説明

磁性トナー

【課題】高温高湿環境下における長期保管後の使用においても画像濃度およびトナー耐久性能を維持できる磁性トナーを提供すること。
【解決手段】結着樹脂、磁性酸化鉄、及び離型剤を少なくとも含有する磁性トナー粒子と、疎水性無機微粒子を含有する磁性トナーにおいて、磁性トナー粒子は、乳化凝集法により得られた磁性トナー粒子であり、結着樹脂は少なくともポリエステル樹脂を主成分として含有し、磁性酸化鉄は、イソプロピルアルコール沈降試験における沈殿体積をVIPA
し、酢酸エチル沈降試験における沈殿体積をVEtAとし、酢酸エチルの液面までの全体積
をvEtAとしたときに、VIPA/VEtAが、1.2以上3.0以下であり、VEtA/vEtA
、0.2以上0.7以下であることを特徴とする磁性トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、トナージェット方式記録法を利用した記録方法に用いられる磁性トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
磁性一成分現像方式に用いる現像剤としての磁性トナー粒子中には、磁性酸化鉄が相当量混合分散されており、その分散状態によっては、磁性トナーに要求される種々の特性の変動あるいは劣化等により、画像濃度の低下やトナーの耐久性能の低下などの問題を引き起こす場合がある。つまり、磁性トナーにおける、画像濃度、及びトナー耐久性能を向上させるためには磁性酸化鉄の分散性が重要となる。
さらに、画像形成装置には、より高画質に画像を現像する要求が近年高まってきている。そのために要求される磁性トナーの特性として、粒度分布がシャープであること、円形度が揃っていることがあげられる。そこで、そのような特性を備えた磁性トナーを得られる製法として、材料を分散液に分散させ、これらを混合してトナー粒径に相当する凝集粒子を形成した後、加熱することで溶融させ、磁性トナー粒子を得る製法、いわゆる乳化凝集法についての検討が諸々なされている。
乳化凝集法における最近の検討について述べると、例えば、前記分散液中における磁性酸化鉄の分散性を考慮して、表面を制御した磁性酸化鉄を用いて磁性トナーを得る方法について検討がなされている(特許文献1)。また、前記分散液のゼータ電位を制御することで、表面に磁性酸化鉄が露出していない磁性トナーを得る方法について検討がなされている(特許文献2)。また、金属化合物によって表面を塩基性に処理した磁性酸化鉄を使用することで、磁性トナー中における磁性酸化鉄の内包性を向上させる方法について開示がなされている(特許文献3)。さらに、前記分散液中における磁性酸化鉄の表面に結晶性ポリエステルを被覆することによって、分散液中における磁性酸化鉄の酸化を防止しつつ分散性を向上させる検討が開示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−287153号公報
【特許文献2】特開2005−99179号公報
【特許文献3】特開2006−84600号公報
【特許文献4】特開2007−171692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した公報には、磁性酸化鉄の分散性による影響で磁性トナー粒子の表面に離型剤が露出してしまう問題について言及はされていない。磁性トナー粒子表面に離型剤が露出した場合、高温高湿環境下における長期保管後の使用において画像濃度や耐久性が著しく低下する可能性がある。
そこで、本発明は従来技術における上記のような事情に鑑み、その欠点を改善することを目的としてなされたものである。即ち、本発明の目的は、磁性トナー粒子中に含有される磁性酸化鉄の分散性を離型剤への影響を考慮しつつ向上させ、高温高湿環境下における長期保管後の使用においても画像濃度およびトナー耐久性能を維持できる磁性トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための手段は以下の通りである。
結着樹脂、磁性酸化鉄、及び離型剤を少なくとも含有する磁性トナー粒子と、疎水性無機微粒子を含有する磁性トナーにおいて、前記磁性トナー粒子は、乳化凝集法により得られた磁性トナー粒子であり、前記結着樹脂は少なくともポリエステル樹脂を主成分として含有し、前記磁性酸化鉄は、前記磁性酸化鉄20質量部をイソプロピルアルコール80質量部に分散させた後、静置し、磁性酸化鉄の沈殿体積について経時変化を測定したイソプロピルアルコール沈降試験において、静置して10分後の前記磁性酸化鉄の沈殿体積をVIPAとし、前記磁性酸化鉄20質量部を酢酸エチル80質量部に分散させた後、静置し、
磁性酸化鉄の沈殿体積について経時変化を測定した酢酸エチル沈降試験において、静置して10分後の前記磁性酸化鉄の沈殿体積をVEtAとし、酢酸エチルの液面までの全体積を
EtAとしたときに、前記VIPAとVEtAとの比VIPA/VEtAが、1.2以上3.0以下で
あり、前記VEtAとvEtAとの比VEtA/vEtAが、0.2以上0.7以下であることを特徴とする磁性トナー。
【発明の効果】
【0006】
本発明の好ましい形態によれば、磁性トナー中に含有される磁性酸化鉄の分散性を離型剤への影響を考慮しつつ向上させ、高温高湿環境下における長期保管後の使用においても画像濃度およびトナー耐久性能を維持できる磁性トナーを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の磁性トナーは、結着樹脂、磁性酸化鉄、及び離型剤を少なくとも含有する磁性トナー粒子と、疎水性無機微粒子を含有する。
本発明において、磁性トナーと上記磁性トナー粒子とは区別して用いる。粉体流動性および帯電性を調整するために、磁性トナー粒子に対し疎水性無機微粒子が外添された形態を磁性トナーと呼ぶ。ここで、磁性酸化鉄は、磁性一成分現像方式に用いる磁性トナーとして磁化を付与する機能および着色の機能を兼ねる。
本発明の磁性トナーに用いられる結着樹脂は、良好な定着性能が得られるという理由からポリエステル樹脂を主成分として含有する。ここで、当該「主成分」とは、結着樹脂に占めるポリエステル樹脂の割合が50質量%以上であることを意味する。当該結着樹脂に占めるポリエステル樹脂の割合は、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
また、上記ポリエステル樹脂は非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を含むことができる。
【0008】
本発明の磁性トナー粒子は、乳化凝集法により得られた磁性トナー粒子であることを特徴としている。乳化凝集法とは、少なくとも1μm以下の、結着樹脂微粒子を分散した結着樹脂微粒子分散液、磁性酸化鉄微粒子を分散させた磁性酸化鉄微粒子分散液、及び離型剤微粒子を分散させた離型剤微粒子分散液を混合してトナー粒径に相当する凝集粒子を形成する第1工程(以下、凝集工程と呼ぶことがある)と、該凝集粒子を、結着樹脂微粒子のガラス転移点以上の温度に加熱することで、凝集粒子を溶融/融合させ、磁性トナー粒子を得る第2工程(以下、溶融工程と呼ぶことがある)を経て磁性トナーを得る製造方法である。
さらに、本発明では、凝集粒子を得た後、この凝集粒子の表面に樹脂微粒子を含むシェル層を形成しうる微粒子を付着させる工程(以下、付着工程)を含むことが好ましい。
乳化凝集法によって磁性トナー粒子を得る場合、前記第1工程において、前記凝集粒子を形成する際に、前記凝集粒子中の結着樹脂微粒子、磁性酸化鉄微粒子および離型剤微粒子の分散状態が特に重要である。本発明の乳化凝集法による磁性トナー粒子の製造では、水系媒体を用いるため、磁性酸化鉄微粒子表面を結着樹脂微粒子が覆った状態の凝集体は比較的水となじみやすく、磁性トナー粒子表面に存在しやすい。一方、離型剤微粒子は水となじみにくく、磁性トナー粒子内部に存在しやすくなり、磁性トナー粒子表面に離型剤微粒子が存在しにくくなる。その結果、磁性トナー粒子表面は結着樹脂微粒子で覆われ、
磁性酸化鉄微粒子や離型剤微粒子が磁性トナー粒子内部に内包された構成をとりやすい。
しかし、磁性トナー粒子表面に磁性酸化鉄微粒子や離型剤微粒子が露出した際に、画像弊害を引き起こす可能性がある。例えば、前記凝集粒子の表面に磁性酸化鉄微粒子が多数存在すると、高温高湿環境における長期保管後に使用する際に磁性トナー粒子表面の磁性酸化鉄微粒子が磁性トナー粒子表面から離脱し、磁性トナーの帯電が不安定になり、画像濃度低下が発生しやすくなる。また、前記凝集粒子の表面に離型剤微粒子が多数存在すると、磁性トナー粒子表面にも離型剤が多く存在するため、高温高湿環境における長期保管で外添剤が磁性トナー粒子表面に埋め込まれやすくなり、長期間の使用により画像濃度の低下現象が発生することがある。また、前記凝集粒子の表面に磁性酸化鉄微粒子および離型剤微粒子が多数存在すると、前記付着工程において前記凝集粒子の表面に付着粒子が均一に付着できず付着ムラが発生し、画像濃度の低下やトナー耐久性の低下を発生させる可能性がある。以上の理由より、前記第1工程において前記凝集粒子を形成させる際には、前記凝集粒子の表面に磁性酸化鉄粒子及び離型剤微粒子の露出が少ないことが好ましい。さらに好ましくは、前記凝集粒子の表面が結着樹脂微粒子で均一に覆われている状態である。
このような凝集粒子を得るには、前記凝集工程において前記凝集粒子を形成させる際に、結着樹脂微粒子が磁性酸化鉄微粒子を囲むように凝集させてやればよい。結着樹脂微粒子が磁性酸化鉄微粒子を囲めば、磁性酸化鉄微粒子が前記凝集体表面に露出することがなくなり、上述したような磁性トナーの帯電不良が発生しなくなる。一方、本発明においては、磁性酸化鉄微粒子と離型剤微粒子が接触しないように凝集させることも重要である。磁性酸化鉄微粒子と離型剤微粒子が接触した状態で前記凝集粒子を作製すると、磁性トナー粒子中において磁性酸化鉄微粒子と離型剤が接触した状態となる。ここで、磁性酸化鉄微粒子と離型剤の界面は磁性酸化鉄微粒子と結着樹脂微粒子の界面と比較して接着強度が低いため、磁性酸化鉄微粒子と離型剤の界面の多い磁性トナー粒子は割れ易くなる可能性がある。磁性トナー粒子が割れると、磁性トナー粒子断面に外添剤の付着していない磁性トナー粒子表面が露出し、流動性及び帯電性低下の原因となる場合がある。また、磁性酸化鉄微粒子と離型剤の界面に存在する磁性酸化鉄微粒子が磁性トナーから遊離したり、粒径の小さい磁性トナーが多くなったりすることで画像濃度が低下する可能性が高くなる。特に、高温多湿環境における長期間の使用により磁性トナーが劣化しやすい時に上記の問題が発生しやすい。つまり、本発明で使用する磁性酸化鉄粒子は、前記凝集工程において、結着樹脂微粒子には接触し、離型剤微粒子には非接触の状態であることが好ましい。磁性酸化鉄粒子と、結着樹脂微粒子及び離型剤微粒子との接触状態を決定する要因として、磁性酸化鉄粒子と、結着樹脂微粒子及び離型剤微粒子との親和性が挙げられる。
【0009】
以上より、本発明者らは、前記凝集工程において前記凝集粒子を形成する際、磁性酸化鉄が結着樹脂及び離型剤に特定の範囲で親和性を持っていることが重要であると見出した。
一般に、2つの物質における親和性は、その物質の極性で判断することができる。極性の差が小さいものほど親和性が高く、反対に極性の差が大きいものほど親和性は低くなる傾向がある。
そこで磁性酸化鉄と結着樹脂との親和性をあらわす指標として、磁性酸化鉄を結着樹脂の極性と近い溶媒に十分分散させた後、静置し、沈澱体積の減少速度を評価した値を用いることが適している。本発明の磁性トナー粒子は、少なくともポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂を有することから、磁性酸化鉄と結着樹脂との親和性を評価するために、ポリエステル樹脂と極性の近いイソプロピルアルコール(以下、イソプロピルアルコールを「IPA」と称することがある)を選出した。通常、トナー用途に使用されるポリエステル樹脂の範疇では、ポリエステル樹脂を構成するモノマー組成を変更しても極性にそれ程大きな差は出ないと考えられるため、モノマー組成の異なるポリエステル樹脂であっても、上記親和性の評価にイソプロピルアルコールを用いることができると考える。
