがCCDカメラ30によって撮像される前に、搬送ベルト20上における硬貨CNの搬送姿勢を、正常な搬送姿勢で安定化させることができる。したがって、正常な搬送姿勢で硬貨CNの撮像を行うことができる。この結果、硬貨CNの金種や真贋の判定精度を向上させることができる。
【0032】
また、第1実施例の硬貨取扱装置100では、硬貨安定板40は、硬貨CNと衝突する衝突面40fと搬送ベルト20の表面とのなす角度θが鋭角となるように設置されている。換言すれば、硬貨安定板40は、搬送ベルト20の表面との距離が、搬送ベルト20における硬貨CNの搬送方向についての上流から下流に向かうにつれて小さくなるように傾斜して設けられた衝突面40fを有する。このため、硬貨安定板40に衝突した硬貨CNには、鉛直下方向きの反力が作用する。したがって、衝突面40fに衝突した硬貨CNを速やかに搬送ベルト20上に落下させることができる。
【0033】
B.第2実施例:
第2実施例の硬貨取扱装置100Aは、第1実施例の硬貨取扱装置100における硬貨安定板40の代わりに、硬貨安定板40Aを備えている。そして、硬貨安定板40A以外の硬貨取扱装置100Aの構成は、第1実施例の硬貨取扱装置100の構成と同じである。
【0034】
図4は、第2実施例の硬貨取扱装置100Aの要部を示す説明図である。図2と同様に、硬貨取扱装置100Aにおいて、搬送ベルト20上を硬貨CNが搬送される様子を時系列的に示した。第2実施例の硬貨取扱装置100Aでは、硬貨安定板40Aは、硬貨CNと衝突する衝突面40fが、搬送ベルト20の表面とほぼ平行になるように設置されている。ここで、硬貨CNと衝突する衝突面40fが、搬送ベルト20の表面とほぼ平行とは、衝突面40fと搬送ベルト20の表面とのなす角度が、例えば、0±5度の範囲内にあることを意味している。そして、この硬貨安定板40Aにおける衝突面40fの反対側の面には、スプリング42の一端が接続されている。また、このスプリング42の他端は、硬貨取扱装置100Aに固定されている。
【0035】
図4(a)に示したように、搬送ベルト20上において、硬貨CNは、搬送ベルト20と搬送ローラ22との間に挟まれて搬送される。そして、図4(b)に示したように、搬送ローラ22からの圧力が硬貨CNのエッジ部分のみに作用すると、搬送ベルト20の表面から硬貨CNがジャンプしたり、硬貨CNの一部が浮き上がったりする。すると、硬貨CNは、硬貨安定板40Aの衝突面40fに衝突し、硬貨CNの姿勢が制限される。このとき、スプリング42は、弾性変形して硬貨安定板40Aに作用する力を吸収する。このため、硬貨CNに作用する反力は弱まる。スプリング42は、[課題を解決するための手段]における緩衝部材に相当する。そして、硬貨CNは、図4(c)に示したように、搬送ベルト20上に速やかに落下し、搬送ベルト20上における硬貨CNの搬送姿勢は、正常な搬送姿勢で安定化する。スプリング42は、元の形状に戻る。その後、硬貨CNは、正常な搬送姿勢で、CCDカメラ30によって撮像される。
【0036】
以上説明した第2実施例の硬貨取扱装置100Aによれば、硬貨安定板40Aによって、硬貨CNがCCDカメラ30によって撮像される前に、搬送ベルト20上における硬貨CNの搬送姿勢を、正常な搬送姿勢で安定化させることができる。したがって、正常な搬送姿勢で硬貨CNの撮像を行うことができる。この結果、硬貨CNの金種や真贋の判定精度を向上させることができる。
【0037】
また、第2実施例の硬貨取扱装置100Aでは、硬貨安定板40Aは、硬貨CNと衝突する衝突面40fが搬送ベルト20の表面とほぼ平行になるように設置されている。したがって、搬送ベルト20の表面から硬貨CNが浮き上がるときの姿勢を、硬貨安定板40Aによって制限することができる。
【0038】
また、第2実施例の硬貨取扱装置100Aでは、硬貨安定板40Aにスプリング42が接続されているので、硬貨CNが硬貨安定板40Aに衝突したときに、スプリング42によって、硬貨安定板40Aに作用する力を吸収することができる。そして、硬貨CNに作用する反力を弱めることができる。したがって、硬貨CNの搬送姿勢を速やかに安定化させることができる。
【0039】
C.第3実施例:
第3実施例の硬貨取扱装置100Bは、第1実施例の硬貨取扱装置100における硬貨安定板40の代わりに、硬貨押さえローラ40Bを備えている。そして、硬貨押さえローラ40B以外の硬貨取扱装置100Bの構成は、第1実施例の硬貨取扱装置100の構成と同じである。
【0040】
