説明

磁性トナー

【課題】耐久現像性に優れ、高いクリーニング性を示し、同時に起動スジも改善された磁性トナーを提供することにある。
【解決手段】磁性トナー粒子と脂肪酸金属塩を有する磁性トナーにおいて、
(1)毛細管吸引時間法により計測され、下記式(1)により算出される、45体積%メタノール水溶液に対する前記トナーの表面張力指数Iが、5.0×10-3N/m以上1.0×10-1N/m以下であり、
(2)前記脂肪酸金属塩は、体積基準におけるメジアン径(D50)が0.15μm以上0.65μm以下であり、
(3)前記脂肪酸金属塩の含有量が磁性トナー粒子100質量部に対し0.02質量部以上0.5質量部以下であることを特徴とする。
I=Pα/(A×B×106) 式(1)
I:磁性トナーの表面張力指数(N/m)、Pα:45体積%メタノール水溶液に対する磁性トナーの毛管圧力(N/m2)、A:磁性トナーの比表面積(m2/g)、B:磁性トナーの真密度(g/cm3

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真法、静電記録法、磁気記録法などに用いられる磁性トナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モノクロの複写機、プリンターにおいて磁性トナーは幅広く実用化されており、そのさらなる画質の向上を目指して現在さまざまな検討が進められている。
【0003】
トナーの画質を向上させるためには、トナーを小粒径化する、熱風処理などにより円形度を上げるといった手法がある(特許文献1、2及び3)。トナーが小粒径化すれば画像の解像度も向上する。またトナーの円形度が上がりトナー表面が均一かつ平滑になれば、帯電性を付与する外添剤もトナー表面に均一に存在することができ、帯電分布がシャープになるためトナーの転写性が向上する。さらにトナーの帯電の立ち上がりが非常に早くなるため、一般的に帯電の立ち上がりが悪く帯電分布のばらつきが大きくなる高温高湿下においても耐久現像性の悪化を抑制し、耐久初期から良好な現像性を発揮することが可能となる。
【0004】
しかし、小粒径化や高円形度化は静電潜像担持体上に転写されずに残ってしまったトナーの回収性、いわゆるクリーニング性を悪化させ、クリーニング不良と呼ばれる画像欠損を発生させる傾向にあった。その対策として、脂肪酸金属塩をトナーに外添する手法が知られている。脂肪酸金属塩はクリーニング助剤として機能することが知られており、トナーのクリーニング性を長期に渡り向上させることが可能となる(特許文献4)。
【0005】
またクリーニング不良とは別の画像欠損として起動スジの問題がある。起動スジとは、画像上に横方向のローラーピッチの黒いスジを生じる画像欠損の一種である。発生メカニズムとしては、トナーから遊離した外添剤がクリーニングブレード先端に集積した後、静電潜像担持体が長時間静止している間に凝集塊となる。起動時にその塊が帯電ローラーに移行してその表面の一部を線状に被覆してしまうため、静電潜像担持体上にローラーピッチの帯電不良部位を生じ起動スジは発生する。
【0006】
画質を向上させるためには起動スジの対策は必須であり、磁性トナーのクリーニング性を向上させ、同時に起動スジも改善する手法が求められてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特登録02563737
【特許文献2】特登録03094676
【特許文献3】特開平07−271090
【特許文献4】特登録03173321
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は耐久現像性に優れ、高いクリーニング性を示し、同時に起動スジも改善された磁性トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、結着樹脂、磁性体及びワックスを少なくとも含有する磁性トナー粒子と脂肪酸金属塩を少なくとも有する磁性トナーにおいて、
(1)毛細管吸引時間法により計測され、下記式(1)により算出される、45体積%メタノール水溶液に対する前記磁性トナーの表面張力指数Iが、5.0×10-3N/m以上1.0×10-1N/m以下であり、
(2)前記脂肪酸金属塩は、体積基準におけるメジアン径(D50)が0.15μm以上0.65μm以下であり、
(3)前記脂肪酸金属塩の含有量が磁性トナー粒子100質量部に対し0.02質量部以上0.5質量部以下であることを特徴とする磁性トナーに関する。
【0010】
I=Pα/(A×B×106) 式(1)
I :磁性トナーの表面張力指数(N/m)
Pα:45体積%メタノール水溶液に対する磁性トナーの毛管圧力(N/m2
A :磁性トナーの比表面積(m2/g)
B :磁性トナーの真密度(g/cm3
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐久現像性に優れ、高いクリーニング性を示し、同時に起動スジも改善された磁性トナーを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の表面処理装置の概略的断面図を示す。
【図2】本発明の表面処理装置におけるトナー供給口及び気流噴射部材の概略的断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、磁性トナーに関するものであり、画像形成方法及び定着方法に関しては、従来公知の電子写真プロセスが適用でき、特に限定されるものではない。
【0014】
本発明は結着樹脂、磁性体及びワックスを少なくとも含有する磁性トナー粒子と脂肪酸金属塩を少なくとも有する磁性トナーにおいて、
(1)毛細管吸引時間法により計測され、下記式(1)により算出される、45体積%メタノール水溶液に対する前記磁性トナーの表面張力指数Iが、5.0×10-3N/m以上1.0×10-1N/m以下であり、
(2)前記脂肪酸金属塩は、体積基準におけるメジアン径(D50)が0.15μm以上0.65μm以下であり、
(3)前記脂肪酸金属塩の含有量が磁性トナー粒子100質量部に対し0.02質量部以上0.5質量部以下であることを特徴とする磁性トナーに関する。
【0015】
I=Pα/(A×B×106) 式(1)
I :磁性トナーの表面張力指数(N/m)
Pα:45体積%メタノール水溶液に対する磁性トナーの毛管圧力(N/m2
A :磁性トナーの比表面積(m2/g)
B :磁性トナーの真密度(g/cm3
【0016】
多くの画像形成装置において記録媒体に転写せずに静電潜像担持体上に残余したトナー(以下、転写残トナーと表記)は種々の方法でクリーニングされ、廃トナーとして廃トナー容器に蓄えられる。
【0017】
一般的なブレードクリーニングの機構を考察すると、クリーニングブレードが安定して静電潜像担持体表面を滑ることで転写残トナーはクリーニングされる。しかし転写残トナーと静電潜像担持体の付着力が高い場合、クリーニングブレードが不規則に振動し転写残トナーを安定して掻き取れなくなる。これによりクリーニング不良が発生する。
【0018】
そのためクリーニング不良の発生を抑制するためには、静電潜像担持体と転写残トナーの付着力を低減し、クリーニングブレードの不規則な振動を抑制することが重要であると考えられる。
【0019】
このための外添剤として脂肪酸金属塩が効果的であることが知られている。脂肪酸金属塩はトナー間で滑剤として作用するため、転写残トナーの凝集塊の静電潜像担持体上への固着を抑制する。また、クリーニングブレードと静電潜像担持体との間でも滑剤として作用するため、クリーニングブレードの不規則な振動を抑制する。
【0020】
さらに毛細管吸引時間法により計測され下記式(1)により算出される、45体積%メタノール水溶液に対するトナーの表面張力指数Iが5.0×10-3N/m以上1.0×10-1N/m以下であり、該脂肪酸金属塩の体積基準におけるメジアン径(D50)が前記の範囲内であり、尚且つ該脂肪酸金属塩の含有量が磁性トナー粒子100質量部に対し0.02質量部以上0.5質量部以下である場合に、起動スジが改善されることが本発明者等の検討により明らかとなった。
【0021】
I=Pα/(A×B×106) 式(1)
I :トナーの表面張力指数(N/m)
Pα:45体積%メタノール水溶液に対するトナーの毛管圧力(N/m2
A :トナーの比表面積(m2/g)
B :トナーの真密度(g/cm3
【0022】
その詳細な理由について、本発明者等は以下のように推察する。
【0023】
表面張力指数はトナーに一定の圧力を加えてメタノール水溶液を吸引させた際の、水圧の変化から算出される数値である。表面張力指数は通常の濡れ性測定などから得られた値と比較して、メタノール水溶液を加圧して測定するために、個々のトナーの表面の微細構造の影響がより反映される。個々のトナーの表面の微細構造とは、具体的にはそれぞれのトナー粒子への疎水性の外添剤の付着状態である。
【0024】
表面張力指数が前記範囲内である場合、脂肪酸金属塩を含む疎水性の外添剤がトナー表面に充分に均一に分布していることを示している。
【0025】
表面張力指数は熱風処理などの手法により制御することが可能である。例えば熱風処理で制御を行う場合は、まずトナー粒子そのものに熱風処理を行うとトナー内部から離型剤が表出しトナー表面が疎水化され、凹凸も少なくなり平滑化され、結果表面組成が均一となる。そのため外添剤を外添した際トナー粒子への付着状態が、熱風処理を行わなかった場合と比較してより均一になる。その結果として表面張力指数は向上する。
【0026】
