説明

磁場反転配位におけるプラズマの磁気的閉じ込めおよび静電気的閉じ込め

【課題】核融合反応を可能にするために特に重要であるプラズマを閉じ込めるために、異常輸送を回避し、かつ電子とイオンの両方の古典的閉じ込めを容易にする方法および装置を提供すること。
【解決手段】プラズマ閉じ込めデバイスであって、以下:チャンバ、このチャンバの主軸に実質的に沿って、このチャンバ内に磁場を適用するための磁場発生器、このチャンバ内に方位性電場を誘導するための電流コイル、および電子およびイオンを含むプラズマをこのチャンバに注入するためのプラズマ供給源、を備える、プラズマ閉じ込めデバイスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Office of Naval Researchによって与えられた、契約番号N00014−99−1−0857の下で政府の援助により行われた。いくつかの背景研究は、1992年〜1993年の間、U.S.Department of Energyにより援助された。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、プラズマ物理学の分野に関し、より詳細には、プラズマを閉じ込めるための方法および装置に関する。プラズマの閉じ込めは、核融合反応を可能にするために特に重要である。
【背景技術】
【0003】
融合は、2個の軽い核が結合して、より重い1個の核を形成するプロセスである。この融合プロセスは、高速移動する粒子の形態で、多量のエネルギーを放出する。原子核は正に荷電しているので(この原子核内に含まれる陽子に起因して)、それらの間には、反発的な静電気力、すなわちクーロン力が存在する。2個の核が融合するためには、この反発的障壁に打ち勝たなければならず、核融合は、2個の核が、ともに十分に近接された場合に起こり、ここで短距離の核力は、クーロン力に打ち勝って核融合するのに十分に強くなる。核がクーロン障壁に打ち勝つのに必要なエネルギーは、それらの熱エネルギーによって与えられ、これは、非常に高くなければならない。例えば、この融合速度は、温度が少なくとも10eV(およそ1億°Kに対応する)のオーダーである場合に、測定可能であり得る。融合反応速度は、温度の関数であり、そしてこれは、反応度と呼ばれる量によって特徴付けられる。D−T反応の反応度は、例えば、30keVと100keVとの間の広範なピークを有する。
【0004】
代表的な融合反応には、以下が挙げられる:
D + D → He(0.8MeV) + n(2.5MeV);
D + T → α(3.6MeV) + n(14.1MeV);
D + He → α(3.7MeV) +p (14.7MeV);および、
p + B11 → 3α(8.7MeV);
ここで、Dは、ジュウテリウムを示し、Tは、トリチウムを示し、αは、ヘリウム核を示し、nは、中性子を示し、pは、陽子を示し、Heは、ヘリウムを示し、そしてB11は、ホウ素−11を示す。各式中の括弧内の数は、融合生成物の動力学的エネルギーを示す。
【0005】
上に列挙した最初の2つの反応(D−D反応およびD−T反応)は、中性子反応であり、これは、それらの融合生成物の大半のエネルギーが高速中性子によって運ばれることを意味する。中性子反応の欠点は、以下である:(1)高速中性子束が、多くの問題(反応器の壁の構造的損傷および大部分の構成材料に対する高レベルの放射能が挙げられる)を引き起こすこと;ならびに(2)高速中性子のエネルギーは、それらの熱エネルギーを電気エネルギーに変換することによって収集されており、このことが、非常に非効率的であること(30%未満)。中性子反応の利点は、以下である:ジュウテリウムおよびトリチウムの原子番号が1であるので、(1)それらの反応度が比較的低い温度でピークを有する;および(2)放射に起因するそれらの損失が、比較的低いこと。
【0006】
他の2つの式(D−Heおよびp−B11)における反応物は、次世代燃料と呼ばれる。中性子反応における場合、高速中性子を生成する代わりに、それらの融合生成物は、荷電粒子である。この次世代燃料の利点は、この燃料がほとんど中性子を生成せず、それによって中性子に付随した欠点をほとんど伴わないことである。D−Heの場合において、いくつかの高速中性子が二次反応によって生成されるが、これらの中性子は、融合生成物のエネルギー1セントあたり約10個のみとみなす。p−B11反応は、高速中性子を伴わないが、数個の低速中性子(二次反応により生じるが、ほとんど問題にはならない)を生成する。次世代燃料の別の利点は、これらの融合生成物のエネルギーが、高い効率(90個/セントまで)で収集され得ることである。直接エネルギー変換プロセスにおいて、これらの荷電した融合生成物の速度は低下し、そしてそれらの動力学的エネルギーは、電気に直接変換され得る。
【0007】
次世代燃料も、欠点を有する。例えば、次世代燃料の原子番号は、非常に高い(Heについて2、およびB11について5)。従って、これらの放射損失は、中性子反応におけるよりも大きい。また、次世代燃料を融合させることは、より困難である。これらの反応度ピークは、非常に高温で生じ、そしてD−Tに対する反応度の高さまで到達しない。従って、次世代燃料との融合反応を起こすには、それらの反応度が有意である、高エネルギー状態にさせることが必要である。従って、次世代燃料は、それらが適切な融合条件にされ得る長期間にわたって閉じ込められなければならない。
【0008】
プラズマに対する閉じ込め時間は、Δt=r/Dであり、ここで、rは、最小のプラズマ寸法であり、そしてDは、拡散係数である。拡散係数の古典的な値は、D=a/τieであり、ここで、aは、イオンジャイロ半径であり、そしてτieは、イオン−電子衝突時間である。古典的な拡散係数による拡散は、古典的輸送と呼ばれる。短波長の不安定性に帰するBohm拡散係数は、D=(1/16)aΩであり、ここで、は、Ωは、イオンジャイロ周波数である。この関係に従う拡散は、異常輸送と呼ばれる。融合条件:
【0009】
【数1】

について、異常輸送は、古典的輸送よりもかなり短い閉じ込め時間を生じる。この関係は、プラズマが融合反応器内においてどの程度の大きさかを決定し、これは、所定量のプラズマのための閉じ込め時間が、プラズマが核融合反応を有するための時間より長くなければならないという必要性による。従って、古典的輸送条件は、より小さい初期プラズマを可能にする融合反応器内がより望ましい。
【0010】
プラズマのトーラス閉じ込めを用いた初期実験において、
【0011】
【数2】

の閉じ込め時間が観察された。最近40年の進歩は、
【0012】
【数3】

まで、この閉じ込め時間を増加させた。1つの既存の融合反応器の構想は、トカマク(Tokamak)である。トカマク68の磁場および代表的な粒子軌道66が、図5に示されている。過去30年にわたって、融合の努力が、D−T燃料を使用するトカマク反応器によってなされてきた。これらの努力は、図7に示される、International
Thermonuclear Experiment Reactor(ITER)において達成された。トカマクを用いた近年の実験は、古典的輸送(
【0013】
【数4】

