説明

磁性ナノ粒子組成物およびその使用

本発明は、いかなる細胞ターゲティング手段も有していない、組成物を調製するための、a)磁性物質を含むコアと;b)コアを囲んでおり、外殻の外径が約100nm未満である生体適合性外殻と、場合によってc)標識剤とを含む、外部の非振動磁場と組み合わせた生体適合性ナノ粒子またはナノ粒子集合体の使用に関する。さらに本発明は、癌治療のための、または診断における(例えば、画像診断)、腫瘍進展のモニタリングのための、このようにして得られた組成物、およびヒトの健康の領域におけるこれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、癌治療および腫瘍進展モニタリングのための放射性粒子の領域に関する。より具体的には、本発明は、生体適合性の磁性ナノ粒子を含む医薬組成物、前記組成物を調製するための方法、ならびに非振動磁場を使用した腫瘍進展のモニタリングのために、癌治療および画像診断においてこれらを使用するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
過去30年間に、主な進展がヒトの悪性腫瘍の診断および治療においてなされている。並行して、バイオテクノロジーおよびナノテクノロジーは、ヒトの治療に対して、新規なアプローチの開発のための手段を提供している。現在、化学療法は、多くの癌の治療に広く使用されている方法であるが、いくつかの明白な限界および不都合を有する。化学療法の主な不都合は、癌細胞の根絶をもたらすために使用できる薬物用量を厳格に制限する薬物毒性に関する。
【0003】
1950年以来、磁気プローブおよび粒子が潜在的な癌治療として調査されている。研究は、超周波(hyper frequency;HF)交流磁場と結合した磁性粒子によって発生した温熱は(相当な力を必要とする)(Grittnerら、1997,Hybridoma,16:109;Higlerら、1997,Invest.Radiol.,32:705)、癌治療の代替またはアジュバント治療として使用できることを実証している。温熱活性(hyperthermic activity)(磁性材料の緩和磁気エネルギーによって生産される熱)が、プローブまたは粒子を囲んでいる腫瘍組織を効果的に破壊することが示された。高い結晶化度を有する極小磁性粒子(強磁性流体)の開発は、磁気によって誘発される温熱療法における次のステップをもたらす。本治療は、粒子を組織に直接注射し、交番磁界に曝露させると、腫瘍サイズの減少を生じさせた。しかし、この種の治療を使用すると、放射線と組織との間の潜在的相互作用による副作用を排除することができない。
【0004】
さらに、HF装置(現在、ヘルスケアシステムにおいて存在しない。)の費用および利用可能性の低さは、治療におけるこれらの使用を制限している。
【0005】
癌細胞への化学療法物体の特定のターゲティングは、研究のもう1つの領域である(Schallyら、1999,J.Endocrinol.,141:1;Nagyら、1996,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,93:7269;Emonsら、1993,J.Clin.Endocrinol.Metab.,77:1458)。標的特異的療法のアプローチは、新規な抗癌アプローチとしてのナノクリニック(nanoclinics)の概念を実証するためにナノテクノロジーと組み合わされた。US6514481は、ターゲティング作用物質としてLH−RHを含む磁性酸化鉄粒子により標的とされた、選択的LH−RH受容体陽性癌細胞のマグネトサイトリシス(magnetocytolysis)を生じさせる非振動磁場の使用について記載している。Bergeyら(Biomedical Microdevices 4:4,293−299,2002)およびLevyら(Chem.Mater.2002,14,3715−3721)は、そのようなナノクリニックの選択的ターゲティング作用を支持しただけでなく、LH−RHの受容体を欠く対照細胞が、結合または蓄積またはナノクリニックを示さず、したがって磁場に対する曝露に感受性がないことを特定した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このアプローチは、特定の腫瘍の細胞型を破壊するために有効であるが、前記の特定の細胞型を標的とするように設計されたナノクリニックの費用および時間のかかる調製を必要とする。1種類の粒子は、実際に1種類の癌細胞のみに使用可能である。したがって、複数のナノ粒子および開発が、異なる癌に対処するために必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、治療または診断用磁性物質、好ましくは強磁性物質のコアが、生体適合性物質から成る外殻で場合によって囲まれたナノ粒子を、いかなる細胞ターゲティング作用物質も有していなくても、医薬組成物または診断用組成物に使用できることを今や発見した。これらのナノ粒子は、本明細書では「非標的」ナノ粒子と呼ぶ。
【0008】
本発明は、一般に、さまざまな生物学的および治療的用途のための組成物を調製するための生体適合性の磁性ナノ粒子、好ましくは強磁性ナノ粒子の使用に関し、さらにそれに関連する方法に関する。
【0009】
本明細書では、本発明者らは、治療上の使用または腫瘍進展モニタリングのための「ナノセラピューチック(nanotherapeutic)」、「ナノバイオドラッグ(nanobiodrug)」、「ナノクリニック(nanoclinic)」、「ナノ粒子」または「ナノバブル(nanobubble)」と呼ばれているナノサイズ(約100nm未満)の粒子を含む新規な組成物を提供する。
