説明

磁気エンドエフェクタならびにその案内および位置決め装置

【課題】体内物体のための磁気案内装置(ロボット)を提供する。
【解決手段】案内装置100は、モータ駆動式の位置決め装置102を備えている。位置決め装置は、位置決め装置の接続インターフェースの並進運動のために作動する最大3自由度を含んでいる。接続インターフェースには、磁気エンドエフェクタ104が接続され、または接続可能である。磁気エンドエフェクタは磁場発生器の回転運動のために作動する最大2自由度を含んでいる。本発明によれば、磁気エンドエフェクタの2自由度の少なくとも一方が、エンドエフェクタ筐体内に収容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般的に、プローブを磁気的に案内するための医療用ロボットシステムに関し、特に、体内の物体、好ましくは内視鏡カプセルまたはカテーテルのための磁気案内装置に関する。本発明による案内装置を、医療への応用の例によって以下に説明する。しかしながら、本発明は、その全内容を他の技術システムにも適用できる。こうした技術システムは、たとえば、制御対象の物体が中に入れられるチュービングシステムとすることができる。
【背景技術】
【0002】
医療の分野では、体内物体を体外で発生させた磁場によって(手動で、または事前プログラムに従って)制御するためのシステム(ロボットシステム)が知られている。体内物体、たとえば内視鏡カプセル、プローブまたはカテーテルは、そのために、磁場の影響を受けるように構成された要素を有し、これはたとえば、物体に取り付けられた永久磁石である。体内物体の方向決めおよび/または位置決めは、体外で発生させた磁場により制御できる。体外磁場を提供するには、たとえば磁気共鳴画像スキャナの形態のように、傾斜電磁場や、小型設計のソレノイド等による場合のように、スポット状の電磁場を発生させるシステムのほか、永久磁石を含むシステムが知られている。
【0003】
たとえば磁気共鳴画像スキャナの設計による傾斜電磁場発生システムには、医療現場や病院において一般的な他の電気消費器材と比較して、これらの装置の電力需要が非常に大きく、またその設計上、医療現場や病院において一般的な他の専門的器械と比較して、非常に嵩張り、重いという欠点がある。しかしながら、磁気共鳴画像スキャナの設計によるシステムの利点としては、体内物体を制御するために、その物体の位置において傾斜電磁場を微細に調整可能および再現可能となるように設定できる点と、可動部が患者を取り囲む静止した剛性のシェルの内側に設置されているため、可動部による患者へのリスクを大幅に低減できる点が挙げられる。
【0004】
以下、「小型設計の磁場発生器」という用語により、これらの装置が装置の周辺空間内に広がる磁場を発生し、従って装置がその発生された磁場の中心に位置すると理解されたい。特に、小型設計の磁場発生器により発生された磁場の使用範囲は、前記磁場発生器の空間環境へと広がる。これと対照的なものが、たとえば磁気共鳴画像スキャナの設計による傾斜磁場発生器であり、その使用範囲は環状装置の内部に広がり、患者をその中へと移動させなければならず、すなわち、利用可能な磁場は、磁場発生器を取り囲むのではなく、そこから遠ざかる(環状装置の半径方向に内側の)方向に広げられる。小型設計の磁場発生器は、たとえば1つまたは複数のソレノイドまたは1つまたは複数の永久磁石から、またはこれらの組み合わせから構成できる。
【0005】
ここで全体を通して使用される「力」という用語は、機械的な力またはトルクを表すことができる。
【0006】
上記の定義による小型設計の磁場発生器の使用には、装置の電力需要が医療現場や病院における他の一般的な電気消費器材と比べて同等であり、またその設計上、大きさと重量が医療現場や病院における他の一般的な専門的器械と比べて同等であり、すなわちこれらが基本的に、現場や病院において通常の労力で移動させて使用するのにも適しているという利点がある。しかしながら、小型設計の磁場発生器を体内物体の制御に使用する場合の欠点は、体内物体の位置における磁場を調整するために、小型設計の磁場発生器(たとえば、永久磁石またはソレノイド)の、空間内での位置と方向の制御が必要であり、すなわち小型設計の磁場発生器を、患者に対して空間内で移動させなければならないことである。現在の先行技術によれば、小型設計の磁場発生器の空間内での位置決めは、手動か、アクチュエータ式(モータ駆動式)ロボット装置、すなわちいわゆる磁気案内装置のいずれかによって実現される。小型設計の磁場発生器の他の欠点は、使用範囲内での磁場の強度が、磁場発生器からの距離の増加に伴って急激に低減することである。そのため、小型設計の磁場発生器を制御対象の体内物体にできるだけ近く位置決めして、体内物体に対して、体内物体を制御するのに十分な磁場の影響を与えられるようにすることが有利であり、おそらく必要である。
【0007】
小型設計の磁場発生器を手動で案内して位置決めする場合、構造を可能な限り簡素化できるという利点を有する。その実施形態としては、小型設計の磁場発生器の重量を補償するための、手で持てる永久磁石や手動で案内する受動的な(すなわちアクチュエータ式ではない)支援システムを移動させる方法がある。また別の利点として、制御している人物が、少なくとも自分の触覚によって、小型設計の磁場発生器の手動での位置決めによる運動パラメータと、特に患者の体との衝突および患者の体に対する力の作用に関する持続的な情報フィードバックを得るため、小型設計の磁場発生器を位置決めしている際に、患者を危険に晒す動作を避けられる。しかしながら、手動の案内によって小型設計の磁場発生器を空間内で位置決めする方法には欠点がある。すなわち、小型設計の磁場発生器を位置決めする動作による体内物体の位置決めの制御効果を直感的に予想できない。これは、制御している人物が、体内物体との直接的な視覚的つながりを持たないため、その現在の位置と方向に関する情報を得られないからである。すなわち、体内物体の現在の位置と方向に関する直接的な情報が、制御する人物に磁場発生器を介して伝えられず、これは飛行機で言えば、実質的に夜間の有視界飛行のようなものである。上記の装置を用いた案内方法は、熟練者しか実行できず、おそらくは十分な結果が得られないことは明白である。この事実は、たとえば特許文献1に記載されている。
【0008】
これに対して、小型設計の磁場発生器をロボットの案内により空間内で位置決めする方法には、体内物体と小型設計の磁場発生器を制御するロボット装置(ロボットアーム)との間の直接的な情報フィードバックにより、制御する人物は直感的かつ予想可能に体内物体の位置と方向を制御できるという利点がある。このような情報フィードバックの原理は、上記の特許文献1に記載されているため、これに関して、同文献を参照することで、本出願の技術的教示をよく理解することができる。
【0009】
しかしながら、小型設計の磁場発生器をロボットの案内により空間内で位置決めする方法には、小型設計の磁場発生器をロボットの案内により位置決めする装置が基本的に、患者の体に力の作用を及ぼすか及ぼさないかを問わず、患者の体と衝突し、それゆえ患者または制御している人物の体に、それを危険に晒すような作用を与える原因となるような動作をしかねないという欠点がある。換言すれば、従来の概念のロボットは、誤って移動させた場合に人物に致命傷を与えかねず、または近くの物品に損害を与えることがありえるため、通常は、それぞれのロボットの運動域から離れた安全領域を設ける必要がある。
【0010】
前述のように、小型設計の磁場発生器を制御対象の体内物体のできるだけ近くに配置して、物体に十分な磁力を作用させることが有利である。小型設計の磁場発生器を所定の力で患者の体に押し付け、体のたとえば腹部領域に凹部を形成して、小型設計の磁場発生器を制御対象の体内物体にさらに近づけられるようにすることも有利となりうる。このような状況では、小型設計の磁場発生器の位置決めと方向付けのどちらの場合にも、磁場発生器の運動が直接(機械的に)患者の体に伝わる可能性があり、その結果、患者の体に衝撃を与え、患者を危険に晒すことになりうる。また、従来の意味における安全領域が、この場合には当てはまらないことも明らかである。
【0011】
患者の体への衝突または過剰な力の作用を防止するために、いわゆる仮想バリアを構築することが技術的に可能である。仮想バリアは、小型設計の磁場発生器をロボットの案内により位置決めするための装置の制御システムのソフトウェアの中に設けられた、装置が所期の機能としてはそこを越えないような、空間座標またはアクチュエータの位置の形式での制限である。すなわち、プログラミングの方法によって、上記の安全領域を仮想的に構築することが基本的に可能である。しかしながら、この技術的方法の欠点は、患者の個々の解剖学的事実(肥満型、やせ形、男性、女性等)を考慮できないことである。その結果、各々の場合で最善となるように、小型設計の磁場発生器を制御対象の体内物体に接近させることができなくなる。仮想バリアの他の欠点は、これらがソフトウェアレベルで組み込まれるため、異常を検出するための別の手段をソフトウェアレベルで設けなければならない点である。技術的知識の乏しい使用者では、おそらく早期に異常を発見できず、またこれを克服できない。
【0012】
上記の定義による仮想バリアとは対照的に、検査対象の患者の体を、物理的に存在する剛性バリア、たとえばケージ等によって、小型設計の磁場発生器をロボットの案内により位置決めする装置から分離して、患者を危険に晒すような患者の体への衝撃のリスクを排除することもできる(クラッシュ保護)。しかしながら、この技術的方法の欠点は、剛性バリアそのものに幾らかの空間が必要となり、その空間を、小型設計の磁場発生器をロボットの案内により位置決めする装置には使用できなくなり、また、剛性の物理的バリアに少なくともそれを患者の解剖学的特徴に近づけるような調節手段が付加的に設けられていないかぎり、前記バリアは患者の個々の解剖学的事実を考慮に入れることができないという点である。それゆえ、小型設計の磁場発生器を近づけることにとって有利な、患者の体への力の作用をもはや提供できなくなり、すなわち、物理的バリアを設置するというこの技術的解決策により、(個々の場合で)最善となるように小型設計の磁場発生器を制御対象の体内物体に接近させることもできなくなる。
【0013】
特に、医療現場や病院でアクチュエータ式(モータ駆動式)システムを使用する場合、リスク開示に基づく厳格な安全要求を満たす必要がある。小型設計の磁場発生器をロボットの案内により位置決めする場合の患者へのリスクは、とりわけ、小型設計の磁場発生器の位置決めおよび/または方向付けのためにその装置が移動し、それが患者の体に力の作用が及ぶか及ばないかを問わず衝突し、それゆえ患者の体に衝撃を与えて、患者を危険に晒す場合があることから生じる。
【0014】
さらに悪いことに、特定の条件では、患者の体に力の作用が及ぶか及ばないかを問わず、所定の衝突が、たとえば小型設計の磁場発生器を制御対象の体内物体にできるだけ近づけるために有利でさえある場合があり、これはすでに指摘したとおりである。この場合、小型設計の磁場発生器をロボットの案内により位置決めするための装置が患者の体に与える力の作用のセンサによるフィードバックは、この力の作用を特に発生させ、また制限するために、有利であり、必要である。これにより、患者の体への力の作用は、患者を危険に晒さない範囲にとどめることができる。しかしながら、この場合の問題は、衝突の状態を検出するセンサが故障し、または誤った測定結果を供給する可能性があり、後者の異常はおそらく、まったく気付かれないか、気付かれても(患者にとって)手遅れとなる。
【0015】
さらに、このような装置のリスク開示にとって肝要なのは、アクチュエータによる(モータにより発生された)どのような最大の力が異常時に患者に加えられる可能性があるか、という問題である。たとえば、センサに異常があると、装置が患者の体に対する力の作用を、患者に危険を及ぼさない範囲を越えて、すなわち患者を危険に晒す範囲まで増大させるという結果を招きかねない。これは、装置内で使用されるアクチュエータまたはモータ型駆動手段、たとえば電気モータ、ピエゾ駆動手段、油圧または空気圧制御ピストン、電磁駆動手段等には、所期の機能において提供されるものより大きな力を発生できる/発生しなければならないことが求められるからである。
