説明

磁性ワイヤー

【課題】
外部から力を加えることで、簡易に異なる磁気特性を得ることができるようにした磁性ワイヤーを提供する。
【解決手段】
磁性ワイヤー10は、所望の個所に、外部からの力の印加により磁気的に検知可能な長さより短く切断され磁気的に非検知領域となる破断領域11を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大バルクハウゼン効果を利用して用紙等の媒体を遠隔で検知することができるようにするために媒体に付与される磁性ワイヤーに関し、特に、外部から力を加えることで非検知領域となる破断領域を有する構造を採用することによって、簡易に異なる磁気特性を得ることができるようにした磁性ワイヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機密情報や個人情報等の漏洩防止、有価証券等の不正複写による偽造防止等、セキュリティ強化を目的とする種々の方法や装置が提案されている。
【0003】
有価証券等の偽造防止を目的とする技術としては、用紙に磁性ワイヤーを挿入することで、本物を特定できる特性を用紙に付与して、偽造防止用紙を作成する技術がある。
【0004】
例えば、特許文献1においては、用紙基材の紙層間に、磁性ワイヤーが漉き込まれた状態でなる万引き防止用ワイヤーが漉き込まれた用紙が提供されている。
【0005】
また、磁性ワイヤーに関しては、磁性ワイヤー周辺の外部磁界がある一定以上に変化すると、該磁性ワイヤーの磁化の向きが反転する大バルクハウゼン効果と呼ばれる現象を利用して、磁性ワイヤーに発生した大バルクハウゼン効果を検出コイルによりパルス出力として検出することが行われている。
【0006】
そして、特許文献2においては、大バルクハウゼン効果を発生させることができる磁性ワイヤーと大バルクハウゼン効果を発生させない磁性ワイヤーとを使用し、各々の磁性ワイヤーに2種類の識別用外部磁界を印加することで、識別用外部磁界の違いにより各々の磁性ワイヤーから発生される信号が異なることを利用して、各々の磁性ワイヤーを貼り付けた物品に対する高度のセキュリティを確保することができる識別機能を有する物品およびその識別方法が提案されている。
【特許文献1】特開2002−317398号公報
【特許文献2】特開平11−306275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、大バルクハウゼン効果を発生させる磁性ワイヤーは、セキュリティ強化を目的とする方法に利用されるが、外部からの力の印加により簡易に異なる磁気特性を得ることができる磁性ワイヤーは提案されていなかった。
【0008】
そこで、この発明は、外部から力を加えることで磁気的に非検知領域となる破断領域を有する構造を採用することによって、簡易に異なる磁気特性を得ることができるようにした磁性ワイヤーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する為、請求項1の発明は、媒体に付与され、該媒体の識別に用いる磁性ワイヤーであって、所望の個所に、外部からの力の印加により磁気的に検知可能な長さより短く切断され磁気的に非検知領域となる破断領域を具備することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記破断領域は、磁気的に検知可能な長さより短い間隔で原料密度の異なる部分が交互に接触する構造を有し、外部からの力の印加により前記原料密度の異なる部分で切断されて前記非検知領域となることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記破断領域は、磁気的に検知可能な長さより短い間隔で径の大きい個所と小さい個所とが交互に繰り返す構造を有し、外部からの力の印加により前記径の小さい個所で切断されて前記非検知領域となることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記破断領域は、磁気的に検知可能な長さより短い間隔で刻み目が形成された構造を有し、外部からの力の印加により前記刻み目において切断されて前記非検知領域となることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項1の発明において、前記破断領域は、磁気的に検知可能な長さより短い間隔で磁性を有する第1のワイヤーと磁性を持たず前記第1のワイヤーよりも強度の大きい第2のワイヤーとでねじれ目が形成されたツイステッドペア構造を有し、外部からの力の印加により前記ねじれ目の間の位置で切断されて前記非検知領域となることを特徴とする。
