説明

磁性体ワイヤー及び記録媒体

【課題】電子写真方式等による画像の形成に利用可能な記録媒体中に含まれ、非接触型の磁気信号検出手段によって当該記録媒体の存在を検知可能とする磁性体ワイヤーを提供すること。
【解決手段】記録媒体中に含まれ、非接触型の磁気信号検出手段により検出可能な磁気信号を発することができ、絶縁性材料により表面が被覆された磁性金属線材を有し、保磁力が30A/m以下であり、且つ、大バルクハウゼン効果を有することを特徴とする磁性体ワイヤー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式等による画像の形成に利用可能な記録媒体中に含まれ、当該記録媒体の存在を非接触型の磁気信号検出手段により検知可能とする磁性体ワイヤーおよびこれを用いた記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より偽造防止や秘匿性の高い情報のセキュリティなどを目的として磁性材料を含む用紙や部材が種々検討されてきている。
このような用紙や部材に用いられる磁性材料としては、例えば、磁性粉を繊維状物表面に固着した磁性繊維(特許文献1,2参照)が知られている。この磁性繊維を含む用紙では、用紙に磁気センサーを密着させて磁化パターンの検出を行うことができる。
また、万引き防止用タグとして利用するために、直径が0.1mmから0.3mmのアモルファス金属からなる磁性ワイヤーを用いることが知られている(特許文献3参照)。この磁性ワイヤーは用紙基材の紙層間に漉き込まれた状態で内蔵される。
この他にも、磁気的にマーキングされた紙製書類に利用するためにガラス皮膜アモルファス強磁性フィラメントを用いることが知られている(特許文献4参照)。この強磁性フィラメントは、紙の表層として設けられるポリマー層中に添加される。
【特許文献1】特開平11−107161号公報
【特許文献2】特開2004−131888号公報
【特許文献3】特開2002−317398号公報
【特許文献4】特開2000−164414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1,2に示される磁性繊維を含む用紙は、磁気センサーを用紙に接触させないと磁気信号が検出できず、非接触方式の磁気センサーでは利用できない。
また、特許文献3に記載されている磁性ワイヤーは、万引き防止を目的として店舗の出入り口等に配置されるセンサーゲートにより検出可能であるが、紙厚の厚い万引き防止用タグに用いることを前提としているため、印刷に用いるPPC用紙等の紙厚よりも大きい直径を有する。
さらに、特許文献4に記載されているガラス皮膜アモルファス強磁性フィラメントとしては、紙の表層として設けられる厚みが30〜40μm程度のポリマー層中に添加される。このため、その最大直径が20μm以下のものが用いられる。しかし、このような直径の細い強磁性フィラメントを用いた用紙では、磁気信号が弱いために非接触型の読み取り方式では用紙の存在が検出できない。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、電子写真方式等による画像の形成に利用可能な記録媒体中に含まれ、非接触型の磁気信号検出手段によって当該記録媒体の存在を検知可能とする磁性体ワイヤーおよびこれを用いた記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、
<1>
記録媒体中に含まれ、非接触型の磁気信号検出手段により検出可能な磁気信号を発することができ、
絶縁性材料により表面が被覆された磁性金属線材を有し、保磁力が30A/m以下であり、且つ、大バルクハウゼン効果を有することを特徴とする磁性体ワイヤーである。
【0006】
<2>
前記磁性金属線材の平均直径が、20μmを超え40μm以下の範囲内であることを特徴とする<1>に記載の磁性体ワイヤーである。
【0007】
<3>
前記磁性金属線材がアモルファス磁性金属線材であり、該アモルファス磁性金属線材を被覆する絶縁性材料がガラスであることを特徴とする<1>に記載の磁性体ワイヤーである。
【0008】
<4>
Taylor−Ulitovski法により作製されたことを特徴とする<3>に記載の磁性体ワイヤーである。
【0009】
<5>
前記アモルファス磁性金属線材を被覆するガラスからなる被覆層の平均厚みが、1μm以上10μm以下の範囲内であることを特徴とする<3>に記載の磁性体ワイヤーである。
【0010】
<6>
絶縁性材料により表面が被覆された磁性金属線材を有し、保磁力が30A/m以下であり、且つ、大バルクハウゼン効果を有する磁性体ワイヤーを含む記録媒体である。
【0011】
<7>
パルプ繊維を主成分として含む紙基材を有し、前記紙基材中に前記磁性体ワイヤーが含まれることを特徴とする<6>に記載の記録媒体である。
【発明の効果】
【0012】
以上に説明したように本発明によれば、電子写真方式等による画像の形成に利用可能な記録媒体中に含まれ、非接触型の磁気信号検出手段によって当該記録媒体の存在を検知可能とする磁性体ワイヤーおよびこれを用いた記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<磁性体ワイヤー>
本発明の磁性体ワイヤーは、記録媒体中に含まれ、非接触型の磁気信号検出手段により検出可能な磁気信号を発することができ、絶縁性材料により表面が被覆された磁性金属線材を有し、保磁力が30A/m以下であり、且つ、大バルクハウゼン効果を有することを特徴とする。
【0014】
ここで、非接触型の磁気信号検出手段とは、広義には、この手段と磁性材料を含む物体とを互いに接触させることなく、当該物体中に含まれる磁性材料に起因する磁気信号を検出して物体の存在を感知する手段を意味し、代表的なものとしては、商品に付された万引き防止用タグに含まれる磁性材に起因する磁気信号を検出するために店舗の出入り口に配置されるセキュリティーゲートなどが挙げられる。なお、本発明においては、何がしかの物体が非接触型の磁気信号検出手段の近傍を通過した際に、磁性材料を含む物体であるか否かを判別するための空間(検出エリア)には少なくとも0.1〜0.8Oe程度の磁界を形成するような非接触型の磁気信号検出手段を用いることを想定している。
ここで、当該「少なくとも」の意味は、空間中央部の磁界の弱いところでも、いずれかの方向に上記の磁界が発生していることを想定しているということである。
【0015】
本発明の磁性体ワイヤーは、上述したように保磁力が30A/m以下であり、且つ、大バルクハウゼン効果を有する。このため、非接触型の磁気信号検出手段により、磁性材から発せられる磁気信号を検出するために印加される弱い磁界(0.1〜0.8Oe程度)でも確実に検出可能な磁気信号を発することができる。
保磁力が30A/mを超える場合には、0.1〜0.8Oe程度の弱い磁界中では磁気信号を発することができなくなるため、非接触型の磁気信号検出手段により記録媒体(中に含まれる磁性体ワイヤー)の存在を検知できなくなる。なお、非接触型の磁気信号検出手段による磁気信号の読み取りをより容易とするために保磁力は25A/m以下であることが好ましく、20A/m以下であることがさらに好ましい。保磁力が小さいほど、より弱い磁界中でも検出が可能となる。
一方、保磁力の下限値は 特に限定されないが実用上は8A/m以上であることが好ましい。
【0016】
