説明

硬貨繰出装置及び硬貨処理装置

【課題】排出させるべきものを円滑に排出させることができる硬貨繰出装置及び硬貨処理装置を提供する。
【解決手段】硬貨繰出装置1は、鉛直面VFとのなす角θが鋭角となる載置面11fに載置された硬貨Cを移動させて繰り出す回転円盤11と、回転円盤11に外側から嵌合し、回転円盤11と協働して硬貨Cを収納可能な収納空間21sを形成する収納容器21と、収納容器21を、収納空間21sに硬貨Cを保持可能な保持状態となる位置と、収納空間21sの下部から収納物が落下するように回転円盤11の下部と収納容器21の下部との間に隙間21hを形成する落下状態となる位置との間で移動させる収納容器移動機構30とを備える。而して、収納物を排出する際に収納容器21全体を動かすので、隙間21hに逆段差等のつなぎ目が発生せず円滑に排出することができる。硬貨処理装置は、硬貨繰出装置1と、識別装置と、保留部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨繰出装置及び硬貨処理装置に関し、特に排出させるべきものを円滑に排出させることができる硬貨繰出装置及び硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動販売機や金融機器等に内蔵されている硬貨処理装置には、利便性を向上させる観点から、複数枚の硬貨を一括して受け入れた後、次段の計数等のために1枚ずつ繰り出すように構成された硬貨繰出装置を有するものがある。このような硬貨繰出装置では、複数枚の硬貨を一括して受け入れることができるように受け入れ開口が比較的大きく形成されているところ、正規の硬貨以外の変形した硬貨や異物等が混入するおそれがある。このような問題に対処するため、複数枚の硬貨を収容可能なホッパー本体の下端に下部開口が形成され、下部開口を開閉する下部開閉蓋が開閉駆動機構で駆動される構成として、異物等がホッパー機構内で噛込みや閉塞等を引き起こした場合にはホッパー本体の下端に形成された下部開口が開放されて、ホッパー本体内に投入された物が落下排出されるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−57132号公報(段落0011−0014、図5等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような下部開閉蓋が開閉する構成では、部品点数が増加する割に、開閉する機構まわりに生じてしまう段差が、落下排出させるべき物の落下排出を妨げてしまう問題が発生することがあった。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、排出させるべき物を円滑に排出させることができる硬貨繰出装置及び硬貨処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る硬貨繰出装置は、例えば図1に示すように、硬貨Cが載置される載置面11fが形成され、載置面11fに載置された硬貨Cを載置面11f内で移動させて繰り出す回転円盤11であって、回転円盤11の下端から延びる鉛直面VFと載置面11fとのなす角θが鋭角となるように配置された回転円盤11と;回転円盤11に外側から嵌合し、回転円盤11と協働して硬貨Cを収納可能な収納空間21sを形成する、上面21tが開口した収納容器21と;収納容器21を、収納空間21sに硬貨Cを保持可能な保持状態となる位置(例えば図2(A)参照)と、収納空間21sの下部から収納物が落下するように回転円盤11の下部と収納容器21の下部との間に隙間21hを形成する落下状態となる位置(例えば図2(B)参照)と、の間で移動させる収納容器移動機構30(例えば図2(A)参照)とを備える。
【0007】
このように構成すると、収納物(典型的には異物)を排出する際に収納容器全体を動かすので、隙間に逆段差等のつなぎ目が発生せず、円滑に収納物を排出することができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る硬貨繰出装置は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様に係る硬貨繰出装置1において、隙間21hから落下してきた収納物を受ける受け皿41を備え;収納容器21が、落下状態となる位置にあるときに、隙間21hを通過した収納物が受け皿41に導かれる位置及び大きさに隙間21hが形成されるように構成されている。
