説明

磁性塗料を用いた装飾方法および装飾品

【課題】 色彩感、光沢に優れ、見る方向によって色調を変化させるとともに、立体感に富んだ装飾模様を形成させる装飾方法と、該方法を用いて装飾された装飾品を提供する。
【解決手段】 磁性材料で鱗片状基材を被覆した偏光性顔料を含有する塗料により被装飾材を被覆し、塗料が未硬化状態にあるときに、磁力を印加することにより偏光性顔料を磁力により吸引、および磁力線の方向に配向させ、模様を形成させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性塗料を用いた装飾方法、および該方法を用いて装飾された装飾品に関するもので、さらに詳しく述べると、被装飾材に磁性材料で鱗片状基材を被覆した偏光性顔料を含有する塗料を塗布し、該塗料が未硬化状態にあるときに、磁力を印加して、偏光性顔料を磁力線の方向に配向させ模様を形成するようにした装飾方法、および該方法を用いて装飾された装飾品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被塗布物の裏面に磁石を設置して置き、磁性金属被覆顔料を含有する塗料を用いて塗装し、塗料が未硬化状態にあるときに、磁石の磁力により磁性金属被覆顔料に基づいて模様を形成させるようにした塗装方法と塗装物は、従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、偏光パール粉を含有する偏光パール塗料を用いて印刷した装飾層を容器表面に有する偏光パール装飾容器も、従来より知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
上記特許文献1記載の磁性金属被覆顔料は、雲母、二酸化チタン被覆雲母等の鱗片状顔料の表面に、ニッケル、鉄等から選択される一種以上の磁性金属を被覆したもので、磁石の磁力によって模様を形成させるようにしている。
【0005】
しかし、色彩感や光輝性感に優れた模様塗膜を形成するためには、着色ベース塗料の塗装、磁性模様形成クリア塗料の塗装、クリア塗料の塗装等、塗装工程が多くあり、生産コストが高くつくという問題があった。
【0006】
上記特許文献2記載の装飾層は、パール色自体の色調を変化させ、深みのあるパール光沢が得られているが、模様は、平面上に印刷されたものであり、立体感に乏しいという問題があった。
【特許文献1】特開2004−209458号公報
【特許文献2】特開2004−358812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を解決することを課題とし、色彩感、光沢に優れ、見る方向によって色調を変化させるとともに、立体感に富んだ装飾模様を形成させる装飾方法と、該方法を用いて装飾された装飾品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、装飾方法として、磁性材料で鱗片状基材を被覆した偏光性顔料を含有する塗料により被装飾材を被覆し、塗料が未硬化状態にあるときに、磁力を印加することにより偏光性顔料を磁力により吸引、および磁力線の方向に配向させ、模様を形成させることを特徴とする構成を採用する。
【0009】
偏光性顔料の基材として、鱗片状基材が、雲母、アルミニウム、アルミナ、シリカから選択される少なくとも一つ以上の成分からなることを特徴とする構成を採用し、磁性材料として、磁性材料が、酸化鉄であることを特徴とする構成を採用する。
【0010】
偏光性顔料の別実施例として、上記構成に付加して、偏光性顔料が、前記磁性材料よりも外表面に一層または複数層からなる被覆層を設けており、前記被覆層の総厚により色彩を調整することを特徴とする構成を採用する。
【0011】
装飾品は、上記の装飾方法を用いて装飾されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
磁性材料で鱗片状基材を被覆した偏光性顔料を含有する塗料を用いて装飾し、塗料の未硬化の状態で磁力を印加させ、磁力線に基づく模様を形成させるようにしているので、形成された模様は、立体感に富んだ深みのある光沢を有するとともに、見る方向によって種々の色調に変化させる模様を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の装飾方法、および該装飾方法を用いて装飾された装飾品について説明する。
まず、本発明の装飾に使用する塗料について説明する。
塗料として、基体樹脂中に、磁性材料で鱗片状基材を被覆した偏光性顔料を含有する塗料が用いられる。
【0014】
偏光性顔料として、鱗片状の雲母、またはアルミニウム、アルミナ、シリカ等に金属酸化物等を被覆したもので、金属酸化物等の種類により、赤色、青色、緑色などの色調を有する偏光色が得られるような赤色偏光性顔料、青色偏光性顔料、緑色偏光性顔料等が公知となっており、本発明の顔料として、それらの内から適宜選択して用いることができる。
【0015】
磁性材料は、従来公知のニッケル、鉄等の粉末、或いは酸化鉄等の金属酸化物の粉末が用いられ、本発明の実施例としては、粉末状の酸化鉄を鱗片状基材に被覆している。
【0016】
偏光性顔料として、鱗片状基材の平均厚さ0.5μm以下、平均径5〜50μmの鱗片状物で、平均厚さに対して平均径の比は、10〜100が好ましい。
【0017】
また、偏光性顔料は、磁性材料を被覆した上に、さらに酸化チタン等の金属酸化物の粉末、合成樹脂、またはその混合物等を被覆したものであってもよい。
その際、金属酸化物の粉末、合成樹脂の種類、被覆の厚さ等により、色彩を調整することができる。
【0018】
本発明に使用する塗料は、基体樹脂として、従来公知の樹脂が用いられ、所要の溶剤に溶解ないしは分散させ、前記偏光性顔料を混合させて得られる。
【0019】
被装飾品は、プラスチック、木材、ガラス、アルミニューム等の非磁性材料であればよく、板状体シート状物、コンパクト等の化粧品容器の蓋体、その他箱状の包装容器の装飾にも好適に利用される。