ここで、IPAの真密度に対し、磁性酸化鉄の真密度(空隙を除いた密度)が大きいた
めに、磁性酸化鉄はIPA中で沈澱を形成する。沈澱体積の減少速度が小さいことは、磁性酸化鉄がIPA(すなわち結着樹脂)と親和性が高いこと意味する。一方、沈澱体積の減少速度が大きいことは、磁性酸化鉄が結着樹脂と親和性が低いことを意味する。
【0010】
同様の理由で、磁性酸化鉄と離型剤との親和性をあらわす指標として、磁性酸化鉄を離型剤の極性と近い溶媒に十分分散させた後、静置し、沈澱体積の減少速度を評価した値を用いることが適している。磁性酸化鉄と離型剤との親和性を評価するために、離型剤と極性の近い酢酸エチルを選出した。ここで、ポリエステル樹脂と離型剤の極性を鑑みた場合、トナー用途に使用される離型剤と酢酸エチルの極性がより近接していると考えられる。
酢酸エチルの真密度に対し、磁性酸化鉄の真密度(空隙を除いた密度)が大きいために、磁性酸化鉄は酢酸エチル中で沈澱を形成する。沈澱体積の減少速度が小さいことは、磁性酸化鉄が酢酸エチル(すなわち離型剤)と親和性が高いこと意味する。一方、沈澱体積の減少速度が大きいことは、磁性酸化鉄が離型剤と親和性が低いことを意味する。
【0011】
すなわち、本発明の磁性トナーに用いる磁性酸化鉄は、磁性酸化鉄20質量部をイソプロピルアルコール80質量部に分散させた後、静置し、磁性酸化鉄の沈殿体積について経時変化を測定したイソプロピルアルコール沈降試験において、静置して10分後の磁性酸化鉄の沈殿体積をVIPAとし、磁性酸化鉄20質量部を酢酸エチル80質量部に分散させ
た後、静置し、磁性酸化鉄の沈殿体積について経時変化を測定した酢酸エチル沈降試験において、静置して10分後の磁性酸化鉄の沈殿体積をVEtAとし、酢酸エチルの液面まで
の全体積をvEtAとしたときに、当該VIPAとVEtAとの比VIPA/VEtAが、1.2以上3
.0以下であり、当該VEtAとvEtAとの比VEtA/vEtAが、0.2以上0.7以下であることを特徴とする。
静置して10分後の沈殿体積とは、磁性酸化鉄をIPAもしくは酢酸エチルに十分分散させ、静置し、10分経過後の沈澱体積を表す。また、静置10分後の沈殿体積を採用する理由は、前記微粒子混合分散液中で前記凝集粒子を形成する前記第1工程において、磁性酸化鉄微粒子のふるまいを評価するのに、静置10分後がふさわしいと考えるからである。この理由は明確になっていないが、磁性トナー粒子における磁性酸化鉄の分散状態との相関を確認したところ、静置10分後が最も良い相関を示したためである。
上記VIPAとVEtAとの比VIPA/VEtAが、1.2未満の場合、磁性酸化鉄とIPAの親和性と、磁性酸化鉄と酢酸エチルの親和性の比が小さいことを表している。すなわち、磁性酸化鉄は結着樹脂および離型剤に対する親和性が近い状態と考えてよい。つまり、前記第1工程における前記凝集粒子中に含まれる磁性酸化鉄微粒子は結着樹脂微粒子および離型剤微粒子双方に接触しやすい状態であると考えられる。そのため、磁性トナー粒子内に磁性酸化鉄微粒子と離型剤の界面が多数存在してしまうため、高温高湿環境における長期保管後に使用する際、前述したように画像濃度の低下が発生する可能性がある。
また、結着樹脂微粒子および離型剤微粒子双方に接触した磁性酸化鉄粒子が存在すると、前記凝集体表面には磁性酸化鉄粒子に接触した結着樹脂微粒子および離型剤微粒子が存在しやすくなる。このように、前記凝集粒子の表面に離型剤微粒子が多数存在すると、磁性トナー粒子表面にも離型剤が多く存在するため、高温高湿環境における長期保管後で外添剤が磁性トナー粒子表面に埋め込まれやすくなり、長期間の使用により画像濃度の低下が発生することがある。また、前記凝集粒子の表面に磁性酸化鉄微粒子、結着樹脂微粒子、離型剤微粒子が存在して不均一な表面になるため、前記付着工程において前記凝集粒子に前記微粒子を付着させる工程で、前記微粒子の付着にムラが生じ、その結果、得られる磁性トナーの表面が均一に前記微粒子によって覆われないという問題が発生する可能性がある。また、前記付着工程を行わず前記溶融工程に移行したとしても、得られる磁性トナーの表面が均一に樹脂によって覆われないという問題が発生する可能性がある。
前述したように、磁性トナーの表面に磁性酸化鉄微粒子や離型剤微粒子が多数存在すると、高温多湿環境における長期保管後の磁性トナーで、トナーの帯電が不安定になったり、外添剤が磁性トナー表面に埋め込まれたりすることによって、画像濃度や耐久性能の低
下が問題となることがある。
一方、VIPAとVEtAとの比VIPA/VEtAが3.0を超える場合、磁性酸化鉄とIPAの親和性と、磁性酸化鉄と酢酸エチルの親和性の比が大きいことを表している。すなわち、磁性酸化鉄は離型剤と比較して結着樹脂との親和性が高いと考えてよい。つまり、前記第1工程における前記凝集粒子中に含まれる磁性酸化鉄微粒子は結着樹脂微粒子に接触し、離型剤微粒子に非接触の状態であると考えられる。この場合、磁性酸化鉄微粒子は離型剤微粒子を連れまわらないため、前記凝集粒子表面に離型剤微粒子が存在しにくくなる。一方で、磁性酸化鉄微粒子は結着樹脂微粒子と選択的に凝集しやすく、離型剤微粒子が単独存在する可能性が高くなる。その結果、前記凝集粒子中に離型剤微粒子が、設定された仕込み量で含有されず低温定着性能の低下の原因となる。また、離型剤微粒子が凝集粒子に取り込まれず、媒体中に単独で存在していた離型剤微粒子が磁性トナー粒子表面に再付着し、磁性トナーの耐久性が低下する場合がある。
上記VIPA/VEtAは、1.5以上2.8以下であることが好ましい。なお、上記VIPA
/VEtAを上記範囲に調節するための方策は後述する。
【0012】
磁性トナーにおける磁性酸化鉄微粒子の分散性を向上する手段として、磁性酸化鉄と、酢酸エチルおよびIPAとの親和性の比を特定の範囲とすることに加え、磁性酸化鉄と酢酸エチルとの親和性を特定の範囲とすることが、磁性酸化鉄粒子と離型剤微粒子を非接触とさせる手段として必要である。
そこで、本発明の磁性トナーに用いる磁性酸化鉄は、磁性酸化鉄20質量部を酢酸エチル80質量部に分散させた後、静置し、磁性酸化鉄の沈殿体積について経時変化を測定した酢酸エチル沈降試験において、静置して10分後の磁性酸化鉄の沈殿体積をVEtAとし
、酢酸エチルの液面までの全体積をvEtAとしたときに、当該VEtAとvEtAとの比VEtA/vEtAが、0.2以上0.7以下であることを特徴とする。
上記vEtAとVEtAとの比VEtA/vEtAが0.2未満となることはない。これは、酢酸エチル中に磁性酸化鉄が完全に沈殿したとしても、磁性酸化鉄の体積によって沈殿は0とならず、VEtA/vEtAが0.2となるからである。
また、VEtA/vEtAが0.7を超える場合、磁性酸化鉄と酢酸エチルとの親和性が高すぎること示している。このような場合は、前記理由の通り、磁性酸化鉄微粒子に連れまわった離型剤微粒子が前記凝集粒子の表面に存在するため、高温多湿環境における長期保管後で磁性トナーの帯電が不安定になり、画像濃度の低下が問題となる。
上記VEtA/vEtAは、0.3以上0.6以下であることが好ましい。なお、上記VEtA
/vEtAを上記範囲に調節するための方策は後述する。
【0013】
本発明において、上記ポリエステル樹脂は結晶性ポリエステル樹脂を所定量含有した場合、定着性能の観点から好ましい。当該結晶性ポリエステル樹脂の含有量はポリエステル樹脂全体に対し、1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。さらに、1質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂は非結晶性ポリエステル樹脂と比較して、シャープメルトな特性を有するため、磁性トナーの耐熱保存性を確保しつつ、良好な低温定着性能を提供することが出来る。
結晶性ポリエステル樹脂は融点を超える温度において急激に粘度が低下するため、乳化凝集法にて磁性トナーを得る場合に、結晶性ポリエステル樹脂を結着樹脂として使用すると、凝集粒子を加熱して融合する際に、結晶性ポリエステル樹脂が溶融し粘度が急激に低下する。溶融工程において凝集粒子中における磁性酸化鉄微粒子の周囲に存在する結晶性ポリエステル樹脂の粘度が低下すると、従来技術にあるような、結着樹脂及び離型剤との親和性を制御していないような磁性酸化鉄では、磁性酸化鉄微粒子が動きやすくなり、安定した分散性能を確保できなくなるといった問題があった。その結果、動きやすくなった磁性酸化鉄微粒子が磁性トナー粒子の表面に存在してしまい磁性トナーの帯電を逃がすようなリークサイトとして働くことで、磁性トナーの帯電が不安定となり、画像濃度の低下
などの画像不良を引き起こす可能性があった。
しかし、本発明の規定を満たす磁性酸化鉄を用いた場合、結晶性ポリエステル樹脂を含有させた場合でも、磁性酸化鉄微粒子の周囲にある結晶性ポリエステル樹脂の粘度が急激に低下しても、磁性酸化鉄微粒子と結着樹脂微粒子との親和性が高いため、磁性酸化鉄微粒子は動きまわらず、磁性酸化鉄微粒子が磁性トナー粒子の表面に存在しにくくなる。よって、良好な画像を得ることができ、さらに良好な低温定着性能を達成した磁性トナーを提供することが出来る。
【0014】
本発明で磁性トナー粒子の製造に用いられる乳化凝集法の好ましい形態について、以下に説明する。
(結着樹脂)
本発明の磁性トナーにおいて使用される結着樹脂は、ポリエステル樹脂を主成分として含む。また、ポリエステル樹脂は非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂と共に含有することができる。尚、非晶性ポリエステル樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)を用いた熱分析測定において、結晶融解に伴う吸熱ピークが存在しない樹脂であり、常温固体で、ガラス転移温度以上の温度において熱可塑化するものを指す。
このような非晶性ポリエステル樹脂としては、通常、ジカルボン酸成分とジオール成分との中から好適なものを選択して組合せ、例えば、エステル交換法又は重縮合法等、従来公知の方法を用いて合成することができる。
ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等が挙げられる。また、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。さらに、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等の3価以上のカルボン酸及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルを併用することができる。尚、酸価や水酸基価の調整等の目的で、必要に応じて、酢酸、安息香酸等の1価の酸を使用することも可能である。
一方、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのトリメチレンオキシド付加物等が挙げられる。また、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。さらに、微量であれば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコールを併用することができる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。尚、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の1価のアルコールも使用することができる。
【0015】