)が可能であり、この場合において、最小プラズマ寸法がメートルからセンチメートルまで減少され得ることを示唆する。これらの実験は、エネルギービーム(50〜100keV)を噴射して、プラズマを10〜30keVの温度まで加熱することを含む。非特許文献1を参照のこと。これらの実験において、エネルギービームイオンは、減速して、古典的に拡散することが観察されたが、熱プラズマは、異常に高速で拡散し続けた。この理由は、エネルギービームイオンが大きなジャイロ半径を有し、そのために、このイオンジャイロ半径よりも短い波長を有する揺らぎに対して無反応性であるからである(λ<a)。短波長の揺らぎは、サイクルにわたって平均に達し、それによって相殺される傾向にある。しかしながら、電子は、非常に小さなジャイロ半径を有し、その結果、電子は、この揺らぎに応答して異常輸送する。
【0014】
異常輸送に起因して、プラズマの最小寸法は、少なくとも2.8メートルでなければならない。この寸法に起因して、ITERは、30メートル高および30メートル径で作製された。これは、実行可能な、最も小さいD−Tトカマク型反応器である。次世代燃料(例えば、D−Heおよびp−B11)について、このトカマク型反応器は、より大型でなければならない。なぜなら、燃料イオンが核反応に有するための時間が、ずっと長くなるからである。D−T燃料を使用するトカマク反応器は、融合生成物エネルギーの大部分のエネルギーが14MeVの中性子によって運ばれ、このことにより、中性子束に起因した、ほとんど全ての構成材料の放射損傷および反応度を誘導するというさらなる問題点を有する。さらに、これらのエネルギーの電気への変換は、熱プロセスによらなけらばならず、これは、30%効率以下である。
【0015】
別の提唱される反応器構成は、衝突型ビーム反応器である。衝突型ビーム反応器において、バックグランドプラズマは、イオンビームによって衝撃を与えられる。このビームは、熱プラズマよりもずっと高いエネルギーを有するイオンを含む。この型の反応器内で有用な融合反応を起こすことは、実行不可能である。なぜなら、バックグランドプラズマは、イオンビームを低速するからである。この問題を低減し、そして核反応の数を最大にするために、種々の提唱がなされている。
【0016】
例えば、Jassbyらに対する特許文献1は、トーラス閉じ込めシステムにおける、重陽子およびトリトンの対流(counterstreaming)衝突ビームを生成する方法を開示している。Jassbyらに対する特許文献2において、電磁エネルギーが噴射され、1個のイオン種に対するバルク平衡プラズマ抵抗の効果が弱められる。このトーラス閉じ込めシステムは、トカマクとして認識されている。Rostokerに対する特許文献3において、ジュウテリウムおよびトリチウムのビームが噴射され、トカマク、ミラーまたは磁場反転配位と同じ平均速度で捕捉される。このビームを捕捉するためだけの、低密度の冷却バックグランドプラズマが存在している。ビームが高温度を有するので、このビームは反応し、そして噴射されたイオンに付随する電子によって、主に減速される。この電子は、イオンによって加熱され、この場合において、減速は最小である。
【0017】
しかしながら、これらのデバイスにおいて、平衡電場は、全く役割を果たさない。さらに、異常輸送を低減する、またはそれを考慮する試みは、なされていない。
【0018】
他の特許は、イオンの静電気的閉じ込め、およびいくつかの場合において、電子の磁気的閉じ込めを考慮している。これらとしては、以下が挙げられる:Farnsworthに対する特許文献4およびFarnsworthに対する特許文献5(これらは、イオンの静電気的閉じ込めおよび電子の慣性閉じ込めを開示している);Hirschらに対する特許文献6およびHirschらに対する特許文献7(Farnsworthと同様である);Limpaecherに対する特許文献8(これは、多極カスプ反射壁を用いた、イオンの静電気的閉じ込めおよび電子の磁気的閉じ込めを開示している);ならびに、Bussardに対する特許文献9(これらは、Limpaecherと同様であり、ポイントカプスを含む)。これらの特許は、電子の静電気的閉じ込めおよびイオンの磁気的閉じ込めを全く考慮しない。イオンの静電気的閉じ込めに対する多くの研究計画が存在しているが、これらは、イオンが融合反応器に必要とされる密度を有する場合、必要とされる静電場を設定することに成功していない。最後に、上に列挙された特許は、磁場反転配位の磁気的トポロジーを議論していない。
【0019】
磁気反転配位(FRC)は、テータピンチ実験の間にNaval Research Laboratoryにて1960年代に偶然発見された。代表的なFRCトポロジー(ここで、この内部磁場は、方向が逆である)は、図8および図10に示され、そしてFRCにおける粒子軌道は、図11および図14に示される。FRCに関連して、多くの研究計画が、アメリカ合衆国および日本において支持されている。1960年〜1988年のFRC研究の理論および実験における包括的な総括書が存在する。非特許文献2を参照のこと。FRC開発についての白書は、1996年の研究およびさらなる研究に対する推奨を記載している。非特許文献3を参照のこと。今日まで、FRC実験において、FRCは、テータピンチ方法により形成されてきた。この形成方法の結果は、イオンおよび電子の各々が、半分の電流を運び、結果として、プラズマ中に無視できるほどの静電場を生じ、静電的閉じ込めを生じないということである。これらのFRC中のイオンおよび電子は、磁気によって閉じ込められる。ほとんど全てのFRC実験において、異常輸送が想定される。例えば、非特許文献4、1.5.2節の冒頭を参照のこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第4,065,351号明細書
【特許文献2】米国特許第4,057,462号明細書
【特許文献3】米国特許第4,894,199号明細書
【特許文献4】米国特許第3,258,402号明細書
【特許文献5】米国特許第3,386,883号明細書
【特許文献6】米国特許第3,530,036号明細書
【特許文献7】米国特許第3,530,497号明細書
【特許文献8】米国特許第4,233,537号明細書
【特許文献9】米国特許第4,826,646号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】W.Heidbrink;G.J.Sadler,Nuclear Fusion、1994年、第34巻、535頁
【非特許文献2】M.Tuszewski,Nuclear Fusion、1988年、第28巻、2033頁
【非特許文献3】L.C.Steinhauerら、Fusion Technology、1996年、第30巻、116頁
【非特許文献4】M.Tuszewski,Nuclear Fusion、1988年、第28巻、2072頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
(発明の要旨)
以前のプラズマ閉じ込めシステムが直面した問題を取り扱うために、プラズマを閉じ込めるためのシステムおよび装置が、本明細書中に記載されており、ここにおいて、プラズマイオンは、磁気によって安定に閉じ込められており、大きな軌道および電子は、静電気によってエネルギー井戸中に閉じ込められている。FRCを用いた以前の研究を超える本発明の主な革新は、同時の、電子の静電気的閉じ込めおよびイオンの磁気的閉じ込めであり、これは、異常輸送を回避し、かつ電子とイオンの両方の古典的閉じ込めを容易にする傾向がある。この構成において、イオンは、適切な密度および温度を有し得、その結果、衝突の際、これらのイオンは、核力によってともに融合され、それによって融合エネルギーを放出する。
【0023】
好ましい実施形態において、プラズマ閉じ込めシステムは、以下を備える:チャンバ、主軸に実質的に沿った方向に磁場を適用するための磁場発生器、およびイオンの循環ビームを含む環状プラズマ層。この環状プラズマビーム層のイオンは、実質的に、軌道中で磁気によってチャンバ内に閉じ込められ、そして電子は、実質的に、静電気によってエネルギー井戸に閉じ込められる。1つの好ましい実施形態の1つの局面において、磁場発生器は、電流コイルを備える。好ましくは、このシステムは、チャンバの端部近くにミラーコイルを備え、このミラーコイルは、チャンバの端部で適用された磁場の大きさを増加させる。このシステムはまた、中和されたイオンビームを、この適用された磁場に噴射するための、ビーム注入器を備え得、ここで、このビームは、適用された磁場によって生じる力に起因して、軌道に入る。好ましい実施形態の別の局面において、このシステムは、磁場反転配位のトポロジーを有する磁場を形成する。
【0024】
以下の工程を包含する、プラズマを閉じ込めるための方法もまた、開示される:磁気によって磁場内の軌道にイオンを閉じ込める工程、および静電気によってエネルギー井戸内に電子を閉じ込める工程。適用された磁場は、静電場を生成および制御するように変化され得る。この方法の1つの局面において、この場は、平均電子速度がほぼゼロになるように調整される。別の局面において、この場は、平均電子速度が平均イオン速度と同じ方向であるように調整される。この方法の別の局面において、この方法は、磁場反転配位磁場を形成し、ここで、プラズマが閉じ込められる。
【0025】
好ましい実施形態の別の局面において、環状プラズマ層が、磁場反転配位磁場内に閉じ込められる。このプラズマ層は、正に荷電されたイオンを含み、ここで、実質的に全てのイオンは、非断熱性であり、そして電子は、静電的にエネルギー井戸内に閉じ込められる。このプラズマ層は、回転および十分な大きさの自己磁場を形成して、磁場反転を生じる。
【0026】
好ましい実施形態の他の局面において、プラズマは、少なくとも2個の異なるイオン種を含有し得、これらのうち一方は、次世代燃料を含み得る。
【0027】
非断熱性のエネルギープラズマを有する場合、大きな軌道のイオンは、イオンの異常輸送を防止する傾向がある。これは、FRCにおいて行われ得る。なぜならば、プラズマ内の表面にわたる磁場が消滅するからである(すなわち、ゼロである)。大きな軌道を有するイオンは、異常輸送を引き起こす短波長の揺らぎに対して非感受性の傾向がある。
【0028】
磁気的閉じ込めは、電子に対して無効性である。なぜなら、これらの電子が、小さいジャイロ半径(それらの低質量に起因する)を有し、それによって、異常輸送を引き起こす短波長揺らぎに対して感受性であるからである。従って、電子は、静電場によって深いポテンシャル井戸に効率的に閉じ込められ、このことは、電子によるエネルギーの異常輸送を防止する傾向がある。閉じ込めから漏れた電子は、零(null)表面に近い高密度領域から、プラズマの表面への移動しなければならない。それが起こった際に、それらの大部分のエネルギーは、エネルギー井戸を上昇する際に費やされる。電子がプラズマ表面に到達し、融合生成物からイオンとともに離れる際に、それらは、輸送のために残ったエネルギーをほとんど有さない。強力な静電場はまた、全てのイオンドリフト軌道を、反磁性方向で回転させる傾向にあり、その結果、それらは、閉じ込められる。静電場はさらに、電子用の冷却機構を提供し、これは、それらの放射損失を低下させる。
【0029】
閉じ込め能の増加は、次世代燃料(例えば、D−Heおよびp−B11)、および中性子反応物(例えば、D−DおよびD−T)の使用を可能にする。D−He反応において、高速中性子は、二次反応によって生成されるが、これは、D−T反応における改善点である。p−B11反応などは、高速中性子の問題を完全に回避するので、好ましい。
【0030】
次世代燃料の別の利点は、融合反応からのエネルギーの直接エネルギー変換である。なぜなら、この融合生成物は、移動する荷電粒子であり、これが電流を作製するからである。これは、トカマクにおける有意な改善点である。例えば、熱変換プロセスを使用して、高速中性子の動力学的エネルギーが電気に変換される。熱変換プロセスの効率は、30%より低いが、直接エネルギー変換の効率は、90%ほどの高さであり得る。
【0031】
より詳細には、本発明は、以下の項目に関する。
(項目1)
プラズマ閉じ込めデバイスであって、以下:
チャンバ、
このチャンバの主軸に実質的に沿って、このチャンバ内に磁場を適用するための磁場発生器、
このチャンバ内に方位性電場を誘導するための電流コイル、および
電子およびイオンを含むプラズマをこのチャンバに注入するためのプラズマ供給源、
を備える、プラズマ閉じ込めデバイス。
(項目2)
項目1に記載の閉じ込めデバイスであって、ここで、上記磁場発生器が、上記チャンバの周りで伸長する複数の磁場コイルを備える、閉じ込めデバイス。
(項目3)
項目2に記載の閉じ込めデバイスであって、ここで、上記磁場発生器が、複数のミラーコイルを備える、閉じ込めデバイス。
(項目4)
項目1に記載の閉じ込めデバイスであって、ここで、上記磁場発生器が、上記チャンバの外部に配置される、閉じ込めデバイス。
(項目5)
項目1に記載の閉じ込めデバイスであって、ここで、上記磁場発生器が、上記チャンバ内に配置される、閉じ込めデバイス。
(項目6)
項目1に記載の閉じ込めデバイスであって、ここで、上記磁場発生器が、上記チャンバ内に静電場を生成し、そして制御するために調節可能である、閉じ込めデバイス。
(項目7)
項目6に記載の閉じ込めデバイスであって、上記磁場発生器に接続される制御システムをさらに備える、閉じ込めデバイス。
(項目8)
項目1に記載の閉じ込めデバイスであって、ここで、上記電流コイルが、ベータトロンフラックスコイルである、閉じ込めデバイス。
(項目9)
項目1に記載の閉じ込めデバイスであって、ここで、上記電流コイルが、複数の別々のコイルの平行巻線を備える、閉じ込めデバイス。
(項目10)
項目1に記載の閉じ込めデバイスであって、イオンビームを上記チャンバに注入するためのイオンビーム注入器をさらに含む、閉じ込めデバイス。
(項目11)
項目11に記載の閉じ込めデバイスであって、ここで、上記イオンビーム注入器が、電荷中和イオンビームを上記チャンバに注入するように適合される、閉じ込めデバイス。
(項目12)
項目1に記載の閉じ込めデバイスであって、ここで、上記チャンバが、ほぼ円筒形である、閉じ込めデバイス。
(項目13)
項目1に記載の閉じ込めデバイスであって、ここで、上記チャンバが、ほぼ環状である、閉じ込めデバイス。
(項目14)
プラズマを閉じ込めるための装置であって、以下:
チャンバ、
上記チャンバに作動可能に関連する、磁場および静電気閉じ込めシステム、および
このチャンバに作動可能に関連する、プラズマ供給源、を備える、装置。
(項目15)
項目14に記載の装置であって、ここで、上記閉じ込めシステムが、上記チャンバ内に磁場を発生させるための磁場発生器を備える、装置。
(項目16)
項目15に記載の装置であって、ここで、上記磁場が、磁場反転トポロジーを有する、装置。
(項目17)
項目16に記載の装置であって、ここで、上記磁場発生器が、上記チャンバの周りに伸長する複数の磁場コイルを備える、装置。
(項目18)
項目17に記載の装置であって、ここで、上記磁場発生器が、上記磁場コイルと作動可能に関連する複数のミラーコイルをさらに備える、装置。
(項目19)
項目18に記載の装置であって、ここで、上記磁場発生器が、上記チャンバ内に方位性電場を誘導するために、上記チャンバの主軸に沿って配置される電流コイルをさらに備える、装置。
(項目20)
項目19に記載の装置であって、ここで、上記電流コイルが、ベータトロンフラックスコイルである、装置。
(項目21)
項目20に記載の装置であって、ここで、上記ベータトロンフラックスコイルが、複数の別々のコイルの平行巻線を備える、装置。
(項目22)
項目15に記載の装置であって、ここで、上記磁場発生器が、静電ポテンシャル井戸を生成し、そして制御するために調節可能である、装置。
(項目23)
項目22に記載の装置であって、ここで、上記閉じ込めシステムが、さらに、上記磁場発生器に接続される制御システムをさらに備える、装置。
(項目24)
項目14に記載の装置であって、ここで、上記プラズマ供給源が、上記チャンバの中間平面に向かってこのチャンバの主軸に沿ってバックグラウンドプラズマを注入するために配向される、複数のバックグラウンドプラズマガンを備える、装置。
(項目25)
項目24に記載の装置であって、ここで、上記プラズマ供給源が、イオンビームを上記チャンバに注入するためのイオンビーム注入器をさらに備える、装置。
(項目26)
項目25に記載の装置であって、ここで、上記イオンビーム注入器が、電荷中和イオンビームを上記チャンバに注入するように適合される、装置。
(項目27)
項目14に記載の閉じ込め装置であって、ここで、上記チャンバが、ほぼ円筒形である、閉じ込め装置。
(項目28)
項目14に記載の閉じ込め装置であって、ここで、上記チャンバが、ほぼ環状である、閉じ込め装置。
(項目29)
プラズマ閉じ込めシステムであって、以下:
チャンバ、
このチャンバと作動可能な関係の、磁場発生器、
磁場反転トポロジー磁場であって、この磁場反転磁場が、この磁場発生器によって発生される磁場によって少なくとも一部形成される、磁場反転トポロジー磁場、
この磁場発生器によって発生される磁場を調整することによって生成されそして制御される、このチャンバ内の静電場、および
このチャンバ内に閉じ込められる電子およびイオンを含むプラズマであって、ここで、複数のプラズマイオンが、この磁場反転磁場によって閉じ込められ、そして複数のプラズマ電子が、この静電場によって静電的に閉じ込められる、プラズマ、
を備える、システム。
(項目30)
項目29に記載のシステムであって、ここで、上記複数のプラズマイオンおよび電子が、実質的に古典的に閉じ込められる、システム。
(項目31)
項目30に記載のシステムであって、ここで、上記複数のプラズマイオンが、実質的に非断熱的である、システム。
(項目32)
項目31に記載のシステムであって、ここで、上記複数のプラズマイオンが、実質的にエネルギー性であり、そして上記チャンバ内で大きな半径の軌道で回る、システム。
(項目33)
項目32に記載のシステムであって、ここで、上記イオンの軌道の半径が、異常な輸送を引き起こす揺らぎの波長を超える、システム。
(項目34)
項目32に記載のシステムであって、ここで、上記イオンの軌道が、実質的にベータトロン軌道である、システム。
(項目35)
項目32に記載のシステムであって、ここで、上記イオンの軌道が、実質的に反磁性方向である、システム。
(項目36)
項目35に記載のシステムであって、ここで、イオンドリフトの軌道が、実質的に反磁性方向である、システム。
(項目37)
項目29に記載のシステムであって、ここで、上記磁場発生器によって発生する磁場の磁力線が、実質的に上記チャンバの主軸に沿った方向に伸長する、システム。
(項目38)
項目29に記載のシステムであって、ここで、上記磁場反転磁場が、第1磁場と第2磁場の組み合わせを含み、ここで、この第1磁場が、上記磁場発生器によって発生される、システム。
(項目39)
項目29に記載のシステムであって、ここで、上記静電場が、静電ポテンシャルエネルギー井戸を形成する、システム。
(項目40)
項目39に記載のシステムであって、ここで、上記複数のプラズマ電子が、上記静電ポテンシャルエネルギー井戸内に実質的に閉じ込められる、システム。
(項目41)
項目29に記載のシステムであって、ここで、上記磁場反転磁場が、上記複数のプラズマイオンを磁気的に閉じ込めるための静電場力を支配する、この複数のプラズマイオンに対するローレンツ力を生成する、システム。
(項目42)
項目29に記載のシステムであって、ここで、上記静電場が、上記複数のプラズマイオンのイオンドリフト軌道を反磁性方向に方向付けるのに適合される、システム。
(項目43)
項目38に記載のシステムであって、ここで、ポロイダルトポロジーを有する第2磁場が、上記プラズマの回転に起因して形成される、システム。
(項目44)
項目29に記載のシステムであって、上記チャンバの主軸に沿って配置される電流コイルおよびこの電流コイルによってこのチャンバ内に発生される方位性の電場をさらに備える、システム。
(項目45)
項目44に記載のシステムであって、ここで、上記磁場発生器が、上記チャンバの周りで伸長する複数の磁場コイル、ならびに上記電流コイルの反対の端部に隣接して配置される第1ミラーコイルおよび第2ミラーコイルを備え、ここで、この第1ミラーコイルおよび第2ミラーコイルが、この電流コイルの第1端部および第2端部に隣接する磁場発生器によって発生される磁場の大きさを増加させる、システム。
(項目46)
項目44に記載のシステムであって、ここで、上記電流コイルが、複数の別々のコイルの平行巻線を備える、システム。
(項目47)
項目45に記載のシステムであって、ここで、上記チャンバが、ほぼ円筒形である、システム。
(項目48)
項目45に記載のシステムであって、ここで、上記チャンバが、ほぼ環状である、システム。
(項目49)
項目45に記載のシステムであって、上記磁場反転磁場の磁力線に実質的に垂直な方向で、イオンビームをこの磁場反転磁場に注入するイオンビーム注入器をさらに備え、ここで、上記磁場反転磁場が、このイオンビームを上記チャンバ内の軌道に捕捉しそして曲げる、システム。
(項目50)
項目49に記載のシステムであって、ここで、上記イオンビームが、自己偏極である、システム。
(項目51)
項目29に記載のシステムであって、ここで、上記プラズマが、少なくとも2つの異なるイオン種を含む、システム。
(項目52)
項目29に記載のシステムであって、ここで、上記プラズマが、次世代燃料を含む、システム。
(項目53)
電子およびイオンを有するプラズマを閉じ込める方法であって、この方法が、以下の工程:
複数のプラズマイオンを磁気的に閉じ込める工程、および
複数のプラズマ電子を静電的に閉じ込める工程、
を包含する、方法。
(項目54)
項目53に記載の方法であって、さらに、以下の工程:
閉じ込め構造内に磁場を発生する工程であって、この磁場が、磁場反転配位(FRC)トポロジーを有する、工程、
この閉じ込め構造内に静電場を発生する工程であって、この静電場が、ポテンシャルエネルギー井戸を形成する、工程、および
上記複数のプラズマイオンをこのFRC磁場内に磁気的に閉じ込め、この複数のプラズマ電子をこのポテンシャルエネルギー井戸内に静電的に閉じ込める、工程、
を包含する、方法。
(項目55)
項目54に記載の方法であって、上記複数のプラズマイオンを実質的に古典的に閉じ込める工程をさらに包含する、方法。
(項目56)
項目55に記載の方法であって、上記複数のプラズマ電子を実質的に古典的に閉じ込める工程をさらに包含する、方法。
(項目57)
項目55に記載の方法であって、ここで、上記複数のプラズマイオンを実質的に古典的に閉じ込める工程が、このプラズマの燃焼時間よりも長い時間の間、上記閉じ込め構造内にこのイオンを閉じ込める、方法。
(項目58)
項目55に記載の方法であって、ここで、上記複数のプラズマイオンが、実質的に非断熱的である、方法。
(項目59)
項目58に記載の方法であって、ここで、上記複数のプラズマイオンが、実質的にエネルギー性である、方法。
(項目60)
項目58に記載の方法であって、上記複数のプラズマイオンを、上記FRC磁場内で、大きな半径ベータトロン軌道で回す工程をさらに包含し、ここで、この軌道半径が、異常な輸送を引き起こす揺らぎの波長を超える、方法。
(項目61)
項目54に記載の方法であって、上記複数のプラズマイオンを磁気的に閉じ込める工程が、この複数のプラズマイオン上に作用するローレンツ力に起因して、FRC磁場内で、この複数のプラズマイオンを回す工程を包含する、方法。
(項目62)
項目61に記載の方法であって、上記複数のプラズマイオンを反磁性方向で回す工程をさらに包含する、方法。
(項目63)
項目62に記載の方法であって、反磁性方向にイオンドリフト軌道を実質的に方向付ける工程をさらに包含する、方法。
(項目64)
項目54に記載の方法であって、上記閉じ込め構造内に適用される磁場を発生させる工程をさらに包含する、方法。
(項目65)
項目64に記載の方法であって、上記プラズマを回転させ、そして自己磁場を形成する工程をさらに包含する、方法。
(項目66)
項目65に記載の方法であって、上記適用される磁場と上記自己磁場を組み合わせて、FRC磁場を形成する工程をさらに包含する、方法。
(項目67)
項目54に記載の方法であって、上記複数のプラズマ電子を冷却する工程をさらに包含する、方法。
(項目68)
項目54に記載の方法であって、融合生成物イオンを形成する工程をさらに包含する、方法。
(項目69)
項目68に記載の方法であって、上記静電ポテンシャル井戸のポテンシャルエネルギーから上記融合生成物イオンにエネルギーを移動させる工程をさらに包含する、方法。
(項目70)
項目54に記載の方法であって、ここで、上記プラズマが、次世代燃料イオン種を含む、方法。
(項目71)
項目53に記載の方法であって、さらに、以下の工程:
適用される磁場を発生させる工程、および
この適用される磁場を操作して、静電場を生成しそして制御する、工程
を包含する、方法。
(項目72)
反応器チャンバ内に磁場反転配位磁場を形成する方法であって、以下の工程:
プラズマが満たされる反応器チャンバ内に、適用される磁場を発生する工程、
イオンビームを、この反応器チャンバ内の適用される磁場に注入する工程、
このチャンバ内で、ポロイダル自己磁場を有する回転プラズマビームを形成する工程、
方位性電場を適用して、このプラズマビームの回転速度を、このプラズマビーム内の自己磁場の大きさが適用される磁場の大きさに打ちかつ速度まで増加させ、磁場反転を引き起こす、工程、および
この適用される磁場およびこの自己磁場の磁力線を、磁場反転配位(FRC)トポロジーを有する組み合わせ磁場に結合する工程、
を包含する、方法。
(項目73)
項目72に記載の方法であって、ここで、上記適用される磁場を発生させる工程が、上記チャンバの周りで伸長する、複数の磁場コイルにエネルギーを与える工程を包含する、方法。
(項目74)
項目73に記載の方法であって、ここで、上記イオンビームが、上記適用される磁場に対して実質的に横切って注入される、方法。
(項目75)
項目74に記載の方法であって、ここで、上記イオンビームを注入する工程が、さらに、以下の工程:
このイオンビームを中和する工程、
この中和イオンビームから電気偏極をドレインする工程、
上記適用される磁場に起因するローレンツ力を、この中和イオンビームに及ぼして、このイオンビームをベータトロン軌道に曲げる、工程、
を包含する、方法。
(項目76)
項目72に記載の方法であって、所定の半径の大きさで上記回転するビームプラズマを維持するために、上記適用される磁場の大きさを増加する工程をさらに包含する、方法。
(項目77)
項目72に記載の方法であって、ここで、上記電場を適用する工程が、上記チャンバ内のベータトロンフラックスコイルにエネルギーを与える工程を包含する、方法。
(項目78)
項目77に記載の方法であって、上記回転プラズマビームを融合レベル回転エネルギーに加速するために、上記フラックスコイルを通る電流を増加させる工程をさらに包含する、方法。
(項目79)
項目78に記載の方法であって、融合レベルエネルギーのイオンビームをFRCに注入し、そしてこのFRC内のベータトロン軌道にこのビームを捕捉する工程をさらに包含する、方法。
(項目80)
反応器チャンバ内に磁場反転配位磁場を形成する方法であって、以下の工程;
適用される磁場をチャンバ内に発生させる工程、
このチャンバ内の適用される磁場にプラズマを注入する工程、
このチャンバ内に方位性電場を適用して、プラズマを回転させ、そしてポロイダル自己磁場を形成させる、工程、および
このプラズマの回転速度を増加させて、このプラズマ内の自己磁場の大きさを、適用される磁場の大きさに打ち勝つレベルまで増加させ、磁場反転を引き起こす、工程、および
適用される磁場の磁力線と自己磁場を、磁場反転配位(FRC)トポロジーを有する組み合わせ磁場に結合する工程、
を包含する、方法。
(項目81)
項目80に記載の方法であって、ここで、上記適用される磁場を発生させる工程が、このチャンバに沿って伸長する、複数の磁場コイルおよびミラーコイルにエネルギーを与える工程を包含する、方法。
(項目82)
項目81に記載の方法であって、上記回転するプラズマを所定の半径の大きさに維持するために、適用される磁場の大きさを増加する工程をさらに包含する、方法。
(項目83)
項目82に記載の方法であって、ここで、上記電場を適用する工程が、上記チャンバ内のベータトロンフラックスコイルにエネルギーを与える工程を包含する、方法。
(項目84)
項目83に記載の方法であって、上記回転プラズマを融合レベル回転エネルギーまで加速するために、上記フラックスコイルを通る電流を増加させる工程をさらに包含する、方法。
(項目85)
項目84に記載の方法であって、融合レベルエネルギーのイオンビームをFRCに注入し、そしてFRC内のベータトロン軌道にこのビームを捕捉する工程をさらに包含する、方法。
(項目86)
項目85に記載の方法であって、ここで、上記イオンビームを注入する工程が、さらに以下の工程:
このイオンビームを中和する工程、
この中和イオンビームから電気偏極をドレインする工程、
上記適用される磁場に起因するローレンツ力を、この中和イオンビームに及ぼして、このイオンビームをベータトロン軌道に曲げる、工程、
を包含する、方法。
本発明の他の局面および特徴は、添付の図面とともに付けられた以下の説明を考慮することによって明らかになる。
【発明の効果】
【0032】
核融合反応を可能にするために特に重要であるプラズマを閉じ込めるために、異常輸送を回避し、かつ電子とイオンの両方の古典的閉じ込めを容易にする方法および装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
好ましい実施形態は、添付の図面の図において、例として示されるが、限定としては示されておらず、ここにおいて、同じ参照番号は同じ構成要素を参照する。
【図1】図1Aおよび図1Bは、それぞれ、正電荷および負電荷に作用する、ローレンツ力を示す。
【図2】図2Aおよび図2Bは、一様な磁場での、荷電した粒子のラーモア軌道を示す。
【図3】図3は、
【数142】