ここでさらに脂肪酸金属塩のメジアン径(D50)が上記範囲内である場合、脂肪酸金属塩のトナー粒子表面への付着力が強く、なおかつトナー粒子表面に均一に分布しているためトナー粒子とともに挙動し易くなる。このためトナー粒子の流動性が充分に向上し、なおかつそれが維持されるため、ブレード先端での外添剤の凝集塊が形成され難くなる。これにより起動スジの発生が抑制される。
【0027】
さらに外添剤の凝集塊が形成されても離型性の高い脂肪酸金属塩が含有されているために、凝集塊が容易に静電潜像担持体から遊離しブレードに回収されるので、起動スジの発生が抑制される。
【0028】
またトナー表面を脂肪酸金属塩が均一に被覆しているためにトナー粒子表面の露出が少なく、転写残トナー凝集塊の形成を抑制するためにクリーニング性が向上する。さらに脂肪酸金属塩がトナーとともに挙動するため静電潜像担持体上に均一に塗布され、クリーニング性が向上する。
【0029】
表面張力指数が1.0×10-1N/mを超える場合は、外添剤がトナー粒子表面を過剰に被覆しているため、帯電性を低下させ現像性が悪化してしまう。また表面張力指数が5.0×10-3N/m未満である場合はトナー表面に外添剤が偏在していることを示しており、このため外添剤の一部がトナーから遊離し易くなり起動スジの発生を抑制することができない。
【0030】
また脂肪酸金属塩の体積基準のメジアン径が0.65μmを超える場合、トナー表面に均一に分布することが難しくなり、またトナー粒子に対する付着力も弱くなるため容易に凝集塊が形成されてしまい、起動スジが改善されにくいため好ましくない。0.15μmより小さいと、脂肪酸金属塩同士が付着し易くなるので起動スジが改善され難いため好ましくない。
【0031】
脂肪酸金属塩の添加量が0.02質量部未満である場合は、脂肪酸金属塩量が過少となり充分な起動スジの改善効果を得ることが難しく、クリーニング性も改善されない。また0.50質量部を超える場合は、脂肪酸金属塩量が過剰となりトナーの帯電性が悪化するため現像性が低下する。
【0032】
本発明に好適に用いられる脂肪酸金属塩としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、リチウムから選ばれる金属の塩が好ましい。この中でも、脂肪酸亜鉛または脂肪酸カルシウムが特に好ましく、これらを用いた場合には本発明の効果がより顕著となる。
【0033】
また、脂肪族金属塩の脂肪酸としては、炭素数12以上22以下の高級脂肪酸が好ましい。炭素数12以上の脂肪酸を用いると遊離脂肪酸の発生を抑えやすい。遊離脂肪酸量としては、0.20質量%以下が好ましい。脂肪酸の炭素数が22以下であれば、脂肪酸金属塩の融点が高くなりすぎず、良好な定着性が得られやすい。脂肪酸としては、ステアリン酸が特に好ましい。
【0034】
本発明者等の検討の結果、脂肪酸金属塩は体積基準におけるメジアン径(D50)が0.15μm以上0.65μm以下であるとき、クリーニング性改善の効果を最も発揮することが明らかとなった。その詳細な理由について、本発明者等は以下のように推察する。
【0035】
微細な脂肪酸金属塩は粒度が充分に小さい為にトナー粒子の表面に均一に存在することが可能となり、滑剤として効果的に作用する。また同じ部数添加したとしても大粒径の脂肪酸金属塩と比較して粒子数が増加し、効果的に滑剤としての機能を発揮することができる。このように微細な脂肪酸金属塩は、静電潜像担持体と転写残トナーの付着を効果的に低減させることができる。またトナーの各粒子の表面に均一に存在するので、トナーの帯電が均一に近づき、逆極性に帯電するトナーの発生が低減される。このため静電潜像担持体との付着力が強くクリーニング不良の原因となる逆極性帯電トナーの発生を抑制させることができる。逆極性帯電トナーはカブリの原因ともなるので、その低減はカブリの改善にも有効である。
【0036】
脂肪酸金属塩の体積基準におけるメジアン径が0.15μmより小さいと、脂肪酸金属塩がトナー粒子表面を被覆し過ぎるために帯電性や現像性が悪化する。
【0037】
0.65μmを超える場合は、粒径が大きすぎて脂肪酸金属塩がトナー粒子表面において偏在し易くなるために、トナー粒子間の帯電分布が広がり逆極性のトナーが増加してしまうのでクリーニング不良やカブリが改善できない。また、粒径が大きくなると脂肪酸金属塩のトナー粒子表面への付着力が低下し、トナー中での遊離が発生しやすくなる傾向にある。そのため多数枚の印字を行っていくと脂肪酸金属塩がトナーから遊離しその効果が発揮されなくなるため好ましくない。
【0038】
脂肪酸金属塩は、下記式(2)で定義されるスパン値Bが1.75以下であることが好ましく、より好ましくは1.30以下である。
【0039】
スパン値B=(D95−D5)/D50 式(2)
D5 :脂肪酸金属塩の体積基準における5%積算径
D50:脂肪酸金属塩の体積基準における50%積算径
D95:脂肪酸金属塩の体積基準における95%積算径
【0040】
スパン値Bとは脂肪酸金属塩の粒度分布を示す指標である。スパン値Bが1.75以下であると、トナー中に存在する脂肪酸金属塩の粒径のばらつきが小さくなるため、帯電安定性がより得られ、逆極性に帯電するトナーが減少する傾向にあるため、カブリが良化する傾向であった。さらに好ましくは1.30以下であり、1.30以下であると、トナー表面の脂肪酸金属塩の固着状態が均一となり、トナーとともに挙動する脂肪酸金属塩の割合が増えるため外添剤の凝集塊が形成されにくくなるので、起動スジが良化する傾向であった。
【0041】
本発明はトナーの脂肪酸金属塩の遊離率が10.0質量%以上40.0質量%以下であることが好ましい。脂肪酸金属塩の遊離率が10.0質量%以上40.0質量%以下である場合、多数枚の印字後であってもトナー粒子表面に脂肪酸金属塩が一定量存在していることととなり、本発明の効果が持続して発揮されるため好ましい。
【0042】
脂肪酸金属塩の遊離率は外添剤の粒径のほかに、外添時のトナーと外添剤の混合時間や混合回数などの条件によっても制御される。
【0043】
本発明のトナーは、磁性トナー粒子表面の平均面粗さ(Ra)が1.0nm以上30.0nm以下である場合、転写性に優れ消費量も低減され耐久現像性に優れるので望ましい。
【0044】
トナー粒子表面の平均面粗さ(Ra)が上記範囲にあるということはトナー粒子表面が平滑であることを意味する。トナー粒子表面が平滑であるためトナー粒子表面において外添剤が均一に存在することができ帯電分布がシャープになり、上記効果が生じる。
【0045】
トナーの結着樹脂としてはビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体をワックスと共にトナー粒子中に含有することが好ましい。
【0046】
上記ビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体としては、ビニル系樹脂成分にポリオレフィンがグラフトした構造を有する、又はポリオレフィンにビニル系モノマーがグラフト重合したビニル系樹脂成分を有するグラフト重合体が特に好ましい。
【0047】
上記ビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体は、トナー製造時の混練工程や熱風処理による表面平滑工程において溶融した結着樹脂とワックスに対し界面活性剤的な働きをする。従って、該重合体は、トナー粒子中のワックスの一次平均分散粒径のコントロールや、熱風により表面処理を行う際のワックスのトナー表面への移行速度のコントロールができるため好ましい。
【0048】
上記ビニル系樹脂成分にポリオレフィンがグラフトした構造を有する、又はポリオレフィンにビニル系モノマーがグラフト重合したビニル系樹脂成分を有するグラフト重合体に関して、ポリオレフィンは二重結合を一つ有する不飽和炭化水素系モノマーの重合体または共重合体であれば特に限定されず、様々なポリオレフィンを用いることができる。特にポリエチレン系、ポリプロピレン系が好ましく用いられる。
【0049】
一方、ビニル系モノマーとしては、以下のものが挙げられる。
【0050】
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン及びその誘導体などのスチレン系モノマー。
【0051】
メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きアミノ基含有α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体などの窒素原子を含むビニル系モノマー。
【0052】
マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、前記α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物、及びこれらのモノエステルなどのカルボキシル基を含むビニル系モノマー。
【0053】
2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンなどの水酸基を含むビニル系モノマー。
【0054】
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類などのアクリル酸エステルからなるエステル単位。
【0055】
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類などのメタクリル酸エステルからなるエステル単位。
【0056】
ビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体は、前述したこれらのモノマー同士の反応や、一方の重合体のモノマーと他方の重合体との反応等、公知の方法によって得ることができる。
【0057】
ビニル系樹脂成分の構成単位として、スチレン系単位、さらにはアクリロニトリル、またはメタクリロニトリルを含むことが好ましい。
【0058】
上記重合体中の炭化水素化合物とビニル系樹脂成分の質量比は1/99以上75/25以下であることが好ましい。炭化水素化合物とビニル系樹脂成分を上記範囲で用いることが、トナー粒子中へワックスを良好に分散させるために好ましい。
【0059】
上記ビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上20質量部以下であることが好ましい。上記重合体を上記範囲で用いることが、トナー粒子中へワックスを良好に分散させるために好ましい。
【0060】
トナー粒子は熱により表面処理を行うことが好ましい。このような表面処理としては、熱風による表面処理を行うことが特に好ましい。
【0061】
熱風により表面処理を行う具体方法としては、トナー粒子を空気中に拡散させた状態で、瞬間的にトナー粒子を高温の熱風中に存在させ、直後に瞬間的に冷風によって冷却する方法が挙げられる。上記冷風は、除湿された冷風であることが好ましく、具体的には、絶対水分量が5g/m3以下の冷風であることが好ましい。
【0062】
上記手法によるトナー粒子の表面処理は、トナー粒子に過剰の熱を与えることがなく、均一に処理を行うことができる。また、原材料成分の変質を防ぐと共にトナー粒子の表面のみの処理が可能である。そのため、トナー粒子表面への過剰量のワックスの移行や不均一なワックスの移行を防ぐことができる。上記熱風による表面処理の詳細については後述する。
【0063】
本発明のトナーに用いられる結着樹脂としては、公知の樹脂を用いることが可能である。特に結着樹脂として好ましく用いられる樹脂としては、スチレン系共重合体、及び/又は、ポリエステルユニットを有する樹脂である。
【0064】
更に好ましくは、全結着樹脂中に含まれるポリエステルユニットを有する樹脂が、全結着樹脂に対して50質量%以上であり、特に好ましくは70質量%以上である。全結着樹脂中に含まれるポリエステルユニットを有する樹脂が、全結着樹脂に対して50質量%以上である場合、上記特定範囲の表面張力指数を有するトナーを得るために好ましい。
【0065】
上記「ポリエステルユニット」とは、ポリエステルに由来する部分を意味し、ポリエステルユニットを有する樹脂とは、ポリエステル樹脂やハイブリッド樹脂が例示される。ポリエステルユニットを構成する成分としては、具体的には、2価以上のアルコールモノマー成分と、2価以上のカルボン酸、2価以上のカルボン酸無水物及び2価以上のカルボン酸エステル等の酸モノマー成分が挙げられる。
【0066】
また、本発明のトナーに用いられるワックスとしては、以下のものが挙げられる。
【0067】
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス、また酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、またはそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、ベヘン酸ベヘニルワックス、モンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、及び脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したもの。
【0068】
特に好ましく用いられるワックスとしては、脂肪族炭化水素系ワックス及び脂肪酸とアルコールのエステルが挙げられる。例えば、アルキレンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒又はメタロセン触媒で重合した低分子量のアルキレンポリマー;高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から、あるいはこれらを水素添加して得られる合成炭化水素ワックスである。また、パラフィンワックスも好ましく用いられる。
【0069】
また、本発明のトナーに用いられるワックスは、示差走査熱量測定(DSC)装置で測定される昇温時の吸熱曲線において、温度30℃以上200℃以下の範囲に存在する最大吸熱ピークのピーク温度が45℃以上140℃以下の範囲にあることが好ましい。更に好ましくは65℃以上120℃以下の範囲であり、特に好ましくは65℃以上100℃以下の範囲である。
【0070】
上記ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度が45℃以上140℃以下の範囲に存在する場合は、良好な定着性を達成するために好ましい。
【0071】
上記ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して3質量部以上20質量部以下であることが好ましい。より好ましくは、3質量部以上15質量部以下であり、更に好ましくは3質量部以上10質量部以下である。
【0072】
本発明のトナーにおいて、トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、メインピーク分子量が、分子量2000以上15,000以下であることが好ましい。特に分子量2500以上13,000の以下であることがより好ましい。また、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が3.0以上15.0以下であることが好ましく、5.0以上12.0以下であることがより好ましい。
【0073】
上記メインピーク及びMw/Mnが上記範囲を満たす場合、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を良好に両立させることが出来好ましい。また、熱風により表面処理を行う場合、効率よく処理することが可能で、かつ、トナー同士の合一を良好に防ぐことができ、好ましい。
【0074】
本発明のトナーにおいて、トナーのガラス転移温度(Tg)は、40℃以上90℃以下が好ましく、軟化温度(Tm)は、80℃以上150℃以下が保存性、低温定着性、耐高温オフセット性を両立させる上で好ましい。また、熱風による表面処理を行う場合、トナー同士の合一を良好に防ぐことができ、好ましい。
【0075】
本発明に係るトナー粒子には磁性体を含有させ、磁性トナー粒子とする。この場合磁性体は着色剤の役割を兼ねさせることもできる。
【0076】
上記磁性体としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルの如き磁性金属或はこれらの磁性金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等との合金及びその混合物等が挙げられる。
【0077】
上記磁性体は個数平均粒子径が2.00μm以下、好ましくは0.05μm以上0.50μm以下のものが好ましい。トナー中に含有させる量としては結着樹脂100質量部に対し、20質量部以上200質量部以下が好ましく、特に好ましくは40質量部以上150質量部以下である。
【0078】
本発明のトナーにおいて、トナーの帯電性を安定させるために公知の荷電制御剤を用いることができる。荷電制御剤は、荷電制御剤の種類や他のトナー構成材料の物性等によっても異なるが、トナーの結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下含まれることが好ましく、0.1質量部以上5.0質量部以下含まれることがより好ましい。このような荷電制御剤としては、トナーを負帯電性に制御するものと、正帯電性に制御するものとが知られており、トナーの種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。尚、該荷電制御剤はトナーに対して内添しても良いし外添しても良い。
【0079】
負帯電性の荷電制御剤としては、例えば有機金属化合物、キレート化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物が有効である。より詳細には、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸金属化合物、芳香族ダイカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物等がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などがある。
【0080】
本発明のトナーにおいて、トナーの流動性、転写性、帯電安定性などの向上を目的として、トナー粒子に、外添剤をヘンシェルミキサーの如き混合機で混合して用いる。上記外添剤としては公知のものが使用できるが、特に脂肪酸金属塩を用いることが好ましい。
【0081】
上記脂肪酸金属塩の他に、例えばフッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末;酸化チタン微粉末;アルミナ微粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ;それらをシラン化合物、及び有機ケイ素化合物、チタンカップリング剤、シリコーンオイルにより表面処理を施した微粉末。
【0082】