上述のようにポリエステル樹脂は結晶性ポリエステル樹脂を含有することができる。
尚、結晶性ポリエステル樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)を用いた熱分析測定において、結晶融解に伴う吸熱ピークが存在する樹脂であり、常温固体で、ガラス転移温度以上の温度において熱可塑化するものを指す。
当該結晶性ポリエステルの融点は、60〜120℃の範囲であることが好ましく、60〜100℃の範囲であることがより好ましい。この範囲であると耐熱保存性および低温定着性能がより向上する。
結晶性ポリエステルは、ジカルボン酸成分とジオール成分とから合成されるのが好まし
い。
本発明の結晶性ポリエステルで用いることのできる脂肪族ジカルボン酸としては、例えば以下を挙げることができる。蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、等。あるいはその低級アルキルエステルや酸無水物。
これらのうち、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸あるいはその低級アルキルエステルや酸無水物が好ましい。
本発明の結晶性ポリエステルで用いることのできる芳香族ジカルボン酸としては、例えば以下を挙げることができる。テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等。
これらのうち、テレフタル酸が、入手容易性、低融点のポリマーを形成しやすい等の点で好ましい。
また、本発明の結晶性ポリエステルには二重結合を有するジカルボン酸を用いることもできる。二重結合を有するジカルボン酸は、その二重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時のホットオフセットを防ぐために好適に用いることができる。このようなジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸、マレイン酸等が好ましい。
上記結晶ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物、および、アミン化合物等が挙げられる。具体的には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。
一方、本発明に使用される結着樹脂は、主成分としてポリエステル樹脂を含む以外に、本発明の効果に影響を与えない程度に、他の樹脂を含むこともできる。当該樹脂としては、例えば、熱可塑性結着樹脂などが挙げられる。具体的には、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類の単独重合体又は共重合体(スチレン系樹脂);アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類の単
独重合体又は共重合体(オレフィン系樹脂);エポキシ樹脂、上述以外のポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等の非ビニル縮合系樹脂、及びこれらの非ビニル縮合系樹脂とビニル系モノマーとのグラフト重合体などが挙げられる。
【0016】
(結着樹脂微粒子分散液の調製)
前記結着樹脂に非晶性ポリエステル樹脂や結晶性ポリエステル樹脂を用いる場合、非晶性ポリエステル樹脂や結晶性ポリエステル樹脂を乳化し乳化粒子を形成させることが好ましい。例えば前記非晶性ポリエステル樹脂の乳化粒子は、水系媒体と、少なくともポリエステル樹脂を混合した溶液に、剪断力を与えることにより形成される。この時、非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上の温度に加熱することで、ポリマー液の粘性を下げて乳化粒子を形成し、結着樹脂微粒子分散液を得ることができる。
本発明では、樹脂を乳化させるために転相乳化法を用いることが好ましい。転相乳化法は、少なくともポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解させ、必要に応じて中和剤や分散安定剤を添加して、攪拌下にて、水系媒体を滴下して、乳化粒子を得た後、樹脂分散液中の溶媒を除去して、乳化液を得る方法である。このとき、中和剤や分散安定剤の投入順は変更してもよい。
前記乳化粒子を形成する際に用いる乳化機としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、エクストルーダー等が挙げられる。前記ポリエステル樹脂の乳化粒子の粒径は、その平均粒子径(体積平均粒径)で0.1〜0.3μmの範囲が好ましい。0.1μm未満ではほとんどの乳化粒子が水に溶解してしまうため、粒子の作製が困難になり、また0.3μmを超えると、所望の粒径である3.0〜7.5μmの粒子を得ることが困難になる場合がある。樹脂粒子の体積平均粒径については、例えば、ドップラー散乱型粒度分布測定装置(日機装社製、マイクロトラックUPA9340)などで測定できる。
前記樹脂を溶解させる有機溶媒としては、例えば、蟻酸エステル類、酢酸エステル類、酪酸エステル類、ケトン類、エーテル類、ベンゼン類、ハロゲン化炭素類が挙げられる。具体的には、蟻酸、酢酸、酪酸等のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル等エステル類;アセトン、MEK(メチルエチルケトン)、MIPK(メチルイソプロピルケトン)、MBK(メチルブチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)等のメチルケトン類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類:テトラヒドロフラン等の複素環化合物;四塩化炭素、トリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロエチリデンモノクロロベンゼン、等のハロゲン化炭素類;などを単独であるいは2種以上組合せて用いることが可能である。入手し易さや脱溶剤時の回収容易性、環境への配慮の点から、低沸点溶媒(50〜150℃)の酢酸エステル類やメチルケトン類、エーテル類が通常好ましく用いられ、特に、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの水に一部溶解性を有するものが好ましい。前記有機溶媒は、樹脂粒子中に残存すると定着時に加熱部材表面を変性させる場合があるため揮発性の比較的高いものを用いることが好ましい。
前記水系媒体としては、基本的にはイオン交換水が用いられるが、油滴を破壊しない程度に水溶性有機溶媒を含んでも構わない。水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール等の短炭素鎖アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;エーテル類、ジオール類、THF、アセトン等が挙げられる。これらの水溶性有機溶媒のイオン交換水との混合比は、質量比で1%〜50%の範囲、より好適には1%〜30%が選択され水性成分として用いられる。また、水溶性有機溶媒は添加されるイオン交換水に混合するだけでなく、樹脂溶解液中に添加して使用しても構わない。
また、前記乳化液が安定的に分散状態を保つよう、必要に応じて樹脂溶解液及び水性成分に分散剤を添加してもよい。前記分散剤としては、水性成分中で親水性コロイドを形成
するもので、特にヒドロキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルローズ等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩等の合成高分子類;ゼラチン;アラビアゴム;寒天;等の分散安定化剤が挙げられる。また、シリカ、酸化チタン、アルミナ、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム等の固体微粉末も用いることができる。これらの分散剤は通常、水性成分中の濃度が0〜20質量%、望ましくは0〜10質量%となるよう添加される。
また、前記分散剤としては、界面活性剤も用いられる。前記界面活性剤の例としては、例えば、サポニンなどの天然界面活性成分の他に、アルキルアミン塩酸・酢酸塩類、4級アンモニウム塩類、グリセリン類等のカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤が好ましく用いられる。さらに、前記乳化液のpHを調整するために、中和剤を添加してもよい。前記中和剤としては、硝酸、塩酸、水酸化ナトリウム、アンモニアなど一般の酸、アルカリを用いることができる。
前記乳化液から有機溶媒を除去する方法としては、乳化液を常温(20〜25℃)もしくは加熱下で有機溶媒を揮発させる方法、これに減圧を組み合わせる方法が好ましく用いられる。
一方、溶媒への分散方法としては、例えば、回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散方法を使用することができ、なんら制限されるものではない。
【0017】
(磁性酸化鉄)
本発明に用いられる磁性酸化鉄は、Ti成分、Al成分、Si成分およびFe成分を少なくとも含有することが好ましい。これらの元素を含有することで、磁性トナーの磁気特性、着色力、及び黒色度を所望の値にしやすい。
磁性酸化鉄はTi成分の含有量が、Ti元素換算で、磁性酸化鉄全体に対して、0.30質量%以上5.00質量%以下であることが好ましい。0.30質量%以上4.00質量%以下であることがより好ましく、0.30質量%以上3.00質量%以下であることがさらに好ましい。この範囲とすることで、磁性トナーに十分な磁化を付与しやすく、カブリ等を抑制しやすい。
磁性酸化鉄はAl成分の含有量が、Al元素換算で、磁性酸化鉄全体に対して、0.10質量%以上3.00質量%以下であることが好ましい。0.10質量%以上2.50質量%以下であることがより好ましく、0.10質量%以上2.00質量%以下であることがさらに好ましい。この範囲とすることで、磁性酸化鉄の粒度分布をシャープにしやすく、画像の黒色度を高くしやすい。
磁性酸化鉄はSi成分の含有量が、Si元素換算で、磁性酸化鉄全体に対して、0.10質量%以上5.00質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.10質量%以上4.00質量%以下であり、さらに好ましくは、0.15質量%以上3.50質量%以下である。この範囲とすることで、低温低湿環境下での帯電量が高くなる現象を抑えやすくなり、帯電起因の画像濃度低下を抑制しやすい。
【0018】
また、(1)前記磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、磁性酸化鉄に含まれるAl成分をアルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量の割合が、磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量の50%以上95%以下であるのが好ましい。
磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入した際、Fe成分とTi成分はほとんど溶出せず、最表層のAl成分が溶出する。つまり磁性酸化鉄表面から深い部分のAlは溶解されず、最表層に存在するAlのみが溶解すると考えられる。したがって、前記磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、前記磁性酸化鉄に含まれるAl成分を前記アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量は、磁性酸化鉄の最表層のAl成分量を意味すると考えられる。
