磁気シールド構造及び磁気シールド継手
【課題】簡単かつ安価な構成でありながら、所定長さの磁気シールド材を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、良好に磁気的な連続性を確保して所望の磁気シールド効果を奏することができる磁気シールド構造を提供する。
【解決手段】磁場の侵入を抑制して磁気による影響を低減する磁気シールド構造であって、略磁力線方向或いはその略接線方向に沿って磁気シールド材1を連設する際に、連設される磁気シールド材1の端部同士を重畳させること、或いは連設される磁気シールド材1の端部に対して磁気シールド継手20を重畳させる。
【解決手段】磁場の侵入を抑制して磁気による影響を低減する磁気シールド構造であって、略磁力線方向或いはその略接線方向に沿って磁気シールド材1を連設する際に、連設される磁気シールド材1の端部同士を重畳させること、或いは連設される磁気シールド材1の端部に対して磁気シールド継手20を重畳させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気シールド構造及び磁気シールド継手に関する。例えば、送電線、鉄道のレール、き電線などを流れる電流によって発生する磁場が、周辺建物の内部空間に与える影響を低減するための磁気シールド構造及び磁気シールド継手に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線、鉄道のレール、き電線などに流れる電流によって磁場が生じるが、このような磁場で発生する磁気は、例えば周辺建物の内部空間に侵入し、電気・電子機器や医療機器等の精密機器等の動作・機能などに対して悪影響を及ぼす惧れがある。
また、磁場の人体への健康影響に関しても関心が高まっている。
【0003】
このようなことから、磁場の発生原因となる比較的強電流が流れる送電線、鉄道のレール、き電線などと、磁場の影響を受ける領域と、の間の磁界(磁力線)方向或いはその略接線方向に沿って、高い透磁率を有する磁気シールド材を配設することなどが行われている。かかる手法は、磁場で発生する磁気を、配設された磁気シールド材内に収束させて通過させることにより、磁気シールド材より磁界外側へ漏れる磁気を減ずることで、磁気による周辺領域への影響を低減するというものである。
【0004】
出願人は、例えば特許文献1において、上述したような手法を利用した磁気シールド構造を提案している。
【0005】
このものは、面状でかつ有孔の補強部材に、帯状(短冊状)或いは棒状の磁気シールド材を取り付けることによって面状磁気シールド体を形成し、これを建造物の仕上げモルタルや躯体コンクリートなどのセメント系硬化材の中に埋設するようにしている。なお、埋設方向は、帯状(短冊状)或いは棒状の磁気シールド材の長軸方向が、例えば鉄道のレールの敷設方向と略直交する方向(すなわち、磁界(磁力線に沿った)方向或いはその略接線方向)を向くように配設されている。
【0006】
かかる特許文献1に記載の磁気シールド構造によれば、磁場の侵入を抑制して磁気による影響を低減することができると共に、磁気シールド材に対する防錆処理等を不要とし、損傷等を受け難い構造を提供することができる。
【0007】
【特許文献1】特開2007−239384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、例えば、磁気シールド体を比較的広い面積に対して配設したい場合などにおいては、所定長さの磁気シールド材を平行に(短冊状に)複数並べた構成の面状磁気シールド体などを複数準備し、その端部同士(具体的には磁気シールド材の長軸方向端部)同士を相互に突き合わせるようにして配設することが想定される。
【0009】
しかし、発明者等は種々の研究実験を行い、その結果として、例えば、施工の簡便さや仕上がり具合などの観点から、複数の面状磁気シールド体の端部を相互に突き合わせるようにして配設しようとする場合、面状磁気シールド体の一部を構成する所定長さに調整された帯状(短冊状)或いは棒状の磁気シールド材の対応するもの同士を長軸方向において突き合わせて配設するといったことが想定されるが、このような方法に比べて、磁場を低減して磁気による影響を低減するという効果(磁気シールド効果)をより一層改善することができる方法が存在することを確認した。
【0010】
すなわち、所定長さの帯状(短冊状)或いは棒状の磁気シールド材の長手方向端部同士を位置合わせして突き合わせる(継ぎ合わせる)ようにして配設するような場合には、状況によっては、長軸方向に連設される帯状(短冊状)或いは棒状の磁気シールド材の端部間の接続が不十分となったり隙間などが生じ、磁気抵抗が増加したり磁気的な連続性を十分に確保することが難しくなる場合があることを実験により確認することに成功した一方で、このような惧れの発生を抑制して磁気シールド効果をより一層改善することができる方法を種々の実験を行なって確認した。
【0011】
本発明は、比較的簡単かつ安価な構成でありながら、所定長さの磁気シールド材を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、良好に磁気的な連続性を確保して所望の磁気シールド効果を奏することができる磁気シールド構造及び該構造に用いられる磁気シールド継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明に係る磁気シールド構造は、
磁場の侵入を抑制して磁気による影響を低減する磁気シールド構造であって、
略磁力線方向或いはその略接線方向に沿って磁気シールド材を連設する際に、連設される磁気シールド材の端部同士を重畳させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る磁気シールド構造は、
磁場の侵入を抑制して磁気による影響を低減する磁気シールド構造であって、
略磁力線方向或いはその略接線方向に沿って磁気シールド材を連設する際に、連設される磁気シールド材の端部に対して磁気シールド継手を重畳させることを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記磁気シールド材は、略磁力線方向或いはその略接線方向に沿って伸びる棒状或いは帯状の磁気シールド材であって、磁気シールド面において所定間隔で複数並列に配設されることを特徴とすることができる。
【0015】
本発明において、連設される磁気シールド材の端部同士の重畳代或いは磁気シールド材の端部に対する磁気シールド継手の重畳代は、重畳部を磁気シールド面と略直交すると共に略磁力線方向或いはその略接線方向と略直交する面で切断したときの、磁気シールド面に略平行な方向における磁気シールド面の所定幅内に存する磁気シールド材或いは/及び磁気シールド継手の断面積の合計に基づいて定められることを特徴とすることができる。
【0016】
本発明において、連設される磁気シールド材の端部同士の重畳代或いは磁気シールド材の端部に対する磁気シールド継手の重畳代L(mm)は、
L=−142.92ln(S)+1200.6
S(mm2):前記磁気シールド面の所定幅(1000mm)あたりの磁気シールド材或いは/及び磁気シールド継手の前記断面積の合計
なる式に基づいて定められることを特徴とすることができる。
【0017】
本発明において、前記磁気シールド継手は、連設される磁気シールド材より、磁気シールド面に略平行で略磁力線方向或いはその略接線方向と略直交する方向における幅が広いと共に、磁気シールド面に略直交する方向における厚さが薄いことを特徴とすることができる。
【0018】
本発明において、前記磁気シールド継手が前記幅方向において複数並設される場合に、隣接する磁気シールド継手の端部同士が当接或いは重畳されることを特徴とすることができる。
【0019】
本発明において、磁気シールド継手の略磁力線方向或いはその略接線方向の端部の少なくとも一方が、連設される磁気シールド材の対応する端部に対して挟持されることを特徴とすることができる。
【0020】
本発明において、前記磁気シールド材或いは磁気シールド継手の少なくとも一方が、薄板状の磁気シールド材を積層されてなることを特徴とすることができる。
【0021】
本発明に係る磁気シールド継手は、上述した本発明に係る磁気シールド構造に用いられる磁気シールド継手であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、比較的簡単かつ安価な構成でありながら、所定長さの磁気シールド材を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、良好に磁気的な連続性を確保して所望の磁気シールド効果を奏することができる磁気シールド構造及び該構造に用いられる磁気シールド継手を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施例を、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施例により、本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