なお、大バルクハウゼン効果は、周期的に振動する励磁磁界に反応し急峻な磁化反転を起こす現象であり、当該磁化反転に伴うパルス的な磁気信号を検知コイルを利用して検知できる。大バルクハウゼンを起こす磁界は、ほぼ保磁力に等しいため、上述したような0.8Oe以下の弱い磁界中で磁気信号の検出を可能とするためには保磁力を30A/m以下とすることが必要である。
【0017】
図1は、大バルクハウゼン効果を説明するための図である。大バルクハウゼン効果は、図1(a)に示すようなB−H特性、つまり、ヒステリシスループがほぼ長方形で、保磁力(Hc)が比較的小さな材料、例えば、Co−Fe−Ni−B−Siからなるアモルファス磁性材料を交番磁界中においた際に、急峻な磁化反転が起きる現象である。このため、励磁コイルに交流電流を流して交番磁界を発生させ、その交番磁界中に磁性材料を置くと、磁化反転時に、磁性材料の近傍に配置した検知コイルにパルス状の電流が流れることとなる。
【0018】
例えば、励磁コイルにより図1(b)の上段に示すような交番磁界を発生させた場合、検知コイルには、図1(b)の下段に示すようなパルス電流が流れることとなる。
【0019】
ただし、検知コイルに流れる電流には、交番磁界によって誘導される交流電流も流れており、パルス電流は、この交流電流に重畳されて検出されることとなる。また、複数の磁性材料を含むものを交番磁界中に置いた場合には、複数のパルス電流が重畳され、図1(c)に示すような電流が検出される。
【0020】
一方、電子写真方式による画像の形成に際しては感光体や中間転写体上のトナー像を記録媒体へと転写する転写工程が実施されるが、この転写工程は、感光体(又は中間転写体)と記録媒体との間に電界を印加して、トナー像を静電的に転写することにより行われる。従って、記録媒体表面の電気抵抗が部分的に低下すると当該部分ではトナー像の転写が行われず、画像の一部が白く抜けてしまういわゆる白抜け等の画質劣化が発生してしまう。ここで、本発明に用いられる磁性金属線材は導電性を有するために、これがそのまま記録媒体中に含まれる場合には、記録媒体表面の電気抵抗の部分的な低下を招き、結果として白抜けを発生させてしまうことになる。しかし、本発明の磁性体ワイヤーは磁性金属線材の表面が絶縁性材料により被覆されているため白抜けの発生を防止できる。このため、本発明の磁性体ワイヤーを用いた記録媒体は、電子写真用転写紙としても利用可能である。
【0021】
なお、本発明の磁性体ワイヤーの保磁力を30A/m以下に制御する上では、磁性金属線材の直径や材質、磁性体ワイヤー形状(直径、長さ)、磁性金属線材を被覆する絶縁性材料からなる被覆層の厚み、製造後の熱処理条件等が影響するが、これらの中でも特に磁性金属線材の直径が大きく影響する。
このような観点からは本発明の磁性体ワイヤーに用いられる磁性金属線材の平均直径は、20μmを超えることが好ましく、25μm以上であることがより好ましい。磁性金属線材の直径と保磁力とは図2に示すように反比例の関係にあり、平均直径が細くなるに従い保磁力が急激に増加する傾向がある。このため平均直径が20μm以下では保磁力が30A/mを超えてしまう場合がある。
【0022】
加えて、磁性金属線材を作製する際に発生する直径のわずかなバラツキによって保磁力が大きく変化し易くなるため、保磁力の制御が困難になる場合がある。一方、非接触型の磁気信号検出手段により記録媒体中の磁性体ワイヤーから発せられる磁気信号を検出する場合、記録媒体は非接触型の磁気信号検出手段の検出エリアの任意の位置を通過することになるため、磁気信号読み取り時の磁気信号検出手段と記録媒体との距離(すなわち、磁性体ワイヤーに印加される磁界強度)は様々である。このため、平均直径が20μm以下の複数本の磁性体ワイヤーを含むような記録媒体では、個々の磁性体ワイヤーの保磁力のばらつきが大きいために、磁気信号読み取り時の磁気信号検出手段と記録媒体との距離が変わると、記録媒体中に含まれる個々の磁性体ワイヤーから発せられる磁気信号強度の総和に大きなバラツキが生じやすくなる。よって、磁気信号読み取り時の磁気信号検出手段と記録媒体との距離に関係なく高い検出精度を確保することができなくなる場合がある。
【0023】
なお、図2は、アモルファス磁性金属線材(組成:Coを50重量%以上含むCo系アモルファス磁性材料)の直径に対する保磁力の変化を示すグラフである。このグラフに示す結果は、測定周波数を70Hzとし、長さが25mmのアモルファス磁性金属線材を用いた場合について示したものである。但し、図1に示すアモルファス磁性金属線材の直径と保磁力(Hc)との関係は、相対的な変化の傾向を示す一例に過ぎず、本発明に用いられるアモルファス磁性金属線材の直径と保磁力との関係は図中に示される関係のみ限定されるものではない。
【0024】
また、平均直径が20μm以下の磁性金属線材を作製する場合、後述するように一旦作製した線材を細線加工する製法を利用することが好適であるが、このような方法はコストが高い上に歩留まりが低いために実用的ではない。これに加えて、引っ張り強度が小さくなるため、磁性体ワイヤーの作製・加工や、磁性体ワイヤーの記録媒体中への埋設に際して引っ張り応力を加えなければならない場合には、磁性体ワイヤーの切断が生じやすくなる場合がある。
【0025】
なお、本発明において磁性体ワイヤーの保磁力は以下のように測定した。
まず、測定には、励磁コイルと、この励磁コイルの内側に、その中心線が励磁コイルの中心線と一致するように配置された検出コイルとを備えた装置を用いた。
【0026】
一方、測定に用いる磁性体ワイアーとしては、長さが25mmとなるように切断した磁性体ワイヤーを用いた。長を25mmに切断するのは、磁性体ワイヤーを記録媒体に含有させるときの代表的な長さにおける保磁力を測定するためである。
測定に際しては、図3に示すように測定装置の検出コイルの巻線方向にほぼ揃うように、かつ、当該検出コイル内の中心線上に位置するように磁性体ワイアーを配置した。なお、図3は、保持力の測定方法を説明するための模式図であり、励磁コイルと検出コイルとを備えた測定装置の検出コイル内に、磁性体ワイヤーが配置された状態を示した模式断面図であり、図中、10は磁性体ワイヤー、500は検出コイル、510は励磁コイルを表し、点線は、2つのコイル500、510の中心線を示し、個々のコイルを構成するコイル線については記載を省略してある。また、励磁コイル510は不図示の交流電源に接続され、検出コイルは不図示の電流・電圧モニターに接続されている。
【0027】
続いて、図3に示したような状態で励磁コイル510に、周波数100ヘルツ(Hz)のサイン波形状の電流(以下、「励磁電流」と称す)を流す。ここで、励磁電流を磁性体ワイアーの軸方向に印加されるピーク磁場が200A/mとなるように調整し、この際の磁束変化を検出コイル500に誘導される電流でモニターすることにより、磁束変化の立ち上がりを与える磁場を、励磁電流値で読み取ることができる。ここで、保磁力Hcは、下式(1)により求められる。
・式(1) Hc=200(A/m)×(Vs/V200
ここで、式(1)中、Vsは磁束変化の立ち上がりを与える励磁電流に対応する電圧(V)を意味し、V200は、ピーク磁場が200A/mとなる励磁電流に対応する電圧(V)を意味する。
例えば、ピーク磁場が200A/mとなる励磁電流に対応する電圧が2.35Vで、磁束変化の立ち上がりを与える励磁電流に対応する電圧が0.13Vの時、保磁力Hcは、11.1A/mとなる。
