説明

碍子洗浄用廃物受け具

【課題】 碍子の表面を洗浄する際に発生する廃物を空中に飛散するのを防止できる碍子洗浄用廃物受け具を提供する。
【解決手段】 碍子83a,…の表面を洗浄する際に発生する廃物を受けるべく、碍子83a,…の下方に配置される受け具本体2と、受け具本体2を碍子83a,…に取り付けるための取付手段3とを備え、受け具本体2は、廃物を受けるための凹状の受け部21aを有し且つ互いに連結される受け部材21,…を複数備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、碍子の表面を洗浄する際に発生する廃物を受けるための碍子洗浄用廃物受け具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、碍子の表面には、塩害を防止したり、塵埃付着による汚損を防止したりするために、シリコンコンパウンドが塗られている。そして、シリコンコンパウンドが劣化すると、シリコンコンパウンドを塗り直す必要があるため、まずは、碍子の表面を洗浄する必要がある。
【0003】
具体的には、布やブラシで直接拭き取ったり、洗浄剤(例えば灯油等)で溶解させたりすることで、作業者が劣化したシリコンコンパウンドを碍子の表面から除去する。また、作業者が洗浄するのではなく、自動で碍子の表面を洗浄する洗浄装置も各種提案されている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55−126918号公報
【特許文献2】特開2007−12389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、作業者が洗浄する場合においても、また、洗浄装置が洗浄する場合においても、碍子の表面を洗浄する際に発生する廃物(例えば、シリコンコンパウンド、塵埃、洗浄剤等)が空中に飛散してしまうという問題を抱えている。
【0006】
よって、本発明は、斯かる事情に鑑み、碍子の表面を洗浄する際に発生する廃物を空中に飛散するのを防止できる碍子洗浄用廃物受け具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る碍子洗浄用廃物受け具は、碍子の表面を洗浄する際に発生する廃物を受けるべく、碍子の下方に配置される受け具本体と、受け具本体を碍子に取り付けるための取付手段とを備え、受け具本体は、廃物を受けるための凹状の受け部を有し且つ互いに連結される受け部材を複数備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る碍子洗浄用廃物受け具によれば、取付手段が受け具本体を碍子に取り付けることで、受け具本体が碍子の下方に配置される。これにより、受け具本体が碍子の表面を洗浄する際に発生する廃物を受けることができる。しかも、廃物を受けるための凹状の受け部を有する受け部材が互いに連結されることで、受け具本体が構成されているため、連結する受け部材の数量を変更することにより、碍子の長さに対応して、受け具本体の長さを変更することができる。
【0009】
また、本発明に係る碍子洗浄用廃物受け具においては、隣接される受け部同士間の隙間から廃物が漏出するのを防止すべく、隣接される受け部の各上端部に跨って配置されるカバー部を備えてもよい。
【0010】
斯かる構成の碍子洗浄用廃物受け具によれば、カバー部が隣接される受け部の各上端部に跨って配置される。これにより、カバー部が隣接される受け部同士間の隙間を覆うため、当該隙間から廃物が漏出するのを防止できる。
【発明の効果】
【0011】
以上の如く、本発明に係る碍子洗浄用廃物受け具によれば、取付手段が受け具本体を碍子に取り付けるため、受け具本体が碍子の下方に配置されるため、受け具本体が碍子の表面を洗浄する際に発生する廃物を受けることができ、その結果、碍子の表面を洗浄する際に発生する廃物を空中に飛散するのを防止できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る碍子洗浄用廃物受け具が取り付けられる配電設備を説明する正面図を示す。
【図2】同実施形態に係る碍子洗浄用廃物受け具の全体正面図を示す。
【図3】同実施形態に係る碍子洗浄用廃物受け具の全体図であって、(a)は平面図、(b)は側面図を示す。
【図4】同実施形態に係る碍子洗浄用廃物受け具の要部分解斜視図を示す。
【図5】同実施形態に係る碍子洗浄用廃物受け具の取り付け方法を説明する要部図であって、(a)及び(b)はそれぞれ縦断面図を示す。
【図6】本発明の他の実施形態に係る碍子洗浄用受け具における受け部材の図であって、(a)は全体斜視図、(b)は要部拡大正面図を示す。
【図7】同実施形態に係る碍子洗浄用廃物受け具の取り付け方法を説明する要部図であって、(a)及び(b)はそれぞれ縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る碍子洗浄用廃物受け具における一実施形態について、図1〜図5を参酌して説明する。
【0014】
まず、図1に示すように、本実施形態に係る碍子洗浄用廃物受け具(以下、単に「廃物受け具」ともいう)1は、碍子83a,…の表面を洗浄する際に発生する廃物を受けるものである。ここで、廃物受け具1の各構成を説明するのに先立って、碍子83a,…を備える配電設備8について説明する。
【0015】
配電設備8は、鉄塔81と、鉄塔81のアーム部81aに電線82を支持するための碍子連83とを備える。そして、碍子連83は、複数(本実施形態においては五つ)の碍子83a,…を連結して構成されている。そして、一端部が鉄塔81のアーム部81に掛止され且つ他端部が電線82に掛止される梯子Yの上で、作業者Xが各碍子83aの表面を洗浄する。なお、作業者Xが落下するのを防止する落下防止装置については、図1において、図示していない(省略している)。