ドリフトを示す。
【図4】図4は、勾配ドリフトを示す。
【図5】図5は、トカマクにおける断熱性粒子軌道を示す。
【図6】図6は、ベータトロンにおける非断熱性粒子軌道を示す。
【図7】図7は、International Thermonuclear Experimental Reactor(ITER)を示す。
【図8】図8は、FRCの磁場を示す。
【図9】図9Aおよび図9Bは、それぞれ、FRCにおける反磁性方向および逆反磁性(counterdiamagnetic)方向を示す。
【図10】図10は、衝突ビームシステムを示す。
【図11】図11は、ベータトロン軌道を示す。
【図12】図12Aおよび図12Bは、それぞれ、FRCにおける磁場および勾配ドリフトの方向を示す。
【図13】図13Aおよび図13Bは、それぞれ、FRCにおける電場および
【数143】

ドリフトの方向を示す。
【図14】図14A、図14Bおよび図14Cは、イオンドリフト軌道を示す。
【図15】図15Aおよび図15Bは、FRCの端部でのローレンツ力を示す。
【図16】図16Aおよび図16Bは、衝突ビームシステムにおける電場および電位の調整を示す。
【図17】図17は、マクスウェル分布を示す。
【図18】図18Aおよび図18Bは、大きい角度のイオン−イオン衝突に起因する、ベータトロン軌道からドリフト軌道への移動を示す。
【図19】図19A、B、CおよびDは、小さい角度の電子−イオン衝突を考慮した場合の、ベータトロン軌道を示す。
【図20】図20A、20Bおよび20Cは、FRCにおける磁場の反転を示す。
【図21】図21A、21B、21Cおよび21Dは、FRCにおける外部磁場Bの調整に起因する効果を示す。
【図22】図22A、22B、22Cおよび22Dは、D−Tプラズマについての繰返し結果を示す。
【図23】図23A、23B、23Cおよび23Dは、D−Heプラズマについての繰返し結果を示す。
【図24】図24は、p−B11プラズマについての繰返し結果を示す。
【図25】図25は、例示的な閉じ込めチャンバを示す。
【図26】図26は、閉じ込めチャンバに入る前に電気的に分極された場合の、中和されたイオンビームを示す。
【図27】図27は、閉じ込めチャンバ内にプラズマを接触させた場合の、中和されたイオンビームの正面図である。
【図28】図28は、始動手順の好ましい実施形態による、閉じ込めチャンバの概略側面図である。
【図29】図29は、始動手順の別の好ましい実施形態による、閉じ込めチャンバの概略側面図である。
【図30】図30は、FRCの形成を指向するB点プローブの追跡を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
理想的な融合反応器は、イオンと電子の両方の異常輸送の問題を解決する。イオンの異常輸送は、イオンの大部分が大きな非断熱性軌道を有し、それらのイオンを、断熱性イオンの異常輸送を引き起こす短波長の揺らぎに対して非感受性にするような様式で、磁場反転配位(FRC)中の磁気的閉じ込めによって回避される。電子について、エネルギーの異常輸送は、外部から適用された磁場を調整して、強力な電場を発生させること(これは、静電気によって深いポテンシャル井戸にそれらの電子を閉じ込める)によって回避される。さらに、本発明の閉じ込めプロセスおよび装置とともに使用され得る融合燃料プラズマは、中性子燃料に制限されるのではなく、次世代燃料も有利に含む(次世代燃料の議論については、R.Feldbacher & M.Heindler,Nuclear Instruments and Methods in Physics Research,A271(1988)JJ−64(North Holland Amsterdam)を参照のこと)。
【0035】
本明細書中で見出される異常輸送の問題の解決は、特定の磁場構成(これは、FRCである)を利用する。詳細には、FRCにおける領域(ここで、磁場が消滅する)の存在は、大部分の非断熱性イオンを含むプラズマを有することを可能にする。
【0036】
(背景理論)
システムおよび装置を詳細に記載する前に、本明細書中に含まれる概念を理解するために必要な数個の重要な概念を最初に検討することは、有用である。
【0037】
(磁場におけるローレンツ力および粒子軌道)
磁場
【0038】
【数5】

中で、速度
【0039】
【数6】

で移動する、電荷qを有する粒子は、以下:
【0040】
【数7】

によって与えられる力
【0041】
【数8】

を経験する。
【0042】
この力
【0043】
【数9】

は、ローレンツ力と呼ばれる。このローレンツ力、および本発明の議論で使用される全ての式は、ガウス単位系で与えられる。ローレンツ力の方向は、電荷qの符号に依存する。この力は、速度と磁場との両方に垂直である。図1Aは、正電荷に作用するローレンツ力30を示す。粒子の速度は、ベクトル32によって示される。磁場は、34である。同様に、図1Bは、負電荷に作用するローレンツ力30を示す。
【0044】
説明されるように、このローレンツ力は、粒子の速度に垂直であり、従って、磁場は、粒子の速度方向に力を及ぼすことはできない。ニュートンの第二法則:
【0045】
【数10】

に従い、磁場は、その速度方向に粒子を加速する加速することはできない。磁場は、粒子の軌道を湾曲させるだけでなく、その速度の大きさは、磁場によって影響を受けない。
【0046】
図2Aは、一様な磁場34における正に荷電した粒子の軌道を示す。この場合におけるローレンツ力30は、一定の大きさであり、そして粒子の軌道36は、円を形成する。この円軌道36は、ラーモア軌道と呼ばれる。円軌道36の半径は、ジャイロ半径38と呼ばれる。
【0047】
通常は、粒子の速度は、磁場に平行な成分およびこの場に垂直な成分を有する。このような場合において、粒子は、2つの同時運動(磁力線の周りの回転およびそれに沿った平行移動)を起こす。これら2つの運動の組み合わせは、磁力線40に従う螺旋を作製する。このことは、図2Bにおいて示される。
【0048】
ラーモア軌道における粒子は、磁力線の周りを回転する。単位時間あたり移動されるラジアンの数は、粒子のジャイロ周波数であり、これは、Ωによって示され、以下:
【0049】
【数11】

によって与えられ、ここで、mは粒子の質量であり、そしてcは、光の速度である。荷電粒子のジャイロ半径aは、以下:
【0050】
【数12】

によって与えられ、ここで、
【0051】
【数13】

は、磁場に垂直な粒子の速度成分である。
【0052】
【数14】

図3に示されるように、電場は、荷電粒子の軌道に影響を与える。図3において、磁場44は、読者の方を向いている。磁場44のみに起因して正に荷電したイオンの軌道は、円36であり;同じことが、電子42に当てはまる。しかし、電場46の存在下で、イオンが、電場46の方向で移動する場合、その速度が増加する。理解され得るように、このイオンは、力:
【0053】
【数15】