【0028】
なお、測定周波数により保磁力は変動するので、一定周波数の下で保磁力の測定を行わなければならない。本発明において100Hzの周波数を選択したのは、磁化反転の追従をよくするためである。また、測定は温度25℃、湿度50%〜70%の環境下で実施した。
【0029】
一方、本発明の磁性体ワイヤーは、電子写真方式やインクジェット方式等による画像形成に利用することを目的とした記録媒体に利用されるが、このような記録媒体の厚みは最大でも200μm、一般的には120〜60μm程度である。よって、磁性金属線材の直径は、これを被覆する絶縁性材料からなる被覆層の厚みを加えた値が最大でも記録媒体の厚み未満であることが必要である。なお、磁性金属線材の直径は好ましくは60μm以下、より好ましくは40μm以下であることが好ましく、更に36μm以下であることがより好ましい。磁性金属線材の平均直径が60μmを超える場合には、記録媒体表面に磁性体ワイヤーが露出して、記録媒体の外観を損なうばかりでなく、画像を形成した際にも、見栄えを悪くしてしまう場合がある。また、磁性体ワイヤーが記録媒体表面に露出しなくても記録媒体中の磁性体ワイヤーが存在する部分が盛り上りって記録媒体表面に凸部を形成してしまう場合がある。このような凸部は、電子写真方式により画像を形成する転写工程において、感光体(あるいは中間転写体)と記録媒体との間に部分的な隙間を発生させ、転写抜けの発生を招いてしまう場合がある。
【0030】
また、本発明の磁性体ワイヤーに用いられる磁性金属線材の直径分布は特に限定されるものではないが、直径ばらつきに起因する保磁力のばらつきを抑制する観点からは狭い方が好ましい。なお、磁性金属線材の直径に分布が存在する場合、磁性体ワイヤーの保磁力が全て30A/m以下となるように直径の分布や平均値を制御することが好ましい。
【0031】
磁性金属線材を構成する磁性材料としては、大バルクハウゼン効果を有する軟磁性材料であればよい。軟磁性材料とは、それ自身は永久磁石ではないが、コイルや永久磁石の助けを借りて磁石となり得るものをいう。物理的に表現するならば、外部磁場をかけたとき、かけた磁場の方向に物質中の磁気双極子が簡単に向いてしまう、外部磁場方向に容易に追従していくような材料をいう。具体的な材料例は、”Modern Magnetic Materials”(Robert C. O’Handley著)、John Wiley & Sons, IncのChapter 10に例示されている。
代表的な材料として、鉄(Fe)−シリコン(Si)を主成分としたもの、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)を主成分としたもの、鉄(Fe)−コバルト(Co)を主成分としたものがある。また、電子写真方式での画像形成を考慮した場合、電気抵抗が高い方が好ましく、この観点からは、結晶性磁性材料よりも3〜5倍程度高抵抗なアモルファス磁性材料を用いることが好ましい。
なお、アモルファス磁性材料としては、Co系のアモルファス磁性材料(Co含有量が50重量%以上)を好適に用いることができ、Co以外の成分としてはFe,Ni,Cr,Nb,Cu,Mn,Mo,Ti,V のうちから選択された少なくとも2つの元素、および、Si,B,C,のうちから選択された少なくとも2つの元素が含まれていることが好ましい。
【0032】
また、磁性金属線材を被覆する絶縁性材料としては、公知の絶縁性材料であれば特に限定されず、ガラスやセラミックス等の無機絶縁性材料や、樹脂などの有機絶縁性材料が利用できる。但し、電子写真方式の画像形成に際しては、記録媒体表面に転写されたトナー像を定着する際に磁性体ワイヤーが高温(80℃〜250℃)に加熱されることから耐熱性に優れたガラスやセラミックス等の無機絶縁性材料や耐熱性樹脂等を用いることが好ましい。
【0033】
また、磁性金属線材と絶縁性材料との組み合わせとしては、磁性金属線材がアモルファス磁性金属線材であり、このアモルファス磁性金属線材を被覆する絶縁性材料がガラスであることが特に好ましい。この場合、アモルファス磁性金属の線材化とアモルファス磁性金属線材表面へのガラス被覆層の形成が同時に行えるTaylor−Ulitovski法を利用して磁性体ワイヤーを作製することができる。
Taylor−Ulitovsky法は、ガラスチューブ中に充填された磁性金属材料を、ガラスチューブごと高周波加熱しながら溶融し、急速固化することより線材化する方法でありその詳細については、A.V.Ulitovsky,”Method of continuous fabrication of microwires coated by glass”,Authors certification USSR patent,No.128427 (3.9.1950),あるいは、G.F.Taylor,Physical Review vol.23(1924)655に記載されている。この製造方法は、他の磁性体ワイヤーの製造方法と比較して、電子写真方式の画像形成等に利用される記録媒体の厚みに適した直径を有する磁性体ワイヤーを安定的且つ低コストで作製することができる点で非常に有効である。
【0034】
例えば、特開平5−185190号公報に開示されている水中回転紡糸方法では、100μm以上の直径のアモルファス磁性ワイヤーしか得られない。このため、記録媒体の厚みに適した直径とするためには、一旦形成された太いワイヤーを細線引き処理することが必要である。これに加えて、絶縁性材料からなる被覆層は、別途形成しなければならない。また、細線引き処理する方法としては、直径120μmの原線を直径が30〜50μmまで線引きして細線化する方法(特開昭63−240003号公報参照)や、原線をエッチング処理により5μm径まで細線化する方法(特開2000−164414号公報参照)などが知られているが、工程数が増えると共に、歩留まり低下によるコストアップも避けられない。また、Mo車輪を用いて金属溶融ロッドからワイヤーを機械的に引き出すMelt Extraction法においても、記録媒体の厚みに適した直径の細線の作製は困難であることに加え、安定した作製ができないという欠点を有する。
【0035】
一方、Taylor−Ulitovsky法を利用して磁性体ワイヤーを作製した場合、アモルファス磁性金属線材の平均直径が20μmを超え40μm以下の範囲で、且つ、ガラスからなる被覆層の平均厚みが1μm以上10μm以下の範囲のものが安定して作製できる。
また、ガラスからなる被覆層の平均厚みは1μm以上10μm以下の範囲内が好ましく、1μm以上5μm以下の範囲内がより好ましい。平均厚みが1μm未満では、被覆層の形成自体が困難となるばかりでなく、アモルファス磁性金属線材の表面がガラスにより十分に被覆されない場合があり、10μmを超える場合には曲率の小さな曲げ応力が加わった場合に、被覆層が破壊されてしまう場合がある。
【0036】
なお、本発明において磁性体ワイヤーを構成する磁性金属線材の平均直径や、絶縁性材料からなる被覆層の厚みは、以下のように求める。
(1)磁性体ワイアがボビンに巻き取られた態様の場合:
巻取り長をL(m)とするとき、巻き始めから巻き終わりまで、等間隔(L/30)に31点を測定点に選び、各点における断面を光学顕微鏡乃至は走査型電子顕微鏡により観察し、各々の断面における直径や厚みの平均値として求める。
(2)磁性体ワイアが所定の長さに切断されて梱包されている態様の場合:
