説明

磁気カップリング装置

【課題】装置全体の小型化を図りながら、回転軸方向に生ずる吸引力を低減させて良好にトルクを伝達することができる磁気カップリング装置を提供すること。
【解決手段】互いの作用面141,221が対向して設けられ、かつそれぞれが共通の中心軸L回りに回転可能となる従動側回転体10及び駆動側回転体20を備え、従動側回転体10及び駆動側回転体20のそれぞれの作用面141,221における中心軸Lに近接した内周領域間において、従動側回転体10と駆動側回転体20との離間距離が予め決められた大きさ以下となる場合に自身の復元力により中心軸Lの軸方向に沿った反発力を生じさせるコイルバネ131と、従動側回転体10及び駆動側回転体20のそれぞれの作用面141,221におけるコイルバネ131の配設個所よりも径外側の外周領域間において中心軸Lの軸方向に沿った磁気吸引力を生じさせる磁力ユニットを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いの作用面が近接離反する態様で対向して設けられ、かつそれぞれが作用面と直交する方向に沿って延在する共通の回転軸回りに回転可能となる第1回転体及び第2回転体を備えてなり、第1回転体と第2回転体との作用面間に生ずる磁力により一方側の回転体から他方側の回転体にトルクを伝達する磁気カップリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トルクを伝達する回転伝達機構の一例として、次のような磁気カップリング装置が知られている。例えば、円筒状の形態を成す駆動側回転体の内周面と、該駆動側回転体と同一回転軸上に配置した円筒状の形態を成す従動側回転体の外周面とに、永久磁石をエアーギャップを介して対向配置し、内周面と外周面との間に生ずる磁力を利用して駆動側回転体のトルクを従動側回転体に伝達するものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−165189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に提案されている磁気カップリング装置では、その構造上、回転軸方向にある程度の大きさを要するため、装置全体の小型化を図ることは困難であった。
【0005】
一方、上記磁気カップリング装置とは別に、円板状の形態を成す駆動側回転体と、円板状の形態を成す従動側回転体とを互いの作用面が離隔して対向する態様で配置して成る磁気カップリング装置が知られている。この磁気カップリング装置では、駆動側回転体及び従動側回転体ともそれぞれの作用面と直交する方向に沿って同一直線上に延在する回転軸回りに回転可能に構成されている。そして、駆動側回転体と従動側回転体との作用面間に生ずる磁力(磁気吸引力)により駆動側回転体から従動側回転体にトルクを伝達するものである。このような磁気カップリング装置では、その構造上、回転軸方向に短いものとする全体として扁平な構成が可能であり、装置全体の小型化が図ることが可能である。
【0006】
ところが、円板状の駆動側回転体及び従動側回転体を備えて成る磁気カップリング装置では、駆動側回転体と従動側回転体との間で回転軸方向に沿って磁気吸引力が生ずるために、回転体を支持する軸受部材の負担が大きくなる。特に伝達するトルクが大きくなればなるほど回転軸方向に沿って生ずる磁気吸引力も大きくなるため、機構上の対策が必要になる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、装置全体の小型化を図りながら、回転軸方向に生ずる吸引力を低減させて良好にトルクを伝達することができる磁気カップリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る磁気カップリング装置は、互いの作用面が近接離反する態様で対向して設けられ、かつそれぞれが作用面と直交する方向に沿って延在する共通の回転軸回りに回転可能となる第1回転体及び第2回転体を備えてなり、第1回転体と第2回転体との作用面間に生ずる磁力により一方側の回転体から他方側の回転体にトルクを伝達する磁気カップリング装置において、前記第1回転体及び前記第2回転体のそれぞれの作用面における前記回転軸に近接した内周領域間において、第1回転体と第2回転体との離間距離が予め決められた大きさ以下となる場合に自身の復元力により前記回転軸の軸方向に沿った反発力を生じさせるバネ部材と、前記第1回転体及び前記第2回転体のそれぞれの作用面における前記バネ部材の配設個所よりも径外側の外周領域間において前記回転軸の軸方向に沿った磁気吸引力を生じさせる磁力ユニットとを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る磁気カップリング装置は、上述した請求項1において、前記磁力ユニットは、第1回転体の作用面における前記外周領域に対応する個所に、前記回転軸を中心とする周方向に沿って互いに隣り合う磁極が異極となる態様で複数の磁石が所定間隔で配設されて成る磁石群と、前記第1回転体が相対的に回転することにより前記第2回転体の作用面における磁石と対向可能な個所に、該回転軸を中心とする周方向に沿って磁性体群が配設されて成る磁性盤とを備えて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の磁気カップリング装置においては、バネ部材が、第1回転体及び第2回転体のそれぞれの作用面における回転軸に近接した内周領域間において第1回転体と第2回転体との離間距離が予め決められた大きさ以下となる場合に自身の復元力により回転軸の軸方向に沿った反発力を生じさせ、磁力ユニットが、第1回転体及び第2回転体のそれぞれの作用面におけるバネ部材の配設個所よりも径外側の外周領域間において回転軸の軸方向に沿った磁気吸引力を生じさせる。これにより、一方の回転体を回転軸の軸方向に沿って変位させる力を低減化、すなわちスラスト荷重を低減化させることができる。そして、回転軸回りの回転方向には、磁石ユニットの磁気吸引力が作用することで、一方の回転体の回転に同期して他方の回転体を回転させることができ、一方の回転体から他方の回転体へトルクを伝達することができる。更に、回転軸方向を短いものとする扁平な構成が可能であり、装置全体の小型化を図ることが可能である。従って、装置全体の小型化を図りながら、回転軸の軸方向に沿って生ずる磁気吸引力を低減させて良好にトルクを伝達することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である磁気カップリング装置を模式的に一部断面で示す説明図である。
【図2】図2は、図1に示した磁気カップリング装置における従動側回転体の作用面の構成を示すもので、駆動側回転体から見た場合を示す説明図である。
【図3】図3は、図1に示した磁気カップリング装置における駆動側回転体の作用面の構成を示すもので、従動側回転体から見た場合を示す説明図である。
【図4】図4は、従動側回転体の磁石群と駆動側回転体の磁性盤とが対向した状態を示す説明図である。
【図5】図5は、図1に示した磁気カップリング装置における従動側回転体と駆動側回転体とが近接した状態を一部断面で示す説明図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態である磁気カップリング装置の変形例を模式的に一部を断面で示す説明図である。
【図7】図7は、図6に示した磁気カップリング装置の変形例における従動側回転体と駆動側回転体とが近接した状態を一部断面で示す説明図である。
【図8】図8は、図6に示した磁気カップリング装置の変形例におけるバイメタル部材の作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る磁気カップリング装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態である磁気カップリング装置を模式的に一部を断面で示す説明図である。ここで例示する磁気カップリング装置は、従動側回転体(第1回転体)10と、駆動側回転体(第2回転体)20とを備えて構成してある。
【0014】
従動側回転体10は、円板状の形態を成す基部11と、この基部11の中心部より駆動側回転体20側に向けて突出する略円筒状の軸保持部12とを備えて構成してある。軸保持部12は、その内部に中空部121が形成してあり、先端側の内壁には図示せぬ駆動シャフトと螺合するネジ部122が設けてある。この軸保持部12は、ネジ部122にて螺合する駆動シャフトを保持するものであり、駆動シャフトの中心軸と一致する中空部121の中心軸L回りに回転可能となっている。つまり、従動側回転体10は、中空部121の中心軸Lを回転軸としてその回転軸回りに回転可能となるものである。ここで、駆動シャフトは、例えばコンプレッサ装置に連結されるものである。
【0015】
基部11は、バネ保持部13と磁石保持部14とを備えている。バネ保持部13は、駆動側回転体20に対向する側であって、軸保持部12の径外側となる内周領域に設けてある。このバネ保持部13においては、駆動側回転体20を臨むよう開口が形成された円環状の凹部にコイルバネ(バネ部材)131が収納してある。コイルバネ131は、一端がバネ保持部13に係止され、他端に円環状の摩擦板132が連結されており、かかる摩擦板132を駆動側回転体20に向けて自身の復元力にて付勢するものである。すなわち、コイルバネ131は、摩擦板132を中心軸Lの軸方向に沿って付勢するものである。ここで摩擦板132は、軸保持部12の外表面に設けられた規制部材123により駆動側回転体20に向けての変位が規制されており、これにより予め許容された距離以上にはコイルバネ131の付勢力が及ばないようにしてある。