【0014】
また、請求項6の発明は、請求項1の発明において、前記破断領域は、磁気的に検知可能な長さより短い間隔で多孔質化された個所を備えた構造を有し、外部からの力の印加により前記多孔質化された個所で切断されて前記非検知領域となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の磁性ワイヤーによれば、所望の個所に、外部からの力の印加により磁気的に検知可能な長さより短く切断され磁気的に非検知領域となる破断領域を具備するように構成したので、磁性ワイヤーは簡易に異なる磁気特性を得ることができる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係わる磁性ワイヤーは、機密情報や個人情報等の情報漏洩防止、あるいは文書管理等を目的として、機密情報等を印刷、複写等により出力する場合は、本発明に係る磁性ワイヤーが付与された機密情報等が印刷される用紙に、搬送路において屈曲等の力が加えられることにより、磁性ワイヤーの特定領域が破壊され、予め設定された長さの磁性ワイヤーが形成されるので、磁性ワイヤーに予め設定された長さの磁性ワイヤーに関する情報が形成され、不正複写、不正持ち出しを防止し、機密文書の内容である機密情報の漏洩を防止することを可能とするものである。
【0017】
また、本発明に係る磁性ワイヤーは、所望の位置に破断領域を設けることで磁性ワイヤーに力が加えられると磁性ワイヤーの破断領域の位置で容易に切断され、磁性ワイヤーが切断されることで、磁性ワイヤーの長さに応じた情報が形成されるように構成されている。
【0018】
られたときに、磁性ワイヤーが切断され、所望の長さの磁性ワイヤーを形成することによって、所望の磁気特性が得られ、所望の情報を磁性ワイヤーに形成することができるようにするものである。
【0019】
磁性ワイヤーに所望の情報を形成することによって、機密情報の管理をより厳重に行うことができる。
【0020】
まず、本発明に係わる磁性ワイヤーを付与する磁性ワイヤー付与装置を設置した画像形成装置について図1を参照して説明を行う。
【0021】
図1は、本発明に係わる磁性ワイヤーを用紙に付与することで、機密情報の漏洩防止を目的としたセキュリティ文書を作成する画像形成装置100の要部を示した構成図である。
【0022】
画像形成装置100は、給紙トレイ101、転写ドラム102、露光装置103、現像器104、感光ドラム105、定着器106、排紙トレイ109、切断装置110、操作パネル111、原稿読取り装置112を備えている。
【0023】
給紙トレイ101は本発明に係わる磁性ワイヤーが付与された用紙を蓄え、操作パネル111によるユーザからの指示に基づき、給紙トレイ101から磁性ワイヤーが付与された用紙が切断装置110に搬送される。
【0024】
また、原稿読取り装置112は複写される原稿を読取って画像データを形成し、露光装置103は複写する画像データを感光ドラム105に静電潜像として形成し、現像器104は感光ドラム105に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成し、転写ドラム102は感光ドラム105に形成されたトナー像を用紙に転写し、定着器106は用紙に転写されたトナー像を定着させ、排紙トレイ109は切断された磁性ワイヤーが付与されている用紙を排紙する。
【0025】
画像形成装置100は、図示しないCPU(Central Processing Unit)で動作制御され、本発明に係る磁性ワイヤーが付与された用紙は、切断装置110において屈曲、圧迫によって用紙に力が加えられ、用紙に付与された磁性ワイヤーの、力が加わると破壊され易い破断領域によって磁性ワイヤーが切断される。