梱包よりランダムに10箇所より10本の磁性体ワイアーをサンプリングし、各ワイアーの両端部近傍と中央部近傍の3箇所の断面を光学顕微鏡乃至は走査型電子顕微鏡により観察し、各々の断面における直径や厚みの平均値として求める。
(3)磁性体ワイアが所定の長さに切断されて、記録媒体中に埋め込まれている場合:
1枚あるいは複数枚の記録媒体を溶解した溶解液中から磁性体ワイアーを10本ランダムに抽出して、(2)と同様の測定を行う。記録媒体の溶解が困難な場合、複数の記録媒体を切断し、ランダムに抽出した30箇所の断面を光学顕微鏡乃至は走査型電子顕微鏡により観察し、各々の断面における直径や厚みの平均値として求める。
【0037】
また、本発明の磁性体ワイヤーの長さとしては特に限定されないが、大バルクハウゼン効果を起こすために10mm以上が好ましい。なお磁性体ワイヤーの最大長については、記録媒体の内部に含有されたときに、記録媒体から露出されない程度の長さであればよく、特に限定はされない。例えば、記録媒体から露出しないようにするためには、記録媒体がA4サイズの場合、磁性体ワイヤーの最大長は297mm以下であればよく、A0サイズの場合は1189mm以下であればよい。
【0038】
<記録媒体>
次に、本発明の磁性体ワイヤーを用いた記録媒体について説明する。
本発明の記録媒体は、本発明の磁性体ワイヤーを含むことを特徴とする。このため、記録媒体中に含まれる磁性体ワイヤーが非接触型の磁気信号検出手段の検出エリアを通過した場合、非接触型の磁気信号検出手段により検出可能な磁気信号を発することができる。
それゆえ、本発明の記録媒体は、例えば、部屋の出入り口に設置されたセキュリティーゲート(非接触型の磁気信号検出手段)を通過する人が、磁性体ワイヤーを含む記録媒体を部屋から持ち出したか否かを確認し、機密性の高い情報が印刷された書類の持ち出し監視等のようなセキュリティ用途などに利用することができる。
加えて、本発明の記録媒体には、電子写真方式やインクジェット方式等の公知の記録方法を利用して画像を形成することもできる。また、本発明の記録媒体に含まれる磁性体ワイヤーは、表面が絶縁性材料で被覆されているため、特に電子写真用転写紙として利用することが好適である。
【0039】
なお、本発明の記録媒体には磁性体ワイヤー以外にパルプ繊維が主成分として含まれ、その他にも必要に応じて通常の紙媒体に用いられる各種材料が含まれる。また、本発明の記録媒体の層構成は特に限定されるものではないが、パルプ繊維を主成分として含む紙基材を少なくとも有し、紙基材は2層以上の多層構成であってもよい。なお、磁性体ワイヤーは、記録媒体の厚み方向において記録媒体中のいずれの位置に含まれていてもよいが、基本的には紙基材中に含まれることが特に好ましい。
この理由は、磁性体ワイヤーは塗工層中に添加することも可能ではあるが、一般的な塗工層の厚みは3〜20μm程度と薄いために、これに合わせて磁性体ワイヤーの直径も小さくすると、30m/A以上の保磁力を得ることが極めて困難になるためである。また、記録媒体の表面近傍に磁性体ワイヤーが存在するため、記録媒体表面に磁性体ワイヤーに起因する凸部が形成され易く、転写抜けが発生してしまう場合がある。これに対して、紙基材の厚みは一般的には60〜110μm程度で塗工層よりも十分に厚い上に30m/A以上の保磁力を有する磁性体ワイヤーの直径と比較しても、記録媒体表面に磁性体ワイヤーを露出させないようにするための十分なマージンを確保できる。
【0040】
図4は、本発明の記録媒体の層構成の代表的な例を示す模式断面図であり、図4(1)は2層構成の例を、図4(2)、図4(3)は3層構成の例を示したものである。また、図中、10は磁性体ワイヤー、20、22、30、32、34、40、42は紙基材層、50は接着層を表す。
図4(1)に示される例では、積層された2つの紙基材層20及び紙基材層22の界面部分に磁性体ワイヤー10が配置された構成を有している。また、紙基材層20と紙基材層22とは各々の層に含まれるパルプ繊維間に形成される水素結合により結合している。このように2つの層の界面に磁性体ワイヤーを配置する構成は、本発明の記録媒体が2層構成のみならず3層以上の層構成を有する場合にも勿論適用できる。なお、図4(1)に示される記録媒体は、紙基材層20、22を各々作製した後に、いずれか一方の層の片面に磁性体ワイヤーを配置し、磁性体ワイヤーが配置された面に他方の層を積層するプロセスを経て作製することができる。
【0041】
図4(2)に示される例では、3つの紙基材層30、32、34がこの順に積層された3層構成からなる記録媒体において、紙基材層30と紙基材層34との間に位置する紙基材層33中に磁性体ワイヤー10が含まれる。図4(3)に示される例も3層構成からなる記録媒体について示したものであるが、紙基材層40と紙基材層42との間に設けられた接着層50中に磁性体ワイヤー10が含まれる。
なお、図4(2)に示される記録媒体の作製に際して、紙基材層32は、磁性体ワイヤーを分散させた紙料スラリーを抄紙することにより作製される。そして、紙基材層32が2つの紙基材層の間に位置するように3つの紙基材層30、32、34を積層するプロセスを経て作製される。また、図4(3)に示される記録媒体は、紙基材層40と紙基材層42とを、予め磁性体ワイヤーを混入させた接着剤を用いて貼り合わせたり、これら2つの紙基材層40、42の間に磁性体ワイヤーを挟み込むと略同時に接着剤により貼り合わせたりするプロセスを経て作製される。
【0042】
図5は、本発明の記録媒体の平面方向における磁性体ワイヤーの配置例を示す概略模式図であり、図中、10は磁性体ワイヤーを表す。ここで、図5(A)は、記録媒体の辺と比べて十分に短い長さの磁性体ワイヤー10が、記録媒体の平面方向にランダムに分散配置された状態を示したものであり、図5(B)は、一方の端が記録媒体の一方の短辺側、他方の端が記録媒体の他方の短辺側にまで達する長さを有する磁性体ワイヤー10が、記録媒体の長手方向に沿って湾曲した状態で配置された状態を示したものであり、図5(C)は、一方の端が記録媒体の一方の短辺側、他方の端が記録媒体の他方の短辺側にまで達する長さを有する磁性体ワイヤー10が、記録媒体の長手方向に沿って直線状に配置された状態を示したものである。なお、記録媒体中に含まれる磁性体ワイヤー10は図中に示されるように複数本でもよく、1本であってもよい。
なお、記録媒体平面方向における磁性体ワイヤーの配置状態が、図5(A)に示すような配置である場合には、記録媒体の断面構成は、図4(1)又は(2)に示されるような構成とすることが好ましい。一方、記録媒体平面方向における磁性体ワイヤーの配置状態が、図5(B)又は(C)に示すような配置である場合には、記録媒体の断面構成は、図4(3)に示されるような構成とすることが好ましい。但し、記録媒体平面方向における磁性体ワイヤーの配置状態と層構成との組み合わせは上述した場合のみに限定されるものではない。
【0043】
紙基材の主成分として用いられるパルプ繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、広葉樹および/または針葉樹のクラフトパルプ繊維、サルファイトパルプ繊維、セミケミカルパルプ繊維、ケミグラウンドパルプ繊維、砕木パルプ繊維、リファイナーグラウンドパルプ繊維、サーモメカニカルパルプ繊維等を使用することが好ましい。また、これらの繊維中のセルロースあるいはヘミセルロースを化学的に修飾した繊維も必要に応じて使用することができる。
