磁性キャリア、トナー帯電方法及び接触式現像方法
【課題】単純な構成で長寿命化を図り、高速攪拌、高速現像においても長期間にわたって高画質を維持する。
【解決手段】マイクロバルーン等を用いて形成された中空形状を呈する単一のコア材5AAと、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト、鉄粉等の少なくとも何れかを用いて形成される磁性粉5ACを分散させた樹脂バインダ5ABであって、コア材5AAの表面を被う樹脂バインダ5ABと、を備える磁性キャリア5Aを用いて二成分現像剤を構成する。
【解決手段】マイクロバルーン等を用いて形成された中空形状を呈する単一のコア材5AAと、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト、鉄粉等の少なくとも何れかを用いて形成される磁性粉5ACを分散させた樹脂バインダ5ABであって、コア材5AAの表面を被う樹脂バインダ5ABと、を備える磁性キャリア5Aを用いて二成分現像剤を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置等に備えられる像担持体に形成された潜像を現像する二成分現像剤を構成する電子写真現像用の磁性キャリア、この磁性キャリアを用いてトナーを帯電させるトナー帯電方法、及び、この磁性キャリアを含む二成分現像剤を用いて像担持体に形成された潜像を現像する接触式現像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性キャリアとトナーとからなる二成分現像剤を使用する画像形成装置は二成分現像方式と一般に分類され、特に高速機やフルカラーのプリンタ及び複写機に用いられる。二成分現像方式においては、まず現像装置内において磁性キャリアとトナーとを攪拌混合してトナーを帯電させ、帯電によりトナーを磁性キャリアの粒子の周りに付着させる。この状態で、磁石を内蔵した現像スリーブの外周面に磁性キャリアを磁気吸着させる。これにより、現像スリーブの外周面上に磁性キャリア及びトナーからなる磁気ブラシが形成される。
【0003】
その後、現像スリーブを回転させて、現像バイアスを印加した磁気ブラシを静電潜像が形成されている感光体ドラムの表面の接近位置または接触位置にまで搬送する。これにより、磁気ブラシ中のトナーが静電潜像に静電吸着し、静電潜像が現像される。
【0004】
従来の乾式二成分現像法においては、磁性キャリアとして鉄粉、フェライト等の磁性粒子が用いられていた。これらの磁性キャリアにおいては、抵抗値等が使用に適さず、トナー帯電能力の不足、キャリア表面の汚染によるトナー帯電能力の低下等の問題が存在していた。この問題を解決する手段として、磁性キャリアの表面を樹脂等により被覆(コーティングする手段が一般的に採用されていた。
【0005】
ところが、コーディングを施した構成の磁性キャリアにおいても、磁気力が強いために磁気穂が堅い等の原因からトナー像を乱してしまう問題があり、十分に高画質化に対応できていなかった。また、上述のように金属系の芯材による磁性コアを樹脂等によりコーティングした磁性キャリアにおいては、内部の磁性コアの抵抗が低いためにコーティングした樹脂等の一部が磨耗し又は剥がれた場合等は、感光体ドラムの表面上に磁性キャリアが付着するキャリア上がりが増大するため、感光体ドラムの表面上に形成されたトナー像に欠損が生じる等の問題があった。
【0006】
また、一般的な磁性キャリアよりも低磁化の小粒径のキャリアが存在する。この低磁化の小粒径のキャリアは、現像スリーブの外周面上に形成されるキャリアの磁気穂が緻密となり、それによりドット再現性の良い画像を得ることができる。ところが、低磁化にするとキャリアを現像スリーブ上にとどめておく力が減少することから、キャリア上がりが多くなる傾向にある。
【0007】
これに対して、樹脂バインダ中に磁性粉が分散した所謂磁性粉分散バインダ型のキャリアが存在する。この磁性分散型のキャリアは一般に上述の磁性コアを有する磁性キャリアよりも高抵抗且つ軽量であり、分散している磁性粉の量を変えることにより磁気力を変化させることが可能である等の特徴を有している。磁性粉分散バインダ型のキャリアは、その軽量性から二成分現像剤に用いた場合に劣化が少なく、現像時のストレスも少ないソフト現像が可能であるが、高速攪拌、高速現像に対しては十分な長寿命化を図れていない。
【0008】
二成分現像剤の劣化は種々の原因により発生するが、磁性キャリアに関しては主にトナーの付着によるスペントや、コーティング部材の磨耗や剥がれ等の表面層の変化によって発生する。このスペントやコーティング部材の磨耗や剥がれ等は、撹拌時に二成分現像剤に付加されるストレスによって発生する。特に高速運転時においては劣化の進行が早くなる傾向がある。
【0009】
この攪拌時のストレスを低下するには、キャリアの密度を減らす軽量化を行うことが有効であるが、キャリア上がりを減らすためにある程度の高い飽和磁化を得る必要があり、そのために多量の磁性粉を必要とするので、現状以上の軽量化は困難であった。そこで、従来の磁性キャリアには、磁性キャリアとして中空の球状粒体のフェライトを用いた構成のものがある(例えば、特許文献1参照。)。また、カーボンマイクロバルーン等の中空物質の表面に、ニッケル等の磁性材料の被膜を形成した構成のものもある(例えば、特許文献2参照。)。さらに、バインダ型のキャリアの内部に空洞を設けて従来よりも軽量化した構成のものもある(例えば、特許文献3参照。)。また、アルミニウム粉末や樹脂粒子等の比較的比重の小さい芯材の表面を、ニッケル等の磁性材料のメッキ被膜により被覆する構成のものもある(例えば、特許文献4参照。)。
【0010】
ところが、特許文献1の構成では、中空の球状粒体のフェライトを磁性キャリアとして用いているので、中空ではあるが従来のフェライトのみを用いた構成であるため、軽量化の点で不十分である。また、このような特殊な構造のフェライトは大量生産に適していない。特許文献2の構成では、メッキ等によって磁性材料の被膜を形成しているため、表面に磁性材料の被膜が露出した場合に導電性が高くなり、トナーを帯電させる帯電付与特性や現像特性が変動するという問題がある。
【0011】
特許文献3の構成では、従来のバインダ型のキャリアに比べてさらなる軽量化を可能とするものであるが、強度や耐久性の点で十分ではない。特許文献4の構成では、表面にメッキ被膜が露出しているため導電性が高くなり、トナーを帯電させる帯電付与特性や帯電安定性が悪いという問題がある。また、芯材の表面にメッキ被膜を形成する必要があるため大量生産に適していない。
【0012】
なお、特許文献2及び4の構成のキャリアにおいては、被膜がメッキ等によって形成されているので被膜の表面が平滑になってしまう。そのため、被膜の表面上に形成された樹脂コート層は耐久性がなく剥がれ易い。
【0013】
そこで、近年のキャリアには、樹脂の芯材の周辺に磁性粉による層を形成した後、重合により樹脂を被膜する方法により形成した構成のものがある(例えば、特許文献5参照。)。また、磁性粉を分散させたバインダ樹脂中に2個以上の空隙を含む構成のものがある(例えば、特許文献6参照。)。
【特許文献1】特開昭57−177160号公報
【特許文献2】特開昭63−143564号公報
【特許文献3】特開平3−89253号公報
【特許文献4】特開昭59−142557号公報
【特許文献5】特許第3293700号公報
【特許文献6】特許第2993622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述の特許文献5の構成では、比較的強度を高めることが可能であるが、特殊な製法に限定されていることや、被覆層を重合により形成しているために材料選択範囲が狭く、トナーの帯電のために好適な樹脂を選択できない等の問題点がある。また、内部が樹脂の芯材により満たされているため軽量化についても限界がある。
【0015】
また、上述の特許文献6の構成では、2個以上の空隙を有する場合には粒子形状が不定形になり易く、特に大きい中空を有する場合はその影響が顕著となる。不定形の磁性キャリアの粒子においては、力が不均一に加わるため耐久性に課題があり、キャリア上がり等の現像特性にも悪影響がある。
【0016】
この発明の目的は、単純な構成で長寿命化を図ることができ、高速攪拌、高速現像においても長期間にわたって高画質を維持することができる磁性キャリアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を備えている。
【0018】
(1)中空形状を呈する単一のコア材と、
磁性粉を分散させた樹脂バインダであって、前記コア材の表面を被う樹脂バインダと、を備えたことを特徴とする。
【0019】
この構成においては、中空形状を呈する単一のコア材の表面が磁性粉が分散している樹脂バインダによって被われている。したがって、コア材が中空形状に形成されるので、かさ密度等が低減される。また、内部に複数ではなく単一の空洞が形成されいるのみなので粒子形状が不定形にならず、攪拌時において不均一に攪拌力が加えられることがないので、特定の箇所についてのみ劣化の進行が早くなることがない。
【0020】
(2)粒径が17μm〜63μmであり、見掛け密度が0.8g/cm3 〜1.9g/cm3であることを特徴とする。
【0021】
この構成においては、トナー像に刷毛スジの発生が防止される粒径の値及び見掛け密度の値の範囲内で磁性キャリアが形成されている。粒径及び見掛け密度は、磁性キャリアの質量を画定するが、質量が大きいと現像スリーブに形成された磁性キャリアの磁気穂によって像担持体に形成されたトナー像が掻き取られて刷毛スジが発生する。
【0022】
また、粒径及び見掛け密度が適切な値となって磁性キャリアの重量が重過ぎず、かさ密度等も低減されて従来よりもトナーを攪拌し易くなり、攪拌時におけるトルクも低減される。そのため、トナーの攪拌により付加されるストレスが低減されるので、劣化の進行が従来よりも遅くなる。しかも、攪拌性能が向上するのでトナー濃度バラツキによる帯電量の変化が低減される。
【0023】
(3)飽和磁化が30emu/g〜100emu/gであり、体積抵抗が1.0×1011Ω・cm〜1.0×1015Ω・cmであることを特徴とする。
【0024】
この構成においては、磁性キャリアの発生が防止される飽和磁化の値及び体積抵抗の値の範囲内で磁性キャリアが形成されている。飽和磁化は、現像装置において磁性キャリアを現像スリーブの外周に磁力によって吸着させるために必要となる。また、体積抵抗は、高くなると現像時に現像スリーブから電荷が注入されなくなり、磁性キャリアが像担持体上に現像されるキャリア上がりが防止される。
【0025】
(4)粒径が17μm〜64μmであり、見掛け密度が0.8g/cm3 〜1.9g/cm3であり、体積抵抗が1.0×1011Ω・cm〜1.0×1015Ω・cmであることを特徴とする。
【0026】
この構成においては、トナーかぶりの発生が防止される粒径の値、見掛け密度の値及び体積抵抗の値の範囲内で磁性キャリアが形成されている。言い換えるとトナーが均一帯電し易い上述の範囲内で磁性キャリアが形成されている。トナーかぶりは、大きな要因として非帯電トナーや逆帯電トナーが潜像における非画像部に付着することにより発生するからである。粒径及び見掛け密度は攪拌性能を向上させ、体積抵抗は高くなると帯電し易くなるので攪拌時におけるトナーを逆極性に帯電させる帯電能力を向上させる。
【0027】
(5)前記磁性粉は、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト、鉄粉の何れか一種以上から構成されることを特徴とする。
【0028】
この構成においては、体積抵抗が高く、磁性キャリア自体の体積抵抗を高めるのに適しているマグネタイト、ヘマタイト、フェライト、鉄粉の何れか一種以上から構成されている。
【0029】
(6)像担持体に形成された潜像を現像するトナーを磁性キャリアと攪拌して帯電させる二成分現像剤のトナー帯電方法において、
前記磁性キャリアは、(1)〜(5)の何れかに記載の電子写真現像用の磁性キャリアであることを特徴とする。
【0030】
この構成においては、二成分現像剤を構成するトナーが(1)〜(5)の何れかに記載の磁性キャリアと攪拌されて帯電される。
【0031】
(7)前記トナーの重量をT、前記トナーの重量と前記磁性キャリアの重量との和をDとしたときのトナーを攪拌する際のトナー重量濃度比(T/D)が10%〜25%であることを特徴とする。
【0032】
この構成においては、二成分現像剤中のトナー濃度変化によるトナー比電荷の変化量が少ないT/D10%〜25%の範囲内でトナーが磁性キャリアによって常に攪拌されている。
【0033】
(8)像担持体に形成された潜像を現像するトナー及び磁性キャリアからなる二成分現像剤の接触式現像方法において、
前記磁性キャリアは、(1)〜(5)の何れかに記載の電子写真現像用の磁性キャリアであることを特徴とする。
【0034】
この構成においては、現像剤担持体に担持されたトナー及び(1)〜(5)の何れかに記載された磁性キャリアとからなる二成分現像剤が像担持体の表面に接触し、トナーのみが像担持体の表面に形成された潜像に静電吸着して現像が行われる。この時、磁性キャリアは、磁力によって現像剤担持体に残った(吸着した)状態となる。
【0035】