【0026】
切断装置110においては、後で詳しく説明する。
【0027】
本発明に係る磁性ワイヤーは、外部から力が加えられることによって、磁性ワイヤーに配置された破断領域において切断されることによって、1本の磁性ワイヤーが複数の磁性ワイヤーに分割される。
【0028】
そして、分割された複数の磁性ワイヤーが付与された用紙は、分割前の磁性ワイヤーとは長さの異なる磁性ワイヤーが付与された状態となる。
【0029】
磁性ワイヤーの保磁力は、磁性ワイヤーの線径及び長さに応じて異なり、用紙に付与された1本の磁性ワイヤーが破断領域で切断されることで複数の磁性ワイヤーに分割され、分割された磁性ワイヤーは、分割された磁性ワイヤーの長さに応じた保磁力を有するようになる。
【0030】
用紙に付与された磁性ワイヤーは、図示しない検知装置で磁性ワイヤーに所定の交番磁界を与えることで磁性ワイヤーが磁化反転時に発する急峻な磁気パルスを検出して検知することができ、磁性ワイヤーの保磁力に応じて磁気パルスの検出時間と検出出力が異なって検出される。
【0031】
このことから、用紙に付与された1本の磁性ワイヤーの破断領域の配置を調節することにより、破断領域で切断されて分割される磁性ワイヤーの保磁力に応じて検出される磁気パルスの検出信号に対応した情報を与えることが可能となる。
【0032】
次に、本発明に係わる、切断されることで情報を有する磁性ワイヤーについて図2を参照して説明を行う。
【0033】
図2は、本発明に係る、切断されることで情報を有する磁性ワイヤー10を示した模式図である。
【0034】
磁性ワイヤー10は、磁界を受けることで磁化され、磁化反転時に急峻な磁気パルスを発するような、所謂大バルクハウゼン効果の特性を有するFe−Co系アモルファス材で構成されている。
【0035】
図2(a)に示すように、磁性ワイヤー10には、外部からの力の印加により容易に破壊されて磁性ワイヤーを切断するように構成された破断領域11が形成されている。
【0036】
破断領域11は、外部から屈曲もしくは圧迫等の力が加えられることにより、破断領域11自体が、磁気的に検知可能な長さより短く切断されて、磁気的に非検知領域となる領域である。
【0037】
なお、破断領域11についてはその形成方法に様々な種類があり、後で詳しく説明する。
【0038】
磁性ワイヤー10は、屈曲もしくは圧迫等によって外部から力が加わることで破断領域11において切断され、1本の磁性ワイヤー10は所望の長さに切断される。
【0039】
所望の長さに磁性ワイヤーが切断されることで、切断後の磁性ワイヤーの長さに応じた情報が形成される。
【0040】
図2(b)には、磁性ワイヤー10に力が加えられることによって破断領域11において切断されて形成される複数の磁性ワイヤー12、13、14を示した模式図である。
【0041】
図2(b)に示すように、磁性ワイヤー10に力が加えられて破断領域11において切断されると、磁性ワイヤー10が分割されて、複数の磁性ワイヤー12、13、14が形成される。
【0042】
磁性ワイヤーは、磁気的に検知される際には、磁性ワイヤーの長さが異なることによって、ワイヤーの保磁力が異なるので、大バルクハウゼン効果が発生したときに発生する磁気パルスが検出される検出信号が異なり、磁性ワイヤーの長さに応じた検出信号が検知装置で検知されるので、磁性ワイヤーの長さに応じた情報を形成することができる。
【0043】
よって、磁性ワイヤーの所望の個所に破断領域を配置することで所望の情報を形成することができる。
【0044】
次に、本発明に係る磁性ワイヤー10が付与された用紙20について、図3を参照して説明を行う。
【0045】
図3は、磁性ワイヤー10が付与された用紙20を示す模式図である。
【0046】
図3(a)に示すように、用紙20には粘着テープ21によって磁性ワイヤー10が付与されている。
【0047】
このように、磁性ワイヤー10は、粘着テープ21によって、検知される用紙等の媒体に付与されているので、磁性ワイヤー10が破断領域11において切断されても、切断後の磁性ワイヤー12、13、14が散乱することはない。