さらに、綿パルプ繊維、麻パルプ繊維、ケナフパルプ繊維、バガスパルプ繊維、ビスコースレーヨン繊維、再生セルロース繊維、銅アンモニアレーヨン繊維、セルロースアセテート繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリ塩化ビニル、フルオロカーボン系繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、金属繊維、シリコンカーバイド繊維等の各繊維を、単独あるいは複数組み合わせて使用することができる。さらに、資源保護の観点から、いわゆる森林認証された認証林、植林木または間伐材チップから得たパルプを使用することが好ましい。
【0044】
また、必要に応じて、上記パルプ繊維にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル等の合成樹脂を含浸あるいは熱融着させて得られた繊維を使用することでテーバー摩耗量、及び内部結合強度を向上させることができる。
【0045】
また、更に上記パルプ繊維に、上質系および中質系の古紙パルプを配合することもできる。古紙パルプの配合量としては、用途や目的等に応じて決定されるが、例えば、資源保護の観点から古紙パルプを配合する場合には、紙基材に含まれる全パルプ繊維に対して10質量%以上、好ましくは30質量%以上配合することが好ましい。さらに資源保護の観点からいわゆる森林認証された認証林、植林木または間伐材チップから得られたパルプを使用することが好ましい
【0046】
本発明の記録媒体に用いられる紙基材には、不透明度、白さ、及び表面性を調製するために、必要に応じて填料を添加してもよい。
【0047】
上記紙基材に使用可能な填料の種類は特に限定されるものではなく、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク等の炭酸カルシウム系填料や、カオリン、焼成クレー、パイロフィライト、セリサイト、及びタルク等のケイ酸類や二酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ホワイトカーボン、サポナイト、ドロマイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、ベントナイト等の無機填料、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、キトサン粒子、セルロース粒子、ポリアミノ酸粒子、およびスチレン等の有機填料を使用できる。なお、電子写真方式における画質維持性および白色度向上の観点から中性抄紙での炭酸カルシウムの配合が好ましい。
【0048】
さらに、本発明の記録媒体を構成する紙基材には、サイズ剤等の各種薬品を内添または外添させることができる。
紙基材に添加可能なサイズ剤の種類としては、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤等のサイズ剤を挙げることができる。さらに、硫酸バンド、カチオン化澱粉などのサイズ剤と、定着剤とを組み合わせて使用してもよい。
【0049】
上記サイズ剤の内、電子写真方式の画像形成装置において、画像が形成された後の記録媒体の保存性の観点から、中性サイズ剤、例えば、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニルケテンダイマー、中性ロジン、石油サイズ、オレフィン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂等を用いることが好ましい。また、表面サイズ剤として、酸化変性澱粉、酵素変性澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース変性体、スチレンアクリル系ラテックス、スチレンマレイン酸系ラテックス、アクリル系ラテックスなどを単独もしくは組み合わせて使用することができる。
【0050】
さらに、本発明の記録媒体を構成する紙基材には、紙力増強剤を内添あるいは外添することができる。
紙力増強剤としては、でんぷん、変性でんぷん、植物ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、スチレン−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸エステル尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ジアルデヒドでんぷん、ポリエチレンイミン、エポキシ化ポリアミド、ポリアミド−エピクロルヒドリン系樹脂、メチロール化ポリアミド、キトサン誘導体等が挙げられ、これらの材料を単独あるいは混合して使用することができる。
また、この他にも、染料、pH調整剤等、通常の紙媒体に配合される各種助剤を適宜使用しても構わない。
【0051】
本発明の記録媒体は、上記紙基材を構成する主材料と、その他の材料とを混合して、これらを抄紙することによって作製した複数の紙基材(但し、複数の紙基材のうち少なくとも1つの紙基材が磁性体ワイヤーを含む)同士を貼り合わせて、2層以上の紙基材層からなる紙基材を作製し、これを記録媒体とすることができる。この時の層構成は、例えば図4に例示したような構成とすることができる。更に、この紙基材に必要に応じて後述するサイズプレス液の塗布及び顔料塗工層を形成してもよい。また、上記紙基材を構成する主材料と、上記紙基材を構成するその他の材料と、磁性体ワイヤーと、を混合してこれらを抄紙または多層抄紙した後に、更に必要に応じて後述するサイズプレス液の塗布及び顔料塗工層を形成することで作製してもよい。
【0052】
なお、記録媒体平面方向における磁性体ワイヤーが、図5(B)又は(C)に示すように配置される記録媒体を作製する場合には、本発明の記録媒体は以下のようにして作製することができる。
すなわち、帯状且つその長手方向に搬送される第1の紙基材と、帯状でその長手方向に搬送され、且つ第1の紙基材に対向配置されると共にその搬送方向が第1の紙基材と同一である第2の紙基材とを、接着剤を介して貼り合わせるプロセスを利用して記録媒体を作製することができる。この際、貼り合わせ前の2つの紙基材の間に、ロール等の回転体に巻回させた磁性体ワイヤーをモーター駆動などを利用して一方向に供給する磁性体ワイヤー供給装置から2つの紙基材の搬送方向と磁性体ワイヤーの軸方向とが略一致するように磁性体ワイヤーを供給することにより本発明の記録媒体を作製することができる。
【0053】
但し、上述したプロセスを経て本発明の記録媒体を作製する場合、磁性体ワイヤー供給装置と2つの紙基材の貼り合わせ位置との間に存在する磁性体ワイヤーには引っ張り応力が加わることになる。また、記録媒体中に配置される磁性体ワイヤーの本数が少ない場合には磁性体ワイヤー1本当たりに加わる引っ張り応力は著しく増大する。このため、磁性金属線材の平均直径が細くその引っ張り強度が小さい場合には、途中で磁性体ワイヤーが切断され、図5(B)又は(C)に示すように記録媒体平面方向に磁性体ワイヤーが配置された記録媒体を作製することが困難となる場合がある。しかしながら、磁性金属線材の平均直径が20μmを超える場合には、このような問題の発生を抑制することが容易となる。