発明者等は、一般的な施工法のように所定長さの磁気シールド材の長軸方向を略磁力線方向或いはその略接線方向に沿わせて連設する際に端部同士を突き合わせる(継ぎ合わせる)方法では磁気シールド材の端部同士の突き合わせ部分(継ぎ目)に隙間が生じるなどして、図2に示すように、継ぎ目無しの磁気シールド材を用いた場合に比べて、磁気シールド効果が低下することを実験により確認した。なお、図2において、符号1が磁気シールド材を示している。
【0025】
この一方で、所定長さの磁気シールド材の端部同士を重畳させるようにして磁気シールド材の長軸方向を略磁力線方向或いはその略接線方向に沿わせて連設すると、図2に示したように、その重畳長さ(重ね代)に応じて磁気シールド効果が改善される傾向があることが確認された。
【0026】
図1は、上記の実験に用いた複数の磁気シールド材1を柵状に配設した磁気シールド体10の構成例を示す図である。
【0027】
ここで、従来においては、現場に搬入される磁気シールド材やユニット(例えば面状磁気シールド体)はそのサイズが予め決まったものであるため、磁気シールド材の長軸方向を略磁力線方向或いはその略接線方向に沿わせて連設する際に端部同士を重ね合わせることは比較的困難で実現するためには煩雑な作業を伴うことになると共に、重ね合わせた場合には厚さ方向における段差を招く惧れなどがあるため、施工の簡便さや仕上がり具合などの観点から、磁気シールド材を突き合わせて配設するに止まっていたのが実情であったが、磁気シールド効果を所定に維持するため或いはより高い磁気シールド効果が要求される場合も想定されることから、本発明では、所定長さの磁気シールド材を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、連設方向において磁気シールド材の端部同士を重畳させる構成とする。
【0028】
本実施例に係る磁気シールド構造は、図1に示したように、所定長さに調整された磁気シールド材1を複数並列に配設して柵状をなす磁気シールド体10として構成される。磁気シールド体10は、枠や支持部材等を用いてユニット化することも可能であるが、これに限定されるものではなく、枠や支持部材等を用いることなく複数の磁気シールド材1を並列に配設して柵状とする場合も含まれるものである。
【0029】
なお、図1では、施工等の観点から、長さ1800mm、幅900mmの範囲に、磁気シールド材1(長さ1800mm、幅20mm)を50mmピッチで配設したものを一例として示している。
【0030】
また、磁気シールド材1単体としては、棒状或いは帯状(短冊状)のものを用いることができるが、薄板状(例えば、厚さ0.3mm×幅20mm)の高透磁率を有する磁気シールド材を複数枚積層させた構造とすることもできる。なお、磁気シールド材1の材料としては、例えば、珪素鋼、アモルファス、パーマロイなどを採用することができる。
【0031】
そして、本実施例に係る磁気シールド構造では、磁気シールド材1を長軸方向に連設する際に、対応する磁気シールド材1の端部同士を重畳させる。
【0032】
これにより、図2に示したように、従来のように磁気シールド材を長軸方向に連設する際に、対応する磁気シールド材の端部同士を突き合わせる(継ぎ合わせる)ようにした場合に比べ、磁場を低減して磁気による影響を低減するという効果(磁気シールド効果)を改善することができる。
【0033】
ここで、発明者等は、実験を行なううちに、重畳代(重ね代)の大小によって磁気シールド効果の改善効果に影響があることを知得したため、その影響度合いについて確認するための実験を行なった。
【0034】
実験は、前述した磁気シールド体10(長さ1800mm、幅900mmの範囲に、磁気シールド材1(長さ1800mm、幅20mm)を50mmピッチで配設したもの)を、これを構成する磁気シールド材1の長軸方向が磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に沿うように連設し、対応する各磁気シールド材1の端部を、重畳代(重ね代)0mm(端部同士を突き当てた状態)から100mm間隔で600mmまで変化させて、重畳代(重ね代)ごとに磁気シールド効果を確認した。なお、磁気シールド材1は、0.3mmの厚さのものを5枚積層させたものを用いた。
【0035】
なお、実験においては、地面と略平行で且つ磁力線の水平成分と略平行な方向に磁気シールド材1の長軸方向が向くように磁気シールド体10を配設し、図3(A)、図3(B)に示すように、幅方向中央部の磁気シールド材1の端部の突き合わせ部分或いは重畳部分の中心付近上方に3軸磁力センサ2を配設して重畳代ごとに磁束密度を測定した。
【0036】
なお、3軸磁力センサ2は、Y方向を磁力線の水平成分と平行な方向、X方向を磁力線の水平成分と直交する方向、Z方向を地面と直交する方向に設定した。X方向成分磁場とZ方向成分磁場はほぼ一定となるように磁気シールド体10を設置したため、測定結果はY方向成分磁束密度を比較している。
【0037】
このような条件の下で、磁気シールド材1を長軸方向に連設する際の磁気シールド材1の端部同士の重畳代(重ね代)による磁気シールド効果を確認した実験結果を、図4に示す。
【0038】
なお、発明者等は、本実験において、磁気シールド材1の層数(厚さ)を変更して磁気シールド効果への影響も確認したので、その結果も、図4に同時に示す。
【0039】
なお、図4において、基準値1は、継ぎ目無しの磁気シールド材(1層:0.3mm)を用いて実験を行なった場合の磁束密度の測定結果を示し、基準値2は継ぎ目無しの磁気シールド材を5層(0.3mm×5)、基準値3は10層(0.3mm×10)とした場合の磁束密度の測定結果を示している。
【0040】
図4から理解されるように、継ぎ目無しの磁気シールド材1の場合の磁束密度(基準値1、2、3)と同等の磁気シールド効果を得られる条件は、それぞれ、磁気シールド材1が1層の場合には重ね代が548.5mm、2層の場合には重ね代が292.6mm、20層の場合には重ね代が207.0mmとなるという結果が得られた。
【0041】
また、発明者等は、磁気シールド材1(5層、幅30mmの場合は10層とした)の配設ピッチを50mmに固定して磁気シールド材1の幅を変更して磁気シールド効果への影響も確認したので、その結果を、図5に示す。
【0042】
なお、図5において、基準値1は、継ぎ目無しの磁気シールド材1(5層:幅10mm)を用いて実験を行なった場合の磁束密度の測定結果を示し、基準値2は継ぎ目無しの磁気シールド材(5層)の幅を20mm、基準値3は継ぎ目無しの磁気シールド材(10層)の幅を30mmとした場合の磁束密度の測定結果を示している。
【0043】
図5から理解されるように、継ぎ目無しの磁気シールド材1の場合の磁束密度(基準値1、2、3)と同等の磁気シールド効果を得られる条件は、それぞれ、磁気シールド材1の幅が10mm(5層)の場合には重ね代が398.6mm、幅が20mm(5層)の場合には重ね代が292.6mm、幅が30mm(10層)の場合には重ね代が145.2mmとなるという結果が得られた。
【0044】
この結果より、磁気シールド材1の幅が広くなるほど、重ね代がより短い状態で、継ぎ目無しの磁気シールド材と同等の磁気シールド効果を得ることができることが解る。
【0045】
更に、発明者等は、磁気シールド材1(5層)の幅を20mmに固定して磁気シールド材1の配設ピッチ(間隔)を変更した場合の磁気シールド効果への影響も確認したので、その結果を、図6に示す。
【0046】
なお、図6において、基準値1は、継ぎ目無しの磁気シールド材1(5層:幅20mm)を間隔25mmで配設して実験を行なった場合の磁束密度の測定結果を示し、基準値2は継ぎ目無しの磁気シールド材(5層:幅20mm)を間隔50mmで配設した場合、基準値3は継ぎ目無しの磁気シールド材(5層:幅20mm)を間隔100mmで配設した場合の磁束密度の測定結果を示している。
【0047】
図6から理解されるように、継ぎ目無しの磁気シールド材1の場合の磁束密度(基準値)と同等の磁気シールド効果を得られる条件は、磁気シールド材1の間隔が25mmの場合には重ね代が168.8mm、間隔が50mmの場合には重ね代が292.6mm、間隔が100mmの場合には重ね代が320.8mmとなるという結果が得られた。
【0048】
この結果より、磁気シールド材1の間隔(配設ピッチ)が狭くなるほど、重ね代がより短い状態で、継ぎ目無しの磁気シールド材と同等の磁気シールド効果を得ることができることが解る。
【0049】
以上の実験結果を考察すると、磁気シールド材1の層数が増え厚さが増す、幅が広くなる、間隔(配設ピッチ)が狭くなるほど、磁気シールド材1の重ね代が短い状態で、継ぎ目無しの磁気シールド材を用いた場合と同等の磁気シールド効果を奏することができることが解った。
【0050】
かかる事象をより詳細に検討すると、磁気シールド効果を所定に維持するために必要な磁気シールド材1の重ね代は、磁気シールド体10の磁気シールド面(図1参照:磁気シールド材1が対応する磁気シールド体10内で並列配設される面)に略直交すると共に磁気シールド材1の長軸方向と略直交する平面で、重畳部を切断したときの断面積の合計と関係しているものと推定される。