上記酸化チタン微粉末としては、硫酸法、塩素法、揮発性チタン化合物、例えばチタンアルコキシド、チタンハライド、チタンアセチルアセトネートの低温酸化(熱分解、加水分解)により得られる酸化チタン微粉末が用いられる。結晶系としてはアナターゼ型、ルチル型、これらの混晶型、アモルファスのいずれのものも用いることができる。
【0083】
上記微粉末は、その表面をカップリング剤、シリコーンオイル、又は有機ケイ素化合物などによって疎水化処理をされていることが好ましい。該微粉末の表面の疎水化処理の方法は、微粉末と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的、または物理的に処理する方法が例示できる。
【0084】
外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上8.0質量部以下が好ましく、更に好ましくは0.1質量部以上4.0質量部以下である。
【0085】
また、外添剤の個数平均粒径(D1)は、0.01μm以上0.30μm以下であることが流動性付与の観点で好ましい。
【0086】
以下、本発明のトナーの製造方法について説明するが、下記記載に限定されるものではない。
【0087】
本発明のトナーは、公知の方法を用いて製造が可能である。例えば、結着樹脂及びワックス、並びに任意の材料を混合する(原料混合工程)。得られた混合物を溶融混練し(溶融混練工程)、これを冷却して粉砕する(粉砕工程)。得られた粉砕物を必要に応じて球形化処理、熱風による表面処理、及び分級処理を行い、トナー粒子を得る。そして、得られたトナー粒子に外添剤を混ぜることによって製造することが可能である。なお、本発明に係るトナー粒子は、熱風により表面処理を行うことにより得られることがより好ましい。
【0088】
以下に製造例の一例を示す。
【0089】
まず、溶融混練工程に供給する原料を混合する原料混合工程では、少なくとも結着樹脂及びワックスを所定量秤量後、配合し、混合装置を用いて混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等がある。
【0090】
更に、混合されたトナー原料を溶融混練して、樹脂類を溶融し、その中にワックス等を分散させる。該溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。近年では、連続生産できる等の優位性から、一軸又は二軸押出機が主流となっている。例えば、神戸製鋼所社製KTK型二軸押出機、東芝機械社製TEM型二軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製二軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が一般的に使用される。更に、トナー原料を溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
【0091】
そして上記で得られた樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕され、更に、川崎重工業社製のクリプトロンシステム、日清エンジニアリング社製のスーパーローター等で粉砕され、粉砕品を得る。
【0092】
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)等の分級機等の篩分機を用いて分級し、分級品を得る。
【0093】
本発明に用いられるトナー粒子は、上記粉砕品を得た後、例えば、図1で表される表面処理装置を用いて、熱風により表面処理を行い、続いて分級をすることにより得ることが好ましい。若しくは、予め分級したものを、図1で表される表面装置を用いて、熱風により表面処理を行う方法も好ましい。
【0094】
上記熱風による表面処理としては、トナーを高圧エア供給ノズルからの噴射により噴出させ、該噴出させたトナーを、熱風中にさらすことでトナーの表面を処理する方法が好ましい。該熱風の温度としては、100℃以上450℃以下の範囲であることが特に好ましい。
【0095】
ここで、本発明のトナーの製造に用いられる表面処理装置の概略を、図1、図2を用いて説明する。
【0096】
図1は本発明による表面処理装置の一例を示した断面図であり、図2は気流噴射部材の一例を示した断面図を示す。
【0097】
トナー供給口100から供給されたトナー粒子114は、高圧エア供給ノズル115から噴射されるインジェクションエアにより加速され、その下方にある気流噴射部材102へ向かう。図2に示すように、気流噴射部材102からは拡散エア110が噴射され、この拡散エア110によりトナーが上方及び外側へ拡散する。この時、インジェクションエアの流量と拡散エアの流量とを調節することにより、トナーの拡散状態をコントロールすることができる。
【0098】
更に、トナーの融着防止を目的として、トナー供給口100の外周、表面処理装置外周及び移送配管116外周には冷却ジャケット106が設けられている。尚、該冷却ジャケットには冷却水(好ましくはエチレングリコール等の不凍液)を通水することが好ましい。
【0099】
また、拡散エアにより拡散したトナーは、熱風供給口101から供給された熱風により、表面が処理される。この時、熱風供給口内温度C(℃)は100℃以上450℃以下であることが好ましい。更に好ましくは、100℃以上400℃以下である。上記の温度範囲内であれば、トナー粒子同士の合一を抑制しつつ、トナー粒子表面を均一に処理することができる。
【0100】
熱風により表面が処理されたトナーは、装置上部外周に設けた冷風供給口103から供給される冷風により冷却される。この時、装置内の温度分布管理、トナーの表面状態をコントロールする目的で、装置の本体側面に設けた第二の冷風供給口104から冷風を導入しても良い。第二の冷風供給口104の出口はスリット形状、ルーバー形状、多孔板形状、メッシュ形状等を用いる事ができ、導入方向は中心方向へ水平、装置壁面に沿う方向が、目的に応じて選択可能である。
【0101】
この時、上記冷風供給口内及び第二の冷風供給口内の温度E(℃)は−50℃以上10℃以下であることが好ましい。更に好ましくは、−40℃以上8℃以下である。また、上記冷風は除湿された冷風であることが好ましい。具体的には、絶対水分量が5g/m3以下であることが好ましい。更に好ましくは、3g/m3以下である。該冷風の絶対水分量を制御することで、トナー表面の表面張力指数を容易に調節することが可能である。
【0102】
上記の温度範囲とすることにより、適度な処理と壁面への融着の防止とがバランスよく達成される。
【0103】
その後、冷却されたトナーは、ブロワーで吸引され、移送配管116を通じて、サイクロン等で回収される。
【0104】
次に、図2を用いて、表面処理装置内に具備した気流噴射部について説明する。図2は気流噴射部材の一例を示した断面図である。
【0105】
図2に示すとおり、トナー供給口100上部から定量供給機により供給されたトナーは、同管内でインジェクションエアにより加速され出口部へ向かい、装置内に設置された気流噴射部材102からの拡散エアにより外側へ拡散する。尚、気流噴射部材102の下端はトナー供給口100の下端から5mm以上150mm以下の範囲で下方に配設されていることが好ましい。気流噴射部材の下端が出口から5mm未満の位置に接続された場合、装置内に導入するトナーの処理量を多く設定すると、詰まりや処理不良となる場合がある。また、150mmを超える場合には、拡散エアにより拡散したトナーを処理する熱風の効果が均一に得られない場合があり、トナーの処理にばらつきが生じ、トナーの転写性が低下する可能性がある。
【0106】
また、トナー供給口100の外周には、結露防止を目的とした気流供給口111を、トナー供給口100と冷却ジャケット106の間に設けても良い。この結露防止のための気流は、拡散エア、又は上記冷風、第二の冷風と共通の供給機から導入しても良く、取り入れ口を開放として、外気を取り入れても良い。また、緩衝エアとして取り入れ口を閉鎖した状態で装置を運転することも可能である。
【0107】
また、必要に応じて、例えば奈良機械製作所製のハイブリタイゼーションシステム、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステムを用いて更に表面改質及び球形化処理を行ってもよい。このような場合では必要に応じて風力式篩のハイボルター(新東京機械社製)等の篩分機を用いても良い。
【0108】
一方、上記外添剤を外添処理する方法としては、分級されたトナー粒子と公知の各種外添剤を所定量配合し、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の粉体にせん断力を与える高速撹拌機を外添機として用いて、撹拌・混合する方法が挙げられる。
【0109】
次に、本発明に係る各物性の測定方法に関して記載する。
【0110】
<トナー粒子表面の平均面粗さ(Ra)の測定方法>
トナー粒子表面の平均面粗さ(Ra)は、以下の測定装置及び測定条件により測定した。走査型プローブ顕微鏡:プローブステーションSPI3800N(セイコーインスツルメンツ(株)製)
測定ユニット :SPA400
測定モード :DFM(共振モード)形状像
カンチレバー :SI−DF40P
解像度 :Xデータ数 256、Yデータ数 128
測定エリア :1μm四方
【0111】
トナー粒子に外添剤が添加されているトナーは、外添剤を予め取り除く必要があり、具体的な方法としては、以下の方法を用いた。
(1)トナー45mgをサンプル瓶に入れ、メタノールを10ml加える。
(2)超音波洗浄機で1分間試料を分散させて外添剤を分離させる。
