説明

磁気ディスク装置

【課題】ライト動作時に衝撃を受けた際の隣接トラックのデータ消失のリスクを解消することができる磁気ディスク装置を提供する。
【解決手段】マイクロアクチュエータを備え、記憶媒体に情報を書き込むライトヘッドと、記憶媒体から情報を読み出す複数のリードヘッドとを有するヘッドスライダと、リードヘッドとライトヘッドを結ぶ幾何学的中心線が、書き込み対象トラックの同心円に対して接線となるように位置づけ制御するMPU160を備え、かつ、リードヘッドが前記ライトヘッドに対して先行する読み出し位置に備え付けられ、MPU160は、ライトヘッドによる書き込み中であって、同時に、書き込み直前の同一トラック上のデータをリードヘッドで読み出し処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフトラックを検出する磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、磁気ディスク装置などの記憶装置は、ヘッドによって記憶媒体に記憶されているデータを読み出したり、記憶媒体にデータを書き込んだりする。このとき、磁気ディスク装置は、記憶媒体上のサーボ領域に記憶されているサーボ情報に基づいて、ヘッドを特定のトラックにオントラックさせる位置決め制御を行う。
【0003】
具体的には、まず、磁気ディスク装置の一般的な概要について説明すると、ハードディスクを有する磁気ディスク装置は、ホストインタフェースを介して、PC(Personal Computer)等の上位装置と接続されている。また、磁気ディスク装置は、内部において、ディスク媒体に対して同心円上に配置されたトラックにデータの読み書き動作を行う。そして、それぞれのトラックに位置するために、それぞれに同心円を貫くように、放射状に複数のサーボ領域がディスク媒体上に形成されており、リードヘッドがこのサーボ情報を読み出しながら所定のトラックにオントラックさせている。
【0004】
近年、トラック密度の向上に伴い、隣のトラックのデータを消す可能性が増加しているためサーボ領域の数を増やして、サーボサンプリング周波数を上げるなどの対策が採られている。例えば、2,5インチのディスク装置では、周当たり150個程度から250個程度にまで増加している。このため、トラック幅は狭くなり、ライト動作時に受ける衝撃によって、ライトヘッドが隣のトラックにまで移動し、その結果、隣のトラック上で書き込みを行ってしまい、隣のトラックのデータを消失してしまう危険性が増加している。
【0005】
このような事態を避けるために、位置決め制御を高精度に行うための技術として、記憶媒体の表面のヘッドで書き込み処理を行っている際に、記憶媒体の裏面のヘッドでサーボ情報を読み出してヘッドがオントラック状態にあるか否かを監視する技術が手案されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
また、ユーザデータが記憶されるデータトラック間に、サーボ情報が記憶されるサーボトラックを設けて、サーボトラック専用のリードヘッドによってサーボ情報を読み出すことにより、ヘッドをオントラックさせながらリードヘッドでデータを読み出す技術も提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−101520号公報
【特許文献2】特開2008−217896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術では、あくまで記憶媒体の両面から情報を読み出せることが前提となっており、かかる前提条件を満たす記憶媒体にしか適用することができない。また、特許文献2の技術では、サーボトラックの間隔を狭くすることにより、オフトラックの検出を高精度化することができるが、記憶媒体に書き込めるデータ容量を低下させてしまうという問題を招く。
【0009】
また、これらの技術では、完全にオフトラックを防ぐことができない。例えば、ディスク装置のディスクを格納しているディスクエンクロージャーと、その内部にあるヘッドアクチュエータを制御するボイスコイルモータ部は、一般にそれぞれ異なる金属で製造されている。そして、温度変化が加わった場合、それぞれの金属が伸縮するが、それぞれの伸縮の違いによるひずみを開放するために、瞬間的に衝撃が発生することがある。このような衝撃は高周波であり、サーボサンプリング間隔では検出できない。そのため、ライト動作時にこのような衝撃がおきると、誤って隣のトラックに書き込み動作をしてしまう。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ライト動作時に衝撃を受けた際の隣接トラックのデータ消失のリスクを解消することができる磁気ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の開示する磁気ディスク装置は、一つの態様において、マイクロアクチュエータを備え、記憶媒体に情報を書き込むライトヘッドと、前記記憶媒体から情報を読み出す複数のリードヘッドとを有するヘッドスライダと、前記リードヘッドと前記ライトヘッドを結ぶ幾何学的中心線が、書き込み対象トラックの同心円に対して接線となるように位置づけ制御する制御部を備え、かつ、前記リードヘッドが前記ライトヘッドに対して先行する読み出し位置に備え付けられ、前記制御部は、前記ライトヘッドによる書き込み中であって、同時に、書き込み直前の同一トラック上のデータをリードヘッドで読み出し処理すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願の開示する磁気ディスク装置の一つの態様によれば、ライト動作時に衝撃を受けた際の隣接トラックのデータ消失のリスクを解消することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施例1に係る磁気ディスク装置100が有するヘッドの構成を示す図である。