【0016】
小型設計の磁場発生器のロボットガイドは、(最大で)5つの動作自由度で小型設計の磁場発生器を位置決めする必要がある。前記5つの自由度とは、互いに直交するように配置された3つの空間軸に沿った並進運動および、互いに直交しており、好ましくは小型設計の磁場発生器により発生される磁場の分極軸に直交する空間軸周りの回転運動であり、これらの回転運動を以下、ピッチング運動およびヨーイング運動と呼ぶ。分極軸は、小型設計の磁場発生器のN極およびS極を結ぶ線と一致する。磁場の前記分極軸周りでの小型設計の磁場発生器の回転運動(ここで、「ローリング運動」と定義する)は空間内の磁場を変化させないため、小型設計の磁場発生器をそのロボットガイド装置により位置決めすることは得策ではなく、または技術的に無意味であるため、無用である。
【0017】
小型設計の磁場発生器をロボットの案内により位置決めする装置は、好ましくはロボットアームまたはエクステンションである。現在知られている市販のロボットアームは、オートメーション工学に広く利用されており、高い移動速度、高い精度、およびトラッキングと耐荷重性の可変性に関して最適化されている。
【0018】
これに対して、体内物体を制御するために小型設計の磁場発生器をロボットの案内により位置決めする場合、通常の移動速度はオートメーション工学における一般的な移動速度より確実に遅い。オートメーション工学での移動速度は最大毎秒10メートル以内であるのに対し、本発明による小型設計の磁場発生器をロボットの案内により位置決めする装置を使用する場合に必要な移動速度は確実にそれより低く、たとえば最大毎秒0.1メートルの範囲である。オートメーション工学のための現在知られている市販のロボットアームの欠点は、アクチュエータ要素が高速用に設計されているため、大きな力を放出しうる点である。さらに、この種類のロボットはしばしば、重い荷重(ロボットアームの自重を含む)を担持し、移動させなければならないため、ロボットアームを移動させるために、大きな駆動力および/またはトルクが必要となる点である。このために、オートメーション工学において、これらのロボットアームは、前述のような剛性バリア内でのみ使用される。したがって、小型設計の磁場発生器をロボットの案内により位置決めするために使用された場合、制御エラーまたは異常が患者の体に衝撃を与え、患者を危険に晒しかねない。
【0019】
しかしながら、本発明により体内物体の制御のために小型設計の磁場発生器をロボットの案内によって位置決めする場合、精度およびトラッキングと耐荷重性の可変性に対する要求は、オートメーション工学における現在の通常の要求より確実に低い。体内物体を正確に位置決めするために体外の小型設計の磁場発生器を移動させる精度は、ミリメートルから1センチメートルの範囲で十分であり、それは、小型設計の磁場発生器の位置がこの範囲内でずれても、体内物体の位置での磁場はほとんど変化しないからである。さらに、体内物体の制御のために小型設計の磁場発生器をロボットの案内により位置決めする場合、稼働される自由度数が5つに限定されていることおよび、患者の体の周囲での動作範囲が制限されていことから、トラッキングの可変性の要求は、オートメーション工学で一般的な要求と比較して、制限される。さらに、オートメーション工学においては、様々な作業や操作に適し、様々な荷重に適合させることのできる可変的なロボットがしばしば使用される。これに対して、本発明による小型設計の磁場発生器は、変化しない一定の荷重を構成する。したがって、小型設計の磁場発生器をロボットの案内により位置決めする装置は常に同じ荷重を有し、これに対して、オートメーション工学で使用される荷重は一般に異なり、動的に変化する。
【0020】
体内物体を制御するために小型設計の磁場発生器をロボットの案内により位置決めする場合、前述のように、精度、トラッキングと耐荷重性の可変性への要求は、オートメーション工学における要求と比較して、確実に低い。したがって、オートメーション工学用のロボットを、体内物体を制御するために小型設計の磁場発生器をロボットの案内により位置決めする装置として使用する場合には、ロボットアームの設計が、体内物体を制御するために本発明による小型設計の磁場発生器をロボットの案内により位置決めする装置として使用する場合の要求を満たすどころか、これが患者とオペレータにとってのリスクになるという基本的な欠点がある。オートメーション工学用に設計されたこのようなロボットのアクチュエータ要素の仕様はさらに、患者に衝撃を与え、患者を危険に晒しうる。
【0021】
原則として、専門家は、過大な装置であればいわゆる「ダウンサイジング」によって小型化し、またはその出力を、ちょうど所期の機能を果たす程度に合わせて低減するように努力する。しかしながら、この場合、ロボットと磁気案内装置に対する要求は相反していない。すなわち、一方では、患者および/またはオペレータにとってリスクとなってはならず、他方では、現場や病院におけるあらゆる事柄に対する恒常的な手作業での(時には不適正な)取扱いに耐えられるように十分堅牢でなければならない。したがって、知られているような単純な「ダウンサイジング」では、満足な結果は得られないであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2347699号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上記の問題を考慮し、本発明の目的は、患者の安全に関して最適化されていながら、それと同時に、前述の技術的解決策から知られている制限を受けることなく、必要な手順を実行できる、小型設計の磁場発生器をロボットの案内により位置決めする装置、特に内視鏡カプセル等の体内磁気物体の体外案内装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この目的は基本的に、特許請求の範囲の請求項1の特徴を有する、(磁気)体外案内装置(好ましくは、場合に応じて伸縮(テレスコピック)ロボットアームと組み合わされる、関節アーム/SCARA型ロボットの形態)により達成される。本発明の有利な構成は、従属項の主題である。
【0025】
本発明の核となるものはしたがって、具体的な技術的手段により、小型設計の磁場発生器をロボットの案内により位置決めする装置を設計することにあり、その設計は、小型設計の磁場発生器の個々の自由度を全体的または選択的な方法で患者の体から選択的に分離し、すなわち遮蔽し、および/または個々の自由度の操作を行っている時に、好ましくは個々の自由度の操作を行うための個々の駆動手段の設計によって、患者の体に対する力の作用が制限されるように設計することである。これらの基本的な技術的手段を実体化することによって、この装置は、医療応用において、患者の体と直接接触させて使用でき、患者に対して不利な患者の体への衝撃をほとんど除外できる。
【0026】
換言すれば、本発明の基本となる考えは、ロボットまたは案内装置のうち、装置の機能を制限することなく、一体的に(すなわち案内装置に)収容または格納できる自由度を特定することであり、すなわち、特定された自由度に関するロボットの運動が、案内装置の内部の個々の筐体の中、または内部のエンクロージャの中で行われるようにし、外から自由にアクセスできる自由度の数を減らし、それゆえ、全体としてロボットによる損傷のリスクを低減させることである。内部に収容/格納するべき自由度の選択に応じて、残りの自由な自由度の衝突のリスクもさらに低減させることができ、すなわち、これらの自由度を(内部に)収容/格納して、オペレータにとっての、または医療応用の場合は患者にとっての特別なリスクを抑えることが好ましい。
【0027】
さらに、少なくとも選択された自由度を、上記に加えて、またはその代わりに、実質的に無負荷となるように設計することができ、すなわち、自由度の駆動/作動に必要な力の大きさが高いほど、ロボットの自由度に起因する衝突/損傷のリスクは高まる。この力は、その自由度のアクチュエータ(モータ型駆動手段)に作用する負荷に依存する。このように考える結果、ロボットそのものの内部荷重等、駆動手段に作用する不必要な負荷を、駆動手段の外部で、またはこれを迂回して、受けることによって、動作荷重を最小限にする。この場合、駆動手段は、実質的に慣性力だけを克服するように設計することができる。
【0028】
より具体的に言えば、上記の目的は、ロボット、好ましくは体内物体のための(磁気)案内装置により実現され、これは、モータ駆動式位置決め装置(好ましくは関節アームおよび/またはSCARA型の原理によるロボットアームシステム)を備え、これは位置決め装置の接続インターフェースの好ましくは並進運動のために駆動される最大3自由度を有し、これに好ましくは磁場発生器の回転運動のために駆動される最大2自由度を有する(磁気)エンドエフェクタが接続されるか、接続可能である。本出願における「自由度」という用語は、好ましくは1つの平面における運動を実現するための、関節/ヒンジ/エクステンション等に関する。本発明によれば、磁気エンドエフェクタの2自由度の少なくとも一方(または両方)が、(1つの)エフェクタ筐体および/またはグリッドフレーム内に収容または格納される。
【0029】
これは、1自由度のみが収容/格納される場合、前記筐体/フレーム内の磁場発生器は、1つの平面内の運動だけを(1自由度に従って)実行し、これが外に出ないか、外に対して遮断されることを意味する。すると、第二の(露出した)自由度は必然的に、筐体/フレームそのものの(1つの平面内で行われる)運動と、それに伴う磁場発生器の同等の/連動する(共同)運動を意味する。しかしながら、エンドエフェクタまたは磁場発生器の2つの(回転)自由度を1つの単独の筐体/フレームに収容/格納し、それゆえ、これらを外部から隔離/遮断することが有利である。この場合、エンドエフェクタの筐体/フレーム(だけ)が、位置決め装置のロボットによってのみ、並進的(三次元)に移動するであろう。位置決め装置によりトリガされる、それらのうちの1つの軸周りでの筐体の旋回は起こらない。この設計は、ロボットまたは案内装置の動作中、付近のオペレータとの不慮の衝突のリスクを低減させるのに役立つが、それは外部に露出する自由度/運動の数が少ないからである。
【0030】
本発明の別の、または独立した態様によれば、位置決め装置の3自由度(だけ)により、接続インターフェースが空間座標系のX、Y、Z方向に並進運動でき(自由度a、b、c)、この中で、Y軸は好ましくは実質的に重力方向に沿った向きである。これに加えて、磁場発生器内部のA軸とB軸が決定され、これは、分極軸(C軸/長手方向軸)とともに、空間座標系(X、Y、Z軸)に関する磁場発生器の方向を記述する。
【0031】
エンドエフェクタの(技術的に合理的な)2自由度の各々により、磁場発生器が相対座標系(A、B、C軸)の軸AおよびB周りで回転運動でき、前記B軸は、好ましくは、実質的に水平で磁場発生器の分極軸(C軸)に対して直交する向きであり、B軸周りの磁場発生器の回転運動によって分極軸の「ピッチング」(自由度e)が生じ、(ピッチングによる)A軸の現在の方向に関係なく、空間座標系のY軸周りで磁場発生器が回転運動することにより、磁場発生器(およびそれゆえ、磁場)の「旋回」(すなわちヨーイング)(自由度d)が生じる。
【0032】
極端なピッチング動作において、分極軸がY軸と一致した場合、Y軸周りで磁場発生器が回転運動しても、磁場はそれ以上、実質的に変化しない。
【0033】
再び上記の技術的内容を別の形で説明するために、以下では、磁場発生器の0位置(たとえば、水平の向き)を考えるものとする。
【0034】
前述のように、位置決め装置の3自由度により、接続インターフェースの空間座標系のX、Y、Z軸への並進運動(だけ)が可能となり、その中で、Y軸は好ましくは実質的に重力方向に沿って方向付けられ、Z軸はしたがって、空間内のその水平位置(0位置)にある場合の長手方向に沿って、すなわち磁場発生器の分極軸に沿って方向付けられ、これに対して、エンドエフェクタの2自由度(だけ)の各々により、磁場発生器はそれぞれの軸周り、好ましくはY軸とX軸周りで回転運動でき、空間座標系に関する磁場発生器のヨーイングとピッチングが生じる。
【0035】
すなわち、案内装置のための空間座標系が決定され、そのうちZ軸は、その0位置における磁場発生器の分極軸、すなわち長手方向軸に対応し、Y軸は垂直軸を表し(好ましくは重力方向に沿う)、X軸は磁場発生器の水平軸を表す。前記0位置に基づき、磁場発生器は、Y軸とX軸周りで回転でき、Z軸(分極軸)周りでの磁場発生器の回転は、理論的には可能であるが提供されることはない。なぜなら、それは、磁場を変化させない(すなわち、技術的に無意味である)からである。
【0036】
上記の説明に従って、回転自由度をエンドエフェクタだけに与えるこの方法により、位置決め手段の運動パターンは接続インターフェースの単なる並進運動となり、これはオペレータによって予想され、または容易に予測できる。これに重畳される回転運動は位置決め装置から分離され、少なくとも部分的に収容/格納される。それゆえ、案内装置の外部に露出するモータ動作(運動力学)は、管理可能なままである。
【0037】
本発明の代替的な有利な構成によれば、エンドエフェクタの2自由度の各々によって、磁場発生器は1つのA軸および1つのB軸周りで回転運動でき、B軸は実質的に水平で、磁場発生器の分極軸に対して直交するように方向付けられ、磁場発生器がB軸周りで回転運動すると、分極軸の「ピッチング」(自由度e)が生じ、A軸はB軸と磁場発生器の分極軸の両方に対して実質的に直交しており、磁場発生器がA軸周りで回転運動すると、磁場発生器の分極軸の「ヨーイング」(自由度d)が生じる。分極軸周りでの磁場発生器の回転運動は、この場合でも理論的には可能であるが提供されることはない。なぜなら、それは、磁場を実質的に変化させない(すなわち、技術的に無意味である)からである。この変形形態の利点は、前述のものと同じであるため、この点に関して、上記の説明文を参照できる。
【0038】
本発明の他の、または追加の態様は、位置決め装置が複数のモータ駆動式エクステンションまたはアームを含むような駆動手段の特殊な設計に関し、その少なくとも選択されたエクステンションまたはアームは、特に関節アームロボットの場合、対応するモータ型駆動手段の各々に関して重量の平衡が保たれる。この目的のために、好ましくは、それぞれのモータ型駆動手段に現在作用している重量荷重と平衡を保つようにする動的な、または少なくとも段階的な、構成(手法)を実現し、または生じさせるような平衡システムが設けられる。
【0039】
たとえば、旋回するエクステンション/アームの場合、駆動手段の静的負荷は、重力方向に関するエクステンションの現在の傾斜角度に依存し、すなわち、エクステンションが水平の場合に、最大の重量荷重が駆動手段に加えられる。自明のこととして、駆動力は、エクステンションが確実に移動できるように、各角度位置においてその上に作用する荷重を超える大きさでなければならない。その結果、駆動手段は、水平の方向ではない角度位置に関して大きくなりすぎ、したがって、基本的に人に損傷を与え得る。エクステンションがいわば重量の無い(平衡)状態であれば、駆動手段は慣性質量(mass interia)を克服できるだけでよい。それゆえ、これを確実により小型に/より脆弱に設計することができる。
【0040】
したがって、位置決め装置が複数のモータ駆動式エクステンションまたはアームを有し、そのうちの少なくとも選択されたエクステンションまたはアームが対応するモータ型駆動手段に関して支持され、それによってモータ型駆動手段が重量による静的負荷をまったく担持または克服する必要がないことは有利である。基本的に、これは、反力システムを使用する(たとえば、カウンタウェイトおよび/またはばねやレバーアーム機構等を取り付ける)ことによって、または好ましくはエクステンションの運動の所定の方向を(SCARAロボットの原理により)重力に実質的に直交するようにすることによって実現できる。後者の場合、重量による静的な力は、駆動手段と並列に配置された、適切に設計された可動軸受により担持されるため、駆動手段そのものは解放される。
【0041】
本発明の他の、または追加の態様によれば、それぞれのモータ型駆動手段がその駆動力に関して、選択された自由度について制限され(たとえば、安全摩擦クラッチ、安全クラッチ、特定の力で同期から外れるステップモータ、圧力逃がし弁等を設置することによる)、最大出力の駆動力が予想される動作負荷力と同等またはこれより大きいが、衝突した場合の患者またはオペレータへの損傷がほとんど排除される所定の最大の力と同等またはこれより小さくなるように構成される。このような最大の力は、たとえばEN ISO 10218に従って先行技術の中ですでに定義されているため、この点に関して、それぞれの標準を参照することができる。
【0042】
上記の安全防護システム/対策に関係なく、モニタ手段を設置することが有利であり、これには案内装置の動作状態をモニタするためおよび、適切であれば、所定の事故リスクが検出された場合に案内装置のスイッチを切るための複数のセンサが接続され、または接続可能である。好ましくは、センサは、以下のセンサからなるグループから選択され/選択可能である。
− それぞれの(選択された)駆動手段への駆動負荷を検出する力センサ
− 位置決め装置の磁気エンドエフェクタまたは選択されたエクステンションとオペレータまたは患者の間の接触力を検出するタッチセンサ、
− たとえば、好ましくはエンドエフェクタ筐体のへこみ等を検出する変形検出センサ
− 障害物を光学的に検出する光センサ
− 障害物からの距離を検出する距離センサ
【0043】
上記の代わりに、またはこれに加えて、磁気案内装置にはまた、位置決め装置および/または磁気エンドエフェクタに取り付けられた、好ましくはプログラム可能なおよび/または機械的なリミットストップ/リミットスイッチの形態の運動制限手段を設けることもでき、それによって、位置決め装置の最大3自由度および/または磁気エンドエフェクタの最大2自由度の少なくとも選択した一部が機械的に所定の運動範囲に制限される。
【0044】
前述のように、磁気エンドエフェクタの筐体は、有利な点として、その方向に関して変化しないままとなる。この場合、磁気エンドエフェクタの筐体は好ましくは、位置決め装置および/または磁場発生器の現在の運動と無関係に、常に実質的に重量方向を向く。換言すれば、磁場発生器はエンドエフェクタの筐体/フレームの内部に、0位置におけるそのヨー軸(その時点で水平な分極軸に直交する)が重力方向を指すように支持される。これには、オペレータが筐体そのものによる突出する運動/旋回に一切注意を払う必要がなく、損傷のリスクがさらに低減されるという利点がある。
【0045】
以下に、添付の図面を参照しながら、好ましい実施形態によって本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第一の好ましい実施形態による、選択された2自由度(自由度は、1次元の移動または軸周りでの回転を得るための関節またはヒンジの本発明による定義に対応する)を収容した(磁気)案内装置または(医療用)ロボットアームの基本的設計原理を示す。
【図2】図1の実施形態の変形である本発明の第二の好ましい実施形態による、選択された単独の1自由度を収容した(磁気)案内装置または(医療用)ロボットアームの基本的設計原理を示す。
【図3】本発明の第三の好ましい実施形態による、選択された(単独の)1自由度を収容し、また自重によるアクチュエータ要素の負荷を最小限とした構造的なロボットアームの構成を含む(磁気)案内装置または(医療用)ロボットアームの基本的設計原理を示す。
【図4】本発明の第四の好ましい実施形態による、選択された2自由度を収容し、また自重によるアクチュエータ要素の負荷を最小限とし、これに加えて、またはその代わりに重量の平衡が保たれた(実質的に動的平衡状態の)ロボットアームの構成を含む(磁気)案内装置または(医療用)ロボットアームの基本的設計原理を示す。
【図5】本発明の第五の好ましい実施形態による、たとえば、図1と図2による実施形態の一方において使用するための、実質的に動的平衡状態のロボットアームを備える(磁気)案内装置または(医療用)ロボットアームの基本的設計原理を示す。
【図6】実質的に垂直な個々のアームの回転軸を有するロボットアームの設計、実質的に水平な個々のアームの回転軸を有するロボットアームの設計、および、実質的に水平な回転軸を有し、動的平衡状態とされた(重量補償)ロボットアームの設計を比較するための力の一覧を示す。
【図7a】本発明による(図1〜図5の)位置決め装置とそれに接続されたエンドエフェクタによって最大限移動可能となる5自由度を規定するための、磁場発生器(永久磁石)の概略図を示す。
【図7b】本発明による(図1〜図5の)位置決め装置とそれに接続されたエンドエフェクタによって最大限移動可能となる5自由度を規定するための、磁場発生器(永久磁石)の概略図を示す。
【図8】磁場発生器がその基本的機能とともにその内部に支持されている磁気エンドエフェクタを示す。
【図9】エンドエフェクタの磁場発生器の基本的な構造的設計を有する磁気エンドエフェクタを示す。
【図10a】エンドエフェクタに取り付けることのできる本発明による磁場発生器の選択的形状を示す。
【図10b】エンドエフェクタに取り付けることのできる本発明による磁場発生器の選択的形状を示す。
【図10c】エンドエフェクタに取り付けることのできる本発明による磁場発生器の選択的形状を示す。
【図10d】エンドエフェクタに取り付けることのできる本発明による磁場発生器の選択的形状を示す。
【図10e】エンドエフェクタに取り付けることのできる本発明による磁場発生器の選択的形状を示す。
【図11a】筐体および、それに異なる方法で取り付けられたセンサシステムを含む磁気エンドエフェクタを示す。
【図11b】筐体および、それに異なる方法で取り付けられたセンサシステムを含む磁気エンドエフェクタを示す。
【図11c】筐体および、それに異なる方法で取り付けられたセンサシステムを含む磁気エンドエフェクタを示す。
【図12】駆動手段(アクチュエータ)と磁場発生器の間にセンサシステムを含む別の磁気エンドエフェクタを示す。
【図13】筐体およびそこに配置された操作パネルを含む別の磁気エンドエフェクタを示す。
【図14】図7〜図13のいずれかの1つによる磁気エンドエフェクタの接続インターフェースを含む、並進自由度の駆動のみを行う(図1〜図5による)ための本発明による位置決め装置の概略図を示す。
【図15a】位置決め装置と、個々に収容されたアームを含む位置決め装置の可動部と、そこに(筐体に)異なる方法で取り付けられたセンサを含むアクチュエータを示す。
【図15b】位置決め装置と、個々に収容されたアームを含む位置決め装置の可動部と、そこに(筐体に)異なる方法で取り付けられたセンサを含むアクチュエータを示す。
【図15c】位置決め装置と、個々に収容されたアームを含む位置決め装置の可動部と、そこに(筐体に)異なる方法で取り付けられたセンサを含むアクチュエータを示す。
【図16】位置決め装置と、それぞれ、個々に収容されたアームを含む位置決め装置の可動部と、そこに(筐体に)取り付けられた操作パネルを含むアクチュエータを示す。
【図17a】本発明によるアクチュエータ・接続要素・関節ユニットの、様々な基本的構成を示す。
【図17b】本発明によるアクチュエータ・接続要素・関節ユニットの、様々な基本的構成を示す。
【図17c】本発明によるアクチュエータ・接続要素・関節ユニットの、様々な基本的構成を示す。
【図18a】本発明によるアクチュエータ・接続要素・関節ユニットの、代替的な基本的構成を示す。