(9)前記トナーの重量をT、前記トナーの重量と前記磁性キャリアの重量との和をDとしたときのトナーを攪拌する際のトナー重量濃度比(T/D)が10%〜25%であることを特徴とする。
【0036】
この構成においては、二成分現像剤中のトナー濃度変化によるトナー比電荷の変化量が少ないT/D10%〜25%の範囲内で磁性キャリアによって攪拌、帯電された後のトナーが現像に用いられる。
【発明の効果】
【0037】
この発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0038】
(1)中空形状を呈する単一のコア材の表面を磁性粉が分散している樹脂バインダで被うことによって、軽量化を図りつつ単純な構成で粒子形状を定形にすることができ、特定の箇所のみの劣化の進行が早くなることを防止できるので、従来よりも長寿命化を図ることができる。
【0039】
(2)粒径を17μm〜63μmとし、見掛け密度を0.8g/cm3 〜1.9g/cm3 とすることによって、刷毛スジの発生を防止して高画質の現像を維持しつつ、攪拌時におけるトルクを低減して従来よりも長寿命化を図ることができる。また、トナーを均一帯電することができる。
【0040】
(3)飽和磁化を30emu/g〜100emu/gとし、体積抵抗を1.0×1011Ω・cm〜1.0×1015Ω・cmとすることによって、キャリア上がりの発生を防止して高画質の現像を維持しつつ、従来よりも長寿命化を図ることができる。
【0041】
(4)粒径を17μm〜64μmとし、見掛け密度が0.8g/cm3 〜1.9g/cm3 とし、体積抵抗を1.0×1011Ω・cm〜1.0×1015Ω・cmとすることによって、トナーかぶりの発生を防止して高画質の現像を維持しつつ、従来よりも長寿命化を図ることができる。
【0042】
(5)マグネタイト、ヘマタイト、フェライト、鉄粉の何れか一種以上から構成される磁性粉を樹脂バインダに分散することによって、容易に飽和磁化を所望の値にしつつ所望の体積抵抗になるように磁性キャリアを形成できる。
【0043】
(6)トナーを(1)〜(5)の何れかに記載の長寿命化が図られた磁性キャリアと攪拌して帯電させることによって、長期間に渡ってトナーの帯電立ち上がり及び均一帯電性を向上させることができる。
【0044】
(7)トナーと磁性キャリアとの混合比がT/D10%〜25%の広い範囲において用いることが可能である。またトナーを磁性キャリアと攪拌する際に、二成分現像剤中のトナー濃度変化によるトナー比電荷の変化量が少ない状態でトナーを帯電させることが可能であり、トナーの帯電立ち上がり及び均一帯電性をより向上させることができる。
【0045】
(8)トナーと(1)〜(5)の何れかに記載の磁性キャリアとからなる二成分現像剤を用いて像担持体に形成された潜像を現像することによって、長期間に渡ってキャリア上がりやトナーかぶり等が発生すること防止して高画質の現像を維持することができる。
【0046】
(9)通常用いられるよりも高いトナー濃度であるT/D10%〜25%の範囲内で磁性キャリアにより攪拌、帯電された後のトナーを現像に用いることによって、高トナー濃度かつトナー比電荷が安定した状態のトナーを使用することが可能であり、高速化に対応でき、かつ、高画質化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
図1は、この発明の実施形態に係る画像形成装置の一部の構成を示す拡大図である。画像形成装置100は、感光体ドラム(本発明の像担持体に相当する。)10、現像装置20等を備え、画像データに基づいて形成したトナー像を用紙に転写することで用紙に画像を形成する。
【0048】
現像装置20は、現像槽20A内に攪拌ローラ21、現像スリーブ22等を備え、現像槽内20Aに収容された二成分現像剤5を用いて感光体ドラム10の表面に形成された静電潜像を現像する。攪拌ローラ21は、回転によって二成分現像剤5を構成する磁性キャリア5A及びトナー5Bを攪拌混合しつつ、現像スリーブ22に搬送する。この時、トナー5Bは、磁性キャリア5Aとの攪拌混合によって帯電され、磁性キャリア5Aの周辺に付着した状態で現像スリーブ22に搬送される。
【0049】
現像スリーブ22は、回転自在なローラの内部に磁石を備え、外周面にトナー5Bが付着した状態の磁性キャリアを磁気吸着させて磁気ブラシを形成する。また、現像スリーブ22は、図示しない現像バイアス電源に接続されている。現像バイアス電源は、現像スリーブ22の外周面上の二成分現像剤5に現像バイアス電圧を印加する。
【0050】
また、現像スリーブ22は、回転によって、現像バイアスが印加された状態の二成分現像剤5を空隙を設けて感光体ドラム10に対向する現像領域Yに搬送する。この時、トナー5Bは、現像領域Yにおいて感光体ドラム10の表面に形成された静電潜像に静電吸着してトナー像を形成する。感光体ドラム10は、表面に形成されたトナー像を用紙に転写する。感光体ドラム10と現像スリーブ22との間に設けた空隙は、現像スリーブ22の外周面上を搬送される二成分現像剤5が感光体ドラム10の表面に接触する程度の間隔で形成されている。
【0051】
図2は、この発明の実施形態に係る磁性キャリア5Aの構造を示す断面図である。磁性キャリア5Aは、中空形状を呈する球形のコア材5AA、及び、コア材5AAの表面を被う樹脂バインダ5ABから構成されている。樹脂バインダ5ABは、分散した状態の磁性粉5ACを含んでいる。これにより、かさ密度等を低減でき、軽量化を図りつつ単純な構成で粒子形状を定形にすることができる。また、内部に複数ではなく単一の空洞が形成されいるのみなので粒子形状が不定形にならず、攪拌時において不均一に攪拌力が加えられることがないので、特定の箇所についてのみ劣化の進行が早くなることを防止できる。これらにより、従来よりも長寿命化を図ることができる。
【0052】
本発明に使用し得る磁性粉としては強磁性体粒子が用いられる。この強磁性体粒子は、特に制限はないが、体積抵抗が1.0×105 Ω・cm以上のフェライト、マグネタイト及びヘマタイトが好適に用いられる。体積抵抗が105 Ω・cm未満であると、耐久により、磁性粉としての電気抵抗が変動し、又は、磁性キャリア5A自体の電気抵抗が低下するため、感光体ドラム10での現像に用いるトナーの量が変動することによる画像濃度の変動や、磁性キャリア5Aが現像スリーブ22からの注入電荷により感光体ドラム10に付着する等の問題が発生する場合があるからである。
【0053】
フェライト等以外の磁性粉としては、ヘマタイト、マグネタイト等の酸化鉄や、鉄、ニッケル及びコバルト等の強磁性を含む金属又はこれらの合金や化合物がある。なお、本発明の磁性キャリア5Aの体積抵抗の測定には粉体抵抗測定器を用いた。具体的には、円筒形のセルに磁性分を充填し、この充填磁性粉に接するように円形の上部電極及び下部電極を配し、これらの電極間に電圧を印加し、そのときに流れる電流を測定することにより比抵抗(体積抵抗)ρ(Ω・cm)を求めた。上記の測定方法においては、磁性粉5ACが粉体であるために充填率に変化が生じ、それに伴って体積抵抗が変化する場合があるので注意を要する。
【0054】
本実施形態における比抵抗の測定条件は、充填磁性粉と電極との接触面積S=約3.2cm2、厚み=約1mm、上部電極の荷重500g、印加電圧500Vとした。本発明に用いる磁性粉5ACは、一次粒子径が体積平均径として0.05〜5μm、好ましくは0.1〜1μmのものを用いる。
【0055】
また、強磁性体微粒子として、γ−酸化鉄等のスピネルフェライト、鉄以外の金属(Mn、Ni、Zn、Mg、Cu等)を一種又は二種以上含有するスピネルフェライト、バリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライト及び表面に酸化層を有する鉄や合金の微粒子粉未を用いることもできる。強磁性体微粒子の形状は、粒状、球状及び針状のいずれであってもよい。
【0056】
特に、高磁化を要する場合には、鉄等の強磁性微粒子粉末を用いることができるが、化学的な安定性を考慮すると、マグネタイト、ガンマ酸化鉄を含むスピネルフェライトやバリウムフェライト等のマグネトブランバイト型フェライトの強磁性微粒子粉末を用いることが好ましい。
【0057】
樹脂バインダ5ABに用いる結着樹脂としては、磁性粉分散バインダ型キャリアの結着樹脂として従来知られていたものの中から帯電性が適当な材料を選べばよく、例えば、付加重合系樹脂として、スチレン系、アクリル系、オレフィン系、ジエン系、アクリルニトリル系、アクリルアマイド系、酢ビ系及びハロゲン化オレフィン系の各単独又は共重合体、縮重合系としてポリエステル系、アリアミド系及びシリコーン系の各重合体、又、重付加型としてエポキシ系及びポリウレタン系の各重合体を列挙することができる。
【0058】
これらの結着樹脂の中でも架橋性重合体を用いると、磁性粉分散バインダ型キャリアとしての耐衝撃性が増し、耐久性が更に向上して好ましい。ここで架橋性重合体とは、結着樹脂がビニル系重合体の場合には、架橋剤として主に重合性二重結合を2個以上持つ化合物で架橋されたものである。又、この際に使用される架橋剤としては下記のものが上げられる。例えば、ビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びそれらの誘導体の様な芳香族ジビニル化合物、ジエチングリコールメタクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等の如きジエチレン性カルボン酸エステル、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等の全てのジビニル化合物、及び3つ以上のビニル基をもつ化合物が、単独または混合物として選ばれ、全モノマー重量を基礎にして0.005%〜20%の範囲で添加される。
【0059】
また、上記のようなビニル重合体を形成するために使用される代表的な単量体としては、スチレン、p−クロルスチレン、ビニルナフタレン、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等の如きエチレン系不飽和モノオレフィン類、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、ギ酸ビニル、マラリアン酸ビニル、カプロン酸ビニル等の如きビニルエステル類、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、メチル−α−クロルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等の如きエチレン性モノカルボン酸およびそのエステル、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の如きエチレン性モノカルボン酸置換体、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等の如きエチレン性ジカルボン酸及びその置換体、例えば、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロフェニルケトン等の如きビニルケトン類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルエチルエーテル等の如きビニルエーテル類、例えば、ビニリデンクロリド、ビニリデンクロルフルオリド等の如きビニリデンハロゲン化物、例えば、N−ビニルビロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール及びN−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物がある。本発明に用いられる重合体は、これらの単量体の一種以上と前述の架橋剤との付加重合で製造されるが、付加重合という表現は、例えば、遊離基重合法、陰イオン重合法及び陽イオン重合法の如き周知の重合法を包含するものである。
【0060】
また、結着樹脂をポリエステルとする場合には、3価以上の多価アルコール又は3価以上の多価カルボン酸を他の単量体とを重縮合させた架橋ポリエステルが好ましく用いられる。ここで、三価以上の多価アルコールとしては、例えば、ソルビートル、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、蒸精、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、その他を挙げることができる。又、三価以上の多価カルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシルプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、及びこれらの酸無水物、その他を挙げることができる。
【0061】
その他のモノマーとしては、アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等のジオール類、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、及びビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノール類、その他の二価のアルコール単量体を挙げることができる。又、カルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、メサコニン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸及びこれらの酸の無水物、低級アルキルエステルとリノレイン酸の二量体、その他の二価の有機酸単量体を挙げることができる。