【0051】
発明者等は、当該推定を確認するために、横軸に幅方向における1000mmあたりの前記断面積の合計、縦軸に重ね代を採り、上述した実験により取得された情報をプロットしたところ、図7に示すように、磁気シールド材1の前記断面積が大きいほど重ね代が短くて済む傾向があることが解り、その結果から対数近似曲線(図7参照)を取得するに至った。
【0052】
なお、得られた対数近似曲線式は、以下の通りである。
L=−142.92ln(S)+1200.6
但し、S(mm2)は幅1000mmあたりの磁気シールド材の前記断面積の合計であり、L(mm)は磁気シールド材1の端部同士の重ね代(重畳代)である。
【0053】
すなわち、上記の対数近似曲線式に基づけば、磁気シールド材1の前記断面積(各磁気シールド材1の幅、厚さ(積層枚数)、配設ピッチ)に応じて所望の磁気シールド効果を達成可能な重ね代(重畳代)を容易かつ適切に求めることができることになる。
【0054】
このため、必要以上に重ね代を設けたり、所望の磁気シールド効果を達成するためには不十分な重ね代で施工を行なってしまうなどの惧れを回避することができ、以って磁気シールド効果に対する信頼性を高く維持しつつ効率の良い施工を実現することが可能となる。
【0055】
また、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合であれば、磁気シールド材1が棒状或いは帯状(短冊状)のものに限定されるものではなく、長軸方向であるか短軸方向であるかを問わず適用することが可能である。
【実施例2】
【0056】
次に、本発明の実施例2について説明する。
上述した実施例1では、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、連設方向において磁気シールド材の端部同士を重畳させる構成としたが、以下で説明する各実施例では、それぞれ、別の重畳方法についての一例を説明する。なお、以下で説明する各実施例の説明において、実施例1で説明した要素と同様の要素については同一符号を付すこととし、詳細な説明は省略することとする。
【0057】
当該実施例2では、図8(A)、図8(B)に示すように、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、対応する磁気シールド材1の端部同士の間を橋渡しするように、磁気シールド継手20を取り付けるようにする。
【0058】
なお、取り付け方法は、特に限定されるものではなく、磁気シールド材1の端部に単に載置する方法であっても良いし、ボルト・ナットやバンド等の締結要素により締結したり、接着剤等により接着する方法なども可能である。
【0059】
磁気シールド継手20は、磁気シールド材1と同様の高透磁率を有する材料で形成され、磁気シールド面と略平行に配設される。当該磁気シールド継手20は、薄板状の磁気シールド材を複数枚積層させて構成することもできる。
【0060】
当該実施例2に係る磁気シールド継手20を用いた磁気シールド構造によれば、簡単かつ安価でありながら、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、良好に磁気的な連続性を確保して所望の磁気シールド効果を奏することができる。
【0061】
磁気シールド継手20と、各磁気シールド材1と、の重ね代(重畳代)は、実施例1で求めた対数近似曲線式に従って設定することができ、重ね代によって所望の磁気シールド効果を達成することも可能である。
【実施例3】
【0062】
本発明の実施例3について説明する。
当該実施例3では、図9に示すように、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、対応する磁気シールド材1の端部同士の間を橋渡しするように、磁気シールド継手30を取り付けるようにする。
【0063】
この磁気シールド継手30は、実施例2の磁気シールド継手20と比べて、幅が広く、厚さが薄く形成されている。但し、前記断面積としては、実施例2のものと同等とすることができる。
【0064】
磁気シールド継手30も、磁気シールド材1と同様の高透磁率を有する材料で形成され、磁気シールド面と略平行に配設される。当該磁気シールド継手30は、薄板状の磁気シールド材を複数枚積層させて構成することもできる。
【0065】
なお、取り付け方法は、特に限定されるものではなく、磁気シールド材1の端部に単に載置する方法であっても良いし、ボルト・ナットやバンド等の締結要素により締結したり、接着剤等により接着する方法なども可能である。
【0066】
当該実施例3に係る磁気シールド継手30を用いた磁気シールド構造によれば、簡単かつ安価でありながら、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、厚さ方向における段差を極力抑制しつつ、良好に磁気的な連続性を確保して所望の磁気シールド効果を奏することができる。
【0067】
また、磁気シールド継手30と、各磁気シールド材1と、の重ね代(重畳代)は、実施例1で求めた対数近似曲線式に従って設定することができ、重ね代によって所望の磁気シールド効果を達成することも可能である。
【0068】
ところで、磁気シールド継手30は磁気シールド材1に比べて幅が広いため、図10に示すように、隣接する磁気シールド継手30同士を当接或いは重畳させて、磁気シールド材1の連設部全体を幅方向において磁気シールド継手30で覆うように構成することもできる。
【実施例4】
【0069】
本発明の実施例4について説明する。
当該実施例4では、図11に示すように、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、連設する磁気シールド材1が相互に交差する面内に配設される場合についての一例を示しており、連設する磁気シールド材1の端部同士の間を橋渡しするように、磁気シールド継手40が取り付けられる。
【0070】
この磁気シールド継手40は、実施例3の磁気シールド継手30と同様のものを用いることができ、例えば、薄板状の磁気シールド材を複数枚積層させて構成することもできる。
また、図11に示したように曲部に配設されることから、より可撓性を高めるために、例えば、磁気シールド継手40自体を、複数の棒状或いは帯状(短冊状)の磁気シールド材を柵状に並べた構成とすることもできる。
【0071】
なお、取り付け方法は、特に限定されるものではなく、磁気シールド材1に対して、ボルト・ナットやバンド等の締結要素により締結したり、接着剤等により接着する方法なども採用可能である。
【0072】
当該実施例4に係る磁気シールド継手40を用いた磁気シールド構造によれば、簡単かつ安価でありながら、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、厚さ方向における段差を極力抑制しつつ、良好に磁気的な連続性を確保して所望の磁気シールド効果を奏することができる。
【0073】
特に、図11に示したように、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、連設する磁気シールド材1が相互に交差する面内に配設される場合には、図2等に示したように連設される磁気シールド材1が同一平面内に配設される場合のように磁気シールド材1の端部同士を十分な重ね代をもって重ね合わせることは困難であるから、当該実施例4に係る磁気シールド継手40は極めて有益なものとなる。
【0074】
なお、磁気シールド継手40と、各磁気シールド材1と、の重ね代(重畳代)は、実施例1で求めた対数近似曲線式に従って設定することができ、重ね代によって所望の磁気シールド効果を達成することも可能である。
【実施例5】
【0075】
本発明の実施例5について説明する。
当該実施例5では、図12(A)、図12(B)に示すように、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、連設される磁気シールド材1の端部に対して磁気シールド継手30の端部が挿入されて、連設される磁気シールド材1の端部同士の間を橋渡しするように構成される。
【0076】
この磁気シールド継手30は、実施例3の磁気シールド継手30と同様のものを用いることができ(或いは実施例4の磁気シールド継手40を用いることもできる)、例えば、薄板状の磁気シールド材を複数枚積層させて構成することもできる。
【0077】
また、当該実施例5では、図12(A)、図12(B)に示したように、磁気シールド材1の端部にスリット1Aが形成され、当該スリット1Aに磁気シールド継手30の端部が収容されるようになっている。或いは、磁気シールド材1を重ね合わせ、その間に磁気シールド継手30の端部を挟み込ませるような構成とすることもできる。
【0078】
なお、当該実施例5の磁気シールド継手30の磁気シールド材1への取り付け方法は、特に限定されるものではなく、磁気シールド材1に対して、ボルト・ナットやバンド等の締結要素により締結したり、接着剤等により接着する方法なども採用可能である。
【0079】