【図18b】本発明によるアクチュエータ・接続要素・関節ユニットの、代替的な基本的構成を示す。
【図18c】本発明によるアクチュエータ・接続要素・関節ユニットの、代替的な基本的構成を示す。
【図19a】位置決め装置および/または磁気エンドエフェクタの自由度を駆動するための、本発明によるアクチュエータの代替的な実施形態を示す。
【図19b】位置決め装置および/または磁気エンドエフェクタの自由度を駆動するための、本発明によるアクチュエータの代替的な実施形態を示す。
【図19c】位置決め装置および/または磁気エンドエフェクタの自由度を駆動するための、本発明によるアクチュエータの代替的な実施形態を示す。
【図19d】位置決め装置および/または磁気エンドエフェクタの自由度を駆動するための、本発明によるアクチュエータの代替的な実施形態を示す。
【図19e】位置決め装置および/または磁気エンドエフェクタの自由度を駆動するための、本発明によるアクチュエータの代替的な実施形態を示す。
【図19f】位置決め装置および/または磁気エンドエフェクタの自由度を駆動するための、本発明によるアクチュエータの代替的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(位置決め装置)
図1は、本発明による磁気案内装置100の第一の実施形態を概略的に示す。したがって、案内装置100はまず、位置決め装置(ロボットアームシステム)102と、位置決め装置102の接続インターフェース106に接続された磁気エンドエフェクタ104からなる。
【0048】
本発明の第一の実施形態の位置決め装置102は、相互に直列にヒンジ結合された2つのピボットアーム108、110を含み、その(実質的に水平に方向付けられた)接続ヒンジ式ジョイント112は(アクチュエータ114を介して)モータ駆動式とすることができる。一方の(自由な)ピボットアーム108の自由端には、接続インターフェース106が他の水平ヒンジ116によってヒンジ結合され、これに対して、他方の(組み込まれた)ピボットアーム110は、同様に、水平ヒンジ120によって回転アーム118に旋回可能にヒンジ結合される。また、他方の(組み込まれた)ピボットアーム110と回転アーム118の間に配置されたこのヒンジ式ジョイント120は、(アクチュエータ122を介して)モータ駆動式とすることができる。回転アーム118は最終的に、ベース126において、(アクチュエータ124を介して)モータ駆動式にその長手方向軸周りに(垂直に)旋回され、ベースは、この例においては、ローラの上に支持されており、好ましくは手動で移動させることができる。
【0049】
このアーム/エクステンション関節機構により、位置決め装置102は並進三次元的に接続インターフェース106を移動させることができ、すなわち、本発明の第一の好ましい実施形態による位置決め装置102は、合理的に駆動できる3自由度のみ有し、すなわち、接続インターフェース106が空間座標系のX、Y、Z方向(任意で定義されるが、好ましくはY軸が重力方向と一致する)に並進運動できる。
【0050】
この例では、磁気エンドエフェクタ104が機械的および電気的に(空気圧および/または油圧式に)接続インターフェース106にドッキングされ、接続インターフェース106は一方の(自由な)ピボットアーム108に、(アクチュエータ128を介した)モータ駆動式の水平ヒンジ116を介して支持される。後に詳しく説明するように、前記ヒンジ116は好ましくは、磁気エンドエフェクタ104が常に、垂直方向に対して特定の方向を指し、さらに好ましくは、(常に)垂直方向に向けられるように駆動される。しかしながら、その代わりに、接続インターフェース106と磁気エンドエフェクタ104の間の水平ヒンジ116がモータ型駆動手段を持たず、磁気エンドエフェクタ104が、位置決め装置102の現在の向きに関係なく、それに作用する重力のみによって、常にそれ自体で垂直方向を向くようにすることも可能である。
【0051】
図1による実施形態の場合、磁気エンドエフェクタ104は単一のエフェクタ筐体104aを含み、これは接続インターフェース106に機械的および電気的に(空気圧および/または油圧式に)固定され、それゆえ、(接続インターフェース106に対して)垂直方向に下方を指す(すなわち、接続インターフェース106より下方に配置される)。単一のエフェクタ筐体104aの内部に、図1では詳しく示されていないが、後に詳しく説明する磁場発生器1が収容されており、その支持部は、この例において、正確に2自由度だけが合理的に駆動され、これはすなわち、空間座標系に対する磁場発生器1の「ピッチング」と「旋回/ヨーイング」のためである。
【0052】
「ピッチング」と「ヨーイング」という用語は基本的に航空宇宙工学から発生したものであり、航空宇宙工学では飛行物体の内部の座標系に関してその飛行物体の運動を説明する。しかしながら、本明細書において、「ピッチング」と「ヨーイング」の運動は、空間座標系に関する。
【0053】
図1の実施形態によれば、上記の定義による磁場発生器1の「ピッチング」(自由度e)と「旋回」または「ヨーイング」(自由度d)のための2自由度(またはヒンジ/関節)がエフェクタ筐体104aの中に収容/格納され、それゆえ外からはアクセスできない。この場合、エフェクタ筐体104aは、接続インターフェース106と外見上一体的に、位置決め装置102が実質的に単純に上記のX、Y、Z方向へと並進運動する中で移動し、磁場発生器1のそのピッチング運動と旋回またはヨーイング運動のための回転運動は、好ましくは常に垂直方向を向くエフェクタ筐体104aの中で実行される。
【0054】
本明細書において、「垂直方向を向くエフェクタ筐体」という用語は次のように定義される。
【0055】
図1に示されるように、筐体は下側の(重力方向の)端部において丸い外形を有する。前記外形は、患者の体と接触する、いわゆる接触面/表面を構成する。前記接触面は好ましくは、常に(重力方向に見て)筐体の下側に常に設置され、それゆえ、筐体の垂直方向を定義する。しかしながら、たとえば患者が水平姿勢ではなく直立または座位姿勢をとっている時等、接触面は垂直面(上記の定義による)とすることができる点も明記する。
【0056】
図2は、図1による実施形態の代替案を示し、位置決め装置102は、図1によって前述した構造設計を有する。しかしながら、相違点は磁気エンドエフェクタ104の構成であり、この場合、2つの筐体104a、104bを含み、その一方の筐体104bは位置決め装置102の接続インターフェース106に機械的/電気的/空気圧式/油圧式に固定接続され、重力の効果により、または適切に駆動されるアクチュエータ128(図2による)により能動的に、常に垂直に(上記の定義による)下方を指す。接続インターフェース106に取り付けられた一方の筐体104bでは、他方の筐体104aが、(アクチュエータ130を介して)モータ駆動式に、長手方向の筐体軸(この場合、垂直軸)周りで旋回される。他の筐体104aには磁場発生器が、それが長手方向の筐体軸に関してモータ駆動によりピッチング運動を実行するように構成された状態で収容される。この例において、磁場発生器のヨーイング運動はそれゆえ、筐体104bが回転に関してアイドル状態にある時、他の筐体104aのモータ駆動による回転によって実行され、すなわち、図2の場合、磁場発生器のピッチング運動のための1自由度(ヒンジ)だけがエフェクタ筐体内に収容/格納され、これに対して、他のエフェクタ筐体104bを回転させることによって実行される磁場発生器のヨーイング運動の自由度(ヒンジ/回転軸)には、外部から自由にアクセスできる。
【0057】
本明細書では、技術的に合理的な2自由度だけによる磁場発生器1の運動の例が、図1と図2によって示されている。
【0058】
本発明の好ましい実施形態によれば、筐体104a、bは、その患者との接触面(詳細には図示せず)が垂直に下方を指すように方向付けられている。したがって、X、Y、Z軸を含む外部空間座標系はそれ自体、重力方向に従って方向付けられる。すなわち、Y軸は重力方向に沿って直線状に伸びている。
【0059】
筐体104a、bの中での磁場発生器1(永久磁石等)のホームポジション、すなわち0位置は、空間座標系とは無関係に、したがって筐体104a、bの方向とは無関係とすることができるが、たとえば、0位置における磁場発生器1の内部分極軸C(長手方向軸)は図に記載された空間座標系のZ方向に伸びる(すなわち、水平に伸びる)と仮定される。0位置においてそれに直交する磁場発生器1の内部軸Aは、したがって、重力方向に伸び、0位置においてそれに直交する内部軸Bは、したがって、同様に、空間座標系のX軸に沿って水平に伸びる。磁場発生器1がピッチ運動すると、これは内部軸B周りで、すなわち空間座標系X周りで回転する。磁場発生器1がさらにヨー運動すると、これは、いずれの場合も空間座標軸Y周りで旋回するが、すでにピッチ運動した内部軸A周りで比例的割合でのみ旋回する。この割合は、ピッチ角度が大きくなると必然的に減少し、最終的に、内部軸C(分極軸)が重力方向を指すと0になる。そのとき、Y軸周りの回転は、ローリング運動に変換され、これは磁場に影響を与えない。
【0060】
この点に関して、筐体104a、bは必ずしも重力方向に沿って方向付けられる必要はなく、それとある角度をなしてもよい点を指摘する。この場合、空間座標系と「ヨーイング」と「ピッチング」の基準軸は適切に変化する。
【0061】
図3による実施形態は、第一と第二の実施形態の位置決め装置102と、設計と概念において異なる位置決め装置102(ロボットアームシステム)を示す。
【0062】
この場合、相互に直列にヒンジ結合された2つのピボットアーム108、110が、垂直ヒンジ112によって連結され、これにより、2つのピボットアーム108、110は水平相対回転運動しかできない。一方の(自由な)ピボットアーム108にはまた、その自由端において、接続インターフェース106が設けられているが、接続インターフェース106はこの例では、伸縮ロッド132のための台座を有し、伸縮ロッド132は(アクチュエータ134を介して)モータ駆動式に台座106の内部で垂直に移動できる。伸縮ロッド132はたとえば、歯付ラック、ピストンロッドまたはこれと同様のプッシュロッドとすることができ、これはたとえば、ギアボックスケース、圧力シリンダまたは同様の駆動ユニットの台座106の内部で垂直に移動できるように案内される。
【0063】
他方の(組み込まれた)ピボットアーム110の自由端は、垂直ヒンジ136を介して、好ましくは手動で移動可能なベース126の足部(foot)に連結される。このヒンジ136もまた、アクチュエータ124を介して(モータ式に)駆動可能である。
【0064】
最後に、磁気エンドエフェクタ104は、伸縮ロッドまたはプッシュロッド132の一端(垂直方向の下側)に配置される。前記磁気エンドエフェクタ104は、上述の説明による第一と第二の実施形態の両方の原理に従って構成でき、すなわち、1つの筐体または、相互に対して回転可能な2つの筐体を有するように形成でき、第一の場合は2自由度が収容され、第二の場合は1自由度のみが収容される。
【0065】
上記の位置決め装置の基本的概念の結果、それぞれのヒンジの水平の向きにより、それぞれのピボットアーム108、110の自重とそこに加えられる荷重(エンドエフェクタ)が第一と第二の実施形態のアクチュエータ要素に作用し、これに対して、図3による第三の実施形態においては(接続インターフェース106を除き)、前記荷重または力は垂直ヒンジにより担持され、すなわち、第三の実施形態の場合、アクチュエータ要素は実質的にピボットアーム108、110(エンドエフェクタ104を含む)を移動させるための慣性質量だけに耐えられればよく、これに対して、第一と第二の実施形態の場合は、アクチュエータ要素はまた、ピボットアーム108、110の重力による荷重にも対処できなければならない。この問題を説明するために、この点に関して、図6を参照する。
【0066】