そして、磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、磁性酸化鉄に含まれるAl成分をアル
カリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量(最表層のAl成分量)の割合が、磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量の50%以上95%以下とすることで、前記VEtA/vEtAを前記範囲に調整することが可能である。この理由は十分明らかになっていないが、磁性酸化鉄の最表層に存在するAl成分量により、離型剤の分散性を制御できる。
すなわち、離型剤の分散性の制御の観点から、前記磁性酸化鉄に含まれるAl成分を前記アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量(最表層のAl量)は、0.1質量%以上3.0質量%以下であることが好ましい。
【0019】
(2)前記磁性酸化鉄に含まれるAl成分を前記アルカリ水溶液で溶出した後の磁性酸化鉄をさらに酸水溶液で溶解し、溶解液を得、前記磁性酸化鉄が全て溶解された溶解液中に含まれるFe元素量を総Fe元素量としたときに、前記総Fe元素量の10質量%が溶解液に存在する状態まで前記磁性酸化鉄を溶解した溶解液(以下、Fe元素溶解率10質量%溶解液という)中に含まれるAl成分量と、前記(1)で溶出されるAl成分量の合計が、前記磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量の95%以上100%以下であることが好ましい。
言い換えれば、Al成分が磁性酸化鉄の最表層および中間層に存在することが好ましく、Al成分は磁性酸化鉄の中心部に存在しないことが好ましい。磁性酸化鉄中心部にAl成分を含有しないことで小粒径の磁性酸化鉄が生成しにくく、画像の黒色度を高くしやすい。
(3)本発明における磁性酸化鉄は、前記Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含まれる、Ti成分量のTi元素換算値の、Al成分量のAl元素換算値に対する比(Ti成分量のTi元素換算値/Al成分量のAl元素換算値)が、2.0以上30.0以下であることが好ましい。この範囲とすることで磁性酸化鉄の抵抗値を上げやすく、磁性トナーにおいて帯電が不安定になるという問題がおきにくくなる。
【0020】
本発明の磁性酸化鉄は、前記磁性酸化鉄を前記(1)と同じ組成のアルカリ水溶液に投入し、前記磁性酸化鉄に含まれるSi成分を前記アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるSi成分量の割合が、磁性酸化鉄に含まれる全Si成分量の5.0%以上30.0%以下であることが好ましく、8.0%以上27.0%以下であることがより好ましく、10.0%以上25.0%以下であることがさらに好ましい。
磁性酸化鉄の最表層のアルカリ水溶液で溶出されるSi成分量の割合が、磁性酸化鉄に含まれる全Si成分量に対して、上記範囲である場合、磁性酸化鉄を高抵抗としやすい。さらに磁性酸化鉄とポリエステルを主成分とする結着樹脂との親和性を上げやすく、磁性トナー粒子中における磁性酸化鉄微粒子の良好な分散性が達成しやすい。
また、前記磁性酸化鉄を前記(1)と同じ組成のアルカリ水溶液に投入し、前記磁性酸化鉄に含まれるSi成分を前記アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるSi成分量(最表層のSi量)は、0.20質量%以上1.00質量%以下であるのが好ましい。最表層のSi量をこの範囲とすることで、磁性トナー表面における磁性酸化鉄の露出を制御しやすい。
さらに、前記Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含まれる、Ti成分量のTi元素換算値の、Si成分量のSi元素換算値に対する比(Ti成分量のTi元素換算値/Si成分量のSi元素換算値)(以下、単に[Ti/Si]ともいう)、つまり中間層におけるTi量/Si量の比は、1.0以上5.0以下であることが好ましく、より好ましくは、1.2以上4.5以下である。[Ti/Si]が上記範囲にある場合、磁性トナーにおける磁性酸化鉄の分散性を良好にしやすく、良好な帯電特性を得やすい。
【0021】
本発明の磁性トナーは、79.6kA/mの外部磁場における磁化が12Am2/kg
以上80Am2/kg以下であることが好ましい。79.6kA/mの外部磁場で規定す
る理由は、現像スリーブ上の磁気環境を想定しているためである。該磁化が上記範囲内であることによって、画像濃度とカブリを両立しやすい。さらに良好な耐久性が得られやす
い。
本発明の磁性トナーに用いられる磁性酸化鉄は、透過型電子顕微鏡写真による観察で、磁性酸化鉄微粒子が主に平滑面を有さない曲面で形成された球形状粒子から構成され、八面体粒子を殆ど含まないことが好ましい。
本発明の磁性トナーに用いられる磁性酸化鉄は、後述する測定方法に基づくBET比表面積が、5.0m2/g以上15.0m2/g以下であることが好ましく、より好ましくは、6.0m2/g以上13.0m2/g以下である。当該BET比表面積を上記範囲にすることで、磁性トナーの帯電性に影響する磁性酸化鉄の水分吸着量を適正化しやすい。
本発明の磁性トナーに用いられる磁性酸化鉄の磁気特性としては、磁場795.8kA/m下での飽和磁化が10.0〜200.0Am2/kgであることが好ましく、より好
ましくは60.0〜100.0Am2/kgであり、残留磁化が1.0〜100.0Am2/kgであることが好ましく、より好ましくは2.0〜20.0Am2/kgであり、保
磁力が1.0〜30.0kA/mであることが好ましく、より好ましくは2.0〜15.0kA/mである。このような磁気特性を有することで、画像濃度とカブリのバランスのとれた良好な現像性を得ることができる。
本発明で用いられる磁性酸化鉄の比重は、3.00g/cm3以上6.00g/cm3以下であることが好ましい。この範囲に収めることで、所望の磁化を満たし、磁性酸化鉄の偏りをより抑制しやすい。
本発明の磁性トナーにおいて、上記磁性酸化鉄の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、磁性酸化鉄が30質量部以上120質量部であることが好ましく、より好ましくは磁性酸化鉄が45質量部以上100質量部以下である。上記範囲内とすることで、磁性トナーのカブリと画像濃度の両立がより達成しやすい。
【0022】
本発明で用いられる磁性酸化鉄の製造方法について例示するが、以下の製造方法に限定されるものではない。
(第一工程)
硫酸第一鉄水溶液、ケイ酸ソーダ、水酸化ナトリウムおよび水を混合し、混合溶液を調製する。この混合溶液の温度を90℃に維持し、かつpHを6〜9に維持しながら空気を吹き込み、液中に生成した水酸化第一鉄を湿式酸化する。水酸化第一鉄が、当初の量に対して、70〜90%消費された時点で生成されたマグネタイト粒子の中心域の形成を確認する。
(第二工程)
第一工程を行っている途中に、液中における未反応の水酸化第一鉄の濃度を調べることで酸化反応の進行率を調べ、上記水酸化第一鉄が、当初の量に対して70〜90%消費された時点を特定する。特定された時点において、第一工程で用いたものと同濃度の硫酸第一鉄水溶液と、硫酸チタニル、硫酸アルミニウムを当該溶液に加え、更に水を加えて液量を調整する。これに、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを9〜12に調整する。この溶液には、第一工程で加えたケイ酸ソーダが残存している。液温90℃にて空気を吹き込み、湿式酸化を進行させ、中間域を生成させる。
(第三工程)
第二工程を行っている途中に、液中における未反応の水酸化第一鉄が、95〜99%消費された時点で空気の吹き込みを停止し、ケイ酸ソーダ、および硫酸アルミニウムを当該溶液に添加する。また、希硫酸を添加して液のpHを5〜9に調整する。
(第四工程)
このようにして得られたマグネタイト粒子を、常法により洗浄、ろ過し、更に乾燥させた後に粉砕して、本発明に用いられる磁性酸化鉄を得る。
なお、本発明に用いられる磁性酸化鉄は、特に
1.第一工程において、水酸化第一鉄が、当初の量に対して、70〜90%消費された時点で第二工程に移行し、
2.第二工程で、硫酸チタニルを添加し、その際の硫酸チタニルと硫酸アルミニウムの量
を適宜調整し、かつ、
3.第二工程でのpHを9〜12に調整し、さらに、
4.水酸化第一鉄が、95〜99%消費された時点で第三工程に移行し、
5.第三工程において、ケイ酸ソーダと硫酸アルミニウムの添加量を適宜調整することによって、上記特性を付与することが可能である。
【0023】
(磁性酸化鉄微粒子分散液の調製)
磁性酸化鉄微粒子分散液は、水系媒体に磁性酸化鉄微粒子を分散することによって得ることが出来る。
前記水系媒体としては、前記結着樹脂微粒子分散液の調製と同様のものを用いることができ、基本的にはイオン交換水が用いられるが、油滴を破壊しない程度に水溶性有機溶媒を含んでも構わない。
また、前記磁性酸化鉄微粒子分散液が安定的に分散状態を保つよう、前記結着樹脂微粒子分散液の調製と同様に分散剤を用いることができ、分散剤として界面活性剤を用いることが出来る。
媒体への分散方法としては、例えば、回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散方法を使用することができ、なんら制限されるものではない。
【0024】
(離型剤)
本発明に用いられる離型剤(ワックス)として、例えば以下を挙げることができる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素系エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス;及び脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部または全部を脱酸化したもの。ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物等。また、エステルワックス、炭化水素系ワックスなども用いることができる。
本発明において特に好ましく用いられる離型剤は、乳化凝集法において、離型剤分散液の調製のしやすさ、磁性トナー中への取り込まれやすさ、定着時における磁性トナーからの染み出しやすさ、離型性から、ポリエチレン系ワックスが特に好ましい。
【0025】
本発明において、磁性トナーにおける離型剤の含有量は、5.0質量%以上20.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以上15.0質量%以下である。この範囲内とすることで、磁性トナーの耐久性および帯電性ならびに離型剤の離型効果を良好にしやすい。
本発明において離型剤は、DSC測定において、60℃以上90℃以下の温度範囲に吸熱ピークを有することが好ましい。この範囲内とすることで、低温でワックスが溶融しやすく、離型効果を発現しやすい。結果、低温定着性や耐オフセット性を両立しやすい。
【0026】
(離型剤微粒子分散液の調製)
離型剤微粒子分散液は、前記結着樹脂微粒子分散液の調製と同様に転相乳化法を用いることが好ましい。離型剤を溶解させる有機溶媒としては、前記結着樹脂微粒子分散液と同様のものを用いることができる。また、離型剤微粒子分散液の媒体には、前記結着樹脂微粒子分散液と同様に基本的にはイオン交換水が用いられるが、油滴を破壊しない程度に水溶性有機溶媒を含んでも構わない。
また、前記離型剤微粒子分散液が安定的に分散状態を保つよう、前記結着樹脂微粒子分散液の調製と同様の分散剤を用いることができ、分散剤として界面活性剤を用いることが出来る。