【0010】
本発明者らは、より具体的には、療法において癌を予防または治療するために使用することができるか、または診断において(例えば、インビボの画像診断において)、腫瘍進展(増殖または退縮)をモニタリングするために使用することができる、磁性ナノ粒子、好ましくは強磁性ナノ粒子を含む新規な組成物を提供する。
【0011】
前述のとおり、ナノ粒子は、治療または診断用磁性物質のコアが、生体適合性物質から成る外殻で場合によって囲まれている。本ナノ粒子は、標識剤を場合によって含む。
【0012】
これらのナノ粒子の特定の特徴は、任意の細胞ターゲティング作用物質、すなわち、標的細胞(例えば、癌細胞、または腫瘍細胞であることが疑われる細胞)との相互作用(または、標的細胞による取り込み)を促進することが可能な任意の作用物質を有していないナノ粒子である。そのような細胞ターゲティング作用物質は、一般に、標的細胞に特異的に結合する作用物質である。
【0013】
療法において、癌を予防または治療するための医薬組成物を調製するために、ナノ粒子を外部磁場と組み合わせて本発明において使用することが好ましい。
【0014】
したがって、本発明によって提供される医薬組成物は、いかなる細胞ターゲティング作用物質も有しておらず、a)磁性物質、好ましくは強磁性物質を含むコアと、場合によってb)コアを囲んでおり、外径が、生体適合性担体と関連して、約100nm未満、好ましくは約50nm未満である、生体適合性層とを含むナノ粒子を含む。
【0015】
癌細胞などの標的細胞の選択的破壊の方法を、特に本明細書において記載する。磁気コアを有するナノクリニックへの細胞の曝露と同時に、腫瘍は、ナノクリニックを結合しおよび/または内部に取り入れる。非振動または安定磁場のその後の印加は、標的細胞を特異的に破壊することができる。
【0016】
画像診断において、任意の細胞ターゲティング作用物質の非存在下で、癌細胞、癌組織または癌器官の検出または可視化を目的とするモニタリング用組成物を調製するために、本発明においてナノ粒子を、好ましくは前述のように外部磁場と組み合わせて使用する。
【0017】
したがって、本発明は、腫瘍増殖または退縮をモニタリングするのに有用な診断用組成物をさらに提供する。また、いかなる細胞ターゲティング作用物質も有していないこれらの組成物は、a)磁性物質、好ましくは強磁性物質を含むコアと;場合によってb)コアを囲んでおり、外径が、生体適合性担体と関連して、約100nm未満、好ましくは約50nm未満である、生体適合性外殻と、c)標識剤とを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
「ナノセラピューチック」、「ナノバイオドラック」、「ナノバブル」、「ナノ粒子」、「ナノクリニック」という用語またはその複数形は、互換的に使用され、本明細書の目的のために、治療または診断用物質の中心のコアと;場合によって中心のコアを囲んでいる外殻と;場合によって標識剤とを有する、いかなる細胞ターゲティング作用物質も有していない、直径約100nm未満の生体適合性粒子または粒子集合体を意味する。
【0019】
「磁性ナノ粒子」、「ナノMAG」、「磁性作用物質」または「磁性物質」という用語は、互換的に使用され、本明細書では、生体適合性被膜を場合によって含み、外部磁場源に曝露すると、治療効果をもたらす物理的回転を意味する選択的配向をとる、磁性の、特に強磁性のエネルギー感受性非標的粒子または粒子集合体を指す。
【0020】
本明細書では、「磁性ナノ粒子組成物」という用語は、磁性ナノ粒子、好ましくは強磁性ナノ粒子および適切な媒質を含む、いかなる細胞ターゲティング作用物質も有していない組成物を指す。
【0021】
本明細書では、「治療」という用語は、特に腫瘍のサイズまたは増殖の減少、病的細胞または組織の除去または破壊、癌の進行の減速または安定化、転移の形成の減少、退縮または完全寛解などのような病理学的徴候の任意の改善を指す。
【0022】
本発明による粒子は、インビトロ、インビボまたはエキソビボにおいて外部磁場と組み合わせて細胞、組織または器官を標識し、劣化させ、または破壊することができる。本発明による粒子および前記粒子を含む組成物を、任意の哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、表面または深部のいずれかで、任意の種類の組織に対して使用することができる。
【0023】
本発明の目的は、いかなる細胞ターゲティング手段も有していない、癌を予防または治療するための医薬組成物の製造のための、
a)磁性物質、好ましくは強磁性物質を含むコアと;場合によって
b)コアを囲んでおり、外径が約100nm未満、好ましくは約50nm未満である生体適合性外殻と;場合によって
c)磁性物質または生体適合性層に結合することができる標識剤と
を含む、外部磁場と組み合わせた生体適合性ナノ粒子またはナノ粒子集合体の使用に関する。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、いかなる細胞ターゲティング手段も有していない、癌細胞、癌組織または癌器官の検出または可視化を目的とするモニタリング用組成物の製造のための、
a)磁性物質、好ましくは強磁性物質を含むコアと;場合によって
b)コアを囲んでおり、外殻の外径が約100nm未満、好ましくは約50nm未満である生体適合性外殻と;
c)磁性物質または生体適合性層に結合することができる標識剤と