また、図5(A)に示すの構成の記録媒体を作製する場合、磁性体ワイアーを所望の長さに切断する必要があるが、この際、引っ張り強度が小さいものは、応力をかけて引っ張りながら切断する場合、途中で切れて作業効率を著しく低下させる。しかし、平均直径が20μmを超える場合には、このような問題を回避できる。
【0054】
抄紙法としては特に限定するものではない。多層抄紙法または、従来知られている長網抄紙機や、円網抄紙機、ツインワイヤー方式など何れも使用できる。酸性または中性抄紙法いずれでも構わない。
【0055】
多層抄紙の方法としては、円網多筒抄紙、長網多筒、長網・円網コンビ、マルチヘッドボックス、短網・長網方式いずれの方法を用いても構わないし、例えば石黒三郎著の「最新抄紙技術−理論と実際」(製紙化学研究所,1984)に詳しく記載されている方法いずれを用いても構わないし、丸網を複数連ねた丸網多筒式等を用いてもよい。
【0056】
また、上記紙基材の表面(複数の紙基材によって記録媒体を構成する場合には、最表面層の紙基材の表面)には、下記に示すサイズプレス液を塗布することが好ましい。
サイズプレス液に用いるバインダは、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉などの未加工澱粉を始めとして、加工澱粉として酵素変性澱粉、燐酸エステル化澱粉、カチオン化澱粉、アセチル化澱粉などを使用することができる。また、その他にもポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、グアーガム、カゼイン、カードランなどの水溶性高分子及びそれらの誘導体などを単独あるいは混合して使用することができるが、これに限定されるものではない。ただし、製造コストの観点からは、より安価である澱粉を使用する場合が多い。
【0057】
上記サイズプレス液を上記紙基材表面(複数の紙基材によって記録媒体が構成される場合には、最表面の紙基材の表面)に塗布する方法としては、サイズプレスのほか、シムサイズ、ゲートロール、ロールコータ、バーコータ、エアナイフコータ、ロッドブレードコータ、ブレードコータ等の通常使用されている塗工手段を用いることができる。
【0058】
さらに、本発明の記録媒体には、少なくとも片面に主として接着剤と顔料からなる顔料塗工層用塗布液を塗工することにより顔料塗工層を形成してコート紙として用いることも可能である。
【0059】
また、高光沢画像を得るために、この顔料塗工層上に樹脂層を設ける事も可能である。
樹脂層として用いられる樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂であれば特に限定はなく、例えばエステル結合を有する樹脂;ポリウレタン樹脂;尿素樹脂等のポリアミド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−プロビオン酸ビニル共重合体樹脂;ポリビニルブチラール等のポリオール樹脂、エチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース樹脂;ポリカプロラクトン樹脂、スチレン−無水マレイン酸樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体樹脂、アクリル樹脂などを例示することができる。
【0060】
顔料塗工層用塗布液に含まれる接着剤としては、水溶性及び水分散性の何れか一方または双方の高分子化合物が用いられ、例えば、カチオン性澱粉、両性澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、エステル化澱粉、エ−テル化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、大豆蛋白、天然ゴム等の天然あるいは半合成高分子化合物、ポリビニルアルコール、イソプレン、ネオプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリアルケン類、ビニルハライド、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系重合体や共重合体類、スチレン−ブタジエン系、メチルメタクリレート−ブタジエン系等の合成ゴムラテックス、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、オレフィン−無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂等の合成高分子化合物等を用いることができる。そしてこれらの中から、記録媒体の品質目標に応じて1種あるいは2種以上が適宜選択して使用される。
【0061】
また、顔料塗工層用塗布液に含まれる顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、構造性カオリン、デラミカオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、微粒子状珪酸カルシウム、微粒子状炭酸マグネシウム、微粒子状軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の鉱物質顔料や、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂並びにそれらの微小中空粒子や貫通孔型の有機顔料等が挙げられ、これらの中から1種あるいは2種以上が用いられる。
【0062】
上記顔料塗工層用塗布液中の顔料に対する接着剤の配合割合は、顔料100質量部に対して5〜50質量部の範囲内にあることが好ましい。接着剤の顔料100質量部に対する配合割合が5質量部未満では、塗工層の塗膜強度が低く、紙粉が発生するという問題がある。一方、50質量部をこえると接着剤が過剰でコストアップとなり実用性が低くなる場合がある。
【0063】
上記顔料塗工層用塗布液中には、更に、各種助剤、例えば界面活性剤、pH調節剤、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、分散剤、流動変性剤、導電防止剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、酸化防止剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、紫外線吸収剤、消泡剤、耐水化剤、可塑剤、滑剤、防腐剤、及び香料等を必要に応じて適宜添加することも可能である。
【0064】
上記顔料塗工層用塗布液の上記記録用紙への塗工量については、本発明の記録媒体の使用目的に応じて適宜に選択されるものであるが、一般的には、記録媒体表面の凹凸を完全に覆う程度の量が必要であり、乾燥質量で片面当り2〜20g/m2 、コスト面を考慮すると2〜8g/m2が好ましい。
【0065】
上記顔料塗工層用塗布液を、上記サイズプレス液が塗布された上記紙基材表面に更に塗布する方法としては一般に公知の塗被装置、例えばブレードコータ、エヤーナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、バーコータ、カーテンコータ、ダイコータ、グラビアコータ、チャンプレックスコータ、ブラシコータ、ツーロールあるいはメータリングブレード式のサイズプレスコータ、ビルブレードコータ、ショートドウェルコータ、ゲートロールコータ等を適宜用いることができる。