媒体への分散方法としては、例えば、回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散方法を使用することができ、なんら制限されるものではない。
【0027】
本発明の磁性トナーは、前記磁性酸化鉄微粒子は、着色剤と併用することもできる。前記着色剤としては、公知のものが使用できる。例えば、黒色顔料として、カーボンブラック、アニリンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、黒色酸化チタン、非磁性フェライト、磁性フェライト、活性炭、マグネタイトなどある。
また、着色剤としては、染料を使用することも可能で、使用できる染料としては、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料、例えば、ニグロシンなどがあげられる。また、これらの単独、もしくは混合し、更には固溶体の状態で使用できる。
これらの着色剤は、公知の方法で分散される。例えば、回転せん断型ホモジナイザーやサンドミル、ボールミル等が挙げられる。
なお、磁性酸化鉄微粒子と共に、カーボンブラック等の着色剤は、極性を有する界面活性剤を用い、前記ホモジナイザーによって水系媒体に分散されるため、着色剤は磁性トナー中での分散性の観点から選択されることが好ましい。着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して3〜50質量部添加されることが好ましい。
【0028】
本発明においては、必要に応じて帯電制御剤を用いることができる。帯電制御剤は、結着樹脂および磁性酸化鉄を含有する磁性トナー粒子中に含まれていてもよいし、磁性トナー粒子表面に含まれていてもよい。
帯電制御剤の添加分散方法であるが、前記凝集粒子を形成する時に帯電制御剤を帯電制御剤粒子として添加し、分散させる方法、結着樹脂微粒子の調製時、帯電制御剤を添加し、分散させる方法、結着樹脂微粒子を構成する樹脂の分子内に帯電制御剤を結合させる方法、が好適に例示できる。
当該帯電制御剤の含有量は、磁性トナー粒子100質量部に対し、0.01質量部以上0.80質量部以下であることが好ましい。この範囲内とすることで、低温低湿下のチャージアップを防ぎやすく、高温高湿下での帯電保持能を良好にしやすい。
帯電制御剤としては、以下のものが挙げられる。ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、含金アゾ錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及びサリチル酸誘導体の金属塩。
具体的には、以下のものが挙げられる。ニグロシン系染料のボントロンN−03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX
VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基及び四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物。
【0029】
また、本発明においては、必要に応じて荷電制御樹脂を用いることができる。荷電制御樹脂としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、ナフトール性水酸基、スルホン酸基、アミノ基、4級アンモニウム塩等の帯電性官能基を有する樹脂が挙げられる。その含有量は、結着樹脂100質量部に対し、0.2乃至5質量部が好ましい。
【0030】
本発明の磁性トナー粒子の製造方法は、以下の、分散工程、凝集工程、及び溶融工程を含む。また、必要に応じて付着工程を含む。
(分散工程)
分散工程は、本発明の磁性トナー粒子を得るために少なくとも、結着樹脂微粒子、磁性酸化鉄微粒子、及び離型剤微粒子をそれぞれ媒体に分散させる工程である。
媒体への分散方法としては、例えば、回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散方法を使用することができ、なんら制限されるものではない。
(凝集工程)
凝集工程は、少なくとも、結着樹脂微粒子を分散させてなる結着樹脂微粒子分散液、磁性酸化鉄微粒子を分散させてなる磁性酸化鉄微粒子分散液、離型剤微粒子を分散させてなる離型剤微粒子分散液を混合し、該結着樹脂微粒子のガラス転移点以下の温度に加熱して凝集粒子を形成させて、凝集粒子分散液を調製する工程である。
前記結着樹脂微粒子、磁性酸化鉄微粒子、及び離型剤微粒子の体積平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01〜1μmであることが好ましい。前記体積平均粒径が1μmを超えると、最終的に得られるトナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招き易い。一方、前記体積平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中での各材料の分散がより良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点で有利である。
前記凝集工程は、前記混合液中において凝集粒子を形成し凝集粒子分散液を調製するものである。前記凝集粒子は、例えばpH調整剤、凝集剤、安定剤を該混合液中に添加し混合し、温度、機械的動力等を適宜加えることにより該混合液中に形成することができる。
pH調整剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ、硝酸、クエン酸等の酸があげられる。凝集剤としては、ポリアルミニウムクロリド(PAC)、セチルピリジニウムブロミド、ジアルキルベンゼンアルキルアルミニウムクロリド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、ベンズアルコニウムクロリド、C12,C15,C17トリメチルアンモニウムブロミド、及びそれらの混合物が含まれる。
安定剤としては、主に極性界面活性剤そのもの又はそれを含有する水系媒体などが挙げられる。例えば、水性分散液に含まれる極性界面活性剤がアニオン性の場合には、安定剤としてカチオン性のものを選択することができる。
また、前記凝集剤等の添加・混合は、前記混合液中に含まれる樹脂のガラス転移点以下の温度で行うのが好ましい。この温度条件下で前記混合を行うと、凝集が安定した状態で進行する。前記混合は、例えばそれ自体公知の混合装置、ホモジナイザー、ミキサー等を用いて行うことができる。
ここで形成される凝集粒子の平均粒径としては、特に制限はないが、通常、得ようとするトナーの平均粒径と同じ程度になるように制御される。前記制御は、例えば、温度と前記撹拌混合の条件とを適宜設定・変更することにより容易に行うことができる。以上の凝集粒子形成工程により、トナーの平均粒径とほぼ同じ平均粒径を有する凝集粒子が形成され、該凝集粒子を分散させてなる凝集粒子分散液が調製される。
(付着工程)
前記付着工程は、前記凝集粒子分散液中に、微粒子を分散させてなる微粒子分散液を添加混合して前記凝集粒子に前記微粒子を付着させて付着粒子を形成する工程である。前記付着工程は、前記凝集工程と後述する溶融工程との間に行われると好ましいが、行わなくてもよい。前記微粒子としては、樹脂含有微粒子、磁性酸化鉄微粒子、離型剤微粒子、帯電制御剤微粒子などが挙げられる。
前記微粒子分散液は、例えば、イオン性界面活性剤等を添加混合した水系媒体に、前記微粒子を分散させることにより調製される。
付着工程においては、凝集工程において調製された凝集粒子分散液中に、前記微粒子分
散液を添加混合して、前記凝集粒子に前記微粒子を付着させて付着粒子を形成する。本発明において、この付着工程が行われる回数としては、1回ないしは複数回であってもよい。前者では、前記凝集粒子の表面に前記微粒子による層が1層のみ形成されるのに対し、後者では、前記凝集粒子の表面に前記微粒子による層が2層以上順次形成される。よって、後者の場合、複雑かつ精密な階層構造を有する磁性トナーを得ることができ、磁性トナーに所望の機能を付与し得る点で有利である。付着工程が複数回行われる場合、前記凝集粒子に対し、最初に付着させる微粒子と、次以降に付着させる微粒子との組み合わせはいかなるものであってもよく、磁性トナーの用途、目的等に応じて適宜選択することができる。また、付着工程が複数回行われる場合、前記微粒子を添加混合する毎に、前記微粒子と前記凝集粒子とを含有する分散液を、凝集工程において用いた結着樹脂のガラス転移点以下の温度で加熱する態様が好ましく、この加熱の温度が段階的に上昇される態様がより好ましい。このようにすると、遊離粒子の発生を抑制することができる点で有利である。以上より、付着工程において、前記凝集粒子に、適宜選択した微粒子を付着させることにより、所望の特性を有する磁性トナーを自由に設計し、製造することができる。
(溶融工程)
前記溶融工程は、前記凝集粒子を加熱して融着する工程である。溶融工程に入る前に、トナー粒子間の融着を防ぐため、前記pH調整剤、前記極性界面活性剤、前記非極性界面活性剤等を適宜投入することができる。
前記加熱の温度としては、前記凝集粒子に含まれる樹脂のガラス転移点温度〜該樹脂の分解温度であればよい。したがって、前記加熱の温度は、前記結着樹脂微粒子及び前記結着樹脂微粒子の樹脂の種類に応じて異なり、一概に規定することはできないが、一般的には前記凝集粒子又は前記付着粒子に含まれる樹脂のガラス転移点温度〜140℃である。なお、前記加熱は、それ自体公知の加熱装置・器具を用いて行うことができる。
前記溶融の時間としては、前記加熱の温度が高ければ短い時間で足り、前記加熱の温度が低ければ長い時間が必要である。即ち、前記溶融の時間は、前記加熱の温度に依存するので一概に規定することはできないが、一般的には30分〜10時間である。
(外添工程)
上記製造方法で得られた磁性トナー粒子は、流動性、現像性、帯電性、及びクリーニング性を補うため、疎水性無機微粒子を外添し、磁性トナーを調製する。
疎水性無機微粒子の一次平均粒子径は、5nm以上2μm以下であるのが好ましく、特に5nm以上500nm以下であるのが好ましい。また、BET法による比表面積は、20m2/g以上500m2/g以下であるのが好ましい。この範囲内とすることで磁性トナーの耐久性、低温定着性および帯電性を良好にしやすい。
疎水性無機微粒子の使用割合は、磁性トナー粒子の0.01質量%以上5質量%以下であるのが好ましく、特に0.01質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。
疎水性無機微粒子は、必要に応じ複数種の疎水性無機微粒子を併用してもよい。さらに必要に応じ高分子微粒子を併用してもよい。
疎水性無機微粒子の具体例としては、例えば以下を挙げることができる。シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等。
一方、高分子系微粒子の具体例としては、例えば以下を挙げることができる。ソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンの如き重合体の粒子等。
本発明で用いる疎水性無機微粒子は、表面処理剤により表面処理を行って、疎水性をさらに上げることで、高湿度下においても磁性トナーの流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。
例えば、好ましい表面処理剤としては、例えば以下を挙げることができる。シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等。