を含む、外部磁場と組み合わせた生体適合性ナノ粒子またはナノ粒子集合体の使用に関する。
【0025】
本発明に有用な生体適合性の磁性粒子は、マクロファージによって(食菌作用によって)捕獲されることなく細胞に入るために(エンドサイトーシスのプロセスによって)、組織に拡散できるようにサイズが十分小さく、37℃で印加された磁場に反応するのに十分大きい必要がある。したがって、直径200nm未満、好ましくは約100nm未満、または直径約10nmから約100nm未満の範囲の粒子、さらにより好ましくは直径50nm未満の粒子が本発明に適している。本発明に有用な好ましい粒子は、約10から約50nmの間の直径を有する。磁気コアは、治療および診断効果をもたらすための磁気特性、特に強磁性の特性を示すために十分大きくなければならない。
【0026】
ナノ粒子は、異なる形状を有することができる。例えば、これらは円形、扁平、伸張形、球状、楕円形などであり得る。形態は、製造プロセスによって決定または制御することができ、印加される磁場および必要とされる適用に従って、当業者によって適合させることができる。粒子の形状は、これらの特性に対して(特に、磁気特性に対して)影響を及ぼすことができる。形状は、粒子の「生体適合性」および体内分布に影響することができる。したがって、薬物動態の理由のために、および望ましくない相互作用を避けるために、本質的に球状または円形形状のナノ粒子またはナノ粒子集合体が好ましい。さらに、いくぶん均一な形態のナノ粒子またはナノ粒子集合体が好ましい。
【0027】
本発明で使用可能なナノ粒子は、生体適合性でなければならず、すなわち、生物、典型的に哺乳動物、好ましくはヒトに投与すると、いかなる有害作用も誘発すべきではない。この生体適合性の特性は、例えば、粒子で構成される化合物の性質および/または存在する場合は被膜の性質によって保証される可能性がある。
【0028】
コアを形成している物質は、少なくとも1種の磁性物質、好ましくは強磁性物質を含む1種または複数の治療または診断用磁性物質であり得る。そのような物質は、好ましくは酸化物、水酸化物またはその金属、およびその任意の混合物の形態の、鉄、ニッケル、コバルト、ガドリニウム、サマリウム、ネオジム、ホウ素、アルミニウムを含む。好ましい実施形態において、磁気コア物質は、金属物質、好ましくは強磁性物質、さらにより好ましくはモノドメイン強磁性物質である。具体例としては、コアを形成している物質は、酸化第一鉄および酸化第二鉄から成る群から選択される。混合物質を、磁場とナノ粒子の間の相互作用を最適化するために使用することができる。例えば、CoFeなどの固溶体形態(いくつかの物質のランダムな混合物として当業者に周知である。)を混合物質として使用することができる。例えば、Fe/Coなどの分離した(demixed)相における固溶体を、さらに使用することができる。
【0029】
上記のように、本発明において使用されるナノ粒子またはナノ粒子集合体は、外殻を場合によって含む。そのような被膜は、有利にはインビボにおいて粒子の完全性を保ち、これらの生体適合性および特定の体内分布を保証または改善することを可能にする。
【0030】
生体適合性外殻は、任意の無定形または結晶性物質から製造することができる。一般的に、被膜は、非生物分解性または生物分解性であり得る。非生物分解性の被膜は、修飾または非修飾(例えば、ポリスチレン)のシリカ(SiO)、金(Au)、アガロース、アルミナ(Al)、飽和炭素ポリマーおよび無機、直鎖または分枝のポリマーから選択することができる。生物分解性の被膜は、例えば、修飾されているか、修飾されていなくてもよい、天然または人工の生体分子から選択することができる。これは、自然の形態もしくは非自然の形態の修飾もしくは非修飾の生体分子からできたポリマー、またはポリ硫酸化もしくは非ポリ硫酸化(例えば、デキストラン)の、糖類、オリゴ糖、多糖類などの生体ポリマーであることができる。したがって、記載した物質または化合物は、単独で、混合物または集合体、複合物または非複合物として、共有結合または非共有結合で、場合によって他の化合物と組み合わせて使用することができる。さらに、ヒドロ化または脂溶性の天然または人工的様式の任意の上記の物質を使用することができる。生体適合性物質は、シリカ(SiO)アルミナ(Al)、ポリエチレングリコール(PEG)およびデキストランから好ましくは選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
標識剤(また、本明細書では「標識色素」とも称する。)を、ナノ粒子を追跡するために場合によって使用する。この標識剤を、ナノ粒子のコアを形成している磁性物質または存在する場合は生体適合性層に結合させることができる。標識剤を、生体適合性層の内部に含めるか、またはナノ粒子の表面に結合させることができる。標識剤を、蛍光マーカー誘導体、化学物質色素、超音波造影剤、X線造影剤および磁気共鳴映像法造影剤から成る群から選択することができる。
【0032】
標識色素は、いずれかの蛍光色素であってもよい。例としては、赤外線範囲における励起波長を有する色素がある。適切である二光子色素についての記述は、米国特許第5912247号に見られる。
【0033】
本発明において、ナノ粒子は、その安定性、特性、機能、特異性などを改善することを目的とする他の分子、化合物、または表面もしくは構造物質を含むことができる。ナノ粒子の生体適合性を確実にし、または向上させる分子、または免疫系からナノ粒子が逃れること(特に、マクロファージおよび細網内皮系との相互作用を逃れること)を可能にする分子であることができる。しかし、前記ナノ粒子は、任意の特異的な細胞ターゲティング作用物質を有していない。
