磁気スピン解析方法
【課題】 解決しようとする課題は、解決しようとする課題は、磁気スピン解析において、解析対象の解析モデルの要素の数が数μm程度の磁気ヘッドの小さい物体でも数千万要素で構成することが必要となり、解析時間、解析リソースが膨大になる問題があり、部分解析、一部要素の拡大した解析では解析精度の問題がある。
【解決手段】 解析対象を詳細メッシュに分解して磁化ベクトル算出と所定基準により詳細メッシュの領域を統合した最適化メッシュで算出した反磁界ベクトルを詳細メッシュ上にマッピングして詳細メッシュでの反磁界ベクトル算出の処理演算量を削減し、詳細メッシュでの磁化ベクトル、最適化メッシュでの反磁界ベクトル算出の繰り返しにより磁気スピン解析を行う。
【解決手段】 解析対象を詳細メッシュに分解して磁化ベクトル算出と所定基準により詳細メッシュの領域を統合した最適化メッシュで算出した反磁界ベクトルを詳細メッシュ上にマッピングして詳細メッシュでの反磁界ベクトル算出の処理演算量を削減し、詳細メッシュでの磁化ベクトル、最適化メッシュでの反磁界ベクトル算出の繰り返しにより磁気スピン解析を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体の磁気スピンの数値解析に係り、特に解析対象を詳細メッシュモデルでのLLG方程式による磁気スピンの運動解析と最適メッシュモデルでの反磁界解析と交互に実行して解析を効率良く行う磁気スピン解析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク(以下HDD)の再生特性解析、HDD媒体記録特性解析などを対象として磁気スピン解析が行われる。例えばHDDでは再生ヘッドを構成するMR素子(磁気抵抗効果素子)中のヘッドの磁気スピンの向きの変化に対応するセンス電流印加時の電圧変化により媒体記録が読み出される。この再生ヘッドの特性を推定するためにHDD再生特性解析が行われる。磁気スピン解析は解析対象のメッシュモデルを作成し、磁気スピンの相互作用を解析する反磁界解析とLLG(Landau−Lifshitz−Gilbert)方程式による磁気スピンの運動解析とを交互に行って磁気スピン解析を行う。
【0003】
図15は従来の磁気スピン解析手順を示す図である。反磁界解析とLLG方程式による運動解析を交互に行う手順を示している。
S50:詳細メッシュモデルを作成する。初期磁化ベクトルM(t=0)を算出する。初期反磁界ベクトルH(t=0)は未計算とする。
S51:詳細メッシュ上で反磁界解析を行い、反磁界ベクトルH(tn)を得る。
S52:詳細メッシュ上でLLG方程式による運動解析を行い、磁化ベクトルM(tn+Δt)を得る。反磁界ベクトルH(tn)はそのままである。
S53:tn+Δt=tと置き換える。
S54:終了条件を満足しているか確認し、満たしていない場合はS51に戻り、終了条件を満たしている場合は終了する。
【0004】
上述したようにHDDで行われる磁気スピン解析では磁気スピンの特性に係わる要素の数、大きさよりメッシュモデルの各要素の大きさを2〜5nmの程度の細かさに分けることが必要である。数μm程度の磁気ヘッドの小さい物体でも数千万要素で構成することが必要になる。このため、例えば、HDDのヘッド解析では10GB(ギガバイト)以上のメモリ容量と数日の解析時間が必要であり、HDDのヘッド解析に適用することは難しい。後述する反磁界解析の特徴より、特に反磁界解析では、解析時間、解析リソースに大きな影響を与える。
【0005】
この解析時間、解析リソースの問題の解決策として、クラスタを使用した並列解析が行われる。しかし、上述したHDDの磁気ヘッドの規模の場合、並列処理を行っても速度、メモリ量の点において解析は困難となる。別の対策としてモデルの一部分を抽出して部分解析を行う。あるいは一部の要素の大きさを大きくするなどの解析可能な要素数までモデルのサイズを縮小するなどの事前処理を行った後に解析を行っている。しかしながら、このような処置をした場合、解析精度が低下し、磁気ヘッドの形状変化に対する特性の傾向を定量的に解析することが出来ずに単に定性的な傾向しか把握できない問題がある。
【0006】
なお、以下ではモデル各要素の最小の細やかさで定まるメッシュの大きさで作成するメッシュモデルを詳細メッシュモデルと表現し、磁気スピン分布から磁気スピンの変化が少ない部分を粗くしたメッシュを最適化メッシュと表現する。
【0007】
対策として磁性体の磁気スピンの状態の解析として、解析対象の磁性体を複数の磁性層が積層されているとみなし、仮定した各磁性層の面内方向と膜厚方向の磁気スピンの分布式を修正Stone−Wohlfarthモデルを用いて解析する技術が知られている。
【特許文献1】特開平10−134301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題は、磁気スピン解析において、解析対象の解析モデルの要素の数が数μm程度の磁気ヘッドの小さい物体でも数千万要素で構成することが必要となり、解析時間、解析リソースが膨大になる問題があり、部分解析、一部要素の拡大した解析では解析精度の問題がある。
【0009】
本発明は、磁気スピン変化が少ない部分を粗く変換した最適化メッシュで反磁界解析を行い、詳細メッシュモデルにマッピングしてLLG方程式にいる運動解析を行うことにより解析時間が短く、解析リソースを効率良く使用し、短い解析時間で精度のよい磁気スピン解析を行うことを方法、装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、磁性体の磁気スピン分布をLandau−Lifshitz−Gilbert方程式による磁気スピンの運動解析と、反磁界解析と、を使い解析する磁気スピン解析方法である。
【0011】
前記磁気スピン解析方法は、前記磁性体を所定の大きさのメッシュに分解した詳細メッシュで磁界ベクトル算出による運動解析を行い、前記磁界ベクトルより磁気スピンの変化が少ないメッシュ領域は前記メッシュを粗くなるように変換した最適化メッシュの作成を行ない、前記最適化メッシュで反磁界ベクトル算出による反磁界解析を行い反磁界ベクトルの算出を行い、前記算出した反磁界ベクトルを元の前記詳細メッシュにマッピングして前記詳細メッシュでの反磁界ベクトルの算出を行い、前記詳細メッシュでの運動解析と前記最適化メッシュでの反磁界解析を交互に繰り返して磁気スピン解析を行う。
【0012】
第1の発明により、反磁界ベクトルの算出を最適化メッシュで行い、詳細メッシュにマッピングするので、詳細メッシュでの反磁界ベクトル算出するための処理演算量を大幅に削減できる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明における最適化メッシュの作成は、メッシュからメッシュを逐次生成する。
【0014】
第2の発明により、最適化メッシュの作成を磁気スピン変化の少ない領域は最小の大きさのメッシュで作成でき、反磁界ベクトルの算出が用意にできる。
【0015】
第3の発明は、第1の発明の前記詳細メッシュから前記最適化メッシュへの変換方法である。
【0016】
前記最適化メッシュへの変換は、前記分解した前記詳細メッシュを各々三角形要素または四面体要素に分解し、前記詳細メッシュの各節点について前記各節点に接続されている要素と前記要素に接続している節点の集合とその要素面積で前記節点毎の接続データを生成し、前記生成した節点毎の接続データより取り出した節点の磁化ベクトルと前記節点集合に存在する節点の磁化ベクトルの向きが一定範囲内にある場合に前記取り出した節点を削除して最適化メッシュを作成する。
【0017】
第3の発明により、領域毎に粗いメッシュ、細かいメッシュで構成する最適化メッシュを作成できる。
【0018】
第4の発明は、第2の発明の手順で作成した最適化メッシュから前記元の詳細メッシュへのマッピング方法である。
【0019】
前記詳細メッシュへのマッピングは、最適化メッシュ時削除した節点を前記節点毎の接続データを使い復帰させ元の詳細メッシュにマッピングする。