(3)吸引ろ過(10μmメンブランフィルター)してトナー粒子と外添剤を分離する。磁性体を含むトナーの場合は、磁石をサンプル瓶の底にあててトナー粒子を固定して上澄み液だけ分離させても構わない。
(4)上記(2)及び(3)を計3回行い、得られたトナー粒子は真空乾燥機を用い室温で十分に乾燥させる。
【0112】
上記(2)及び(3)に代わる外添剤を取り除く他の方法としては、アルカリで外添剤を溶解させる方法が挙げられる。アルカリとしては水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0113】
また、トナー粒子は、後述するコールター・カウンター法で測定された重量平均粒径(D4)と等しい粒径のトナー粒子を選択して、測定対象とした。測定されたデータは、異なるトナー粒子を10個以上測定し、得られたデータの平均値を算出して、トナー粒子の平均面粗さ(Ra)とした。
【0114】
平均面粗さ(Ra)は、JIS B0601−1994で定義されている中心線平均粗さRaを、測定面に対して適用できるよう三次元に拡張したものである。基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値であり、次式で表される。
【0115】
【数1】

【0116】
F(X,Y):全測定データの示す面
S0 :指定面が理想的にフラットであると仮定したときの面積
Z0 :指定面内のZデータ(粗さデータ)の平均値
(指定面とは、本発明においては1μm四方の測定エリアを意味する。)
【0117】
<トナーの重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出した。
【0118】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0119】
尚、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行った。
【0120】
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定した。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定した。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れた。専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定した。
【0121】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行った。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておいた。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加えた。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加した。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させた。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整した。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させた。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続した。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節した。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整した。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行った。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒子径(D4)を算出した。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒子径(D4)である。
【0122】
<トナーの表面張力指数の測定方法>
トナーの表面張力指数は以下の方法を用いて測定した。
【0123】
トナー 約5.5gを測定セルに静かに投入し、タッピングマシンPTM−1型(三協パイオテク社製)を用いて、タッピングスピード30回/minにて1分間タッピング操作を行った。これを測定装置(三協パイオテク社製:WTMY−232A型ウェットテスタ)内にセットし測定を行った。毛管圧力Pα(N/m2)の測定には毛細管吸引時間法を用いた。各測定の条件は下記の通りである。
溶媒 :45体積%メタノール水溶液
測定モード :定流量法 (A2モード)
液体流量 :2.4ml/min
セル :Y型測定セル
【0124】
トナーの表面張力指数I(N/m)は、トナーの毛細管吸引時間法により測定された毛管圧力をPα(N/m2)、トナーの比表面積をA(m2/g)、トナーの真密度をB(g/cm3)とした時に、下記式(1)より算出した。尚、トナーの比表面積、真密度は後述の方法により測定した。
【0125】
I=Pα/(A×B×106) 式(1)
【0126】
<トナーの比表面積(BET法)の測定方法>
トナーの比表面積(BET法)は、比表面積測定装置Tristar3000(島津製作所社製)を用いて行った。
【0127】
トナーの比表面積は、BET法にしたがって、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて、比表面積を算出した。比表面積の測定前には、試料管に試料を約2g精秤し、室温で、24時間真空引きを行う。真空引き後、サンプルセル全体の質量を測定し、空サンプルセルとの差から試料の正確な質量を算出した。
【0128】
次に、上記測定装置のバランスポート及び分析ポートに空のサンプルセルをセットした。次に、所定の位置に液体窒素の入ったデュワー瓶をセットし、飽和蒸気圧(P0)測定コマンドにより、P0を測定した。P0測定終了後、分析ポートに調製されたサンプルセルをセットし、サンプル質量及びP0を入力後、BET測定コマンドにより測定を開始した。後は自動でBET比表面積を算出した。
【0129】
<トナーの真密度の測定>
トナーの真密度は、乾式自動密度計オートピクノメーター(ユアサアイオニクス社製)により測定した。条件は下記の通りである。
セル SMセル(10ml)
サンプル量 2.0g
【0130】
この測定装置は、気相置換法に基づいて、固体・液体の真密度を測定するものである。液相置換法と同様、アルキメデスの原理に基づいているが、置換媒体としてガス(アルゴンガス)を用いるため、精度が高い。
【0131】
<脂肪酸金属塩のメジアン径とスパン値Bの測定>
本発明で用いられる脂肪酸金属塩の体積基準のメジアン径の測定は、JIS Z8825−1(2001年)に準じて測定されるが、具体的には以下の通りである。
【0132】
測定装置としては、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA−920」(堀場製作所社製)を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、LA−920に付属の専用ソフト「HORIBA LA−920 for Windows(登録商標) WET(LA−920) Ver.2.02」を用いる。また、測定溶媒としては、予め不純固形物などを除去したイオン交換水を用いる。
【0133】
測定手順は、以下の通りである。
(1)バッチ式セルホルダーをLA−920に取り付ける。
(2)所定量のイオン交換水をバッチ式セルに入れ、バッチ式セルをバッチ式セルホルダーにセットする。
(3)専用のスターラーチップを用いて、バッチ式セル内を撹拌する。
(4)「表示条件設定」画面の「屈折率」ボタンを押し、ファイル「110A000I」(相対屈折率1.10)を選択する。
(5)「表示条件設定」画面において、粒子径基準を体積基準とする。
(6)1時間以上の暖気運転を行った後、光軸の調整、光軸の微調整、ブランク測定を行う。
(7)ガラス製の100ml平底ビーカーに約60mlのイオン交換水を入れる。この中に分散剤として、「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(8)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora 150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(9)前記(7)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(10)前記(9)のビーカー内の水溶液に超音波を照射した状態で、約1mgの脂肪酸金属塩を少量ずつ前記ビーカー内の水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、この際に脂肪酸金属塩が塊となって液面に浮く場合があるが、その場合はビーカーを揺り動かすことで塊を水中に沈めてから60秒間の超音波分散を行う。また、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(11)前記(10)で調製した脂肪酸金属塩が分散した水溶液を、気泡が入らないように注意しながら直ちにバッチ式セルに少量ずつ添加して、タングステンランプの透過率が90%乃至95%となるように調整する。そして、粒度分布の測定を行う。得られた体積基準の粒度分布のデータを元に、5%積算径、50%積算径及び95%積算径を算出する。得られた各値をD5、D50、D95とし、これらよりスパン値Bを求める。