図6の中央の図は、第一と第二の実施形態によるピボットアームを移動させるために必要なアクチュエータ荷重を示す。アクチュエータ荷重は実際に必要な力より若干大きく、電気リミッタによって適切に調整されると仮定する。アクチュエータ荷重は、エンドエフェクタを移動させるため、たとえば、患者の体に圧力を加えるために必要な荷重と、そこにかかる重力荷重(それぞれのピボットアームを含む)からなる。
【0067】
これに対して、上方の図は、上記の第三の実施形態の場合のアクチュエータ荷重を示す。明らかにわかるように、アクチュエータ荷重は実質的に、患者の体にかける必要のある圧迫力を含めた必要な動作荷重まで軽減されており(余分な力はほとんどない)、これは、重力荷重からの力が垂直ヒンジにより担持されるからである。この場合、位置決め装置のアクチュエータ部材は、第一と第二の実施形態の場合より確実に脆弱に設計でき、それゆえ、システム全体の安全性にプラスの影響を与える。
【0068】
第一と第二の実施形態の位置決め装置をさらに安全にし、それゆえ、医療応用に適したものとするために、図4による本発明の第四の実施形態では、平衡(平衡装置)を使用する。
【0069】
この場合、位置決め装置102は、最初の3つの実施形態を組み合わせたものに関し、具体的には、位置決め装置102の2つのピボットアーム108、110が相互に連結され、第三の実施形態の原理により(すなわち、垂直ヒンジを介して)、移動可能なベース126にヒンジ結合され、これに対して、磁気エンドエフェクタ104は、水平ヒンジ116を介して、位置決め装置102の接続インターフェース106に連結されているが、これはこの場合、力の平衡がとられており、すなわち、釣り合いがとられている。
【0070】
詳しくは、水平ヒンジ116は、対角線ばね116cを介して釣り合っている、少なくとも2つの平行ヒンジアーム116a、116bを有する平行四辺形型関節を含む。ばね力は、磁気エンドエフェクタ104の荷重に合わせて調整されて、対角線ばね116cは実質的にエンドエフェクタの荷重を担持する。2つのヒンジアーム116a、116bのうちの少なくとも一方はさらに、1つのアクチュエータ128を介して駆動され、それによって磁気エンドエフェクタ104を垂直に移動させることができる。対角線ばね116cは実質的にエンドエフェクタ104の重力荷重を吸収するため、アクチュエータ128はエンドエフェクタ104を移動させる慣性質量だけを克服できればよく、したがって、低電力設計とすることができる。これは、たとえば、図6の下方の図に示されている。
【0071】
その結果、余剰分のほとんどないアクチュエータ荷重を、患者の体にかけるべき所期の圧迫力を含めた慣性質量を克服するのに必要な動作荷重にまで、実質的に低減することができ、したがって、上方の図(本発明の第三の実施形態に関する)によるアクチュエータ荷重に最もよく対応する。
【0072】
平衡原理を位置決め装置102のすべてのヒンジに適用できることは明らかであり、これは図5による本発明の第五の実施形態において具現化されている。
【0073】
ここで示されている位置決め装置102の概念的な構造は実質的に、図1と図2による第一または第二の実施形態に対応する。しかしながら、この場合、プッシュロッド138が一方の(自由な)ピボットアーム108の中央部分にヒンジ結合され、前記プッシュロッドはレバーアーム140に連結されており、これはその中央部分において、他方の(組み込まれた)ピボットアーム110と回転アーム118の間のヒンジ120に関節連結されている。レバーアーム140の他方の端には、おもり142が(垂直に案内された振り子ロッドを介して)配置される。
【0074】
さらに、プッシュプルロッド144が、エンドエフェクタ104と接続インターフェース106の間の水平ヒンジ116の垂直方向の上方で、磁気エンドエフェクタ104にヒンジ結合され、前記プッシュプルロッドは第一のレバーロッド146に連結され、これ自体は、2つの直列ピボットアーム108、110の間の水平ヒンジ112にヒンジ結合される。第一のレバーロッド146の他方の端にはタイロッド148が連結され、これは中央部分において回転アーム118に対して旋回され、反対の端にはおもり150が(垂直に案内された振り子ロッドを介して)設置されている。この点に関して、磁気エンドエフェクタ104と接続インターフェース106の間のヒンジ116を除き、他のすべてのヒンジ/回転軸を(モータ)駆動式とすることができ、これに対して、磁気エンドエフェクタ104は常に、タイロッドとレバーロッド144、146、148を介して垂直に方向付けられる点に留意する。上記のレバー機構およびおもりは、アクチュエータが実質的に、ピボットアーム108、110の旋回位置とは関係なく無負荷とされ、従って、慣性質量のみを克服するように設計すればよい。
【0075】
ここで述べたことを要約すれば、選択された自由度(ヒンジまたは関節)を適切な筐体の内部に格納することによって、この場合は、磁場発生器の回転自由度をエフェクタ筐体内に収容することによって、自由にアクセスできる自由度(ヒンジ)と、それに連結された磁気案内装置の要素の旋回運動の数を減らすことができ、これによって、オペレータおよび/または患者に損傷を与えるリスクを低減させながら、必要な機能を保持することができることを述べた。さらに、ピボットアーム間のヒンジ(垂直)および/またはヒンジ(水平)間の平衡の特別な向きによって、アクチュエータ要素は慣性力だけを克服するように設計すればよいため、それによって実現可能な最大荷重は、オペレータまたは患者に損傷を与える以上とはならないように低減することができる。上記の2つの手段のいずれかを使用するだけで、与えられた課題を解決するのに十分であるが、両方の手段を組み合わせることにより、磁気案内装置全体の安全性能がさらに改善される。
【0076】
以下に、本発明による磁気エンドエフェクタを詳細かつ基本的に説明する。
【0077】
(磁気エンドエフェクタ)
図8による磁気エンドエフェクタ13は、図7aと7bによる磁場発生器1の少なくとも1回転自由度(自由度dまたはe)、好ましくは両方の回転自由度(自由度dとe)を駆動する装置である。この場合は好ましくは、旋回またはヨーイングについての、実質的に重力に沿ったA軸(0位置において、たとえば空間座標系のY軸に対応する)周りでの0位置にある磁場発生器1のそれぞれの回転と、ピッチングについての、磁場発生器1の分極軸/長手方向軸に垂直なB軸(たとえば空間座標系のX軸に対応する)周りでの磁場発生器1の回転に関する。A軸とB軸については前述したため、この点に関しては、それぞれの説明を参照することができる。分極軸C周りでの磁場発生器1の回転(ローリング)は、図7aによるこの定義から除外されているが、それは、これが磁場を実質的に変化させないからである。
【0078】
自由度の駆動は、磁気エンドエフェクタ13の筐体12の中で行われるため、駆動されても、磁気エンドエフェクタ13の(筐体12の)位置、向きまたは形状は変化しない。(図1によるエンドエフェクタに対応する)図8による実施形態において、好ましくは、筐体12の表面部分も構成部品も移動しない。
【0079】
このために、磁気エンドエフェクタ13は少なくとも1つのアクチュエータ8を有し、これはそれぞれのトランスミッション要素9を介して、小型設計の磁場発生器1に連結され、自由度dの駆動も自由度eの駆動も選択的に行うことができる。この駆動は、外部(筐体12の外部)から見て、好ましくは磁気エンドエフェクタと、それぞれ筐体12の内部で駆動されない自由度に関して外部アクチュエータによって起こされる筐体12の回転および、それぞれの場合における磁場の向きの変化によってのみ、明らかとなる。これは、図2のエンドエフェクタに対応する。
【0080】
図8と図9による磁気エンドエフェクタ13の有利な構成において、磁気エンドエフェクタ13は2つのアクチュエータ8を有し、その各々は、トランスミッション要素9を介して、小型設計の磁場発生器1に連結され、それによって、自由度dの駆動と自由度eの駆動の両方を筐体12の内部で行うことができる。この駆動は、外部(筐体12の外部)から見て、磁場の向きによってのみ明らかとなり、これと対照的に、筐体12は回転運動しない。
【0081】
図12によるトランスミッション要素9の有利な構成において、その(それぞれの)トランスミッション要素9はセンサ要素18を含み、これが収集する情報によって、少なくとも小型設計の磁場発生器1の位置を判断することができる。これらのセンサ要素18は、たとえば運動、位置または力センサとすることができる。
【0082】
トランスミッション要素9の有利な構成において、トランスミッション要素9には、(別の)センサ要素18を設けて、これが収集する情報によって、少なくとも小型設計の磁場発生器1に作用する力を判断することができる。
【0083】
磁気エンドエフェクタ13の構造的設計の重要な特徴は、アクチュエータ8およびトランスミッション要素9が磁気エンドエフェクタ13の筐体12の内部に設置されることである。磁気エンドエフェクタ13のこのような構造的設計の主要な利点は、小型設計の磁場発生器1の自由度dおよび/またはeが駆動されても、磁気エンドエフェクタ13は患者の安全に関係するような運動を起こさない、という点にある。
【0084】
磁気エンドエフェクタ13は、力を伝達するための接続要素14を有する。接続要素14は、保持力または磁気エンドエフェクタ13を加速する力を導入することによって、空間内で(好ましくは、垂直方向に)磁気エンドエフェクタ13を方向付けるのに役立つ。
【0085】
磁気エンドエフェクタ13はさらに、エネルギーを伝達するための接続要素15を有する。このようなエネルギーは、少なくともアクチュエータ8の動作のために使用される。接続要素15の有利な構成において、好ましくは電気エネルギーが接続要素15を介して伝えられる。この構成は、アクチュエータ8のほかに、磁気エンドエフェクタに搭載された電子部品もその電気エネルギーで動作させることができるという利点を有する。接続要素15のさらに有利な構成においては、好ましくは空気圧または油圧エネルギーが接続要素15を介して伝送される。
【0086】
最後に、磁気エンドエフェクタ13は、データを伝送するための接続要素16を有する。前記接続要素14、15、16はすべて、位置決め装置の接続インターフェースに接続可能か、または接続される。
【0087】
有利な応用シナリオでは、磁気エンドエフェクタ13は、好ましくは水平姿勢の患者の体の上方でのみ案内される。特許文献1において開示される体内磁気物体の制御原理に関連して、磁気エンドエフェクタ13は常に、制御されるべき体内物体(詳細には図示せず)の上方に位置付けなければならない。それゆえ、接触面として設けられる磁気エンドエフェクタ13の下面は、患者の方向、すなわち下方向を指す。
【0088】
磁気エンドエフェクタ13の有利な構成において、好ましくは患者の体に面する筐体12の下面はしたがって、好ましくは半円形となる丸みを有する。さらに、それと同じ磁気エンドエフェクタ13の有利な構成によれば、小型設計の磁場発生器1は、小型の形状となるように形成される。小型の形状を有する小型設計の磁場発生器1の有利な構成において、これは直方体(図10a)である。小型の形状を有する小型設計の磁場発生器1の他の有利な構成において、これは立方体(図10b)である。小型の形状を有する小型設計の磁場発生器1の他の有利な構成において、これは円筒形(図10c)として形成される。小型の形状を有する小型設計の磁場発生器1の他の有利な構成において、これは面取りまたは丸みをつけた縁辺を有する円筒形(図10d)として形成される。小型の形状を有する小型設計の磁場発生器1の他の有利な構成において、これは球形(図10e)として形成される。小型の形状を有する小型設計の磁場発生器1の他の有利な構成において、これは、小型設計にとって有利な、その他のあらゆる幾何学形状として形成される。
【0089】