【図2】図2は、オントラック状態のヘッドを示す図である。
【図3】図3は、リードヘッド11とライトヘッド12が、トラックとの間で形成する角度を示す図である。
【図4】図4は、ヘッドとトラックの位置関係を示す図である。
【図5】図5は、リードヘッド11とライトヘッド12の配置関係を示す図である。
【図6】図6は、トラック上におけるヘッドの位置関係を示す図である。
【図7】図7は、トラック上におけるヘッドの位置関係を示す図である。
【図8】図8は、ヘッドスライダ10とトラック30の側面図である。
【図9】図9は、実施例1に係る磁気ディスク装置100の内部構造を示すブロック図である。
【図10】図10は、MPU160が有する機能を示す機能ブロック図である。
【図11】図11は、実施例1に係る磁気ディスク装置100による書き込み処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】図12は、書き込み中止条件の発生を示す図である。
【図13】図13は、実施例2にかかる磁気ディスク装置300の内部構造を示すブロック図である。
【図14】図14は、MPU260が有する機能を示す機能ブロック図である。
【図15】図15は、書き込み中止条件の発生を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願の開示する磁気ディスク装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0015】
まず、実施例1に係る磁気ディスク装置100の外部構成について説明する。図1は、実施例1に係る磁気ディスク装置100が有するヘッドアクチュエータ5の構成を示す図である。図1に示すように、ヘッドアクチュエータ5は、アクチュエータ14と、アーム1と、マイクロアクチュエータ13と、ヘッドスライダ10とを有する。そして、ヘッドスライダ10は、リードヘッド11と、ライトヘッド12を有する。また、本図に示すように、リードヘッド11は、トラック上においてライトヘッド12に先行する位置に配置されている。なお、以下では、リードヘッド11と、ライトヘッド12とを総称して単に「ヘッド」と呼ぶことがある。
【0016】
図2は、オントラック状態のヘッドを示す図である。本図に示すように、リードヘッド11とライトヘッド12を結ぶ中心線がオントラックしているトラック30の接線を成しており、リードヘッド11とライトヘッド12が同一トラック30上にあることを示す。
【0017】
図3は、リードヘッド11とライトヘッド12が、トラックとの間で形成する角度を示す図である。本図では、マイクロアクチュエータ13を用いてヘッドを回転させることにより、リードヘッド11とライトヘッド12を結ぶ中心線Aがオントラックしているトラック30の接線Bを成すことを示している。つまり、マイクロアクチュエータ13により、リードヘッド11とライトヘッド12を結ぶ中心線Aがトラック30との間で形成するヨー角がほぼ0度となるようにすることで、リードヘッド11とライトヘッド12が同一トラック30上に位置させている。
【0018】
なお、厳密には、リードヘッド11とライトヘッド12の間に距離があるため、オントラックしているトラック30と、リードヘッド11とライトヘッド12を結ぶ中心線とは、図4に示すように弧と弦を構成する関係となる。しかし、トラック30が描く円の半径とリードヘッド11とライトヘッド12の間の距離を比較すると、遥かにリードヘッド11とライトヘッド12の間の距離のほうが短いため、ここでは、便宜上中心線がトラック30の接線となるとして説明する。
【0019】
次に、リードヘッド11とライトヘッド12の配置関係について説明する。図5は、リードヘッド11とライトヘッド12が同一トラック30a上にあることを示す図である。一般には、この状態で、ライト動作中に衝撃を受けると、図6に示すように、ヘッドが隣のトラック30bへずれることが想定され、図7のように、隣のトラック30bのデータを消失することが想定される。図7では、隣のトラック30bのデータを消失したところで、オフトラックを検出し書き込み動作が停止したことを示している。
【0020】
図8は、実施の形態1に係る磁気ディスク装置100が有するヘッドスライダ10とトラック30の側面図である。本図に示すように、ヘッドスライダ10が有するリードヘッド11とライトヘッド12は同一トラック30上に配置されるように構成されており、ヘッドスライダ10は矢印の進行方向にトラック30上を進む。このため、ライト動作時にあっても、リードヘッド11は、既に書き込まれたデータを読み出すことが可能となる。矢印Cは、リードヘッド11による既に書き込まれたデータの読み出しを示し、矢印Dは、ライトヘッド12による新規データの書き込みを示す。また、本図に示すように、トラック密度は面毎に、あるいは、同一面であっても、トラック位置によりトラック間隔が可変であるので、同一トラックであれば、書き込み対象のトラックであり、同時に、必ず読み出し可能なトラックとなる。
【0021】