【0020】
第4の発明により、領域毎にきめ細かく作成した最適化メッシュでの反磁界ベクトルを詳細メッシュに効率良くマッピングできる。
【0021】
第5の発明は、第4の発明の前記節点の復活における反磁界ベクトルの値の設定方法である。
【0022】
前記詳細メッシュにマッピングした前記節点の復活値は元の値に復活する
第5の発明により、前記詳細メッシュの運動解析が効率良くできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、解析時間が短く、解析リソースを効率良く使用し、短い解析時間で精度のよい磁気スピン解析を行うことができる。また、解析リソースのメモリ使用量を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施例1)
具体的なマイクロ磁気スピン解析の手順の説明の前に前提となる項目を説明する。
【0025】
図12は反磁界解析とLLG方程式による運動解析の概要を示す図である。反磁界解析及びLLG方程式による運動解析により磁気スピン解析に特に関係する項目について両方法の特徴の概要を示している。
1)各要素間の関係
磁気スピン解析を行うモデル上の各要素間の相互影響(結合度合い)を表している。反磁界解析では解析モデル上の全ての要素間で結合関係がある。一方、LLG方程式による運動解析は隣接要素との相互関係だけである。
2)解析での演算量
磁気スピン解析に必要なマトリクス演算量の多寡を表す自由度である。マトリクスの非零項の数「N」は、解析モデルの各要素間の相互に影響する要素の数に依存して定まる。反磁界解析のマトリクス演算量はNの二乗に比例し、運動解析ではNに比例する。
【0026】
これにより反磁界解析でのモデル解析で必要となるマトリクス演算量は運動解析に比較し、Nに依存して膨大に増える。
3)磁気スピンへの影響
解析実行中での磁気スピンの変化の有無である。反磁界解析の場合は磁気スピンが変化しないが運動解析の場合は、突然の磁気スピンの変化がある。そのため短時間での解析が必要となる。
【0027】
上記解析手法の特徴を基に反磁界解析を最適化メッシュモデルで行い、LLG方程式による運動解析を詳細メッシュシュモデルで行う。
【0028】
図13は磁気スピン解析の終了条件例を示す図である。定常的な場合と、過渡応答の場合の解析例を示している。
1)定常的な解析例
静的な境界条件の下で最終的にどのような磁気スピン分布になるかの解析を行う。終了条件は以下の磁気スピンの変化が設定した値(収束定数)以下とする。
【0029】
【数1】
ここで、εは収束定数である。
2)過渡応答解析例
正弦波やステップ状の外部磁場などの動的な境界条件の下での磁気スピン分布の動的挙動の解析を行う。終了条件は設定した時間が経過したことで判断する。
【0030】
図1は磁気スピン解析基本手順を示す図である。前述した(図12)反磁界解析とLLG方程式による運動解析の特徴を使い詳細メッシュと最適化メッシュの組み合わせで磁気スピン解析を行う手順の基本を示している。詳細な手順は後述する。
S1:詳細メッシュモデルを作成する。解析開始時点の初期磁化ベクトルM(t=0)を算出する。ここでは、初期反磁界ベクトルH(t=0)は未計算である。
S2:初期最適化メッシュを作成する。
S3:最適化メッシュ上で反磁界解析を行い最適化メッシュ上での反磁界ベクトルH(tn)を算出する。
S4:最適化メッシュでの反磁界ベクトルH(tn)を詳細メッシュ上にマッピングし、詳細メッシュ上での反磁界ベクトルH(tn)を作成する。
S5:詳細メッシュ上でLLG方程式による運動解析を行い、磁化ベクトルM(tn+Δt)を算出する。反磁界ベクトルはS4作成したH(tn)である。
S6:tn+Δt=tと置き換える。
S7:終了条件を満足しているか確認し、終了条件を満たしていない場合は最適化メッシュの修正を行なうS8に進み、終了条件を満たしている場合は終了する。
S8:最適化メッシュを修正し、S3に戻る。最適化メッシュの逐次修正については後述する。
【0031】
図2は磁気スピン解析基本手順のイメージを示す図である。1)にメッシュ分解と要素毎の磁気スピン分布イメージ、2)に詳細メッシュでのLLG方程式による運動解析、3)に最適化メッシュでの反磁界解析を示し、4)反磁界解析で算出した反磁界ベクトルH(tn)を詳細メッシュにマッピングする手順の基本を図的に示している。
1)メッシュ分解と要素毎の磁気スピン分布イメージ
磁気スピン解析対象をメッシュに分解する。ここでは解析対象を例えば、簡単なa1−a1、a2−a2、b1−b1で6分割する。各個別のメッシュ(要素に対応)には例えば、磁気スピン分布解析の場合、磁界印加前は磁気スピンの方向がランダムになっている。磁界を印加することにより、各要素の磁気スピンの方向は一定方向に収斂する。各要素での磁気スピンの方向は磁気スピンの変化が激しい箇所、緩やかな箇所等、磁界の印加時間に従い変化する。
【0032】
ここでは、左上を原点とした節点の座標位置(i,j)で表示すると、例えば、要素y11(座標(0,0)、(0,1)、(1,0)、(1、1)で囲まれた要素y11、要素y13、要素y21、要素y23は磁気スピンの方向の変化が激しく、要素y12、要素y22では緩やかである。この領域全体を解析精度に対応した大きさの要素に分解して磁気スピン解析を行う。
2)詳細メッシュでのLLG方程式による運動解析
磁気スピン解析対象を解析精度で定まる所定の大きさのメッシュに分解した詳細メッシュ上でLLG方程式による運動解析を行う。詳細メッシュの各メッシュの大きさは全領域を同一の大きさとなる。図では説明上、簡単に磁気スピン分布a、磁気スピン分布b、磁気スピン分布c、磁気スピン分布dでは各々、磁気スピンの変化が緩やかである箇所であり、各領域以外は磁壁箇所で、磁気スピンの変化が激しい箇所を表している。
3)最適化メッシュでの反磁界解析
詳細メッシュの各メッシュを解析精度、磁気スピン変化の度合いに対応してメッシュ毎に大きさを変化させて最適化したメッシュで反磁界解析を行う。ここでは、磁気スピンの方向の変化が激しい上記要素y11、要素y13、要素y21、要素y23に対応した要素及び磁壁を細かいメッシュ、磁気スピンの方向が略一定方向に向いた要素y12、要素y22に対応した要素位置を粗いメッシュで示している。
4)最適化メッシュで算出した反磁界ベクトルH(tn)を詳細メッシュにマッピング
最適化メッシュで算出した反磁界ベクトルH(tn)を詳細メッシュにマッピングする。これにより、膨大な処理演算量が必要な詳細メッシュ上での反磁界解析を少なくすることができる。
【0033】
図3はメッシュモデル表現を示す図である。解析対象をメッシュに分解した時のメッシュに係わる各項目、及び逐次解析におけるモデルの表現を定義している。具体的な例は後述する。下記の例は2次元モデルに関する例である。3次元モデルに関しては三角形を四面体に置き換え、また、面積を体積に置き換えて同一の手法で最適化メッシュの作成を行い、最適化メッシュから詳細メッシュへの反磁界ベクトルH(tn)のマッピングを行う。また、以下の説明は問題ない限り全て2次元モデルで行う。
1)節点Pi:磁気スピンの方向を含む節点(xa,ya)の節点ID
Pi={(xa,ya)、M(t)、H(t)}i (i=1〜N0)ここで、M(t)は節点(xa,ya)の磁化ベクトル、H(t)は反磁界ベクトルである。N0は節点の数である。
2)節点接続データC(n,i):節点(xa,ya)の接続状態
C(n,i)=(Pi,LEi,LPi)(i=1〜N0) ここで、Piは節点(xa,ya)の節点IDであり、LEi、LPiは以下を示す。
ア.要素IDリストLEi:節点(xa,ya)に接続している要素IDリストで各要素とその面積の集合で構成し、要素Emとその面積Smの集合であり、以下で表す。
{{Em}・{Sm}i (m=1〜Mi)}ここで、Miはその数である。なお、要素は便宜上図2の「y」に代え「E」で表す。