により加速される。方程式3によると、このイオンのジャイロ半径(gyroradius)は、その速度が増加するにつれて増加することが、さらに分かり得る。
【0054】
このイオンが、電場46により加速される場合、磁場44は、このイオンの軌道を曲げる。特定の点において、このイオンは、方向を反転し、そして電場46と反対方向に移動し始める。これが生じる場合、このイオンは、減速され、従って、ジャイロ半径は、減少する。従って、このイオンのジャイロ半径は、交互に増減し、これにより、図3に示されるように、方向50にイオン軌道48の横向きのドリフトが生じる。この運動は、
【0055】
【数16】

ドリフトと呼ばれる。同様に、電子軌道52は、同じ方向50にドリフトする。
【0056】
類似のドリフトは、図4に示されるように、磁場44の勾配によって生じ得る。図4において、磁場44は、読者の方を向いている。この磁場の勾配は、方向56である。この磁場の強度の増加は、この図の点のより密集した量により示される。
【0057】
方程式2および3から、ジャイロ半径は、磁場の強度に逆比例することが分かる。イオンが、増大する磁場の方向に移動する場合、ローレンツ力が増加するため、そのジャイロ半径は減少し、その逆もまた同様である。従って、このイオンのジャイロ半径は、交互に増減し、これにより、方向60にイオン軌道58の横方向のドリフトが生じる。この運動は、勾配ドリフトと呼ばれる。電子軌道62は、反対方向64にドリフトする。
【0058】
(断熱性粒子および非断熱性粒子)
ほとんどのプラズマは、断熱性粒子を含む。断熱性粒子は、密接に、磁力線に従い、そして小さなジャイロ半径を有する。図5は、磁力線68に密接に従う断熱性粒子の粒子軌道66を示す。示される磁力線68は、トカマクの磁力線である。
【0059】
非断熱性粒子は、大きなジャイロ半径を有する。この非断熱性粒子は、磁力線に従わず、そして通常は、エネルギー性である。非断熱性粒子を含む他のプラズマが存在する。図6は、ベータトロンの場合の非断熱性プラズマを例示する。磁極片70は、磁場72を生成する。図6が示すように、粒子軌道74は、磁力線72に従わない。
【0060】
(プラズマ中の放射)
移動中の荷電粒子は、電磁波を放射する。この粒子により放射される力は、電荷の2乗に比例する。イオンの電荷は、Zeであり、ここで、eは、電子の電荷であり、そしてZは、原子番号である。従って、各イオンについて、放射されるZ個の遊離電子が存在する。これらのZ個の電子により放射される全力は、原子番号の3乗(Z)に比例する。
【0061】
(FRC中の荷電粒子)
図8は、FRCの磁場を示す。この系は、その軸78に対して円柱状の対称性を有する。このFRCにおいて、磁力線の2つの領域:開領域80および閉領域82が存在する。2つの領域を分ける表面は、セパラトリクス84と呼ばれる。このFRCは、磁場が消滅する円柱状の零曲面86を形成する。FRCの中央部88において、磁場は、軸方向にはそれほど変化しない。端部90において、この磁場は、軸方向にかなり変化する。中心軸78に沿った磁場は、FRC中の方向を反転し、これは、磁場反転配位(Field Reversed configuration)中の用語「反転(reversed)」の由来である。
【0062】
図9Aにおいて、零曲面94の外側の磁場は、方向96である。この零曲面の内側の磁場は、方向98である。イオンが方向100で移動する場合、このイオンに作用するローレンツ力30は、この零曲面94の方を向いている。このことは、右手の法則を用いることによって、容易に理解される。方向102で移動する半磁性と呼ばれる粒子について、ローレンツ力は、常に、零曲面94の方を向いている。この現象は、以下に記載されるベータトロン軌道と呼ばれる粒子軌道を生じる。
【0063】
図9Bは、方向104で移動する、逆反磁性(counterdiamagnetic)と呼ばれるイオンを示す。この場合のローレンツ力は、零曲面94から離れる方向を向いている。この現象は、以下で記載される、ドリフト軌道と呼ばれるタイプの軌道を生じる。イオンの反磁性方向は、電子に対して逆反磁性であり、逆もまた同様である。
【0064】
図10は、イオンの反磁性方向102で回転するプラズマ106のリングまたは環状層を示す。このリング106は、零曲面86の周りに位置する。この環状プラズマ層106により生成される磁場108は、外部から適用される磁場110と連絡しており、そしてFRCの位相を有する磁場を形成する(この位相は、図8に示される)。
【0065】
このプラズマ層106を形成するイオンビームは、ある温度を有し;従って、このイオンの速度は、イオンビームの平均角速度で回転するフレームにおいて、マクスウェル分布を形成する。異なる速度のイオン間の衝突は、融合反応を生じる。この理由のために、プラズマビーム層106は、衝突ビーム系と呼ばれる。
【0066】
図11は、ベータトロン軌道112と呼ばれる、衝突ビーム系における主なタイプのイオン軌道を示す。ベータトロン軌道112は、零サークル114上に中心がある正弦波として表され得る。上で説明されたように、この零サークル114上の磁場は、消滅する。軌道112の平面は、FRCの軸78に対して垂直である。この軌道112中のイオンは、出発点116からその反磁性方向102で移動する。ベータトロン軌道中のイオンは、以下の2つの運動を有する:半径方向の振動(零サークス114に対して垂直)、および零サークル114に沿った並進。
【0067】
図12Aは、FRCにおける磁場118のグラフである。この磁場118は、一次元平衡モデルを使用して誘導され、本発明の理論と共に以下で考察される。このグラフの横軸は、FRC軸78からの距離(cm)を表す。磁場は、キロガウスで表される。グラフが示すように、磁場118は、零サークルの半径120において、消失する。
【0068】
図12Bに示されるように、零サークル付近で移動する粒子は、零曲面86から離れる方向に向いた磁場の勾配126に遭遇する。零サークルの外側の磁場は、122であり、一方、零サークルの内側の磁場は、124である。勾配ドリフトの方向は、クロス乗積:
【0069】
【数17】

であり、ここで、
【0070】
【数18】

は、磁場の勾配である;従って、イオンが零サークル128の外側にあっても内側にあっても、右手の法則を用いることによって、勾配ドリフトの方向が逆反磁性方向であることが理解され得る。
【0071】
図13Aは、FRCにおける電場130のグラフである。この電場130は、一次元平衡モデルを使用して誘導され、これは本発明の理論と共に以下で考察される。このグラフの横軸は、FRC軸78からの距離(cm)を表す、この電場は、ボルト/cmで表される。グラフが示すように、電場130は、零サークルの半径120に接近すると消滅する。
【0072】
図13Bに示されるように、イオンの電場は、閉じ込められない(deconfining);この電場は、零曲面132、134から離れる方向を向いている。前記のように、磁場は、方向122、124である。右手の法則を用いることによって、このイオンが、零曲面136の外側にあっても内側にあっても、
【0073】
【数19】

ドリフトの方向が、反磁性方向であることが理解され得る。
【0074】
図14Aおよび14Bは、FRCにおける別のタイプの共通軌道(ドリフト軌道138と呼ばれる)を示す。ドリフト軌道138は、図14Aに示されるように、零曲面の外側にあり得るか、または図14Bに示されるように、零曲面の内側にあり得る。
【0075】
【数20】

ドリフトが、優勢であるかまたは逆反磁性方向(勾配ドリフトが優性である場合)である場合、ドリフト軌道138は、反磁性方向に回転する。図14Aおよび14Bに示されるドリフト軌道138は、反磁性方向102で、出発点116から回転する。
【0076】
ドリフト軌道は、図14Cに示されるように、相対的に大きな円上を回転する小さな円と考えられ得る。この小さな円142は、センス144中の軸の周りを回る。これはまた、方向102で、大きな円146上を回る。点140は、空間において、138と類似の経路をたどる。
【0077】
図15Aおよび15Bは、FRCの終点におけるローレンツ力の方向を示す。図15Aにおいて、磁場150中を速度148で反磁性方向102に移動するイオンが示される。右手の法則を用いることによって、ローレンツ力152が、閉じた磁力線の領域にイオンを押し戻す傾向があることが理解され得る。従って、この場合、ローレンツ力152は、イオンを閉じ込める。図15Bにおいて、磁場150中を速度148で逆反磁性方向に移動するイオンが示される。右手の法則を用いることによって、ローレンツ力152が、開いた磁力線の領域にイオンを押し戻す傾向があることが理解され得る。従って、この場合、ローレンツ力152は、イオンを閉じ込めない。
【0078】
(FRCにおける磁気的閉じ込めおよび静電的閉じ込め)
プラズマ層106(図10を参照のこと)は、イオンの反磁性方向102で、零曲面86の周りにエネルギー性イオンビームをインジェクトすることによって、FRC中に形成され得る(FRCおよびプラズマリングの異なる形成方法の詳細な考察は、以下の通りである)。循環プラズマ層106において、イオンのほとんどは、ベータトロン軌道112を有し(図11を参照のこと)、エネルギー性であり、そして非断熱性である;従って、これらは、異常輸送を引き起こす短波長揺らぎに対して非感受性である。
【0079】
上記のような平衡条件におけるプラズマ層106の研究中に、運動量の保存が、イオンの角速度ωと電子の角速度ωとの間の関係をとることが発見された(この関係の誘導は、本発明の理論と共に以下に示される)。この関係は、以下である:
ω=ω[1−ω/Ω]、ここで、Ω=Z/mc (4)
方程式4において、Zは、イオンの原子番号であり、mは、イオン質量であり、eは、電子の電荷であり、Bは、付与される磁場の大きさであり、そしてcは、光速である。この関係において、以下の3つの自由なパラメータがある:付与される磁場B、電子の角速度ω、およびイオンの角速度ω。これらのうち2つが、既知である場合、3番目は、方程式4から決定され得る。
【0080】
プラズマ層106は、イオンビームをFRC中にインジェクトすることによって形成されるため、イオンの角速度ωは、以下で与えられるビームのインジェクション運動エネルギーWによって決定される:
=1/2×m=1/2×m(ω
ここで、V=ωであり、ここで、Vは、イオンのインジェクション速度であり、ωは、イオンのサイクロトロン振動数であり、そしてrは、零曲面86の半径である。電子質量mは、イオン質量mよりはるかに小さいため、ビーム中の電子の運動エネルギーは、無視されている。
【0081】
ビームの一定のインジェクション速度(一定のω)について、付与される磁場Bは、調整され得、その結果、ωの異なる値が取得可能である。示されるように、外部磁場Bを調整することはまた、プラズマ層の内側の異なる値の静電場を生じる。本発明のこの特徴は、図16Aおよび16Bに例示される。図16Aは、同じインジェクション速度、ω=1.35×10−1であるが、付与される磁場Bの以下の3つの異なる値について得られた電場(ボルト/cm)の3つのプロットを示す:
【0082】
【数21】

上記の表中のωの値を、方程式4に従って決定した。方程式4において、ω>0は、Ω>ωを意味し、その結果、電子は、逆反磁性方向で回転することを理解する。図16Bは、Bおよびωの値の同じセットについての電位(ボルト)を示す。図16Aおよび16Bにおいて、横軸は、FRC軸78からの距離を表す(このグラフ中でcmで示される)。電場および電位の解析式は、本発明の原理と共に以下に示される。これらの式は、ωに強く依存する。
【0083】
上記の結果は、簡単な物理的根拠で説明され得る。イオンが反磁性方向で回転する場合、このイオンは、ローレンツ力によって磁気的に閉じ込められる。これは、図9Aで示された。イオンと同じ方向で回転している電子について、ローレンツ力は、反対方向であり、その結果、この電子は閉じ込められない。電子はプラズマを出て、そして結果として、過剰な正電荷が生成される。これは、他の電子がプラズマを出ることを妨害する電場を生成する。平衡状態におけるこの電場の方向および大きさは、運動量の保存によって決定される。関連の数学的な詳細は、本発明の理論と共に以下に示される。
【0084】
静電場は、電子およびイオンの両方の輸送において不可欠な役割を果たす。従って、本発明の重要な局面は、強力な静電場が、プラズマ層106の内側で生成されることであり、この静電場の大きさは、容易に調節され得る付与される磁場Bの値により制御される。
【0085】
説明されるように、静電場は、ω>0の場合に、電子を閉じ込める。図16Bに示されるように、井戸の深さは、付与される磁場Bを調整することによって、増加され得る。零サークル付近の非常に狭い領域を除いて、電子は、常に、小さなジャイロ半径を有する。従って、電子は、異常に速い拡散速度を有する短波長揺らぎに応答する。実際に、この拡散は、一旦、融合反応が起こると、ポテンシャル井戸を維持するのを助ける。非常に高エネルギーの融合生成物のイオンは、プラズマを出る。電荷を準中性に維持するために、この融合生成物は、電子をこの融合生成物と共にプラズマから押し出し、主にこの電子をプラズマ層の表面から取り出さなければならない。プラズマの表面の電子の密度は非常に低く、そして融合生成物と共にプラズマを出る電子は、置換されるべきであり;そうでなければ、このポテンシャル井戸は消失する。
【0086】
図17は、電子のマクスウェル分布162を示す。マクスウェル分布のテール160からの非常にエネルギー性の電子のみが、プラズマの表面に到達し、そして融合イオンと共に出得る。従って、この分布162のテール160は、零局面付近の高密度領域における電子−電子衝突によって連続的に生成される。エネルギー性の電子はなお、小さなジャイロ半径を有し、その結果、異常な拡散は、これらの電子が、発散している融合生成物のイオンに適応するのに充分に速く表面に到達するのを可能にする。このエネルギー性電子は、ポテンシャル井戸を上げるそれらのエネルギーを失い、そして非常に小さいエネルギーで出ていく。異常な輸送に起因して、電子は磁場を迅速に横切り得るが、わずかなエネルギーが輸送されるので、異常なエネルギー損失が回避される傾向がある。
【0087】
ポテンシャル井戸の別の結果は、気化冷却に類似した電子の強力な冷却機構である。例えば、蒸発する水の場合、蒸発熱が供給されなければならない。この熱は、液体の水および周辺の媒体を維持することによって供給され、これらは次いで、熱輸送プロセスがエネルギーを交換し得るよりも速く、低温まで迅速に熱化する。同様に、電子について、ポテンシャル井戸の深さは、水の蒸発熱と等しい。電子は、マクスウェルテールのエネルギーを再供給する熱化プロセスによって、ポテンシャル井戸を上げるのに必要なエネルギーを供給し、その結果、この電子は出ていき得る。従って、この熱化プロセスは、任意の加熱プロセスよりもはるかに速い場合、より低い電子温度を生じる。電子と陽子との間の質量差に起因して、陽子からのエネルギー移動時間は、電子の熱化時間より約1800倍短い。この冷却機構はまた、電子の放射損失を減少する。これは、放射損失が原子番号Z>1の燃料イオンにより促進される次世代燃料に、特に重要である。
【0088】
静電場はまた、イオン輸送に影響を与える。プラズマ層106中の粒子軌道の大部分は、ベータトロン軌道112である。大きな角度の衝突、すなわち、90°と180°との間の散乱角を有する衝突は、ベータトロン軌道をドリフト軌道に変え得る。上記のように、ドリフト軌道の回転の方向は、
【0089】
【数22】