【0062】
以上述べた架橋性の結着樹脂の例は、磁性粉分散バインダ型のキャリアを製造する前の原材料樹脂の段階である程度の重合されたポリマー樹脂であるが、本発明の磁性粉分散バインダ型の電子写真現像用の磁性キャリア5Aを製造する場合は、低〜中分子の樹脂を用いてコーティングした後、加熱等の方法により架橋させることで十分な硬度や耐久性を与えることも可能である。その際には樹脂と架橋反応する架橋剤を添加して、架橋性の結着樹脂とすることもできる。この場合に用いられる樹脂としては、例えば、側鎖に架橋性の官能基を有する単量体を含む2種以上の単量体からなる共重合体から選ばれる。
【0063】
かかる側鎖に架橋性の官能基を有する単量体としては、側鎖に有機酸を有する単量体(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸及びフマル酸等)、側鎖にヒドロキシ基を有する単量体(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、o−、m−又はp−ヒドロキシスチレン、o−、m−又はp−ヒドロキシフェニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル等)、側鎖にエポキシ基を有する単量体(例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート)、側鎖にイミノ基を有する単量体(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)メタクリルアミド、ウレイドエチルアクリレート、ウレイドエチルメタクリレート、ウレイドエチルビニルエーテル、メタクリルロイルジシアンアミド等)、側鎖にアジリデイニル基を有する単量体(例えば2−(1−アジリデイニル)エチルアクリレート、2−(1−アジリデイニル)エチルメタクリレート等)、他に無水マレイン酸、ポリエチレングリコールジメタクリレート等を挙げることができる。
【0064】
上記の架橋性重合体の形成において架橋性の官能基を有する単量体と共に用いることができる他の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルアセテート、ビニルクロルアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、ブチルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類;n−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン等の含窒素類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;下記一般式(1)で示される含フッ素類;等を挙げることができる。又、これらの単量体の1種または2種以上のものを適宜組合せて用いることもできる。
【0065】
【化1】
【0066】
なお、(1)式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは酸素原子、COO基又はCO基を表し、Rfはフルオロアルキル基を表す。
【0067】
この樹脂中に他の機能を持った材料を添加することも可能である。このような添加物としては、帯電制御用のCCAやCCR等、抵抗調節用の酸化チタンやカーボンブラック等、流動性確保用のシリカ等が挙げられ、それぞれ必要に応じて加える量を調整することで磁性キャリア5ACに機能を付加することができる。
【0068】
中空形状のコア材5AAの材料としては、有機質粒子、および無機質粒子のどちらでも用いることが可能である。有機質粒子としてはウレタン等の発泡ゴムや、フェノール樹脂、塩化ポリビニリデン、エポキシ樹脂、尿素樹脂などにより形成される中空の樹脂粒子が用いられる。無機質粒子としては、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーンの如き中空状のガラスマイクロバルーンや、カーボンマイクロバルーン等を用いることができる。
【0069】
これらの中空粒子は初めから形成されているものを混合して使用することも可能であり、また工程中に作成したものを使用することも可能である。磁性キャリア5ACとしての機能を考えた場合、簡単に破壊してしまわない程度に強度または剛性はある程度高いほうが好ましい。
【0070】
中空形状の磁性キャリア5Aの製造法としては、中空形状の粒子(コア材5AA)を核とし、有機溶媒に樹脂を溶かしたポリマー溶液中に磁性粉5ACを分散させたコート層を、流動床等の方法で塗布することにより可能である。また、モノマー中に磁性粉を分散させた液中に中空状の粒子を分散し懸濁した後に、重合を行うことで樹脂バインダ5AB中に磁性粉の分散したコート層を持つ粒子の作成が可能である。
【0071】
初めに中空形状の粒子のサイズや粒径分布を選択することにより、最終的に生成する磁性キャリア5Aのおおよその粒径を制御することが可能であり、コート厚さとしては中空形状の粒子の粒径の2%〜200%程度のコート層のものを用いることが可能であり、より好ましくは0.5μm〜10μm程度が望ましい。磁性キャリア5Aとして好適に用いるためにはある程度の磁化が必要であり、その飽和磁化は103 Oeで20emu/g〜200emu/g程度に設計するのが好ましい。
【0072】
二成分現像剤5は、磁性キャリア5Aとトナー5Bとからなるが、磁性キャリア5Aとトナー5Bとの混合比を示すトナー重量濃度比は、T/D(トナー重量/(トナー重量+キャリア重量)となる。
【0073】
トナー5Bの帯電量は現像時の画像濃度に関わるためにできるだけ一定であることが望ましい。トナー帯電量を評価する指標として比電荷Q/M(トナー帯電量/トナー重量)が用いられる。このトナー比電荷(Q/M)の変化が少ないほうが好ましが、トナー比電荷(Q/M)はT/Dの変化に伴って変化することが一般的に知られており、トナー比電荷(Q/M)を一定に保つために現像槽20A内のT/Dを精密に制御する必要がある。T/Dはおおよそ1〜10%の範囲で用いられ、通常は3〜8%程度で使用される。
【0074】
T/Dの保持制御は、現像装置20内部に備えられた図示しない磁気センサー等が検知したT/Dに基づいて図示しない制御部が行う。
【0075】
帯電能力は、磁性キャリア5Aとトナー5Bとの相性やそれぞれの導電率、撹拌速度等により異なるが、高画質化のためにはできるだけ均一帯電させるのが好ましい。均一帯電させるためには、現像装置20の撹拌性能や二成分現像剤5の流動性が影響してくるので磁性キャリア5Aの粒子密度及びかさ密度を小さくすることで、二成分現像剤5の流動性が高くなり撹拌効率も高く、撹拌時のトルクも小さくでき、ひいては二成分現像剤5へのストレスが低減され、二成分現像剤の劣化を抑制することが可能となる。そのため、かさ密度は3.0g/cm3 以下が望ましく、特に好適なのは1.5g/cm3 以下である。
【0076】
本実施形態では、現像領域Yにおいて現像スリーブ22の外周面上を搬送されている二成分現像剤5を感光体ドラム10の表面に接触させて現像を行う接触現像方式を用いているが、現像領域Yにおいて現像スリーブ22の外周面上を搬送されている二成分現像剤5を感光体ドラム10の表面に近接させて現像を行う非接触現像方式を用いてもよい。
【0077】
接触現像方式においては、現像スピードを高速化した際に、トナー像を磁性キャリア5Aの磁気穂が掻き取ってしまうこと等による刷毛スジが発生する。
【0078】
現像スピードは毎分20枚機で感光体ドラム10の周速が100mm/s程度、毎分80枚機で感光体ドラム10の周速が350mm/s程度となる。本発明の磁性キャリア5Aによる二成分現像剤を使用した場合においては磁性キャリア5Aの見掛け密度が軽いため、磁性キャリア5Aによる掻き落としが減少し、画像の悪化が起こらない等の利点がある。なお、本実施形態では、磁性キャリア5A自身が占める体積と、コア材5AAの中空部分の体積とを密度算定用の体積として見掛け密度を求めている。
【0079】
高画質化の問題点としては、磁性キャリア5Aが感光体ドラム10の表面上に現像されてしまうキャリア上がりがある。このキャリア上がりが発生した場合、形成された静電潜像の画像部が磁性キャリア5Aにより現像されてトナー抜けが発生し、画質が大きく劣化してしまう。この現象を避けるための対策としては、磁性キャリア5Aを現像スリーブ22の外周面上に確実に保持することであるが、そのためには磁性キャリア5Aの飽和磁化や、現像スリーブ22の外周面上の磁束密度を最適に設定する必要がある。
【0080】
その他に高画質化の問題点としては、感光体ドラム10の表面上に形成された静電潜像が乱される現象がある。この現象は、現像バイアスによって感光体ドラム10の表面に磁性キャリア5Aを介しての電流の流れ込みや、磁性キャリア5Aと感光体ドラム10との接触によって発生する。したがって、この現象は磁性キャリア5AC等の体積抵抗値や現像バイアスに依存しているが、一般的に1010Ω・cm〜1013Ω・cm程度に磁性キャリア5Aの体積抵抗を高くすることで現象の発生を少なくすることが可能である。
【0081】
現像電界(現像バイアス)には、DCバイアス、ACバイアス、DC成分を重畳したACバイアスのいずれも用いることが可能である。静電潜像を現像する際の問題点としてトナー5Bのトナーかぶりが挙げられる。この現象の原因としては、様々であるが大きな要因として非帯電トナー5Bや逆帯電トナー5Bが非画像部に付着するところによる部分が支配的である。そのため、トナー5Bを確実に帯電させる必要があり、二成分現像剤5中のトナー濃度の精密な制御、二成分現像剤の撹拌機構の工夫等を行い、トナー5Bを均一帯電させることが有効である。
【0082】
以下、本発明の実施例1〜5及び比較例1〜8を用いて、本発明を更に具体的に説明する。特に断らない限り「部」は「重量部」を表す。
【0083】
(実施例1)
コア材にマイクロバルーンとしてグラスバブルズK46(3M社製)を用意して水中に分散させ比重差を利用して破壊している中空粒子を取り除いたのち乾燥させた。このマイクロバルーン粒子の粒径をレーザ回折散乱法により測定したところ平均粒径58.1μmであった。
【0084】
次に、酢酸エチル180部中にポリエステル樹脂20部に対して磁性材料としてマグネタイト150部となる割合で混合し樹脂用液中に磁性粉が分散した磁性粉分散樹脂用液を得た。その後、流動床法を用いて上記マイクロバルーンの表面に上記磁性粉分散樹脂用液をスプレーにより塗布した後に昇温して乾燥させる。この操作を繰り返すことにより、マイクロバルーンの周りに磁性粉の分散した中空形状の磁性キャリアを得た。
【0085】
得られた磁性キャリアの粒径をレーザ回折散乱法により測定した。また、得られた磁性キャリアの樹脂を溶媒を用いて溶かした後にマグネタイトのみを分離し、その重量を測定して磁性粉の量を求めた。これらの測定結果から、得られたキャリア粒子の構造特性を図3に示す。さらに、得られた磁性キャリアの見掛け密度、飽和磁化、体積抵抗の測定結果を図4に示す。なお、見掛け密度の測定は、アキュピック1330(島津製作所製)を用い、飽和磁化は振動試料型磁力計(VSM)を用いて測定を行った。また、体積抵抗は、粉体抵抗測定器を用いて測定した。
【0086】
得られた磁性キャリアに粒径が6.5μmのトナーを、トナー重量濃度比(T/D)が10%、20%、25%の割合になるように混合し、二成分現像剤を作成した。この二成分現像剤を5分間撹拌してトナーを帯電させた後、ファラデーゲージにより帯電の諸特性を測定し、トナー比電荷(Q/M)を求めた。また、この二成分現像剤を用いて300,000枚に相当する現像装置20の空転によりライフ試験を行った。これらの測定結果を図5に示した。トナー粒子やワックスによるキャリア表面の汚れ(スペント)はキャリア帯電量の減少とSEM観察により評価を行い、コート剥がれや磨耗に関しては体積抵抗の測定による変化量に基づいて評価した。
【0087】
次に、この二成分現像剤を用いて現像等における画質の評価を行った。現像槽にこの二成分現像剤を投入し、感光体ドラム10を用いて現像した。感光体ドラム10上のトナー像を観察することで、キャリア上がり、トナーかぶり、潜像上に形成されたトナー像における周方向へのスジ(刷毛スジ)について目視により評価した。感光体ドラム10と現像スリーブ22は周速比1:2で同方向に回転させ、感光体ドラム10の周速は350mm/sに設定した。キャリア上がりと刷毛スジの評価に関しては、トナー重量濃度比(T/D)を10%とし、トナーかぶりに関してはこれに加えてT/Dが20%、25%の場合を評価した。これらの結果を図6に示す。
【0088】
(実施例2)
実施例2は、コア材に平均粒径33.5μmのマイクロバルーンを使用する以外は実施例1と同様な方法により同様の構成の磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0089】
(実施例3)
実施例3は、磁性粉分散樹脂用液に投入するマグネタイトを30部にする以外は実施例1と同様な方法により同様の構成の磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0090】
(実施例4)
実施例4は、磁性粉分散樹脂用液に投入する磁性粉をマグネタイトの代わりに鉄粉100部にする以外は実施例1と同様な方法により同様の構成の磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0091】
(実施例5)
実施例5は、コア材に平均粒径14μmのマイクロバルーンを使用する以外は実施例1と同様な方法により同様の構成の磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0092】
(比較例1)
比較例1は、磁性粉分散樹脂用液に投入するマグネタイトを280部にする以外は実施例1と同様な方法により同様の構成で磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0093】
(比較例2)
比較例2は、磁性粉分散樹脂用液に投入するマグネタイトを10部にする以外は実施例1と同様な方法により同様の構成の磁性キャリア形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0094】
(比較例3)
比較例3は、コア材に実施例2と同様のマイクロバルーンを使用し、磁性粉分散樹脂用液に比較例1と同様のマグネタイトを10部にする以外は実施例1と同様な方法により同様の構成の磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0095】
(比較例4)
ポリエステル樹脂15部に対して、磁性粉としてマグネタイトを85部の割合で混合し、加熱混錬して樹脂バインダ中に磁性粉を分散させて得た塊をジェットミルで粉砕し、60μm程度に分級することで樹脂バインダ中に磁性粉の分散した磁性粉分散型の磁性キャリアを得た。得られた磁性キャリアについて図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0096】
(比較例5)
比較例5は、マイクロバルーンの代わりにポリエステル樹脂粒子をコア材に使用する以外は実施例1と同様の方法により同様の構成の磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0097】
(比較例6)
比較例6は、以下の方法によりマイクロバルーンにメッキ被膜を施すことによりメッキ被膜した磁性キャリアを得た。
【0098】
実施例1と同様のマイクロバルーン100部を塩酸0.1モル水溶液(400部)中に分散後、破壊しているマイクロバルーンを分離除去した後に取り出してイオン交換水で洗浄しコア粒子が分散した分散液を得た。
【0099】
攪拌機、温度計、酸化剤液、滴下ロート、加熱装置、窒素ガス導入管を有するメッキコート装置に得られた分散液を入れて窒素置換し、分散液100部に対して塩化第1鉄溶液160部、塩化ニッケル溶液80部、酢酸アンモニウム溶液300部を投入し十分に撹拌混合しながら温度65℃に加熱した。その後、撹拌を続けながらアンモニア水にてpH7.0に調整し、この溶液に亜硝酸ナトリウム溶液を一時間かけて220部(固形分22部)を滴下した。滴下・反応中窒素ガスの導入、撹拌を続けながら液温65℃、pH7.0〜7.2の範囲に保ち、該マイクロバルーンの表面に磁性メッキ被膜を施したメッキ被膜粒子を得た。
【0100】
シリコーン樹脂液(信越化学社製)5部をトルエン45部中に溶かし、得られたメッキ被膜粒子に流動床を用いてスプレーした後に乾燥させ、磁性キャリアを得た。得られた磁性キャリアについて図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。なお、メッキ被膜の厚みは、初期のマイクロバルーン粒径とメッキ被膜粒子の粒径との差から計算により求めた。
【0101】
(比較例7)
比較例7は、コア材に平均粒径92μmのマイクロバルーンを使用する以外は実施例1と同様な方法により同様の構成の磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0102】
(比較例8)
比較例8は、磁性粉分散樹脂用液に投入する磁性粉をマグネタイトの代わりに鉄粉280部を用いる以外は比較例1と同様な方法により同様の構成の磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0103】
上述の実施例1〜5及び比較例1〜8における図3〜図6に示す結果に基づいて、キャリア上がり等の現象の評価結果のそれぞれについて、その因子となる項目の測定値とともに図7〜図11に示す。
【0104】
図7は、キャリア上がりの評価結果及びその因子を示す。実施例1と比較例3との比較から飽和磁化の大きいものは現像スリーブ22上に磁力によって引き付けられる力が大きいためにキャリア上がりが抑制されていることがわかる。また、同程度の粒径と飽和磁化の近い実施例1、比較例6を比べると体積抵抗がキャリア上がりに影響していることがわかる。これは、体積抵抗が高いと現像装置20において攪拌時にトナー5Bとは逆極性に帯電し易くなるため、トナー5Bが静電気的に感光体ドラム10に吸着する際に磁性キャリアは逆極性であるので反発して感光体ドラム10に吸着することが防止されるからである。
【0105】
図7に示す結果から、飽和磁化を30emu/g〜100emu/gとし、体積抵抗を1.0×1011Ω・cm〜1.0×1015Ω・cmとすることによって、キャリア上がりの発生を防止して高画質の現像を維持しつつ、従来よりも長寿命化を図ることができる。
【0106】
図8は、刷毛スジの評価結果及びその因子の関係を示す。刷毛スジに関しては、見掛け密度が小さい実施例3を始め、その他の実施例1,2,4,5が良好な結果となり、見掛け密度の大きい比較例4が最も良くない結果となった。粒径及び見掛け密度は磁性キャリア5Aの質量を画定するが、質量が大きいと現像スリーブ22に形成された磁性キャリア5Aの磁気穂によって感光体ドラム10に形成されたトナー像が掻き取られ易くなって刷毛スジが発生するが、逆に小さいと軽量のために接触してもトナー像が掻き取られ難く、刷毛スジが発生し難いからである。
【0107】
図8に示す結果から、粒径を17μm〜63μmとし、見掛け密度を0.8g/cm3 〜1.9g/cm3 とすることによって、刷毛スジの発生を防止して高画質の現像を維持できる。また、粒径及び見掛け密度が適切な値となって磁性キャリア5Aの重量が重過ぎることがないので、かさ密度等が低減されて従来よりもトナー5Bを攪拌し易くなり、攪拌時におけるトルクも低減される。そのため、トナー5Bの攪拌により付加されるストレスを低減できるので、長寿命化を図ることができる。
【0108】
図9は、トナー比電荷(Q/M)の変化量(差)及びその因子を示す。トナー重量濃度(T/D)によるトナー比電荷(Q/M)は、主に粒径と見掛け密度、つまり質量が影響し、粒径が小さい実施例2、比較例3について変化量が少ない結果となっている。また、ほぼ同粒径の実施例3、比較例1等を比べると、見掛け密度の小さいものがトナー比電荷(Q/D)の変化量が少ない結果となっている。本発明による実施例1〜5に関しては良好な結果であり、粒径を17μm〜63μmとし、見掛け密度を0.8g/cm3 〜1.9g/cm3 とすることによって、刷毛スジの発生を防止しつつトナー5Bを均一帯電することができる。
【0109】
図10は、トナーかぶりの評価結果及びその因子の関係を示す。感光体ドラム10上のトナーかぶりに関しては、トナー重量濃度比(T/D)が10%、20%、25%の場合を評価した。概ね粒径の小さい実施例2、比較例3が優れている結果となった。また、最も評価の悪かった比較例7の結果からわかるように粒径の大きい方がトナー濃度比(T/D)が高い場合にはトナーかぶりが多くなる傾向にある。また、実施例1及び比較例4について、粒径及び体積抵抗が略等しいにも関わらず異なる結果となっているが、これは図示していないが見掛け密度も影響しているからである。トナーかぶりは、大きな要因として非帯電トナー5Bや逆帯電トナー5Bが潜像における非画像部に付着することにより発生するので、トナー5Bを均一帯電することで防止できるところ、粒径に加えて見掛け密度も上述のように攪拌性能を向上させるからである。また、体積抵抗は、高くなると帯電し易くなるので攪拌時におけるトナー5Bを逆極性に帯電させる帯電能力を向上させる。
【0110】
図10に示す結果から、粒径を17μm〜64μmとし、見掛け密度が0.8g/cm3 〜1.9g/cm3 とし、体積抵抗を1.0×1011Ω・cm〜1.0×1015Ω・cmとすることによって、トナーかぶりの発生を防止して高画質の現像を維持しつつ、従来よりも長寿命化を図ることができる。
【0111】
図11は、現像剤の劣化に関係するスペント及び耐久性の評価結果及びその因子の関係を示す。スペントに関しては、見掛け密度やかさ密度の大小が影響していると考えられ、見掛け密度の最も大きい比較例4が最も悪い結果となった。本発明による実施例1〜5の磁性キャリアに関しては良好な結果となっている。
【0112】
耐久性に関しては、磁性粉分散型のキャリアはほとんど問題がなかった。従来の構成であるメッキ層の外側に被覆している比較例6についてはコート剥がれによる体積抵抗の低下が観測された。したがって、従来よりも耐久性が向上していることがわかる。
【0113】
図12は、図3〜4に示す測定結果及び評価結果に基づく実施例1〜5及び比較例1〜8の磁性キャリアの総合評価の結果を示す。この結果から実施例1〜5の本発明に係る磁性キャリア5Aの評価結果は良好であり、本発明の磁性キャリア5Aを用いれば、キャリア上がり等を防止して高画質で高速化に対応した高耐久性を満足する二成分現像剤を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】この発明の実施形態に係る画像形成装置の一部の構成を示す拡大図である。
【図2】この発明の実施形態に係る磁性キャリアの構造を示す断面図である。
【図3】キャリア粒子の種類(組成)を示す図である。
【図4】キャリア粒子の種類(物性)を示す図である。
【図5】二成分現像剤の諸特性の評価結果を示す図である。
【図6】トナー像の画質の評価結果を示す図である。
【図7】キャリア上がりの評価結果及びキャリア上がりの因子の関係を示す図である。
【図8】刷毛スジの評価結果及び刷毛スジの因子の関係を示す図である。
【図9】トナー比電荷(Q/M)の変化量(差)及びその因子の関係を示す図である。
【図10】トナーかぶりの評価結果及びトナーかぶりの因子の関係を示す図である。
【図11】現像剤劣化の評価及び現像剤劣化の因子の関係を示す図である。
【図12】実施例1〜5及び比較例1〜8における総合評価の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0115】
5−二成分現像剤
5A−磁性キャリア
5AA−コア材
5AB−樹脂バインダ
5AC−磁性粉
10−感光体ドラム
20−現像装置
21−攪拌ローラ
22−現像スリーブ
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置等に備えられる像担持体に形成された潜像を現像する二成分現像剤を構成する電子写真現像用の磁性キャリア、この磁性キャリアを用いてトナーを帯電させるトナー帯電方法、及び、この磁性キャリアを含む二成分現像剤を用いて像担持体に形成された潜像を現像する接触式現像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性キャリアとトナーとからなる二成分現像剤を使用する画像形成装置は二成分現像方式と一般に分類され、特に高速機やフルカラーのプリンタ及び複写機に用いられる。二成分現像方式においては、まず現像装置内において磁性キャリアとトナーとを攪拌混合してトナーを帯電させ、帯電によりトナーを磁性キャリアの粒子の周りに付着させる。この状態で、磁石を内蔵した現像スリーブの外周面に磁性キャリアを磁気吸着させる。これにより、現像スリーブの外周面上に磁性キャリア及びトナーからなる磁気ブラシが形成される。
【0003】
その後、現像スリーブを回転させて、現像バイアスを印加した磁気ブラシを静電潜像が形成されている感光体ドラムの表面の接近位置または接触位置にまで搬送する。これにより、磁気ブラシ中のトナーが静電潜像に静電吸着し、静電潜像が現像される。
【0004】
従来の乾式二成分現像法においては、磁性キャリアとして鉄粉、フェライト等の磁性粒子が用いられていた。これらの磁性キャリアにおいては、抵抗値等が使用に適さず、トナー帯電能力の不足、キャリア表面の汚染によるトナー帯電能力の低下等の問題が存在していた。この問題を解決する手段として、磁性キャリアの表面を樹脂等により被覆(コーティングする手段が一般的に採用されていた。
【0005】
ところが、コーディングを施した構成の磁性キャリアにおいても、磁気力が強いために磁気穂が堅い等の原因からトナー像を乱してしまう問題があり、十分に高画質化に対応できていなかった。また、上述のように金属系の芯材による磁性コアを樹脂等によりコーティングした磁性キャリアにおいては、内部の磁性コアの抵抗が低いためにコーティングした樹脂等の一部が磨耗し又は剥がれた場合等は、感光体ドラムの表面上に磁性キャリアが付着するキャリア上がりが増大するため、感光体ドラムの表面上に形成されたトナー像に欠損が生じる等の問題があった。