【0016】
磁石保持部14は、バネ保持部13の径外側となる外周領域に設けてあり、その駆動側回転体20に対向する円環状の面が作用面141を構成している。この磁石保持部14の作用面141には、磁石群15が設けてある。磁石群15は、図2に示すように、複数(図示の例では30個)の永久磁石151により構成されるものである。これら永久磁石151は、中心軸Lを中心とする円周上に等間隔で配置してある。つまり、永久磁石151は、中心軸Lを中心とする周方向に沿って配置してある。これら永久磁石151は、互いに隣り合う磁極が異極となる態様で設けてある。
【0017】
駆動側回転体20は、従動側回転体10と略同一の外径を有する円板状の形態を成しており、その中央領域に従動側回転体10の軸保持部12が貫通する貫通孔20aが形成してある。この駆動側回転体20とバネ保持部13との間にはベアリング21が配設してあり、バネ保持部13と駆動側回転体20との間で回転力が直接伝達されないようにしてある。
【0018】
このような駆動側回転体20は、図示せぬ駆動手段から駆動力が与えられることで、軸保持部12の中心軸Lを回転軸としてその回りに回転するとともに、従動側回転体10に近接離反する態様で中心軸Lの軸方向に沿ってスライド移動するものである。
【0019】
かかる駆動側回転体20においては、ベアリング21の配設個所の径外側が従動側回転体10の磁石保持部14と対向する外周領域部22となっており、従動側回転体10と対向する円環状の面が作用面221を構成している。この作用面221には磁性盤23が設けてある。磁性盤23は、図3に示すように、複数(図示の例では30個)の磁性体であるヨーク歯群231により構成されるものである。ヨーク歯群231は、中心軸Lを中心とする円周上に配置してあり、それぞれの構成要素が径外方向に向かうに連れて幅漸次大きくなる形状を有している。また、これらヨーク歯群231は、渦電流用アルミニウム232で周囲を囲まれており、換言すると、渦電流用アルミニウム232に埋設してある。
【0020】
ところで、本実施の形態においては、上記規制部材123は、従動側回転体10と駆動側回転体20との離間距離が予め決められた所定の大きさ(例えば2mm)となる個所に配設してある。これにより、従動側回転体10に対して駆動側回転体20が近接する態様でスライド移動する場合において、互いの離間距離が所定の大きさを超える場合には、コイルバネ131の付勢力を駆動側回転体20には作用させず、互いの離間距離が所定の大きさ以下となる場合には、コイルバネ131の付勢力(例えば700N程度)を駆動側回転体20に作用させることができる。よって、コイルバネ131は、従動側回転体10と駆動側回転体20との離間距離が予め決められた大きさ以下となる場合に自身の復元力により中心軸Lの軸方向に沿った反発力を生じさせるものである。
【0021】
また、本実施の形態では、永久磁石151の面積、並びにこれと対となるヨーク歯群231の面積は、従動側回転体10と駆動側回転体20との離間距離が所定の大きさ以下となる場合において両者間に働く中心軸Lの軸方向に沿った磁気吸引力が、コイルバネ131の復元力による中心軸Lの軸方向に沿った反発力と渦電流による反発力との和と略同程度となるように大きさが予め調整してある。
【0022】
以上のような構成を有する磁気カップリング装置では、次のようにして駆動側回転体20から従動側回転体10にトルクを伝達することになる。
【0023】
駆動手段により駆動側回転体20が中心軸L回りに回転しながら従動側回転体10に対して近接する態様でスライド移動する。従動側回転体10と駆動側回転体20との離間距離が所定の大きさを超える場合には、従動側回転体10の磁石群15と駆動側回転体20の磁性盤23との間で、図4に示すように永久磁石151とヨーク歯群231とが対向して磁気吸引力が働き、駆動側回転体20の中心軸L回りの回転に追従するかたちで従動側回転体10も中心軸L回りに回転しはじめる。
【0024】
図5に示すように、従動側回転体10に対して近接する態様でスライド移動する駆動側回転体20と従動側回転体10との離間距離が所定の大きさ以下となる場合には、駆動側回転体20が摩擦板132に当接して該摩擦板132を押圧することでコイルバネ131の復元力が働き、中心軸Lの軸方向に沿った反発力が作用することとなる。この場合、磁石群15と磁性盤23との離間距離も小さくなるために永久磁石151とヨーク歯群231との間で働く磁気吸引力も大きくなり、その結果、中心軸Lの軸方向に沿った磁気吸引力がコイルバネ131の反発力(中心軸Lの軸方向に沿った反発力)に略等しいものとなる。