【0048】
図3(a)に示す用紙20が画像形成装置100において、給紙トレイ101に配置されており、操作パネル111のユーザからの指示に基づいて用紙20が切断装置110に搬送され、切断装置110において磁性ワイヤーに力が加えられることによって、付与された磁性ワイヤー10が破断領域11において切断される。
【0049】
図3(b)は、用紙20に付与された磁性ワイヤー10が磁性ワイヤー12、13、14に分割された状態を示す模式図である。
【0050】
図3(b)に示すように、用紙20は、切断装置110で力が加えられることによって磁性ワイヤー10は破断領域11において切断されて、磁性ワイヤー12、13、14が形成される。
【0051】
このように磁性ワイヤー12、13、14が形成されることによって、長さの異なる磁性ワイヤー12、13、14が用紙20に形成され、磁性ワイヤーは、長さが異なることで、大バルクハウゼン効果が発生したときに発生する磁気パルスを検出する検出信号が異なるので、長さの異なる磁性ワイヤー12、13、14が用紙20に配置されることによって、用紙20に磁性ワイヤー12、13、14の長さに特有の情報が記録される。
【0052】
次に、画像形成装置100の切断装置110について図4を参照して説明する。
【0053】
図4は、画像形成装置100の切断装置110の要部を示した構成図である。
【0054】
切断装置110は、ローラ41、ローラ42、屈曲ローラ43、44、用紙挿入口45、用紙排出口46、ガイド47を備えている。
【0055】
ローラ41は、図示しないモータによって回転され、用紙が滑らないようにローラ41の表面はゴム等により皮膜処理が行われている。
【0056】
ローラ42の表面は、用紙が滑らないようにゴム等により皮膜処理が行われており、ローラ41とローラ42とで、搬送された用紙を圧迫することにより用紙に力が加えられる磁性ワイヤー10の破断領域11を破壊する。
【0057】
屈曲ローラ43は、用紙挿入口45から挿入された用紙20を屈曲させることにより、用紙20に力を加えて、磁性ワイヤー10の破断領域11を破壊し、ローラ41へと搬送する。
【0058】
屈曲ローラ44は、ローラ41によって圧迫された用紙の搬送を受け、搬送された用紙を屈曲させることにより、用紙20に力を加えて、磁性ワイヤー10の破断領域11を破壊し、用紙排出口46に用紙を排出する。
【0059】
また、ガイド47は、用紙挿入口45から挿入された用紙が、屈曲ローラ43で屈曲されて、ローラ41とローラ42とで圧迫されて、屈曲ローラ44で屈曲されて、用紙排出口46から排出されるように用紙の搬送を補助する。
【0060】
画像形成装置100において、給紙トレイ101から搬送された用紙20は、切断装置110の用紙挿入口45へ挿入され、屈曲ローラ43において屈曲されて破断領域11が破壊され、ガイド47に補助されながらローラ41とローラ42との接触点に搬送されて、ローラ41とローラ42との接触点においてローラ41とローラ42により圧迫されて、屈曲ローラ43で破壊されなかった破断領域11が破壊された後、ガイド47に補助されながら屈曲ローラ44へと搬送されて、屈曲ローラ44によって屈曲されて、屈曲ローラ43、ローラ41、ローラ42で破壊されなかった破断領域11が破壊された後、用紙20は用紙排出口46から排出され、搬送路に沿って転写ドラム102へ搬送される。
【0061】
このように、切断装置110によって、用紙20に屈曲、圧迫によって力が加えられ、磁性ワイヤー10の破断領域11が破壊され、磁性ワイヤー10が磁性ワイヤー12、13、14に切断される。
【0062】
次に、画像形成装置100において、情報が形成された磁性ワイヤーが付与された用紙に複写が行われる処理について図5を参照して説明を行う。
【0063】
図5は、画像形成装置100において、情報が形成された磁性ワイヤーが付与された用紙に複写が行われる処理について示したフローチャートである。
【0064】
画像形成装置100において、操作パネル111よりユーザによる複写の指示を受け付けると(ステップ501)、給紙トレイ101から切断前の磁性ワイヤー10が付与された用紙20が切断装置110に搬送される(ステップ502)。