【0006】
また、一般的な磁性キャリアよりも低磁化の小粒径のキャリアが存在する。この低磁化の小粒径のキャリアは、現像スリーブの外周面上に形成されるキャリアの磁気穂が緻密となり、それによりドット再現性の良い画像を得ることができる。ところが、低磁化にするとキャリアを現像スリーブ上にとどめておく力が減少することから、キャリア上がりが多くなる傾向にある。
【0007】
これに対して、樹脂バインダ中に磁性粉が分散した所謂磁性粉分散バインダ型のキャリアが存在する。この磁性分散型のキャリアは一般に上述の磁性コアを有する磁性キャリアよりも高抵抗且つ軽量であり、分散している磁性粉の量を変えることにより磁気力を変化させることが可能である等の特徴を有している。磁性粉分散バインダ型のキャリアは、その軽量性から二成分現像剤に用いた場合に劣化が少なく、現像時のストレスも少ないソフト現像が可能であるが、高速攪拌、高速現像に対しては十分な長寿命化を図れていない。
【0008】
二成分現像剤の劣化は種々の原因により発生するが、磁性キャリアに関しては主にトナーの付着によるスペントや、コーティング部材の磨耗や剥がれ等の表面層の変化によって発生する。このスペントやコーティング部材の磨耗や剥がれ等は、撹拌時に二成分現像剤に付加されるストレスによって発生する。特に高速運転時においては劣化の進行が早くなる傾向がある。
【0009】
この攪拌時のストレスを低下するには、キャリアの密度を減らす軽量化を行うことが有効であるが、キャリア上がりを減らすためにある程度の高い飽和磁化を得る必要があり、そのために多量の磁性粉を必要とするので、現状以上の軽量化は困難であった。そこで、従来の磁性キャリアには、磁性キャリアとして中空の球状粒体のフェライトを用いた構成のものがある(例えば、特許文献1参照。)。また、カーボンマイクロバルーン等の中空物質の表面に、ニッケル等の磁性材料の被膜を形成した構成のものもある(例えば、特許文献2参照。)。さらに、バインダ型のキャリアの内部に空洞を設けて従来よりも軽量化した構成のものもある(例えば、特許文献3参照。)。また、アルミニウム粉末や樹脂粒子等の比較的比重の小さい芯材の表面を、ニッケル等の磁性材料のメッキ被膜により被覆する構成のものもある(例えば、特許文献4参照。)。
【0010】
ところが、特許文献1の構成では、中空の球状粒体のフェライトを磁性キャリアとして用いているので、中空ではあるが従来のフェライトのみを用いた構成であるため、軽量化の点で不十分である。また、このような特殊な構造のフェライトは大量生産に適していない。特許文献2の構成では、メッキ等によって磁性材料の被膜を形成しているため、表面に磁性材料の被膜が露出した場合に導電性が高くなり、トナーを帯電させる帯電付与特性や現像特性が変動するという問題がある。
【0011】
特許文献3の構成では、従来のバインダ型のキャリアに比べてさらなる軽量化を可能とするものであるが、強度や耐久性の点で十分ではない。特許文献4の構成では、表面にメッキ被膜が露出しているため導電性が高くなり、トナーを帯電させる帯電付与特性や帯電安定性が悪いという問題がある。また、芯材の表面にメッキ被膜を形成する必要があるため大量生産に適していない。
【0012】
なお、特許文献2及び4の構成のキャリアにおいては、被膜がメッキ等によって形成されているので被膜の表面が平滑になってしまう。そのため、被膜の表面上に形成された樹脂コート層は耐久性がなく剥がれ易い。
【0013】
そこで、近年のキャリアには、樹脂の芯材の周辺に磁性粉による層を形成した後、重合により樹脂を被膜する方法により形成した構成のものがある(例えば、特許文献5参照。)。また、磁性粉を分散させたバインダ樹脂中に2個以上の空隙を含む構成のものがある(例えば、特許文献6参照。)。
【特許文献1】特開昭57−177160号公報
【特許文献2】特開昭63−143564号公報
【特許文献3】特開平3−89253号公報
【特許文献4】特開昭59−142557号公報
【特許文献5】特許第3293700号公報
【特許文献6】特許第2993622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述の特許文献5の構成では、比較的強度を高めることが可能であるが、特殊な製法に限定されていることや、被覆層を重合により形成しているために材料選択範囲が狭く、トナーの帯電のために好適な樹脂を選択できない等の問題点がある。また、内部が樹脂の芯材により満たされているため軽量化についても限界がある。
【0015】
また、上述の特許文献6の構成では、2個以上の空隙を有する場合には粒子形状が不定形になり易く、特に大きい中空を有する場合はその影響が顕著となる。不定形の磁性キャリアの粒子においては、力が不均一に加わるため耐久性に課題があり、キャリア上がり等の現像特性にも悪影響がある。
【0016】
この発明の目的は、単純な構成で長寿命化を図ることができ、高速攪拌、高速現像においても長期間にわたって高画質を維持することができる磁性キャリアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を備えている。
【0018】
(1)中空形状を呈する単一のコア材と、
磁性粉を分散させた樹脂バインダであって、前記コア材の表面を被う樹脂バインダと、を備えたことを特徴とする。
【0019】
この構成においては、中空形状を呈する単一のコア材の表面が磁性粉が分散している樹脂バインダによって被われている。したがって、コア材が中空形状に形成されるので、かさ密度等が低減される。また、内部に複数ではなく単一の空洞が形成されいるのみなので粒子形状が不定形にならず、攪拌時において不均一に攪拌力が加えられることがないので、特定の箇所についてのみ劣化の進行が早くなることがない。
【0020】
(2)粒径が17μm〜63μmであり、見掛け密度が0.8g/cm3 〜1.9g/cm3であることを特徴とする。
【0021】
この構成においては、トナー像に刷毛スジの発生が防止される粒径の値及び見掛け密度の値の範囲内で磁性キャリアが形成されている。粒径及び見掛け密度は、磁性キャリアの質量を画定するが、質量が大きいと現像スリーブに形成された磁性キャリアの磁気穂によって像担持体に形成されたトナー像が掻き取られて刷毛スジが発生する。
【0022】
また、粒径及び見掛け密度が適切な値となって磁性キャリアの重量が重過ぎず、かさ密度等も低減されて従来よりもトナーを攪拌し易くなり、攪拌時におけるトルクも低減される。そのため、トナーの攪拌により付加されるストレスが低減されるので、劣化の進行が従来よりも遅くなる。しかも、攪拌性能が向上するのでトナー濃度バラツキによる帯電量の変化が低減される。
【0023】
(3)飽和磁化が30emu/g〜100emu/gであり、体積抵抗が1.0×1011Ω・cm〜1.0×1015Ω・cmであることを特徴とする。
【0024】
この構成においては、磁性キャリアの発生が防止される飽和磁化の値及び体積抵抗の値の範囲内で磁性キャリアが形成されている。飽和磁化は、現像装置において磁性キャリアを現像スリーブの外周に磁力によって吸着させるために必要となる。また、体積抵抗は、高くなると現像時に現像スリーブから電荷が注入されなくなり、磁性キャリアが像担持体上に現像されるキャリア上がりが防止される。
【0025】
(4)粒径が17μm〜64μmであり、見掛け密度が0.8g/cm3 〜1.9g/cm3であり、体積抵抗が1.0×1011Ω・cm〜1.0×1015Ω・cmであることを特徴とする。
【0026】
この構成においては、トナーかぶりの発生が防止される粒径の値、見掛け密度の値及び体積抵抗の値の範囲内で磁性キャリアが形成されている。言い換えるとトナーが均一帯電し易い上述の範囲内で磁性キャリアが形成されている。トナーかぶりは、大きな要因として非帯電トナーや逆帯電トナーが潜像における非画像部に付着することにより発生するからである。粒径及び見掛け密度は攪拌性能を向上させ、体積抵抗は高くなると帯電し易くなるので攪拌時におけるトナーを逆極性に帯電させる帯電能力を向上させる。
【0027】
(5)前記磁性粉は、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト、鉄粉の何れか一種以上から構成されることを特徴とする。
【0028】
この構成においては、体積抵抗が高く、磁性キャリア自体の体積抵抗を高めるのに適しているマグネタイト、ヘマタイト、フェライト、鉄粉の何れか一種以上から構成されている。
【0029】
(6)像担持体に形成された潜像を現像するトナーを磁性キャリアと攪拌して帯電させる二成分現像剤のトナー帯電方法において、
前記磁性キャリアは、(1)〜(5)の何れかに記載の電子写真現像用の磁性キャリアであることを特徴とする。
【0030】
この構成においては、二成分現像剤を構成するトナーが(1)〜(5)の何れかに記載の磁性キャリアと攪拌されて帯電される。
【0031】
(7)前記トナーの重量をT、前記トナーの重量と前記磁性キャリアの重量との和をDとしたときのトナーを攪拌する際のトナー重量濃度比(T/D)が10%〜25%であることを特徴とする。
【0032】
この構成においては、二成分現像剤中のトナー濃度変化によるトナー比電荷の変化量が少ないT/D10%〜25%の範囲内でトナーが磁性キャリアによって常に攪拌されている。
【0033】
(8)像担持体に形成された潜像を現像するトナー及び磁性キャリアからなる二成分現像剤の接触式現像方法において、
前記磁性キャリアは、(1)〜(5)の何れかに記載の電子写真現像用の磁性キャリアであることを特徴とする。
【0034】
この構成においては、現像剤担持体に担持されたトナー及び(1)〜(5)の何れかに記載された磁性キャリアとからなる二成分現像剤が像担持体の表面に接触し、トナーのみが像担持体の表面に形成された潜像に静電吸着して現像が行われる。この時、磁性キャリアは、磁力によって現像剤担持体に残った(吸着した)状態となる。
【0035】
(9)前記トナーの重量をT、前記トナーの重量と前記磁性キャリアの重量との和をDとしたときのトナーを攪拌する際のトナー重量濃度比(T/D)が10%〜25%であることを特徴とする。
【0036】
この構成においては、二成分現像剤中のトナー濃度変化によるトナー比電荷の変化量が少ないT/D10%〜25%の範囲内で磁性キャリアによって攪拌、帯電された後のトナーが現像に用いられる。
【発明の効果】
【0037】
この発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0038】
(1)中空形状を呈する単一のコア材の表面を磁性粉が分散している樹脂バインダで被うことによって、軽量化を図りつつ単純な構成で粒子形状を定形にすることができ、特定の箇所のみの劣化の進行が早くなることを防止できるので、従来よりも長寿命化を図ることができる。
【0039】
(2)粒径を17μm〜63μmとし、見掛け密度を0.8g/cm3 〜1.9g/cm3 とすることによって、刷毛スジの発生を防止して高画質の現像を維持しつつ、攪拌時におけるトルクを低減して従来よりも長寿命化を図ることができる。また、トナーを均一帯電することができる。
【0040】
(3)飽和磁化を30emu/g〜100emu/gとし、体積抵抗を1.0×1011Ω・cm〜1.0×1015Ω・cmとすることによって、キャリア上がりの発生を防止して高画質の現像を維持しつつ、従来よりも長寿命化を図ることができる。
【0041】
(4)粒径を17μm〜64μmとし、見掛け密度が0.8g/cm3 〜1.9g/cm3 とし、体積抵抗を1.0×1011Ω・cm〜1.0×1015Ω・cmとすることによって、トナーかぶりの発生を防止して高画質の現像を維持しつつ、従来よりも長寿命化を図ることができる。
【0042】
(5)マグネタイト、ヘマタイト、フェライト、鉄粉の何れか一種以上から構成される磁性粉を樹脂バインダに分散することによって、容易に飽和磁化を所望の値にしつつ所望の体積抵抗になるように磁性キャリアを形成できる。
【0043】
(6)トナーを(1)〜(5)の何れかに記載の長寿命化が図られた磁性キャリアと攪拌して帯電させることによって、長期間に渡ってトナーの帯電立ち上がり及び均一帯電性を向上させることができる。
【0044】
(7)トナーと磁性キャリアとの混合比がT/D10%〜25%の広い範囲において用いることが可能である。またトナーを磁性キャリアと攪拌する際に、二成分現像剤中のトナー濃度変化によるトナー比電荷の変化量が少ない状態でトナーを帯電させることが可能であり、トナーの帯電立ち上がり及び均一帯電性をより向上させることができる。
【0045】
(8)トナーと(1)〜(5)の何れかに記載の磁性キャリアとからなる二成分現像剤を用いて像担持体に形成された潜像を現像することによって、長期間に渡ってキャリア上がりやトナーかぶり等が発生すること防止して高画質の現像を維持することができる。
【0046】
(9)通常用いられるよりも高いトナー濃度であるT/D10%〜25%の範囲内で磁性キャリアにより攪拌、帯電された後のトナーを現像に用いることによって、高トナー濃度かつトナー比電荷が安定した状態のトナーを使用することが可能であり、高速化に対応でき、かつ、高画質化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