図5は、第3実施例の硬貨取扱装置100Bの要部を示す説明図である。図2と同様に、硬貨取扱装置100Bにおいて、搬送ベルト20上を硬貨CNが搬送される様子を時系列的に示した。第3実施例の硬貨取扱装置100Bにおいて、硬貨押さえローラ40Bは、搬送ベルト20の幅方向に亘って、搬送ベルト20の表面に対して平行に設けられた回転軸を有し、この回転軸を中心として回転自在に構成されている。そして、この硬貨押さえローラ40Bの回転軸の両端部には、一組のスプリング42Bの一端がそれぞれ接続されている。また、これらのスプリング42Bの他端は、それぞれ硬貨取扱装置100Bに固定されている。
【0041】
図5(a)に示したように、搬送ベルト20上において、硬貨CNは、搬送ベルト20と搬送ローラ22との間に挟まれて搬送される。そして、図5(b)に示したように、搬送ローラ22からの圧力が硬貨CNのエッジ部分のみに作用すると、搬送ベルト20の表面から硬貨CNがジャンプしたり、硬貨CNの一部が浮き上がったりする。すると、硬貨CNは、硬貨押さえローラ40Bに衝突する。このとき、硬貨押さえローラ40Bは、硬貨CNが衝突したときに作用する力によって、回転軸を中心として回転し、また、スプリング42Bは、それぞれ弾性変形して、硬貨押さえローラ40Bに作用する力を吸収する。このため、硬貨CNに作用する反力は弱まる。スプリング42Bは、[課題を解決するための手段]における緩衝部材に相当する。そして、硬貨CNは、図5(c)に示したように、搬送ベルト20上に速やかに落下し、搬送ベルト20上における硬貨CNの搬送姿勢は、正常な搬送姿勢で安定化する。スプリング42Bは、それぞれ元の形状に戻る。その後、硬貨CNは、正常な搬送姿勢で、CCDカメラ30によって撮像される。
【0042】
以上説明した第3実施例の硬貨取扱装置100Bによれば、硬貨押さえローラ40Bによって、硬貨CNがCCDカメラ30によって撮像される前に、搬送ベルト20上における硬貨CNの搬送姿勢を、正常な搬送姿勢で安定化させることができる。したがって、正常な搬送姿勢で硬貨CNの撮像を行うことができる。この結果、硬貨CNの金種や真贋の判定精度を向上させることができる。
【0043】
また、第3実施例の硬貨取扱装置100Bでは、硬貨CNが硬貨押さえローラ40Bに衝突したときに、硬貨押さえローラ40Bが、硬貨CNが衝突したときに作用する力によって、回転軸を中心として回転して、硬貨押さえローラ40Bに作用する力を吸収することができる。そして、硬貨CNに作用する反力を弱めることができる。したがって、硬貨CNの搬送姿勢を速やかに安定化させることができる。
【0044】
また、第3実施例の硬貨取扱装置100Bでは、硬貨押さえローラ40Bにスプリング42Bが接続されているので、硬貨CNが硬貨押さえローラ40Bに衝突したときに、スプリング42Bによって、硬貨押さえローラ40Bに作用する力を吸収することができる。そして、硬貨CNに作用する反力を弱めることができる。したがって、硬貨CNの搬送姿勢をさらに速やかに安定化させることができる。
【0045】
D.第4実施例:
第4実施例の硬貨取扱装置100Cは、第1実施例の硬貨取扱装置100における硬貨安定板40の代わりに、垂下部材40Cを備えている。そして、垂下部材40C以外の硬貨取扱装置100Cの構成は、第1実施例の硬貨取扱装置100の構成と同じである。
【0046】
図6は、第4実施例の硬貨取扱装置100Cの要部を示す説明図である。図2と同様に、硬貨取扱装置100Cにおいて、搬送ベルト20上を硬貨CNが搬送される様子を時系列的に示した。第4実施例の硬貨取扱装置100Cでは、垂下部材40Cは、可撓性を有しており、搬送ベルト20の上方から垂下されている。そして、垂下部材40Cの上端部は、硬貨取扱装置100Cに固定されている。本実施例では、垂下部材40Cとして、ビニールシートをカーテン状に設置するものとした。
【0047】
図6(a)に示したように、搬送ベルト20上において、硬貨CNは、搬送ベルト20と搬送ローラ22との間に挟まれて搬送される。そして、図6(b)に示したように、搬送ローラ22からの圧力が硬貨CNのエッジ部分のみに作用すると、搬送ベルト20の表面から硬貨CNがジャンプしたり、硬貨CNの一部が浮き上がったりする。すると、硬貨CNは、垂下部材40Cに衝突する。このとき、垂下部材40Cは、硬貨CNが衝突したときに作用する力によって撓んで、垂下部材40Cに作用する力を吸収する。このため、硬貨CNに作用する反力は弱まる。そして、硬貨CNは、図6(c)に示したように、搬送ベルト20上に速やかに落下し、搬送ベルト20上における硬貨CNの搬送姿勢は、正常な搬送姿勢で安定化する。その後、硬貨CNは、正常な搬送姿勢で、CCDカメラ30によって撮像される。