【0065】
切断装置110に搬送された用紙20は、切断装置110内部で屈曲、圧迫等によって力が加えられ、用紙20に付与されている磁性ワイヤー10の破断領域11が破壊されて、磁性ワイヤー10は磁性ワイヤー12、13、14に切断される(ステップ503)。
【0066】
切断装置110内部で、磁性ワイヤー10が切断されて、磁性ワイヤー12、13、14が配置された用紙20は、磁性ワイヤー12、13、14の長さに特有の情報を所有し、転送ドラム102に搬送される。
【0067】
一方、ユーザの複写指示を受け付けた画像形成装置100は、原稿読取り装置112において複写する画像データを形成し、露光装置103が感光ドラム105に静電潜像を形成し、現像器104が感光ドラム105に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する。
【0068】
そして、転送ドラム102に搬送された用紙20は、転写ドラム102によって、感光ドラム105に形成されたトナー像を用紙20に転写して、用紙20は、定着器106によってトナーの定着が行われ画像が形成される(ステップ504)。
【0069】
画像が形成された用紙20は、排紙トレイ109より排紙される(ステップ505)。
【0070】
次に、本発明に係る磁性ワイヤー10の破断領域11について、添付図面を参照して説明を行う。
【0071】
まず、磁性ワイヤー10の破断領域11は、磁性ワイヤー10に外部から力が加えられたら切断される構造を有しており、その構造の種類として、ツイステッドペア構造について図6を参照して説明する。
【0072】
図6は、ツイステッドペア構造を有する破断領域11を示す模式図である。
【0073】
図6(a)にツイステッドペア構造の破断領域11の模式図を示す。
【0074】
破断領域11は、磁性ワイヤー60とワイヤー61のツイステッドペア構造で構成される。
【0075】
磁性ワイヤー60は、ある磁界強度で大バルクハウゼン効果を発生させることができ、磁性ワイヤー10の磁性ワイヤー部分を形成するものである。
【0076】
つまり、磁性ワイヤー60の一部分にワイヤー61がツイステッドペア構造で絡み合うことで破断領域11が形成されている。
【0077】
ワイヤー61は、磁性ワイヤー60よりも引っ張り強度の大きいワイヤーである。
【0078】
磁性ワイヤー60は、屈曲等によって力が加えられることによって、磁性ワイヤー60とワイヤー61の引っ張り強度の違いから、図6(b)に示すように、ツイステッドペア構造のねじれ目の間に位置する磁性ワイヤー60が切断されることによって、磁性ワイヤー10が破断領域11によって切断される。
【0079】
また、磁性ワイヤー61が切断されやすいように、ツイステッドペア構造の磁性ワイヤー60とワイヤー61が交差している各ねじれ目をエポキシ樹脂等で固定するようにしてもよい。
【0080】
次に、破断領域11の種類として、刻み目が形成されることによって構成される破断領域11について図7を参照して説明する。
【0081】
図7は、磁性ワイヤーに刻み目が形成されることによって構成される破断領域11を示した模式図である。
【0082】
図7(a)に、刻み目が形成されることによって構成される破断領域11の模式図を示す。
【0083】
図7(a)に示すように、磁性ワイヤーの破断領域11は、磁性ワイヤーに刻み目が形成されることによって構成されており、該磁性ワイヤーに屈曲等によって外部から力が加えられると、図7(b)に示すように刻み目50が形成された破断領域11が破壊された状態となって、破断領域11は、磁性ワイヤーを所望の長さに切断する役目を果たす。
【0084】
磁性ワイヤーに形成される刻み目は、例えば微細レーザ加工によって磁性ワイヤーに刻み目が形成される。
【0085】
次に、破断領域11の種類として、ワイヤー径の大小によって構成される破断領域11について図8を参照して説明する。
【0086】
図8は、磁性ワイヤーのワイヤー径の大小によって構成される破断領域11を示した模式図である。
【0087】