イ.節点IDリストLPi要素IDリストの各要素が接続している節点IDの集合(除く節点ID「Pi」)と各節点IDの状態フラグで構成し、以下で表す。
LPi={{Pk}・{Fk}i (k=1〜Ki)}:ここで、Kiはその数であり、各Pkは節点IDであり、各Fkはその状態(下記)フラグである。(下記)を表現
Fk=「1」は分解時に一時的に削除する節点IDであり、Fk=「0」は逐次処理後もそのまま残る残留節点IDである。内容については後述する。
3)逐次解析時のモデル表現をMD(n)={AP(n,i),AE(n,i)} ここで、nは「n」回目の解析処理のメッシュモデルを表す。
ア.要素IDリストAE(n,i):解析時点の節点ID「Pi]に係わる要素IDリストであり、AE(n,i)={Em}(n,i)(m=1〜Mn,i)}ここで、「Mn,i」は逐次処理「n」回実行後の要素ID数である。
イ.節点IDリストAP(n,i):節点ID「Pi」に係わる節点IDリストであり、AP(n,i)={Pk}(n,i)(k=1〜Kn,i}ここで、「Kn,i」は逐次処理「n」回実行後の節点ID数である。
【0034】
図4はモデル表現例を示す図である。図2で示したモデルの表現の例として、図3のメッシュに対する節点ID「P5」の節点接続データ例を示している。説明は省略する。
【0035】
図5は詳細メッシュモデル作成手順を示す図である。解析の前提となる解析対象の詳細メッシュへの分解手順を示している。
S9:解析対象を所定の大きさのメッシュに分解し、節点に番号を付加(例.左上)して節点IDとする。分解後の節点の総数を「N0]とする。
S10:メッシュ分解により各三角形を要素として要素ID番号を付加する。各要素Em(m=1〜Mm)についてその三角形面積Smを算出する。
S11:全ての節点Pi(i=1〜N0)について、以下の手順で要素IDリストLEi、節点IDリストLPiを作成する。
ア.要素IDリストLEi:節点Piに接続している要素IDを抽出し、要素IDの集合とその各要素の面積より構成する。なお、節点Piのその解析時点での要素数をMiとする。
イ.節点IDリストLPi:要素IDにリストに接続している節点IDの集合(但し、節点Piは除く)とその各節点の状態フラグで構成する。状態フラグは残留の「0」とする。なお、節点Piのその解析時点での要素数をKiとする。
S12:作成した要素IDリストLEi、節点IDリストLPiより節点接続データC(n,i)={Pi、LEi,LPi}(i=1〜N0)を作成する。ここでn=1である。
S13:詳細メッシュのMD(n,i)={AP(n,i),AE(n,i),i=1〜Nn,0}を作成する。ここで、n=1である。
【0036】
図6は詳細化メッシュから最適化メッシュ作成(その1)を示す図である。詳細メッシュの各メッシュ間の磁気スピンの結合状態により個々のメッシュを拡大して最適化メッシュを作成する例を示している。以下の手順により複数のメッシュを1つのメッシュに統合する。ここで、M(tn)jは結合判定対象の節点の磁化ベクトルである。
【0037】
各メッシュの節点の磁化ベクトルM(tn)0が他の節点の磁化ベクトルと結合がある場合は、結合のある節点を結合する。結合の判定は該当の節点と結合判定する節点の磁化ベクトルの向きの度合いを判定基準(判定角度θn)以内か否かで行う。結合と判定した節点の削除処理を行ない、メッシュの大きさを大きくする。
1)の詳細メッシュの節点をP0、P1、P2、P3とし、三角形を(P0,P1,P2)、(P0,P2,P3)、(P0,P1,P3)、(P1,P2,P3)とする。節点P0、P1、P2、P3の4つの節点を以下のアの基準を満たす場合は1つの三角形(P1、P2、P3)に結合する。
ア.M(tn)0ベクトルと近傍のM(tn)j(j=1〜3)のなす角度(θn)が所定の角度以内の場合は節点P0を削除する。図ではθnとしてM(tn)0との角度が30度の範囲にある場合を示している。
【0038】
なお、図6では4つの節点から3つの節点への処理を示したが、多数の節点の場合も同じ方法で行なう。
【0039】
図7は節点削除処理による逐次最適化メッシュ作成手順を示す図である。図5で示した最適化メッシュ作成の基本手順を基に逐次処理段階で一時的に節点を削除する(欠番扱い)手順を示している。本手順で示す具体例は図7で説明する。
S14:初期設定として、n=1、i=1とする。Piを取り出す。
S15:Piは残留点か確認し、残留点なら、S16に進み、そうでないならS20に進む。S16:節点接続データC(n,i)の節点IDリストLPiの節点の集合{Pk}iよりKn,i個全ての節点とその磁化ベクトルを取り出す。
S17:節点Piに対するKn,i個の全ての節点の磁化ベクトルの角度が所定の判定基準以内にあるか判定する。(図6)
S18:基準以内であるか確認し、基準内であるなら、削除可能処理としてS19に進み、そうでないならS20に進む。
S19:節点Piを削除し、節点集合{Pk}iで覆われた要素について以下を行なう。
ア.全体を覆う要素を新たな三角形の要素に分解し要素IDを作成し、その各要素IDリストの各要素の面積を算出する。
イ.節点集合{Pk}iのデータを新規要素IDリストの情報に更新する。
S20:i=i+1
S21:i<N0か確認し、N0ならS22に進み、そうでないならS15に戻る。
S22:n=n+1として、以下の更新した節点接続データC(n,i)={Pi、LEi,LPi}(i=1〜N0)を作成する。これは逐次処理「n」回として作成される最適化メッシュの節点接続データである。
ア.削除処理した節点Pi:処理済みフラグを立て、削除前の要素IDリスト、節点IDリストを保持する。
イ.削除処理した節点に隣接する隣接節点:削除した要素IDに変えて新規作成要素IDの情報(新規要素IDとその面積)と新規要素に接続する隣接節点の情報を更新し保持する。
【0040】
図8は詳細化メッシュから最適化メッシュ作成手順(その2)を示す図である。具体的な例(削除対象節点P10)について作成方法を示している。
1)削除対象節点としてP10を考える。
実行前のモデル表現M(n0)とし、P10が削除可能か否かは図6で示す方法により判断する。
2)削除可能と判断した場合、P10の要素IDリストを削除し、全体を覆う1つの要素とする。
3)全体を覆う要素を新たに三角形の要素を作成し、その面積を算出する。
4)新規の要素モデルとし、要素情報の生成と隣接節点の情報を更新する。
実行後のモデル表現M(n0+1)は以下となる。
ア.節点IDリスト:
節点P10が一時的削除(欠番扱い)されている。
イ.要素IDリスト:
・削除した要素IDに変えて新規作成要素IDの情報(新規要素IDとその面積)に更新される。
・新規要素作成に伴い、新規要素に接続する隣接節点の情報が更新される。
5)実行後のモデル表現MD(n0+1)は以下となる。
ア.節点IDリスト:
一時的に削除した節点が削除(欠番扱い)される。
イ.要素IDリスト:
・削除した要素IDに変えて新規作成要素IDの情報(新規要素IDとその面積)に更新される。
・新規要素作成に伴い、新規要素に接続する隣接節点の情報が更新される。
6)結果として以下を得る。
ア.小さい判定角度により磁気スピンの変化が緩やかな領域の節点が削除されメッシュが大きくなる。
イ.順次判定角度を大きくすることにより最後に残ったメッシュの大きさは最初の詳細メッシュのメッシュ大きさとなる。
【0041】
図9は最適化メッシュから詳細メッシュへの反磁界ベクトルのマッピングを示す図である。最適化メッシュから詳細メッシュへの反磁界のマッピングを有限要素法の形状関数を使って行う。ここでは、節点P1、P2、P3より最適化時に削除されていた場合の節点P0の復活方法を示している。
1)復活節点P0の反磁界ベクトルH(tn)
3つの三角形要素から構成される最適化された結合要素(節点P1、P2、P3)より最適化時に削除されていた元の詳細メッシュの要素P0へのマッピングし、復活した節点P0の反磁界ベクトルの大きさは(式2)で算出する。
【0042】
【数2】