また、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の磁性トナーを除去する為のクリーニング性向上剤としては、例えば以下を挙げることができる。ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合等によって製造されたポリマー微粒子等。
なお、本発明の磁性トナーは、重量平均粒子径(D4)が3.0〜10.0μmであることが好ましく、より好ましくは、3.5〜9.0μm、さらに好ましくは、4.0〜8.0μmである。磁性トナーの重量平均粒子径(D4)が上記範囲にある場合には、かぶり、飛び散りをより防止しやすく、高画質化に貢献し、また、トナーの消費量を抑制することが可能であり好ましい。
【0031】
本発明における各種物性データの測定法を以下に詳述する。
<1>酢酸エチル沈降試験
磁性酸化鉄の酢酸エチル沈降試験について以下に述べる。
(1)磁性酸化鉄20g、酢酸エチル30gを有栓耐圧性ガラス瓶に入れ、ペイントシェーカで5分間しんとうすることで磁性酸化鉄を酢酸エチルに分散させ、スラリーを得る。(2)前記スラリー20g、酢酸エチル20gをメスシリンダーに入れ、メスシリンダーの口をゴム栓でふさぐ。メスシリンダーは、JIS R−3504規格取得の50mLメスシリンダーを用いる。メスシリンダーとしては、たとえば柴田科学製3Zを用いることができる。
(3)ゴム栓をしたメスシリンダーを10秒間手で振り、これを水平な台上に静置する。
静置と同時にストップウォッチをスタートし、計時を開始する。静置後、時間経過とともに磁性酸化鉄が沈殿していき、酢酸エチルの上澄み部分と、磁性酸化鉄の沈殿部分との境界が目視で確認できるようになる。
(4)静置して10分後に、メスシリンダー上部の空気と上澄み部分の液面との境界面、上澄み部分と沈殿部分の境界面、をそれぞれメスシリンダーの目盛りから読み取る。メスシリンダー上部の空気と上澄み部分の液面との境界面から読み取った体積(酢酸エチルの液面までの全体積)をvEtAとし、上澄み部分と沈殿部分の境界面から読み取った体積(
沈降体積)をVEtAとする。なお沈澱部分の境界面が荒れている場合、山と谷の平均を線
引きして計測する。
(5)(1)〜(4)の操作を繰り返し行い、3回の測定値の算術平均値をvEtA、VEtAとし、VEtAとvEtAとの比、VEtA/vEtAを算出する。
【0032】
<2>イソプロピルアルコール沈降試験
酢酸エチルをイソプロピルアルコールに変更する以外は酢酸エチル沈降試験と同様にして、VIPAを求め、VIPAとVEtAとの比、VIPA/VEtAを算出する。
【0033】
<3>磁性酸化鉄に含まれるAl成分、又はSi成分をアルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量又はSi成分量の定量方法。
(1)試料の調製
磁性酸化鉄0.9gを計量し、メチルペンテン製ビーカーに入れる。次に、1mol/LのNaOHを25ml計量して、ビーカー中に投入する。回転子をビーカーに入れて、蓋をし、ホットスターラー上で4時間加温・攪拌(液温70℃)した後、放冷する。放冷後、回転子に付着している磁性酸化鉄を含め、全ての磁性酸化鉄をメスシリンダー中に純水で流しいれる。純水で液量を125mlに調整後、ビーカーに移し変えて十分に攪拌させる。その後、磁石上にビーカーを静置し、上澄みが透明になるまで磁性酸化鉄を沈降させる。沈降後、上澄みをろ過し、ろ液を得る。
(2)測定方法
得られたろ液をICP発光光度分析装置(商品名:ICPS2000、製造元:島津製作所)の誘導結合プラズマ中に噴霧し、波長288.16nm(Si)、波長396.15nm(Al)での発光強度を測定して、濃度既知の検量線液の発光強度と比較することで、当該ろ液中のAl元素濃度(mg/L)、Si元素濃度(mg/L)を定量する。
(3)上記検量線液の調製方法
100mLポリメスフラスコに、4gのNaOH、Si成分、及びAl成分を加え、イオン交換水で100mLに定容して、Si成分のSi元素濃度が[0〜50mg/L]の
範囲にあり、Al成分のAl元素濃度が[0〜40mg/L]の範囲にある検量線液を数
水準作製する。
(4)計算式
磁性酸化鉄に含まれるAl成分、又はSi成分を上記アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量(Al元素換算値:[質量%])又はSi成分量(Si元素換算値:[質量%])は以下の式より算出する。
(式):Al成分量(Al元素換算値:[質量%])又はSi成分量(Si元素換算値:[質量%])= (L×0.125)/(S×1000)×100
但し L: 各元素のICP測定値から得られた各元素の濃度(mg/L)
S: 試料質量0.9(g)
【0034】
<4>Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含有される各元素の定量方法
(1)試料の調製
上記<3>の[(1)試料の調製]に記載された、試料調製終了後のビーカー内に沈降した磁性酸化鉄、即ち、磁性酸化鉄に含まれるAl成分、又はSi成分をアルカリ水溶液で溶出した後の磁性酸化鉄を集めて乾燥させる。得られた磁性酸化鉄の乾燥物を25g計量し、5Lガラスビーカーに入れる。次に、0.5mol/LのH2SO4を5L添加し攪拌しながら、ウォーターバス中で室温から80℃まで徐々に昇温させて、当該磁性酸化鉄を表面から徐々に溶解し、溶解液を得る。ここで、特に、磁性酸化鉄が全て溶解された溶解液中に含まれるFe元素量を総Fe元素量としたときに、総Fe元素量の10質量%が溶解液に存在する状態まで磁性酸化鉄を溶解した溶解液(Fe元素溶解率10質量%溶解液という)を取得する。得られたFe元素溶解率10質量%溶解液(スラリー)を25ml採取する。採取したスラリーを0.1μmメンブランフィルターでろ過し、ろ液を得る。
(2)測定方法
得られたろ液を、ICP発光光度分析装置(商品名:ICPS2000、製造元:島津製作所)の誘導結合プラズマ中に噴霧し、波長288.16nm(Si)、波長396.15nm(Al)、波長334.94nm(Ti)、波長259.94nm(Fe)での発光強度を測定して、濃度既知の検量線液の発光強度と比較することで、当該ろ液中のSi元素濃度(mg/L)、Ti元素濃度(mg/L)、Al元素濃度(mg/L)、Fe元
素濃度(mg/L)を定量する。
(3)上記検量線液の調製方法
1000mLポリメスフラスコに、51gのH2SO4、Fe成分、Si成分、Al成分、及びTi成分を加え、イオン交換水で1000mLに定容して、Fe成分のFe元素濃度が[100〜4000mg/L]の範囲にあり、Si成分のSi元素濃度が[0〜15
0mg/L]の範囲にあり、Al成分のAl元素濃度が[0〜40mg/L]の範囲にあり、Ti成分のTi元素濃度が[0〜30mg/L]の範囲にある検量線液を数水準作製す
る。
(4)計算式
上記Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含有される、Si成分量(Si元素換算値:[質量%])、Ti成分量(Ti元素換算値:[質量%])、Al成分量(Al元素換算値:[質量%])、及びFe成分量(Fe元素換算値:[質量%])は次式を用いて算出
する。
(式): Si成分量(Si元素換算値:[質量%])、Ti成分量(Ti元素換算値:[質量%])、Al成分量(Al元素換算値:[質量%])、又はFe成分量(Fe元素換算値:[質量%])
= (L×5)/(S×1000)×100
但し L: 各元素のICP測定値から得られた各元素の濃度(mg/L)
S: 試料質量25(g)
【0035】
<5>磁性酸化鉄に含有される全Si成分量(Si元素換算値[質量%])、全Ti成分量(Ti元素換算値:[質量%])、又は全Al成分量(Al元素換算値:[質量%])の定量方法。
(1)試料の調製
磁性酸化鉄1.00gを計量し100mLテフロン(登録商標)ビーカーに入れる。次に水10mL、濃塩酸16mLを添加後、加熱し、磁性酸化鉄を全て溶解する。冷却後、弗化水素酸(1+1)を4mL添加し、20分放置する。次に、得られた溶液を100mLポリメスフラスコに移して、界面活性剤(商品名:トリトンX[10g/L])を1m
L添加し100mLにメスアップする。
(2)測定方法
上記調製された試料溶液をICP発光光度分析装置(商品名:ICPS2000、製造元:島津製作所)の誘導結合プラズマ中に噴霧し、波長288.16nm(Si)、波長396.15nm(Al)、波長334.94nm(Ti)での発光強度を測定して、濃度既知の検量線液の発光強度と比較することで、当該試料溶液中のSi元素(mg/L)
、Ti元素(mg/L)、Al元素(mg/L)を定量する。
(3)上記検量線液の調製方法
1000mLポリメスフラスコに、16mLのHCl、4mLのHF(1+1)、1mLの界面活性剤(1%トリトンX)、650mgのFe、Si成分、Al成分、及びTi成分を加え、イオン交換水で1000mLに定容して、Si成分のSi元素濃度、Al成分のAl元素濃度、及びTi成分のTi元素濃度がそれぞれ[0〜200mg/L]の範
囲にある検量線液を数水準作製する。
(4)計算式
磁性酸化鉄に含有される全Si成分量(Si元素換算値[質量%])、全Ti成分量(Ti元素換算値:[質量%])、又は全Al成分量(Al元素換算値:[質量%])は次式を用いて算出する。
(式): 全Si成分量(Si元素換算値[質量%])、全Ti成分量(Ti元素換算値:[質量%])、又は全Al成分量(Al元素換算値:[質量%])
= (L×0.1)/(S×1000)×100
但し L: 各元素のICP測定値から得られた各元素の濃度(mg/L)
S: 試料質量1.00(g)
【0036】
本発明において使用される、磁性酸化鉄に含有される、(全)Ti成分量(Ti元素換算値:[質量%])、又は(全)Al成分量(Al元素換算値:[質量%])は、上記<5>の方法により算出される。
本発明において使用される、磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、磁性酸化鉄に含まれるAl成分を当該アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量の、当該磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量に対する割合(%)、又は、磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、磁性酸化鉄に含まれるSi成分を当該アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるSi成分量の、当該磁性酸化鉄に含まれる全Si成分量に対する割合(%)は、上記<3>、及び<5>の結果より算出される。
本発明において使用される、磁性酸化鉄に含まれるAl成分をアルカリ水溶液で溶出した後の磁性酸化鉄をさらに酸水溶液で溶解し、溶解液を得、磁性酸化鉄が全て溶解された
溶解液中に含まれるFe元素量を総Fe元素量としたときに、総Fe元素量の10質量%が溶解液に存在する状態まで磁性酸化鉄を溶解した溶解液(Fe元素溶解率10質量%溶解液)中に含まれるAl成分量と、磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、磁性酸化鉄に含まれるAl成分を当該アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量との合計の、当該磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量に対する割合(%)は、上記<3>、<4>、及び<5>の結果より算出される。