【0034】
一実施形態において、本発明で使用されるナノ粒子は、FeまたはFeから形成されたコア、場合によって標識剤として光プローブ、および好ましくは生態適合性外殻としてシリカ外殻を含む構造である。磁気コアの好ましいサイズは、約20nmである。シリカ外殻が磁気コアを安定化させることが考慮される。
【0035】
本発明において使用可能なナノ粒子を調製するための典型的方法は、
a)前述の群から選択された物質を用いて、例えば、酸化第一鉄および酸化第二鉄を用いて磁性コア、好ましくは強磁性コアを形成するステップと;好ましくは
b)コアの周りに生体適合性外殻、例えば、外径が約100nm未満、好ましくは50nm未満であるシリカ外殻を形成するステップとを含む。
【0036】
磁気コアを有する粒子を、実施例1に記載したような2つのステップのプロセスを使用して合成することができる。
【0037】
本発明において使用可能なナノ粒子の製造に使用可能な物質の製造の代替法は、例えば、US6514481 B1,Nelsonら、Chem.Mater.2003,15,688−693“Nanocrystalline Y2O3:Eu Phosphors Prepared by Alkalide Reduction”またはLiuら、Journal of Magnetism and Magnetic Materials 270(2004)1−6“Preparation and characterization of amino−silane modified superparamagnetic silica nanospheres”に記載されている。
【0038】
本発明の教示から、当業者は、非標的磁性ナノ粒子を本発明の精神から逸脱することなく変更することが可能なことを認められよう。
【0039】
本発明の別の目的は、すでに定義されたおよび/またはすでに記載されたプロセスのいずれかによって得ることができる生体適合性非標的磁性ナノ粒子またはナノ粒子集合体を含む任意の組成物にある。
【0040】
必須ではないが、本発明の組成物のナノ粒子は、いくぶん均一な形態およびサイズを有する。組成物は、固体または液体形態(懸濁されたナノ粒子)、ペースト、エーロゾルなどの形態であることができる。
【0041】
特定の実施形態において、本発明は、a)磁性物質を含むコア、好ましくは強磁性物質、例えば、酸化第一鉄および酸化第二鉄でできたコアと、好ましくはb)コアを囲んでおり、外径が、生体適合性担体と関連して、約100nm未満、好ましくは約10nmから約50nmの間である生体適合性外殻を含む、好ましくは治療有効量の上記の定義のようなナノ粒子を含む、いかなる細胞ターゲティング作用物質も有していない医薬組成物を提供する。
【0042】
治療有効量は、約0.01mgから約100mg/腫瘍gの間、好ましくは約0.05mgから約30mg/腫瘍gの間、さらにより好ましくは約0.05mgから約10mg/腫瘍gの間であり得る。腫瘍のサイズおよび重量を、画像診断MRIまたはスキャナーを使用して推定および算出することができる。
【0043】
さらなる実施形態において、本発明は、a)磁性物質を含むコア、好ましくは強磁性物質、例えば、酸化第一鉄および酸化第二鉄でできたコアと、好ましくはb)コアを囲んでおり、外径が、生体適合性担体と関連して、約100nm未満、好ましくは約10nmから約50nmの間である生体適合性外殻と、c)標識剤とを含む、好ましくは診断上の有効量の上記の定義のようなナノ粒子を含む、いかなる細胞ターゲティング作用物質も有していない診断またはモニタリング用組成物を提供する。
【0044】
この診断またはモニタリング用組成物を、医薬組成物と混合するか、または特にモニタリングと治療が同時に実現するとき、医薬組成物に取り入れることができる。後者の状況において、同一のナノ粒子を、一般に治療および診断の手段として使用する。
【0045】
診断またはモニタリング用組成物を調製するために使用するナノ粒子の量は、治療効果をもたらすために使用するナノ粒子の量に依存する。
【0046】
賦形剤または担体は、例えば、生理食塩液、等張液、無菌液または緩衝液など、この種の適用のための任意の非常に通常の支持体であり得る。これらはさらに安定化剤、甘味料および/または界面活性剤などを含むことができる。これらは、これ自体知られた製剤学の技術を使用することによって、アンプル、フラスコ、錠剤またはカプセルの形態に調合することができる。
【0047】
本発明の組成物、ナノ粒子および集合体は、多くの分野の特にヒトまたは動物医学において使用することができる。
【0048】
磁場に曝露されると、さらに曝露の持続時間によって、磁性ナノ粒子は、細胞もしくは組織の破壊(数分の持続時間、例えば、2分または5分から120分)または単純にそのモニタリングもしくは可視化を可能にする(画像診断、診断)(数秒または数分、特に1秒から120分、好ましくは1分から60分、例えば10秒から10分の持続時間)。特に、モニタリングを、治療時間中に記録することができる。
【0049】
スキャナー、マンモグラフィー、PET、光超音波(optical ultrasound)など他のイメージング様式を、ナノ粒子を可視化するために使用することができ、診断および/または腫瘍経過観察の目的でイメージングを提供することができる。
【0050】
磁場を使用して、本発明の粒子を、身体の任意の組織のスキャニングに適用できる。
【0051】
本発明のナノ粒子またはナノ粒子集合体および組成物を、磁場にかけると、癌細胞または癌が疑われる細胞の溶解に有利に使用することができる。