ここで、S0は、最適化メッシュでP1、P2、P3の三角形の面積であり、S1、S2、S3は元の詳細メッシュでの各々の三角形(例えば、S1はP0、P2、P3の面積)である。
2)復活節点P0を元の位置に設定する。
【0043】
この場合、復活した節点P0が三角形の中心にある場合は反磁界ベクトルの大きさは節点P1、P2、P3の反磁界ベクトルの大きさの平均値でも良い。
【0044】
図10は最適化メッシュから詳細メッシュ作成手順を示す図である。逐次解析では図1に示したように詳細メッシュから最適化メッシュへ、最適化メッシュから元の詳細メッシュに繰り返し戻す手順が行なわれる。この逐次処理段階での最適化メッシュから詳細メッシュ作成の手順を示している。
S23:以下の初期設定を行う。n=N0
ア.「n=N0」回目に削除処理された節点FD(N0,j)(j=0〜Jn,i)を取り出す。
イ.「n−1」回目の要素IDリストの集合LE((n−1),i)={(n−1),{Em}・{Sm}i m=1〜Mn,i}を取り出す。
S24:j=1
S25:FD(n,j)を最適化メッシュから詳細メッシュ作成のマッピング(図9)により元の節点を復活(フラグは残留フラグに戻す)し、削除時に更新した隣接節点のデータも更新前に戻す。これにより「n」回目の削除処理後の節点接続データ節点IDリストC(n−1,i)={Pi、LEi,LPi}(i=1〜N0)を得る。
S26:j=j+1
S27:j≦Jn,iか確認し、そうであるならS25に戻り、そうでないならS28に進む。
S28:n=n-1
S29:n<1か確認し、n=0ならS30の最初の詳細メッシュに戻る。1を超えている場合はS24に戻りさらに最初の詳細メッシュに戻り処理を継続する。
S30:最初の詳細メッシュモデルを得る。
【0045】
図11は磁気スピン解析手順を示す図である。上記説明した磁気スピン解析の基本方法を基に解析対象の磁気スピン解析の手順を示している。
S31:以下の初期設定を行う。n=1
ア.磁気スピン解析終了判定条件(例えば、「ε」)
イ.最適化メッシュ分解の所定のメッシュ大きさ(最小)
ウ.節点削除判定の初期判定角度θと変化量Δθ
S32:解析対象をメッシュに分解し以下を行なう。(図5)
ア.初期磁化ベクトルM(t=0)をLLG方程式の運動解析で算出する。初期反磁界ベクトルH(tn)は未計算である。
イ.節点Pi={(xa,ya),M(tn),H(tn)}i(i=1〜N0)
ウ.MD(n)の節点接続データC(n,i)={Pi、LEi,LPi}(i=1〜N0)を作成する。
S33:i=1
S34:Piに接続している要素の数≦2か確認し、2を越えている場合は節点削除可能か否か確認のため、S35に進み、2以下の場合はS36に進む。
S35:節点削除判定角度θを基に節点が削除可能か判断し、節点接続データを作成する。(図6、7)
S36:i=i+1
S37:「i」が「N0」以下か確認し、「N0」以下の場合はS34に戻り、そうでない場合はS38に進む。
S38:作成した最適化メッシュ上で反磁界ベクトルH(tn)を算出する。
S39:最適化メッシュの反磁界ベクトルH(tn)を詳細メッシュ上にマッピングする。(図9、10)
S40:詳細メッシュ上で磁化Mベクトル(tn+Δt)をLLG方程式の運動解析で算出する。ここでは時間経過有としてt=tn+Δtとする。
S41:磁化ベクトルM(tn+Δt)、反磁界ベクトルH(tn)を評価し、磁気スピン分布の終了条件を確認する。
S42:終了判定条件を満足しているか確認し、満足している場合はS45に進み、終了条件を満たしていない場合はS43に進む。
S43:n=n+1とし、削除した節点はモデルデータ上では削除節点フラグを立て、要素IDリスト及び隣接節点の情報を更新したメッシュモデルを作成する。
ア.節点接続データC(n,i)={Pi、LEi,LPi} (i=1〜N0)
イ.削除節点(欠番にした)をFD(n,j)(j=0〜Jn,iとする。Jn,iは削除された節点の数である。
S44:以下を置きなおす。
ア.メッシュの節点削除判定角度をAng=Ang+ΔAngと大きくする。
イ.tn+Δt=tと置き換える。
S45:最終のn(n=Ns)を逐次処理回数とする。
【0046】
図14は最適化メッシュの作成例を示す図である。1)の磁気スピン分布例に対し2)の磁壁箇所以外を広めにした最適化メッシュを示し、上述した逐次処理に最適化メッシュ作成により以下の結果が得られることを示している。
ア.磁気スピン分布の方向変化が激しい箇所である時壁の箇所(例「a1」)に対し「a2」、「a3」、「a4」「a5」のメッシュ面積の大きいメッシュが作成され、この大きなメッシュを含んで構成する最適化メッシュで反磁界ベクトルH(tn)を算出し、全て「a1」の大きさの詳細メッシュにH(tn)をマッピングすることにより、詳細メッシュ上での磁気スピン解析に比較して処理演算量を大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は磁気スピン解析基本手順を示す図である。
【図2】図2は磁気スピン解析基本手順のイメージを示す図である。
【図3】図3はメッシュモデル表現を示す図である。
【図4】図4はモデル表現例を示す図である。
【図5】図5は詳細メッシュモデル作成手順を示す図である。
【図6】図6は詳細化メッシュから最適化メッシュ作成(その1)を示す図である。
【図7】図7は節点削除処理による逐次最適化メッシュ作成手順を示す図である。
【図8】図8は詳細化メッシュから最適化メッシュ作成手順(その2)を示す図である。
【図9】図9は最適化メッシュから詳細メッシュへの反磁界ベクトルのマッピングを示す図である。
【図10】図10は最適化メッシュから詳細メッシュ作成手順を示す図である。
【図11】図11は磁気スピン解析手順を示す図である。
【図12】図12は反磁界解析とLLG方程式による運動解析の概要を示す図である。
【図13】図13は磁気スピン解析の終了条件例を示す図である。
【図14】図14は最適化メッシュの作成例を示す図である。
【図15】図15は従来の磁気スピン解析手順を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体の磁気スピンの数値解析に係り、特に解析対象を詳細メッシュモデルでのLLG方程式による磁気スピンの運動解析と最適メッシュモデルでの反磁界解析と交互に実行して解析を効率良く行う磁気スピン解析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク(以下HDD)の再生特性解析、HDD媒体記録特性解析などを対象として磁気スピン解析が行われる。例えばHDDでは再生ヘッドを構成するMR素子(磁気抵抗効果素子)中のヘッドの磁気スピンの向きの変化に対応するセンス電流印加時の電圧変化により媒体記録が読み出される。この再生ヘッドの特性を推定するためにHDD再生特性解析が行われる。磁気スピン解析は解析対象のメッシュモデルを作成し、磁気スピンの相互作用を解析する反磁界解析とLLG(Landau−Lifshitz−Gilbert)方程式による磁気スピンの運動解析とを交互に行って磁気スピン解析を行う。
【0003】
図15は従来の磁気スピン解析手順を示す図である。反磁界解析とLLG方程式による運動解析を交互に行う手順を示している。
S50:詳細メッシュモデルを作成する。初期磁化ベクトルM(t=0)を算出する。初期反磁界ベクトルH(t=0)は未計算とする。
S51:詳細メッシュ上で反磁界解析を行い、反磁界ベクトルH(tn)を得る。
S52:詳細メッシュ上でLLG方程式による運動解析を行い、磁化ベクトルM(tn+Δt)を得る。反磁界ベクトルH(tn)はそのままである。
S53:tn+Δt=tと置き換える。
S54:終了条件を満足しているか確認し、満たしていない場合はS51に戻り、終了条件を満たしている場合は終了する。
【0004】