但し、当該実施例5の磁気シールド継手30を利用した磁気シールド構造においては、スリット1Aの隙間と、磁気シールド継手30の端部の厚みと、の大小関係等により、スリット1Aに磁気シールド継手30の端部を保持(挟持)させることもでき、その際の挟持力(或いは、磁気シールド材1を重ね合わせ若しくは薄板の磁気シールド材を複数枚積層し、合わせ面の間に磁気シールド継手30の端部を挟み込ませた場合の挟持力)によって磁気シールド継手30の端部を保持させる構成とすれば、比較的信頼性の高い取り付けを実現しつつ、取り付け作業を簡易化でき、施工を容易なものとすることができる。
【0080】
なお、磁気シールド継手30の端部の両方を挟持させる構成に限らず、一方の端部を対応する磁気シールド材1の端部に対して挟持させる構成とすることもできる。
【0081】
当該実施例5に係る磁気シールド継手30を用いた磁気シールド構造によれば、簡単かつ安価でありながら、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、厚さ方向における段差を極力抑制しつつ、良好に磁気的な連続性を確保して所望の磁気シールド効果を奏することができる。
【0082】
なお、磁気シールド継手30と、各磁気シールド材1と、の重ね代(重畳代)は、実施例1で求めた対数近似曲線式に従って設定することができ、重ね代によって所望の磁気シールド効果を達成することも可能である。
【0083】
ところで、上述した各実施例では、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合について説明したが、この磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合には、施工の都合上などの観点から、磁場を所望に低減できる範囲内において磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向と交差する方向に連設する場合も含まれるものである。
【0084】
また、各実施例の磁気シールド材1、磁気シールド体10は、略水平に配設される場合(例えば床面などに配設される場合)について説明したが、これに限定されるものではなく、鉛直方向或いは水平方向と所定の角度をもって交差する方向(例えば壁面や傾斜面など)に配設されることもできるものである。
【0085】
更に、上記各実施例では、磁気シールド材1を磁界(磁力線)の略接線方向に伸びる棒状或いは帯状(短冊状)の部材として磁界(磁力線)の略接線方向に連設する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、磁気シールド材1を磁界(磁力線)に略沿った方向に連設して、円筒状或いは半円筒状等に連設するような場合も本発明の範囲に含まれるものである。
【0086】
また、上記各実施例では、磁気シールド材1を磁界(磁力線)の略接線方向に伸びる棒状或いは帯状(短冊状)の部材として説明したが、これに限定されるものではなく、比較的大きなサイズの平板状の磁気シールド材を連設する場合にも本発明は適用可能である。
【0087】
ところで、上記各実施例で説明した磁気シールド材1は、建築物等の構造物の床面や壁面の仕上げモルタルや躯体コンクリートなどのセメント系硬化材の中に金属製の格子状の補強材と共に埋設して用いることができる。そして、その際には、例えば、構造物と、金属製の格子状の補強材と、の間に、磁気シールド材1を挟みこませることで、打設時等における磁気シールド材1の移動等を抑制し、施工を信頼性高く容易なものとすることができるものである。
【0088】
また、上記各実施例で説明した磁気シールド継手30、40の隅部形状に関し、図9〜図12において矩形の隅部を面取りしたような形状として例示したが、当該形状に限定されるものではなく、面取り等を施すことなく、矩形形状或いはその他の形状の磁気シールド継手30、40を採用することもできるものである。
【0089】
以上で説明した本発明に係る各実施例は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施例1に係る磁気シールド構造に利用される磁気シールド材及び磁気シールド体の構成例を示す図である。
【図2】磁気シールド材の重ね代(重畳代)による磁気シールド効果を比較した測定結果を示す図である。
【図3】(A)は磁気シールド効果の測定方法を磁気シールド材の幅方向から見た図(継ぎ目無しの場合)であり、(B)は磁気シールド効果の測定方法を磁気シールド材の幅方向から見た図(重畳させた場合)である。
【図4】磁気シールド材の厚さ(積層枚数)の変更に応じて、磁気シールド材の重畳代を変更した場合の磁束密度(磁気シールド効果)の変化を測定した結果を示す図である(磁気シールド材の幅20mm、配設間隔50mmに固定)。
【図5】磁気シールド材の幅の変更に応じて、磁気シールド材の重畳代を変更した場合の磁束密度(磁気シールド効果)の変化を測定した結果を示す図である(磁気シールド材の積層数5(30mm幅の場合は10層)、配設間隔50mmに固定)。
【図6】磁気シールド材の配設間隔の変更に応じて、磁気シールド材の重畳代を変更した場合の磁束密度(磁気シールド効果)の変化を測定した結果を示す図である(磁気シールド材の積層数5、磁気シールド材の幅20mmに固定)。
【図7】継ぎ目の無い磁気シールド材と同等の磁気シールド効果を確保するために必要な磁気シールド材の重ね代と、幅方向長さ1000mmあたりの断面積の合計と、の関係について測定データと対数近似曲線を示す図である。
【図8】(A)は本発明の実施例2に係る磁気シールド構造及び磁気シールド継手を示す斜視図であり、(B)は磁気シールド材の幅方向から見た側面図である。
【図9】本発明の実施例3に係る磁気シールド構造及び磁気シールド継手を示す斜視図である。
【図10】同上実施例の磁気シールド継手を幅方向に連接して配設した構成例の一例を示す図である。
【図11】本発明の実施例4に係る磁気シールド構造及び磁気シールド継手を示す斜視図である。
【図12】(A)は本発明の実施例5に係る磁気シールド構造及び磁気シールド継手を示す斜視図であり、(B)は磁気シールド材の幅方向から見た側面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 磁気シールド材
10 磁気シールド体
20 磁気シールド継手
30 磁気シールド継手
40 磁気シールド継手
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気シールド構造及び磁気シールド継手に関する。例えば、送電線、鉄道のレール、き電線などを流れる電流によって発生する磁場が、周辺建物の内部空間に与える影響を低減するための磁気シールド構造及び磁気シールド継手に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線、鉄道のレール、き電線などに流れる電流によって磁場が生じるが、このような磁場で発生する磁気は、例えば周辺建物の内部空間に侵入し、電気・電子機器や医療機器等の精密機器等の動作・機能などに対して悪影響を及ぼす惧れがある。
また、磁場の人体への健康影響に関しても関心が高まっている。
【0003】
このようなことから、磁場の発生原因となる比較的強電流が流れる送電線、鉄道のレール、き電線などと、磁場の影響を受ける領域と、の間の磁界(磁力線)方向或いはその略接線方向に沿って、高い透磁率を有する磁気シールド材を配設することなどが行われている。かかる手法は、磁場で発生する磁気を、配設された磁気シールド材内に収束させて通過させることにより、磁気シールド材より磁界外側へ漏れる磁気を減ずることで、磁気による周辺領域への影響を低減するというものである。
【0004】
出願人は、例えば特許文献1において、上述したような手法を利用した磁気シールド構造を提案している。
【0005】
このものは、面状でかつ有孔の補強部材に、帯状(短冊状)或いは棒状の磁気シールド材を取り付けることによって面状磁気シールド体を形成し、これを建造物の仕上げモルタルや躯体コンクリートなどのセメント系硬化材の中に埋設するようにしている。なお、埋設方向は、帯状(短冊状)或いは棒状の磁気シールド材の長軸方向が、例えば鉄道のレールの敷設方向と略直交する方向(すなわち、磁界(磁力線に沿った)方向或いはその略接線方向)を向くように配設されている。
【0006】
かかる特許文献1に記載の磁気シールド構造によれば、磁場の侵入を抑制して磁気による影響を低減することができると共に、磁気シールド材に対する防錆処理等を不要とし、損傷等を受け難い構造を提供することができる。
【0007】
【特許文献1】特開2007−239384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、例えば、磁気シールド体を比較的広い面積に対して配設したい場合などにおいては、所定長さの磁気シールド材を平行に(短冊状に)複数並べた構成の面状磁気シールド体などを複数準備し、その端部同士(具体的には磁気シールド材の長軸方向端部)同士を相互に突き合わせるようにして配設することが想定される。
【0009】
