説明

磁気ディスク用半製品基板の出荷方法

【課題】出荷元の出荷前工程と出荷先の出荷後工程の基板加工枚数が異なる場合であっても、生産性の低下を抑制すると共に出荷後工程で加工処理した基板の加工状態のばらつきを低減することを目的の一とする。
【解決手段】最終研磨工程の前工程までのいずれかの工程が施され、磁気ディスク用基板として半製品の状態である磁気ディスク用半製品基板を出荷する方法であって、出荷先において、磁気ディスク用半製品基板に対して出荷元の出荷前工程の次工程として行われる出荷後工程に用いられる装置に投入される磁気ディスク用半製品基板の加工枚数の整数倍単位で出荷を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク用半製品基板の出荷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化技術の高度化に伴い、情報記録技術、特に磁気記録技術は著しく進歩している。磁気記録媒体の一つであるHDD(ハードディスクドライブ)等に用いられる磁気ディスクにおいては、急速な小型化、薄板化、及び記録密度の増加とアクセス速度の高速化が続けられている。HDDでは、円盤状の基板の上に磁性層を備えた磁気ディスクを高速回転し、この磁気ディスク上に磁気ヘッドを浮上飛行させながら記録と再生を行う。
【0003】
アクセス速度の高速化に伴って磁気ディスクの回転速度も速くなるため、磁気ディスクには、より高い基板強度が求められる。また記録密度の増加に伴い、磁気ヘッドも薄膜ヘッドから、磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)、大型磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)へと推移しており、磁気ヘッドの磁気ディスクからの浮上量が5nm程度にまで狭くなってきている。このため磁気ディスク面上に凹凸形状があると、磁気ヘッドが衝突するクラッシュ障害や、空気の断熱圧縮または接触により加熱して読み出しエラーを生じるサーマルアスペリティ障害を生じる場合がある。このような磁気ヘッドに生じる障害を抑制するには、磁気ディスクの主表面を極めて平滑な面として仕上げておくことが重要となる。
【0004】
そこで現在では、磁気ディスク用の基板として、従来のアルミニウム基板に代えて、ガラス基板が用いられるようになってきている。軟質材料である金属からなるアルミニウム基板に比べて、硬質材料であるガラスからなるガラス基板は、基板表面の平坦性、基板強度、および剛性に優れているためである。これらの磁気ディスクに用いられるガラス基板は、その主表面に研削加工や研磨加工等を施すことにより平滑化することができる。
【0005】
ガラス基板の研削加工や研磨加工としては、例えば、遊星歯車機構を有する両面研磨装置等を用いて行う方法がある。例えば、遊星歯車機構で研磨加工を行う場合には、研磨パッドが貼付された上下定盤にガラス基板を挟み、砥粒(スラリー)を混濁させた研磨液を研磨パッドとガラス基板との間に供給すると共に、当該ガラス基板を上下定盤に対して相対的に移動することにより、ガラス基板の主表面が所定の平滑面に仕上げられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−288919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、磁気ディスク製造メーカによっては、磁気ディスク用基板製造メーカから研削加工後の磁気ディスク用基板を入荷し、磁気ディスク製造メーカにて研磨加工を行った後に磁気ディスク用基板上に磁性層を形成する製造形態が取られている。この場合において、磁気ディスク用基板製造メーカにおいて、研磨工程前まで加工された半製品の状態の磁気ディスク用基板をRTP(Ready to Polish)基板という。このような半製品の状態の磁気ディスク用半製品基板から製造を行うことにより、製品の製造において自由度が上がるため、今後ますます磁気ディスク用基板製造メーカから磁気ディスク製造メーカにRTP基板が出荷されるケースが増えることが予想される。