【0134】
<脂肪酸金属塩の遊離率>
本発明におけるトナー中の脂肪酸金属塩の遊離率は、KM Shaker(いわき産業社製)と、蛍光X線分析装置 Axios(PANalytical製)及び測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いて蛍光X線の強度差により脂肪酸金属塩の遊離率を求める。
【0135】
具体的な測定法としては、以下の通りである。
(1)トナーをリング径22mm×16mm×5mmの塩ビリングに約1g載せ、プレス機にて100kgfで圧縮しサンプルを作製する。得られたサンプルを蛍光X線分析装置(Axios)で測定し、トナーが含有する脂肪酸金属塩の金属元素由来のネット強度を得る。
(2)トナー粒子に関しても(1)と同様に蛍光X線分析装置(Axios)で測定しておき、脂肪酸金属塩に含まれる金属元素について、トナー粒子のみに由来するネット強度を得ておく。
(3)トナーを1g精評しておき、30ccバイアルにメタノールを16g入れておく。バイアル中にトナーを投入し、30秒間静置後に下記条件で振とうし、トナーとメタノールを分離する。このとき、例えば磁性体を含有するトナーであれば磁力によって分離することが好ましい。
【0136】
[振とう装置/条件]
装置 :KM Shaker(いわき産業社製)
model:V.SX
振とう条件:speedを50に設定し、10秒間振とう
【0137】
分離したトナーを真空乾燥機で一晩乾燥し、得られた試料を(1)と同様の塩ビリングに約1g載せ、プレス機にて100kgfで圧縮しサンプルを作製する。得られたサンプルを蛍光X線分析装置(Axios)で測定し、メタノール中で振とうした後の試料に含有される脂肪酸金属塩由来のネット強度を得る。
【0138】
尚、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は10mm、測定時間300秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
【0139】
脂肪酸金属塩の遊離率は、メタノール振とう前後の脂肪酸金属塩の金属元素のKα線ネット強度(KCPS)を測定して、下記式より求める。
【0140】
脂肪酸金属塩の遊離率(%)={(B−T)−(A−T)}/(B−T)×100
A:メタノール振とう後のトナーにおける脂肪酸金属塩の金属元素のネット強度
B:メタノール振とう前のトナーにおける脂肪酸金属塩の金属元素のネット強度
T:トナー粒子のネット強度
【0141】
<ワックス又は樹脂の最大吸熱ピークのピーク温度の測定方法>
最大吸熱ピークのピーク温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3417−99に準じて測定した。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いた。
【0142】
具体的には、試料約10mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30乃至200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行った。尚、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行った。この2度目の昇温過程での温度30乃至200℃の範囲におけるDSC曲線を用い、最大吸熱ピークのピーク温度を求めた。
【0143】
<樹脂又はトナーのガラス転移温度(Tg)の測定方法>
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−99に準じて測定した。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いた。
【0144】
具体的には、試料約10mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲30乃至200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行った。この昇温過程で、温度40℃乃至100℃の範囲において比熱変化が得られた。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、ガラス転移温度Tgとした。
【実施例】
【0145】
以下、本発明を製造例及び実施例により更に具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0146】
<磁性酸化鉄の製造例>
3.0mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を反応容器中に20.5リットル入れ、そこにFe2+が1.55mol/l含まれている硫酸第一鉄水溶液22.2リットルを加え、反応温度を92℃で水酸化第一鉄塩コロイドを含む第一鉄塩懸濁液の生成を行った。
【0147】
その後、90l/minで空気を通気させて反応を開始し、それと同時にSiを29g有するケイ酸ナトリウム水溶液0.28リットルを50分かけて添加した。その後30分間撹拌を続けて酸化反応を進行させ、マグネタイト核晶粒子を含む第一鉄懸濁液を得た。
【0148】
更に、上記懸濁液に8.0mol/lの水酸化ナトリウム水溶液0.3リットルを加えてpHを9.3とした。そこに、95l/minの空気を通気させながら反応温度92℃で30分間反応を続け、マグネタイト粒子を生成させた。
【0149】
更に、0.55mol/lの硫酸アルミニウム水溶液を150ml添加して十分に撹拌し、その後濾別、水洗、乾燥、解砕を行い磁性酸化鉄1を得た。
【0150】
<結着樹脂の製造>
ポリエステルユニット成分として、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン71.0部、テレフタル酸28.0部、無水トリメリット酸1.0部及びチタンテトラブトキシド0.5部をガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応せしめてポリエステルユニットを有する樹脂1−1を得た。このポリエステルユニットを有する樹脂1−1は、重量平均分子量(Mw)80000、数平均分子量(Mn)3500、ピーク分子量(Mp)5700であった。
【0151】
また、ポリエステルユニット成分として、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン70.0部、テレフタル酸20.0部、イソフタル酸3.0部、無水トリメリット酸7.0部及びチタンテトラブトキシド0.5部をガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、220℃の温度で撹拌しつつ、6時間反応せしめてポリエステルユニットを有する樹脂1−2を得た。このポリエステルユニットを有する樹脂1−2は、重量平均分子量(Mw)120000、数平均分子量(Mn)4000、ピーク分子量(Mp)7800であった。
【0152】
上記ポリエステル樹脂1−1:50部、ポリエステル樹脂1−2:50部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機社製)で予備混合し、溶融混練機 PCM30(池貝鉄工所社製)にて回転数3.3s-1、混練樹脂温度100℃の条件で溶融ブレンドし、結着樹脂1を得た。
【0153】
<脂肪酸金属塩1の製造>
攪拌装置付きの受け容器を用意し、攪拌器を350rpmで回転させた。この受け容器に0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液500部と投入し、液温を85℃に調整した。次に、この受け容器に0.2質量%硫酸亜鉛水溶液525部を、15分かけて滴下した。全量仕込み終了後、反応時の温度状態で10分間熟成し、反応を終結した。
【0154】
次に、このようにして得られた脂肪酸金属塩スラリーを濾過洗浄した。得られた洗浄後の脂肪酸金属塩ケーキを粗砕後、連続瞬間気流乾燥機を用いて105℃で乾燥した。その後、ナノグラインディングミル〔NJ−300〕(サンレックス社製)にて風量6.0m3/min、処理速度80kg/hの条件で粉砕した後、リスラリーして湿式遠心分級機を用いて微粒子、粗粒子の除去を行った。その後、連続瞬間気流乾燥機を用いて80℃で乾燥して脂肪酸金属塩微粒子1を得た。得られた脂肪酸金属塩微粒子1の体積基準におけるメジアン径(D50s)は0.45μm、スパン値Bは0.92であった。
【0155】
<脂肪酸金属塩2の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、湿式遠心分級機の条件を変更し、体積基準におけるメジアン径(D50s)は0.45μm、スパン値Bは1.3の脂肪酸金属塩2を得た。
【0156】
<脂肪酸金属塩3の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、湿式遠心分級機の条件を変更し、体積基準におけるメジアン径(D50s)は0.45μm、スパン値Bは1.75の脂肪酸金属塩3を得た。
【0157】