図1は、この発明の実施形態に係る画像形成装置の一部の構成を示す拡大図である。画像形成装置100は、感光体ドラム(本発明の像担持体に相当する。)10、現像装置20等を備え、画像データに基づいて形成したトナー像を用紙に転写することで用紙に画像を形成する。
【0048】
現像装置20は、現像槽20A内に攪拌ローラ21、現像スリーブ22等を備え、現像槽内20Aに収容された二成分現像剤5を用いて感光体ドラム10の表面に形成された静電潜像を現像する。攪拌ローラ21は、回転によって二成分現像剤5を構成する磁性キャリア5A及びトナー5Bを攪拌混合しつつ、現像スリーブ22に搬送する。この時、トナー5Bは、磁性キャリア5Aとの攪拌混合によって帯電され、磁性キャリア5Aの周辺に付着した状態で現像スリーブ22に搬送される。
【0049】
現像スリーブ22は、回転自在なローラの内部に磁石を備え、外周面にトナー5Bが付着した状態の磁性キャリアを磁気吸着させて磁気ブラシを形成する。また、現像スリーブ22は、図示しない現像バイアス電源に接続されている。現像バイアス電源は、現像スリーブ22の外周面上の二成分現像剤5に現像バイアス電圧を印加する。
【0050】
また、現像スリーブ22は、回転によって、現像バイアスが印加された状態の二成分現像剤5を空隙を設けて感光体ドラム10に対向する現像領域Yに搬送する。この時、トナー5Bは、現像領域Yにおいて感光体ドラム10の表面に形成された静電潜像に静電吸着してトナー像を形成する。感光体ドラム10は、表面に形成されたトナー像を用紙に転写する。感光体ドラム10と現像スリーブ22との間に設けた空隙は、現像スリーブ22の外周面上を搬送される二成分現像剤5が感光体ドラム10の表面に接触する程度の間隔で形成されている。
【0051】
図2は、この発明の実施形態に係る磁性キャリア5Aの構造を示す断面図である。磁性キャリア5Aは、中空形状を呈する球形のコア材5AA、及び、コア材5AAの表面を被う樹脂バインダ5ABから構成されている。樹脂バインダ5ABは、分散した状態の磁性粉5ACを含んでいる。これにより、かさ密度等を低減でき、軽量化を図りつつ単純な構成で粒子形状を定形にすることができる。また、内部に複数ではなく単一の空洞が形成されいるのみなので粒子形状が不定形にならず、攪拌時において不均一に攪拌力が加えられることがないので、特定の箇所についてのみ劣化の進行が早くなることを防止できる。これらにより、従来よりも長寿命化を図ることができる。
【0052】
本発明に使用し得る磁性粉としては強磁性体粒子が用いられる。この強磁性体粒子は、特に制限はないが、体積抵抗が1.0×105 Ω・cm以上のフェライト、マグネタイト及びヘマタイトが好適に用いられる。体積抵抗が105 Ω・cm未満であると、耐久により、磁性粉としての電気抵抗が変動し、又は、磁性キャリア5A自体の電気抵抗が低下するため、感光体ドラム10での現像に用いるトナーの量が変動することによる画像濃度の変動や、磁性キャリア5Aが現像スリーブ22からの注入電荷により感光体ドラム10に付着する等の問題が発生する場合があるからである。
【0053】
フェライト等以外の磁性粉としては、ヘマタイト、マグネタイト等の酸化鉄や、鉄、ニッケル及びコバルト等の強磁性を含む金属又はこれらの合金や化合物がある。なお、本発明の磁性キャリア5Aの体積抵抗の測定には粉体抵抗測定器を用いた。具体的には、円筒形のセルに磁性分を充填し、この充填磁性粉に接するように円形の上部電極及び下部電極を配し、これらの電極間に電圧を印加し、そのときに流れる電流を測定することにより比抵抗(体積抵抗)ρ(Ω・cm)を求めた。上記の測定方法においては、磁性粉5ACが粉体であるために充填率に変化が生じ、それに伴って体積抵抗が変化する場合があるので注意を要する。
【0054】
本実施形態における比抵抗の測定条件は、充填磁性粉と電極との接触面積S=約3.2cm2、厚み=約1mm、上部電極の荷重500g、印加電圧500Vとした。本発明に用いる磁性粉5ACは、一次粒子径が体積平均径として0.05〜5μm、好ましくは0.1〜1μmのものを用いる。
【0055】
また、強磁性体微粒子として、γ−酸化鉄等のスピネルフェライト、鉄以外の金属(Mn、Ni、Zn、Mg、Cu等)を一種又は二種以上含有するスピネルフェライト、バリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライト及び表面に酸化層を有する鉄や合金の微粒子粉未を用いることもできる。強磁性体微粒子の形状は、粒状、球状及び針状のいずれであってもよい。
【0056】
特に、高磁化を要する場合には、鉄等の強磁性微粒子粉末を用いることができるが、化学的な安定性を考慮すると、マグネタイト、ガンマ酸化鉄を含むスピネルフェライトやバリウムフェライト等のマグネトブランバイト型フェライトの強磁性微粒子粉末を用いることが好ましい。
【0057】
樹脂バインダ5ABに用いる結着樹脂としては、磁性粉分散バインダ型キャリアの結着樹脂として従来知られていたものの中から帯電性が適当な材料を選べばよく、例えば、付加重合系樹脂として、スチレン系、アクリル系、オレフィン系、ジエン系、アクリルニトリル系、アクリルアマイド系、酢ビ系及びハロゲン化オレフィン系の各単独又は共重合体、縮重合系としてポリエステル系、アリアミド系及びシリコーン系の各重合体、又、重付加型としてエポキシ系及びポリウレタン系の各重合体を列挙することができる。
【0058】
これらの結着樹脂の中でも架橋性重合体を用いると、磁性粉分散バインダ型キャリアとしての耐衝撃性が増し、耐久性が更に向上して好ましい。ここで架橋性重合体とは、結着樹脂がビニル系重合体の場合には、架橋剤として主に重合性二重結合を2個以上持つ化合物で架橋されたものである。又、この際に使用される架橋剤としては下記のものが上げられる。例えば、ビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びそれらの誘導体の様な芳香族ジビニル化合物、ジエチングリコールメタクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等の如きジエチレン性カルボン酸エステル、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等の全てのジビニル化合物、及び3つ以上のビニル基をもつ化合物が、単独または混合物として選ばれ、全モノマー重量を基礎にして0.005%〜20%の範囲で添加される。
【0059】
また、上記のようなビニル重合体を形成するために使用される代表的な単量体としては、スチレン、p−クロルスチレン、ビニルナフタレン、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等の如きエチレン系不飽和モノオレフィン類、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、ギ酸ビニル、マラリアン酸ビニル、カプロン酸ビニル等の如きビニルエステル類、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、メチル−α−クロルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等の如きエチレン性モノカルボン酸およびそのエステル、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の如きエチレン性モノカルボン酸置換体、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等の如きエチレン性ジカルボン酸及びその置換体、例えば、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロフェニルケトン等の如きビニルケトン類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルエチルエーテル等の如きビニルエーテル類、例えば、ビニリデンクロリド、ビニリデンクロルフルオリド等の如きビニリデンハロゲン化物、例えば、N−ビニルビロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール及びN−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物がある。本発明に用いられる重合体は、これらの単量体の一種以上と前述の架橋剤との付加重合で製造されるが、付加重合という表現は、例えば、遊離基重合法、陰イオン重合法及び陽イオン重合法の如き周知の重合法を包含するものである。
【0060】
また、結着樹脂をポリエステルとする場合には、3価以上の多価アルコール又は3価以上の多価カルボン酸を他の単量体とを重縮合させた架橋ポリエステルが好ましく用いられる。ここで、三価以上の多価アルコールとしては、例えば、ソルビートル、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、蒸精、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、その他を挙げることができる。又、三価以上の多価カルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシルプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、及びこれらの酸無水物、その他を挙げることができる。
【0061】
その他のモノマーとしては、アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等のジオール類、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、及びビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノール類、その他の二価のアルコール単量体を挙げることができる。又、カルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、メサコニン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸及びこれらの酸の無水物、低級アルキルエステルとリノレイン酸の二量体、その他の二価の有機酸単量体を挙げることができる。
【0062】
以上述べた架橋性の結着樹脂の例は、磁性粉分散バインダ型のキャリアを製造する前の原材料樹脂の段階である程度の重合されたポリマー樹脂であるが、本発明の磁性粉分散バインダ型の電子写真現像用の磁性キャリア5Aを製造する場合は、低〜中分子の樹脂を用いてコーティングした後、加熱等の方法により架橋させることで十分な硬度や耐久性を与えることも可能である。その際には樹脂と架橋反応する架橋剤を添加して、架橋性の結着樹脂とすることもできる。この場合に用いられる樹脂としては、例えば、側鎖に架橋性の官能基を有する単量体を含む2種以上の単量体からなる共重合体から選ばれる。
【0063】
かかる側鎖に架橋性の官能基を有する単量体としては、側鎖に有機酸を有する単量体(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸及びフマル酸等)、側鎖にヒドロキシ基を有する単量体(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、o−、m−又はp−ヒドロキシスチレン、o−、m−又はp−ヒドロキシフェニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル等)、側鎖にエポキシ基を有する単量体(例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート)、側鎖にイミノ基を有する単量体(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)メタクリルアミド、ウレイドエチルアクリレート、ウレイドエチルメタクリレート、ウレイドエチルビニルエーテル、メタクリルロイルジシアンアミド等)、側鎖にアジリデイニル基を有する単量体(例えば2−(1−アジリデイニル)エチルアクリレート、2−(1−アジリデイニル)エチルメタクリレート等)、他に無水マレイン酸、ポリエチレングリコールジメタクリレート等を挙げることができる。
【0064】
上記の架橋性重合体の形成において架橋性の官能基を有する単量体と共に用いることができる他の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルアセテート、ビニルクロルアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、ブチルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類;n−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン等の含窒素類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;下記一般式(1)で示される含フッ素類;等を挙げることができる。又、これらの単量体の1種または2種以上のものを適宜組合せて用いることもできる。