【0009】
このように構成すると、隙間を最小限の大きさに形成することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る硬貨繰出装置は、例えば図2に示すように、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る硬貨繰出装置1において、収納容器移動機構30が、収納容器21を支持する揺動軸33と、収納容器21を揺動軸33回りに揺動させるアーム32とを有する。
【0011】
このように構成すると、保持状態及び落下状態を安定的に形成することができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る硬貨処理装置は、例えば図3に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る硬貨繰出装置1と;硬貨操出装置1から繰り出された硬貨の種類を識別する識別装置82と;識別装置82で識別された硬貨を種類毎に保留する保留部84とを備える。
【0013】
このように構成すると、円滑に収納物を排出することができる硬貨処理装置となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、収納物を排出する際に収納容器全体を動かすので、隙間に逆段差等のつなぎ目が発生せず、円滑に収納物を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は本発明の第1の実施の形態に係る硬貨繰出装置の斜視図、(B)は部分側面断面図である。
【図2】(A)は本発明の第1の実施の形態に係る硬貨繰出装置の保持状態を示す側面図、(B)は落下状態を示す側面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る硬貨処理装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0017】
まず図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る硬貨繰出装置1を説明する。図1(A)は硬貨繰出装置1の斜視図、図1(B)は硬貨繰出装置1の部分側面断面図である。図1(B)の部分側面断面図では、概略構成を説明する便宜上、図1(A)に示す部材の一部を省略している。硬貨繰出装置1は、一括して受け入れた複数枚の硬貨Cを1枚ずつ繰り出す装置であり、回転円盤としてのディスク11と、収納容器としてのホッパー21と、収納容器移動機構30と、繰り出されずに排出された収納物を受ける受け皿41と、制御装置60とを備えている。
【0018】
ディスク11は、平面形状が円形の板状に形成されており、硬貨Cが載置される載置面11fが一方の面に形成されている。ディスク11は、その中心に、載置面11fに対して直角に延びる回転軸12が挿通されており、回転軸12に支持されている。回転軸12の他端は、載置面11fとは反対側で、回転モータ13に接続されている。ディスク11は、回転モータ13の回転により、回転軸12を中心として載置面11f内で回転することができるように構成されている。ディスク11は、切り替えにより、時計回り及び反時計回りの両方向に回転することができるように構成されている。回転モータ13には、動作の異常を検知する動作検知器61が設けられている。回転モータ13は、ブラケット15に固定されている。このとき、鉛直面VFと載置面11fとのなす角である傾斜角θが鋭角になるように、回転モータ13がブラケット15に固定されている。鉛直面VFは、ディスク11の下端から延びる仮想の面である。傾斜角θは、載置面11fから硬貨Cが落ちることを抑制すると共に硬貨Cの掻き揚げ効率を向上させる観点から、好ましくは20°以上、より好ましくは22°以上とするとよく、水平方向の占有スペースを小さくすると共に、硬貨Cが複数枚重ならないように、載置面11fに載置された硬貨C以外の硬貨Cを下部へ落とすようにする観点から、好ましくは45°以下、より好ましくは30°以下とするとよく、本実施の形態では25°としている。なお、載置面11fは、硬貨Cが載せられる面であるため、上方を向くように、ディスク11が配設されている。
