説明

磁力選別方法およびその装置

【課題】
円筒ドラムの外周面上に存在する被選別物に及ぼす永久磁石の吸着力を調整可能な磁力選別方法およびその装置を提供する。
【解決手段】
永久磁石13を円筒ドラム11の半径方向に移動させると、円筒ドラム11の外周面上の被選別物に対して、永久磁石13の吸着力が変化する。その結果、被選別物中の磁性物の性状に最適な磁力選別が行える。永久磁石13の吸着力の増減は、磁力選別装置10の運転中でも行うことができる。したがって、運転中に投入される被選別物に含まれる磁性物の性状の変化にも、対応することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は磁力選別方法およびその装置、詳しくは円筒ドラムを回転させ、ドラム外周面上に存在する磁性物と非磁性物とを、ドラム内での周方向の位置が固定された永久磁石により磁力選別する磁力選別方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁性物と非磁性物とが混在した被選別物を磁力選別するドラム型の磁力選別装置として、例えば特許文献1が知られている。
特許文献1は、回転モータにより回転させられる円筒ドラムの内部空間に、隣接するもの同士の磁極の向きを異ならせた複数の永久磁石が、円筒ドラムの周方向のうち、被選別物の投下位置(円筒ドラムの略上端部)から略90度下流に移動した磁力選別位置までに、固定状態で配置された構成を有している。
【0003】
円筒ドラムの外周面上に投下された原料(被選別物)は、永久磁石の磁力によって原料中の磁性体だけが円筒ドラムに吸着される。この状態のまま、回転モータによる円筒ドラムの回転により原料がドラム周方向に移送される。原料が磁力選別位置に達すると、原料中の非磁性物は自重によって直下に落下する。一方、磁性物は永久磁石の磁力の影響で、さらに若干下流まで移送される。ここで磁性物は磁界から離脱して自重により落下する。こうして、原料は、磁性物と非磁性物とに磁力選別される。
【特許文献1】特開2000−33286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の磁力選別装置によれば、永久磁石は、円筒ドラムの内部空間のうち、磁力選別位置と対向する部分に取り付け位置が固定されていた。そのため、円筒ドラムの外周面上に存在する被選別物に及ぼす永久磁石の吸着力を調整することができなかった。
このように、永久磁石の磁力が一定化して変更できなければ、以下の欠点が発生した。
【0005】
(1) 原料に対する永久磁石の最適磁力が不明の場合、原料を磁力選別するために最適な磁力選別装置を選定する作業が面倒であった。すなわち、実際に多数台の磁力選別装置を運転し、原料の磁力選別を行って選出しなければならなかった。しかも、この選出に際して、予め磁力選別装置の機種を揃える際にも装置の台数に限りがある。そのため、選出された磁力選別装置が、原料中の磁性物に対して、ほんとうに最適な磁力を生じさせる永久磁石が組み込まれたものなのかは判断できなかった。
(2) また、磁力選別装置の運転時、投入される原料中の磁性物の性状(強磁性体や弱磁性体といった磁性の度合い、磁性物の大きさなど)が変化した際には、使用している磁力選別装置では、その変化に対応することができない場合が多々あった。
この発明は、円筒ドラムの外周面上に存在する被選別物に及ぼす永久磁石の吸着力を調整することができる磁力選別方法およびその装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、磁性物と非磁性物とが混在する被選別物から、非磁性体製の円筒ドラムの内部空間に収納された永久磁石の磁力により、磁性物を円筒ドラムの外周面に吸着する工程と、前記円筒ドラムの周方向への回転により被選別物が移送され、該被選別物が磁力選別位置に達した時、前記円筒ドラムの内部空間のうち、磁力選別位置との対向部分に配置された永久磁石により、被選別物を磁性物と非磁性物とに磁力選別する工程とを備えた磁力選別方法において、前記永久磁石を円筒ドラムの半径方向に移動させ、該円筒ドラムの外周面上に存在する被選別物に及ぼす永久磁石の吸着力を調整する磁力選別方法である。
【0007】