磁気エンドエフェクタ13の前記有利な構成の利点は、筐体12の、好ましくは患者の体に面する下面を丸くし、また磁場発生器1に小型の形状を付与することによって小型設計の磁場発生器1を筐体12の下面の形状に適合させることにより、磁場発生器1を制御対象の体内物体にできるだけ近づけることができ、それと同時に、筐体12の中の2自由度dとeの駆動が妨害されない点である。これは特に、磁気エンドエフェクタ13を所定の力で患者の体に圧迫して、制御対象の体内物体にできるだけ近くに位置付けるようにする手順に当てはまる。
【0090】
図11a〜11cによる筐体12の有利な構成において、筐体12は、少なくとも1つのセンサ要素17を含む。前記少なくとも1つのセンサ要素17は、衝突により発生した筐体12に作用する力を検出するために使用される。
【0091】
少なくとも1つのセンサ要素17の有利な構成において、前記センサ要素17は、筐体12に接続された変形センサであり、それによって、これは筐体12の区切られた領域内での変形を記録することができ、それゆえ、筐体に導入される力をそこから判断できる。
【0092】
少なくとも1つのセンサ要素17の有利な構成において、前記センサ要素17は、筐体12に接続された力センサであり、それによって、筐体12の2つの要素間の接続要素として、外から導入されてそれらの要素のいずれかに作用する力を記録することができる。
【0093】
少なくとも1つのセンサ要素17の有利な構成において、前記センサ要素17は、筐体12に接続された機械的スイッチであり、それによって、これは筐体12の2つの要素間の接続要素として機能し、外側から導入され、これらの要素のいずれかに作用する力によって、センサ要素17が作動する。
【0094】
少なくとも1つのセンサ要素17の有利な構成において、前記センサ要素17は、筐体12の外側に配置された力感知要素であり、それによって、センサ要素17に作用する接触力が記録される。
【0095】
図13による筐体12の有利な構成において、筐体12は(前記センサに加えて)操作要素20を含む。
【0096】
操作要素20の有利な構成において、前記操作要素20は少なくとも1つのハンドルを有し、これによって、位置決め装置のアクチュエータ要素を回避/克服しながら、磁気エンドエフェクタ13を手動で操作することができる。
【0097】
操作要素20の他の有利な構成において、前記操作要素20は、位置決め装置の個々のアクチュエータを手動で作動させるための少なくとも1つのタッチセンサスイッチを含む。
【0098】
操作要素20の他の有利な構成において、前記操作要素20は、たとえば本明細書の冒頭に記載した位置決め装置の仮想運動バリアを提供するための、少なくとも1つの光学的表示要素を含む。
【0099】
(上記の説明により磁気エンドエフェクタを位置決めするための位置決め装置)
図14による磁気エンドエフェクタ13を位置決めするための位置決め装置21(図14のシステムライン21参照)は、空間内(空間座標系)で磁気エンドエフェクタ13を位置決めする機能を有する。上記の好ましい設計による磁気エンドエフェクタ13は、小型設計の磁場発生器1の自由度dとeを制御するように構成されている。したがって、位置決め装置21の目的は、磁気エンドエフェクタ13を自由度a、b、cに沿って位置決めすることである。このように、位置決め装置21と磁気エンドエフェクタ13の組み合わせ(これらが一体となって案内装置を形成する)により、小型設計の磁場発生器1を、体内物体を制御するために、a〜eの5自由度すべてで位置決めすることができる。
【0100】
位置決め装置21は、空間内で磁気エンドエフェクタ13を(並進的に)移動させる。これらの運動は、冒頭で述べたように、患者の体との衝突および患者の体への力の作用を引き起こし、特定の衝突や力の作用は意図的に行われることさえある。位置決め装置21の構造的設計およびその駆動はしたがって、本発明によれば、患者の体との衝突およびそれに対する力の作用が、患者の体に衝撃を与えて、患者を危険に晒すことにならないように構成される。好ましくは、位置決め装置21の構造的設計とその駆動は、本発明によれば、位置決め装置の1つまたは複数の構成要素が誤って操作され、またはそれに異常が発生したとしても、患者の体に衝撃が加わり、患者が危険に晒されることがないように構成される。
【0101】
位置決め装置21には、図1〜5によって既に説明したような、少なくとも3つのアクチュエータ22が設けられ、その各々はトランスミッション要素23を介してそれぞれの関節(水平または垂直方向のヒンジ)24に接続される。「関節」という用語は、回転関節/ヒンジと直線ガイド(伸縮ロッド、歯付ラック、ピストン/シリンダ装置等)の両方または、複数のチェーンリンクを含む。この設計は、アクチュエータ22が、それぞれのトランスミッション要素23を介してそれぞれの関節24に接続され、それによってアクチュエータ22はそれぞれの関節24を作動させることができる、というものである。
【0102】
アクチュエータ22は、たとえば電気モータの設計による回転アクチュエータとして、またはたとえば流体リフトシリンダの設計によるリニアアクチュエータとして構成できる。
【0103】
位置決め装置21は、力とエネルギーを伝達するため、および位置決め装置21を磁気エンドエフェクタ13に機械的に接続するための接続要素26(エンドエフェクタ13の接続要素14〜16のための端子を含む上記の接続インターフェースに対応する)を含む。
【0104】
位置決め装置21はさらに、空間内で位置決め装置21を静止固定する固定要素27を含む。固定要素27の有利な構成において、前記固定要素27は、図1〜図5によるベースとして形成され、これはたとえば、ロック可能なローラによって空間内で選択的にロックまたは移動することができる。固定要素27の他の有利な構成において、前記固定要素27は、ある物体、たとえば診察台に固定するのに適した少なくとも1つの装置を含む。
【0105】
位置決め装置21はさらに、関節24との機械的接続を提供する接続要素25(図1〜図5による回転アームに対応する)と、たとえば、別の関節24(図1〜図5による回転アームと組み込まれた旋回アームの間のヒンジに対応する)、接続要素26(接続インターフェースに対応する)または固定要素27(図1〜図5による移動可能なベースに対応する)を含む。接続要素25は、たとえば取付板とすることができ、これによって1つの関節24および、たとえば他の関節24、接続要素26または固定要素27が非能動的に固定される。
【0106】
個々の関節(ヒンジ/回転軸)24および接続要素26と固定要素27は、機械的な接続要素25(旋回アーム/回転アーム)を介して接続され、それによって関節24を駆動することにより、接続要素26を、固定要素27に関して、少なくとも相互に直交する3つの空間軸に沿って位置決めすることができる。
【0107】
基本的に、本発明による位置決め装置21では、選択された、またはすべてのアクチュエータ22・接続要素23・関節24のユニットに、位置決め装置21のための安全機能を果たすセンサを設けることを可能とする。
【0108】
1つ(または複数の)選択されたアクチュエータ22の有利な構成において、前記アクチュエータ22は、伝達されるべき力を測定できるセンサ要素を含む(基本的に図18bに示される)。アクチュエータ22の他の有利な構成において、前記アクチュエータ22は、アクチュエータ22が力を発生させるためにかけるエネルギーを測定できる装置(図17c参照)を含む。アクチュエータ22の他の有利な構成において、前記アクチュエータ22は、伝達されるべき力を機械的に制限できる装置(図17c参照)を含む。アクチュエータ22の他の有利な構成において、前記アクチュエータ22は、アクチュエータ22の動作範囲を機械的に制限できる装置(詳細に示されていないリミットストップ)を含む。アクチュエータ22の他の有利な構成において、前記アクチュエータ22は、前記アクチュエータ22の操作要素に対して一定の操作力をかけることのできる、詳細には示されていない装置を含む。
【0109】
トランスミッション要素23の有利な構成において、前記トランスミッション要素23は、伝達されるべき力を機械的に制限できる装置(図18aと図18b参照)を含む。トランスミッション要素23の他の有利な構成において、前記トランスミッション要素23は、トランスミッション要素23の動作範囲を機械的に制限できる装置(詳細に示されていないリミットストップ)を含む。トランスミッション要素23の他の有利な構成において、前記トランスミッション要素23は、伝達されるべき力を測定できるセンサ要素を含む。トランスミッション要素23の他の有利な構成において、前記トランスミッション要素23は、前記トランスミッション要素23に一定の操作力をかけることのできる装置を含む。
【0110】
関節24の有利な構成において、前記関節24は、前記関節24の操作力を機械的に制限できる装置(図17aと図18c参照)を含む。関節24の他の有利な構成において、前記関節24は、前記関節24の動作範囲を機械的に制限できる装置(詳細に示されていないリミットストップ)を含む。関節24の他の有利な構成において、前記関節24は、関節24の操作力を測定できるセンサ要素(図17a参照)を含む。関節24の他の有利な構成において、前記関節24は、前記関節24に一定の操作力をかけることのできる装置を含む。
【0111】
位置決め装置21の有利な構成において、前記位置決め装置21は、相互に関して移動可能に支持された1つまたは複数の筐体19を含む。
【0112】
各筐体19の有利な構成において、前記筐体19は、少なくとも1つのセンサ要素10(特に図15a〜図15c参照)を含む。各センサ要素10は、衝突によって発生した、筐体19に作用する力を検出するために使用される。
【0113】
センサ要素10の有利な構成において、前記センサ要素10は変形センサであり、筐体19に接続され、それによって、筐体19の区切られた領域内の変形を記録することができ、筐体に導入された力をそれから判断することができる。
【0114】
センサ要素10の有利な構成において、前記センサ要素10は力センサであり、(各)筐体19に接続され、それによって、筐体19の2つの要素間の接続要素として、外から導入されていずれかの要素に作用する力を記録することができる。
【0115】
センサ要素10の有利な構成において、前記センサ要素10は機械的スイッチであり、(各)筐体19に接続され、それによって、筐体19の2つの要素間の接続要素として機能し、外から導入される力を、センサ要素10を動作させるために、要素のいずれかに案内する。
【0116】
センサ要素10の有利な構成において、前記センサ要素10は、(各)筐体19の外に取り付けられた力感知要素であり、それによって、センサ要素10に作用する接触力が記録される。
【0117】
筐体19の有利な構成において、前記筐体19は操作要素11を含む。
【0118】
操作要素11の有利な構成において、前記操作要素11は、位置決め装置21の操作を可能にする、少なくとも1つのハンドルを含む。
【0119】
操作要素11の他の有利な構成において、前記操作要素11は、たとえば、適切に収容されたアクチュエータ22を手動で操作するための、少なくとも1つのタッチセンサスイッチを含む。
【0120】
操作要素11の他の有利な構成において、前記操作要素11は、少なくとも1つの光学表示要素を含む。
【0121】
(患者の安全を確保するための技術的対策)
小型設計の磁場発生器1をロボットの案内により位置決めすることによる患者にとってのリスクは、とりわけ、小型設計の磁場発生器1を位置決めするための位置決め装置21の運動から発生し、これは、患者の体との衝突または患者の体への力の作用を導く場合があり、それゆえ患者に衝撃を与えて、患者を危険に晒す。本発明による以下の複数の技術的対策は、この点での患者の安全を確保するのに特に適している。
− 図17a〜図17cおよび図18a〜図18cに全体が示される、位置と発生した力をモニタするためのモニタ装置31
− 位置決め装置21の動作状態、特に患者に危険に晒す位置決め装置21の動作状態を検出、表示または防止できる、好ましくは制御システム28を備える位置決め装置21