【0019】
ディスク11には、載置面11f側の中心に円形板状の小円板17が設けられている。小円板17の半径は、ディスク11の半径の0.4〜0.5倍程度に形成されている。小円板17は、円周方向に所定の間隔で隆起した隆起部17bが形成されている。小円板17の外周の隆起部17bの厚さは、硬貨Cの厚さよりも小さく形成されている。ディスク11の半径上における小円板17に覆われていない部分(載置面11fが露出している部分)の長さ11SLは、硬貨繰出装置1が取り扱いを予定している硬貨Cのうちの最大径を有する最大径硬貨C(x)の直径と同程度に形成されている。載置面11fには、外縁に、突起11pが複数形成されている。突起11pは、円周方向に所定の間隔で形成されている。ここでの所定の間隔は、最大径硬貨C(x)が、載置面11fに載置されて小円板17の外周に接したときに、隣接する2つの突起11pの間に入り込むことができる大きさに形成されており、本実施の形態では隆起部17bの間隔と同程度の中心角となっている。突起11pの高さは、硬貨繰出装置1が取り扱いを予定している硬貨Cのうちの最小厚さを有する最小厚硬貨C(y)の厚さ以下に形成されている。
【0020】
ホッパー21は、概ねディスク11の下半分を覆うように形成され、ディスク11と協働して硬貨Cを収納する収納空間21sを形成する部材である。ホッパー21の構成を、便宜上、底部21bと、前下部21cと、前斜部21dと、前上部21eと、側部21fとに分けて説明する。底部21bは、ディスク11の外周の概ね1/4の長さで、ディスク11の外周に沿うように湾曲している。底部21bは、ディスク11の下端を中心として、左右均等に延びている。底部21bの奥行きは、概ね、ディスク11の半径×π/4の長さであるが、これに限られない。前下部21cは、鉛直方向の長さが底部21bと同じで、ディスク11の載置面11fに対向するように設けられている。前斜部21dは、前下部21cの上端に接続され、上方に進むにつれて載置面11fから離れるように設けられている。前上部21eは、前斜部21dの上端に接続され、前下部21cと載置面11fとの距離が最も小さくなるときに、概ね垂直上方に延びている。側部21fは、2箇所に存在し、それぞれ、底部21b並びに前斜部21d及び前上部21eに接続され、底部21bと連続してディスク11の外周に沿うように湾曲している。側部21fは、一方につき、ディスク11の外周の概ね1/8の長さに形成されている。ホッパー21は、底部21b、前下部21c、前斜部21d、前上部21e、側部21fが、硬貨繰出装置1の作動中は、相互に相対的に移動することがなく、全体が一体となって1つの部材として機能するように構成されている。このように、ホッパー21自体には駆動機構のような複雑な構成が省略されている。
【0021】
前上部21e及び側部21fの端部として現れるホッパー21の上面21tは、複数の硬貨Cを一括して受け入れることができる大きさに開口している。ディスク11の外周と底部21b及び側部21fとの間には間隙があるが、その間隙は硬貨Cが通過することができない程度に形成されている。底部21b、前下部21c、前斜部21dには、ホッパー21の外側へ鉛直方向に延びる平板状のリブ21rが設けられている。リブ21rは、底部21b、前下部21c、前斜部21dをそれぞれ2分割する位置に設けられている。リブ21rによって分割された底部21bの、時計回りの下流側には、平板状のガイド板21gが設けられている。ガイド板21gは、リブ21rと直交し、底部21bの外側へ延びている。ガイド板21gは、底部21bの奥行き方向においては、本実施の形態では奥行きを2等分する位置に設けられている。リブ21rとガイド板21gとによって区画された底部21bのうち、前下部21cから遠い方の部分には、隙間21hが形成されている。隙間21hは、収納空間21sに収納された収納物のうち、適切な硬貨C以外の収納物(以下「異物」という。)を排出できる大きさに形成されている。底部21bの隙間21hが形成された部分(以下「切欠部位」ということもある)に対して、リブ21rを対称面とした面対称の部分の内側には、底部21bの内壁が存在する部分(以下「内壁部位」ということもある)がある。ホッパー21の外側の前下部21cには、収納空間21s内の硬貨Cや異物の有無を検知する残留検知器62が配設されている。残留検知器62は、典型的には光学センサである。残留検知器62が接する部分の前下部21cには小孔が形成されており、残留検知器62は小孔を介して収納空間21s内の異物等の有無を検知することができるように構成されている。