請求項1に記載の発明において、永久磁石を円筒ドラムの半径方向に移動させると、円筒ドラムの外周面上の被選別物に対して、永久磁石の吸着力が変化する。その結果、被選別物中の磁性物の性状に最適な磁力選別を行うことができる。例えば、被選別物の性状(磁力選別の状態)が不明の場合でも、最適な磁力選別が可能となる。
永久磁石の吸着力の増減は、磁力選別装置の運転中でも可能である。そのため、運転中に投入される被選別物に含まれる磁性物の性状の変化に対応することができる。
なお、電磁石を使用すれば、磁力の調整は容易である。しかしながら、3000G(0.3テスラ)以上の磁力の発現は、電磁石では技術的およびコスト的に困難である。
【0008】
被選別物としては、例えば空き缶類(鉄缶、アルミニウム缶など)、下水汚泥の生物化学的下水処理に利用される微細なマグネタイトや鉄粉などが挙げられる。
磁性物としては、例えば微粒子状の鉄粉(Fe)、微粒子状のマグネタイト(FeO・Fe)などを採用することができる。
非磁性物としては、例えばアルミニウムなどを採用することができる。
【0009】
円筒ドラムの素材は、非磁性体であれば限定されない。例えば、オーステナイト系ステンレス鋼などを採用することができる。
円筒ドラムの回転数は、円筒ドラムの外周面上の被選別物に対する磁力の大きさによって異なる。例えば、磁力の調整範囲を500〜5000Gとした場合、ドラム回転数は最大300m/minとなる。300m/minを超えると、オーステナイト系ステンレス鋼の場合、渦電流損による発熱および渦電流抵抗損失による電動機電気容量の増大という不都合が生じる。
円筒ドラムの外周面のうち、磁力選別位置より下流には、磁力選別後の磁性物を掻き落とすスクレーパを当接させてもよい。
円筒ドラムは、主に、ドラム型の磁力選別装置用のドラムとして利用される。また、磁力選別機能付きのベルトコンベアのヘッドプーリーに適用してもよい。ベルトコンベアとは、ヘッドプーリーの内部空間に固定式の永久磁石が収納されたものである。
【0010】
永久磁石の素材としては、例えばネオジウム、サマリウムといった希土類金属などを採用することができる。
永久磁石のN極の面とS極の面との磁束密度は、例えば500(0.05ステラ)〜5000G(0.5ステラ)である。500G未満では吸着力不足という不都合が生じる。
永久磁石は、少なくとも円筒ドラムの内部空間のうち、磁力選別位置との対向部分に配置されていればよい。例えば、円筒ドラムの外周面上における被選別物の移送路において、被選別物の投下位置から磁力選別位置(またはこれより若干下流)までの範囲に、永久磁石を配置してもよい。
永久磁石を円筒ドラムの半径方向に移動させる方法は限定されない。例えば、リンク機構を使用した方法、歯車機構を使用した方法、カム機構を使用した方法、油圧シリンダを使用した方法などを採用することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、磁性物と非磁性物とが混在する被選別物が、外周面に載置される非磁性体製の円筒ドラムと、該円筒ドラムを周方向に回転させる回転手段と、前記円筒ドラムの内部空間のうち、被選別物の磁力選別位置と対向する部分に、前記円筒ドラムの周方向の位置が固定された永久磁石と、該永久磁石を、前記円筒ドラムの半径方向に移動させる磁石移動手段とを備えた磁力選別装置である。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、磁石移動手段を用いて、永久磁石を円筒ドラムの半径方向に移動させる。これにより、円筒ドラムの外周面上に存在する被選別物に対しての永久磁石の吸着力が変化する。その結果、簡単な構造で、被選別物中の磁性物の性状に最適な磁力選別が可能になる。
この永久磁石の被選別物に対する吸着力の増減は、磁力選別装置の運転中でも、磁石移動手段を操作することにより可能である。したがって、磁力選別装置の運転中、投入された被選別物に含まれる磁性物の性状の変化にも対応することができる。
【0013】
回転手段としては、例えば電動モータ、油圧モータなどを採用することができる。