ドリフトと勾配ドリフトとの間の競合によって決定される。
【0090】
【数23】

ドリフトが優勢である場合、このドリフト軌道は、反磁性方向に回転する。勾配ドリフトが優勢である場合、このドリフト軌道は、逆反磁性方向に回転する。これは、図18Aおよび18Bに示される。図18Aは、180°衝突に起因する、ベータトロン軌道からドリフト軌道への移行を示し、これは、点172で生じる。
【0091】
【数24】

ドリフトが優勢であるので、このドリフト軌道は、反磁性方向で回転し続ける。図18Bは、別の180°衝突を示すが、この場合、静電場は弱く、そして、勾配ドリフトが優勢である。従って、ドリフト軌道は、逆反磁性方向に回転する。
【0092】
ドリフト軌道の回転方向は、これが制限されるか否かを決定する。ドリフト軌道内で移動する粒子はまた、FRC軸に対して平行な速度を有する。その平行移動の結果として、粒子がFRCの一方の端から他方の端まで移動するのにかかる時間は、遷移時間と呼ばれる;従って、ドリフト軌道は、移行時間のオーダーの時間で、FRCの端部に到達する。図15Aと共に示されるように、この端部におけるローレンツ力は、反磁性方向で回転するドリフト軌道のみを制限する。従って、遷移時間の後、逆反磁性方向で回転しているドリフト軌道は、消失する。
【0093】
この現象は、全てのFRC実験において存在していると予想されるイオンの消失機構を説明する。実際に、これらの実験において、イオンは、電流の半分を輸送し、そして電子は、残りの半分を輸送した。この条件において、プラズマの内側の電場は、無視でき、そして勾配ドリフトは、常に、
【0094】
【数25】

ドリフトを支配した。従って、大きな角度の衝突により生成される全てのドリフト軌道は、遷移時間の後に失われた。これらの実験により、イオン拡散速度が、古典的な拡散推定値により予測される速度よりも速いことが報告された。
【0095】
強力な磁場が存在する場合、
【0096】
【数26】

ドリフトは、勾配ドリフトを支配し、そしてドリフト軌道は、反磁性方向に回転する。これは、図18Aと共に示された。これらの軌道が、FRCの端部に到達する場合、これらは、ローレンツ力によって、閉じた磁力線の領域に反射して戻される;従って、これらはこの系内に閉じ込められたままである。
【0097】
衝突ビーム系中の静電場は、
【0098】
【数27】

ドリフトが勾配ドリフトを支配するのに充分に強くあり得る。従って、この系の静電場は、このイオン消失機構(これはミラーデバイスにおける損失円錐と類似している)を排除することによって、イオン輸送を回避する。
【0099】
イオン拡散の別の局面は、ベータトロン軌道に対する小さな角度の電子−イオン衝突の影響を考慮することによって、理解され得る。図19Aは、ベータトロン軌道112を示し;図19Bは、小さな角度の電子−イオン衝突が考えられる場合174の同じ軌道112を示し;図19Cは、10だけ長い時間176にわたって追跡した図19Bの軌道を示し;そして図19Dは、20だけ長い時間178にわたって追跡した図19Bの軌道を示す。ベータトロン軌道の位相が、小さい角度の電子−イオン衝突に起因して変化しないことが分かり得る;しかし、これらの半径方向の衝突の振幅は、時間と共に増加する。実際に、図19A〜19Dに示される軌道は、時間と共にふくらみ、このことは、古典的な拡散を示す。
【0100】
(発明の理論)
本発明をモデル化するために、図10に示されるように、衝突ビーム系についての一次元平衡モデルを使用する。上記の結果は、このモデルから導かれた。このモデルは、粒子密度、磁場、電場および電位についての平衡式をどのように導き出すかを示す。本明細書中に示される平衡モデルは、1つのタイプのイオン(例えば、D−D反応)または複数のタイプのイオン(例えば、D−T、D−He、およびp−B11)を含むプラズマ燃料に有効である。
【0101】
(ブラソフ−マクスウェル方程式)
FRC中の粒子密度および電磁場についての平衡解は、以下のブラソフ−マクスウェル方程式を首尾一貫して解くことによって得られる:
【0102】
【数28】

ここで、電子および各イオン種について、j=e、iであり、i=1,2,...である。平衡状態において、全ての物理量は、時間から独立している。
【0103】
【数29】

このブラソフ−マクスウェル方程式を解くために、以下の仮定および近似を行う:
(a)全ての平衡特性は、軸方向位置zから独立している。
【0104】
【数30】

これは、軸方向の無限次拡大を有するプラズマを考えることに対応する;従って、このモデルは、FRCの中央部88にのみ有効である。
【0105】
(b)この系は、円柱状の対称性を有する。従って、全ての平衡特性は、θに依存しない。
【0106】
【数31】

(c)ガウスの法則、方程式8は、準中性条件で置き換えられる:
【0107】
【数32】

FRCの軸方向の無限次拡大および円柱状の対称性を仮定することによって、全ての平衡特性は、半径方向座標rにのみ依存する。このため、本明細書中で議論される平衡モデルは、一次元と呼ばれる。これらの仮定および近似を用いると、ブラソフ−マクスウェル方程式は、以下のように減る:
【0108】
【数33】

(剛性回転子分布)
方程式10〜12を解くために、FRC中の電子およびイオンの回転ビームを適切に表す分布関数を選択しなければならない。この目的のための合理的な選択は、いわゆる剛性回転子分布であり、これは、均一に回転している基準系中のマクスウェルの分布である。剛性回転子分布は、運動の定数の関数である:
【0109】
【数34】

ここで、mは、粒子の質量であり、
【0110】
【数35】

は、速度であり、Tは、温度であり、n(0)は、r=0における密度であり、ωは、定数である。運動定数は、以下である:
【0111】
【数36】

ここで、Φは、電位であり、そしてΨは、束関数である。電磁場は、以下である:
【0112】
【数37】

エネルギーおよび正準角運動量についての式を、方程式13に置き換えて、以下を得る:
【0113】
【数38】

ここで、
【0114】
【数39】

である。方程式14における平均速度が均一に回転するベクトルであることが、剛性回転子の名の由来である。当業者は、ヴラソフ方程式(方程式10)を満たす唯一の解が、剛性回転子分布(例えば、方程式14)であるので、FRC中の電子およびイオンを表すための剛性回転子分布の選択が正しいことを理解し得る。この主張の証明は、以下である:
(証明)
本発明者らは、ドリフトマクスウェル(drifted Maxwellian)の形式のヴラソフ方程式(方程式10)の解を必要とする:
【0115】
【数40】

すなわち、位置の任意関数である粒子密度n(r)、温度T(r)、および平均速度u(r)を用いるマクスウェル。ヴラソフ方程式(式10)への方程式16の置換は、(a)温度T(r)が定数でなければならず;(b)平均速度
【0116】
【数41】

が均等に回転するベクトルでなければならず;そして(c)粒子密度n(r)が方程式15の形態でなければならないことを示す。方程式16の方程式10への置換は、
【0117】
【数42】

において3次多項方程式を生じる:
【0118】
【数43】


【0119】
【数44】

における類似する次数の項をグループ分けすることによって、
【0120】
【数45】

を生じる。この多項方程式について全ての
【0121】
【数46】

に対して保持するために、
【0122】
【数47】

の各力の係数は、0にならなければならない。
【0123】
3次方程式によって、T(r)=定数になる。
【0124】
2次方程式は、
【0125】
【数48】

を与える。これについて全ての
【0126】
【数49】

に対して保持するために、本発明者らは、
【0127】
【数50】

を満たさなければならず、これは、一般的に、
【0128】
【数51】

によって解かれる。円柱座標において、
【0129】
【数52】

の場合、これは、
【0130】
【数53】

方向での磁場に対して垂直の注入に対応する。従って、
【0131】
【数54】

である。
【0132】
0次の方程式は、電場が放射状方向でなければならないこと、すなわち、
【0133】
【数55】

を示す。
【0134】
1次方程式をここで、
【0135】
【数56】

によって提供する。方程式18中の第2項は、
【0136】
【数57】

と書き直すことができる。方程式18の第4項は、
【0137】
【数58】

と書き直すことができる。方程式19および20を用いて、1次方程式18は、
【0138】
【数59】

になる。この方程式の解は、
【0139】
【数60】

であり、ここで、E=−dΦ/drおよびn(0)は、
【0140】
【数61】

によって提供される。ここで、nj0は、rにおけるピーク密度である。
【0141】
(ヴラソフ−マクスウェル方程式の解)
剛性ローター分布によってイオンおよび電子を記載することが適切であることが証明された以上、ヴラソフ方程式(方程式10)は、その1次モーメント、すなわち
【0142】
【数62】

によって置換され、この1次モーメントは、運動量保存の方程式である。平衡解を得るためにこの系の方程式は、
【0143】
【数63】

へと既約形にされる。
【0144】
(1つの型のイオンを有するプラズマについての解)
完全に分解された1つの型のイオンの場合を、最初に考える。電荷を、e=−e,Zeで与える。電子方程式を用いてEについて方程式24を解くことによって、
【0145】
【数64】

を得、そしてイオン方程式からEを排除することによって、
【0146】
【数65】

を得る。rについて方程式28を微分し、そしてdB/drについて方程式25を置換することによって、
【0147】
【数66】

を得、ここで、T=T=定数であり、そしてω、ωは定数であり、
【0148】
【数67】

を得る。
【0149】
新しい変数ξ:
【0150】
【数68】

を導入する。方程式29は、この新しい変数ξに関して:
【0151】
【数69】

と表現され得る。
【0152】
準中立な条件
【0153】
【数70】

を用いて、
【0154】
【数71】

を得る。
【0155】
ここで、
【0156】
【数72】

(33)が規定され、ここで、Δrの意味は、すぐに明らかとなる。N=n/ni0である場合、ni0は、r=rにおけるピーク密度であり、方程式32は、
【0157】
【数73】

になる。
【0158】
別の新規変数
【0159】
【数74】

を用いることによって、
【0160】
【数75】

を得、これに対する解は、
【0161】
【数76】

であり、ここで、χ=χ(r)である(N(r)=1である物理的な必要条件に起因する)。
【0162】
最後に、イオン密度は、
【0163】
【数77】

によって提供される。rの有意性は、ピーク密度の位置である。
【0164】
【数78】

であることに注意すること。既知のイオン密度を用いて、Bは、方程式11を用いて計算され得、そしてEは、方程式27を用いて計算され得る。
【0165】
電位および磁気ポテンシャルは、
【0166】
【数79】

である。
【0167】
【数80】

が壁における半径であるとすると(電位Φ(r)に対する表現が誘導される場合に明らかとなる選択であり、
【0168】
【数81】

においてポテンシャルがゼロであること(すなわち接地での伝導壁)を示す)、このライン密度は、
【0169】
【数82】

である。従って、Δrは、「有効な厚み」を表す。言い換えると、ライン密度のために、プラズマは、一定の密度ne0を有する厚みΔrのリング中のヌルの円において濃縮すると考えられ得る。
【0170】
磁場は、
【0171】
【数83】

である。イオンビームおよび電子ビームに起因する電流は、
【0172】
【数84】

である。方程式39を用いて、磁場は、
【0173】
【数85】

と記載され得る。方程式40において、
【0174】
【数86】

である。プラズマ電流Iθが消滅する場合、磁場は、予想されるように、一定である。
【0175】
これらの関係を、図20A〜20Cに例示する。図20Aは、外部磁場
【0176】
【数87】

180を示す。図20Bは、電流182のリングに起因する磁場を示し、この磁場は、(2π/c)Iθの大きさを有する。図20Cは、2つの磁場180、182の重複に起因する磁場反転184を示す。
【0177】
この磁場は、
【0178】
【数88】

であり、βについて以下:
【0179】
【数89】

の定義を用いる。
【0180】
磁場についての表現を用いて、電位および磁気の流れを計算し得る。方程式27から、
【0181】
【数90】

である。
【0182】
方程式28の両辺をrについて積分し、そして電位および流れ関数の定義:
【0183】
【数91】

を使用して、
【0184】
【数92】

を得る。
【0185】
ここで、磁気の流れは、磁場の表現(方程式41)から直接計算され得る
【0186】
【数93】

。方程式46を方程式45に置換することによって、
【0187】
【数94】

を得る。βの定義を用いて、
【0188】
【数95】

である。最後に、方程式48を用いて、電位および流れの関数についての表現は、
【0189】
【数96】

になる。
【0190】
(ωとωとの間の関係)
電子角運動量ωについての表現もまた、方程式24〜26から誘導し得る。イオンが平均エネルギー1/2m(rωを有することが想定され、これは、FRCの形成方法によって決定される。従って、ωは、FRC形成方法によって決定され、そしてωは、電子およびイオンについての方程式を組み合わせて磁場を排除することによって、方程式24により決定され得る:
【0191】
【数97】

。次いで、方程式25は、(ω−ω)を排除するように使用されて、
【0192】
【数98】

を得る。方程式52は、r=0から
【0193】
【数99】

まで積分され得る。r/Δr>>1であると想定すると、密度は、境界および
【0194】
【数100】

の両方において非常に小さい。この積分を実行することによって、
【0195】
【数101】

が示される。Δrについて方程式33を用いて、ωについての方程式:
【0196】
【数102】

を得る。
【0197】
方程式54から誘導されるいくつかの極限の場合は、
【0198】
【数103】

である。
【0199】
第1の場合、電流は、その反磁性方向に電子を移動させることによって完全に輸送される(ω<0)。この電子は、磁気的に閉じ込められ、そしてイオンは、
【0200】
【数104】