【0008】
ところで、遊星歯車機構を用いた研削装置(又は、研磨装置)では、上下定盤を所定の方向に回転させることによりガラス基板の主表面の研削加工(又は、研磨装置)を行う。しかし、同じパッドを用いて複数ロットの研削加工(又は、研磨装置)を行うにつれて、パッドの研磨レートが低下してしまう。そのため、同じ装置で加工処理を行った場合であっても各ロット間のガラス基板の表面形状(表面粗さ、平坦度等)や研削量(取り代)が異なることがあるという問題がある。
【0009】
一般的に、磁気ディスク用基板の製造工程で用いられる装置にはそれぞれ1ロットで加工可能なガラス基板の枚数(最大加工枚数)が決められている。そのため、出荷元の装置と出荷先の装置において1ロットのガラス基板の加工枚数が異なる場合には、出荷元での工程(出荷前工程)と出荷先での工程(出荷後工程)のロットが一対一で対応せず、出荷先の各ロットで使用されるガラス基板は、出荷元の異なるロットで加工されたガラス基板が混在した状態となる。
【0010】
また、出荷元から同一ロットで加工処理した加工状態が近似するガラス基板を出荷する場合であっても、出荷枚数が出荷先の装置の加工枚数と異なる場合には、出荷先で残存したガラス基板を加工状態が異なる他の基板と組み合わせて加工処理を行う必要がある。
【0011】
例えば、出荷元における最終工程となる出荷前工程(例えば、研削工程)の加工枚数が200枚、出荷先における出荷後工程(例えば、研磨工程)の加工枚数が60枚である場合、出荷元から200枚出荷した場合には、出荷先において3ロット処理により180枚のガラス基板に対して加工処理を行うことができるが、未加工処理のガラス基板が20枚残存してしまう(図2(A)参照)。また、出荷元における出荷前工程の加工枚数が50枚、出荷先における出荷後工程の加工枚数が70枚である場合、出荷元から150枚(3ロット分)のガラス基板を出荷した場合には、出荷先において2ロット処理により140枚のガラス基板に対して加工処理を行うことができるが、未加工処理のガラス基板が10枚残存してしまう(図2(B)参照)。さらに、出荷後工程の各ロットに使用するガラス基板として、出荷元で行われた出荷前工程の異なるロットで加工されたガラス基板を組み合わせる必要がある。
【0012】
上述したように、研削工程や研磨工程等を有する基板の製造工程ではパッドの摩耗により異なるロット間で加工状態(例えば、研磨量)が異なるという問題があるため、出荷先において、残存したガラス基板(出荷元の異なるロット間で加工処理されたガラス基板)を単に組み合わせて最終研磨工程等を行うと、研磨工程後のガラス基板の厚さや表面形状(表面粗さ、平坦度等)がばらつくという問題がある。また、出荷先において、研磨条件(加工処理時間等)を制御してガラス基板の厚さをそろえようとしても、研削工程より研磨量が少ない研磨工程で同一ロット内のガラス基板の厚さを調整することは困難となる。
【0013】
一方で、出荷先において、出荷元の出荷前工程の異なるロット間で加工されたガラス基板を組み合わせず、上記残存する20枚のガラス基板のみで(又は、出荷された50枚に限定して)出荷後工程を行う場合には、装置の能力を最大限生かしきれず生産性が低下する問題がある。また、最大加工枚数より少ないガラス基板をセットして研磨工程等を行う場合には、ガラス基板を設ける場所と設けない場所のパッドの研磨レートが変化し、同一ロット間において研磨量が異なるという問題が生じるおそれがある。