【0065】
【化1】
【0066】
なお、(1)式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは酸素原子、COO基又はCO基を表し、Rfはフルオロアルキル基を表す。
【0067】
この樹脂中に他の機能を持った材料を添加することも可能である。このような添加物としては、帯電制御用のCCAやCCR等、抵抗調節用の酸化チタンやカーボンブラック等、流動性確保用のシリカ等が挙げられ、それぞれ必要に応じて加える量を調整することで磁性キャリア5ACに機能を付加することができる。
【0068】
中空形状のコア材5AAの材料としては、有機質粒子、および無機質粒子のどちらでも用いることが可能である。有機質粒子としてはウレタン等の発泡ゴムや、フェノール樹脂、塩化ポリビニリデン、エポキシ樹脂、尿素樹脂などにより形成される中空の樹脂粒子が用いられる。無機質粒子としては、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーンの如き中空状のガラスマイクロバルーンや、カーボンマイクロバルーン等を用いることができる。
【0069】
これらの中空粒子は初めから形成されているものを混合して使用することも可能であり、また工程中に作成したものを使用することも可能である。磁性キャリア5ACとしての機能を考えた場合、簡単に破壊してしまわない程度に強度または剛性はある程度高いほうが好ましい。
【0070】
中空形状の磁性キャリア5Aの製造法としては、中空形状の粒子(コア材5AA)を核とし、有機溶媒に樹脂を溶かしたポリマー溶液中に磁性粉5ACを分散させたコート層を、流動床等の方法で塗布することにより可能である。また、モノマー中に磁性粉を分散させた液中に中空状の粒子を分散し懸濁した後に、重合を行うことで樹脂バインダ5AB中に磁性粉の分散したコート層を持つ粒子の作成が可能である。
【0071】
初めに中空形状の粒子のサイズや粒径分布を選択することにより、最終的に生成する磁性キャリア5Aのおおよその粒径を制御することが可能であり、コート厚さとしては中空形状の粒子の粒径の2%〜200%程度のコート層のものを用いることが可能であり、より好ましくは0.5μm〜10μm程度が望ましい。磁性キャリア5Aとして好適に用いるためにはある程度の磁化が必要であり、その飽和磁化は103 Oeで20emu/g〜200emu/g程度に設計するのが好ましい。
【0072】
二成分現像剤5は、磁性キャリア5Aとトナー5Bとからなるが、磁性キャリア5Aとトナー5Bとの混合比を示すトナー重量濃度比は、T/D(トナー重量/(トナー重量+キャリア重量)となる。
【0073】
トナー5Bの帯電量は現像時の画像濃度に関わるためにできるだけ一定であることが望ましい。トナー帯電量を評価する指標として比電荷Q/M(トナー帯電量/トナー重量)が用いられる。このトナー比電荷(Q/M)の変化が少ないほうが好ましが、トナー比電荷(Q/M)はT/Dの変化に伴って変化することが一般的に知られており、トナー比電荷(Q/M)を一定に保つために現像槽20A内のT/Dを精密に制御する必要がある。T/Dはおおよそ1〜10%の範囲で用いられ、通常は3〜8%程度で使用される。
【0074】
T/Dの保持制御は、現像装置20内部に備えられた図示しない磁気センサー等が検知したT/Dに基づいて図示しない制御部が行う。
【0075】
帯電能力は、磁性キャリア5Aとトナー5Bとの相性やそれぞれの導電率、撹拌速度等により異なるが、高画質化のためにはできるだけ均一帯電させるのが好ましい。均一帯電させるためには、現像装置20の撹拌性能や二成分現像剤5の流動性が影響してくるので磁性キャリア5Aの粒子密度及びかさ密度を小さくすることで、二成分現像剤5の流動性が高くなり撹拌効率も高く、撹拌時のトルクも小さくでき、ひいては二成分現像剤5へのストレスが低減され、二成分現像剤の劣化を抑制することが可能となる。そのため、かさ密度は3.0g/cm3 以下が望ましく、特に好適なのは1.5g/cm3 以下である。
【0076】
本実施形態では、現像領域Yにおいて現像スリーブ22の外周面上を搬送されている二成分現像剤5を感光体ドラム10の表面に接触させて現像を行う接触現像方式を用いているが、現像領域Yにおいて現像スリーブ22の外周面上を搬送されている二成分現像剤5を感光体ドラム10の表面に近接させて現像を行う非接触現像方式を用いてもよい。
【0077】
接触現像方式においては、現像スピードを高速化した際に、トナー像を磁性キャリア5Aの磁気穂が掻き取ってしまうこと等による刷毛スジが発生する。
【0078】
現像スピードは毎分20枚機で感光体ドラム10の周速が100mm/s程度、毎分80枚機で感光体ドラム10の周速が350mm/s程度となる。本発明の磁性キャリア5Aによる二成分現像剤を使用した場合においては磁性キャリア5Aの見掛け密度が軽いため、磁性キャリア5Aによる掻き落としが減少し、画像の悪化が起こらない等の利点がある。なお、本実施形態では、磁性キャリア5A自身が占める体積と、コア材5AAの中空部分の体積とを密度算定用の体積として見掛け密度を求めている。
【0079】
高画質化の問題点としては、磁性キャリア5Aが感光体ドラム10の表面上に現像されてしまうキャリア上がりがある。このキャリア上がりが発生した場合、形成された静電潜像の画像部が磁性キャリア5Aにより現像されてトナー抜けが発生し、画質が大きく劣化してしまう。この現象を避けるための対策としては、磁性キャリア5Aを現像スリーブ22の外周面上に確実に保持することであるが、そのためには磁性キャリア5Aの飽和磁化や、現像スリーブ22の外周面上の磁束密度を最適に設定する必要がある。
【0080】
その他に高画質化の問題点としては、感光体ドラム10の表面上に形成された静電潜像が乱される現象がある。この現象は、現像バイアスによって感光体ドラム10の表面に磁性キャリア5Aを介しての電流の流れ込みや、磁性キャリア5Aと感光体ドラム10との接触によって発生する。したがって、この現象は磁性キャリア5AC等の体積抵抗値や現像バイアスに依存しているが、一般的に1010Ω・cm〜1013Ω・cm程度に磁性キャリア5Aの体積抵抗を高くすることで現象の発生を少なくすることが可能である。
【0081】
現像電界(現像バイアス)には、DCバイアス、ACバイアス、DC成分を重畳したACバイアスのいずれも用いることが可能である。静電潜像を現像する際の問題点としてトナー5Bのトナーかぶりが挙げられる。この現象の原因としては、様々であるが大きな要因として非帯電トナー5Bや逆帯電トナー5Bが非画像部に付着するところによる部分が支配的である。そのため、トナー5Bを確実に帯電させる必要があり、二成分現像剤5中のトナー濃度の精密な制御、二成分現像剤の撹拌機構の工夫等を行い、トナー5Bを均一帯電させることが有効である。
【0082】
以下、本発明の実施例1〜5及び比較例1〜8を用いて、本発明を更に具体的に説明する。特に断らない限り「部」は「重量部」を表す。
【0083】
(実施例1)
コア材にマイクロバルーンとしてグラスバブルズK46(3M社製)を用意して水中に分散させ比重差を利用して破壊している中空粒子を取り除いたのち乾燥させた。このマイクロバルーン粒子の粒径をレーザ回折散乱法により測定したところ平均粒径58.1μmであった。
【0084】
次に、酢酸エチル180部中にポリエステル樹脂20部に対して磁性材料としてマグネタイト150部となる割合で混合し樹脂用液中に磁性粉が分散した磁性粉分散樹脂用液を得た。その後、流動床法を用いて上記マイクロバルーンの表面に上記磁性粉分散樹脂用液をスプレーにより塗布した後に昇温して乾燥させる。この操作を繰り返すことにより、マイクロバルーンの周りに磁性粉の分散した中空形状の磁性キャリアを得た。
【0085】
得られた磁性キャリアの粒径をレーザ回折散乱法により測定した。また、得られた磁性キャリアの樹脂を溶媒を用いて溶かした後にマグネタイトのみを分離し、その重量を測定して磁性粉の量を求めた。これらの測定結果から、得られたキャリア粒子の構造特性を図3に示す。さらに、得られた磁性キャリアの見掛け密度、飽和磁化、体積抵抗の測定結果を図4に示す。なお、見掛け密度の測定は、アキュピック1330(島津製作所製)を用い、飽和磁化は振動試料型磁力計(VSM)を用いて測定を行った。また、体積抵抗は、粉体抵抗測定器を用いて測定した。
【0086】
得られた磁性キャリアに粒径が6.5μmのトナーを、トナー重量濃度比(T/D)が10%、20%、25%の割合になるように混合し、二成分現像剤を作成した。この二成分現像剤を5分間撹拌してトナーを帯電させた後、ファラデーゲージにより帯電の諸特性を測定し、トナー比電荷(Q/M)を求めた。また、この二成分現像剤を用いて300,000枚に相当する現像装置20の空転によりライフ試験を行った。これらの測定結果を図5に示した。トナー粒子やワックスによるキャリア表面の汚れ(スペント)はキャリア帯電量の減少とSEM観察により評価を行い、コート剥がれや磨耗に関しては体積抵抗の測定による変化量に基づいて評価した。
【0087】
次に、この二成分現像剤を用いて現像等における画質の評価を行った。現像槽にこの二成分現像剤を投入し、感光体ドラム10を用いて現像した。感光体ドラム10上のトナー像を観察することで、キャリア上がり、トナーかぶり、潜像上に形成されたトナー像における周方向へのスジ(刷毛スジ)について目視により評価した。感光体ドラム10と現像スリーブ22は周速比1:2で同方向に回転させ、感光体ドラム10の周速は350mm/sに設定した。キャリア上がりと刷毛スジの評価に関しては、トナー重量濃度比(T/D)を10%とし、トナーかぶりに関してはこれに加えてT/Dが20%、25%の場合を評価した。これらの結果を図6に示す。
【0088】
(実施例2)
実施例2は、コア材に平均粒径33.5μmのマイクロバルーンを使用する以外は実施例1と同様な方法により同様の構成の磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0089】
(実施例3)
実施例3は、磁性粉分散樹脂用液に投入するマグネタイトを30部にする以外は実施例1と同様な方法により同様の構成の磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0090】
(実施例4)
実施例4は、磁性粉分散樹脂用液に投入する磁性粉をマグネタイトの代わりに鉄粉100部にする以外は実施例1と同様な方法により同様の構成の磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0091】
(実施例5)
実施例5は、コア材に平均粒径14μmのマイクロバルーンを使用する以外は実施例1と同様な方法により同様の構成の磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0092】
(比較例1)
比較例1は、磁性粉分散樹脂用液に投入するマグネタイトを280部にする以外は実施例1と同様な方法により同様の構成で磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0093】
(比較例2)
比較例2は、磁性粉分散樹脂用液に投入するマグネタイトを10部にする以外は実施例1と同様な方法により同様の構成の磁性キャリア形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0094】
(比較例3)
比較例3は、コア材に実施例2と同様のマイクロバルーンを使用し、磁性粉分散樹脂用液に比較例1と同様のマグネタイトを10部にする以外は実施例1と同様な方法により同様の構成の磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0095】
(比較例4)
ポリエステル樹脂15部に対して、磁性粉としてマグネタイトを85部の割合で混合し、加熱混錬して樹脂バインダ中に磁性粉を分散させて得た塊をジェットミルで粉砕し、60μm程度に分級することで樹脂バインダ中に磁性粉の分散した磁性粉分散型の磁性キャリアを得た。得られた磁性キャリアについて図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0096】
(比較例5)
比較例5は、マイクロバルーンの代わりにポリエステル樹脂粒子をコア材に使用する以外は実施例1と同様の方法により同様の構成の磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0097】
(比較例6)
比較例6は、以下の方法によりマイクロバルーンにメッキ被膜を施すことによりメッキ被膜した磁性キャリアを得た。
【0098】
実施例1と同様のマイクロバルーン100部を塩酸0.1モル水溶液(400部)中に分散後、破壊しているマイクロバルーンを分離除去した後に取り出してイオン交換水で洗浄しコア粒子が分散した分散液を得た。
【0099】
攪拌機、温度計、酸化剤液、滴下ロート、加熱装置、窒素ガス導入管を有するメッキコート装置に得られた分散液を入れて窒素置換し、分散液100部に対して塩化第1鉄溶液160部、塩化ニッケル溶液80部、酢酸アンモニウム溶液300部を投入し十分に撹拌混合しながら温度65℃に加熱した。その後、撹拌を続けながらアンモニア水にてpH7.0に調整し、この溶液に亜硝酸ナトリウム溶液を一時間かけて220部(固形分22部)を滴下した。滴下・反応中窒素ガスの導入、撹拌を続けながら液温65℃、pH7.0〜7.2の範囲に保ち、該マイクロバルーンの表面に磁性メッキ被膜を施したメッキ被膜粒子を得た。