上述したようにHDDで行われる磁気スピン解析では磁気スピンの特性に係わる要素の数、大きさよりメッシュモデルの各要素の大きさを2〜5nmの程度の細かさに分けることが必要である。数μm程度の磁気ヘッドの小さい物体でも数千万要素で構成することが必要になる。このため、例えば、HDDのヘッド解析では10GB(ギガバイト)以上のメモリ容量と数日の解析時間が必要であり、HDDのヘッド解析に適用することは難しい。後述する反磁界解析の特徴より、特に反磁界解析では、解析時間、解析リソースに大きな影響を与える。
【0005】
この解析時間、解析リソースの問題の解決策として、クラスタを使用した並列解析が行われる。しかし、上述したHDDの磁気ヘッドの規模の場合、並列処理を行っても速度、メモリ量の点において解析は困難となる。別の対策としてモデルの一部分を抽出して部分解析を行う。あるいは一部の要素の大きさを大きくするなどの解析可能な要素数までモデルのサイズを縮小するなどの事前処理を行った後に解析を行っている。しかしながら、このような処置をした場合、解析精度が低下し、磁気ヘッドの形状変化に対する特性の傾向を定量的に解析することが出来ずに単に定性的な傾向しか把握できない問題がある。
【0006】
なお、以下ではモデル各要素の最小の細やかさで定まるメッシュの大きさで作成するメッシュモデルを詳細メッシュモデルと表現し、磁気スピン分布から磁気スピンの変化が少ない部分を粗くしたメッシュを最適化メッシュと表現する。
【0007】
対策として磁性体の磁気スピンの状態の解析として、解析対象の磁性体を複数の磁性層が積層されているとみなし、仮定した各磁性層の面内方向と膜厚方向の磁気スピンの分布式を修正Stone−Wohlfarthモデルを用いて解析する技術が知られている。
【特許文献1】特開平10−134301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題は、磁気スピン解析において、解析対象の解析モデルの要素の数が数μm程度の磁気ヘッドの小さい物体でも数千万要素で構成することが必要となり、解析時間、解析リソースが膨大になる問題があり、部分解析、一部要素の拡大した解析では解析精度の問題がある。
【0009】
本発明は、磁気スピン変化が少ない部分を粗く変換した最適化メッシュで反磁界解析を行い、詳細メッシュモデルにマッピングしてLLG方程式にいる運動解析を行うことにより解析時間が短く、解析リソースを効率良く使用し、短い解析時間で精度のよい磁気スピン解析を行うことを方法、装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、磁性体の磁気スピン分布をLandau−Lifshitz−Gilbert方程式による磁気スピンの運動解析と、反磁界解析と、を使い解析する磁気スピン解析方法である。
【0011】
前記磁気スピン解析方法は、前記磁性体を所定の大きさのメッシュに分解した詳細メッシュで磁界ベクトル算出による運動解析を行い、前記磁界ベクトルより磁気スピンの変化が少ないメッシュ領域は前記メッシュを粗くなるように変換した最適化メッシュの作成を行ない、前記最適化メッシュで反磁界ベクトル算出による反磁界解析を行い反磁界ベクトルの算出を行い、前記算出した反磁界ベクトルを元の前記詳細メッシュにマッピングして前記詳細メッシュでの反磁界ベクトルの算出を行い、前記詳細メッシュでの運動解析と前記最適化メッシュでの反磁界解析を交互に繰り返して磁気スピン解析を行う。
【0012】
第1の発明により、反磁界ベクトルの算出を最適化メッシュで行い、詳細メッシュにマッピングするので、詳細メッシュでの反磁界ベクトル算出するための処理演算量を大幅に削減できる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明における最適化メッシュの作成は、メッシュからメッシュを逐次生成する。
【0014】
第2の発明により、最適化メッシュの作成を磁気スピン変化の少ない領域は最小の大きさのメッシュで作成でき、反磁界ベクトルの算出が用意にできる。
【0015】
第3の発明は、第1の発明の前記詳細メッシュから前記最適化メッシュへの変換方法である。
【0016】
前記最適化メッシュへの変換は、前記分解した前記詳細メッシュを各々三角形要素または四面体要素に分解し、前記詳細メッシュの各節点について前記各節点に接続されている要素と前記要素に接続している節点の集合とその要素面積で前記節点毎の接続データを生成し、前記生成した節点毎の接続データより取り出した節点の磁化ベクトルと前記節点集合に存在する節点の磁化ベクトルの向きが一定範囲内にある場合に前記取り出した節点を削除して最適化メッシュを作成する。
【0017】
第3の発明により、領域毎に粗いメッシュ、細かいメッシュで構成する最適化メッシュを作成できる。
【0018】
第4の発明は、第2の発明の手順で作成した最適化メッシュから前記元の詳細メッシュへのマッピング方法である。
【0019】
前記詳細メッシュへのマッピングは、最適化メッシュ時削除した節点を前記節点毎の接続データを使い復帰させ元の詳細メッシュにマッピングする。
【0020】
第4の発明により、領域毎にきめ細かく作成した最適化メッシュでの反磁界ベクトルを詳細メッシュに効率良くマッピングできる。
【0021】
第5の発明は、第4の発明の前記節点の復活における反磁界ベクトルの値の設定方法である。
【0022】
前記詳細メッシュにマッピングした前記節点の復活値は元の値に復活する
第5の発明により、前記詳細メッシュの運動解析が効率良くできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、解析時間が短く、解析リソースを効率良く使用し、短い解析時間で精度のよい磁気スピン解析を行うことができる。また、解析リソースのメモリ使用量を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施例1)
具体的なマイクロ磁気スピン解析の手順の説明の前に前提となる項目を説明する。
【0025】
図12は反磁界解析とLLG方程式による運動解析の概要を示す図である。反磁界解析及びLLG方程式による運動解析により磁気スピン解析に特に関係する項目について両方法の特徴の概要を示している。
1)各要素間の関係
磁気スピン解析を行うモデル上の各要素間の相互影響(結合度合い)を表している。反磁界解析では解析モデル上の全ての要素間で結合関係がある。一方、LLG方程式による運動解析は隣接要素との相互関係だけである。
2)解析での演算量
磁気スピン解析に必要なマトリクス演算量の多寡を表す自由度である。マトリクスの非零項の数「N」は、解析モデルの各要素間の相互に影響する要素の数に依存して定まる。反磁界解析のマトリクス演算量はNの二乗に比例し、運動解析ではNに比例する。
【0026】
これにより反磁界解析でのモデル解析で必要となるマトリクス演算量は運動解析に比較し、Nに依存して膨大に増える。
3)磁気スピンへの影響
解析実行中での磁気スピンの変化の有無である。反磁界解析の場合は磁気スピンが変化しないが運動解析の場合は、突然の磁気スピンの変化がある。そのため短時間での解析が必要となる。
【0027】
上記解析手法の特徴を基に反磁界解析を最適化メッシュモデルで行い、LLG方程式による運動解析を詳細メッシュシュモデルで行う。
【0028】
図13は磁気スピン解析の終了条件例を示す図である。定常的な場合と、過渡応答の場合の解析例を示している。
1)定常的な解析例
静的な境界条件の下で最終的にどのような磁気スピン分布になるかの解析を行う。終了条件は以下の磁気スピンの変化が設定した値(収束定数)以下とする。
【0029】
【数1】
ここで、εは収束定数である。
2)過渡応答解析例
正弦波やステップ状の外部磁場などの動的な境界条件の下での磁気スピン分布の動的挙動の解析を行う。終了条件は設定した時間が経過したことで判断する。
【0030】
図1は磁気スピン解析基本手順を示す図である。前述した(図12)反磁界解析とLLG方程式による運動解析の特徴を使い詳細メッシュと最適化メッシュの組み合わせで磁気スピン解析を行う手順の基本を示している。詳細な手順は後述する。