【0014】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、出荷元の出荷前工程と出荷先の出荷後工程の基板加工枚数が異なる場合であっても、生産性の低下を抑制すると共に出荷後工程で加工処理した基板の加工状態のばらつきを低減することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の磁気ディスク用半製品基板の出荷方法は、最終研磨工程の前工程までのいずれかの工程が施され、磁気ディスク用基板として半製品の状態である磁気ディスク用半製品基板を出荷する方法であって、出荷先において、磁気ディスク用半製品基板に対して出荷元の出荷前工程の次工程として行われる出荷後工程に用いられる装置に投入される磁気ディスク用半製品基板の加工枚数の整数倍単位で出荷が行われることを特徴とする。
【0016】
本発明の磁気ディスク用半製品基板の出荷方法は、最終研磨工程の前工程までのいずれかの工程が施され、磁気ディスク用基板として半製品の状態である磁気ディスク用半製品基板を出荷する方法であって、出荷元から出荷先に出荷される磁気ディスク用半製品基板の出荷枚数は管理装置により管理され、管理装置は、出荷先において出荷元の出荷前工程の次工程として行われる出荷後工程に用いられる装置に投入される磁気ディスク用半製品基板の加工枚数を記憶しており、管理装置に記憶された加工枚数の整数倍単位で出荷枚数が管理されることを特徴とする。
【0017】
本発明の磁気ディスク用半製品基板の出荷方法において、管理装置は、出荷前工程で加工処理された磁気ディスク用半製品基板の加工状態を検査して、磁気ディスク用半製品基板の加工状態に基づいて出荷前工程のロット単位で磁気ディスク用半製品基板を複数のグループに振り分け、出荷先の出荷後工程の各ロットに使用される磁気ディスク用半製品基板が、複数のグループのうち同一グループに振り分けられた半製品基板から選択されるように出荷を管理することが好ましい。
【0018】
本発明の磁気ディスク用半製品基板の出荷方法において、管理装置は、同一グループに振り分けられた磁気ディスク用半製品基板のうち、出荷前工程において同一ロットで加工処理が行われた磁気ディスク用半製品基板が優先的にまとまって出荷後工程の同一ロットに選択されるように出荷を管理することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、出荷元の出荷前工程と出荷先の出荷後工程の基板加工枚数が異なる場合であっても、生産性の低下を抑制すると共に出荷後工程で加工処理した半製品基板の加工状態のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る磁気ディスク用半製品基板の出荷方法の一例を示す図である。
【図2】従来の磁気ディスク用半製品基板の出荷方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施の形態で示す磁気ディスク用半製品基板の出荷方法は、出荷元から出荷先に出荷する磁気ディスク用半製品基板の出荷枚数を、出荷先において磁気ディスク用半製品基板に対して次工程(出荷後工程)として行う加工工程に用いられる装置の加工処理枚数の整数倍の単位で決定することを特徴としている。また、出荷元の出荷前工程後に、出荷前工程で加工した磁気ディスク用半製品基板の加工状態を検査して、磁気ディスク用半製品基板の加工状態に基づいてロット単位で磁気ディスク用半製品基板を複数のグループに振り分ける分類工程を設け、出荷先の出荷後工程の各ロットに使用する磁気ディスク用半製品基板は、分類工程で振り分けられた複数のグループのうち同一グループに振り分けられた磁気ディスク用半製品基板から選択することが好ましい。特に、出荷元の出荷前工程において同一ロットで加工された磁気ディスク用半製品基板が優先的にまとまって出荷され、且つ出荷先の出荷後工程の同一ロットに選択されることが好ましい。
【0022】
これにより、出荷元における出荷前工程と出荷先における出荷後工程で1ロットにおける磁気ディスク用半製品基板の加工枚数が異なる(一対一で対応しない)場合であっても、出荷先で残存する磁気ディスク用半製品基板を無くし、出荷後工程の加工状態のばらつきを低減することができる。
【0023】