磁石移動手段の機構は限定されない。例えば、リンク機構、歯車機構、カム機構、油圧シリンダ機構などを採用することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記永久磁石は、前記円筒ドラムの周方向に向かって互いに離間した複数の部分磁石に分割され、前記磁石移動手段は、前記円筒ドラムと軸線が同じ回動軸と、該回動軸の回動手段と、前記回動軸の外周部に、該回動軸の周方向に向かって互いに離間して各元部がそれぞれ軸支されるとともに、各先部が対応する部分磁石にそれぞれ軸支された複数本の位置調整リンクとを有した請求項2に記載の磁力選別装置である。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、永久磁石は、円筒ドラムの周方向に向かって互いに離間した複数の部分磁石に分割されている。そのため、永久磁石のドラム半径方向への移動距離に応じて、隣り合う部分磁石の隙間を拡縮させることができる。
その結果、例えば部分磁石のドラム半径方向の内側への移動時、移動距離に応じて隣接する部分磁石の隙間を縮小させる。その反対に、例えば部分磁石のドラム半径方向の外側への移動時、移動距離に応じて隣接する部分磁石の隙間を拡大させる。これにより、円筒ドラムの外周面上において、永久磁石の磁力が及ぶ範囲を、永久磁石のドラム半径方向への移動に拘らず、常時、一定に維持することができる。
【0016】
また、回転手段により回動軸を回転させると、各位置調整リンクが回転軸に巻き付いて部分磁石が円筒ドラムの外周面から離反したり、この巻き付き状態が解除されて部分磁石が円筒ドラムの外周面に近接したりする。これにより、簡単な構造で、永久磁石のドラム半径方向への移動距離に応じて、隣り合う部分磁石の隙間を拡縮させることができる。
【0017】
永久磁石の部分磁石への分割数は限定されない。例えば、2つまたは3つ以上であればよい。
各部分磁石は、一括して円筒ドラムの半径方向に移動してもよい。または、選出された部分磁石だけをその半径方向に移動させてもよい。
隣接する部分磁石間の距離および各部分磁石の半径方向への移動距離はそれぞれ限定されない。ただし、部分磁石が半径方向の外側または内側にそれぞれ最大限移動した時でも、円筒ドラムの外周面に吸着された磁性物に対して、移送の途中で自重落下することなく、良好に移送可能な距離であればよい。
隣接する部分磁石同士は、互いの磁極を異ならせた方が、磁性物の移動が円滑に行われる。
部分磁石は、単独で配置してもよいし、2個または3個以上を1つの固定部材に一体的に固定してブロック化させてもよい。
【0018】
部分磁石は、半径方向の外側に移動するほど、隣接する部分磁石間の距離(円筒ドラムの周方向上の距離)が長くなる。これにより、被選別物の移送経路の途中(円筒ドラムの周方向の一部)において、被選別物に磁力が及ばない領域が発生してしまう。また、部分磁石は、半径方向の内側に移動するほど、円筒ドラムの外周面からの距離が長くなり、被選別物に対する磁力が弱まる。
ただし、部分磁石の円筒ドラムの半径方向への移動距離は、使用される磁石の磁力の大きさに応じて適宜変更される。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の磁力選別方法および請求項2に記載の磁力選別装置によれば、永久磁石を円筒ドラムの半径方向に移動させると、円筒ドラムの外周面上の被選別物に対して、永久磁石の吸着力が変化する。その結果、被選別物中の磁性物の性状に最適な磁力選別が行える。
この永久磁石の吸着力の増減は、磁力選別装置の運転中でも行うことができる。したがって、運転中に投入される被選別物に含まれる磁性物の性状の変化にも、対応することができる。
【0020】
また、請求項3に記載の磁力選別装置によれば、永久磁石を、円筒ドラムの周方向に向かって互いに離間した複数の部分磁石に分割したので、永久磁石のドラム半径方向への移動距離に応じて、隣り合う部分磁石の隙間を拡縮させることができる。これにより、円筒ドラムの外周面上における永久磁石の磁力が及ぶ範囲を、永久磁石のドラム半径方向への移動に拘らず、常時、一定に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1〜図3において、10はこの発明の実施例1に係るドラム式の磁力選別装置で、この磁力選別装置10は、磁性物と非磁性物とが混在する被選別物が、外周面に載置される非磁性体製の円筒ドラム11と、円筒ドラム11を周方向に回転させる回転モータ(回転手段)12と、円筒ドラム11の内部空間のうち、被選別物の磁力選別位置bと対向する部分に、円筒ドラム11の周方向の位置が固定された永久磁石13と、永久磁石13を、円筒ドラム11の半径方向に移動させる磁石移動手段14とを備えている。以下、各構成体を詳細に説明する。