S1:詳細メッシュモデルを作成する。解析開始時点の初期磁化ベクトルM(t=0)を算出する。ここでは、初期反磁界ベクトルH(t=0)は未計算である。
S2:初期最適化メッシュを作成する。
S3:最適化メッシュ上で反磁界解析を行い最適化メッシュ上での反磁界ベクトルH(tn)を算出する。
S4:最適化メッシュでの反磁界ベクトルH(tn)を詳細メッシュ上にマッピングし、詳細メッシュ上での反磁界ベクトルH(tn)を作成する。
S5:詳細メッシュ上でLLG方程式による運動解析を行い、磁化ベクトルM(tn+Δt)を算出する。反磁界ベクトルはS4作成したH(tn)である。
S6:tn+Δt=tと置き換える。
S7:終了条件を満足しているか確認し、終了条件を満たしていない場合は最適化メッシュの修正を行なうS8に進み、終了条件を満たしている場合は終了する。
S8:最適化メッシュを修正し、S3に戻る。最適化メッシュの逐次修正については後述する。
【0031】
図2は磁気スピン解析基本手順のイメージを示す図である。1)にメッシュ分解と要素毎の磁気スピン分布イメージ、2)に詳細メッシュでのLLG方程式による運動解析、3)に最適化メッシュでの反磁界解析を示し、4)反磁界解析で算出した反磁界ベクトルH(tn)を詳細メッシュにマッピングする手順の基本を図的に示している。
1)メッシュ分解と要素毎の磁気スピン分布イメージ
磁気スピン解析対象をメッシュに分解する。ここでは解析対象を例えば、簡単なa1−a1、a2−a2、b1−b1で6分割する。各個別のメッシュ(要素に対応)には例えば、磁気スピン分布解析の場合、磁界印加前は磁気スピンの方向がランダムになっている。磁界を印加することにより、各要素の磁気スピンの方向は一定方向に収斂する。各要素での磁気スピンの方向は磁気スピンの変化が激しい箇所、緩やかな箇所等、磁界の印加時間に従い変化する。
【0032】
ここでは、左上を原点とした節点の座標位置(i,j)で表示すると、例えば、要素y11(座標(0,0)、(0,1)、(1,0)、(1、1)で囲まれた要素y11、要素y13、要素y21、要素y23は磁気スピンの方向の変化が激しく、要素y12、要素y22では緩やかである。この領域全体を解析精度に対応した大きさの要素に分解して磁気スピン解析を行う。
2)詳細メッシュでのLLG方程式による運動解析
磁気スピン解析対象を解析精度で定まる所定の大きさのメッシュに分解した詳細メッシュ上でLLG方程式による運動解析を行う。詳細メッシュの各メッシュの大きさは全領域を同一の大きさとなる。図では説明上、簡単に磁気スピン分布a、磁気スピン分布b、磁気スピン分布c、磁気スピン分布dでは各々、磁気スピンの変化が緩やかである箇所であり、各領域以外は磁壁箇所で、磁気スピンの変化が激しい箇所を表している。
3)最適化メッシュでの反磁界解析
詳細メッシュの各メッシュを解析精度、磁気スピン変化の度合いに対応してメッシュ毎に大きさを変化させて最適化したメッシュで反磁界解析を行う。ここでは、磁気スピンの方向の変化が激しい上記要素y11、要素y13、要素y21、要素y23に対応した要素及び磁壁を細かいメッシュ、磁気スピンの方向が略一定方向に向いた要素y12、要素y22に対応した要素位置を粗いメッシュで示している。
4)最適化メッシュで算出した反磁界ベクトルH(tn)を詳細メッシュにマッピング
最適化メッシュで算出した反磁界ベクトルH(tn)を詳細メッシュにマッピングする。これにより、膨大な処理演算量が必要な詳細メッシュ上での反磁界解析を少なくすることができる。
【0033】
図3はメッシュモデル表現を示す図である。解析対象をメッシュに分解した時のメッシュに係わる各項目、及び逐次解析におけるモデルの表現を定義している。具体的な例は後述する。下記の例は2次元モデルに関する例である。3次元モデルに関しては三角形を四面体に置き換え、また、面積を体積に置き換えて同一の手法で最適化メッシュの作成を行い、最適化メッシュから詳細メッシュへの反磁界ベクトルH(tn)のマッピングを行う。また、以下の説明は問題ない限り全て2次元モデルで行う。
1)節点Pi:磁気スピンの方向を含む節点(xa,ya)の節点ID
Pi={(xa,ya)、M(t)、H(t)}i (i=1〜N0)ここで、M(t)は節点(xa,ya)の磁化ベクトル、H(t)は反磁界ベクトルである。N0は節点の数である。
2)節点接続データC(n,i):節点(xa,ya)の接続状態
C(n,i)=(Pi,LEi,LPi)(i=1〜N0) ここで、Piは節点(xa,ya)の節点IDであり、LEi、LPiは以下を示す。
ア.要素IDリストLEi:節点(xa,ya)に接続している要素IDリストで各要素とその面積の集合で構成し、要素Emとその面積Smの集合であり、以下で表す。
{{Em}・{Sm}i (m=1〜Mi)}ここで、Miはその数である。なお、要素は便宜上図2の「y」に代え「E」で表す。
イ.節点IDリストLPi要素IDリストの各要素が接続している節点IDの集合(除く節点ID「Pi」)と各節点IDの状態フラグで構成し、以下で表す。
LPi={{Pk}・{Fk}i (k=1〜Ki)}:ここで、Kiはその数であり、各Pkは節点IDであり、各Fkはその状態(下記)フラグである。(下記)を表現
Fk=「1」は分解時に一時的に削除する節点IDであり、Fk=「0」は逐次処理後もそのまま残る残留節点IDである。内容については後述する。
3)逐次解析時のモデル表現をMD(n)={AP(n,i),AE(n,i)} ここで、nは「n」回目の解析処理のメッシュモデルを表す。
ア.要素IDリストAE(n,i):解析時点の節点ID「Pi]に係わる要素IDリストであり、AE(n,i)={Em}(n,i)(m=1〜Mn,i)}ここで、「Mn,i」は逐次処理「n」回実行後の要素ID数である。
イ.節点IDリストAP(n,i):節点ID「Pi」に係わる節点IDリストであり、AP(n,i)={Pk}(n,i)(k=1〜Kn,i}ここで、「Kn,i」は逐次処理「n」回実行後の節点ID数である。
【0034】
図4はモデル表現例を示す図である。図2で示したモデルの表現の例として、図3のメッシュに対する節点ID「P5」の節点接続データ例を示している。説明は省略する。
【0035】
図5は詳細メッシュモデル作成手順を示す図である。解析の前提となる解析対象の詳細メッシュへの分解手順を示している。
S9:解析対象を所定の大きさのメッシュに分解し、節点に番号を付加(例.左上)して節点IDとする。分解後の節点の総数を「N0]とする。
S10:メッシュ分解により各三角形を要素として要素ID番号を付加する。各要素Em(m=1〜Mm)についてその三角形面積Smを算出する。
S11:全ての節点Pi(i=1〜N0)について、以下の手順で要素IDリストLEi、節点IDリストLPiを作成する。
ア.要素IDリストLEi:節点Piに接続している要素IDを抽出し、要素IDの集合とその各要素の面積より構成する。なお、節点Piのその解析時点での要素数をMiとする。
イ.節点IDリストLPi:要素IDにリストに接続している節点IDの集合(但し、節点Piは除く)とその各節点の状態フラグで構成する。状態フラグは残留の「0」とする。なお、節点Piのその解析時点での要素数をKiとする。
S12:作成した要素IDリストLEi、節点IDリストLPiより節点接続データC(n,i)={Pi、LEi,LPi}(i=1〜N0)を作成する。ここでn=1である。
S13:詳細メッシュのMD(n,i)={AP(n,i),AE(n,i),i=1〜Nn,0}を作成する。ここで、n=1である。
【0036】
図6は詳細化メッシュから最適化メッシュ作成(その1)を示す図である。詳細メッシュの各メッシュ間の磁気スピンの結合状態により個々のメッシュを拡大して最適化メッシュを作成する例を示している。以下の手順により複数のメッシュを1つのメッシュに統合する。ここで、M(tn)jは結合判定対象の節点の磁化ベクトルである。
【0037】
各メッシュの節点の磁化ベクトルM(tn)0が他の節点の磁化ベクトルと結合がある場合は、結合のある節点を結合する。結合の判定は該当の節点と結合判定する節点の磁化ベクトルの向きの度合いを判定基準(判定角度θn)以内か否かで行う。結合と判定した節点の削除処理を行ない、メッシュの大きさを大きくする。