− 位置決め装置21の動作範囲を(機械的または仮想的に)制限できる位置制限装置
− 位置決め装置21で発生する力を制限できる力制限装置
【0122】
位置決め装置21の患者の体との衝突または、位置決め装置21による力の患者の体への作用は、モニタ装置31によって検出できる。このようなモニタ装置31は、たとえば、位置決め装置21で発生する、または位置決め装置21に作用する力を測定できるセンサ要素とすることができる。
【0123】
モニタ装置31の有利な構成は、たとえば、前記有利な構成の1つにおけるセンサ要素10である。それゆえ、モニタ装置31は、位置決め装置21の筐体19に作用する力を測定でき、このようにして、衝突した場合に患者の体に作用する力を判断できる。
【0124】
モニタ装置31の他の有利な構成において、前記モニタ装置31は、関節24の中で作用する力を測定できるセンサ要素である。
【0125】
モニタ装置31の他の有利な構成において、前記モニタ装置31は、関節24の位置を測定できるセンサ要素である。
【0126】
モニタ要素31の他の有利な構成において、前記モニタ装置31は、トランスミッション要素23の中で作用する力を測定できるセンサ要素である。
【0127】
モニタ要素31の他の有利な構成において、前記モニタ装置31は、トランスミッション要素23の位置を測定できるセンサ要素である。
【0128】
モニタ要素31の他の有利な構成において、前記モニタ要素31は、アクチュエータ22に発生する力を測定できるセンサ要素である。
【0129】
モニタ要素31の他の有利な構成において、前記モニタ要素31は、力を発生させるためにアクチュエータ22によりかけられるエネルギーを測定できる装置である。
【0130】
モニタ装置31の他の有利な装置において、前記モニタ装置31は、アクチュエータ22の位置を測定できるセンサ要素である。
【0131】
モニタ装置31の有利な構成において、前記モニタ装置31は制御システム28とともに操作される。制御システム28は、データ用のトランスミッション要素29を介してモニタ要素31に接続され、それによって、モニタ装置31がモニタするべきパラメータの状態に関するデータが、モニタ装置31から制御システム28に伝送される。さらに、制御システム28はアクチュエータ22に、直接、またはデータ用のトランスミッション要素30を介して間接的に接続され、それによって、制御システム28はアクチュエータ22の動作状態に影響を与えることができる。モニタ装置31がモニタするべきパラメータを、制御システム28を介してアクチュエータ22にフィードバックすることにより、閉じた制御ループが形成される。この有利な構成によって、位置決め装置21は、患者の体に力が作用し、患者が危険に晒されるのを検出するだけでなく、選択により、これを防止することもできる。
【0132】
制御システム28は、位置決め装置21の筐体19の内側または外側に選択的に設置することができる。
【0133】
患者の体に位置決め装置21の力の作用が及ぶか及ばないかを問わず、位置決め装置21が衝突することによって患者を危険に晒す衝撃を与えるリスクを位置決め装置21の動作範囲の領域に関連付けることができる場合、位置限定装置によって、位置決め装置21が患者の体と衝突し、または位置決め装置21の力が患者の体に作用するリスクを、位置決め装置21の動作範囲の特定の領域において排除することができる。このような位置限定装置は、たとえば、関節24の動作範囲を機械的に制限できる機械的停止手段とすることができ、または、これは空間内の所定の位置に到達した時の仮想停止手段とすることができる。その仮想停止手段は、自由にプログラム可能である。
【0134】
位置決め装置21が患者の体と衝突した時、または、位置決め装置21の力が患者の体に作用した時、患者の体に作用する力を、力制限装置32によって制限することができる。このような力制限装置32は、公知の設計の安全摩擦クラッチとすることができ、これはトルクを第一の軸から第二の軸に、所定の最大値を限度として伝達できる。力制限装置32は好ましくは、力制限装置32の構造的設計によって力が制限されるように構成される。
【0135】
力制限装置32の有利な構成において、前記力制限装置32は安全摩擦クラッチであるが、これはトランスミッション要素23に接続され、それによって、アクチュエータ22によりトランスミッション要素23の第一の要素33に導入された力は、トランスミッション要素23の第二の要素34に、所定の最大値を限度として導入される。
【0136】
力制限装置32の他の有利な構成において、トランスミッション要素23は、歯付ベルトまたはVベルトを利用した力伝達機構を含み、力制限装置32が歯付ベルトプーリまたはVベルトプーリであり、これは、歯付ベルトプーリまたはVベルトプーリにかけられた力をコンシューマに、所定の最大の力を限度として伝達できる装置を含み、このコンシューマとは、たとえばシャフト、歯付ベルトまたはVベルトである。
【0137】
力制限装置32の他の有利な構成において、前記力制限装置32は、アクチュエータ22により発生された力を所定の最大値に制限できる、アクチュエータ22の内蔵部品である。たとえば、アクチュエータとしてステップモータを使用することによってアクチュエータの中に力制限装置32を内蔵させることが可能であり、ステップモータは設計上、本来的に、所定の力(トルク)を超過すると同期から外れ、それゆえ、駆動力がほぼゼロとなる。
【0138】
力制限装置32の他の有利な構成において、前記力制限装置32は関節24の内蔵部品であり、関節24によって機械的接続要素25に加えられる力を所定の最大値に制限することができる。
【0139】
操作装置35(上記のアクチュエータ22・接続要素23・関節24のユニットに対応する)は、少なくとも1つのアクチュエータ22と、少なくとも1つのトランスミッション要素23と、少なくとも1つの関節24および、少なくとも1つの機械的接続要素25(図17a等参照)を含む。このような操作装置35は、少なくともこれらの構成要素を含む機能ユニットと考えることができる。
【0140】
操作装置35の有利な他の発展形態において、機械的接続要素25は、第一の接続要素41と第二の接続要素42からなり、第一の接続要素41と第二の接続要素42は両方とも関節24に連結され、それによって、第一の接続要素41と第二の接続要素42の間で、関節24によって実質的に予め決定される相対的な(ヒンジ式等の)運動が可能となる。
【0141】
操作装置35の様々な特徴が知られており、ここで、その操作装置35の5つの異なる特徴を以下に具体的に述べる。
− 垂直軸周りで回転させるための操作装置36(図19b参照)、
− 水平軸周りで回転/旋回させるための操作装置37(図19c参照)、
− 水平軸に沿って並進さるための操作装置38(図19d参照)、
− 垂直軸に沿って並進させるための操作装置39(図19e参照)、
− 主として垂直方向に平行移動させるための操作装置40(図19f参照)。
【0142】
垂直軸周りで回転させるための操作装置36は、図19bに例として示されている。この場合、基本的に回転駆動手段、たとえば電気モータまたは、並進運動を回転運動に変換するためのトランスミッション、たとえば歯付ラックと歯車の組み合わせが関係する。この装置は、とりわけ、図1〜図5による位置決め装置のベースと回転アームの間のアクチュエータとして使用される。
【0143】
水平軸周りで回転/旋回させるための操作装置37は、図19cに例として示されており、上記の定義による回転駆動手段か、ヒンジを介して相互に接続される、連結された接続要素の中央部分に作用するピストンシリンダユニット等の並進駆動手段のいずれかを備えることができる。
【0144】
水平軸に沿って並進させるための操作装置38は、図19dに例として示されており、公知の伸縮(テレスコピック)機構、歯付ラックまたはピストンシリンダユニットに関係することができる。
【0145】
垂直軸に沿って並進させるための操作装置39は、図19eに例として示されており、図19dと同様の構造的設計を有する。しかしながら、この点に関して、操作装置39が、たとえば、ばねを平行に接続して、たとえば歯付ラック/伸縮ロッドを操作するためには、実質的に慣性モーメント(およびおそらくは摩擦力)だけが駆動手段にかかるようにすることによって、力の平衡状態を保つことが有利である。
【0146】
主として垂直方向に平行移動させるための操作装置40は、図19fに例として示されている。この場合、これは少なくとも2つの平行なレバーからなる平行ヒンジで形成され、各レバーはヒンジのように、その終端において接続要素に連結されている。レバーのうちの少なくとも一方は、操作装置37の原理に従って駆動される。
【0147】
上記の操作装置の機能原理は、次のようにまとめることができる。
【0148】
操作装置36と38において、アクチュエータによる操作は、自重による力とは無関係である。操作装置37、39、40において、力による操作は自重による影響を受ける。したがって、操作力に加えて、アクチュエータ22は自重による力と反対の力を発生しなければならない。この力は、操作装置の位置に依存することもあり(操作装置37と40の場合)、または独立している、すなわち一定であることもある(操作装置39の場合)。
【0149】
アクチュエータ22による実際の操作力を超える力を保持する必要性から、アクチュエータ22を図6の一覧に示されるように設計する時に、これが適切に行われるようにすることが必要となる。その結果、アクチュエータ22には、実際の操作に必要なものより大きな力を発生できることが求められる。モニタ装置31と力制限装置32に異常が生じた場合または、たとえば不適正に操作された場合、アクチュエータ22により保持された力が患者の体に作用し、患者の体に衝撃を与えて、患者を危険に晒すリスクがある。
【0150】
本発明による解決策は、好ましくは構造的な装置(付勢ばね/レバー機構を介した平衡おもり)によって、力を補償することである。このようにして、アクチュエータ22の設計は、アクチュエータ22が、操作装置35を操作するのに必要な力を超える力を発生できないようにすることができる。操作装置35を操作するのに必要な力は、好ましくは、患者を危険に晒すような衝撃を与えずに、患者の体に最大限に作用できる力より大きくない。この対策は、上記の説明にしたがってモニタ装置31または力制限装置32に異常が生じた場合でも、または位置決め装置とエンドエフェクタを備える磁気案内装置(ロボット)が不適正に操作された場合であっても、患者の体に作用する力によって患者を危険に晒すような衝撃が生じるリスクがほとんど排除される。
【符号の説明】
【0151】
自由度a 小型設計の磁場発生器の空間座標軸xに沿う方向の並進運動
自由度b 小型設計の磁場発生器の空間座標軸yに沿う方向の並進運動
自由度c 小型設計の磁場発生器の空間座標軸zに沿う方向の並進運動
自由度d 小型設計の磁場発生器の0位置における内部座標軸A周りの(あるいは磁場発生器の位置とは無関係な空間座標系のY軸周りの)回転運動
自由度e 小型設計の磁場発生器の内部座標軸B周りの回転運動
1 小型設計の磁場発生器
2 小型設計の磁場発生器の空間座標軸x
3 小型設計の磁場発生器の空間座標軸y
4 小型設計の磁場発生器の空間座標軸z
5 小型設計の磁場発生器の空間座標軸a
6 小型設計の磁場発生器の空間座標軸b
7 小型設計の磁場発生器の分極軸
8 回転自由度を駆動するアクチュエータ
9 回転自由度を駆動するトランスミッション要素
10 センサ要素
11 操作要素
12 磁気エンドエフェクタの筐体
13 磁気エンドエフェクタ
14 力の伝達のための接続要素
15 エネルギーの伝達のための接続要素
16 データの伝達のための接続要素
17 センサ要素
18 センサ要素
19 位置決め装置の筐体
20 操作要素
21 位置決め装置
22 アクチュエータ
23 トランスミッション要素
24 関節