なお、本明細書における「磁気ディスク用半製品基板」とは、半製品(未完成)状態の磁気ディスク用基板を指し、具体的には、磁気ディスクの製造に用いられる基板であって、基板の鏡面化を行う最終研磨工程の前工程までのいずれかの工程が施された基板を指す。例えば、(1)素材加工工程、(2)第1研削工程、(3)形状加工工程、(4)第2研削工程、(5)端面研磨工程、(6)第1研磨工程、(7)化学強化工程、(8)主表面研磨工程(最終研磨工程)、(9)磁気ディスク製造工程(記録層等形成工程)を有する磁気ディスクの製造工程がある場合、最終研磨工程((8)工程)前の(1)工程〜(7)工程のいずれかまでの工程が施され、少なくとも(8)工程が施されていない基板を磁気ディスク用半製品基板といい、(8)工程が施され(9)工程が行われる前の基板を磁気ディスク用基板という。なお、以下の説明においては、磁気ディスク用半製品基板を単に「半製品基板」とも記す。
【0024】
以下に、本実施の形態で示す磁気ディスク用半製品基板の出荷方法及び出荷システムの一例について説明する。なお、以下の説明では、少なくとも、形状加工工程(コアリング及びチャンファリング等)、研削工程(ラッピング)、研磨工程(端面部、主表面部)を有する磁気ディスク用半製品基板の製造工程において、出荷元の出荷前工程を研削工程、出荷先において出荷前工程の次工程として行われる出荷後工程を研磨工程とした場合を示しているが、本発明はこれに限られない。研削工程や研磨工程を複数設ける場合には、出荷元における出荷前工程は少なくとも最終研磨工程前のいずれかの工程であり、出荷先における出荷後工程は出荷前工程の次工程に相当する工程であればよい。また、図1は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0025】
出荷元は、客先(出荷先)の出荷後工程(研磨工程)に用いられる装置の1ロットあたりの加工枚数の整数倍の単位で、出荷前工程(研削工程)を経た半製品基板の出荷を行う。例えば、客先の出荷後工程(研磨工程)に用いられる装置の1ロットあたりの加工枚数が150枚である場合には、加工枚数の整数倍(この場合、150×n)の単位で半製品基板の出荷を行う。
【0026】
出荷前工程に用いられる装置の1ロットあたりの加工枚数が200枚であり、出荷後工程の10ロット分(150×10枚)の半製品基板を出荷する場合には、少なくとも出荷前工程の8ロット分の研削工程を経た半製品基板が出荷先に出荷される。
【0027】
出荷元から出荷先に出荷される半製品基板の出荷枚数は、管理装置を用いて管理することができる。この場合、管理装置には、出荷先における出荷後工程に用いられる装置に投入される磁気ディスク用半製品基板の加工枚数が記憶されており、管理装置に記憶された加工枚数の整数倍の単位で出荷枚数が管理される。また、管理装置に、出荷元の加工段階(出荷前工程の種類)に対応するように、出荷先の出荷後工程に用いられる装置の加工枚数を記憶させておくことにより、出荷元の出荷時の加工段階に応じて半製品基板の出荷枚数を管理することができる。
【0028】
また、出荷先の出荷後工程に用いられる装置において、同一ロットに供給される半製品基板は加工状態が近似していることが好ましい。例えば、出荷後工程に用いられる装置の1ロットあたりの加工枚数が150枚である場合には、各ロットに供給される150枚の半製品基板の加工状態がそれぞれ近似していることが好ましい。
【0029】
加工状態が近似している半製品基板を出荷後工程の各ロットに供給するには、出荷元の出荷前工程において同一ロットで加工処理された半製品基板が、出荷先の出荷後工程の同一ロットで加工処理される半製品基板として選択される構成とすればよい。具体的には、上述した例において、出荷前工程の1stロットの200枚から選ばれた150枚の半製品基板が出荷後工程の同一ロット(例えば、1stロット)で加工され、出荷前工程の2stロットの200枚から選ばれた150枚の半製品基板が出荷後工程の同一ロット(例えば、2ndロット)で加工される出荷形態とすればよい。3rdロット以降でも同様に行えばよい。
【0030】