によって静電気的に閉じ込められる。
【0201】
第2の場合、電流は、その反磁性方向にイオンを移動させることによって完全に輸送される(ω>0)。ωがイオンエネルギー1/2m(rωから特定される場合(形成プロセスにて決定される)、ω=0およびΩ=ωは、B(外的に適用された磁場)の値を同定する。イオンは磁気的に閉じ込められ、そして電子は、
【0202】
【数105】

によって静電気的に閉じ込められる。
【0203】
第3の場合、ω>0およびΩ>ωである。電子は、その逆反磁性方向(counter diamagnetic direstion)で移動し、そして電流密度を低下させる。方程式33から、分布n(r)の幅は増大するが;全体の電流/単位長は、
【0204】
【数106】

である。
【0205】
ここで、方程式33に従って、
【0206】
【数107】

である。電子角運動量ωは、適用された磁場Bをチューニングすることによって増大され得る。これは、Iθもプラズマ電流によって生成される最大磁場(これは、
【0207】
【数108】

である)も変化させない。しかし、これは、Δrを変化させ、そしてポテンシャルΦを有意に変化させる。Φの最大値は、電子を閉じ込める電場であるので、増大される。
【0208】
(磁場のチューニング)
図21A〜Dにおいて、量
【0209】
【数109】

を、種々の値のBについて、r/r 194に対してプロットする。ポテンシャルおよび流れの値を、Φ=20(T+T)/eおよびΨ=(c/ω)Φに対して正規化する。以下のデータを有する重水素プラズマが想定される:
【0210】
【数110】

。図21に例示される場合の各々について、ω=1.35×10−1であり、ωは、種々の値のBについて方程式54から決定される。
【0211】
【数111】

ω=−ωおよびB=1.385kGの場合は、電子およびイオンの両方の磁場閉じ込めを含む。このポテンシャルは、Φ/Φ=m(rω/[80(T+T)]に変換され、これは、ω=0の場合と比較して無視してよい。密度分布の幅Δrは、2の因数で換算され、そして最大磁場
【0212】
【数112】

は、ω=0についての最大磁場と同じである。
【0213】
(複数の型のイオンのプラズマに関する解)
この分析を、複数の型のイオンを含むプラズマを含有するように実施し得る。目的の核融合燃料は、2種の異なる種のイオン(例えば、D−T、D−He、およびB11)を含む。この等式(等式24〜26)は、j=e、1、2は、各場合においてZ=1である場合、そして上記燃料に対してZ=Z=1、2、5である場合、電子および2種の型のイオンを示すことを除いて、適用する。電子および2種の型のイオンの関する等式では、初等関数の点から正確に解かれ得ない。従って、適切な解で開始する反復法が、開発されている。
【0214】
このイオンは、同一の値の温度および平均速度V=rωを有すると仮定される。イオン−イオン衝突はこの状態への分布を駆動し、そしてイオン−イオン衝突の関する運動量移動時間は、1000桁の因子でイオン−電子衝突よりも短い。近似を使用することによって、2種の型のイオンに関する問題点を、単一のイオンの問題点にまで減少させる。イオンに関する運動量の保存は、以下のとおりである:
【0215】
【数113】

この場合において、T=Tおよびω=ωである。これらの2つの等式を加算することにより、以下:
【0216】
【数114】

が得られ、ここで、n=n+n;ω=ω=ω;T=T=T;n〈m〉=n+n;およびn〈Z〉=n+nZである。
【0217】
この近似は、〈m〉および〈Z〉が、n(r)およびn(r)をn10およびn20(それぞれの関数の最大値)で置換することによって得られる定数であると仮定する。ここで、この問題の解は、〈Z〉をZに置換し、そして〈m〉をmに置換することを除いて、単一のイオン型のための上記の解と同一である。nおよびnの値は、n+n=nおよびn+Zn=n=〈Z〉nから得られ得る。nおよびnが同一の関数形式を有することが認められ得る。
【0218】
ここで、正しい解は、以下の等式:
【0219】
【数115】

を反復することによって得られ得、ここで、以下のとおりである:
【0220】
【数116】

第1の反復は、等式62および63の右辺の部分のB(ξ)およびN(ξ)の近似値を置換し、そしてn(r)、n(r)、およびB(r)の補正値を得るために積分することによって得られ得る。
【0221】
計算は、以下の表1に示されるデータに関して実施した。核融合燃料に関する数値結果を、22A−D〜24A−Dに示し、ここで、数量n/n10206、Φ/Φ208、およびΨ/Ψ210を、r/r204に対してプロットする。図22A−Dは、D196の規格化された密度、T 198の規格化された密度、規格化された電位200、および規格化された磁束202に関数するD−Tの反復の最初の近似(実線)および最終の結果(点線)を示す。図23A−Dは、D212の規格化された密度、He214の規格化された密度、規格化された電位216、および規格化された磁束218に関するD−Heの同様の反復を示す。図24A−Dは、p220の規格化された密度、B11 222の規格化された密度、規格化された電位224、および規格化された磁束226に関するp−B11の同様の反復を示す。この反復の収束は、D−Tで最も迅速である。全ての場合において、この第1の近似は、大集結果に近い。
【0222】
(表1:異なる核融合燃料の平衡計算に関する数値的データ)
【0223】
【表1】



(閉じ込めシステムの構造)
図25は、本発明に従う閉じ込めシステム300の好ましい実施形態を例示する。この閉じ込めシステム300は、この閉じ込めシステム内に充填チャンバ310を規定するチャンバ壁305を備える。好ましくは、このチャンバ310は、円筒形状であり、主軸315は、このチャンバ310の中心に沿っている。閉じ込めシステム300を融合反応に適用するために、このチャンバ310内部に真空状態または真空に近い状態を作製することが必要である。主軸315の同軸には、kのチャンバ310内に配置されたベータトロン束コイル320が存在する。このベータトロン束コイル320は、示されるように、長いコイルの回りに直流が適用された、電流輸送媒体を備え、この長いコイルは、好ましくは、平行な多重の巻線分離コイル、そして最も好ましくは、平行な約4回の巻線分離コイルを備え、長いコイルを形成する。当業者は、ベータトロンコイル320を流れる電流により、ベータトロンコイル320内に磁場を実質的に主軸315の方向に生じることを理解する。
【0224】
このチャンバ壁305の外側の周りに、外側コイル325が存在する。この外側コイル325は、主軸315と実質的に平行に磁束を有する、比較的一定の磁場を生じる。外側コイル325に起因する磁場が一定であり、そして軸315に対して平行であるという近似は、このチャンバ310の末端とは関係なく最も有効である。このチャンバ310の各末端は、ミラーコイル330である。このミラーコイル330は、各末端においてチャンバ310内に増加した磁場を生じるように適用され、従って、各末端において磁力線を内向きに曲げる(図8および10を参照のこと)。説明されるように、この磁力線を内向きに曲げることは、閉じ込めシステム300を脱出し得る末端から遠くプラズマを押し出すことによって、このチャンバ310内の閉じ込め領域中の、ほぼミラーコイル330の間にプラズマ335が閉じ込められるのを助ける。このミラーコイル330は、当該分野で公知の種々の方法(ミラーコイル330内の巻線の数を増加させること、ミラーコイル330を流れる電流を増加させること、または外部コイル325でミラーコイル330を覆うことを含む)によって、この末端に増加した磁場を生じるように適用され得る。
【0225】
この外部コイル325およびミラーコイル330は、図25に示されように、チャンバ壁305の外側で与えられるが、しかし、これらは、チャンバ310の内側であってもよい。このチャンバ壁305が金属のような伝導性材料から構成される場合、このチャンバ壁305の内側にコイル325、330を配置することが有利であり得る。なぜならば、磁場がこの壁305を通って拡散するのにかかる時間が比較的長く、それによりこの系300が遅鈍に反応するからである。同様に、このチャンバ310は、中空の円筒形状の長い環状リングを形成するチャンバ壁305であり得る。このような場合、ベータトロン束コイル320は、この環状リングの中心においてチャンバ壁305の外側に与えられる。好ましくは、環状リングの中心に形成する内部壁は、ガラスのような非導電性の材料を含み得る。明らかであるように、このチャンバ310は、循環プラズマビームまたは層335が、所定の半径で主軸315の回りを回転するのを可能にするのに十分なサイズおよび形状でなければならない。
【0226】
このチャンバ壁305は、スチール鋼のような高い透磁率を有する材料から形成され得る。このような場合、材料中に誘導される対電流に起因して、このチャンバ壁305は、磁束がチャンバ310を脱出しないようにする(磁束を「圧縮する」)のを助ける。このチャンバ壁がプレキシグラスのような低い透磁率を有する材料から作製され得る場合、この磁束を閉じ込めるための別のデバイスが必要である。このような場合、一連の閉ループであるフラットな金属リングが提供され得る。磁束デリミッターとして当該分野で公知のこれらのリングは、外側コイル325内側だが、循環プラズマビーム335の外側に提供される。さらに、これらの磁束デリミッターは、受動性または活性であり得、ここで、この活性磁束デリミッターは、チャンバ310内において磁束の閉じ込めをより促進するために所定の電流で駆動される。あるいは、この外側コイル325自体は、磁束デリミッターとして役立ち得る。
【0227】
上で説明されるように、荷電した粒子を含む循環プラズマビーム335は、外側コイル325に起因して、磁場によって生じるローレンツ力によってチャンバ310内に閉じ込められ得る。このように、プラズマビーム335内のイオンは、外側コイル325から磁束線の回りの大きなベータトロン軌道内に磁気的に閉じ込められ、この軌道は、主軸315に対して平行である。1つ以上のビーム注入ポート340はまた、チャンバ310中で循環プラズマビーム335にプラズマイオンを加えるために提供される。好ましい実施形態において、この注入ポート340は、循環プラズマビーム335が閉じ込められる主軸315から同一の半径位置(すなわち、零曲面)においてイオンビームを注入するように適用される。さらに、この注入ポート340は、この閉じ込められたプラズマビーム335のベータトロン軌道に対して接線方向に、イオンビーム350を注入するように適用される(図28を参照のこと)。
【0228】
一群の非エネルギー性プラズマをチャンバ310に注入するために、1つ以上のバックグラウンドプラズマ供給源345もまた提供される。好ましい実施形態において、このバックグラウンドプラズマ供給源345は、チャンバ310の中心軸に対してプラズマ335を方向付けするために適用される。このプラズマを方向付けするこの方法は、プラズマ335をより良好に閉じ込めるのを助け、そしてチャンバ310内の閉じ込め領域内でより高密度のプラズマ335に導く。
【0229】
(FRCの形成)
FRCを形成するために使用される従来の手順は、θ狭窄領域の反復手順を主に使用する。この従来の方法において、磁気バイアス領域は、中性ガスバック充填チャンバの周りの外部コイルによって適用される。一旦、これが生じると、このガスはイオン化され、そして磁性バイアス領域は、プラズマ中で凍結される。次に、外部コイル中の電流を迅速に逆方向に向け、そして先に凍結されたラインと接続する磁力線を逆方向に向け、閉じたFRC位相を形成する(図8を参照のこと)。この形成プロセスは、ほぼ経験的であり、そしてFRCの形成を制御する手段はほとんど存在しない。この方法は、乏しい再現性を有し、そして結果としてチューニング能力を有さない。
【0230】
対照的に、本発明のFRC形成方法は、アンプルの制御を可能にし、そしてかなりより認識されないプロセスおよび再現可能なプロセスを提供する。実際に、本発明の方法によって形成されたこのFRCはチューニングされ得、そしてその形状および他の特性は、外側領域のコイル325によって適用された磁場の操作によって直接的に影響され得る。本発明の方法によるFRCの形成はまた、上記の方法における電場および電位壁の形成より生じる。さらに、本発明の方法は、リアクターレベルパラメーターおよび高エネルギー燃料電流までFRCを加速し、そして従来のイオンの閉じ込めを有利に可能にすることが容易に達せられる。さらに、この技術は、コンパクトなデバイス中で使用され得、そして反応器系のための全ての非常に所望される特性を与えるのを非常に強力にかつ容易にする。
【0231】
本発明の方法において、FRCの形成は、循環プラズマビーム335に関連する。この循環プラズマビーム335は、これは電流であるので、循環ワイヤ中の電流と同様に、ポロイダル磁場を形成することが理解され得る。この循環プラズマビーム335の内側で、誘導する自己電場は、外側コイル325に起因して外側に適用された磁場と対立する。プラズマビーム335の外側で、自己電場は、適用された磁場と同一方向である。プラズマイオン電流が十分大きい場合、自己電場は、適用された領域を覆い、そしてこの磁場は、循環プラズマビーム335の内側へと反転し、これによって、図8および10に示されるようにFRC位相を形成する。
【0232】
磁場反転の要求値は、単純なモデルで見積もられ得る。大きな半径rおよび小さな半径a<<rのリングによって実施される電流Iを考える。このリングに対するリング基準の中心の磁場は、B=2πI/(cr)である。リングの電流I=Ne(Ω/2π)は、角速度Ωを有するNによって輸送されると仮定する。半径r=V/Ωで循環する単一イオンについて、Ω=eB/mcが外部磁場Bのサイクロトロン振動数である。Vが、ビームイオンの平均速度であると仮定する。磁場反転は、以下のように規定され:
【0233】
【数117】