しかし、発明者等は種々の研究実験を行い、その結果として、例えば、施工の簡便さや仕上がり具合などの観点から、複数の面状磁気シールド体の端部を相互に突き合わせるようにして配設しようとする場合、面状磁気シールド体の一部を構成する所定長さに調整された帯状(短冊状)或いは棒状の磁気シールド材の対応するもの同士を長軸方向において突き合わせて配設するといったことが想定されるが、このような方法に比べて、磁場を低減して磁気による影響を低減するという効果(磁気シールド効果)をより一層改善することができる方法が存在することを確認した。
【0010】
すなわち、所定長さの帯状(短冊状)或いは棒状の磁気シールド材の長手方向端部同士を位置合わせして突き合わせる(継ぎ合わせる)ようにして配設するような場合には、状況によっては、長軸方向に連設される帯状(短冊状)或いは棒状の磁気シールド材の端部間の接続が不十分となったり隙間などが生じ、磁気抵抗が増加したり磁気的な連続性を十分に確保することが難しくなる場合があることを実験により確認することに成功した一方で、このような惧れの発生を抑制して磁気シールド効果をより一層改善することができる方法を種々の実験を行なって確認した。
【0011】
本発明は、比較的簡単かつ安価な構成でありながら、所定長さの磁気シールド材を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、良好に磁気的な連続性を確保して所望の磁気シールド効果を奏することができる磁気シールド構造及び該構造に用いられる磁気シールド継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明に係る磁気シールド構造は、
磁場の侵入を抑制して磁気による影響を低減する磁気シールド構造であって、
略磁力線方向或いはその略接線方向に沿って磁気シールド材を連設する際に、連設される磁気シールド材の端部同士を重畳させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る磁気シールド構造は、
磁場の侵入を抑制して磁気による影響を低減する磁気シールド構造であって、
略磁力線方向或いはその略接線方向に沿って磁気シールド材を連設する際に、連設される磁気シールド材の端部に対して磁気シールド継手を重畳させることを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記磁気シールド材は、略磁力線方向或いはその略接線方向に沿って伸びる棒状或いは帯状の磁気シールド材であって、磁気シールド面において所定間隔で複数並列に配設されることを特徴とすることができる。
【0015】
本発明において、連設される磁気シールド材の端部同士の重畳代或いは磁気シールド材の端部に対する磁気シールド継手の重畳代は、重畳部を磁気シールド面と略直交すると共に略磁力線方向或いはその略接線方向と略直交する面で切断したときの、磁気シールド面に略平行な方向における磁気シールド面の所定幅内に存する磁気シールド材或いは/及び磁気シールド継手の断面積の合計に基づいて定められることを特徴とすることができる。
【0016】
本発明において、連設される磁気シールド材の端部同士の重畳代或いは磁気シールド材の端部に対する磁気シールド継手の重畳代L(mm)は、
L=−142.92ln(S)+1200.6
S(mm2):前記磁気シールド面の所定幅(1000mm)あたりの磁気シールド材或いは/及び磁気シールド継手の前記断面積の合計
なる式に基づいて定められることを特徴とすることができる。
【0017】
本発明において、前記磁気シールド継手は、連設される磁気シールド材より、磁気シールド面に略平行で略磁力線方向或いはその略接線方向と略直交する方向における幅が広いと共に、磁気シールド面に略直交する方向における厚さが薄いことを特徴とすることができる。
【0018】
本発明において、前記磁気シールド継手が前記幅方向において複数並設される場合に、隣接する磁気シールド継手の端部同士が当接或いは重畳されることを特徴とすることができる。
【0019】
本発明において、磁気シールド継手の略磁力線方向或いはその略接線方向の端部の少なくとも一方が、連設される磁気シールド材の対応する端部に対して挟持されることを特徴とすることができる。
【0020】
本発明において、前記磁気シールド材或いは磁気シールド継手の少なくとも一方が、薄板状の磁気シールド材を積層されてなることを特徴とすることができる。
【0021】
本発明に係る磁気シールド継手は、上述した本発明に係る磁気シールド構造に用いられる磁気シールド継手であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、比較的簡単かつ安価な構成でありながら、所定長さの磁気シールド材を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、良好に磁気的な連続性を確保して所望の磁気シールド効果を奏することができる磁気シールド構造及び該構造に用いられる磁気シールド継手を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施例を、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施例により、本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
発明者等は、一般的な施工法のように所定長さの磁気シールド材の長軸方向を略磁力線方向或いはその略接線方向に沿わせて連設する際に端部同士を突き合わせる(継ぎ合わせる)方法では磁気シールド材の端部同士の突き合わせ部分(継ぎ目)に隙間が生じるなどして、図2に示すように、継ぎ目無しの磁気シールド材を用いた場合に比べて、磁気シールド効果が低下することを実験により確認した。なお、図2において、符号1が磁気シールド材を示している。
【0025】
この一方で、所定長さの磁気シールド材の端部同士を重畳させるようにして磁気シールド材の長軸方向を略磁力線方向或いはその略接線方向に沿わせて連設すると、図2に示したように、その重畳長さ(重ね代)に応じて磁気シールド効果が改善される傾向があることが確認された。
【0026】
図1は、上記の実験に用いた複数の磁気シールド材1を柵状に配設した磁気シールド体10の構成例を示す図である。
【0027】
ここで、従来においては、現場に搬入される磁気シールド材やユニット(例えば面状磁気シールド体)はそのサイズが予め決まったものであるため、磁気シールド材の長軸方向を略磁力線方向或いはその略接線方向に沿わせて連設する際に端部同士を重ね合わせることは比較的困難で実現するためには煩雑な作業を伴うことになると共に、重ね合わせた場合には厚さ方向における段差を招く惧れなどがあるため、施工の簡便さや仕上がり具合などの観点から、磁気シールド材を突き合わせて配設するに止まっていたのが実情であったが、磁気シールド効果を所定に維持するため或いはより高い磁気シールド効果が要求される場合も想定されることから、本発明では、所定長さの磁気シールド材を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、連設方向において磁気シールド材の端部同士を重畳させる構成とする。
【0028】
本実施例に係る磁気シールド構造は、図1に示したように、所定長さに調整された磁気シールド材1を複数並列に配設して柵状をなす磁気シールド体10として構成される。磁気シールド体10は、枠や支持部材等を用いてユニット化することも可能であるが、これに限定されるものではなく、枠や支持部材等を用いることなく複数の磁気シールド材1を並列に配設して柵状とする場合も含まれるものである。
【0029】
なお、図1では、施工等の観点から、長さ1800mm、幅900mmの範囲に、磁気シールド材1(長さ1800mm、幅20mm)を50mmピッチで配設したものを一例として示している。
【0030】
また、磁気シールド材1単体としては、棒状或いは帯状(短冊状)のものを用いることができるが、薄板状(例えば、厚さ0.3mm×幅20mm)の高透磁率を有する磁気シールド材を複数枚積層させた構造とすることもできる。なお、磁気シールド材1の材料としては、例えば、珪素鋼、アモルファス、パーマロイなどを採用することができる。
【0031】
そして、本実施例に係る磁気シールド構造では、磁気シールド材1を長軸方向に連設する際に、対応する磁気シールド材1の端部同士を重畳させる。
【0032】
これにより、図2に示したように、従来のように磁気シールド材を長軸方向に連設する際に、対応する磁気シールド材の端部同士を突き合わせる(継ぎ合わせる)ようにした場合に比べ、磁場を低減して磁気による影響を低減するという効果(磁気シールド効果)を改善することができる。
【0033】
ここで、発明者等は、実験を行なううちに、重畳代(重ね代)の大小によって磁気シールド効果の改善効果に影響があることを知得したため、その影響度合いについて確認するための実験を行なった。
【0034】