1)の詳細メッシュの節点をP0、P1、P2、P3とし、三角形を(P0,P1,P2)、(P0,P2,P3)、(P0,P1,P3)、(P1,P2,P3)とする。節点P0、P1、P2、P3の4つの節点を以下のアの基準を満たす場合は1つの三角形(P1、P2、P3)に結合する。
ア.M(tn)0ベクトルと近傍のM(tn)j(j=1〜3)のなす角度(θn)が所定の角度以内の場合は節点P0を削除する。図ではθnとしてM(tn)0との角度が30度の範囲にある場合を示している。
【0038】
なお、図6では4つの節点から3つの節点への処理を示したが、多数の節点の場合も同じ方法で行なう。
【0039】
図7は節点削除処理による逐次最適化メッシュ作成手順を示す図である。図5で示した最適化メッシュ作成の基本手順を基に逐次処理段階で一時的に節点を削除する(欠番扱い)手順を示している。本手順で示す具体例は図7で説明する。
S14:初期設定として、n=1、i=1とする。Piを取り出す。
S15:Piは残留点か確認し、残留点なら、S16に進み、そうでないならS20に進む。S16:節点接続データC(n,i)の節点IDリストLPiの節点の集合{Pk}iよりKn,i個全ての節点とその磁化ベクトルを取り出す。
S17:節点Piに対するKn,i個の全ての節点の磁化ベクトルの角度が所定の判定基準以内にあるか判定する。(図6)
S18:基準以内であるか確認し、基準内であるなら、削除可能処理としてS19に進み、そうでないならS20に進む。
S19:節点Piを削除し、節点集合{Pk}iで覆われた要素について以下を行なう。
ア.全体を覆う要素を新たな三角形の要素に分解し要素IDを作成し、その各要素IDリストの各要素の面積を算出する。
イ.節点集合{Pk}iのデータを新規要素IDリストの情報に更新する。
S20:i=i+1
S21:i<N0か確認し、N0ならS22に進み、そうでないならS15に戻る。
S22:n=n+1として、以下の更新した節点接続データC(n,i)={Pi、LEi,LPi}(i=1〜N0)を作成する。これは逐次処理「n」回として作成される最適化メッシュの節点接続データである。
ア.削除処理した節点Pi:処理済みフラグを立て、削除前の要素IDリスト、節点IDリストを保持する。
イ.削除処理した節点に隣接する隣接節点:削除した要素IDに変えて新規作成要素IDの情報(新規要素IDとその面積)と新規要素に接続する隣接節点の情報を更新し保持する。
【0040】
図8は詳細化メッシュから最適化メッシュ作成手順(その2)を示す図である。具体的な例(削除対象節点P10)について作成方法を示している。
1)削除対象節点としてP10を考える。
実行前のモデル表現M(n0)とし、P10が削除可能か否かは図6で示す方法により判断する。
2)削除可能と判断した場合、P10の要素IDリストを削除し、全体を覆う1つの要素とする。
3)全体を覆う要素を新たに三角形の要素を作成し、その面積を算出する。
4)新規の要素モデルとし、要素情報の生成と隣接節点の情報を更新する。
実行後のモデル表現M(n0+1)は以下となる。
ア.節点IDリスト:
節点P10が一時的削除(欠番扱い)されている。
イ.要素IDリスト:
・削除した要素IDに変えて新規作成要素IDの情報(新規要素IDとその面積)に更新される。
・新規要素作成に伴い、新規要素に接続する隣接節点の情報が更新される。
5)実行後のモデル表現MD(n0+1)は以下となる。
ア.節点IDリスト:
一時的に削除した節点が削除(欠番扱い)される。
イ.要素IDリスト:
・削除した要素IDに変えて新規作成要素IDの情報(新規要素IDとその面積)に更新される。
・新規要素作成に伴い、新規要素に接続する隣接節点の情報が更新される。
6)結果として以下を得る。
ア.小さい判定角度により磁気スピンの変化が緩やかな領域の節点が削除されメッシュが大きくなる。
イ.順次判定角度を大きくすることにより最後に残ったメッシュの大きさは最初の詳細メッシュのメッシュ大きさとなる。
【0041】
図9は最適化メッシュから詳細メッシュへの反磁界ベクトルのマッピングを示す図である。最適化メッシュから詳細メッシュへの反磁界のマッピングを有限要素法の形状関数を使って行う。ここでは、節点P1、P2、P3より最適化時に削除されていた場合の節点P0の復活方法を示している。
1)復活節点P0の反磁界ベクトルH(tn)
3つの三角形要素から構成される最適化された結合要素(節点P1、P2、P3)より最適化時に削除されていた元の詳細メッシュの要素P0へのマッピングし、復活した節点P0の反磁界ベクトルの大きさは(式2)で算出する。
【0042】
【数2】
ここで、S0は、最適化メッシュでP1、P2、P3の三角形の面積であり、S1、S2、S3は元の詳細メッシュでの各々の三角形(例えば、S1はP0、P2、P3の面積)である。
2)復活節点P0を元の位置に設定する。
【0043】
この場合、復活した節点P0が三角形の中心にある場合は反磁界ベクトルの大きさは節点P1、P2、P3の反磁界ベクトルの大きさの平均値でも良い。
【0044】
図10は最適化メッシュから詳細メッシュ作成手順を示す図である。逐次解析では図1に示したように詳細メッシュから最適化メッシュへ、最適化メッシュから元の詳細メッシュに繰り返し戻す手順が行なわれる。この逐次処理段階での最適化メッシュから詳細メッシュ作成の手順を示している。
S23:以下の初期設定を行う。n=N0
ア.「n=N0」回目に削除処理された節点FD(N0,j)(j=0〜Jn,i)を取り出す。
イ.「n−1」回目の要素IDリストの集合LE((n−1),i)={(n−1),{Em}・{Sm}i m=1〜Mn,i}を取り出す。
S24:j=1
S25:FD(n,j)を最適化メッシュから詳細メッシュ作成のマッピング(図9)により元の節点を復活(フラグは残留フラグに戻す)し、削除時に更新した隣接節点のデータも更新前に戻す。これにより「n」回目の削除処理後の節点接続データ節点IDリストC(n−1,i)={Pi、LEi,LPi}(i=1〜N0)を得る。
S26:j=j+1
S27:j≦Jn,iか確認し、そうであるならS25に戻り、そうでないならS28に進む。
S28:n=n-1
S29:n<1か確認し、n=0ならS30の最初の詳細メッシュに戻る。1を超えている場合はS24に戻りさらに最初の詳細メッシュに戻り処理を継続する。
S30:最初の詳細メッシュモデルを得る。
【0045】
図11は磁気スピン解析手順を示す図である。上記説明した磁気スピン解析の基本方法を基に解析対象の磁気スピン解析の手順を示している。
S31:以下の初期設定を行う。n=1
ア.磁気スピン解析終了判定条件(例えば、「ε」)
イ.最適化メッシュ分解の所定のメッシュ大きさ(最小)
ウ.節点削除判定の初期判定角度θと変化量Δθ
S32:解析対象をメッシュに分解し以下を行なう。(図5)
ア.初期磁化ベクトルM(t=0)をLLG方程式の運動解析で算出する。初期反磁界ベクトルH(tn)は未計算である。
イ.節点Pi={(xa,ya),M(tn),H(tn)}i(i=1〜N0)
ウ.MD(n)の節点接続データC(n,i)={Pi、LEi,LPi}(i=1〜N0)を作成する。
S33:i=1
S34:Piに接続している要素の数≦2か確認し、2を越えている場合は節点削除可能か否か確認のため、S35に進み、2以下の場合はS36に進む。
S35:節点削除判定角度θを基に節点が削除可能か判断し、節点接続データを作成する。(図6、7)
S36:i=i+1
S37:「i」が「N0」以下か確認し、「N0」以下の場合はS34に戻り、そうでない場合はS38に進む。
S38:作成した最適化メッシュ上で反磁界ベクトルH(tn)を算出する。
S39:最適化メッシュの反磁界ベクトルH(tn)を詳細メッシュ上にマッピングする。(図9、10)
S40:詳細メッシュ上で磁化Mベクトル(tn+Δt)をLLG方程式の運動解析で算出する。ここでは時間経過有としてt=tn+Δtとする。