本発明において使用される、上記Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含まれる、Ti成分量のTi元素換算値の、Al成分量のAl元素換算値に対する比(Ti成分量のTi元素換算値/Al成分量のAl元素換算値)、又は、上記Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含まれる、Ti成分量のTi元素換算値の、Si成分量のSi元素換算値に対する比(Ti成分量のTi元素換算値/Si成分量のSi元素換算値)は、上記<4>の結果より算出される。
【0037】
<7>磁性酸化鉄の比表面積の測定方法
比表面積測定装置オートソープ1(湯浅アイオニクス社製)を用い、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出する。
【0038】
<8>磁性酸化鉄及び磁性トナーの磁気特性の測定方法
磁性酸化鉄の磁気特性は、振動試料型磁力計(VSM−3S−15、東英工業社製)を用いて、外部磁場795.8kA/mの下で測定する。
一方、磁性トナーの磁気特性の測定方法は、上記磁性酸化鉄の磁気特性の測定方法において、外部磁場を79.6kA/mに変更した以外は上記磁性酸化鉄の磁気特性の測定方法と同様に測定する。
【0039】
<9>結着樹脂のガラス転移点の測定方法
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。測定は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるDSC曲線を用いる。この昇温過程で、温度40〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、本発明におけるトナー及び結着樹脂のガラス転移点(Tg)とする。
【0040】
<10>磁性トナーの重量平均粒径(D4)の測定方法
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行なう。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行なう。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定
後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の配合における部数は特に説明が無い場合は質量部である。
(磁性酸化鉄の製造例)
[工程1]
Fe2+を1.9mol/L含む硫酸第一鉄水溶液8.0Lと、Si品位13.4%のケイ酸ナトリウム75gと、水酸化ナトリウム1.06kgを混合し、イオン交換水を加えて全量を16.2Lとした。この溶液の温度を90℃に維持し、かつpHを6〜9に維持しながら空気を2L/minで吹き込み、液中に生成した水酸化第一鉄を湿式酸化した。水酸化第一鉄が、当初の量に対して90%消費された時点でマグネタイトの中心域の形成を確認した。この中心域は、Si元素を含有するものであった。
[工程2]
工程1を行っている途中に、溶液中における未反応の水酸化第一鉄の濃度を調べることで酸化反応の進行率を調べ、水酸化第一鉄が、当初の量に対して90%消費された時点で、工程1で用いたものと同濃度の硫酸第一鉄水溶液0.9Lと、Ti品位20.0%の硫酸チタニル70gを溶液に加え、更にイオン交換水を加えて液量を18Lとした。これに加えて、水酸化ナトリウムを添加して液のpHを9〜12に調整した。この溶液には、工程1で加えたケイ酸ナトリウムが残存していた。液温90℃にて空気を1L/minで吹き込み湿式酸化を進行させ、Si元素およびTi元素を含むマグネタイトからなる中間域
を生成させた。
[工程3]
上記工程2を行っている途中に、液中における未反応の水酸化第一鉄が、当初の量に対して95%消費された時点で空気の吹き込みを停止し、Si品位が13.4%のケイ酸ナトリウム15gおよび、Al品位が6%の硫酸アルミニウム230gを溶液に添加した。また、希硫酸を添加して液のpHを5〜9に調整した。
このようにして得られたマグネタイト粒子を、常法により洗浄、ろ過し、更に乾燥させた後に粉砕した。得られた磁性酸化鉄1について、その諸特性を測定した。結果を表1に示す。
【0042】
<磁性酸化鉄の製造例2乃至12>
上記磁性酸化鉄の製造例1において、硫酸チタニル、ケイ酸ナトリウム、硫酸アルミニウムの量を適宜変更し、工程1、2において、それぞれ水酸化第一鉄が消費された割合をモニターしながら、工程1から硫酸チタニルを添加する工程2、工程2から硫酸アルミニウムを添加する工程3への移行のタイミング(水酸化第一鉄の消費割合)を微調整した以外は製造例1と同様にして、磁性酸化鉄2乃至12を得た。その諸物性を測定した結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

表1において
*1 磁性酸化鉄全体に占めるTi成分の含有量(質量%)
*2 磁性酸化鉄全体に占めるAl成分の含有量(質量%)
*3 磁性酸化鉄全体に占めるSi成分の含有量(質量%)
*4 磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、磁性酸化鉄に含まれるAl成分を当該アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量の、当該磁性酸化鉄に含まれる全Al
成分量に対する割合(%)、及び、当該割合(%)と上記磁性酸化鉄全体に占めるAl成分の含有量(質量%)の積で表される最表層のAl量(質量%)
*5 Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含まれるAl成分量と、磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、磁性酸化鉄に含まれるAl成分を当該アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量との合計の、当該磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量に対する割合の合計(%)
*6 Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含まれる、Ti成分量のTi元素換算値/Al成分量のAl元素換算値の比
*7 磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、磁性酸化鉄に含まれるSi成分を当該アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるSi成分量の、当該磁性酸化鉄に含まれる全Si成分量に対する割合(%)
*8 Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含まれる、Ti成分量のTi元素換算値の、Si成分量のSi元素換算値に対する比(Ti成分量のTi元素換算値/Si成分量のSi元素換算値)
【0044】
以下にそれぞれの材料の調製方法、トナー粒子の作製方法を例示する。尚、以下の配合における「部」、「%」は特に説明が無い場合は質量基準である。
<非晶性ポリエステル樹脂(1)の合成>
・テレフタル酸ジメチルエステル 136質量部
・アジピン酸 44質量部
・無水トリメリット酸 10質量部
・ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物 304質量部
・ジブチルスズオキシド 0.8質量部
上記材料を窒素置換したフラスコに入れ、170℃で4時間反応させた。さらに減圧下200℃で反応させ、水およびメタノールを除去し、非線形ポリエステル樹脂である非晶性ポリエステル樹脂(1)を得た。
【0045】
<結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成>
・セバシン酸 100mol%
・1,9−ノナンジオール 110mol%
・ジブチルスズオキシド 0.031mol%
上記材料を窒素置換したフラスコに入れ、170℃で4時間、さらに減圧下200
℃で0.5時間反応させ、融点が70℃の結晶性ポリエステル樹脂(1)を得た。
【0046】
<結着樹脂微粒子分散液(1)>
前記非晶性ポリエステル樹脂(1)100質量部をテトラヒドロフラン150質量部に溶解した。このテトラヒドロフラン溶液を室温においてホモジナイザー(IKAジャパン製:ウルトラタラクス)にて10000rpmで2分間攪拌しながら、界面活性剤として水酸化カリウム5質量部およびドデシルベンゼン−スルホン酸ナトリウム10質量部を添加したイオン交換水1000質量部を滴下した。この混合溶液を約75℃に加温することによりテトラヒドロフランを除去した。その後、固形分が8%になるようにイオン交換水で希釈し、体積平均粒径0.09μmの結着樹脂微粒子分散液(1)を得た。
【0047】
<結着樹脂微粒子分散液(2)>
前記結着樹脂微粒子分散液(1)の調製において、前記非晶性ポリエステル樹脂(1)を前記結晶性ポリエステル樹脂(1)に代えた以外は同様にして結着樹脂微粒子分散液(2)を得た。
【0048】
<磁性酸化鉄微粒子分散液(1)>
・磁性酸化鉄1 49質量部
・イオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬) 1質量部
・イオン交換水 250質量部
・ガラスビーズ(直径1mm) 250質量部
上記を耐圧性密閉容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて3時間分散させ、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除いた。その後、固形分が15%になるようにイオン交換水で希釈し、磁性酸化鉄微粒子分散液1を得た。
【0049】
<磁性酸化鉄微粒子分散液2乃至12>
磁性酸化鉄微粒子分散液1の調製において、磁性酸化鉄1の代わりに磁性酸化鉄2乃至12をそれぞれ用いた以外は同様にして、磁性酸化鉄微粒子分散液2乃至12を得た。
【0050】
<離型剤微粒子分散液(1)>
・ポリエチレン系ワックス(PW850、東洋ペトロリウム社製) 200質量部・イオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬) 10質量部・イオン交換水 630質量部
上記を130℃に加熱した後、ホモジナイザー(IKAジャパン製:ウルトラタラクス)にて10000rpmで2分間攪拌し、その後50℃まで冷却した。その後、固形分が20%となるようにイオン交換水で希釈し、離型剤微粒子分散液(1)を得た。
【0051】
<帯電制御剤粒子分散液(1)>
・ジ−アルキルサリチル酸の金属化合物 20質量部
(帯電制御剤、ボントロンE−84、オリエント化学工業社製)
・アニオン性界面活性剤 2質量部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 78質量部
上記を混合し、ホモジナイザー(IKAジャパン製:ウルトラタラクス)にて10000rpmで2分間攪拌した、帯電制御剤粒子分散液(1)を得た。
【0052】
<実施例1>
[磁性トナー1の製造]
(磁性トナー粒子(1)の製造)
・結着樹脂微粒子分散液(1) 80質量部
・結着樹脂微粒子分散液(2) 20質量部
・磁性酸化鉄微粒子分散液(1) 63質量部
・離型剤微粒子分散液(1) 20質量部
・帯電制御剤粒子分散液(1) 20質量部
上記を、丸型ステンレス製フラスコ中においてホモジナイザー(IKAジャパン製:ウルトラタラクス)にて十分に混合・分散した。その後、この分散液にポリ塩化アルミニウム0.4質量部を加え、ホモジナイザー(IKAジャパン製:ウルトラタラクス)にて分散操作を継続した。次に、加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら、50℃まで過熱し60分保持した。その後の溶融工程において、ここにアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)3質量部を追加した後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら100℃まで加熱し、5時間保持した。そして、冷却後、反応生成物をろ過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥させることにより、磁性トナー粒子(1)を得た。