【0022】
ここで図2をも図1と併せて参照して、収納容器移動機構(以下、単に「移動機構」という。)30を説明する。図2(A)は硬貨繰出装置1の保持状態を示す側面図、図2(B)は硬貨繰出装置1の落下状態を示す側面図である。移動機構30は、ホッパー21を、保持状態となる位置と落下状態となる位置との間で移動させる機構である。保持状態は、収納空間21sに収納されている硬貨Cや異物が、隙間21hから落下せずに収納空間21sに保持される状態である。落下状態は、収納空間21s内の硬貨Cや異物が、隙間21hから落下することができる状態である。
【0023】
移動機構30は、揺動アーム32と、揺動軸33と、駆動板35とを含んで構成されている。揺動アーム32は、細長い平板状の部材であり、その一端が、ホッパー21の側部21fに取り付けられたホッパーアーム22に、揺動軸33を介して取り付けられている。なお、ホッパーアーム22は、平面形状がL字型の平板状部材であり、固定ピン23により、ホッパー21の一方の側部21fに固定されている。ホッパー21と揺動アーム32とは、揺動軸33を中心として、相対的に両方向に回転することができるように接続されている。揺動アーム32の他端(揺動軸33がある端部とは反対側の端部)は、連結ピン37を介して駆動板35に取り付けられている。
【0024】
駆動板35は、ホームベースが変形したような平面形状を持つ板状の部材であり、駆動軸38を介してブラケット15に取り付けられている。駆動板35には、突部35pが形成されている。駆動板35は、ブラケット15に対しては駆動軸38を中心として相対的に両方向に回転することができ、揺動アーム32に対しては連結ピン37を中心として相対的に両方向に回転することができるように接続されている。駆動板35は、切り替えにより、いずれの方向にも回転できるように構成されている。駆動軸38は、駆動板35とは反対側で、駆動モータ39(図1(A)参照)に接続されている。駆動モータ39は、制御装置60と信号ケーブルで電気的に接続されており、制御装置60からの指令信号に応じて回転することができるように構成されている。駆動モータ39の回転により、駆動軸38を介して駆動板35が移動し、さらに駆動板35の移動により揺動アーム32を介してホッパー21が移動することができるように構成されている。駆動モータ39は、ブラケット15の下部に配設されている。
【0025】
ブラケット15には、駆動板35が回動する面上に、保持位置検知器65と、落下位置検知器66とが設けられている。保持位置検知器65は、硬貨繰出装置1が保持状態のときに駆動板35の突部35pに接触する位置に配設されている。落下位置検知器66は、硬貨繰出装置1が落下状態のときに駆動板35の突部35pに接触する位置に配設されている。保持位置検知器65及び落下位置検知器66は、それぞれ制御装置60と信号ケーブルで電気的に接続されており、硬貨繰出装置1の状態を信号として制御装置60に送信することができるように構成されている。
【0026】
再び図1を主に参照して、硬貨繰出装置1の構成の説明を続ける。ディスク11の上部には、載置面11fに載置された正常な硬貨Cを1枚のみ通過させるように、硬貨Cの通路を規制する規制部18が設けられている。規制部18は、平板状の部材で形成されている。規制部18は、載置面11fとの距離が、硬貨繰出装置1が取り扱いを予定している硬貨Cのうちの最大厚さを有する最大厚硬貨C(z)の厚さよりも大きく、最小厚硬貨C(y)を2枚重ねた厚さ未満となるように、載置面11fに平行に設置されている。このような構成により、硬貨繰出装置1で扱われるすべての種類の硬貨Cについて、1枚の通過を許容し、2枚以上の同時通過を許容しないようになっている。
【0027】