【0052】
したがって特定の実施形態において、本発明は、いかなる細胞ターゲティング手段も有していない、癌細胞などの細胞を破壊するための、特に癌を予防または治療するための医薬組成物の製造のための、
a)磁性物質、好ましくは強磁性物質を含むコアと;場合によって
b)コアを囲んでおり、外殻の外径が約100nm未満、好ましくは約50nmまたは約50nm未満である生体適合性外殻とを含む、外部磁場と組み合わせた生体適合性ナノ粒子またはナノ粒子集合体の使用に関する。
【0053】
本発明は、さらに
a)本発明による医薬組成物および前述の医薬組成物を、前記医薬組成物に含まれるナノ粒子またはナノ粒子集合体に結合し、および/または内部に取り入れるために腫瘍細胞にとって十分な時間、腫瘍細胞と接触させるステップと;
b)曝露がナノ粒子に結合し、および/または内部に取り入れられている腫瘍細胞のアポトーシス、壊死または溶解を引き起こす、非振動または安定磁場に細胞を曝露させるステップと
を含む、インビトロ、エキソビボまたはインビボにおいて腫瘍細胞のアポトーシス、壊死または溶解を誘発または引き起こす方法に関する。
【0054】
いかなる特定の理論にも束縛されることを意図していないが、本出願の実験の部分に詳細に記載されているデータは、細胞溶解の推定メカニズムが、細胞破壊につながる物理的ストレスまたは局所破壊を誘発する領域での磁性ナノ粒子の物理的配向(physical orientation)である可能性を示唆している。本発明は、これらナノクリニックの磁気細胞溶解(magnetocytolytic)能力(細胞溶解)を実証している。
【0055】
本明細書で示したエビデンスは、これらのナノクリニックが癌細胞と相互に作用し、高い浸透性および留保性(Enhanced Permeation and Retention;EPR)効果として知られる現象を通して固形腫瘍を囲んでいる漏出性の血管系から逃げることによって、腫瘍に集中することを示唆している。腫瘍組織は、漏出性の血管系を有し、正常組織と比較してリンパ管が減少していることが実際に知られている。この現象は、腫瘍中のナノスケールの粒子の受動的蓄積を生じる。
【0056】
以前に説明されたように、破壊される細胞は、任意の哺乳動物、特にヒトの任意の癌細胞であり得る。癌細胞は、好ましくは大腸癌細胞、乳癌細胞、卵巣癌細胞、膵癌細胞、腎臓癌細胞、膀胱癌細胞、食道癌細胞、脳腫瘍細胞、肝臓癌細胞、子宮体癌細胞、前立腺癌細胞および膵癌細胞から成る群から選択される。
【0057】
本発明のもう1つの目的は、(a)組成物に含まれるナノ粒子またはナノ粒子集合体が癌細胞に接触または浸透することを可能にする条件下における、前述の定義のような本発明の組成物の癌を患う患者への投与と、(b)患者の癌細胞の変性、障害または機能的破壊をもたらし、したがって患者の癌を治療する、前述の説明のような磁場への患者の曝露とを含む癌を安定化または治療する方法に関する。
【0058】
上記の方法は、転移しているか、または転移していないかに関わらず、任意の癌種の、特に固形腫瘍を治療するために使用可能である。本発明による磁性ナノ粒子を使用して安定化または治療することができるヒトの悪性腫瘍は、大腸、肝臓、肺、腎臓、膀胱、頭頚、脳、皮膚、腸、乳房、卵巣、子宮内膜、前立腺、膵臓の癌などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0059】
前述のような本発明によるナノ粒子または組成物を、さまざまな方法、好ましくは注射によって投与することができる。注射は、腫瘍内の局所的な濃縮を確実にし、治療効果を最大にするために局部[例えば、腫瘍内(IT)または腫瘍周囲]、またはEPR効果を通して腫瘍におけるナノ粒子の受動的蓄積を可能にするために全身[例えば、静脈内(IV)]であり得る。また、投与を経口方法で実現することができる。反復注射または投与を、必要に応じて考慮することができる。
【0060】
非振動または安定していることが望ましい磁場を、任意の磁場源を使用することにより、1回または複数回、ナノ粒子の最初の投与後に常に印加することができる。磁場による各活性化のあとに、本発明によるナノ粒子または組成物の1回または複数の投与を行うことができる。
【0061】
磁場源は、好ましくは均一および一方向性の磁場源であり、任意の永久磁石、電磁石および磁気共鳴映像法(MRI)装置から選択することができる。適切な非振動または安定磁場は、0.5から5テスラの範囲の磁場を典型的に有する、標準のMRI装置で利用可能である。
【0062】
治療または診断を実施するために、腫瘍細胞を、前述のように、本発明によるナノ粒子またはナノ粒子集合体に曝露させる。ナノ粒子またはナノ粒子集合体を、1回または複数回、好ましくは1回投与することができる。ナノ粒子またはナノ粒子集合体を、数回(例えば、2、3、4または5回)投与するとき、少なくとも1週間の間、好ましくは2週間定期的に投与することができる。腫瘍細胞によるナノ粒子またはナノ粒子集合体の結合および/または内在化後、患者は、磁場、好ましくは非振動または安定磁場に曝露される。
【0063】
診断目的のために、本発明の組成物は、前述の説明のように、任意のタイプの癌組織を検出および/または視覚化するための造影剤または診断用作用物質(モニタリング用組成物)としても利用可能である。
【0064】
したがって、本発明の目的は、細胞、組織もしくは器官の検出もしくは視覚化、または病状の進展のモニタリングを意図した組成物の製造のための、磁場と組み合わせた前述のようなナノ粒子またはナノ粒子集合体の使用に関する。
【0065】