【0020】
次に、本発明の装飾方法について説明する。
搬送ベルト、載置台等に被装飾品を置き、被装飾品の裏面に磁石を設置後、装飾面に塗料を塗布する。
塗布は、スプレー塗装その他公知の方法により行われる。
塗料の未硬化状態で、塗料中の偏光性顔料は、磁石の磁力によって吸引され、該顔料の長手方向が磁力線に平行になるように配向され、模様が形成される。
次いで、塗料を硬化させると、優れた光沢を有する模様が塗装された装飾品を得ることができる。
【0021】
磁力線の方向と磁力の強さに応じて偏光性顔料の配向度を調整することにより、種々の模様が形成できる。
磁石から離れ、磁力が掛からない部分では配向は起こらず、偏光性顔料はランダムの状態であり、磁石の中心の部分では表面に対して垂直方向に、磁石の周縁は斜め方向に配向される。
したがって、配向度によって反射光の強さが大きく異なるため、立体感が強調されることになる。
さらにまた、顔料が偏光性顔料であるから、見る方向によって色調が変化して複雑な模様を見ることもできる。
【0022】
磁石は、所望する文字、マーク、図柄等の模様形状とすることができ、偏光性顔料を吸引し、配向させる磁力であればよいので、永久磁石、電磁石、或いは可撓性のあるマグネットラバー、マグネットシートも使用できる。
また、模様は、磁力の強さと磁力線の方向によって形成されるのであるから、所望する磁力の強さと磁力線の方向を得るために、磁石の配置場所、状態を適宜に設定することができる。
【実施例】
【0023】
次に、本発明の装飾方法を用いて装飾したコンパクト容器の蓋体について説明する。
塗料の偏光性顔料については、磁性材料として、酸化鉄(Fe2 3 )を使用した赤色偏光性顔料を用いた。
磁石として、円柱状の永久磁石を用いた。
装飾は、蓋体を、磁石を取付けた載置台に載置し、蓋表面に塗料をスプレー塗装によって塗布して行った。
【0024】
形成された模様は、全体として赤褐色の塗装面の中で、磁石の縁に沿って光沢を有する円形リング状の光沢模様が形成され、磁石の中心にいくにしたがって、周辺と同じく赤褐色となっていた。
そして、見る方向によってリング状の光沢模様のみが明確に見えたり、リング状の光沢が薄くなり、中心部分の赤色光沢が明確になったり、さらには、リング状の光沢が広がって見えたりするような色調、模様形状が変化する従来にない模様を有するコンパクト容器の蓋体が得られた。
【0025】
磁性材料として使用する酸化鉄としては、前記のFe2 3 に変えて、Fe3 4 、FeOや、それらの混合物を用いてもよい。
【0026】
前記実施例では、本発明の装飾方法を容器の蓋体の装飾に用いたが、容器に接着するシートの装飾に、本発明の装飾方法を適用し、装飾されたシートを容器に接着させるようにしてもよい。
【0027】
次に、印刷による装飾方法に係る別実施形態について説明する。
前記実施形態では、装飾をスプレー塗装、その他の塗装によって行ったが、偏光性顔料を溶剤に溶かしたインキを用い、印刷によって装飾することができる。
【0028】
印刷にあたっては、被装飾材は、磁石が嵌合配設された治具によって保持され、被装飾面にベタ刷り印刷が行われる。
印刷方法は、シルクスクリーン印刷、パット印刷等、その他公知の印刷方法から適宜に選択できる。
【0029】
印刷が施されたときから、インクが乾燥するまでの間は、インクは流動状態にあるので、偏光性顔料は、磁石の磁力によって吸引配向されて独特の模様が形成される。
【0030】
模様は、スプレー塗装等と同様に、磁力の強さ、磁力線の方向に応じて形成されるので、磁力の形状、配置状態などを適宜に設定することによって所望する模様が得られる。
本実施形態では、スプレー塗装に比較して治具の数は少なくてすむから、治具の変更による印刷模様の変更が容易となる。
したがって、多様な模様を少量ずつ印刷して装飾する場合に有利である。
【0031】
上記実施形態では、被装飾体に直接印刷するようにしたが、紙、フィルム状に印刷を施し、被装飾体に貼着、転写してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の装飾方法によって、立体感に優れ、見る方向によって、色調、模様形状が変化する従来になかった模様を有する装飾品を得ることができ、コンパクト等の化粧品容器をはじめ、各種の包装容器、さらには、一般的な板状体の塗装シートの装飾にも広く利用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料で鱗片状基材を被覆した偏光性顔料を含有する塗料により被装飾材を被覆し、塗料が未硬化状態にあるときに、磁力を印加することにより偏光性顔料を磁力により吸引、および磁力線の方向に配向させ、模様を形成させることを特徴とする装飾方法。
【請求項2】
鱗片状基材が、雲母、アルミニウム、アルミナ、シリカから選択される少なくとも一つ以上の成分からなることを特徴とする請求項1記載の装飾方法。
【請求項3】
磁性材料が、酸化鉄であることを特徴とする請求項1または2記載の装飾方法。
【請求項4】
偏光性顔料が、前記磁性材料よりも外表面に一層または複数層からなる被覆層を設けており、
前記被覆層の総厚により色彩を調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装飾方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の装飾方法によって装飾された装飾品。

【公開番号】特開2006−281011(P2006−281011A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100708(P2005−100708)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】