これは、N>2r/α、および以下:
【0234】
【数118】

を意味し、ここで、α=e/m=1.57×10−16cmであり、そしてこのイオンビームのエネルギーは、1/2mである。1つの寸法モデルにおいて、プラズマ電流由来の磁場は、B=(2π/c)iであり、ここで、iは、単位長さあたりの電流である。この磁場反転の要求値は、i>eV/πrα=0.225kA/cmであり、ここで、B=69.3Gであり、そして1/2m=100eVである。周期リングのモデルについて、Bは、軸座標<B>=(2π/c)(I/s)(sは、リングのスペースである)で平均化され、s=rである場合、このモデルは、i=I/sを有する1つの寸法モデルと同一の平均磁場を有する。
【0235】
(組み合わせビーム/ベータトロン形成の技術)
上記の閉じ込めシステム300内にFRCを形成する好ましい方法は、本明細書において、組み合わせビーム/ベータトロン形成と呼ばれる。このアプローチは、プラズマイオンの低いエネルギービームと、ベータトロン束コイル320を使用するベータトロン加速度を組み合わせる。
【0236】
この方法の第1の工程は、バックグラウンドプラズマ供給源345を使用してチャンバ310中に、実質的に環状の一群の層のバックグラウンドプラズマを注入することである。外側コイル325は、このチャンバ310内に磁場を形成し、これにより、バックグラウンドプラズマに磁場を与える。短い期間で、低エネルギーのイオンビームは、チャンバ310内の外側に適用された磁場に対して実質的に横軸方向に、注入ポート340を介してチャンバ310に注入される。上で説明したように、イオンビームは、大きなベータトロン軌道のチャンバ310内で、この磁場によって捕捉される。このイオンビームは、イオン加速器(例えば、イオンダイオードおよびMarx発生器を備えた加速器)によって発生され得る(R.B.Miller,An Introduction to the
Physics of Intense Charged Particle Beams,(1982)を参照のこと)。当業者に理解されるように、外部に適用された磁場は、イオンビームがチャンバ310に入るとすぐに、この注入されたイオンビームにローレンツ力を及ぼすが、このビームは偏向せず、イオンビームが循環プラズマビーム335に到達するまでベータトロン軌道に入らないことが所望される。この問題を解決するために、このチャンバ310に入る前に、イオンビームは電子で中性化され、そして実質的に方向付けされていない磁場を介して方向付けされる。図26に例示されるように、イオンビーム350が適切な磁場を介して方向付けされた場合、正に荷電されたイオンおよび負に荷電された電子は、分離する。従って、このイオンビーム350は、電場に起因して、電気自己局在化を得る。この磁場は、例えば、永久磁石またはイオンビームの経路に沿った電磁石によって作製され得る。続いて、閉じ込めチャンバ310に導入される場合、得られる電場は、ビーム粒子の磁力と釣り合い、イオンビームが偏光しないようにする。図27は、イオンビーム350がプラズマ335と接触する場合のイオンビーム350の上面図を示す。示されるように、プラズマ335からの電子は、ビーム350に向かってまたは遠ざかるように電場に沿って移動し、これにより、ビームの電子局在化を弱める。このビームがもはや電気的に局在化しなくなった場合、このビームは、図25に示されるように、主軸315の回りのベータトロン軌道にある循環プラズマビーム335に加わる。
【0237】
このプラズマビーム335がこのベータトロン軌道中で移動する場合、この移動するイオンは電流を含み、次いで、ポロイダル自己電場を生じる。このチャンバ310内でFRC位相を形成するために、このプラズマビーム335の速度を上昇させ、これにより、プラズマビーム335が引き起こす自己電場の大きさを上昇させることが必要である。この自己電場が十分大きい場合、プラズマビーム335内の軸315からの半径距離における電場の距離が反転し、FRCを生じる(図8および10を参照のこと)。ベータトロン軌道内における循環プラズマビーム335の半径距離を維持するために、プラズマビーム335の速度が上昇するにつれて、外側コイル325から適用される磁場を上昇させることが必要である。従って、コントロールシステムが、外側コイル325を通る電流によって決定される、適切に適用された電場を維持するために提供される。あるいは、第2の外側コイルを使用して、加速される場合にこのプラズマビームの軌道の半径を維持するために必要とされる、さらに適用された磁場を提供し得る。
【0238】
この軌道において循環プラズマビーム335の速度を上昇させるために、このベータトロン束コイル320が提供される。図28を参照すると、アンペア則によってベータトロン束コイル320を流れる電流を増加させることによって、このチャンバ310内の方位電場Eを誘導することが理解され得る。プラズマビーム335内の正に荷電されたイオンは、この誘導された電場によって加速され、上記のような反転電場に導く。イオンビームが上記のように循環プラズマビーム335に加えられる場合、このプラズマビーム335が、イオンビームを脱分極化する。
【0239】
磁場反転に関して、循環プラズマビーム335は、好ましくは、約100eVの回転エネルギー、約75eV〜約125eVの範囲まで加速され得る。適切な融合条件に達するために、この循環プラズマビーム335を、好ましくは、約200keVまで、好ましくは、約100keV〜3.3MeVの範囲まで上昇させる。
【0240】
このベータトロン加速に関する必要な説明を展開するために、単一粒子の加速が最初に考慮される。イオンの回転半径r=V/Ωは、Vが増加するので変化し、そして適用された磁場は、以下の式のようにプラズマビームの軌道の半径r=V/Ωを維持するために、変化しなければならず:
【0241】
【数119】

ここで、以下:
【0242】
【数120】

であり、そしてΨは、磁束であり:
【0243】
【数121】

ここで、以下:
【0244】
【数122】

である。式67から、以下:
【0245】
【数123】

および<B>=−2B+Bに従い、BおよびBの両方の初期値は、Bである。等式67は、以下:
【0246】
【数124】

として表現され得る。初期状態から最終状態(ここで、1/2mV=Wおよび1/2mV=Wである)に積分後、磁場の最終地は、以下:
【0247】
【数125】

および
【0248】
【数126】

であり、B=69.3G、W/W=1000、およびr/rα=2であると仮定した。この計算は、イオン衝突に適用する。ただし、これらのイオンは、ほぼ同一の半径rに全て位置され、そしてこのイオンの数は、磁場を変えるのに不十分である。
【0249】
本発明を適用するために基本的なベータトロンの式の修正は、このリングが磁束ラインに沿って広げられ、そしてz帰属が無視され得ると仮定する、多重リングプラズマリングを記載するための1次元の等式に基づく。以下のように概略される等式はVlasov−Maxwell(ブラソフ−マクスウェル)等式の自己一貫性のある解である:
(a)密度分布は、以下:
【0250】
【数127】

であり、これは、電子およびプロトン(準中性(quasi neutrality)であると仮定する)に当てはまり;rは、最大密度の位置であり;そしてΔrは、この分布の幅であり;そして
(b)電場は、以下:
【0251】
【数128】

であり、ここで、Bは、外側コイル325によって作製される外側電場である。最初に、B=Bである。この解は、r=rαおよびr=rが、コンダクター(B標準=0)および電位Φ=0を有する等位ある境界条件を満たす。この境界条件は、r=(r+r)/2である場合に満たす。r=10cmであり、そしてR=20cmであるので、r=26.5cmとなる。Iは、単位長さあたりのプラズマ電流である。
【0252】
ビーム粒子の平均速度は、V=RωおよびV=Rωであり、これらは、以下の平衡条件によって関連付けられる:
【0253】
【数129】

ここで、Ω=eB/(mc)である。最初、B=B、ω=Ω、およびω=0であると仮定する。(初期の平衡において、
【0254】
【数130】

であり、そして
【0255】
【数131】

が相殺されるような電場が存在する。他の平衡が、Bの選択に従って可能である。)これらの平衡式は、ωおよびBが時間の関数としてゆっくりと変化するが、r=V/Ωが一定のままである場合に、妥当であるとみなされる。このための条件は、式66と同じである。式67もまた同様であるが、フラックス関数Ψは、さらなる項を有する。すなわち、Ψ=πr<B>であり、ここで、
【0256】
【数132】

である。
【0257】
ビーム電流に起因する、単位長さあたりの磁気エネルギーは、
【0258】
【数133】

である。
【0259】
従って、式70のベータトロン条件は、以下:
【0260】
【数134】

である。
【0261】
=100eVおよびW=100keVについて、
【0262】
【数135】

である。式81および82の積分は、場のコイルによって生じる磁場の値を決定する:
【0263】
【数136】

最終エネルギーが200keVである場合、B=3.13kGであり、そしてB=34.5kGである。フラックスコイルにおける磁気エネルギーは、
【0264】
【数137】

である。プラズマ電流は、最初、140Gの磁場に対応して0.225kA/cmであり、これは、10kA/cmおよび6.26kGの磁場に増加する。上記計算において、クーロン衝突に起因する抵抗が無視されている。注入/捕捉段階において、これは0.38ボルト/cmに等価であった。これは、電子の温度が加速の間に上昇するにつれて、低下する。100μsで200keVへの加速を仮定すると、誘導される誘導抵抗は、4.7ボルト/cmである。
【0265】
ベータトロンフラックスコイル320はまた、衝突およびインダクタンスに由来する抵抗と釣り合う。摩擦抵抗および誘導抵抗は、以下の式によって表され得る:
【0266】
【数138】

ここで、(T/m)<V<(T/m)である。ここで、Vは、ビーム速度であり、TおよびTは、電子およびイオンの温度であり、Iは、ビームイオン電流であり、そして
【0267】
【数139】

は、環インダクタンスである。また、r=20cmであり、そしてa=4cmである。
【0268】
クーロン抵抗は、以下によって決定される:
【0269】
【数140】

抵抗を補償するために、ベータトロンフラックスコイル320は、1.9ボルト/cmの電場を(クーロン抵抗に対して0.38ボルト/cm、および誘導抵抗に対して1.56ボルト/cm)提供しなければならない。ベータトロンフラックスコイル320における磁場は、これに適合するために、78ガウス/μs増加しなければならない。この場合、Vは一定である。4.5kAへの電流の上昇時間は、18μsであり、その結果、磁場Bは、1.4kG増加する。ベータトロンフラックスコイル320において必要とされる磁場エネルギーは、以下である:
【0270】
【数141】