S41:磁化ベクトルM(tn+Δt)、反磁界ベクトルH(tn)を評価し、磁気スピン分布の終了条件を確認する。
S42:終了判定条件を満足しているか確認し、満足している場合はS45に進み、終了条件を満たしていない場合はS43に進む。
S43:n=n+1とし、削除した節点はモデルデータ上では削除節点フラグを立て、要素IDリスト及び隣接節点の情報を更新したメッシュモデルを作成する。
ア.節点接続データC(n,i)={Pi、LEi,LPi} (i=1〜N0)
イ.削除節点(欠番にした)をFD(n,j)(j=0〜Jn,iとする。Jn,iは削除された節点の数である。
S44:以下を置きなおす。
ア.メッシュの節点削除判定角度をAng=Ang+ΔAngと大きくする。
イ.tn+Δt=tと置き換える。
S45:最終のn(n=Ns)を逐次処理回数とする。
【0046】
図14は最適化メッシュの作成例を示す図である。1)の磁気スピン分布例に対し2)の磁壁箇所以外を広めにした最適化メッシュを示し、上述した逐次処理に最適化メッシュ作成により以下の結果が得られることを示している。
ア.磁気スピン分布の方向変化が激しい箇所である時壁の箇所(例「a1」)に対し「a2」、「a3」、「a4」「a5」のメッシュ面積の大きいメッシュが作成され、この大きなメッシュを含んで構成する最適化メッシュで反磁界ベクトルH(tn)を算出し、全て「a1」の大きさの詳細メッシュにH(tn)をマッピングすることにより、詳細メッシュ上での磁気スピン解析に比較して処理演算量を大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は磁気スピン解析基本手順を示す図である。
【図2】図2は磁気スピン解析基本手順のイメージを示す図である。
【図3】図3はメッシュモデル表現を示す図である。
【図4】図4はモデル表現例を示す図である。
【図5】図5は詳細メッシュモデル作成手順を示す図である。
【図6】図6は詳細化メッシュから最適化メッシュ作成(その1)を示す図である。
【図7】図7は節点削除処理による逐次最適化メッシュ作成手順を示す図である。
【図8】図8は詳細化メッシュから最適化メッシュ作成手順(その2)を示す図である。
【図9】図9は最適化メッシュから詳細メッシュへの反磁界ベクトルのマッピングを示す図である。
【図10】図10は最適化メッシュから詳細メッシュ作成手順を示す図である。
【図11】図11は磁気スピン解析手順を示す図である。
【図12】図12は反磁界解析とLLG方程式による運動解析の概要を示す図である。
【図13】図13は磁気スピン解析の終了条件例を示す図である。
【図14】図14は最適化メッシュの作成例を示す図である。
【図15】図15は従来の磁気スピン解析手順を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体の磁気スピン分布をLandau−Lifshitz−Gilbert方程式による磁気スピンの運動解析と、反磁界解析と、を使い解析する磁気スピン解析方法であって、
前記磁気スピン解析方法は、
前記磁性体を所定の大きさのメッシュに分解した詳細メッシュで磁界ベクトル算出による運動解析を行い、
前記磁界ベクトルより磁気スピンの変化が少ないメッシュ領域は前記メッシュを粗くなるように変換した最適化メッシュの作成を行ない、
前記最適化メッシュで反磁界ベクトル算出による反磁界解析を行い反磁界ベクトルの算出を行い、
前記算出した反磁界ベクトルを元の前記詳細メッシュにマッピングして前記詳細メッシュでの反磁界ベクトルの算出を行い、
前記詳細メッシュでの運動解析と前記最適化メッシュでの反磁界解析により磁気スピン解析を行うことを特徴とする磁気スピン解析方法。
【請求項2】
請求項1記載における最適化メッシュの作成は、メッシュからメッシュを逐次作成すること特徴とする請求項1記載の磁気スピン解析方法。
【請求項3】
請求項1記載の前記詳細メッシュから前記最適化メッシュへの変換方法であって、
前記最適化メッシュへの変換は、
前記分解した前記詳細メッシュを各々三角形要素または四面体要素に分解し、前記詳細メッシュの各節点について前記各節点に接続されている要素と前記要素に接続している節点の集合とその要素面積で前記節点毎の接続データの作成を行ない、
前記作成した節点毎の接続データより取り出した節点の磁化ベクトルと前記節点集合に存在する節点の磁化ベクトルの向きが所定範囲内にある場合に前記取り出した節点の削除を行って最適化メッシュを作成することを特徴とする請求項1記載の磁気スピン解析方法。
【請求項4】
請求項3記載の磁気スピン解析における最適化メッシュから前記詳細メッシュへのマッピング方法であって、
前記詳細メッシュへのマッピングは、
最適化メッシュ時削除した節点を前記節点毎の接続データを使い復活させ前記詳細メッシュにマッピングすることを特徴とする請求項3記載の磁気スピン解析方法。
【請求項5】
請求項4記載の前記節点の復活における反磁界ベクトルの値の設定方法であって、
前記詳細メッシュにマッピングした前記節点の復活値は元の値に復活することを特徴とする請求項4記載の磁気スピン解析方法。
【請求項1】
磁性体の磁気スピン分布をLandau−Lifshitz−Gilbert方程式による磁気スピンの運動解析と、反磁界解析と、を使い解析する磁気スピン解析方法であって、
前記磁気スピン解析方法は、
前記磁性体を所定の大きさのメッシュに分解した詳細メッシュで磁界ベクトル算出による運動解析を行い、
前記磁界ベクトルより磁気スピンの変化が少ないメッシュ領域は前記メッシュを粗くなるように変換した最適化メッシュの作成を行ない、
前記最適化メッシュで反磁界ベクトル算出による反磁界解析を行い反磁界ベクトルの算出を行い、
前記算出した反磁界ベクトルを元の前記詳細メッシュにマッピングして前記詳細メッシュでの反磁界ベクトルの算出を行い、
前記詳細メッシュでの運動解析と前記最適化メッシュでの反磁界解析により磁気スピン解析を行うことを特徴とする磁気スピン解析方法。
【請求項2】
請求項1記載における最適化メッシュの作成は、メッシュからメッシュを逐次作成すること特徴とする請求項1記載の磁気スピン解析方法。
【請求項3】
請求項1記載の前記詳細メッシュから前記最適化メッシュへの変換方法であって、
前記最適化メッシュへの変換は、
前記分解した前記詳細メッシュを各々三角形要素または四面体要素に分解し、前記詳細メッシュの各節点について前記各節点に接続されている要素と前記要素に接続している節点の集合とその要素面積で前記節点毎の接続データの作成を行ない、
前記作成した節点毎の接続データより取り出した節点の磁化ベクトルと前記節点集合に存在する節点の磁化ベクトルの向きが所定範囲内にある場合に前記取り出した節点の削除を行って最適化メッシュを作成することを特徴とする請求項1記載の磁気スピン解析方法。
【請求項4】
請求項3記載の磁気スピン解析における最適化メッシュから前記詳細メッシュへのマッピング方法であって、
前記詳細メッシュへのマッピングは、
最適化メッシュ時削除した節点を前記節点毎の接続データを使い復活させ前記詳細メッシュにマッピングすることを特徴とする請求項3記載の磁気スピン解析方法。
【請求項5】
請求項4記載の前記節点の復活における反磁界ベクトルの値の設定方法であって、
前記詳細メッシュにマッピングした前記節点の復活値は元の値に復活することを特徴とする請求項4記載の磁気スピン解析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−224001(P2009−224001A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69941(P2008−69941)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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