「組み合わせた」という用語は、部分的に取り込まれた本発明のナノ粒子を有する対象の細胞、組織または器官が磁場によって刺激されると、必要な効果が得られることを示す。しかし、前述の説明のように、治療の状況では、粒子および磁場を同時に管理する必要も、同一のプロトコールに従って管理する必要もない。
【0066】
そのような組成物を治療ステップの間に使用することができる。
【0067】
療法または診断で適用される磁場は、0.5から7テスラの範囲、好ましくは0.5から5テスラの範囲である。典型的に、MRI装置を、1.5テスラ磁場でのナノ粒子の刺激を提供するために使用することができる。適切な時に(体内分布が良好な治療活性のために適切であり、潜在的な副次的損傷を最小化するために適切である時に)、本発明のナノ粒子または組成物の単回または反復投与後、磁場を、1週または数週間(好ましくは、1、2、3または4週間)、1回または複数回かけることができ、好ましくは1日または2日ごとにかける。活性化の数は、好ましくは5以下[例えば、1、2、3、4または5回の活性]であり、典型的に治療で30分から90分、診断で10秒から60分持続させる。
【0068】
前述のプロトコールを、必要に応じて時間中に繰り返すことができる(例えば、毎月、または2、3、4、5もしくは6カ月ごと)。
【0069】
本発明は、以下の実施例によりよく理解されるはずであるが、これらは例示するものであって、制限を意図するものではない。
(実施例)
【実施例1】
【0070】
磁気コアを有する粒子を、2つのステップのプロセスを使用して合成する。析出ステップを、窒素雰囲気および機械撹拌下、反応器中における塩化第一鉄(60mmol)および水酸化ナトリウム(120mmol)の水溶液の同時注入によって達成する。次に、得られた水酸化鉄溶液を、反応器中における過酸化水素の注入によって直接酸化する。酸化ステップの間、反応原体を、水酸化ナトリウム溶液を充填した自動ビュレットを使用してpH8に維持する。このすべてのプロセスの間に、pH、温度、および水酸化ナトリウムの添加容量を、pH−メータに接続したコンピュータによって記録する。溶液を、過酸化水素注入終了後に2時間インキュベートする。次に、得られた5g粒子(直径30nm)を、蒸留水中における遠心によって洗浄し、水酸化テトラメチルアンモニウム1.2mMの添加によって安定化させる。
【0071】
磁気コアを、例えば、シリカ外殻などの外殻でさらに被覆することができる。この目的のために、最初のシリカ含浸を、粒子溶液にケイ酸ナトリウムを加えることよって達成する(240mL蒸留水中の1g粒子に対して780μL)。残留するケイ酸ナトリウムを、水に対する遠心によって除去する。粒子125mgを、テトラエチルオルトシリケートの0.6mmolを含む水/エタノール溶液(1/4)に分散させる。シリカ前駆体の加水分解および縮合を、原体中にアンモニア溶液を注入することによって高める。溶液を、蒸留水中での遠心により粒子を洗浄する前に、終夜インキュベートする。被覆粒子を、水中において保持する(pHを約7.4に調整する。)。図1は、非標的ナノMAGの透過型電子顕微鏡の写真を表す。
【実施例2】
【0072】
本実施形態は、健常なオスおよびメスのC57BL/6マウス、ならびに健常なオスおよびメスのスイスヌードマウスにおける非標的磁性ナノ粒子(非標的ナノMAG)の最大耐量(MTD)を検証する。
【0073】
最大耐量(MTD)実験を、健常なオス12匹および健常なメス12匹のC57BL/6マウス、ならびに健常なオス3匹および健常なメス3匹のスイスヌードマウスに対して実施した。これらに、本発明者らによって選択された異なる容量で、ナノMAG賦形剤および非標的ナノMAG組成物の単回IVボーラス注射を実施した。忍容性試験を、以下の表1に記載のように実施した。
【0074】
【表1】

【0075】
体重、毒性の臨床徴候および生存を週2回記録した。体重の25%減少および/または動物の死亡を、毒性の判定基準と考慮した。
【0076】
図2は、非標的ナノMAG組成物の漸増用量(0.006から0.06mg/マウスの範囲)の投与後1カ月間におけるマウスの体重に及ぼす非標的ナノMAG組成物のいかなる影響も示していない。マウス系統およびマウスの性に対する依存性は認められない。マウスの屠殺および肉眼による剖検は、毒性の徴候を示さなかった。
【実施例3】
【0077】
本実施形態は、単回IV注射後の非標的磁性ナノ粒子(非標的ナノMAG)に対する健常なマウスの忍容性を実証する。
【0078】
3.1材料
非標的ナノMAG組成物:3g非標的ナノMAG組成物/Lおよび6g非標的ナノMAG組成物/L
健常なオスのC57BL/6マウス6匹
3.2処理
投与経路:IV、ボーラス
注射容量:300μl/マウス/注射
処理用量:0.90および1.80mgの非標的ナノMAG組成物/マウス/注射
処理スケジュール:Q1D×1
0.90および1.80mg/非標的ナノMAG組成物/マウスの単回注射を含む忍容性試験を、以下の表2に記載のように達成した。
【0079】
【表2】

【0080】
群2は、群1が非標的ナノMAG組成物0.90mg/マウス/注射用量に忍容性を示した場合に限り注射した。
【0081】
3.3マウスのモニタリング
体重を週2回10日間記録した。
【0082】
生存率および行動を毎日記録した。
【0083】
マウスの屠殺および剖検を、最終の注射の10日後に達成した。
【0084】
忍容性試験は、マウスの体重に対する非標的ナノMAG組成物の影響がないことを実証した(図3)。
【実施例4】
【0085】