規制部18に対して、ディスク11の正回転方向(反時計回り)下流には、規制部18を通過した硬貨Cを硬貨繰出装置1の外に案内する送出レール19が設けられている。送出レール19は、硬貨Cが立った状態で通ることができるようにするための開渠を形成する部材である。送出レール19は、硬貨Cが載って転がる底面19bと、硬貨Cが倒れるのを防ぐ側面19sとを含んで構成されている。側面19sは、載置面11fとの距離が、典型的には規制部18と載置面11fとの距離と同じになるように配設されているが、大きくなるように配設されていてもよい。底面19bは、側面19sの下端から載置面11f側に延びているが、ディスク11の回転を妨げることがないように、載置面11fには接触していない。送出レール19は、底面19bと載置面11fとの距離が、最小厚硬貨C(y)の厚さよりも小さくなるように、配設されている。送出レール19は、本実施の形態では、小円板17に近接した位置から水平に延びるように配設されている。送出レール19は、小円板17側の端部19eが、硬貨Cの小円板17側への落下がないように閉塞されている。送出レール19には、硬貨Cが送出レール19を通過したことを検知する取込検知器64が設けられている。
【0028】
送出レール19を挟んで載置面11fとは反対側には、硬貨Cの投入を受け付ける投入口49hが設けられている。投入口49hは、角筒状部材49の端面部分に形成されている。角筒状部材49は、投入口49hから一括投入された硬貨Cを、ホッパー21の上面21tに導くように構成されている。本実施の形態では、ホッパー21の前上部21eの、ホッパー21が落下状態の位置となったときに角筒状部材49と干渉しうる部分が、切り欠かれている。
【0029】
ホッパー21の下方には、落下状態のときに隙間21hから排出された異物等を受ける受け皿41が設けられている。本実施の形態では、受け皿41がホッパー21から離れて設けられており、ホッパー21と受け皿41との間に、隙間21hから受け皿41まで異物等を導く漏斗42が配設されている。このように構成されていることで、受け皿41のレイアウトの自由度が向上している。また、漏斗42は、上端42tが、隙間21hを包含する大きさに形成されていると共に落下状態のときの隙間21hに隣接して配置されている。漏斗42の下端42sは、受け皿41の開口よりも小さい大きさに形成され、わずかに受け皿41の中に挿入されている。
【0030】
制御装置60は、回転モータ13及び駆動モータ39の発停や回転方向の決定等を通じて硬貨繰出装置1の動作を制御する。制御装置60は、動作検知器61と信号ケーブルで接続されており、ディスク11に硬貨Cが噛み込んだ等の異常が生じたことの信号を受信することができるように構成されている。また、制御装置60は、残留検知器62と信号ケーブルで接続されており、ホッパー21内の異物等の残留の有無の信号を受信することができるように構成されている。また、制御装置60は、取込検知器64と信号ケーブルで接続されており、硬貨Cが送出レール19を通過したことの信号を受信することができるように構成されている。また、制御装置60は、保持位置検知器65及び落下位置検知器66とそれぞれ信号ケーブルで接続されており、硬貨繰出装置1が保持状態にあるか落下状態にあるかの信号を受信することができるように構成されている。なお、上記では、説明の便宜のために、制御装置60と各検知器とが、信号ケーブルで接続されているとしたが、無線で接続されていてもよい。
【0031】
引き続き図1及び図2を参照して、硬貨繰出装置1の作用を説明する。硬貨Cの投入を待機している硬貨繰出装置1は、制御装置60によって保持状態にセットされている。硬貨繰出装置1は、投入口49h内に硬貨Cを受け入れる。このとき、複数枚の硬貨Cを一括して受け入れることができるので、硬貨Cを投入する者は少ない労力かつ短時間で複数枚の硬貨Cを硬貨繰出装置1に投入することができる。投入口49hに投入された硬貨Cは、角筒状部材49によって収納空間21sに導かれる。硬貨Cは、ホッパー21の上面21tから収納空間21sに入る。
【0032】
収納空間21s内では、ディスク11が、回転モータ13の動作により正方向(反時計回り)に回転している。収納空間21sに導入された硬貨Cは、収納空間21sの下部で、ディスク11の突起11pと小円板17の隆起部17bとによって攪拌されつつ掻き揚げられる。掻き揚げられた硬貨Cは、突起11pと隆起部17bとに引っ掛けられ、規制部18に向かって上方に搬送される。上方に移動してきた硬貨Cは、変形等の異常がなければ、1枚のみがディスク11の載置面11fと規制部18との間を通過する。このとき、変形している硬貨C等の、載置面11fに載置された状態で載置面11fと規制部18との距離よりも大きい物があれば、載置面11fと規制部18との間を通過することができず、規制部18に衝突して、収納空間21sの下部に落下する。他方、載置面11fと規制部18との間を通過した硬貨Cは、送出レール19に至り、取込検知器64を通過した後、搬送ベルト(不図示)により硬貨繰出装置1の外に搬出される。