25 機械的接続要素
26 力の伝達のための接続要素
27 固定要素
28 制御システム
29 データのためのトランスミッション要素
30 データのためのトランスミッション要素
31 モニタ要素
32 力制限装置
33 トランスミッション装置の第1要素
34 トランスミッション装置の第2要素
35 操作装置
36 垂直軸周りの回転のための操作装置
37 水平軸周りの回転のための操作装置
38 水平軸に沿う並進のための操作装置
39 垂直軸に沿う並進のための操作装置
40 主に垂直軸における平行移動のための操作装置
41 第1接続要素
42 第2接続要素
100 案内装置
102 位置決め装置
104 エフェクタ
106 接続インターフェース
108/110 ピボットアーム
112/116 ヒンジ式ジョイント
114/122/124/128 アクチュエータ
118 回転アーム
120 水平ヒンジ
126 ベース
132 エクステンション/伸縮ロッド
130/134 アクチュエータ
136 垂直ヒンジ
138 プッシュロッド
140 レバーアーム
142 おもり
144 プッシュプルロッド
146 レバーロッド
148 タイロッド
150 (平衡)おもり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内磁気物体のための体外案内装置であって、
モータ駆動式の位置決め装置(102)を備えており、
位置決め装置(102)は、体外の空間座標系における位置決め装置(102)の末端接続インターフェース(106)の並進運動のために作動する、最大3自由度を有しており、
末端接続インターフェース(106)は、体外案内装置のエンドエフェクタ(104)が接続され、または接続可能であり、
エンドエフェクタ(104)は、エンドエフェクタ(104)の磁場発生器(1)、好ましくは永久磁石の回転運動のために作動する、最大2自由度を有しており、
エンドエフェクタ(104)の2自由度の少なくとも一方が、エフェクタ筐体(104a)内に収容されている、体外案内装置。
【請求項2】
エフェクタ筐体(104a)が、実質的に閉じられた筐体壁および/または開かれたグリッド/フレーム構造の何れかからなる、請求項1の体外案内装置。
【請求項3】
位置決め装置(102)の3自由度が、空間座標系のX,Y,Z方向における接続インターフェース(106)の並進運動のみを許容し、その空間座標系では、Y軸は、好ましくは実質的に重力方向に沿う方向を向いており、Z軸は、水平方向における空間的な位置がホームポジション、あるいは0位置にあるときに、長手方向、すなわち磁場発生器(1)の分極軸に沿う方向を向いており、
エンドエフェクタ(104)の2自由度が、それぞれの軸周りでの、好ましくは空間座標系に関する磁場発生器(1)のヨーイングおよびピッチングを生じるように、空間座標系のY軸およびX軸周りでの、磁場発生器(1)のそれぞれの回転運動のみを許容する、請求項1または2の体外案内装置。
【請求項4】
位置決め装置(102)の3自由度が、空間座標系のX,Y,Z方向における接続インターフェース(106)の並進運動のみを許容し、その空間座標系では、Y軸は、好ましくは実質的に重力方向に沿う方向を向いており、
エンドエフェクタ(104)の2自由度のそれぞれが、特に実質的に垂直軸周りの旋回と、空間座標系に関して磁場発生器(1)の分極軸のピッチングを生じるように、磁場発生器(1)の回転運動を許容する、請求項1または2の体外案内装置。
【請求項5】
磁場発生器(1)のピッチングのための、好ましくは磁場発生器(1)のX軸周りの回転のための、1つの回転自由度のみが収容されており、
筐体(104a)または筐体(104a,104b)の少なくとも一部(104a)が、その内部に支持される磁場発生器(1)のヨーイングのために、好ましくは接続インターフェース(106)でのY軸周りの回転のために、旋回可能に搭載されている、請求項3または4の体外案内装置。
【請求項6】
ピッチングのための自由度とヨーイングのための自由度の両方が収容されており、
筐体(104a)が、位置決め装置(102)の運動とは無関係に、その空間的な方向が維持される、請求項3または4の体外案内装置。
【請求項7】
前記位置決め装置(102)が、複数のモータ駆動式のエクステンションまたはアーム(108,110)を含んでおり、
それらのうち選択されたエクステンションまたはアームが、対応するモータ駆動手段(114,122)に関して、重量平衡がなされており、
そのために、好ましくはそれぞれのモータ駆動手段(114,122)に実際に作用している重量荷重に対する重量平衡の動的適応を実現する、あるいは生じさせる平衡システムが設けられている、請求項1から6の何れか一項の体外案内装置。
【請求項8】
体内磁気物体のための体外案内装置であって、
モータ駆動式の位置決め装置(102)を備えており、
位置決め装置(102)は、体外の空間座標系における位置決め装置(102)の末端接続インターフェース(106)の並進運動のために作動する、最大3自由度を有しており、
末端接続インターフェース(106)は、体外案内装置のエンドエフェクタ(104)が接続され、または接続可能であり、
エンドエフェクタ(104)は、エンドエフェクタ(104)の磁場発生器(1)、好ましくは永久磁石の回転運動のために作動する、最大2自由度を有しており、
前記位置決め装置(102)が、複数のモータ駆動式のエクステンションまたはアーム(108,110)を含んでおり、
それらのうち選択されたエクステンションまたはアームが、対応するモータ駆動手段(114,122)に関して、重量平衡がなされており、
そのために、好ましくはそれぞれのモータ駆動手段(114,122)に実際に作用している重量荷重に対する重量平衡の動的適応を実現する、あるいは生じさせる平衡システムが設けられている、体外案内装置。
【請求項9】
位置決め装置(102)が、複数のモータ駆動式のエクステンションまたはアームを備えており、
それらのうち選択されたエクステンションまたはアーム(108,110)が、対応するモータ駆動手段(114,122)に関して、好ましくはSCARA型ロボットの原理によって、モータ駆動手段が、小さな重量による静的荷重のみを吸収または克服すればよい、あるいは重量による静的荷重を吸収または克服する必要がないように、支持されており、
そのために、エクステンションの運動の所定の方向が、好ましくは重力に対して実質的に直交する方向を指す、請求項1から8の何れか一項の体外案内装置。
【請求項10】
選択された自由度についてのそれぞれのモータ駆動手段が、最大出力が所期の動作荷重以上であり、衝突時における患者またはオペレータの損傷がほとんど排除されるような所定の最大荷重以下であるように、駆動力が適応されるように、駆動力に関して制限される、請求項1から9の何れか一項の体外案内装置。
【請求項11】
選択された自由度についてのそれぞれのモータ駆動手段が、安全摩擦クラッチ、安全クラッチ、あるいは上流側での電力リミッタまたは油圧/空気圧リミッタを接続することによって、またはステップモータの使用によって、駆動力に関して制限される、請求項1から10の何れか一項の体外案内装置。
【請求項12】
それぞれのモータ駆動手段が、電気モータ、ピエゾ素子、油圧/空気圧ピストンシリンダユニット、または電磁駆動手段を含む、請求項1から11の何れか一項の体外案内装置。
【請求項13】
案内装置の動作状態をモニタし、動作状態を修正するおよび/または所定の事故リスクが検出された場合に案内装置のスイッチを切るための、複数のセンサが接続されるモニタ手段を備える、請求項1から12の何れか一項の体外案内装置。
【請求項14】
センサが、駆動負荷を検出する力センサと、位置決め装置の磁気エンドエフェクタまたは選択されたエクステンションとオペレータまたは患者の間の接触力を検出するタッチセンサまたは力センサと、好ましくはエンドエフェクタ筐体のへこみを検出する変形検出センサと、障害物を光学的に検出する光センサと、障害物からの距離を検出する距離センサを備えるセンサのグループの中から選択される、請求項13の体外案内装置。
【請求項15】
位置決め装置および/または磁気エンドエフェクタに取り付けられた、プログラムされた/プログラム可能なおよび/または機械的なリミットストップ/リミットスイッチの形態の運動制限手段を備えており、それによって、位置決め装置の最大3自由度および/または磁気エンドエフェクタの最大2自由度から選択されたものが、所定の運動範囲に機械的に制限される、請求項1から14の何れか一項の体外案内装置。
【請求項16】
磁気エンドエフェクタ(104)の一方の自由度または両方の自由度が収容されている場合に、筐体(104a)の接触面が重力方向に関して常に同じ方向を向いて維持されるように、備えられているモータ駆動手段を用いて、または用いることなく、位置決め装置(102)および/または磁場発生器(1)の現在の運動とは無関係に、エンドエフェクタ(104)の筐体(104a)が、基本的に実質的に重力方向を向くように、位置決め装置(102)の出力/接続インターフェース(106)に接続されている、請求項1から15の何れか一項の体外案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図10e】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15a】
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【図15b】
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【図15c】
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【図16】
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【図17a】
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【図17b】
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【図17c】
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【図18a】
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【図18b】
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【図18c】
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【図19a】
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【図19b】
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【図19c】
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【図19d】
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【図19e】
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【図19f】
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【公開番号】特開2013−94672(P2013−94672A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−235892(P2012−235892)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【出願人】(510285610)オヴェスコ エンドスコピー アーゲー (6)