実験は、前述した磁気シールド体10(長さ1800mm、幅900mmの範囲に、磁気シールド材1(長さ1800mm、幅20mm)を50mmピッチで配設したもの)を、これを構成する磁気シールド材1の長軸方向が磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に沿うように連設し、対応する各磁気シールド材1の端部を、重畳代(重ね代)0mm(端部同士を突き当てた状態)から100mm間隔で600mmまで変化させて、重畳代(重ね代)ごとに磁気シールド効果を確認した。なお、磁気シールド材1は、0.3mmの厚さのものを5枚積層させたものを用いた。
【0035】
なお、実験においては、地面と略平行で且つ磁力線の水平成分と略平行な方向に磁気シールド材1の長軸方向が向くように磁気シールド体10を配設し、図3(A)、図3(B)に示すように、幅方向中央部の磁気シールド材1の端部の突き合わせ部分或いは重畳部分の中心付近上方に3軸磁力センサ2を配設して重畳代ごとに磁束密度を測定した。
【0036】
なお、3軸磁力センサ2は、Y方向を磁力線の水平成分と平行な方向、X方向を磁力線の水平成分と直交する方向、Z方向を地面と直交する方向に設定した。X方向成分磁場とZ方向成分磁場はほぼ一定となるように磁気シールド体10を設置したため、測定結果はY方向成分磁束密度を比較している。
【0037】
このような条件の下で、磁気シールド材1を長軸方向に連設する際の磁気シールド材1の端部同士の重畳代(重ね代)による磁気シールド効果を確認した実験結果を、図4に示す。
【0038】
なお、発明者等は、本実験において、磁気シールド材1の層数(厚さ)を変更して磁気シールド効果への影響も確認したので、その結果も、図4に同時に示す。
【0039】
なお、図4において、基準値1は、継ぎ目無しの磁気シールド材(1層:0.3mm)を用いて実験を行なった場合の磁束密度の測定結果を示し、基準値2は継ぎ目無しの磁気シールド材を5層(0.3mm×5)、基準値3は10層(0.3mm×10)とした場合の磁束密度の測定結果を示している。
【0040】
図4から理解されるように、継ぎ目無しの磁気シールド材1の場合の磁束密度(基準値1、2、3)と同等の磁気シールド効果を得られる条件は、それぞれ、磁気シールド材1が1層の場合には重ね代が548.5mm、2層の場合には重ね代が292.6mm、20層の場合には重ね代が207.0mmとなるという結果が得られた。
【0041】
また、発明者等は、磁気シールド材1(5層、幅30mmの場合は10層とした)の配設ピッチを50mmに固定して磁気シールド材1の幅を変更して磁気シールド効果への影響も確認したので、その結果を、図5に示す。
【0042】
なお、図5において、基準値1は、継ぎ目無しの磁気シールド材1(5層:幅10mm)を用いて実験を行なった場合の磁束密度の測定結果を示し、基準値2は継ぎ目無しの磁気シールド材(5層)の幅を20mm、基準値3は継ぎ目無しの磁気シールド材(10層)の幅を30mmとした場合の磁束密度の測定結果を示している。
【0043】
図5から理解されるように、継ぎ目無しの磁気シールド材1の場合の磁束密度(基準値1、2、3)と同等の磁気シールド効果を得られる条件は、それぞれ、磁気シールド材1の幅が10mm(5層)の場合には重ね代が398.6mm、幅が20mm(5層)の場合には重ね代が292.6mm、幅が30mm(10層)の場合には重ね代が145.2mmとなるという結果が得られた。
【0044】
この結果より、磁気シールド材1の幅が広くなるほど、重ね代がより短い状態で、継ぎ目無しの磁気シールド材と同等の磁気シールド効果を得ることができることが解る。
【0045】
更に、発明者等は、磁気シールド材1(5層)の幅を20mmに固定して磁気シールド材1の配設ピッチ(間隔)を変更した場合の磁気シールド効果への影響も確認したので、その結果を、図6に示す。
【0046】
なお、図6において、基準値1は、継ぎ目無しの磁気シールド材1(5層:幅20mm)を間隔25mmで配設して実験を行なった場合の磁束密度の測定結果を示し、基準値2は継ぎ目無しの磁気シールド材(5層:幅20mm)を間隔50mmで配設した場合、基準値3は継ぎ目無しの磁気シールド材(5層:幅20mm)を間隔100mmで配設した場合の磁束密度の測定結果を示している。
【0047】
図6から理解されるように、継ぎ目無しの磁気シールド材1の場合の磁束密度(基準値)と同等の磁気シールド効果を得られる条件は、磁気シールド材1の間隔が25mmの場合には重ね代が168.8mm、間隔が50mmの場合には重ね代が292.6mm、間隔が100mmの場合には重ね代が320.8mmとなるという結果が得られた。
【0048】
この結果より、磁気シールド材1の間隔(配設ピッチ)が狭くなるほど、重ね代がより短い状態で、継ぎ目無しの磁気シールド材と同等の磁気シールド効果を得ることができることが解る。
【0049】
以上の実験結果を考察すると、磁気シールド材1の層数が増え厚さが増す、幅が広くなる、間隔(配設ピッチ)が狭くなるほど、磁気シールド材1の重ね代が短い状態で、継ぎ目無しの磁気シールド材を用いた場合と同等の磁気シールド効果を奏することができることが解った。
【0050】
かかる事象をより詳細に検討すると、磁気シールド効果を所定に維持するために必要な磁気シールド材1の重ね代は、磁気シールド体10の磁気シールド面(図1参照:磁気シールド材1が対応する磁気シールド体10内で並列配設される面)に略直交すると共に磁気シールド材1の長軸方向と略直交する平面で、重畳部を切断したときの断面積の合計と関係しているものと推定される。
【0051】
発明者等は、当該推定を確認するために、横軸に幅方向における1000mmあたりの前記断面積の合計、縦軸に重ね代を採り、上述した実験により取得された情報をプロットしたところ、図7に示すように、磁気シールド材1の前記断面積が大きいほど重ね代が短くて済む傾向があることが解り、その結果から対数近似曲線(図7参照)を取得するに至った。
【0052】
なお、得られた対数近似曲線式は、以下の通りである。
L=−142.92ln(S)+1200.6
但し、S(mm2)は幅1000mmあたりの磁気シールド材の前記断面積の合計であり、L(mm)は磁気シールド材1の端部同士の重ね代(重畳代)である。
【0053】
すなわち、上記の対数近似曲線式に基づけば、磁気シールド材1の前記断面積(各磁気シールド材1の幅、厚さ(積層枚数)、配設ピッチ)に応じて所望の磁気シールド効果を達成可能な重ね代(重畳代)を容易かつ適切に求めることができることになる。
【0054】
このため、必要以上に重ね代を設けたり、所望の磁気シールド効果を達成するためには不十分な重ね代で施工を行なってしまうなどの惧れを回避することができ、以って磁気シールド効果に対する信頼性を高く維持しつつ効率の良い施工を実現することが可能となる。
【0055】
また、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合であれば、磁気シールド材1が棒状或いは帯状(短冊状)のものに限定されるものではなく、長軸方向であるか短軸方向であるかを問わず適用することが可能である。
【実施例2】
【0056】
次に、本発明の実施例2について説明する。
上述した実施例1では、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、連設方向において磁気シールド材の端部同士を重畳させる構成としたが、以下で説明する各実施例では、それぞれ、別の重畳方法についての一例を説明する。なお、以下で説明する各実施例の説明において、実施例1で説明した要素と同様の要素については同一符号を付すこととし、詳細な説明は省略することとする。
【0057】
当該実施例2では、図8(A)、図8(B)に示すように、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、対応する磁気シールド材1の端部同士の間を橋渡しするように、磁気シールド継手20を取り付けるようにする。
【0058】
なお、取り付け方法は、特に限定されるものではなく、磁気シールド材1の端部に単に載置する方法であっても良いし、ボルト・ナットやバンド等の締結要素により締結したり、接着剤等により接着する方法なども可能である。
【0059】
磁気シールド継手20は、磁気シールド材1と同様の高透磁率を有する材料で形成され、磁気シールド面と略平行に配設される。当該磁気シールド継手20は、薄板状の磁気シールド材を複数枚積層させて構成することもできる。
【0060】
当該実施例2に係る磁気シールド継手20を用いた磁気シールド構造によれば、簡単かつ安価でありながら、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、良好に磁気的な連続性を確保して所望の磁気シールド効果を奏することができる。
【0061】
磁気シールド継手20と、各磁気シールド材1と、の重ね代(重畳代)は、実施例1で求めた対数近似曲線式に従って設定することができ、重ね代によって所望の磁気シールド効果を達成することも可能である。
【実施例3】
【0062】
本発明の実施例3について説明する。
当該実施例3では、図9に示すように、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、対応する磁気シールド材1の端部同士の間を橋渡しするように、磁気シールド継手30を取り付けるようにする。