【0048】
以上説明した第4実施例の硬貨取扱装置100Cによれば、垂下部材40Cによって、硬貨CNがCCDカメラ30によって撮像される前に、搬送ベルト20上における硬貨CNの搬送姿勢を、正常な搬送姿勢で安定化させることができる。したがって、正常な搬送姿勢で硬貨CNの撮像を行うことができる。この結果、硬貨CNの金種や真贋の判定精度を向上させることができる。
【0049】
また、第4実施例の硬貨取扱装置100Cでは、硬貨CNが垂下部材40Cに衝突したときに、垂下部材40Cは、硬貨CNが衝突したときに作用する力によって撓んで、垂下部材40Cに作用する力を吸収することができる。そして、硬貨CNに作用する反力を弱めることができる。したがって、硬貨CNの搬送姿勢を速やかに安定化させることができる。
【0050】
E.変形例:
以上、本発明のいくつかの実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、以下のような変形が可能である。
【0051】
E1.変形例1:
図7は、第1実施例の硬貨取扱装置100の変形例としての硬貨取扱装置の要部を示す説明図である。この変形例の硬貨取扱装置は、第1実施例の硬貨取扱装置100における硬貨安定板40の代わりに、硬貨安定板40Dを備えている。そして、硬貨安定板40D以外の硬貨取扱装置100Aの構成は、第1実施例の硬貨取扱装置100の構成と同じである。
【0052】
この変形例の硬貨取扱装置では、硬貨安定板40Dは、搬送ベルト20の幅方向に亘って、搬送ベルト20の表面に対して平行に設けられた軸40axを揺動軸として、図中に矢印で示したように、揺動可能に設置されている。そして、硬貨安定板40Dは、硬貨CNと衝突する衝突面40f側に設けられたストッパ40s1によって、第1実施例の硬貨取扱装置100における硬貨安定板40と同様に、衝突面40fと搬送ベルト20の表面とのなす角度θが鋭角となるように支持されている。また、硬貨安定板40Dは、ストッパ40s1と、硬貨安定板40Dの衝突面40fの反対側に設けられたストッパ40s2とによって、硬貨CNが衝突面40fに衝突したときの揺動範囲が制限されている。
【0053】
上述した変形例の硬貨取扱装置によっても、第1実施例の硬貨取扱装置100と同様に、硬貨安定板40Dによって、硬貨CNがCCDカメラ30によって撮像される前に、搬送ベルト20上における硬貨CNの搬送姿勢を、正常な搬送姿勢で安定化させることができる。したがって、正常な搬送姿勢で硬貨CNの撮像を行うことができる。
【0054】
また、上述した変形例の硬貨取扱装置では、硬貨CNが硬貨安定板40Dに衝突したときに、硬貨安定板40Dは、硬貨CNが衝突したときに作用する力によって揺動して、硬貨安定板40Dに作用する力を吸収することができる。そして、硬貨CNに作用する反力を弱めることができる。したがって、硬貨CNの搬送姿勢を速やかに安定化させることができる。
【0055】
また、上述した変形例の硬貨取扱装置では、硬貨安定板40Dの揺動範囲が、ストッパ40s1,40s2によって制限されているので、硬貨安定板40Dのバタつきを抑制することができる。
【0056】
E2.変形例2:
図8は、第3実施例の硬貨取扱装置100Bの変形例としての硬貨取扱装置の要部を示す説明図である。この変形例の硬貨取扱装置は、第3実施例の硬貨取扱装置100における硬貨押さえローラ40Bおよびスプリング42Bを2組備えている。そして、2組の硬貨押さえローラ40Bおよびスプリング42Bは、硬貨CNの搬送方向に並べて配置されている。なお、硬貨取扱装置は、3組以上の硬貨押さえローラ40Bおよびスプリング42Bを備えるものとしてもよい。
【0057】
この変形例の硬貨取扱装置によっても、第3実施例の硬貨取扱装置100Bと同様に、硬貨押さえローラ40Bによって、硬貨CNがCCDカメラ30によって撮像される前に、搬送ベルト20上における硬貨CNの搬送姿勢を、正常な搬送姿勢で安定化させることができる。したがって、正常な搬送姿勢で硬貨CNの撮像を行うことができる。
【0058】
E3.変形例3:
上記第2実施例では、硬貨安定板40Aには、スプリング42が接続されているものとしたが、スプリング42を省略するようにしてもよい。
【0059】
また、上記第3実施例では、硬貨押さえローラ40Bにスプリング42Bが接続されているものとしたが、スプリング42Bを省略するようにしてもよい。