【0023】
図1〜図8に示すように、円筒ドラム11は、磁力選別装置10の外装ケーシングの両側部に離間配置された1対の横梁材15間に、垂直面内で回転自在に軸支されている。具体的には、両横梁材15の上面に1対の軸受16が固定され、両軸受16の間に軸線が水平な固定軸17が架け渡されている。このとき、固定軸17の一端部(図1中の右側)は、一方の軸受16から外方に突出している。この突出部分には、ウォームホイール18が固着されている。また、一方の軸受16の上部には、軸線が固定軸17の軸線と直交した水平なウォーム19が軸支されている。これらのウォームホイル18とウォーム19とにより、固定軸17の回転防止用のウォームギヤ20が構成されている(図5)。
【0024】
固定軸17の他端側には、長筒軸(回動軸)21が外挿されている。また、固定軸17の長さ方向の中間部より一端側には、短筒軸(回動軸)22が外挿されている。さらに、固定軸17の長さ方向の中間部には、固定筒23が固定状態で外嵌されている。固定軸17の長さ方向の中間部の外周部分には、扇形の多孔ガイド板24が一体形成されている。多孔ガイド板24の外周面は、周方向に45°ずつ合計4つのガイド孔24aが形成されている。各ガイド孔24aは、その奥面が多孔ガイド板24の元部まで達している。また、各ガイド孔24aの内壁には、ブッシュ24bが固定状態で内嵌されている。
【0025】
前記円筒ドラム11は、長筒軸21の長さ方向の略中間部と、固定軸17の一端側とに配設された1対のベアリング25を介して、垂直面内で回転自在に設けられている。円筒ドラム11は、非磁性体であるオーステナイト系ステンレス鋼製の胴板26と、胴板26の両端側の開口部をそれぞれ塞ぐ1対の端板(炭素鋼製)27とを有している。各ベアリング25は、対応する長筒軸21または固定軸17と、端板27との間にそれぞれ設けられる。両端板27の外面の中央部付近には、胴板26より短尺な側筒28の元部がそれぞれ固定されている。各側筒28の軸線は、固定軸17の軸線と合致している。また、一方の側筒28の先端縁には、大径で環状のスプロケット29が固着されている。このスプロケット29と無端チェーン30を介して動力伝達可能に連結される小径なスプロケット31は、前記外装ケーシングに固定された前記回転モータ12の出力軸に固着されている。
回転モータ12により両スプロケット29,31、無端チェーン30を介して円筒ドラム11を回転させる。これにより、両ベアリング25を介して、円筒ドラム11が固定軸17を中心にして周方向に回転する。
【0026】
長筒軸21のドラム外側の端部には、ウォームホイル32が固着されている。また、他方の軸受16の上部には、軸線が固定軸17の軸線と直交した水平なウォーム33が軸支されている。これらのウォームホイル32とウォーム33とにより、前記磁石移動手段14の駆動用のウォームギヤ(回動手段)34が構成されている(図6)。
長筒軸21と短筒軸22との各ドラム内側の端部には、フランジ21a,22aがそれぞれ形成されている。長筒軸21と短筒軸22とは、両フランジ21a,22aの対向した一部分同士に両端部が固定された状態で、水平な連結板34Aにより連結されている。また、両フランジ21a,22aには、その周方向に向かって45°ピッチで、4本の位置調整リンク35の元部がそれぞれボルト36aを介して軸支されている(図2)。両フランジ21a,22a間の、合計4対の位置調整リンク35の先端部間には、水平方向に長い厚肉なヨーク36がそれぞれボルト37aを介して架け渡されている。各ヨーク36の先面部には、水平方向に長い1対の部分磁石(残留磁束密度12000ガウス(1.2テスラ))13Aが互いのあいだに若干の隙間をあけてそれぞれ固着されている。
【0027】
各部分磁石13Aの先端面は、円筒ドラム11の胴板26の内周面に略近接する位置に配置され、円筒ドラム11の周方向において、隣接するもの同士、磁極を異ならせて配置されている。これにより、円筒ドラム11の外周面上での磁性物の移動が円滑に行われる。部分磁石13Aの合計は8個で、これらの部分磁石13Aにより、前記永久磁石13が構成される。各部分磁石13Aは、円筒ドラム11の上端部(被選別物の投下位置a)から、円筒ドラム11の一側を経由したその下端部(被選別物の磁力選別位置b)までの略180°の範囲に円筒ドラム11の周方向に所定間隔ごとに配置されている。