【0025】
一方、駆動側回転体20は中心軸L回りを回転していることから、磁石群15と磁性盤23との間での中心軸L回りの回転方向の磁気吸引力も大きくなる。その結果、従動側回転体10は、駆動側回転体20に同期して回転することとなり、これにより駆動側回転体20から従動側回転体10にトルクが伝達されることになる。
【0026】
このような磁気カップリング装置においては、従動側回転体10の磁石群15と、駆動側回転体20の磁性盤23との間で生ずる中心軸Lの軸方向に沿った磁気吸引力と、従動側回転体10に設けたコイルバネ131による中心軸Lの軸方向に沿った反発力とが作用することで、中心軸Lの軸方向に沿って従動側回転体10を変位させる力を低減化、すなわちスラスト荷重を低減化させることができる。そして、中心軸L回りの回転方向には、磁石群15と磁性盤23との間で働く磁気吸引力が作用することで、駆動側回転体20の回転に同期して従動側回転体10を回転させることができ、駆動側回転体20から従動側回転体10へトルクを伝達することができる。更に、従動側回転体10及び駆動側回転体20が、構造上中心軸Lの軸方向に沿った長さを短いものとする扁平な構成が可能であり、装置全体の小型化を図ることが可能である。
【0027】
従って、本実施の形態である磁気カップリング装置によれば、装置全体の小型化を図りながら、中心軸Lの軸方向に沿って生ずる磁気吸引力を低減させて良好にトルクを伝達することができる。
【0028】
上記磁気カップリング装置においては、従動側回転体10と駆動側回転体20との離間距離が予め決められた大きさ以下となる場合にコイルバネ131による反発力を作用させるようにしたので、従動側回転体10との離間距離が所定の大きさとなるまでは駆動側回転体20をコイルバネ131の反発力を受けることなく従動側回転体10に近接させる態様でスライド移動させることができる。これにより駆動側回転体20のスライド移動をスムーズに行うことが可能になり、駆動側回転体20のスライド移動に要する切替力を低減させることができる。
【0029】
このことについてより詳細に説明すると次のようになる。従動側回転体10と駆動側回転体20との中心軸Lの軸方向に沿った反発力を磁気反発力により実現しようとすると、磁気の特性上、従動側回転体10と駆動側回転体20との間には磁気反発力が強弱の差はあれ常に作用することとなる。しかも駆動側回転体20の回転数と従動側回転体10の回転数との差が大きい場合には渦電流が生ずることによる反発力も相乗的に作用して、従動側回転体10に近接させるための駆動側回転体20のスライド移動に要する切替力が過大なものになってしまう。この点、コイルバネ131による反発力を用いることで、従動側回転体10との離間距離が所定の大きさとなるまでは駆動側回転体20をコイルバネ131の反発力を受けることなく従動側回転体10に近接させる態様でスライド移動させることができる。しかも従動側回転体10に駆動側回転体20を近接させる途中において、両者の間に作用する磁気吸引力で従動側回転体10が駆動側回転体20に追従する形態で回転することで両者の回転数差を小さくすることができるので、渦電流による反発力も低減させることができ、結果的に駆動側回転体20のスライド移動に要する切替力を低減させることができる。
【0030】
また、上記磁気カップリング装置においては、従動側回転体10と駆動側回転体20との中心軸Lの軸方向に沿った反発力を磁気反発力により実現しようとする場合に比して永久磁石(151)の使用量を低減させることができ、これにより製造コストの低減化を図ることが可能になる。
【0031】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の変更を行うことができる。以下に変形例について説明する。
【0032】
図6は、本発明の実施の形態である磁気カップリング装置の変形例を模式的に一部を断面で示す説明図である。尚、上述した実施の形態である磁気カップリング装置と同一の構成を有するものには同一の符号を付してその説明を省略する。
【0033】
ここで例示する磁気カップリング装置は、従動側回転体(第1回転体)100と、駆動側回転体20とを備えて構成してある。
【0034】
従動側回転体100は、上述した実施の形態である磁気カップリング装置の従動側回転体10に対してバイメタル部材16を備えている点で相違する。かかるバイメタル部材16は、バネ保持部13に配設してあり、コイルバネ131の一端とバネ保持部13との間に介在するものである。このバイメタル部材16は、所定温度(例えば120℃)以上となる場合に変形してコイルバネ131を駆動側回転体20に向けて押圧するものである。
【0035】