<脂肪酸金属塩4の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、湿式遠心分級機の条件を変更し、体積基準におけるメジアン径(D50s)は0.45μm、スパン値Bは1.9の脂肪酸金属塩4を得た。
【0158】
<脂肪酸金属塩5の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を0.25質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液に、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.15質量%硫酸亜鉛水溶液に変更した。また、粉砕の条件を風量10.0m3/minに変更し、更に粉砕工程を3回行うように変更した。得られた脂肪酸金属塩5の体積基準におけるメジアン径(D50s)は0.15μm、スパン値Bは1.94であった。
【0159】
<脂肪酸金属塩6の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を0.20質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液に、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.10質量%硫酸亜鉛水溶液に変更した。また、粉砕の条件を風量12.0m3/minに変更し、更に粉砕工程を3回行うように変更した。得られた脂肪酸金属塩6の体積基準におけるメジアン径(D50s)は0.10μm、スパン値Bは1.94であった。
【0160】
<脂肪酸金属塩7の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を0.7質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液に変更し、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.3質量%硫酸亜鉛水溶液に変更した。また、粉砕の条件を風量4.0m3/min、処理速度50kg/hとした。それ以外の工程は脂肪酸金属塩1の製造と同様にして、脂肪酸金属塩7を得た。得られた脂肪酸金属塩7の体積基準におけるメジアン径(D50s)は0.65μm、スパン値Bは1.9であった。
【0161】
<脂肪酸金属塩8の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を1.0質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液に変更し、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.4質量%硫酸亜鉛水溶液に変更した。また、15分間の熟成で反応を終結させた。また、粉砕の条件を風量4.0m3/minに変更した。それ以外の工程は脂肪酸金属塩1の製造と同様にして、脂肪酸金属塩8を得た。得られた脂肪酸金属塩8の体積基準におけるメジアン径(D50s)は0.70μm、スパン値Bは1.96であった。
【0162】
<脂肪酸金属塩9の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を1.2質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液に変更し、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.5質量%硫酸亜鉛水溶液に変更した。また、15分間の熟成で反応を終結させた。また、粉砕の条件を風量4.0m3/minに変更した。それ以外の工程は脂肪酸金属塩1の製造と同様にして、脂肪酸金属塩9を得た。得られた脂肪酸金属塩9の体積基準におけるメジアン径(D50s)は0.80μm、スパン値Bは1.96であった。
【0163】
<トナー1の製造>
・スチレン 64部
・n−ブチルアクリレート 13.5部
・アクリロニトリル 2.5部
をオートクレーブに仕込み、系内をN2置換後、昇温攪拌しながら180℃に保持した。系内に、2質量%のt−ブチルハイドロパーオキシドのキシレン溶液50部を5時間連続的に滴下し、冷却後、溶媒を分離除去し、上記低密度ポリエチレンにビニル樹脂成分が反応した重合体Aを得た。重合体Aの分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)7000、数平均分子量(Mn)3000であった。
【0164】
・結着樹脂1 100部
・重合体A 2部
・フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピークのピーク温度105℃) 4部
・磁性体 95部
・モノアゾ鉄化合物(T−77、保土谷化学工業社製) 2部
上記処方をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合した後、温度130℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、池貝鉄工(株)製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T−250、ターボ工業(株)製)にて粉砕した。さらにコアンダ効果を利用した多分割分級機により分級を行い、磁性体含有樹脂粒子を得た。得られた磁性体含有樹脂粒子は、重量平均粒径(D4)が6.3μmであり、粒径4.0μm以下の粒子が25.6個数%であり、粒径10.1μm以上の粒子の割合が2.6体積%であった。
【0165】
この磁性体含有樹脂粒子に対し図1で示す表面平滑装置を用い、表面処理を行った。気流噴射部材102の下端がトナー供給口100の下端から100mm下方にくるように配設した。
【0166】
運転条件はフィード量=5kg/hr、熱風温度C=250℃、熱風流量=6m3/min、冷風温度E=5℃、冷風流量=4m3/min、冷風絶対水分量=3g/m3、ブロワー風量=20m3/min、インジェクションエア流量=1m3/min、拡散エア=0.3m3/minとした。
【0167】
上記条件の表面処理によって、重量平均粒径(D4)6.7μm、粒径4.0μm以下の粒子が18.6個数%であり、粒径10.1μm以上の粒子が3.1体積%であるトナー粒子1を得た。得られたトナー粒子1表面の走査型プローブ顕微鏡で測定される平均面粗さ(Ra)は15nmであった。
【0168】
得られたトナー粒子100部に対し、脂肪酸金属塩1を0.10部及びヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体を1.5部(数平均一次粒子径:10nm)加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で周速40m/Sで240秒間混合を行う(混合工程1)。その後、60秒間休止する。更に、240秒間の混合工程を行った(混合工程2)。このようにして得られたトナーをトナー1とする。
【0169】
得られたトナーの表面張力指数は、6.3×10-3N/mであった。得られたトナー1の物性を表1に示す。
【0170】
<トナー2乃至17の製造>
トナー1の製造において、表1に示すように、脂肪酸金属塩の種類、含有量、離型剤部数、外添条件の混合時間、休止時間、混合工程数、周速を変更し、トナー2乃至17を得た。トナー2乃至17の物性を表1に示す。
【0171】
<トナー18の製造>
・結着樹脂(スチレン/アクリル酸ブチル/メタクリル酸/炭素原子数18個のアルキル
基を有するアクリル酸 = 78/20/1/1 Mw:266000 Mw/Mn:
30.2) 62.5部
・磁性体 35部
・ビスコール550P(三洋化成製) 1.5部
以上をヘンシェルミキサーFM20B(三井三池社製)にて混合した。その混合物を二軸混練押出機PCM30(池貝鉄工社製)にて加熱混練し、ジェットミル粉砕機IDS2型(日本ニューマティック工業社製)にて微粉砕を行い、気流分級機DS2型(日本ニューマティック工業社製)にて微粉をカットし、平均粒径8μmの粒子が得られた。
【0172】
この磁性体含有樹脂粒子に対し図1で示す表面平滑装置を用い、ヒータ温度350℃で処理した。その後外添処理として上記によってできたトナー母体と疎水性シリカ微粉体をヘンシェルミキサーFM20B(三井三池社製)にて混合し外添処理した。本発明では疎水化処理された無機微粉末に疎水性シリカを使用した。最後に振動ふるいにて凝集物を抽出しトナー18を得た。トナー18の物性を表1に示す。
【0173】
<トナー19の製造>
スチレンブチルアクリレート樹脂 100部
マグネタイト 60部
電荷制御剤(オリエント化学(株) N−01) 2部
以上を撹拌羽根を具備したミキサー等により均一分散する。池貝鉄工社製のPCM30により混練し、得られた塊をカッターミル等で粗粉砕し、その後ジェットミル粉砕機で細かく砕く粉砕、更に気流式分級機で分級して平均粒径10μmの磁性トナー粉末を得た。
【0174】
この磁性トナーを350℃の熱気流中に導入しトナー表面樹脂を溶融させ磁性体の露出を抑える処理を行った。熱気流中での処理時間(熱風中をトナーが通過する時間)は約0.1乃至4sec、供給量は1kg/h、熱気流を発生させる風量は風圧3kg/cm2G時で0.35m3/minで行った。
【0175】
この表面改質処理後に外添剤である疎水性シリカ1.5部と脂肪酸金属塩9を0.10部を外添処理し、磁性トナー19を得た。トナー19の物性を表1に示す。
【0176】
<トナー20の製造>
スチレンアクリル酸ブチル共重合体樹脂 (モノマー比82/18) 62.5部