但し、出荷前工程の装置の加工枚数と、出荷後工程の装置の加工枚数が異なる(一対一で対応しない)場合には、出荷後工程において、出荷前工程の異なるロット間で加工処理された半製品基板を組み合わせて加工処理を行う必要がある。このように、出荷前工程と出荷後工程の装置の1ロットにおける加工枚数が異なる場合には、出荷元の出荷前工程後に、出荷前工程で加工した半製品基板の加工状態を検査して、半製品基板の加工状態に基づいてロット単位で半製品基板を複数のグループに振り分ける分類工程を設け、出荷先の出荷後工程の各ロットに使用する半製品基板が、分類工程で振り分けられた複数のグループのうち同一グループに振り分けられた半製品基板から選択されるように出荷を管理することが好ましい。以下に、出荷前工程を行った半製品基板について分類工程を行って出荷する場合について説明する(図1参照)。
【0031】
分類工程において、出荷前工程後の半製品基板の加工状態は、出荷前工程の加工段階の種別に応じて様々なパラメータを基準とすることができ、一例として、半製品基板の厚さ(t)を基準とすることができる。この場合、出荷前工程後の半製品基板の厚さに応じてロット単位で半製品基板を複数のグループに振り分ける。例えば、半製品基板の厚さ(分類表)に応じて3つのグループ(グループA〜グループC)を設ける場合には、出荷前工程のロット毎に該当するグループに振り分けを行う。
【0032】
また、半製品基板の検査は1ロット全ての半製品基板に対して行うのではなく、ロット毎に複数枚の半製品基板を抜き出したサンプリング検査とすることができる。これは、同一ロット内の半製品基板は、異なるロット間の半製品基板と比較して研削量等の加工状態のばらつきが小さいためである。より正確に測定するには、出荷前工程に用いられる装置(例えば、研削装置)に設けられた複数の半製品基板のうち、異なる場所に位置する半製品基板を複数枚抜き出すことが好ましい。例えば、出荷前工程に用いられる装置が遊星歯車機構を用いた研削装置である場合には、複数の研磨用キャリアの外側・内側・中央部に位置する半製品基板をそれぞれ複数枚ずつ抜き出して、その平均値をとればよい。
【0033】
また、上記分類工程において、半製品基板の加工状態を検査し、且つロット毎の検査結果に基づいて半製品基板を複数のグループに振り分ける機能を管理装置に持たせることができる。また、複数のグループに振り分ける工程において、同じグループに該当する半製品基板毎にラベル等を付与して識別することにより、加工状態が近似した半製品基板を効率的に出荷すると共に、出荷先においても半製品基板の加工状態を容易に把握することができる。
【0034】
その後、出荷先で出荷後工程が行われる。出荷後工程の各ロットで使用される半製品基板は、出荷前工程後の分類工程で複数のグループに振り分けられた半製品基板のうち、同一グループの半製品基板から選択される。
【0035】
このように、出荷前工程と出荷後工程との間に分類工程を設けることより、出荷元と出荷先の装置の加工枚数が異なる場合であっても、出荷後工程の各ロットに対して加工状態が近似する半製品基板を供給することができ、出荷後工程の加工状態を一定とすることが可能となる。また、出荷前工程において各ロット間で加工状態が異なる場合であっても、出荷後工程の各ロットで加工状態が近似する半製品基板を供給することにより、出荷後工程の各ロット間の加工条件を変化させて加工処理を行うことができる。これにより、出荷後工程のロット間の加工状態の差を低減することが可能となる。
【0036】
なお、上述したように、分類工程において同一グループに振り分けられた半製品基板のうち、出荷前工程において同一ロットで加工処理が行われた半製品基板が、出荷後に優先的にまとまって出荷後工程の同一ロットに選択される構成とすることが好ましい。これにより、より加工状態が近似した半製品基板を出荷後工程の同一ロットで加工処理できる。なお、このような出荷方法についても、出荷元と出荷先の各工程に用いる装置の加工枚数の関係を表すデータベースを管理装置に記憶させ、当該データベースに基づいて実現することができる。