【0063】
この磁気シールド継手30は、実施例2の磁気シールド継手20と比べて、幅が広く、厚さが薄く形成されている。但し、前記断面積としては、実施例2のものと同等とすることができる。
【0064】
磁気シールド継手30も、磁気シールド材1と同様の高透磁率を有する材料で形成され、磁気シールド面と略平行に配設される。当該磁気シールド継手30は、薄板状の磁気シールド材を複数枚積層させて構成することもできる。
【0065】
なお、取り付け方法は、特に限定されるものではなく、磁気シールド材1の端部に単に載置する方法であっても良いし、ボルト・ナットやバンド等の締結要素により締結したり、接着剤等により接着する方法なども可能である。
【0066】
当該実施例3に係る磁気シールド継手30を用いた磁気シールド構造によれば、簡単かつ安価でありながら、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、厚さ方向における段差を極力抑制しつつ、良好に磁気的な連続性を確保して所望の磁気シールド効果を奏することができる。
【0067】
また、磁気シールド継手30と、各磁気シールド材1と、の重ね代(重畳代)は、実施例1で求めた対数近似曲線式に従って設定することができ、重ね代によって所望の磁気シールド効果を達成することも可能である。
【0068】
ところで、磁気シールド継手30は磁気シールド材1に比べて幅が広いため、図10に示すように、隣接する磁気シールド継手30同士を当接或いは重畳させて、磁気シールド材1の連設部全体を幅方向において磁気シールド継手30で覆うように構成することもできる。
【実施例4】
【0069】
本発明の実施例4について説明する。
当該実施例4では、図11に示すように、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、連設する磁気シールド材1が相互に交差する面内に配設される場合についての一例を示しており、連設する磁気シールド材1の端部同士の間を橋渡しするように、磁気シールド継手40が取り付けられる。
【0070】
この磁気シールド継手40は、実施例3の磁気シールド継手30と同様のものを用いることができ、例えば、薄板状の磁気シールド材を複数枚積層させて構成することもできる。
また、図11に示したように曲部に配設されることから、より可撓性を高めるために、例えば、磁気シールド継手40自体を、複数の棒状或いは帯状(短冊状)の磁気シールド材を柵状に並べた構成とすることもできる。
【0071】
なお、取り付け方法は、特に限定されるものではなく、磁気シールド材1に対して、ボルト・ナットやバンド等の締結要素により締結したり、接着剤等により接着する方法なども採用可能である。
【0072】
当該実施例4に係る磁気シールド継手40を用いた磁気シールド構造によれば、簡単かつ安価でありながら、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、厚さ方向における段差を極力抑制しつつ、良好に磁気的な連続性を確保して所望の磁気シールド効果を奏することができる。
【0073】
特に、図11に示したように、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、連設する磁気シールド材1が相互に交差する面内に配設される場合には、図2等に示したように連設される磁気シールド材1が同一平面内に配設される場合のように磁気シールド材1の端部同士を十分な重ね代をもって重ね合わせることは困難であるから、当該実施例4に係る磁気シールド継手40は極めて有益なものとなる。
【0074】
なお、磁気シールド継手40と、各磁気シールド材1と、の重ね代(重畳代)は、実施例1で求めた対数近似曲線式に従って設定することができ、重ね代によって所望の磁気シールド効果を達成することも可能である。
【実施例5】
【0075】
本発明の実施例5について説明する。
当該実施例5では、図12(A)、図12(B)に示すように、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、連設される磁気シールド材1の端部に対して磁気シールド継手30の端部が挿入されて、連設される磁気シールド材1の端部同士の間を橋渡しするように構成される。
【0076】
この磁気シールド継手30は、実施例3の磁気シールド継手30と同様のものを用いることができ(或いは実施例4の磁気シールド継手40を用いることもできる)、例えば、薄板状の磁気シールド材を複数枚積層させて構成することもできる。
【0077】
また、当該実施例5では、図12(A)、図12(B)に示したように、磁気シールド材1の端部にスリット1Aが形成され、当該スリット1Aに磁気シールド継手30の端部が収容されるようになっている。或いは、磁気シールド材1を重ね合わせ、その間に磁気シールド継手30の端部を挟み込ませるような構成とすることもできる。
【0078】
なお、当該実施例5の磁気シールド継手30の磁気シールド材1への取り付け方法は、特に限定されるものではなく、磁気シールド材1に対して、ボルト・ナットやバンド等の締結要素により締結したり、接着剤等により接着する方法なども採用可能である。
【0079】
但し、当該実施例5の磁気シールド継手30を利用した磁気シールド構造においては、スリット1Aの隙間と、磁気シールド継手30の端部の厚みと、の大小関係等により、スリット1Aに磁気シールド継手30の端部を保持(挟持)させることもでき、その際の挟持力(或いは、磁気シールド材1を重ね合わせ若しくは薄板の磁気シールド材を複数枚積層し、合わせ面の間に磁気シールド継手30の端部を挟み込ませた場合の挟持力)によって磁気シールド継手30の端部を保持させる構成とすれば、比較的信頼性の高い取り付けを実現しつつ、取り付け作業を簡易化でき、施工を容易なものとすることができる。
【0080】
なお、磁気シールド継手30の端部の両方を挟持させる構成に限らず、一方の端部を対応する磁気シールド材1の端部に対して挟持させる構成とすることもできる。
【0081】
当該実施例5に係る磁気シールド継手30を用いた磁気シールド構造によれば、簡単かつ安価でありながら、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合において、厚さ方向における段差を極力抑制しつつ、良好に磁気的な連続性を確保して所望の磁気シールド効果を奏することができる。
【0082】
なお、磁気シールド継手30と、各磁気シールド材1と、の重ね代(重畳代)は、実施例1で求めた対数近似曲線式に従って設定することができ、重ね代によって所望の磁気シールド効果を達成することも可能である。
【0083】
ところで、上述した各実施例では、所定長さの磁気シールド材1を磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合について説明したが、この磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向に連設する場合には、施工の都合上などの観点から、磁場を所望に低減できる範囲内において磁力線に略沿った方向或いはその略接線方向と交差する方向に連設する場合も含まれるものである。
【0084】
また、各実施例の磁気シールド材1、磁気シールド体10は、略水平に配設される場合(例えば床面などに配設される場合)について説明したが、これに限定されるものではなく、鉛直方向或いは水平方向と所定の角度をもって交差する方向(例えば壁面や傾斜面など)に配設されることもできるものである。
【0085】
更に、上記各実施例では、磁気シールド材1を磁界(磁力線)の略接線方向に伸びる棒状或いは帯状(短冊状)の部材として磁界(磁力線)の略接線方向に連設する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、磁気シールド材1を磁界(磁力線)に略沿った方向に連設して、円筒状或いは半円筒状等に連設するような場合も本発明の範囲に含まれるものである。
【0086】
また、上記各実施例では、磁気シールド材1を磁界(磁力線)の略接線方向に伸びる棒状或いは帯状(短冊状)の部材として説明したが、これに限定されるものではなく、比較的大きなサイズの平板状の磁気シールド材を連設する場合にも本発明は適用可能である。
【0087】
ところで、上記各実施例で説明した磁気シールド材1は、建築物等の構造物の床面や壁面の仕上げモルタルや躯体コンクリートなどのセメント系硬化材の中に金属製の格子状の補強材と共に埋設して用いることができる。そして、その際には、例えば、構造物と、金属製の格子状の補強材と、の間に、磁気シールド材1を挟みこませることで、打設時等における磁気シールド材1の移動等を抑制し、施工を信頼性高く容易なものとすることができるものである。
【0088】
また、上記各実施例で説明した磁気シールド継手30、40の隅部形状に関し、図9〜図12において矩形の隅部を面取りしたような形状として例示したが、当該形状に限定されるものではなく、面取り等を施すことなく、矩形形状或いはその他の形状の磁気シールド継手30、40を採用することもできるものである。
【0089】