磁性酸化鉄 35部
ポリプロピレン 1.5部
以上を撹拌羽根を具備したミキサー等により均一分散する。池貝鉄工社製のPCM30により混練し、得られた塊をカッターミル等で粗粉砕し、その後ジェットミル粉砕機で細かく砕く粉砕、更に気流式分級機で分級して磁性トナー粉末を得た。
【0177】
疎水性シリカ1.0部、ポリテトラフルオロエチレン0.2部をヘンシェルミキサーFM−20B(三井三池化工機社製)を用いて外添した後、熱風温度250℃、供給速度1kg/h、圧縮空気圧0.5kg/cm2、熱風量0.3m3で表面改質処理を行って磁性トナー20を得た。トナー20の物性を表1に示す。
【0178】
<トナー21の製造>
スチレンアクリルレジン(三洋化成工業(株)UNI3000) 100部
マグネタイト(戸田工業(株) MAT305) 70部
荷電制御剤(オリエント化学(株) N−01) 4部
以上の材料を粉体の状態で混合し、混練押出機で加熱しながらレジン中にマグネタイト、荷電制御剤を分散する。加熱混練した材料を冷やした後、粗粉砕、微粉砕をして数μmオーダーの微粒子とする。さらに風力分級機で分級し3乃至20μmの粒子径をもつ粉体のトナー粒子とした。
【0179】
上記トナー粒子100部に対して
疎水性シリカ微粉末(粒子径 10乃至20nm) 1部
(日本アエロジル(株) HVK2150)
炭化珪素微粉末(比重 5g/cm3) 0.5部
(フジミ研磨(株) WA#4000)
ステアリン酸亜鉛微粉末 0.3部
(堺化学工業(株) SZ−DFF)
を混合し、ヘンシェルミキサーで攪拌してトナー21を得た。トナー21の物性を表1に示す。
【0180】
【表1】

【0181】
<実施例1>
1.クリーニング性評価
本発明の磁性トナーの評価においては、より厳しい評価として低温低湿環境下(0℃/約15%RH)での試験を行った。低温環境ではクリーニングブレードが硬くなり、静電潜像担持体表面を安定して掻き取りにくい状況になる。中でも、クリーニングブレードを十分に冷やした後に間欠モードで画出しする場合ブレードに大きなトルクが掛かる為、最も厳しい。本発明の磁性トナーの評価ではその点を考慮して評価試験を行った。
【0182】
磁性トナー1を低温低湿環境下に24時間放置し、P1006(HP社製)を用いて印字率が4%の横線を7秒/枚の2枚間欠モードで1500枚画出し試験を行った。なお、記録媒体としてはA4の75g/m2の紙を使用した。カートリッジはP1006用カートリッジを改造してクリーニングブレードの線圧を2.5kgf/mから8.0kgf/mに調整したものを用いた。線圧が高いとクリーニングブレードが不規則に振動し易くなるため、クリーニングには厳しい評価となる。
【0183】
得られた横線の画像を目視で評価し、下記基準によってクリーニング性を判断した。なお、クリーニング不良が発生するとすり抜けたトナーがあるために、その部分は静電潜像担持体が帯電できず、黒スジが観察される。
【0184】
具体的な評価基準は次のようであった。
A:黒いスジは見られない。
B:画像上に軽微な黒スジが10枚以下観察される。
C:画像上に軽微な黒スジが11枚以上観察される。
D:画像上に軽微な黒スジ及び濃い黒いスジが観察される。
【0185】
評価結果を表2に示す。
【0186】
2.起動スジ評価
磁性トナー1を常温常湿環境下(23℃/60%RH)に24時間放置し、P1006(HP社製)を用いて印字率が4%の横線を7秒/枚の2枚間欠モードで1000枚画出し試験を行った。なお、記録媒体としてはA4の75g/m2の紙を使用した。カートリッジはP1006用カートリッジを改造してクリーニングブレードの線圧を2.5kgf/mから8.0kgf/mに調整したものを用いた。線圧が高いと静電潜像担持体とクリーニングブレードの間に滞留している外添剤がより強く静電潜像担持体に押し付けられ凝集が促進されるため、起動スジには厳しい評価となる。
【0187】
1000枚の通紙を行った後1晩置き、翌日に評価用のハーフトーン画像の出力を行った。さらに同様の通紙を1500枚目まで繰り返した後、最終的な評価用としてハーフトーン画像を出力した。さらに1500枚耐久終了後翌日朝一に評価用のハーフトーン画像の出力を行った。得られたハーフトーン画像において、起動スジが発生していないかを目視により確認した。
【0188】
起動スジは具体的には画像上に横方向にローラピッチの黒いスジが表れる。その評価基準は次のようであった。
A:認められない。
B:認められるが、極軽微で数枚の画像出力で消失。許容範囲内である。
C:認められる。消失まで多数枚の画像出力を要す。
D:明らかに認められる。
【0189】
評価結果を表2に示す。
【0190】
3.耐久現像性
磁性トナー1を常温常湿環境下(23℃/60%RH)に24時間放置し、P1006(HP社製)を用いて印字率が4%の横線を7秒/枚の2枚間欠モードで1500枚画出し試験を行った。なお、記録媒体としてはA4の75g/m2の紙を使用した。
【0191】
通紙耐久前後で、印字紙全面にベタ画像部を形成したチャートを1枚ずつ出力し、このベタ画像をマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して、反射濃度計にて測定を行った。原稿は画像比率5%のチャートを使用し、耐久後の画像濃度と耐久初期の画像濃度も合わせて評価した。
【0192】
○耐久前濃度の評価基準
ランクA:耐久前の反射濃度が1.55以上
ランクB:耐久前の反射濃度が1.50以上1.55未満
ランクC:耐久前の反射濃度が1.40以上1.50未満
ランクD:耐久前の反射濃度が1.40未満
【0193】
評価結果を表2に示す。
【0194】
○耐久後濃度の評価基準
ランクA:耐久後の反射濃度が1.40以上
ランクB:耐久後の反射濃度が1.35以上1.40未満
ランクC:耐久後の反射濃度が1.30以上1.35未満
ランクD:耐久後の反射濃度が1.20以上1.30未満
【0195】
評価結果を表2に示す。
【0196】
また、通紙耐久前後で白画像を3枚出力して、その反射率を東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC−6DSを使用して測定した。一方、白画像形成前の転写紙(標準紙)についても同様に反射率を測定した。フィルターはグリーンフィルターを使用し、下記式にてカブリを算出した。
カブリ(反射率)(%)=標準紙の反射率(%)−白画像サンプルの反射率(%)
【0197】
なお、カブリは得られたカブリ値の最大値を用いて以下の判断基準に従って評価した。
【0198】
○常温常湿環境下のカブリの評価基準
ランクA:非常に良好(0.2%未満)
ランクB:実用可能なレベル(0.2%以上0.5%未満)
ランクC:実用可能なレベル(0.5%以上1.5%未満)
ランクD:実用上好ましくないレベル(1.5%以上)
【0199】
評価結果を表2に示す。
【0200】
<実施例2乃至11>
トナーとして、トナー2乃至11を用いたこと以外は実施例1と同様に画出し試験を行った。その評価結果を表2に示す。
【0201】
<比較例1乃至10>
トナーとして、トナー12乃至21を用いたこと以外は実施例1と同様に画出し試験を行った。その評価結果を表3に示す。
【0202】
【表2】

【0203】
【表3】

【符号の説明】
【0204】
100:トナー供給口
101:熱風供給口
102:気流噴射部材
103:冷風供給口
104:第二の冷風供給口
106:冷却ジャケット
110:拡散エア
111:結露防止を目的とした気流供給口
112:複数の穴を持つ拡散部材
114:トナー
115:高圧エア供給ノズル
116:移送配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、磁性体及びワックスを少なくとも含有する磁性トナー粒子と脂肪酸金属塩を少なくとも有する磁性トナーにおいて、
(1)毛細管吸引時間法により計測され、下記式(1)により算出される、45体積%メタノール水溶液に対する前記磁性トナーの表面張力指数Iが、5.0×10-3N/m以上1.0×10-1N/m以下であり、
(2)前記脂肪酸金属塩は、体積基準におけるメジアン径(D50)が0.15μm以上0.65μm以下であり、
(3)前記脂肪酸金属塩の含有量が磁性トナー粒子100質量部に対し0.02質量部以上0.5質量部以下であることを特徴とする磁性トナー。
I=Pα/(A×B×106) 式(1)
I :磁性トナーの表面張力指数(N/m)
Pα:45体積%メタノール水溶液に対する磁性トナーの毛管圧力(N/m2
A :磁性トナーの比表面積(m2/g)
B :磁性トナーの真密度(g/cm3
【請求項2】
前記磁性トナーは、前記脂肪酸金属塩のトナー粒子からの遊離率が10.0質量%以上40.0質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁性トナー。
【請求項3】
走査型プローブ顕微鏡で測定される前記磁性トナー粒子表面の平均面粗さ(Ra)が1.0nm以上30.0nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁性トナー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−47980(P2011−47980A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193971(P2009−193971)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】