【0100】
シリコーン樹脂液(信越化学社製)5部をトルエン45部中に溶かし、得られたメッキ被膜粒子に流動床を用いてスプレーした後に乾燥させ、磁性キャリアを得た。得られた磁性キャリアについて図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。なお、メッキ被膜の厚みは、初期のマイクロバルーン粒径とメッキ被膜粒子の粒径との差から計算により求めた。
【0101】
(比較例7)
比較例7は、コア材に平均粒径92μmのマイクロバルーンを使用する以外は実施例1と同様な方法により同様の構成の磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0102】
(比較例8)
比較例8は、磁性粉分散樹脂用液に投入する磁性粉をマグネタイトの代わりに鉄粉280部を用いる以外は比較例1と同様な方法により同様の構成の磁性キャリアを形成し、図3〜図6に示すように実施例1の磁性キャリアと同様の測定及び評価を行った。
【0103】
上述の実施例1〜5及び比較例1〜8における図3〜図6に示す結果に基づいて、キャリア上がり等の現象の評価結果のそれぞれについて、その因子となる項目の測定値とともに図7〜図11に示す。
【0104】
図7は、キャリア上がりの評価結果及びその因子を示す。実施例1と比較例3との比較から飽和磁化の大きいものは現像スリーブ22上に磁力によって引き付けられる力が大きいためにキャリア上がりが抑制されていることがわかる。また、同程度の粒径と飽和磁化の近い実施例1、比較例6を比べると体積抵抗がキャリア上がりに影響していることがわかる。これは、体積抵抗が高いと現像装置20において攪拌時にトナー5Bとは逆極性に帯電し易くなるため、トナー5Bが静電気的に感光体ドラム10に吸着する際に磁性キャリアは逆極性であるので反発して感光体ドラム10に吸着することが防止されるからである。
【0105】
図7に示す結果から、飽和磁化を30emu/g〜100emu/gとし、体積抵抗を1.0×1011Ω・cm〜1.0×1015Ω・cmとすることによって、キャリア上がりの発生を防止して高画質の現像を維持しつつ、従来よりも長寿命化を図ることができる。
【0106】
図8は、刷毛スジの評価結果及びその因子の関係を示す。刷毛スジに関しては、見掛け密度が小さい実施例3を始め、その他の実施例1,2,4,5が良好な結果となり、見掛け密度の大きい比較例4が最も良くない結果となった。粒径及び見掛け密度は磁性キャリア5Aの質量を画定するが、質量が大きいと現像スリーブ22に形成された磁性キャリア5Aの磁気穂によって感光体ドラム10に形成されたトナー像が掻き取られ易くなって刷毛スジが発生するが、逆に小さいと軽量のために接触してもトナー像が掻き取られ難く、刷毛スジが発生し難いからである。
【0107】
図8に示す結果から、粒径を17μm〜63μmとし、見掛け密度を0.8g/cm3 〜1.9g/cm3 とすることによって、刷毛スジの発生を防止して高画質の現像を維持できる。また、粒径及び見掛け密度が適切な値となって磁性キャリア5Aの重量が重過ぎることがないので、かさ密度等が低減されて従来よりもトナー5Bを攪拌し易くなり、攪拌時におけるトルクも低減される。そのため、トナー5Bの攪拌により付加されるストレスを低減できるので、長寿命化を図ることができる。
【0108】
図9は、トナー比電荷(Q/M)の変化量(差)及びその因子を示す。トナー重量濃度(T/D)によるトナー比電荷(Q/M)は、主に粒径と見掛け密度、つまり質量が影響し、粒径が小さい実施例2、比較例3について変化量が少ない結果となっている。また、ほぼ同粒径の実施例3、比較例1等を比べると、見掛け密度の小さいものがトナー比電荷(Q/D)の変化量が少ない結果となっている。本発明による実施例1〜5に関しては良好な結果であり、粒径を17μm〜63μmとし、見掛け密度を0.8g/cm3 〜1.9g/cm3 とすることによって、刷毛スジの発生を防止しつつトナー5Bを均一帯電することができる。
【0109】
図10は、トナーかぶりの評価結果及びその因子の関係を示す。感光体ドラム10上のトナーかぶりに関しては、トナー重量濃度比(T/D)が10%、20%、25%の場合を評価した。概ね粒径の小さい実施例2、比較例3が優れている結果となった。また、最も評価の悪かった比較例7の結果からわかるように粒径の大きい方がトナー濃度比(T/D)が高い場合にはトナーかぶりが多くなる傾向にある。また、実施例1及び比較例4について、粒径及び体積抵抗が略等しいにも関わらず異なる結果となっているが、これは図示していないが見掛け密度も影響しているからである。トナーかぶりは、大きな要因として非帯電トナー5Bや逆帯電トナー5Bが潜像における非画像部に付着することにより発生するので、トナー5Bを均一帯電することで防止できるところ、粒径に加えて見掛け密度も上述のように攪拌性能を向上させるからである。また、体積抵抗は、高くなると帯電し易くなるので攪拌時におけるトナー5Bを逆極性に帯電させる帯電能力を向上させる。
【0110】
図10に示す結果から、粒径を17μm〜64μmとし、見掛け密度が0.8g/cm3 〜1.9g/cm3 とし、体積抵抗を1.0×1011Ω・cm〜1.0×1015Ω・cmとすることによって、トナーかぶりの発生を防止して高画質の現像を維持しつつ、従来よりも長寿命化を図ることができる。
【0111】
図11は、現像剤の劣化に関係するスペント及び耐久性の評価結果及びその因子の関係を示す。スペントに関しては、見掛け密度やかさ密度の大小が影響していると考えられ、見掛け密度の最も大きい比較例4が最も悪い結果となった。本発明による実施例1〜5の磁性キャリアに関しては良好な結果となっている。
【0112】
耐久性に関しては、磁性粉分散型のキャリアはほとんど問題がなかった。従来の構成であるメッキ層の外側に被覆している比較例6についてはコート剥がれによる体積抵抗の低下が観測された。したがって、従来よりも耐久性が向上していることがわかる。
【0113】
図12は、図3〜4に示す測定結果及び評価結果に基づく実施例1〜5及び比較例1〜8の磁性キャリアの総合評価の結果を示す。この結果から実施例1〜5の本発明に係る磁性キャリア5Aの評価結果は良好であり、本発明の磁性キャリア5Aを用いれば、キャリア上がり等を防止して高画質で高速化に対応した高耐久性を満足する二成分現像剤を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】この発明の実施形態に係る画像形成装置の一部の構成を示す拡大図である。
【図2】この発明の実施形態に係る磁性キャリアの構造を示す断面図である。
【図3】キャリア粒子の種類(組成)を示す図である。
【図4】キャリア粒子の種類(物性)を示す図である。
【図5】二成分現像剤の諸特性の評価結果を示す図である。
【図6】トナー像の画質の評価結果を示す図である。
【図7】キャリア上がりの評価結果及びキャリア上がりの因子の関係を示す図である。
【図8】刷毛スジの評価結果及び刷毛スジの因子の関係を示す図である。
【図9】トナー比電荷(Q/M)の変化量(差)及びその因子の関係を示す図である。
【図10】トナーかぶりの評価結果及びトナーかぶりの因子の関係を示す図である。
【図11】現像剤劣化の評価及び現像剤劣化の因子の関係を示す図である。
【図12】実施例1〜5及び比較例1〜8における総合評価の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0115】
5−二成分現像剤
5A−磁性キャリア
5AA−コア材
5AB−樹脂バインダ
5AC−磁性粉
10−感光体ドラム
20−現像装置
21−攪拌ローラ
22−現像スリーブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空形状を呈する単一のコア材と、
磁性粉を分散させた樹脂バインダであって、前記コア材の表面を被う樹脂バインダと、を備えたことを特徴とする電子写真現像用の磁性キャリア。
【請求項2】
粒径が17μm〜63μmであり、見掛け密度が0.8g/cm3 〜1.9g/cm3であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真現像用の磁性キャリア。
【請求項3】
飽和磁化が30emu/g〜100emu/gであり、体積抵抗が1.0×1011Ω・cm〜1.0×1015Ω・cmであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真現像用の磁性キャリア。
【請求項4】
粒径が17μm〜64μmであり、見掛け密度が0.8g/cm3 〜1.9g/cm3であり、体積抵抗が1.0×1011Ω・cm〜1.0×1015Ω・cmであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真現像用の磁性キャリア。
【請求項5】
前記磁性粉は、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト、鉄粉の何れか一種以上から構成されることを特徴とする請求項1に記載の電子写真現像用の磁性キャリア。
【請求項6】
像担持体に形成された潜像を現像するトナーを磁性キャリアと攪拌して帯電させる二成分現像剤のトナー帯電方法において、
前記磁性キャリアは、請求項1〜5の何れかに記載の電子写真現像用の磁性キャリアであることを特徴とするトナー帯電方法。
【請求項7】
前記トナーの重量をT、前記トナーの重量と前記磁性キャリアの重量との和をDとしたときのトナーを攪拌する際のトナー重量濃度比(T/D)が10%〜25%であることを特徴とする請求項6に記載のトナー帯電方法。
【請求項8】
像担持体に形成された潜像を現像するトナー及び磁性キャリアからなる二成分現像剤の接触式現像方法において、
前記磁性キャリアは、請求項1〜5の何れかに記載の電子写真現像用の磁性キャリアであることを特徴とする接触式現像方法。
【請求項9】
前記トナーの重量をT、前記トナーの重量と前記磁性キャリアの重量との和をDとしたときのトナーを攪拌する際のトナー重量濃度比(T/D)が10%〜25%であることを特徴とする請求項8に記載の接触式現像方法。
【請求項1】
中空形状を呈する単一のコア材と、
磁性粉を分散させた樹脂バインダであって、前記コア材の表面を被う樹脂バインダと、を備えたことを特徴とする電子写真現像用の磁性キャリア。
【請求項2】
粒径が17μm〜63μmであり、見掛け密度が0.8g/cm3 〜1.9g/cm3であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真現像用の磁性キャリア。
【請求項3】
飽和磁化が30emu/g〜100emu/gであり、体積抵抗が1.0×1011Ω・cm〜1.0×1015Ω・cmであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真現像用の磁性キャリア。
【請求項4】
粒径が17μm〜64μmであり、見掛け密度が0.8g/cm3 〜1.9g/cm3であり、体積抵抗が1.0×1011Ω・cm〜1.0×1015Ω・cmであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真現像用の磁性キャリア。
【請求項5】
前記磁性粉は、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト、鉄粉の何れか一種以上から構成されることを特徴とする請求項1に記載の電子写真現像用の磁性キャリア。
【請求項6】
像担持体に形成された潜像を現像するトナーを磁性キャリアと攪拌して帯電させる二成分現像剤のトナー帯電方法において、
前記磁性キャリアは、請求項1〜5の何れかに記載の電子写真現像用の磁性キャリアであることを特徴とするトナー帯電方法。
【請求項7】
前記トナーの重量をT、前記トナーの重量と前記磁性キャリアの重量との和をDとしたときのトナーを攪拌する際のトナー重量濃度比(T/D)が10%〜25%であることを特徴とする請求項6に記載のトナー帯電方法。
【請求項8】
像担持体に形成された潜像を現像するトナー及び磁性キャリアからなる二成分現像剤の接触式現像方法において、
前記磁性キャリアは、請求項1〜5の何れかに記載の電子写真現像用の磁性キャリアであることを特徴とする接触式現像方法。
【請求項9】
前記トナーの重量をT、前記トナーの重量と前記磁性キャリアの重量との和をDとしたときのトナーを攪拌する際のトナー重量濃度比(T/D)が10%〜25%であることを特徴とする請求項8に記載の接触式現像方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−72144(P2007−72144A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258754(P2005−258754)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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