(外添工程)
磁性トナー粒子1 100質量部に対し、一次平均粒径20nmの疎水性シリカ(ヘキサメチルジシラザン処理)0.7質量部と、一次平均粒径120nmのチタン酸ストロンチウム3.0質量部をヘンシェルミキサーFM−10B(三井三池化工機製)にて混合し
、磁性トナー1を得た。
【0053】
(磁性トナー1の評価)
磁性トナー1の特性として磁化、重量平均粒径(D4)を表2に示す。
磁性トナー1の評価を以下に示す方法で行った。磁性トナー1の諸性能を表3に示す。
【0054】
<耐熱保存性>
磁性トナーの耐熱保存性の評価方法を以下に述べる。3gの磁性トナーを100mLのポリカップ(サンプラテック社製)に入れ、50℃(±0.5℃)の恒温槽で3日間放置した後、目視および指の腹で触って評価した。放置前後で変化が小さいほど耐熱保存性は良好である。
(評価基準)
A: 流動性に変化がみられない
B: 流動性が若干低下する
C: 凝集物が発生するが容易に解砕できる
【0055】
<低温定着性>
磁性トナーの低温定着性の評価方法を以下に述べる。
低温定着性の評価用画像は、定着ユニットを除去改造したLaserJet 4515n(ヒューレットパッカード社製)を用い、紙上の磁性トナー載り量を0.90±0.05mg/cm2になるよう現像コントラストを調整し、先端余白10mm、幅200mm
、長さ30mmの「ベタ未定着画像A」を作製した。用紙は坪量81.4g/m2のA4
用紙 CS814(キヤノンマーケティングジャパン社製)を用いた。
LaserJet 4515n(ヒューレットパッカード社製)の定着ユニットを定着温度、通紙速度が手動で設定できるように改造した状態で定着試験を行った。定着温度は、定着ニップの上側ローラ表面温度を非接触温度計temperature hitester 3445(日置電機製)で測定した。通紙速度は、定着上ローラ径とデジタルタコメータHT−5100(小野測器製)で測定した。
常温常湿度環境下(23℃/60%RH)において、通紙速度を300mm/secに設定し、定着温度100℃から180℃まで5℃刻みでベタ未定着画像Aを定着器に通紙した。定着画像の後端から5cmの部分について、柔和な薄紙(例えば、商品名「ダスパー」、小津産業社製)により4.9kPaの荷重をかけつつ5往復摺擦し、摺擦前と摺擦後の画像濃度をそれぞれ測定して、下式により画像濃度の低下率ΔD(%)を算出した。尚、画像濃度は反射濃度計(Macbeth RD918)で測定した。
このΔD(%)が5%未満のときの温度を定着開始温度とした。定着開始温度が低いほど低温定着性に優れる。
ΔD(%)=(摺擦前の画像濃度−摺擦後の画像濃度)×100/摺擦前の画像濃度
(評価基準)
A: 定着開始温度が120℃以下
B: 定着開始温度が125℃乃至145℃
C: 定着開始温度が150℃乃至170℃
D: 定着開始温度が175℃以上
また、評価には、定着性が低下する可能性がある高温高湿環境(32.5℃/80%RH)で30日間放置した磁性トナーを使用した。
【0056】
<耐久性>
磁性トナーの耐久性の評価方法を以下に述べる。磁性トナー900gを5942x CRG(ヒューレットパッカード社製)に充填し、LaserJet 4515n(ヒューレットパッカード社製)を用い、常温常湿度環境下(23℃/60%RH)において行った。まず、線幅42μmの格子模様がA4用紙全面に配置された印字面積比率4%の画像(耐久用画像)を999枚印刷し、カートリッジ内の磁性トナーの帯電を立ち上げた後、
濃度測定用のベタ画像(濃度用画像)を1枚印刷する。濃度用画像の濃度を反射濃度計(Macbeth RD918)で5点測定、平均し、D1とする。
29999枚印刷後、濃度用画像を1枚印刷し、同様にD2とする。1000枚目の濃
度に対する3万枚目の濃度の比(D2/D1)を評価した。D2/D1が小さいほど耐久性に優れる。用紙は坪量81.4g/m2のA4用紙 CS814(キヤノンマーケティング
ジャパン社製)を用いた。
評価には、耐久性が低下する可能性がある高温高湿環境(32.5℃/80%RH)で30日間放置した磁性トナーを使用した。
(評価基準)
A: D2/D1が0.90以上1.00以下
B: D2/D1が0.75以上0.90未満
C: D2/D1が0.60以上0.75未満
D: D2/D1が0.60未満
【0057】
<濃度>
画像濃度の評価方法を以下に述べる。画像濃度の評価は、耐久性評価にけるD1の値とする。D1が高いほど良好である。評価には、濃度が低下する可能性がある高温高湿環境(32.5℃/80%RH)で30日間放置した磁性トナーを使用した。
【0058】
<カブリ>
磁性トナーのカブリの評価方法を以下に述べる。耐久性評価において、1000枚終了時点で現像バイアスの交流成分の振幅を1.8kVに設定し、ベタ白を2枚プリントし、2枚目のカブリを以下の方法により測定した。
反射濃度計(リフレクトメーター モデルTC−6DS 東京電色社製)を用いて画像形成前後の転写材を測定し、画像形成後の反射濃度最悪値をDs、画像形成前の転写材の反射平均濃度をDrとし、Ds−Drを求め、これをカブリとした。Ds−Drが低いほどカブリが少なく、良好であることを示す。
【0059】
<実施例2乃至4>
(磁性トナー粒子(2)〜(4)の製造)
磁性トナー粒子(1)の製造において、磁性酸化鉄1の代わりに磁性酸化鉄2、磁性酸化鉄1の代わりに磁性酸化鉄3、及び磁性酸化鉄1の代わりに磁性酸化鉄4、とした以外は同様にして、磁性トナー粒子(2)、磁性トナー粒子(3)、及び磁性トナー粒子(4)をそれぞれ得た。その後、実施例1と同様にして、表2に示す如き物性を持つ磁性トナー2乃至4を得、それぞれ実施例1と同様の評価を行った。評価結果は表3に示す。
【0060】
<実施例5>
(磁性トナー粒子(5)の製造)
磁性トナー粒子(1)の製造において、磁性酸化鉄1の代わりに磁性酸化鉄5、結着樹脂微粒子分散液(1)及び結着樹脂微粒子分散液(2)の質量部数をそれぞれ99質量部および1質量部とした以外は同様にして、磁性トナー粒子(5)を得た。その後、実施例1と同様にして、表2に示す如き物性を持つ磁性トナー5を得、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は表3に示す。
【0061】
<実施例6>
(磁性トナー粒子(6)の製造)
磁性トナー粒子(1)の製造において、磁性酸化鉄1の代わりに磁性酸化鉄6、結着樹脂微粒子分散液(1)及び結着樹脂微粒子分散液(2)の質量部数をそれぞれ60質量部および40質量部とした以外は同様にして、磁性トナー粒子(6)を得た。その後、実施例1と同様にして、表2に示す如き物性を持つ磁性トナー6を得、実施例1と同様の評価
を行った。評価結果は表3に示す。
【0062】
<実施例7>
(磁性トナー粒子(7)
磁性トナー粒子(1)の製造において、磁性酸化鉄1の代わりに磁性酸化鉄7、結着樹脂微粒子分散液(1)及び結着樹脂微粒子分散液(2)の質量部数をそれぞれ50質量部および50質量部とした以外は同様にして、磁性トナー粒子(7)を得た。その後、実施例1と同様にして、表2に示す如き物性を持つ磁性トナー7を得、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は表3に示す。
【0063】
<実施例8>
(磁性トナー粒子(8)の製造)
磁性トナー粒子(1)の製造において、磁性酸化鉄1の代わりに磁性酸化鉄8、結着樹脂微粒子分散液(1)及び結着樹脂微粒子分散液(2)の質量部数をそれぞれ49質量部および51質量部とした以外は同様にして、磁性トナー粒子(8)を得た。その後、実施例1と同様にして、表2に示す如き物性を持つ磁性トナー8を得、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は表3に示す。
【0064】
<実施例9>
(磁性トナー粒子(9)の製造)
磁性トナー粒子(1)の製造において、磁性酸化鉄1の代わりに磁性酸化鉄9、結着樹脂微粒子分散液(1)及び結着樹脂微粒子分散液(2)の質量部数をそれぞれ100質量部および0質量部とした以外は同様にして、磁性トナー粒子(9)を得た。その後、実施例1と同様にして、表2に示す如き物性を持つ磁性トナー9を得、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は表3に示す。
【0065】
<比較例1乃至2>
(磁性トナー粒子(10)乃至(11)の製造)
磁性トナー粒子(1)の製造において、磁性酸化鉄1の代わりに磁性酸化鉄10乃至11、結着樹脂微粒子分散液(1)及び結着樹脂微粒子分散液(2)の質量部数をそれぞれ100質量部および0質量部とした以外は同様にして、磁性トナー粒子(10)乃至(11)を得た。その後、実施例1と同様にして、表2に示す如き物性を持つ磁性トナー10乃至11を得、それぞれ実施例1と同様の評価を行った。評価結果は表3に示す。
【0066】
<比較例3>
(磁性トナー粒子(12)の製造)
磁性トナー粒子(1)の製造において、磁性酸化鉄1の代わりに磁性酸化鉄12、結着樹脂微粒子分散液(1)及び結着樹脂微粒子分散液(2)の質量部数をそれぞれ40質量部および60質量部とした以外は同様にして、磁性トナー粒子(12)を得た。その後、実施例1と同様にして、表2に示す如き物性を持つ磁性トナー12を得、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は表3に示す。
【0067】
【表2】

【0068】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、磁性酸化鉄、及び離型剤を少なくとも含有する磁性トナー粒子と、疎水性無機微粒子を含有する磁性トナーにおいて、
前記磁性トナー粒子は、乳化凝集法により得られた磁性トナー粒子であり、
前記結着樹脂は少なくともポリエステル樹脂を主成分として含有し、
前記磁性酸化鉄は、前記磁性酸化鉄20質量部をイソプロピルアルコール80質量部に分散させた後、静置し、磁性酸化鉄の沈殿体積について経時変化を測定したイソプロピルアルコール沈降試験において、静置して10分後の前記磁性酸化鉄の沈殿体積をVIPA
し、
前記磁性酸化鉄20質量部を酢酸エチル80質量部に分散させた後、静置し、磁性酸化鉄の沈殿体積について経時変化を測定した酢酸エチル沈降試験において、静置して10分後の前記磁性酸化鉄の沈殿体積をVEtAとし、酢酸エチルの液面までの全体積をvEtAとしたときに、
前記VIPAとVEtAとの比VIPA/VEtAが、1.2以上3.0以下であり、
前記VEtAとvEtAとの比VEtA/vEtAが、0.2以上0.7以下であることを特徴とする磁性トナー。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂は結晶性ポリエステル樹脂を含有し、前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量はポリエステル樹脂全体に対し、1質量%以上50質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁性トナー。

【公開番号】特開2011−150205(P2011−150205A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12590(P2010−12590)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】