【0037】
以下に、磁気ディスク用ガラス基板及び当該磁気ディスク用ガラス基板を用いた磁気ディスクの製造工程と、磁気ディスク用半製品基板の出荷方法のタイミングについて説明する。なお、各工程の順序は以下の記載に限定されず、適宜入れ替えることが可能である。
【0038】
(1)素材加工工程
まず、素材加工工程においては、板状ガラスを用いることができる。この板状ガラスは、例えば、溶融ガラスを材料として、プレス法やフロート法、ダウンドロー法、リドロー法、フュージョン法など、公知の製造方法を用いて製造することができる。これらの方法うち、プレス法を用いれば、板状ガラスを廉価に製造することができる。ガラスとしては、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラスなどを用いることができる。特に、主表面の平坦性及び基板強度において優れた磁気ディスク用ガラス基板を提供することができるという点では、アルミノシリケートガラスを用いることが好ましい。
【0039】
(2)第1研削(ラッピング)工程
第1ラッピング工程では、ディスク状のガラス基板の主表面をラッピング加工し、ガラス基板の形状を整える。第1のラッピング工程は、遊星歯車機構を利用した両面研削装置により、アルミナ系遊離砥粒を用いて行うことができる。具体的には、ディスク状のガラス基板の両面に上下からラップ定盤を押圧させ、遊離砥粒を含む研削液をガラス基板の主表面上に供給し、これらを相対的に移動させてラッピング加工を行う。このラッピング加工により、平坦な主表面を有するガラス基板を得ることができる。
【0040】
第1ラッピング工程を行った後に、半製品基板として出荷先へ出荷することができる。この場合、上述した分類工程を行うことにより、半製品基板の加工状態に基づいてロット毎に複数のグループに振り分け、出荷先へ加工状態が均一な半製品基板を出荷することができる。
【0041】
(3)形状加工工程(穴部を形成するコアリング工程、端部(外周端部及び内周端部)に面取り面を形成するチャンファリング工程(面取り面形成工程))
コアリング工程では、例えば、円筒状のダイヤモンドドリルを用いて、ディスク状のガラス基板の中心部に内孔を形成し、円環状のガラス基板とすることができる。チャンファリング工程においては、内周端面及び外周端面をダイヤモンド砥石によって研削し、ガラス基板に所定の面取り加工を施す。なお、コアリング工程及び/又はチャファリング工程を第1のラッピング工程の前に行ってもよい。
【0042】
形状加工工程を行った後に、半製品基板として出荷先へ出荷することができる。この場合、上述した分類工程を行うことにより、半製品基板の加工状態に基づいてロット毎に複数のグループに振り分け、出荷先へ加工状態が均一な半製品基板を出荷することができる。
【0043】
(4)第2ラッピング工程
第2ラッピング工程では、得られたガラス基板の両主表面について、第2ラッピング加工を行う。第2ラッピング工程を行うことにより、前工程である形状加工工程においてガラス基板の主表面に形成された微細な凹凸形状を除去することができ、後続の主表面に対する研磨工程を短時間で完了させることが可能となる。なお、第2ラッピング工程は、遊星歯車機構を利用した両面研削装置を用いて上記第1ラッピング加工と同様に行うことができる。
【0044】
第2のラッピング工程を行った後に、半製品基板として出荷先へ出荷することができる。この場合、上述した分類工程を行うことにより、半製品基板の加工状態に基づいてロット毎に複数のグループに振り分け、出荷先へ加工状態が均一な半製品基板を出荷することができる。
【0045】
(5)端面研磨工程
端面研磨工程では、ガラス基板の外周端面及び内周端面について、ブラシ研磨方法により、鏡面研磨を行う。このとき、研磨砥粒としては、例えば、酸化セリウム砥粒を含むスラリー(遊離砥粒)を用いることができる。この端面研磨工程により、ガラス基板の端面は、ナトリウムやカリウムの析出の発生を防止でき、また、サーマルアスペリティ等の発生原因となるパーティクルの発生およびその端面部分への付着を抑制しうる鏡面状態になる。