【0033】
ディスク11の回転中、規制部18で硬貨Cの噛み込みが発生したら、制御装置60は、噛み込み解除処理を行う。噛み込みの発生は、噛み込みの抵抗によってディスク11の回転速度が小さくなっていることを動作検知器61が検知する。動作検知器61は、噛み込みの発生を検知したら、制御装置60に信号を送信する。制御装置60は、噛み込み発生の信号を受信したら、ディスク11を逆回転する等して噛み込み解除処理を行う。噛み込み解除処理を行っても噛み込みが解除されない場合、制御装置60は、硬貨繰出装置1を異常停止とする。なお、動作検知器61を設けることに代えて、回転モータ13の過負荷による電流値の変化を検知することにより、噛み込みの有無を判断する構成としてもよい。
【0034】
送出レール19を介した硬貨Cの搬出が行われている間、制御装置60は、取込検知器64から定期的に硬貨Cが通過した旨の信号を受信すると共に、残留検知器62から収納空間21s内の硬貨Cや異物の存在の信号を受信している。制御装置60は、取込検知器64から、硬貨Cが通過した信号を、所定の時間にわたって受信しないときは、残留検知器62からの信号を基に、収納空間21s内に異物等が残留しているか否かを判断する。制御装置60は、収納空間21s内に異物等があることを検知しない場合は、繰り出し終了として、硬貨繰出装置1の動作を停止させる。他方、収納空間21s内に異物等があることを検知した場合は、排除動作に移行する。
【0035】
制御装置60は、排除動作を開始したら、ディスク11を逆回転させると共に、駆動モータ39を稼働させて駆動板35を移動させる。駆動板35が移動すると、揺動アーム32を介して、前上部21eが斜め上方に行くようにホッパー21が移動する。このとき、ホッパー21は、一部ではなく全体が、揺動軸33を中心にして移動する。ホッパー21が移動するに連れて、前下部21cが徐々に載置面11fから離れて行き、底部21bに形成された隙間21hが徐々に大きくなる。駆動板35は、突部35pが落下位置検知器66に接触するまで移動する。制御装置60は、突部35pが落下位置検知器66に接触したら駆動モータ39を停止する。これで、硬貨繰出装置1は落下状態となっている。落下状態のとき、隙間21hは異物等が通過できる十分な大きさになっている。
【0036】
落下状態となり、隙間21hが形成されると、異物等は、ディスク11の逆回転に伴って側部21fの内周及び底部21bの内周(内壁部位)に沿って移動した後に、内壁部位から切欠部位へ移行し、隙間21hからホッパー21の外に落下する。このとき、保持状態から落下状態に移行する際にホッパー21全体が移動したため、不要な逆段差等が生じず、異物等が円滑に隙間21hから落下する。隙間21hから落下した異物等は、漏斗42を通過して受け皿41に至る。制御装置60は、落下状態になってから所定の時間が経過したら、駆動板35を逆に移動させ、硬貨繰出装置1を保持状態に戻す。ここでの所定の時間は、典型的には、異物等が完全に排除されるまでに要するあらかじめ計測された標準的な時間に余裕分を加えた時間である。制御装置60は、突部35pが保持位置検知器65に接触するまで駆動板35を移動する。硬貨繰出装置1が保持状態に戻ったら、排除動作が終了となる。排除動作が終了しても、残留検知器62が異物等を検知する場合は、制御装置60は硬貨繰出装置1を異常停止させる。なお、ここでの異常停止は、1回の排除動作の終了後に残留検知器62が異物等を検知したときに直ちに行うのではなく、所定回数の排除動作の終了後に残留検知器62が異物等を検知したときに行うこととしてもよい。このようにすると、異常停止の頻度を低くすることができる。
【0037】
以上の説明では、規制部18がディスク11の上部に配設されているとしたが、送出レール19の直近上流であれば、ディスク11の上部以外に設けられていてもよい。
【0038】