本実施形態は、反復注射後の非標的磁性ナノ粒子(非標的ナノMAG)に対する健常なC57BL6およびスイスマウスの忍容性を実証している。
【0086】
実施例2−3に記載の実験と同様な実験を、非標的ナノMAGの反復投与後に達成している。非標的ナノMAG組成物を5回静注(0.12mg/マウス)した前後にマウスの体重を測定した(図4参照)。活性化後のナノ粒子の安全性を検証するために、何匹かのマウスを磁場(MRI)にかけて、ナノ粒子を活性化した。対照マウスの体重とMRIにかけたマウスの体重との間に差は認められなかった。さらに、動物の屠殺および剖検は、毒性の徴候を示さなかった。
【実施例5】
【0087】
本実施形態は、C38大腸腫瘍を有するメスのC57BL6マウスにおいて非標的ナノMAG組成物の有効性を実証する。
【0088】
非標的ナノMAG組成物(1.5g/L)を、C57BL6マウスの有するC38腫瘍に直接注射した。動物を、注射の20時間後に1時間磁場(MRI)にかけ、次に非標的ナノMAGを注射し、活性化していない動物と比較した。図5は、活性化動物における腫瘍増殖の減少を示している。
【実施例6】
【0089】
本実施形態は、単回腫瘍内(IT)注射後、およびIT注射と磁場曝露との間の異なる遅延状況下で、C38腫瘍を有するC57BL6オスマウスのモデルにおける、磁場によって活性化された非標的ナノMAGの抗腫瘍活性化を評価する。
【0090】
処理日(D0)に、腫瘍を有するC57BL/6オスマウス50匹中/26匹を、5群に無作為に割り付けた(1群がマウス6匹、および4群がマウス5匹)。群の平均腫瘍容量に相違は見られなかった(分散分析)。処理スケジュールは、以下のように本発明者らによって選択された。
【0091】
群1:マウス5匹にNaCl 0.9%溶液の単回IT注射を実施した(処理スケジュールQ1D×1)。
【0092】
群2:マウス6匹に非標的ナノMAG0.75mg/腫瘍mlで非標的ナノMAGの単回IT注射を実施した(処理スケジュールQ1D×1)。
【0093】
群3:マウス5匹に非標的ナノMAG0.75mg/腫瘍mlで非標的ナノMAGの単回IT注射を実施した(処理スケジュールQ1D×1)。次にマウスを、非標的ナノMAGのIT注射の5時間後、4.7テスラの磁場に1時間かけた。
【0094】
群4:マウス5匹に非標的ナノMAG0.75mg/腫瘍mlで非標的ナノMAGの単回IT注射を実施した(処理スケジュールQ1D×1)。次にマウスを、非標的ナノMAGのIT注射の20時間後、4.7テスラの磁場に1時間かけた。
【0095】
群5:マウス5匹に非標的ナノMAG0.75mg/腫瘍mlで非標的ナノMAGの単回IT注射を実施した(処理スケジュールQ1D×1)。次にマウスを、非標的ナノMAGのIT注射の48時間後、4.7テスラの磁場に1時間かけた。
【0096】
処理スケジュールを以下の表3において要約する。
【0097】
【表3】

【0098】
磁場へのマウスの曝露および活性化を、以下の表4に記載のように実施した。
【0099】
【表4】

【0100】
体重、毒性の臨床徴候および生存を週2回記録した。体重の15−20%減少および/または動物の死亡を、毒性の判定基準と考慮した。
【0101】
この経験は、対照と処理動物との間に体重差がないことを示した(図6参照)。
【0102】
腫瘍の長さおよび幅をノギスで測定し、腫瘍容積を式(幅×長さ)/2により推定した。処理の有効性を、非処理のマウスと比較した処理マウスの腫瘍容量に対する活性化された非標的ナノMAGの効果に関して評価した。腫瘍増殖をモニタリングし、図7に表す。腫瘍の増殖は、マウスを、注射の48時間後に活性化した非標的ナノMAGで処理する場合に減少する。
【0103】
図8は、注射48時間後のNaCl0.9%(a)またはナノMAG(b)で腫瘍内注射した、C38腫瘍を有するマウスのMRI写真を示す。ナノMAGは、インビボで検出可能で、特異性およびコントラスト増強につながる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】シリカで被覆された酸化鉄ナノ粒子のTEM写真である。
【図2】非標的ナノMAG組成物/マウスのナノ粒子0.006から0.06mgの漸増用量の注射後の、C57BL6マウスの体重進展の図である。図1は、非標的ナノMAG組成物の投与後の月間に、非標的ナノMAG組成物のマウス体重に及ぼす影響がないことを示している。
【図3】非標的ナノMAG組成物/マウスの0.9および1.8mgの単回注射後の、C57BL6マウスにおける体重進展の図である。図2は、非標的ナノMAG組成物のマウス体重に及ぼす影響がないことを示している。
【図4】非標的ナノMAG組成物の5回の静注前後の(0.12mg/マウス)、C38腫瘍を有するマウスの体重の図である。対照マウスの体重とMRIにかけたマウスの体重との間に差は認められない。
【図5】非標的ナノMAGを注射し、活性化していない動物と比較した、注射20時間後に1時間、磁場にかけた非標的ナノMAGを注射したC57BL6マウスにおけるC38腫瘍増殖の減少の図である。
【図6】対照と処理動物との間に差が現れない、NaClの注射、または非標的ナノMAGの注射および5、20もしくは48時間後の活性化後の、C57BL6マウスにおける体重進展の図である。
【図7】無処理のマウスと比較した、活性化した非標的ナノMAGで処理したマウスの腫瘍容積の図である。腫瘍の増殖は、注射の48時間後に活性化した非標的ナノMAGで処理したマウスにおいて減少した。
【図8】(a)NaCl0.9%溶液の単回IT注射後、および(b)ナノMagの単回IT注射の48時間後のC38腫瘍を有するマウスのMRI写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