以上で説明した本発明に係る各実施例は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施例1に係る磁気シールド構造に利用される磁気シールド材及び磁気シールド体の構成例を示す図である。
【図2】磁気シールド材の重ね代(重畳代)による磁気シールド効果を比較した測定結果を示す図である。
【図3】(A)は磁気シールド効果の測定方法を磁気シールド材の幅方向から見た図(継ぎ目無しの場合)であり、(B)は磁気シールド効果の測定方法を磁気シールド材の幅方向から見た図(重畳させた場合)である。
【図4】磁気シールド材の厚さ(積層枚数)の変更に応じて、磁気シールド材の重畳代を変更した場合の磁束密度(磁気シールド効果)の変化を測定した結果を示す図である(磁気シールド材の幅20mm、配設間隔50mmに固定)。
【図5】磁気シールド材の幅の変更に応じて、磁気シールド材の重畳代を変更した場合の磁束密度(磁気シールド効果)の変化を測定した結果を示す図である(磁気シールド材の積層数5(30mm幅の場合は10層)、配設間隔50mmに固定)。
【図6】磁気シールド材の配設間隔の変更に応じて、磁気シールド材の重畳代を変更した場合の磁束密度(磁気シールド効果)の変化を測定した結果を示す図である(磁気シールド材の積層数5、磁気シールド材の幅20mmに固定)。
【図7】継ぎ目の無い磁気シールド材と同等の磁気シールド効果を確保するために必要な磁気シールド材の重ね代と、幅方向長さ1000mmあたりの断面積の合計と、の関係について測定データと対数近似曲線を示す図である。
【図8】(A)は本発明の実施例2に係る磁気シールド構造及び磁気シールド継手を示す斜視図であり、(B)は磁気シールド材の幅方向から見た側面図である。
【図9】本発明の実施例3に係る磁気シールド構造及び磁気シールド継手を示す斜視図である。
【図10】同上実施例の磁気シールド継手を幅方向に連接して配設した構成例の一例を示す図である。
【図11】本発明の実施例4に係る磁気シールド構造及び磁気シールド継手を示す斜視図である。
【図12】(A)は本発明の実施例5に係る磁気シールド構造及び磁気シールド継手を示す斜視図であり、(B)は磁気シールド材の幅方向から見た側面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 磁気シールド材
10 磁気シールド体
20 磁気シールド継手
30 磁気シールド継手
40 磁気シールド継手
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場の侵入を抑制して磁気による影響を低減する磁気シールド構造であって、
略磁力線方向或いはその略接線方向に沿って磁気シールド材を連設する際に、連設される磁気シールド材の端部同士を重畳させることを特徴とする磁気シールド構造。
【請求項2】
磁場の侵入を抑制して磁気による影響を低減する磁気シールド構造であって、
略磁力線方向或いはその略接線方向に沿って磁気シールド材を連設する際に、連設される磁気シールド材の端部に対して磁気シールド継手を重畳させることを特徴とする磁気シールド構造。
【請求項3】
前記磁気シールド材は、略磁力線方向或いはその略接線方向に沿って伸びる棒状或いは帯状の磁気シールド材であって、磁気シールド面において所定間隔で複数並列に配設されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の磁気シールド構造。
【請求項4】
連設される磁気シールド材の端部同士の重畳代或いは磁気シールド材の端部に対する磁気シールド継手の重畳代は、重畳部を磁気シールド面と略直交すると共に略磁力線方向或いはその略接線方向と略直交する面で切断したときの、磁気シールド面に略平行な方向における磁気シールド面の所定幅内に存する磁気シールド材或いは/及び磁気シールド継手の断面積の合計に基づいて定められることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の磁気シールド構造。
【請求項5】
連設される磁気シールド材の端部同士の重畳代或いは磁気シールド材の端部に対する磁気シールド継手の重畳代L(mm)は、
L=−142.92ln(S)+1200.6
S(mm2):前記磁気シールド面の全幅1000mmあたりの磁気シールド材或いは/及び磁気シールド継手の前記断面積の合計
なる式に基づいて定められることを特徴とする請求項4に記載の磁気シールド構造。
【請求項6】
前記磁気シールド継手は、連設される磁気シールド材より、磁気シールド面に略平行で略磁力線方向或いはその略接線方向と略直交する方向における幅が広いと共に、磁気シールド面に略直交する方向における厚さが薄いことを特徴とする請求項2〜請求項5の何れか1つに記載の磁気シールド構造。
【請求項7】
前記磁気シールド継手が前記幅方向において複数並設される場合に、隣接する磁気シールド継手の端部同士が当接或いは重畳されることを特徴とする請求項6に記載の磁気シールド構造。
【請求項8】
前記磁気シールド継手の略磁力線方向或いはその略接線方向の端部の少なくとも一方が、連設される磁気シールド材の対応する端部に対して挟持されることを特徴とする請求項2〜請求項7の何れか1つに記載の磁気シールド構造。
【請求項9】
前記磁気シールド材或いは磁気シールド継手の少なくとも一方が、薄板状の磁気シールド材を積層されてなることを特徴とする請求項1〜請求項8の何れか1つに記載の磁気シールド構造。
【請求項10】
請求項2〜請求項9の何れか1つに記載の磁気シールド構造に用いられる磁気シールド継手。
【請求項1】
磁場の侵入を抑制して磁気による影響を低減する磁気シールド構造であって、
略磁力線方向或いはその略接線方向に沿って磁気シールド材を連設する際に、連設される磁気シールド材の端部同士を重畳させることを特徴とする磁気シールド構造。
【請求項2】
磁場の侵入を抑制して磁気による影響を低減する磁気シールド構造であって、
略磁力線方向或いはその略接線方向に沿って磁気シールド材を連設する際に、連設される磁気シールド材の端部に対して磁気シールド継手を重畳させることを特徴とする磁気シールド構造。
【請求項3】
前記磁気シールド材は、略磁力線方向或いはその略接線方向に沿って伸びる棒状或いは帯状の磁気シールド材であって、磁気シールド面において所定間隔で複数並列に配設されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の磁気シールド構造。
【請求項4】
連設される磁気シールド材の端部同士の重畳代或いは磁気シールド材の端部に対する磁気シールド継手の重畳代は、重畳部を磁気シールド面と略直交すると共に略磁力線方向或いはその略接線方向と略直交する面で切断したときの、磁気シールド面に略平行な方向における磁気シールド面の所定幅内に存する磁気シールド材或いは/及び磁気シールド継手の断面積の合計に基づいて定められることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の磁気シールド構造。
【請求項5】
連設される磁気シールド材の端部同士の重畳代或いは磁気シールド材の端部に対する磁気シールド継手の重畳代L(mm)は、
L=−142.92ln(S)+1200.6
S(mm2):前記磁気シールド面の全幅1000mmあたりの磁気シールド材或いは/及び磁気シールド継手の前記断面積の合計
なる式に基づいて定められることを特徴とする請求項4に記載の磁気シールド構造。
【請求項6】
前記磁気シールド継手は、連設される磁気シールド材より、磁気シールド面に略平行で略磁力線方向或いはその略接線方向と略直交する方向における幅が広いと共に、磁気シールド面に略直交する方向における厚さが薄いことを特徴とする請求項2〜請求項5の何れか1つに記載の磁気シールド構造。
【請求項7】
前記磁気シールド継手が前記幅方向において複数並設される場合に、隣接する磁気シールド継手の端部同士が当接或いは重畳されることを特徴とする請求項6に記載の磁気シールド構造。
【請求項8】
前記磁気シールド継手の略磁力線方向或いはその略接線方向の端部の少なくとも一方が、連設される磁気シールド材の対応する端部に対して挟持されることを特徴とする請求項2〜請求項7の何れか1つに記載の磁気シールド構造。
【請求項9】
前記磁気シールド材或いは磁気シールド継手の少なくとも一方が、薄板状の磁気シールド材を積層されてなることを特徴とする請求項1〜請求項8の何れか1つに記載の磁気シールド構造。
【請求項10】
請求項2〜請求項9の何れか1つに記載の磁気シールド構造に用いられる磁気シールド継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−153657(P2010−153657A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331410(P2008−331410)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【Fターム(参考)】
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