(ベータトロン形成技術)
閉じ込め系300内にFRCを形成する別の好ましい方法は、本明細書中において、ベータトロン形成技術と称される。この技術は、ベータトロンフラックスコイル320を使用して、ベータトロンにより誘導された電流を直接駆動して、循環プラズマビーム335を加速することに基づく。この技術の好ましい実施形態は、低エネルギーのイオンビームの注入が不要であることを除いて、図25に示される閉じ込め系300を使用する。
【0271】
示されるように、ベータトロン形成技術における主要な構成要素は、中心に、チャンバ310の軸に沿って取り付けられる、ベータトロンフラックスコイル320である。その別個の平行な巻き付け構成に起因して、コイル320は、非常に低いインダクタンスを示し、そして十分な電源に接続される場合、低いLC時間定数を有し、これは、フラックスコイル320における電流の迅速な上昇を可能にする。
【0272】
好ましくは、FRCの形成は、外部場のコイル325、330にエネルギー付与することによって開始する。これは、端部の近くに、軸方向の案内場成分および半径方向の磁場成分を提供して、チャンバ310に注入されたプラズマを軸方向に閉じ込める。一旦、十分な磁場が確立されると、バックグラウンドのプラズマ供給源345は、それらの独自の電源からエネルギー付与される。銃から発生するプラズマは、軸方向の案内場に沿って流れ、そしてその温度に起因して、わずかに広がる。プラズマがチャンバ310の中間平面に達すると、冷たい、ゆっくりと動くプラズマの、連続的な、軸方向に延びる環状層が確立される。
【0273】
この時点で、ベータトロンフラックスコイル320は、エネルギー付与される。コイル320において急激に上昇する電流は、このコイルの内側に、急激な軸方向のフラックスの変化を起こす。誘導効果によって、軸方向のフラックスのこの急激な上昇は、方位角(azimuthal)電場Eの発生を引き起こす(図29を参照のこと)。これは、フラックスコイルの周囲の空間を通過する。マクスウェルの式により、この電場は、コイルの内側の磁束の強度の変化に正比例する。すなわち、より急激にベータトロンコイル電流が上昇すると、より強い電場が発生する。
【0274】
誘導的に発生した電場は、プラズマ中の荷電粒子と結合し、そして重く動かす(ponderomotive)力を引き起こし、この力が、環状のプラズマ層における粒子を加速する。電子は、そのより小さな質量によって、最初に加速を受ける種である。従って、このプロセスによって形成される最初の電流は、主として、電子に起因する。しかし、十分な加速時間(約数百マイクロ秒)はまた、最終的に、イオン電流をもたらす。図29を参照すると、この電場は、電子とイオンとを逆方向に加速する。一旦、両方の種がその最終速度に達すると、電流は、イオンおよび電子によっておよそ等しく運ばれる。
【0275】
上述のように、回転するプラズマによって運ばれる電流は、自己電場を発生させる。プラズマ層における電流によって自己磁場が発生する時点での実際のFRCトポロジーセットの作製は、外部場のコイル325、330から付与される磁場に匹敵するようになる。この時点で、磁気的な再結合が起こり、そして最初の外部的に発生した磁場の開いた磁力線は、閉じ始め、そしてFRCフラックス表面を形成する(図8および10を参照のこと)。
【0276】
この方法によって確立した基礎のFRCは、適度な磁場および粒子エネルギーを示し、これらは代表的に、反応器に関連する操作パラメータではない。しかし、ベータトロンフラックスコイル320における電流が急速に上昇し続ける限り、誘導電気加速場が持続する。このプロセスの効果は、FRCのエネルギーおよび全磁場強度が増加し続けることである。従って、このプロセスの範囲は、主として、フラックスコイルの電源によって制限される。なぜなら、電流の連続的な送達は、塊状のエネルギー貯蔵バンクを必要とするからである。しかし、原理的には、この系を、反応器に関連する条件まで加速することは、簡単である。
【0277】
場の反転のために、循環プラズマビーム335は、好ましくは、約100eV、そして好ましくは、約75eV〜125eVの範囲の回転エネルギーまで加速される。融合に関連する条件に達するために、循環プラズマビーム335は、好ましくは、約200keV、そして好ましくは、約100keV〜3.3MeVの範囲に加速される。上記のように、イオンビームが、循環プラズマビーム335に追加される場合、プラズマビーム335は、イオンビームを脱分極する。
【実施例】
【0278】
(実験−ビーム捕捉およびFRC形成)
(実験1:FRCを作製するための、磁気閉じ込め容器内での中性ビームの伝播および捕捉)
ビームの伝播および捕捉を、以下のパラメータレベルで、首尾よく実証した:
・減圧チャンバ寸法:約1m直径、1.5m長。
・ベータトロンコイル半径10cm。
・結晶ビーム軌道半径20cm。
・流れるビームプラズマの平均運動エネルギーは、約100eVであると測定され、密度約1013cm−3、運動温度(kinetic temperature)10eVのオーダー、およびパルス長約20μs。
・捕捉体積中で発生した平均磁場は、約100ガウスであり、上昇周期150μs。供給源:外側のコイルおよびベータトロンコイル。
・中和バックグラウンドプラズマ(実質的に水素ガス)は、約1013cm−3の平均密度、運動温度10eV未満によって特徴付けられた。
【0279】
ビームを、燃焼タイプのプラズマ銃において発生させた。このプラズマビーム供給源は、中性水素ガスであり、これを、銃の背後を通して特別なパフ弁に通して注入した。電極アセンブリの異なる構造設計を、全体的に円筒形配置で利用した。荷電電圧を、代表的に、5kVと7.5kVとの間に調節した。銃におけるピーク破壊電流は、250,000Aを超えた。実験の実行の部分の間、予めイオン化されたさらなるプラズマを、中心の銃電極アセンブリに供給する小さな周囲ケーブル銃のアレイによって、中性気体の注入前、注入中または注入後に提供した。これは、25μsを超える延長したパルス長を提供した。
【0280】
発生する低エネルギーの中性ビームを、絶縁金属のドリフトチューブに通して流すことによって冷却し、その後、メイン減圧チャンバに入れた。ビームプラズマをまた、このチューブに通して流している間、永久磁石によって予め磁化した。
【0281】
このビームは、ドリフトチューブを移動してチャンバに入る間に自己分極し、ビーム内部の電場(これは、このビームに対する磁場力からずれている)の発生を引き起こした。この機構によって、上記のように特徴付けたビームを、逸らせることなく磁場の領域を通して伝播させることが可能となった。
【0282】
チャンバへのさらなる伝播の際に、ビームは所望の軌道位置に達し、そしてケーブル銃および他の表面フラッシュオーバー供給源のアレイによって提供されるバックグラウンドプラズマの層に遭遇した。十分な電子密度の近くでは、ビームがその自己分極場を緩め、そしてこのビームを本質的に捕捉する単一粒子様の軌道に従った。ファラデーカップおよびBドットプローブの測定値は、ビームおよびその軌道の捕捉を確認した。このビームは、捕捉の際に、所望の円形軌道を実施したと観察された。ビームプラズマは、その軌道に、1回転の約3/4沿って従った。これらの測定値は、連続した摩擦損失および誘導損失が、ビーム粒子に、所望の軌道から内向きに曲がって、約3/4回転でベータトロンコイル表面に衝突するために十分なエネルギーを失わせたことを示した。このことを防止するために、ベータトロンコイルによって粒子を誘導的に駆動することにより、さらなるエネルギーを供給して軌道ビームを得ることによって、この損失を保証し得る。
【0283】
(実験2:組み合わせたビーム/ベータトロン形成技術を利用するFRC形成)
FRC形成を、組み合わせたビーム/ベータトロン形成技術を利用して、首尾よく実証した。組み合わせたビーム/ベータトロン形成技術を、直径1mおよび長さ1.5mのチャンバにおいて、外部から適用される500Gまでの磁場、ベータトロンフラックスコイル320からの5kGまでの磁場および1.2×10−5トルの減圧を使用して、実施した。この実験において、バックグラウンドプラズマは、1013cm−3の密度を有し、そしてイオンビームを、1.2×1013cm−3の密度、2×10cm/sの速度、および約20μsのパルス幅(半分の高さにおいて)を有する中性水素ビームであった。場の反転が観察された
(実験3:ベータトロン形成技術を利用するFRC形成)
ベータトロン形成技術を利用するFRC形成を、以下のパラメータレベルにおいて首尾よく実証した:
・減圧チャンバ寸法:約1m直径、1.5m長。
・ベータトロンコイル半径10cm。
・プラズマ軌道半径20cm。
・減圧チャンバ内で発生した平均外部磁場は100ガウスまでであり、上昇周期150μsおよびミラー比2:1(供給源:外部コイルおよびベータトロンコイル)。
・バックグラウンドプラズマ(実質的に水素ガス)は、約1013cm−3の平均密度、10eV未満の運動温度によって特徴付けられた。
・このコンフィギュレーションの寿命は、この実験中に貯蔵された全エネルギーによって制限され、そして一般に、約30μsであった。
【0284】
最初に、バックグラウンドプラズマ層を、チャンバの内側に円形の様式で取り付けられた2セットの同軸ケーブル銃によって注入することによって、実験を進行させた。8つの銃の各コレクションを、2つのミラーコイルアセンブリの1つに取り付けた。これらの銃を、等距離の様式で方位角によって間隔を空け、そして互いに対してずらした。この配置により、これらの銃は同時に発射することが可能であり、これによって、環状のプラズマ層を作製した。
【0285】
この層の確立の際に、ベータトロンフラックスコイルにエネルギー付与した。このベータトロンコイルの巻線における電流を上昇させることにより、このコイルの内側のフラックスが増加し、これによってこのベータトロンコイルの周囲で曲がる、方位角電場が発生した。ベータトロンフラックスコイルにおける、急激に上昇した高い電流は、強い電場を発生させ、この電場が、環状のプラズマ層を加速し、これによって、相当に大きい電流を誘導した。十分に強いプラズマ電流は、自己電場を発生させ、この電場は、外部から供給される場を変化させ、そして場が反転したコンフィギュレーションの作製を生じた。Bドットループを用いた詳細な測定値により、このFRCの範囲、強度および持続時間を同定した。
【0286】
代表的なデータの例を、Bドットプローブ信号の追跡によって、図30に示す。このデータ曲線Aは、実験用チャンバの軸方向の中間平面(各端部プレートから75cm)の、15cmの半径位置における磁場の軸方向成分の絶対的強度を表す。データ曲線Bは、チャンバの軸方向の中間平面の、30cmの半径位置における磁場の軸方向成分の、絶対的強度を表す。従って、曲線Aのデータセットは、燃料プラズマ層の内側(ベータトロンコイルとプラズマとの間)の磁場の強度を表し、一方で曲線Bのデータセットは、燃料プラズマ層の外側の磁場の強度を示す。これらのデータは、内側の磁場が、約23μsと47μsとの間で配向を反転させ(負であり)、一方で外側の場は正のままである(すなわち、配向を反転させない)ことを明確に示す。反転の時間は、ベータトロンコイルにおける電流の上昇によって制御される。一旦、ベータトロンコイルにおいてピーク電流に達すると、燃料プラズマ層において誘導される電流は、低下し始め、そしてFRCは急激に崩壊する。今までは、FRCの寿命は、実験において貯蔵され得るエネルギーによって制限された。注入および捕捉の実験の場合と同様に、この系は、より長いFRC寿命および反応器に関連するパラメータの加速を更新し得る。
【0287】
全体的に、この技術は、コンパクトなFRCを作製するのみでなく、実行が強靱かつ簡単でもある。最も重要なことには、この方法によって作製された基礎のFRCは、任意の所望のレベルの回転エネルギーおよび磁場強度に容易に加速され得る。このことは、融合の適用および古典的な高エネルギー燃料ビームの閉じ込めのために重要である。
【0288】
(実験4:ベータトロン形成技術を利用するFRC形成)
ベータトロン形成技術を利用してFRCを形成する試みを、実験的に、1mの直径および1.5mの長さのチャンバにおいて、外部から適用される500Gまでの磁場、ベータトロンフラックスコイル320からの5kGまでの磁場および5×10−6トルの減圧を使用して、実施した。この実験において、バックグラウンドプラズマは、実質的に、1013cm−3の密度および約40μsの寿命を有する水素ビームを含んだ。場の反転が観察された
(融合)
重要なことに、上記の閉じ込め系300などの内側にFRCを形成するためのこれら2つの技術は、内部で核融合を起こすために適切な特性を有するプラズマを生じ得る。より具体的には、これらの方法によって形成されたFRCは、任意の所望のレベルの回転エネルギーおよび磁場強度に加速され得る。このことは、融合の適用および古典的な高エネルギー燃料ビームの閉じ込めのために重要である。従って、閉じ込め系300において、高エネルギーのプラズマビームを、融合反応を起こすために十分な時間にわたって捕捉し、そして閉じ込めることが可能となる。
【0289】
融合を達成するために、これらの方法によって形成されたFRCは、好ましくは、ベータトロン加速によって、適切なレベルの回転エネルギーおよび磁場強度に加速される。しかし融合は、特定の反応が起こるために、特定のセットの物理的条件を必要とする傾向がある。さらに、燃料の効率的な燃焼を達成し、そしてポジティブなエネルギーの釣り合いを得るために、燃料は、延長した期間にわたってこの状態で実質的に不変に維持されなければならない。高い運動温度および/またはエネルギーが、融合に関連する状態を特徴付けるので、このことは重要である。従って、この状態の作製は、相当な量のエネルギーの投入を必要とし、このエネルギーは、燃料の大部分が融合を起こす場合に回収されるのみである。その結果、燃料の閉じ込め時間は、その燃焼時間より長くなければならない。このことは、ポジティブなエネルギーの釣り合いおよびその結果、正味のエネルギー出力を導く。
【0290】
本発明の有意な利点は、本明細書中に記載される閉じ込め系およびプラズマが、長い閉じ込め時間(すなわち、燃料の燃焼時間を超える閉じ込め時間)が可能であることである。従って、融合のための代表的な状態は、以下の物理的状態(これらは、燃料および操作様式に基づいて変動する傾向がある)によって特徴付けられる:
平均イオン温度:約30〜230keVの範囲、そして好ましくは、約80keV〜230keVの範囲
平均電子温度:約30〜100keVの範囲、そして好ましくは、約80〜100keVの範囲
燃料ビームのコヒーレントエネルギー(注入イオンビームおよび循環プラズマビーム):約100keV〜3.3MeVの範囲、そして好ましくは、約300keV〜3.3MeVの範囲
全磁場:約47.5〜120kGの範囲、そして好ましくは、約95〜120kGの範囲(外部から適用される場は、約2.5〜15kGの範囲、そして好ましくは、約5〜15kGの範囲)
古典的閉じ込め時間:燃料燃焼時間より長く、そして好ましくは、約10〜100秒の範囲
燃料イオン密度;約1014〜1016cm−3未満の範囲、そして好ましくは約1014〜1015cm−3の範囲
全融合電力:好ましくは、約50〜450kW/cm(チャンバの長さ1cmあたりの電力)の範囲。
【0291】
上記の融合状態を達成するために、FRCは、好ましくは、約100keV〜3.3MeVの範囲、そしてより好ましくは、約300keV〜3.3MeVの範囲のコヒーレント回転エネルギーのレベル、および好ましくは約45〜120kGの範囲、そしてより好ましくは約90〜115kGの範囲の磁場強度のレベルに、好ましくは加速される。これらのレベルにおいて、高エネルギーのイオンビームがFRCに注入され、そして捕捉されて、プラズマビームイオンが磁気的に閉じ込められ、そしてプラズマビーム電子が電子的に閉じ込められた、プラズマビーム層を形成し得る。
【0292】
好ましくは、電子温度は、実施が可能な限り低く維持されて、制動放射(これは、低下されなければ、放射エネルギーの損失をもたらし得る)の量を低下させる。本発明の静電エネルギー井戸は、このことを達成する効果的な手段を提供する。
【0293】
イオン温度は、好ましくは、効率的な燃焼を提供するレベルに維持される。なぜなら、融合断面積は、イオン温度の関数であるからである。燃料イオンビームの高い直接エネルギーは、本願において議論されるような古典的輸送を提供するために必須である。これはまた、燃料プラズマに対する不安定性の影響を最少にする。磁場は、ビーム回転エネルギーからなる。この磁場は、部分的にプラズマビームによって作製され(自己の場)、次に、このプラズマビームを所望の軌道に維持するための支持および力を提供する。
【0294】
(融合生成物)
融合生成物は、ゼロ表面(この表面から、これらの生成物は、セパラトリクス84(実施例8を参照のこと)に向かって拡散することによって、発生する)の近くで優先的に生じる。このことは、電子との衝突に起因する(イオンとの衝突は、質量中心を変化させず、従って、これらに磁力線を変化させない)。これらの高い運動エネルギー(生成物イオンは、燃料イオンよりずっと高いエネルギーを有する)に起因して、融合生成物は、セパラトリクス84を容易に横切り得る。一旦、これらの生成物イオンがセパラトリクス84を越えると、これらの生成物イオンがイオン−イオン衝突から生じる散乱を経験すると仮定すると、開いた磁力線80に沿って離れ得る。この衝突プロセスは、拡散を生じないが、イオン速度ベクトルの方向を、磁場に対して平行に向くように変化させ得る。これらの開いた磁力線80は、コアのFRCトポロジーを、FRCトポロジーの外側に提供される均一に適用される場と接続する。生成物イオンは、異なる磁力線上に生じ、これらのイオンは、エネルギーの分布を伴って(好都合には、回転する環状ビームの形態で)、この磁力線を辿る。セパラトリクス84の外側に見出される強い磁場(代表的に、約100kG)において、生成物イオンは、約1cmの最小値から最もエネルギーの高い生成物イオンに対する約3cmの最大値まで変化する回転半径の、関連する分布を有する。
【0295】
最初に、生成物イオンは、1/2M(vparおよび1/2M(vperpによって特徴付けられる、長手方向エネルギーおよび回転エネルギーを有する。vperpは、軌道中心としての磁力線の周囲の回転に関連する、方位角速度である。磁力線は、FRCトポロジーの近隣を離れた後に広がるので、全エネルギーは一定であるが、回転エネルギーは低下する傾向がある。このことは、生成物イオンの磁気モーメントの断熱不変性の結果である。磁場において軌道を有する荷電粒子は、その運動に関連する磁気モーメントを有することが、当該分野において周知である。ゆっくりと変化する磁場に沿って移動する粒子の場合、1/2M(vperp/Bによって表される運動の断熱不変性もまた存在する。それぞれの磁力線の周囲に軌道を有する生成物イオンは、磁気モーメントおよびその運動に関連するような断熱不変性を有する。Bは、約10分の1に低下するので(磁力線の広がりによって示される)、その結果、vperpも同様に、約3.2減少する。従って、生成物イオンが均一な場の領域に達する時点までに、これらのイオンの回転エネルギーは、その全エネルギーの5%未満である;換言すれば、ほとんど全てのエネルギーが、長手軸方向成分である。
【0296】
本発明には、種々の改変および代替の形態が可能であるが、その具体的な実施例が図面に示され、そして本明細書中に詳細に記載されている。しかし、本発明は、開示される特定の形態に限定されず、逆に、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲に入る全ての改変、均等物、および代替物を網羅することが、理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2010−243501(P2010−243501A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139929(P2010−139929)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【分割の表示】特願2009−192619(P2009−192619)の分割
【原出願日】平成14年2月1日(2002.2.1)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California