【0016】
廃物受け具1は、図2〜図4に示すように、碍子83a,…の表面を洗浄する際に発生する廃物(除去されたシリコンコンパウンドや塵埃、洗浄に使用された洗浄剤等)を受けるべく、碍子83a,…の下方に配置される受け具本体2を備える。また、廃物受け具1は、受け具本体2を碍子83a,…に取り付けるための取付手段3を備える(図3(a)においては、取付手段3を図示していない)。
【0017】
受け具本体2は、廃物を受けるための凹状の受け部21aを有する受け部材21,…を複数備える。また、受け具本体2は、複数の受け部材21,…を連結する連結部材22,…を複数備える。なお、各受け部材21は、一つ分の碍子83aの大きさに対応して形成され、一つの碍子83aの下端側を収容できる。
【0018】
各受け部材21は、一対の側壁部211,211と、一対の側壁部211,211間に配置され、各側壁部211の両側縁及び下縁に沿って設けられる周壁部(側壁部及び底壁部)212とを備え、上方が開放された箱状であって、略直方体状に形成されている。また、各受け部材21は、側壁部211の側部に、取付手段3を固定する固定部213,…を備える。
【0019】
各側壁部211は、剛性を有する環状の枠部211aと、枠部211aよりも厚みが薄く形成され、枠部211aの内部を覆う壁部211bとを備える。また、各側壁部211は、上端部に碍子83aに対応すべく、凹部211cを備えている。
【0020】
周壁部212は、可撓性を有すると共に、帯状に形成されている。そして、周壁部212の一端部が一方の側壁部211の両側縁及び下縁に亘って連結されていると共に、周壁部212の他端部が他方の側壁部211の両側縁及び下縁に亘って連結されている。これにより、受け部材21は、可撓性を有する周壁部212を変形させることで、折り畳むことができる。例えば、周壁部212は、蛇腹状に形成され、伸縮可能に構成されている。
【0021】
各連結部材22は、隣接される受け部材21,21の側壁部211,211同士を合わせた状態で挟持する挟持部221,221と、各挟持部221を操作するための操作部222とを備える。また、各連結部材22は、隣接される受け部材21,21同士間の隙間から廃物が漏出するのを防止すべく、隣接される受け部材21,21の各上端部に跨って配置されるカバー部223を備える。
【0022】
各挟持部221は、平板状に形成され、基端部(上端部)がカバー部223に連結される一対の挟持片221a,221aを備える。そして、各挟持部221は、各挟持片221aが弾性変形することにより、一対の挟持片221a,221aの先端部(下端部)同士を接離可能に構成されている。
【0023】
各操作部222は、長尺に形成され、基端部が各挟持片221aの先端部に枢着される操作片222a,222aを一対備える。そして、一対の操作片222a,222aは、挟持片221aの外側に沿って配置され且つ先端部が各挟持部221aの基端部から突出して配置された状態において、先端部同士が接近するように操作されることで、一対の挟持片221a,221aの先端部同士を離反させる。
【0024】
カバー部223は、長手方向における両側部が平板状に形成され、長手方向における中間部が側壁部211の凹部211cに対応して湾曲した板状に形成されて構成されている。そして、カバー部223は、隣接される受け部21a,21aの各上端部、即ち、隣接される側壁部211(枠部211a)の各上端部に跨って配置される。
【0025】
取付手段3は、長尺な紐状に形成され、受け部材21の固定部213,…に対して着脱可能な取付部材31,…を複数備える。そして、取付手段3は、複数の取付部材31,…を固定部213に固定し、各取付部材31を各碍子83aに掛止させることで、受け具本体2を碍子83aの下方に配置させる。
【0026】
各取付部材31は、固定部213に固定される位置を変更可能に構成され、碍子83aの大きさに対応して、各固定部213で固定される部位間の長さを変更できる。例えば、各取付部材31は、複数の環状部材が連結されたチェーンであって、固定部213に掛止される位置を適宜選択できるように構成されている。
【0027】
本実施形態に係る廃物受け具1の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係る廃物受け具1の碍子83aへの取り付け方法について説明する。
【0028】
まず、取り付け対象となる碍子連83、即ち、碍子83aの数量に応じた数量の受け部材21,…、連結部材22,…及び取付部材31,…を用意する。そして、図5(a)に示すように、各挟持片221aから突出する一対の操作片222a,222aの先端部同士が接近するよう(図5(a)のA矢印方向)に、各操作片222aを操作(付勢)することで、一対の挟持片221a,221aの先端部同士を離反させる。
【0029】
次に、各受け部材21の側壁部211,211同士を合わせた状態で、一対の側壁部211,211が一対の挟持片221a,221a間に位置するよう(図5(a)のB矢印方向)に、連結部材22を移動させる。なお、各受け部材21には、側壁部211,211同士の両側縁と下縁とを接続する接続手段(例えばファスナ)が設けられ、接続手段により、側壁部211,211同士が合わされた状態で維持できる場合でもよい。
【0030】