【0066】
顔料塗工層は、紙基材上に設けられることで、記録媒体の片面或いは両面の表面層として形成され、表面層は1層あるいは必要に応じて2層以上の中間層を設け、多層構造とすることも可能である。なお、紙基材の両面へ塗工、又は多層構造にする場合、各々の塗工層を形成するための塗布液の量が同一、且つ塗布液に含まれる上記材料の種類及び含有量が同一である必要はなく、上記規定範囲を満たす範囲内で所要の品質レベルに応じて適宜調整して配合されればよい。
【0067】
また、記録媒体の一方の面に顔料塗工層を設けた場合、他方の面に合成樹脂層や接着剤と顔料等からなる塗被層、または帯電防止層等を設けて、カール発生防止、印刷適性付与、及び給排紙適性等を付与することも可能である。
さらに記録媒体の上記他方の面に種々の加工、例えば粘着、磁性、難燃、耐熱、耐水、耐油、防滑等の後加工を施すことにより、各種の用途適性を付加することも勿論可能である。
【0068】
本発明の記録媒体は、紙基材表面に上記サイズ剤や、サイズプレス液や、上記顔料塗工層用塗布液等が必要に応じて塗布された後に、スーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ等の平滑化処理装置を用いて平滑化処理するのが好ましい。また、オンマシンやオフマシンで適宜平滑化が施されてもよく、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温等も通常の平滑化処理装置に準じて適宜調節されるようにすればよい。
【0069】
本発明の記録媒体の坪量(JIS P−8124)は特に規定しないが、好ましくは60g/m2以上であることが望ましい。坪量が60g/m2を下回ると、記録媒体のこしが小さくなることより、電子写真方式の画像形成装置に用いられたときに、記録媒体上に転写されたトナー像をその表面に定着させる定着工程において、記録媒体の定着装置への巻き付きや、定着装置からの剥離不良にともなう画像欠陥を発生させやすくなる場合がある。また、同様に、坪量が60g/m2を下回ると、記録媒体中に含有されている磁性体ワイヤーが記録媒体表面近傍に存在し易くなるため、電子写真方式の画像形成装置により画像を形成した際に転写抜けが発生してしまう場合がある。
【0070】
さらに、本発明の記録媒体は、防湿包装によって密閉された状態から開封された直後の製品水分率が適切な範囲内、具体的には好ましくは3〜6.5質量%、より好ましくは4.5〜5.5質量%程度の範囲内に収まるように、紙基材を抄紙するときに抄紙機等により含水量が調整されていることが好ましい。また、作製された記録媒体の保管時に吸脱湿が発生しないように、作製された記録媒体は、所定枚数毎にポリエチレンラミネート紙等の防湿包装紙やポリプロピレン等の材料を用いて包装することが望ましい。
【実施例】
【0071】
以下に、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<実施例1>
−磁性体ワイヤーの作製−
原料となる磁性金属材料としては、直径が4〜5mmの金属ロッド(Co−Fe−Si−Cr−B合金)を使用した。この金属ロッドに含まれるCo、Fe、Si、Cr、B元素の組成比は、それぞれ、82重量%、5重量%、6重量%、4重量%、3重量%である。
また、磁性金属原料を充填するガラスチューブとしては、パイレックス(登録商標)ガラス製で外径が10mm、ガラス厚みが1.0mmのものを用いた。パイレックス(登録商標)ガラスは、米国のコーニングガラス社の商標であり、代表的な組成はSiOが81wt%、Bが13wt%、NaOが4wt%、Alが2wt%である。
【0072】
次に、金属ロッドの先端をガラスチューブ内に挿入した後、ガラスチューブ内金属ロッドを、高周波加熱装置により周波数440kHz、投入電力1〜2kWの条件にて加熱しガラスチューブ内の金属ロッドを溶融させた。
この状態で、ガラスチューブの下端を重力方向に引っ張って細線化し、これを25〜35℃のイオン交換水(電気抵抗:10MΩ以上)で冷却後、ワイヤー巻取り速度200m/分で巻き取ることにより、磁性金属線材の表面がガラスで被覆された線材(磁性体ワイヤー)を得た。
なお、このようにして得られた線材については、加熱処理等の磁気特性を変えるためのいかなる後処理も行わなかった。このような後処理は、コスト高を引き起こすからである。
【0073】
上述したTaylor−Ulitovsky法により得られた線材を、長さが25mmとなるように切断し、Co−Fe−Si−Cr−B系組成のアモルファス磁性金属線材をガラスで被覆した磁性体ワイヤーを得た。
この磁性体ワイヤーの保磁力は15.0A/m、コア層部分(アモルファス磁性金属線材)の平均直径は26μm、ガラス被覆層の平均厚みは4.1μmであった。なお、磁性体ワイヤーの外周面全体を走査型電子顕微鏡により観察したが、アモルファス磁性金属線材が露出している箇所はなく、ガラス被覆層により完全に被覆されていることが確認された。
【0074】
−記録媒体の作製−
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ、フリーネス:470ml)100質量部と、この紙料スラリー中のパルプ固形分100質量部に対して、カチオン化デンプン(商品名:日食ネオタック#53、日本食品化工株式会社製)0.20質量部、およびアルケニル無水コハク酸(ファイブラン81、王子ナショナル(株)製)0.05質量部を添加した。
これらの混合物の紙料スラリー(固形分濃度0.8質量%)を用いて、配向性抄紙機(熊谷理機工業株式会社製)により以下の抄紙条件にて第1、第2の紙基材層を作製した。
<抄紙条件>
・ドラム回転速度:1000回転/min
・紙料噴射圧力:1.0kgf/cm
・紙料噴出角度:60°
・ストローク回数:10
【0075】
作製した第1の紙基材層の片面に、直線状に伸ばした状態で磁性体ワイヤーを1本配置し、その上に第2の紙基材層を積層させた。このようにして界面に磁性体線材を含む2層の紙基材層を積層して得られたシートを、角型シートマシンプレス(熊谷理機工業株式会社製)で12kgf/cmの圧力で1分間プレスし、その後KRK回転型乾燥機(熊谷理機工業株式会社製)で加熱温度100℃、回転速度100cm/minで乾燥し、紙厚100μmの記録媒体を得た。
【0076】
<実施例2>
実施例1において、磁性体ワイヤーを作製する際のワイヤー巻取り速度を60〜80m/分に変更した以外は、実施例1と同様にして線材を作製し、これを実施例1と同様の長さに切断して磁性体ワイヤーを得た。続いて、この磁性体ワイヤーを用いた以外は実施例1と同様にして記録媒体を作製した。
なお、得られた磁性体ワイヤーの保磁力は10.3A/m、コア層部分(アモルファス磁性金属線材)の平均直径は35μm、ガラス被覆層の平均厚みは3.6μmであった。また、磁性体ワイヤーの外周面全体を走査型電子顕微鏡により観察したが、アモルファス磁性金属線材が露出している箇所はなく、ガラス被覆層により完全に被覆されていることが確認された。
【0077】
<比較例1>
実施例1において、磁性体ワイヤーを作製する際に用いた金属ロッドの組成を、FexSiyBz(x=0.77,y=0.15,z=0.08)に変更した以外は、実施例1と同様にして線材を作製し、これを実施例1と同様の長さに切断して磁性体ワイヤーを得た。続いて、この磁性体ワイヤーを用いた以外は実施例1と同様にして記録媒体を作製した。