いかなる細胞ターゲティング手段も有していない、癌を予防または治療するための医薬組成物の製造のための、
a)強磁性物質を含むコアと;
b)前記コアを囲んでおり、外径が約100nm未満である生体適合性外殻と
を含む、外部の非振動磁場と組み合わせた生体適合性ナノ粒子またはナノ粒子集合体の使用。
【請求項2】
前記強磁性物質が鉄、ニッケル、コバルト、ガドリニウム、サマリウム、ネオジム、ホウ素、アルミニウムおよびその任意の混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記強磁性コア物質が酸化物、水酸化物または金属の形態である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記強磁性物質がモノドメイン強磁性物質である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記磁性コア物質が酸化第一鉄および酸化第二鉄から成る群から選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記生体適合性外殻が、シリカ、金、アルミナ、砂糖、PEGおよびデキストランから成る群から選択された物質からできている、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記外殻の外径が約10nmから約100nm未満の間である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記外殻の外径が約10nmから約50nmの間である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記ナノ粒子が、磁性物質に結合した標識剤をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記ナノ粒子またはナノ粒子集合体が本質的に球状または円形形状を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
いかなる細胞ターゲティング手段も有していない、癌細胞、癌組織または癌器官の治療および検出または可視化を目的とするモニタリング用組成物の製造のための、
a)強磁性物質を含むコアと;
b)前記コアを囲んでおり、外径が約100nm未満である生体適合性外殻と;
c)標識剤と
を含む、外部磁場と組み合わせた生体適合性ナノ粒子またはナノ粒子集合体の使用。
【請求項12】
前記磁場が、治療活性を生じるために任意の磁場源を使用することによって印加される、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記磁場源が均一および一方向性の磁場源である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記磁場源が任意の電磁石および磁気共鳴映像法(MRI)装置から選択される、請求項12または13に記載の使用。
【請求項15】
スキャナーまたはX線撮影法または超音波が可視化の目的に使用される、請求項11に記載の使用。
【請求項16】
a)強磁性物質を含むコアと;b)前記コアを囲んでおり、外径が、生体適合性担体と関連して、約100nm未満である生体適合性外殻とを含む生体適合性ナノ粒子またはナノ粒子集合体を含む、いかなる細胞ターゲティング作用物質も有していない医薬組成物。
【請求項17】
前記強磁性コア物質が酸化第一鉄および酸化第二鉄から成る群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記外殻の外径が約10nmから約50nmの間である、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
前記ナノ粒子またはナノ粒子集合体が本質的に球状または円形形状を有する、請求項16から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
a)強磁性物質を含むコアと;b)前記コアを囲んでおり、外径が、生体適合性担体と関連して、約100nm未満、好ましくは50nm未満である生体適合性外殻と、c)標識剤とを含む生体適合性ナノ粒子またはナノ粒子集合体を含む、いかなる細胞ターゲティング作用物質も有していない診断用組成物。
【請求項21】
前記強磁性コア物質が酸化第一鉄および酸化第二鉄から成る群から選択される、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
前記外殻の外径が約10nmから約50nmの間である、請求項20または21に記載の組成物。
【請求項23】
前記ナノ粒子またはナノ粒子集合体が本質的に球状または円形形状を有する、請求項20から22のいずれか一項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−534350(P2009−534350A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505876(P2009−505876)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053761
【国際公開番号】WO2007/118884
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(508312120)
【Fターム(参考)】