図8(a)に、磁性ワイヤーのワイヤー径の大小によって構成される破断領域11の模式図を示す。
【0088】
図8(a)に示すように、この磁性ワイヤーは、ワイヤー径の大きさが大きい個所と小さい個所が交互に変化するように構成されており、屈曲等によって外部から力が加えられると、図8(b)に示すようにワイヤー径の小さい個所から磁性ワイヤーが切断されて、破断領域11によって磁性ワイヤーが切断される。
【0089】
このように磁性ワイヤーのワイヤー径の小さい個所が切断されることによって、ワイヤー径の大小によって構成される破断領域11は、磁性ワイヤーを所望の長さに切断する役目を果たす。
【0090】
なお、このようなワイヤー径の大小によって構成される破断領域11を形成するには、例えば、Fe−Co系の材料をワイヤー状に引き抜き加工により加工する際に、引っ張り強さに強弱をつけて線材を引っ張ることで行われる。
【0091】
また、押し出し加工により加工する際には、押しつけ圧力に強弱を繰り返すことで、ワイヤー径の大きい部分と小さい部分が交互に繰り返している破断領域11が形成される。
【0092】
次に、破断領域11の種類として、Fe−Co系の材料の濃度差により切断されやすくなる個所が形成された破断領域11について図9を参照して説明する。
【0093】
図9は、磁性ワイヤーの材料であるFe−Coの濃度差により切断されやすくなる個所が形成された破断領域11とを示す模式図である。
【0094】
図9(a)に、磁性ワイヤーの材料の濃度差によって切断されやすくなる個所が形成された破断領域11と、磁性ワイヤーの濃度差によって切断されやすくなる個所が形成された破断領域11の製造方法の一例の一部との模式図を示す。
【0095】
図9(a)に示すように、破断領域11には、材料のFe−Coの濃度に差がある部分が交互に配置されてあり、濃度に差のある部分は材料係数として密度の差が発生しており、屈曲、圧迫等によって外部から力が加えられると、図9(b)に示すように材料の濃度差があるものが互いに接している個所が切断される。
【0096】
濃度差は、例えば、Fe−Coの含有率を80%と20%というように差を形成することができる。
【0097】
なお、図9(c)に、磁性ワイヤーの材料の濃度差によって切断されやすくなる部分が形成された破断領域11の製造方法の一例の一部分の模式図を示す。
【0098】
図9(c)に示すように、磁性ワイヤーの原料であるFe−Coから濃度の異なる2種類の金属ペーストを形成し、それぞれの金属ペーストが異なる容器93、94に詰められ、ペースト切り替え弁95、96を切り替えて射出口97より交互に濃度差のある柱状の金属ペーストが射出される。
【0099】
この射出口97より射出される金属ペーストにより、破断領域11が形成される。
【0100】
次に、破断領域11の種類として、磁性ワイヤー中に気体が混入された多孔質によって形成される破断領域11について図10を参照して説明する。
【0101】
図10は、磁性ワイヤー中に気体が混入される、多孔質によって形成される破断領域11を示す模式図である。
【0102】
図10(a)に、磁性ワイヤー中に気体が混入された多孔質によって形成される破断領域11の模式図を示す。
【0103】
図10(a)に示すように、磁性ワイヤーの破断領域11は、気体が混入された多孔質で形成されている部分を有しており、磁性ワイヤーに、屈曲、圧迫等によって外部から力が加えられると、図10(b)に示すように、多孔質となっている部分が破壊されることで、破断領域11が切断される。
【0104】
破断領域11が切断されることで、破断領域11は磁性ワイヤーを所望の長さに切断する役目を果す。
【0105】
なお、本発明に係る磁性ワイヤーを用紙等の媒体に付与する方法については、粘着テープで付与する方法に限らず、用紙を抄紙する時点で本発明に係る磁性ワイヤーを抄きこむ方法等の他の方法でももちろんよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
この発明は、大バルクハウゼン効果を利用して用紙等の媒体を遠隔で検知することができるようにするために媒体に付与される磁性ワイヤーにおいて利用可能である。