以上の説明では、隙間21h(切欠部位)が、ディスク11の下端よりも逆回転(時計回り)方向下流側に形成されているとしたが、受け皿41の位置に応じて、下部21cの中央部分や、ディスク11の下端よりも逆回転(時計回り)方向上流側に形成されていてもよい。
【0039】
次に図3を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る硬貨処理装置100を説明する。図3は硬貨処理装置100の系統図である。なお、以下の硬貨処理装置100の説明において、硬貨繰出装置1の構成に言及しているときは、適宜図1及び図2を参照することとする。硬貨処理装置100は、上述した硬貨繰出装置1と、硬貨繰出装置1から繰り出された硬貨Cの種類を識別する識別部82と、硬貨Cを種類に応じて振り分けると共に計数する振分計数部83と、振分計数部83で振り分け及び計数が行われた硬貨Cを一時的に保留する一時保留部84と、決められた枚数の硬貨Cを放出する放出部85と、硬貨繰出装置1と兼用の制御装置60とを備えている。制御装置60は、硬貨処理装置100の動作を制御することができるように構成されており、本実施の形態では硬貨繰出装置1と硬貨処理装置100とで兼用となっているが、それぞれに専用のものとして別体で構成されていてもよい。
【0040】
識別部82は、硬貨繰出装置1から繰り出された硬貨Cを振分計数部83に向けて搬送する入金搬送路91に設けられている。識別部82は、入金搬送路91によって内部を通過する硬貨Cの種類を識別し、識別結果を信号として制御装置60に送信することができるように構成されている。制御装置60は、識別部82から受信した信号を基に、硬貨繰出装置1から繰り出された硬貨Cの合計金額を算出することができるように構成されている。識別部82は、硬貨処理装置100が取り扱いを予定している種類の硬貨C(本実施の形態では、10円、50円、100円、500円の各硬貨)以外の硬貨(以下「リジェクト硬貨」という。)を検出した場合も異常硬貨である旨の信号を制御装置60に送信するように構成されている。制御装置60は、リジェクト硬貨である旨の信号を識別部82から受信したときは、リジェクト硬貨が振分計数部83に導入されずにリジェクト搬送路(不図示)に導かれるように、フラップ(不図示)を作動させるように構成されている。
【0041】
振分計数部83は、硬貨Cを外形で振り分けることができるように、対象とする硬貨Cを通すがその硬貨Cよりも一回り以上大きい硬貨Cは通さない振分孔(不図示)が形成されており、振分孔(不図示)は対象とする硬貨Cの径の小さいものから順に、硬貨Cが搬送される方向の上流から下流に向けて配列されている。一時保留部84は、硬貨Cを種類で分けて保留することができるように、内部に区画壁84wが設けられている。一時保留部84に保留されている硬貨Cは、状況に応じて横搬送部97あるいは放出部85のいずれかに導かれるように構成されている。放出部85は、硬貨Cの種類に対応する数が設けられており、制御装置60からの指令に基づいて、種類別に所定の枚数の硬貨Cを水平搬送部95に放出することができるように構成されている。水平搬送部95は、放出部85から放出された硬貨Cを水平方向に搬送する部材である。水平搬送部95の下流端は、硬貨Cを上方に搬送する上昇搬送部96に接続されている。上昇搬送部96は、典型的には搬送ベルトに張力保持特性を有するものが用いられており、水平搬送部95から複数枚重なって搬送されてきた硬貨Cをそのまま複数枚重ねて搬送することができるように構成されている。上昇搬送部96の下流端は、硬貨Cを硬貨繰出装置1の受け皿41に向けて搬送する横搬送部97に接続されている。
【0042】
引き続き硬貨処理装置100の作用を説明する。利用者によって硬貨繰出装置1の投入口49hに一括投入された複数枚の硬貨Cは、1枚ずつ入金搬送路91に繰り出され、入金搬送路91によって1枚ずつ振分計数部83に向けて流れていく。入金搬送路91を通る硬貨Cは、識別部82を通過する際に金種等が識別され、リジェクト硬貨が検出された場合は制御装置60を介してフラップ(不図示)の作動により横搬送部97に導かれて、硬貨繰出装置1の受け皿41に戻される。識別部82を通過した、硬貨処理装置100で取り扱い可能な硬貨Cは、振分計数部83に導入され、種類毎に振り分けられた後、一時保留部84の適切な場所に保留される。この状態で、利用者による入金確定操作が行われると、制御装置60は、入金金額と取引金額との比較を行う。