【0046】
端面研磨工程を行った後に、半製品基板として出荷先へ出荷することができる。この場合、上述した分類工程を行うことにより、半製品基板の加工状態に基づいてロット毎に複数のグループに振り分け、出荷先へ加工状態が均一な半製品基板を出荷することができる。
【0047】
(6)主表面研磨工程(第1研磨工程)
主表面研磨工程として、まず第1研磨工程を施す。第1研磨工程は、前述のラッピング工程で両主表面に残留したキズや歪みの除去を主たる目的とする工程である。この第1研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、硬質樹脂ポリッシャを用いて、両主表面の研磨を行う。研磨剤としては、酸化セリウム砥粒を用いることができる。また、第1研磨工程を終えたガラス基板は、中性洗剤、純水、IPA等で洗浄することが好ましい。
【0048】
第1研磨工程を行った後に、半製品基板として出荷先へ出荷することができる。この場合、上述した分類工程を行うことにより、半製品基板の加工状態に基づいてロット毎に複数のグループに振り分け、出荷先へ加工状態が均一な半製品基板を出荷することができる。
【0049】
(7)化学強化工程
化学強化工程においては、前述のラッピング工程及び第1研磨工程を終えたガラス基板に化学強化を施すことによりガラス基板の表面に圧縮応力層を形成する。化学強化に用いる化学強化液としては、例えば、硝酸カリウム(60%)と硝酸ナトリウム(40%)の混合溶液などを用いることができる。化学強化においては、化学強化液を300℃〜400℃に加熱し、洗浄済みのガラス基板を200℃〜300℃に予熱し、化学強化溶液中に3時間〜4時間浸漬することによって行う。この浸漬の際には、ガラス基板の両表面全体が化学強化されるようにするため、複数のガラス基板が端面で保持されるように、ホルダに収納した状態で行うことが好ましい。
【0050】
このように、化学強化溶液に浸漬処理することによって、ガラス基板の表層のリチウムイオン及びナトリウムイオンが、化学強化溶液中の相対的にイオン半径の大きなナトリウムイオン及びカリウムイオンにそれぞれ置換され、ガラス基板が強化される。化学強化されたガラス基板は、硫酸で洗浄した後に、純水、IPA等で洗浄する。
【0051】
化学強化工程を行った後に、半製品基板として出荷先へ出荷することができる。この場合、上述した分類工程を行うことにより、半製品基板の加工状態に基づいてロット毎に複数のグループに振り分け、出荷先へ加工状態が均一な半製品基板を出荷することができる。
【0052】
(8)主表面研磨工程(最終研磨工程)
最終研磨工程として、第2研磨工程を施す。第2研磨工程は、ガラス基板に形成された圧縮応力層に研磨加工を行い、当該ガラス基板の両主表面を鏡面状に仕上げることを目的とする工程である。第2研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、軟質発泡樹脂ポリッシャを用いて、両主表面の鏡面研磨を行う。
【0053】
両面研磨装置としては、上下定盤の主表面部に、一対の研磨パッド(例えば、軟質発泡樹脂ポリッシャ)を貼付して使用することができる。この両面研磨装置においては、上下側定盤に貼付された研磨パッド間にガラス基板を設置し、上下定盤の一方又は双方を移動させて、ガラス基板の両主表面を研磨することができる。また、研磨剤としては、第1研磨工程で用いた酸化セリウム砥粒よりも微細な酸化セリウム砥粒やコロイダルシリカなどを用いることが好ましい。
【0054】
最終研磨工程となる第2研磨工程は、少なくとも出荷先で行われる。つまり、本実施の形態では、最終研磨工程までに半製品基板として出荷元から出荷先へ出荷され、出荷先において以下の磁気ディスク製造工程が行われる。
【0055】
(9)磁気ディスク製造工程(記録層等形成工程)