なお、得られた磁性体ワイヤーの保磁力は67A/m、コア層部分(アモルファス磁性金属線材)の平均直径は15μm、ガラス被覆層の平均厚みは7μmであった。また、磁性体ワイヤーの外周面全体を走査型電子顕微鏡により観察したが、アモルファス磁性金属線材が露出している箇所はなく、ガラス被覆層により完全に被覆されていることが確認された。
【0078】
<比較例2>
実施例1で用いた切断済みの磁性体ワイヤーをバッファードフッ酸中に浸漬し、磁性金属線材を被覆するガラス層をエッチングして除去することにより、保磁力が12A/m、平均直径26μmで、表面が何ら被覆されていないアモルファス金属線材を磁性体ワイヤーとして用いた以外は実施例1と同様にして記録媒体を作製した。
【0079】
−評価−
各実施例及び比較例の記録媒体を用いて、非接触型の磁気信号検出手段(ユニパルス(株)社製、SAS物品監視システム、以下、「検出ゲート」と略す)を通過させ、その際の検出率を評価した。
なお、評価に用いた検出ゲートは、交番磁界を形成する励磁コイルと記録媒体100中の磁性体ワイヤーの磁化反転を検出する検出コイルとを備えた2つの検出器を対にして配置したものである。図6は、実施例の評価に用いた検出ゲートの構成を示す概略模式図であり、100が記録媒体、300が検出ゲート、302が第1の検出器、304が第2の検出器、400が床面を表し、Hは床面400からの高さを意味する。
図6に示すように検出ゲート300は、床面400上に対向配置された第1の検出器302と第2の検出器304とから構成され、検出器302および304は同等の構成を有し、その高さは約2mである。また、2つの検出器302、304間の距離は約0.7mである。
【0080】
評価に際しては、2つの検出器302、304間の中央部(図中の点線のライン)の交番磁界の最大強度が、床面400からの高さHが約650mmの位置で約0.8Oe、床面400から約850mmの位置で約0.5Oe、床面400から約1050mmの位置で約0.1Oeとなるように調整した。また、記録媒体中の磁性体ワイヤーの磁化反転の有無の検出は、磁化反転が起った際に検出コイルに発生した電流をモニターすることにより実施した。
【0081】
ここで、評価は、記録媒体100が床面400からの高さが約650、850、あるいは、1050mmのいずれかを保ったまま2つの検出器302、304間の中央部近傍を通過させることにより実施した。この通過テストを、同じ床面高さ(すなわち、同じ最大交番磁界)について記録媒体100の向きをテスト毎にランダムに変えながら10回実施し、この時の検出回数をカウントし、通過テスト回数に対する検出回数の比から検出率(%)を求めた。評価に用いた記録媒体やこれに含まれる磁性体ワイヤーの諸特性等を表1に、また、上述した検出テスト結果の他に、電子写真方式の画像形成装置による画質評価(転写抜け)を実施した結果を表2に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
なお、表1,2中に示す各評価の評価方法や評価基準は以下の通りである。
−記録媒体の外観評価−
表1中に示す記録媒体の外観は、得られた記録媒体を目視観察することにより、磁性体ワイヤーに起因する記録媒体表面の盛り上がり具合を評価することにより実施した。なお、評価基準は以下の通りである。
○:磁性体ワイヤーの存在位置に関係なく記録媒体表面は平坦。
△:磁性体ワイヤーが存在する部分で、記録媒体表面がやや盛り上がっている。
×:磁性体ワイヤーが存在する部分で、記録媒体表面が顕著に盛り上がっている。
【0085】
−画質評価−
表2中に示す画質評価は、電子写真方式の画像形成装置(富士ゼロックス社製、DocuCenterColor f450)を用いて普通紙モードにて、黒色のハーフトーン画像を形成し、得られた画像を目視で観察した際の転写抜けの発生具合を評価することにより実施した。なお、評価基準は以下の通りである。
○:転写抜け未発生。
△:画像の一部で画像濃度が薄くなっており、多少見栄えが悪い。
×:画像の一部が白く抜けており印刷物として問題あり。
【0086】
−検出率−
表2中に示す検出率の評価基準は以下の通りである。
◎:検出率90%以上100%以下
○:検出率80%以上90%未満
△:検出率50%以上80%未満
×:検出率0%以上50%未満
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】大バルクハウゼン効果を説明するための図である。
【図2】アモルファス磁性金属線材(組成:Coを50重量%以上含むCo系アモルファス磁性材料)の直径に対する保磁力の変化を示すグラフである。
【図3】保持力の測定方法を説明するための模式図
【図4】本発明の記録媒体の層構成の代表的な例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の記録媒体の平面方向における磁性体ワイヤーの配置例を示す概略模式図である。
【図6】実施例の評価に用いた検出ゲートの構成を示す概略模式図である。
【符号の説明】
【0088】
10 磁性体ワイヤー
20、22、30、32、34、40、42 紙基材層
50 接着層
100 記録媒体
300 検出ゲート
302 第1の検出器
304 第2の検出器
400 床面
500 検出コイル
510 励磁コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体中に含まれ、非接触型の磁気信号検出手段により検出可能な磁気信号を発することができ、
絶縁性材料により表面が被覆された磁性金属線材を有し、保磁力が30A/m以下であり、且つ、大バルクハウゼン効果を有することを特徴とする磁性体ワイヤー。
【請求項2】
前記磁性金属線材の平均直径が、20μmを超え40μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の磁性体ワイヤー。
【請求項3】
前記磁性金属線材がアモルファス磁性金属線材であり、該アモルファス磁性金属線材を被覆する絶縁性材料がガラスであることを特徴とする請求項1に記載の磁性体ワイヤー。
【請求項4】
Taylor−Ulitovski法により作製されたことを特徴とする請求項3に記載の磁性体ワイヤー。
【請求項5】
前記アモルファス磁性金属線材を被覆するガラスからなる被覆層の平均厚みが、1μm以上10μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項3に記載の磁性体ワイヤー。
【請求項6】
絶縁性材料により表面が被覆された磁性金属線材を有し、保磁力が30A/m以下であり、且つ、大バルクハウゼン効果を有する磁性体ワイヤーを含む記録媒体。
【請求項7】
パルプ繊維を主成分として含む紙基材を有し、前記紙基材中に前記磁性体ワイヤーが含まれることを特徴とする請求項6に記載の記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−20579(P2008−20579A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191116(P2006−191116)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】