隣接するヨーク36間の距離は、部分磁石13Aが半径方向の外側または内側にそれぞれ最大限移動した時でも、円筒ドラム11の外周面に吸着された磁性物に対して、その移送の途中で自重落下することなく、良好に移送可能な距離(60mm)となっている。
【0028】
また、各ヨーク36の長さ方向の中間部のドラム内側面には、前記位置調整リンク35より若干短尺なガイドピン37の元部が固着されている。各ガイドピン37の先部は、対応するガイド孔24aに抜き差し可能に挿着されている(図3)。
前記磁石移動手段14は、長筒軸21、短筒軸22、固定軸17、連結板34A、多孔ガイド板24、ヨーク36、ガイドピン37、駆動用のウォームギヤ34とから構成されている。
【0029】
次に、実施例1に係る磁力選別装置10を用いた被選別物の磁力選別方法を説明する。
図1〜図8に示すように、磁力選別時には、回転モータ12により両スプロケット29,31、無端チェーン30を介して円筒ドラム11を回転させると、両ベアリング25を介して、円筒ドラム11が固定軸17を中心にして30m/min以上で回転する。このとき、各部分磁石13Aは円筒ドラム11の回転に伴って連れ回りすることはない。
この状態のまま、円筒ドラム11の上端部の投下位置に、磁性物と非磁性物とが混在した被選別物を投下する。その結果、部分磁石13Aのうち、最上部付近に配置されたものの磁力の影響により、被選別物中の磁性物だけが円筒ドラム11の胴板26に吸着される。
【0030】
その後、回転モータ12による円筒ドラム11の回転に伴い、被選別物は部分磁石13Aが配置された移送経路に沿って円筒ドラム11の周方向に移送される。被選別物が磁力選別位置bまで達すると、非磁性物は自重によって直下に落下する(二点鎖線の矢印)。一方、磁性物は部分磁石13Aの磁力の影響で、さらに円筒ドラム11の周方向に向かって60°ほど下流まで移送される(実線の矢印)。ここで、磁性物はスクレーパ40による掻き落としも伴って磁界から離脱し、自重により落下する。こうして、被選別物は磁性物と非磁性物とに磁力選別される。
【0031】
ところで、例えば被選別物中の磁性物が強磁性体の場合には、永久磁石13の磁力の影響が強すぎてしまい、磁力選別後、磁性物がスムーズに落下しないおそれがある。そこで、このような際には、磁石移動手段14を利用し、各部分磁石13Aを胴板26から離反させ、磁性物に対する磁界の影響力を小さくする。
具体的には、駆動用のウォームギヤ34のウォーム33を回転させ、連結板34Aにより連結された長筒軸21と短筒軸22とを一体的に回転させる。これにより、4対の位置調整リンク35が長筒軸21および短筒軸22にそれぞれ巻き付き、その結果、各部分磁石13Aが円筒ドラム11の外周面から離反する(図4)。よって、円筒ドラム11の外周面上に存在する被選別物に対しての部分磁石13Aの吸着力が低下する。これにより、簡単な構造で、被選別物中の磁性物の性状に最適な磁力選別が可能になる。
この永久磁石13の被選別物に対する吸着力の増減は、磁力選別装置10の運転中でも、駆動用のウォームギヤ34を操作することで可能となる。したがって、磁力選別装置10の運転中、投入される被選別物に含まれる磁性物の性状の変化にも対応することができる。
【0032】
ここで、図7および図8を参照して、部分磁石13Aが円筒ドラム11の外周面上の被選別物に及ぼす磁界の影響を等高線を参照して説明する。図中、Tは磁界の強さを表すテスラ(1テスラ=10000G)である。部分磁石13Aが円筒ドラム11の半径方向の内側に60mmだけ移動することにより、それまで胴板26付近では最大0.45テスラ(4500G)であった部分磁石13Aの磁力は、0.04テスラ(400G)まで低下した。
【0033】
また、このように永久磁石13を、円筒ドラム11の周方向に向かって互いに離間した複数の部分磁石13Aに分割したので、永久磁石13のドラム半径方向への移動距離に応じて、隣り合う部分磁石13Aの隙間を拡縮させることができる。その結果、例えば部分磁石13Aのドラム半径方向の内側への移動時、移動距離に応じて隣接する部分磁石13Aの隙間を縮小させる。それとは反対に、例えば部分磁石13Aのドラム半径方向の外側への移動時、移動距離に応じて隣接する部分磁石13Aの隙間を拡大させる。これにより、円筒ドラム11の外周面上において、永久磁石13の磁力が及ぶ範囲を、永久磁石13のドラム半径方向への移動に拘らず、常時、略一定に維持することができる。