このような磁気カップリング装置においても、図7に示すように、従動側回転体100に対して近接する態様でスライド移動する駆動側回転体20と従動側回転体100との離間距離が所定の大きさ以下となる場合には、駆動側回転体20が摩擦板132に当接して該摩擦板132を押圧することでコイルバネ131の復元力が働き、中心軸Lの軸方向に沿った反発力が作用することとなる。この場合、磁石群15と磁性盤23との離間距離も小さくなるために永久磁石151とヨーク歯群231との間で働く磁気吸引力も大きくなり、その結果、中心軸Lの軸方向に沿った磁気吸引力がコイルバネ131の反発力(中心軸Lの軸方向に沿った反発力)に略等しいものとなる。一方、駆動側回転体20は中心軸L回りを回転していることから、磁石群15と磁性盤23との間での中心軸L回りの回転方向の磁気吸引力も大きくなる結果、従動側回転体100は、駆動側回転体20に同期して回転することとなり、これにより駆動側回転体20から従動側回転体100にトルクが伝達されることになる。
【0036】
ところで、例えばコンプレッサ装置のロック等に起因して、従動側回転体100の回転と駆動側回転体20の回転とが同期せずにいわゆる脱調状態になることがある。このような脱調状態になると、渦電流効果に由来する発熱により永久磁石151の温度が高温となり、結果的に永久磁石151が減磁してしまいトルクを良好に伝達できないことがある。
【0037】
永久磁石151の温度が上昇してバイメタル部材16が所定温度以上となると、図8に示すように、かかるバイメタル部材16は変形してコイルバネ131を駆動側回転体20に向けて押圧し、これにより駆動側回転体20が従動側回転体100より離隔する方向にスライド移動する。これにより従動側回転体100と駆動側回転体20との離間距離を大きくし、渦電流効果を低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明に係る磁気カップリング装置は、互いの作用面が離隔して対向する態様で設けられた第1回転体と第2回転体との作用面間に生ずる磁力により一方側の回転体から他方側の回転体にトルクを伝達するのに適している。
【符号の説明】
【0039】
10 従動側回転体(第1回転体)
20 駆動側回転体(第2回転体)
123 規制部材
13 バネ保持部
14 磁石保持部
131 コイルバネ(バネ部材)
132 摩擦板
141 作用面
15 磁石群
151 永久磁石
22 外周領域部
221 作用面
23 磁性盤
231 ヨーク歯群
L 中心軸(回転軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの作用面が近接離反する態様で対向して設けられ、かつそれぞれが作用面と直交する方向に沿って延在する共通の回転軸回りに回転可能となる第1回転体及び第2回転体を備えてなり、第1回転体と第2回転体との作用面間に生ずる磁力により一方側の回転体から他方側の回転体にトルクを伝達する磁気カップリング装置において、
前記第1回転体及び前記第2回転体のそれぞれの作用面における前記回転軸に近接した内周領域間において、第1回転体と第2回転体との離間距離が予め決められた大きさ以下となる場合に自身の復元力により前記回転軸の軸方向に沿った反発力を生じさせるバネ部材と、
前記第1回転体及び前記第2回転体のそれぞれの作用面における前記バネ部材の配設個所よりも径外側の外周領域間において前記回転軸の軸方向に沿った磁気吸引力を生fsじさせる磁力ユニットと
を備えたことを特徴とする磁気カップリング装置。
【請求項2】
前記磁力ユニットは、
第1回転体の作用面における前記外周領域に対応する個所に、前記回転軸を中心とする周方向に沿って互いに隣り合う磁極が異極となる態様で複数の磁石が所定間隔で配設されて成る磁石群と、
前記第1回転体が相対的に回転することにより前記第2回転体の作用面における磁石と対向可能な個所に、該回転軸を中心とする周方向に沿って磁性体群が配設されて成る磁性盤と
を備えて成ることを特徴とする請求項1に記載の磁気カップリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−197805(P2012−197805A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60632(P2011−60632)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度経済産業省「地域イノベーション創出研究開発事業」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)」
【出願人】(303049418)株式会社プロスパイン (21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)