そして、各操作片222aの操作(付勢)を解除すると、各挟持片221aが弾性力により復元して先端部で一対の側壁部211,211を挟持する。これにより、複数の受け部材21,…が連結される。さらに、各操作片222aが碍子83aと干渉するのを防止すべく、各操作片222aの先端部が受け部材21の内部に位置するよう(図5(b)のC矢印方向)に、基端部を中心に各操作片222aを回動させる。
【0031】
次に、取付部材31の一方の端部側を受け部材21の固定部213に固定し、取付部材31を碍子83aに掛止させた状態で、取付部材31の他方の端部側を受け部材21の固定部213に固定させる。これにより、複数の受け部材21,…が連結された受け具本体2を、碍子連83(碍子83a)の下方に配置できる。
【0032】
以上より、本実施形態に係る廃物受け具1によれば、取付手段3が受け具本体2を碍子83aに取り付けることで、受け具本体2が碍子83aの下方に配置される。これにより、受け具本体2が碍子83aの表面を洗浄する際に発生する廃物を受けることができるため、碍子83aの表面を洗浄する際に発生する廃物を空中に飛散するのを防止できる。
【0033】
また、本実施形態に係る廃物受け具1によれば、廃物を受けるための凹状の受け部21aを有する受け部材21,…が互いに連結されることで、受け具本体2が構成されているため、連結する受け部材21,…の数量を変更することにより、碍子83a(碍子連83)の長さに対応して、受け具本体2の長さを変更することができる。
【0034】
また、本実施形態に係る廃物受け具1によれば、連結部材22のカバー部223が隣接される受け部21a,21aの各上端部に跨って配置される。これにより、カバー部223が隣接される受け部21a,21a同士間の隙間を覆うため、当該隙間から廃物が漏出するのを防止できる。
【0035】
なお、本発明に係る碍子洗浄用廃物受け具は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0036】
例えば、上記実施形態に係る碍子洗浄用廃物受け具1においては、受け部材21が一つ分の碍子83aの大きさに対応して形成される場合を説明したが、斯かる場合に限られない。具体的には、受け部材は、二つ分の碍子83aの大きさに対応して形成される場合でもよく、三つ分以上の碍子83aの大きさに対応して形成される場合でもよく、また、複数の大きさ(一つ分、二つ分、三つ分等)が混在する場合でもよい。
【0037】
また、上記実施形態に係る碍子洗浄用廃物受け具1においては、連結部材22が受け部材21,21同士を連結する場合を説明したが、斯かる場合に限られず、受け部材21とは別部材である連結部材22を備えていない場合でもよい。例えば、図6及び図7に示すように、受け部材210は、隣接する受け部材210と連結するための連結部214を備える場合でもよい。
【0038】
図6及び図7に示す受け部材210は、一対の側壁部211,211と、一対の側壁部211,211間に配置され、各側壁部211の両側縁及び下縁に亘って設けられる周壁部212と、取付手段3を固定する固定部213,…とを備え、さらに、隣接する受け部材210と連結するための連結部214を備える。
【0039】
連結部214は、一方の側壁部211の上端部から直交する方向に突出し、隣接される受け部材210の側壁部211の上端部に跨って配置されるカバー部214aを備える。また、連結部214は、隣接される受け部材210から外れるのを防止すべく、受け部材210の側壁部211、具体的には、枠部211aを掛止する掛止部214bを備える。
【0040】
斯かる構成の受け部材210によれば、図7(a)に示すように、一方の受け部材210を、側壁部211に沿って(図7(a)のD矢印方向に)移動させると、掛止部214が他方の受け部材210の枠部211aの下方側を掛止する。これにより、受け部材210,210同士が連結部214により連結され、しかも、カバー部214aが隣接される受け部210a,210aの各上端部に跨って配置されている。
【0041】
また、上記実施形態に係る碍子洗浄用廃物受け具1においては、取付手段3が各碍子83aに掛止される紐状の取付部材31,…を複数備える場合を説明したが、斯かる場合に限られない。例えば、取付手段は、鉄塔81のアーム部81aや電線82に、固定(掛止)されることで、受け具本体2を碍子83aの下方に配置して取り付ける場合でもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…碍子洗浄用廃物受け具、2…受け具本体、3…取付手段、21…受け部材、21a…受け部、22…連結部材、31…取付部材、223…カバー部、83a…碍子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
碍子の表面を洗浄する際に発生する廃物を受けるべく、碍子の下方に配置される受け具本体と、受け具本体を碍子に取り付けるための取付手段とを備え、
受け具本体は、廃物を受けるための凹状の受け部を有し且つ互いに連結される受け部材を複数備えることを特徴とする碍子洗浄用廃物受け具。
【請求項2】
隣接される受け部同士間の隙間から廃物が漏出するのを防止すべく、隣接される受け部の各上端部に跨って配置されるカバー部を備える請求項1に記載の碍子洗浄用廃物受け具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−228055(P2011−228055A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95209(P2010−95209)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】