【実施例2】
【0034】
次に、図9を参照して、この発明の実施例2に係る磁力選別方法およびその装置を説明する。
図9に示すように、実施例2の磁力選別装置50では、長筒軸21のフランジ21aおよび短筒軸22のフランジ22aに代えて歯車51を採用している。また、位置調整リンク35に代えて、対応する歯車51に噛合する外歯が一側部に形成されたラックリンク52を採用している。これにより、駆動用のウォームギヤ34のウォーム33を回転させ、連結板34Aにより連結された長筒軸21と短筒軸22を一体的に回転させると、両歯車51が同一方向に回転し、これに伴い、対応する歯車51に噛合する外歯を有したラックリンク(位置調整リンク)52が、円筒ドラム11の半径方向に移動する。
その他の構成、作用および効果は、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施例1に係る磁力選別装置の円筒ドラム一帯の断面図である。
【図2】図1のS2−S2断面図である。
【図3】図1のS3−S3断面図である。
【図4】この発明の実施例1に係る磁力選別装置の永久磁石の半径方向の内側に移動した状態を示す図1のS2−S2位置における断面図である。
【図5】図1のS5−S5位置からの矢視図である。
【図6】図1のS6−S6端面図である。
【図7】この発明の実施例1に係る磁力選別装置において、永久磁石が円筒ドラムに近接した状態での被選別物に及ぼす磁界の影響を等高線で示した要部拡大断面図である。
【図8】この発明の実施例1に係る磁力選別装置において、永久磁石が円筒ドラムから離反した状態での被選別物に及ぼす磁界の影響を等高線で示した要部拡大断面図である。
【図9】この発明の実施例2に係る磁力選別装置の円筒ドラムの軸線方向に直交する断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10,50 磁力選別装置、
11 円筒ドラム、
12 回転モータ(回転手段)、
13 永久磁石、
13A 部分磁石、
14 磁石移動手段、
21 長筒軸(回動軸)、
34 ウォームギヤ(回動手段)、
35 位置調整リンク、
52 ラックリンク(位置調整リンク)、
a 磁力選別位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性物と非磁性物とが混在する被選別物から、非磁性体製の円筒ドラムの内部空間に収納された永久磁石の磁力により、磁性物を円筒ドラムの外周面に吸着する工程と、
前記円筒ドラムの周方向への回転により被選別物が移送され、該被選別物が磁力選別位置に達した時、前記円筒ドラムの内部空間のうち、磁力選別位置との対向部分に配置された永久磁石により、被選別物を磁性物と非磁性物とに磁力選別する工程とを備えた磁力選別方法において、
前記永久磁石を円筒ドラムの半径方向に移動させ、該円筒ドラムの外周面上に存在する被選別物に及ぼす永久磁石の吸着力を調整する磁力選別方法。
【請求項2】
磁性物と非磁性物とが混在する被選別物が、外周面に載置される非磁性体製の円筒ドラムと、
該円筒ドラムを周方向に回転させる回転手段と、
前記円筒ドラムの内部空間のうち、被選別物の磁力選別位置と対向する部分に、前記円筒ドラムの周方向の位置が固定された永久磁石と、
該永久磁石を、前記円筒ドラムの半径方向に移動させる磁石移動手段とを備えた磁力選別装置。
【請求項3】
前記永久磁石は、前記円筒ドラムの周方向に向かって互いに離間した複数の部分磁石に分割され、
前記磁石移動手段は、
前記円筒ドラムと軸線が同じ回動軸と、
該回動軸の回動手段と、
前記回動軸の外周部に、該回動軸の周方向に向かって互いに離間して各元部がそれぞれ軸支されるとともに、各先部が対応する部分磁石にそれぞれ軸支された複数本の位置調整リンクとを有した請求項2に記載の磁力選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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