【0107】
この発明の磁性ワイヤーは、外部から力を加えることで非検知領域となる破断領域を有する構造を採用することによって、外部から力を加えることで簡易に異なる磁気特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明に係わる磁性ワイヤーを用紙に付与することで、機密情報の漏洩を防止することができるセキュリティ文書を作成する画像形成装置100の要部を示した構成図。
【図2】本発明に係る、切断されることで情報を有する磁性ワイヤー10を示した模式図。
【図3】磁性ワイヤー10が付与された用紙20を示す模式図。
【図4】画像形成装置100の切断装置110の要部を示した構成図。
【図5】画像形成装置100において、情報が形成された磁性ワイヤーが付与された用紙に複写が行われる処理について示したフローチャート。
【図6】ツイステッドペア構造を有する破断領域11を示す模式図。
【図7】磁性ワイヤーに刻み目が形成されることによって構成される破断領域11を示した模式図。
【図8】磁性ワイヤーのワイヤー径の大小によって構成される破断領域11を示した模式図。
【図9】磁性ワイヤーの材料であるFe−Coの濃度差により切断されやすくなる個所が形成された破断領域11を示す模式図。
【図10】磁性ワイヤー中に気体が混入される、多孔質によって形成される破断領域11を示す模式図。
【符号の説明】
【0109】
10 磁性ワイヤー
11 破断領域
12 磁性ワイヤー
13 磁性ワイヤー
14 磁性ワイヤー
20 用紙
21 粘着テープ
41 ローラ
42 ローラ
43 屈曲ローラ
44 屈曲ローラ
45 用紙挿入口
46 用紙排出口
47 ガイド
60 磁性ワイヤー
61 ワイヤー
50 刻み目
93 容器
94 容器
95 ペースト切り替え弁
96 ペースト切り替え弁
97 射出口
100 画像形成装置
101 給紙トレイ
102 転写ドラム
103 露光装置
104 現像器
105 感光ドラム
106 定着器
109 排紙トレイ
110 切断装置
112 原稿読取り装置
111 操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に付与され、該媒体の識別に用いる磁性ワイヤーであって、
所望の個所に、外部からの力の印加により磁気的に検知可能な長さより短く切断され磁気的に非検知領域となる破断領域
を具備することを特徴とする磁性ワイヤー。
【請求項2】
前記破断領域は、
磁気的に検知可能な長さより短い間隔で原料密度の異なる部分が交互に接触する構造を有し、外部からの力の印加により前記原料密度の異なる部分で切断されて前記非検知領域となる
ことを特徴とする請求項1記載の磁性ワイヤー。
【請求項3】
前記破断領域は、
磁気的に検知可能な長さより短い間隔で径の大きい個所と小さい個所とが交互に繰り返す構造を有し、外部からの力の印加により前記径の小さい個所で切断されて前記非検知領域となる
ことを特徴とする請求項1記載の磁性ワイヤー。
【請求項4】
前記破断領域は、
磁気的に検知可能な長さより短い間隔で刻み目が形成された構造を有し、外部からの力の印加により前記刻み目において切断されて前記非検知領域となる
ことを特徴とする請求項1記載の磁性ワイヤー。
【請求項5】
前記破断領域は、
磁気的に検知可能な長さより短い間隔で磁性を有する第1のワイヤーと磁性を持たず前記第1のワイヤーよりも強度の大きい第2のワイヤーとでねじれ目が形成されたツイステッドペア構造を有し、外部からの力の印加により前記ねじれ目の間の位置で切断されて前記非検知領域となる
ことを特徴とする請求項1記載の磁性ワイヤー。
【請求項6】
前記破断領域は、
磁気的に検知可能な長さより短い間隔で多孔質化された個所を備えた構造を有し、外部からの力の印加により前記多孔質化された個所で切断されて前記非検知領域となる
ことを特徴とする請求項1記載の磁性ワイヤー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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