【0043】
入金金額と取引金額との比較により釣銭(出金)が不要の場合は、次の利用者による入金を待機する。また、硬貨Cを入金した利用者の継続操作において返却操作がなされたときは、一時保留部84に保留されている硬貨Cが、横搬送部97に導出された後に受け皿41に返却される。なお、硬貨繰出装置1が繰り出し処理を行っている最中に、利用者による返却操作がなされたときは、制御装置60は硬貨繰出装置1を落下状態にして、収納空間21s内の硬貨C等を、一時保留部84を経由せずに、一括して返却する。これにより、硬貨C等の返却を短時間で行うことができる。入金金額と取引金額との比較により釣銭(出金)が必要な場合、制御装置60は、出金に関する信号を放出部85に送信する。出金信号を受信した放出部85は、制御装置60が指定した合計金額の硬貨Cを水平搬送部95に放出する。水平搬送部95で搬送されてきた硬貨Cは、上昇搬送部96から横搬送部97を経由して、受け皿41に出金される。他方、硬貨Cを入金した利用者の操作が終了して次の利用者による投入口49hへの硬貨Cの投入が行われると、この新たに投入口49hに硬貨Cを投入した利用者の直前の利用者によって投入されて一時保留部84に保留されていた硬貨Cが、放出部85に収容される。
【0044】
上述した硬貨処理装置100によれば、硬貨繰出装置1を備えているので、硬貨繰出装置1に残留する硬貨Cを抑制することが可能となり、装置の処理速度を向上させることができる。
【0045】
以上の説明では、硬貨繰出装置1が排除動作を行う際に、異物等を受け皿41に導くこととしたが、硬貨繰出装置1を備える硬貨処理装置100においては、受け皿41以外の、例えば横搬送部97に導くこととしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 硬貨繰出装置
11 ディスク
11f 載置面
21 ホッパー
21h 隙間
21s 収納空間
21t 上面
30 収納容器移動機構
32 アーム
33 揺動軸
41 受け皿
C 硬貨
VF 鉛直面
θ 傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨が載置される載置面が形成され、前記載置面に載置された硬貨を前記載置面内で移動させて繰り出す回転円盤であって、前記回転円盤の下端から延びる鉛直面と前記載置面とのなす角が鋭角となるように配置された回転円盤と;
前記回転円盤に外側から嵌合し、前記回転円盤と協働して硬貨を収納可能な収納空間を形成する、上面が開口した収納容器と;
前記収納容器を、前記収納空間に硬貨を保持可能な保持状態となる位置と、前記収納空間の下部から収納物が落下するように前記回転円盤の下部と前記収納容器の下部との間に隙間を形成する落下状態となる位置と、の間で移動させる収納容器移動機構とを備える;
硬貨繰出装置。
【請求項2】
前記隙間から落下してきた収納物を受ける受け皿を備え;
前記収納容器が、前記落下状態となる位置にあるときに、前記隙間を通過した収納物が前記受け皿に導かれる位置及び大きさに前記隙間が形成されるように構成された;
請求項1に記載の硬貨繰出装置。
【請求項3】
前記収納容器移動機構が、前記収納容器を支持する揺動軸と、前記収納容器を前記揺動軸回りに揺動させるアームとを有する;
請求項1又は請求項2に記載の硬貨繰出装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の硬貨繰出装置と;
前記硬貨操出装置から繰り出された硬貨の種類を識別する識別装置と;
前記識別装置で識別された硬貨を種類毎に保留する保留部とを備える;
硬貨処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−37572(P2013−37572A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173962(P2011−173962)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000143396)株式会社高見沢サイバネティックス (55)
【Fターム(参考)】