【0060】
E4.変形例4:
上記第4実施例では、垂下部材40Cは、カーテン状に設置されたビニールシートであるものとしたが、本発明は、これに限られない。垂下部材40Cは、可撓性を有し、搬送ベルト20の上方から垂下されていればよい。垂下部材40Cは、例えば、布状であってもよいし、紐状であってもよいし、鎖状であってもよい。
【0061】
E5.変形例5:
例えば、上記第2,3実施例では、緩衝部材として、スプリング42,42Bを用いるものとしたが、本発明は、これに限られない。緩衝部材として、例えば、ゴム等からなる弾性部材を用いるようにしてもよい。
【0062】
E6.変形例6:
上記実施例では、姿勢安定化機構として、硬貨安定板40,40A、硬貨押さえローラ40B、垂下部材40C等を用いるものとしたが、本発明は、これに限られない。姿勢安定化機構は、硬貨CNの少なくとも一部が搬送ベルト20の表面から浮き上がったときに、硬貨CNと衝突して、硬貨CNの姿勢を、硬貨CNの一方の表面が搬送ベルト20の表面に接触する姿勢にするための部材を有していればよく、この部材の形状は、適宜、変更可能である。
【0063】
E7.変形例7:
上記実施例では、撮像部として、CCDカメラ30を用いるものとしたが、本発明は、これに限られない。CCDカメラ30の代わりに、他のデバイスを用いたディジタルカメラを用いるようにしてもよい。また、撮像部として、ディジタルカメラの代わりに、ラインセンサを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10,20…搬送ベルト
22…搬送ローラ
30…CCDカメラ
40,40A,40D…硬貨安定板
40f…衝突面
40B…硬貨押さえローラ
40C…垂下部材
40s1,40s2…ストッパ
42,42B…スプリング
100,100A,100B,100C…硬貨取扱装置
CN…硬貨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨取扱装置であって、
硬貨を載せて搬送する搬送路と、
前記搬送路の上方に設けられ、前記搬送路上を搬送されている硬貨を撮像する撮像部と、
前記搬送路における前記硬貨の搬送方向についての前記撮像部よりも上流側の上方に設けられ、前記搬送路上における前記硬貨の搬送姿勢を安定化させるための姿勢安定化機構であって、前記硬貨の少なくとも一部が前記搬送路の表面から浮き上がったときに、該硬貨と衝突して、該硬貨の姿勢を、該硬貨の一方の表面が前記搬送路の表面に接触する姿勢に変化させるための部材を有する姿勢安定化機構と、
を備える硬貨取扱装置。
【請求項2】
請求項1記載の硬貨取扱装置であって、
前記部材は、前記硬貨と衝突する衝突面であって、前記搬送路の表面との距離が、前記搬送路における前記硬貨の搬送方向についての上流から下流に向かうにつれて小さくなるように傾斜して設けられた衝突面を有する、
硬貨取扱装置。
【請求項3】
請求項1記載の硬貨取扱装置であって、
前記部材は、前記硬貨と衝突する衝突面であって、前記搬送路の表面とほぼ平行に設けられた衝突面を有する、
硬貨取扱装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の硬貨取扱装置であって、
前記部材は、平板である、
硬貨取扱装置。
【請求項5】
請求項1記載の硬貨取扱装置であって、
前記部材は、前記搬送路の幅方向に亘って設けられた回転軸を有するローラであって、前記回転軸を中心として回転自在に構成されているローラである、
硬貨取扱装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の硬貨取扱装置であって、
前記姿勢安定化機構は、前記硬貨が前記部材に衝突したときに、前記部材に作用する力を吸収するための緩衝部材を有する、
硬貨取扱装置。
【請求項7】
請求項1記載の硬貨取扱装置であって、
前記部材は、可撓性を有し、前記搬送路の上方から垂下された垂下部材である、
硬貨取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−105317(P2013−105317A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248660(P2011−248660)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】