上述した工程を経て得られたガラス基板の主表面に、例えば、付着層、軟磁性層、非磁性下地層、垂直磁気記録層、保護層、及び潤滑層を順次成膜することにより、垂直磁気記録ディスクを製造することができる。付着層を構成する材料としては、Cr合金などを挙げることができる。軟磁性層を構成する材料としては、CoTaZr基合金などを挙げることができる。非磁性下地層としては、グラニュラー非磁性層などを挙げることができる。垂直磁気記録層としては、グラニュラー磁性層などを挙げることができる。保護層を構成する材料としては、水素化カーボンなどを挙げることができる。潤滑層を構成する材料としては、フッ素樹脂などを挙げることができる。例えば、これらの記録層等は、より具体的には、インライン型スパッタリング装置を用いて、ガラス基板の上に、CrTiの付着層、CoTaZr/Ru/CoTaZrの軟磁性層、CoCrSiOの非磁性グラニュラー下地層、CoCrPt−SiO・TiOのグラニュラー磁性層、水素化カーボン保護膜を順次成膜し、さらに、ディップ法によりパーフルオロポリエーテル潤滑層を成膜することができる。
【0056】
本発明は上記実施の形態に限定されず、適宜変更して実施することができる。例えば、上記実施の形態における材料、サイズ、処理手順、検査方法などは一例であり、本発明の効果を発揮する範囲内において種々変更して実施することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最終工程の前工程までのいずれかの工程が施され、磁気ディスク用基板として半製品の状態である磁気ディスク用半製品基板を出荷する方法であって、
出荷先において、前記磁気ディスク用半製品基板に対して出荷元の出荷前工程の次工程として行われる出荷後工程に用いられる装置に投入される前記磁気ディスク用半製品基板の加工枚数の整数倍単位で出荷が行われることを特徴とする磁気ディスク用半製品基板の出荷方法。
【請求項2】
最終工程の前工程までのいずれかの工程が施され、磁気ディスク用基板として半製品の状態である磁気ディスク用半製品基板を出荷する方法であって、
出荷元から出荷先に出荷される前記磁気ディスク用半製品基板の出荷枚数は管理装置により管理され、
前記管理装置は、前記出荷先において前記出荷元の出荷前工程の次工程として行われる出荷後工程に用いられる装置に投入される前記磁気ディスク用半製品基板の加工枚数を記憶しており、前記管理装置に記憶された前記加工枚数の整数倍の単位で前記磁気ディスク用半製品基板の出荷枚数が管理されることを特徴とする磁気ディスク用半製品基板の出荷方法。
【請求項3】
前記管理装置は、前記出荷前工程で加工処理された前記磁気ディスク用半製品基板の加工状態を検査し、前記磁気ディスク用半製品基板の加工状態に基づいて前記出荷前工程のロット単位で前記磁気ディスク用半製品基板を複数のグループに振り分け、前記出荷先の前記出荷後工程の各ロットに使用される前記磁気ディスク用半製品基板が、前記複数のグループのうち同一グループに振り分けられた前記磁気ディスク用半製品基板から選択されるように出荷を管理することを特徴とする請求項2に記載の磁気ディスク用半製品基板の出荷方法。
【請求項4】
前記管理装置は、前記同一グループに振り分けられた前記磁気ディスク用半製品基板のうち、前記出荷前工程において同一ロットで加工処理が行われた前記磁気ディスク用半製品基板が優先的にまとまって前記出荷後工程の同一ロットに選択されるように出荷を管理することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の磁気ディスク用半製品基板の出荷方法。
【請求項5】
前記最終工程が最終研磨工程であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の磁気ディスク用半製品基板の出荷方法。

【図1】
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【図2】
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