次に、磁気ディスク装置100の内部構造について説明する。図9は、実施例1に係る磁気ディスク装置100の内部構造を示すブロック図である。本図に示すように、磁気ディスク装置100は、ヘッドスライダ10と磁気記憶媒体111と、VCM112と、SPM113と、ヘッドIC(Integrated Circuit)114と、共有バス115と、ホストインタフェース(以下、「ホストIF」という)制御部120と、バッファ制御部130と、バッファメモリ131と、不揮発メモリ132と、フォーマット制御部140と、リードチャネル150と、MPU(Micro Processing Unit)160と、メモリ170と、プログラムメモリ180と、サーボ制御部190と、GAIN監視部200とを有する。
【0022】
磁気記憶媒体111は、金属またはガラス製などの円盤(ディスク)状の基板に磁性膜が形成されており、ユーザデータを記憶するユーザ領域や、サーボ情報を記憶するサーボ領域等を有する。
【0023】
ヘッドスライダ10は、図1に示したように、リードヘッド11と、ライトヘッド12を有する。リードヘッド11は、回転する磁気記憶媒体111の上を浮上しながら、磁気記憶媒体111に記憶されているユーザデータやサーボ情報等を読み出す。また、ライトヘッド12は、回転する磁気記憶媒体111の上を浮上しながら、磁気記憶媒体111へユーザデータ等を書き込む。
【0024】
VCM112は、サーボ制御部190によって駆動されるヘッド駆動機構であり、アーム1を磁気記憶媒体111上で回動させる。SPM113は、サーボ制御部190によって駆動される機構であり、磁気記憶媒体111を回転させる。
【0025】
ヘッドIC114は、図示しないプリアンプを備えており、データの読み出し時に、リードヘッド11によって読み出されたデータ信号を前置増幅する。共有バス115は、磁気ディスク装置100内の各処理部を接続し、処理部間における種々の情報の受け渡しを行う。
【0026】
GAIN監視部200は、リードヘッド11により読み出された信号のGAINの値またはビタビメトリックマージンの値、あるいは、GAINの値の変化率またはビタビメトリックマージンの値の変化率またはその他の信号品質を確認できる値を検出する。
【0027】
ホストIF制御部120は、パーソナルコンピュータ(PC)等の上位装置に接続され、上位装置との間の通信を制御する。バッファ制御部130は、バッファメモリ131を制御する。バッファメモリ131は、上位装置と磁気ディスク装置100との間でやり取りされる情報などを一時的に記憶する。
【0028】
フォーマット制御部140は、上位装置と磁気ディスク装置100との間で転送されるデータのエラーチェックなどを行う。例えば、フォーマット制御部140は、データ読み出し時に、リードチャネル150からデータを受け付け、必要に応じてかかるデータのエラー訂正を行い、バッファ制御部130へ出力する。また、例えば、フォーマット制御部140は、データ書き込み時に、ホストIF制御部120を介して上位装置からデータを受け付け、かかるデータにエラー訂正コード等を追加して、リードチャネル150へ出力する。
【0029】
リードチャネル150は、上位装置と磁気ディスク装置100との間で転送されるデータをAD変換したり、変調および復調したりする。例えば、リードチャネル150は、データの読み出し時に、ヘッドIC114から出力されるデータ信号を増幅し、AD変換および復調などの所定の処理を施す。また、例えば、リードチャネル150は、データの書き込み時に、フォーマット制御部140から入力されたデータをコード変調したりする。
【0030】
プログラムメモリ180は、フラッシュROMとRAMなどを用いたファームウェア制御に必要なパラメータを格納する。
【0031】
メモリ170および不揮発メモリ132は、MPU160において動作する所定の制御プログラム(ファームウェアプログラム)や種々の制御用のデータを格納する。サーボ制御部190は、MPU160から入力される指示に従って、VCM112およびSPM113を駆動する。例えば、サーボ制御部190は、MPU160からVCM制御信号を入力された場合に、かかるVCM制御信号に基づいて、VCM112を駆動する。
【0032】
MPU160は、ファームウェアプログラムにより磁気ディスク装置100の主制御を行う。すなわち、MPU160は、上位装置からのコマンドを解読して各処理部を制御し、磁気記憶媒体111のデータの読み書きを統括制御する。なお、MPU160は、MCU(Micro Controller Unit)やCPU(Central Processing Unit)であってもよい。
【0033】
ここで、MPU160が有する機能について説明する。図10は、MPU160が有する機能を示す機能ブロック図である。本図に示すように、MPU160は、位置決め制御部161と、読み取り部162と、書き込み部163と、GAIN値取得部164と、判定部165と、書き込み中止実行部166と、書き込み再開実行部167とを主に有する。
【0034】
位置決め制御部161は、上位装置からコマンドを受け付けると、コマンドを解析して、データ読み出しまたはデータ書き込みするための磁気記憶媒体111上の目標位置を算出する。そして、リードヘッド11によって磁気記憶媒体111から読み出されたサーボ情報に基づいて、ヘッドの現在位置を算出する。
【0035】
そして、位置決め制御部161は、ヘッドの現在位置から目標位置までの距離に基づいて、VCM112を駆動させるための制御信号(以下、「VCM制御信号」という)を生成し、生成したVCM制御信号をサーボ制御部190へ出力する。そして、VCM112によってアーム1が磁気記憶媒体111上で回動することにより、ヘッドの位置決めを行う。
【0036】
読み取り部162は、リードヘッド11により読み取られた磁気記憶媒体111に記憶されているユーザデータやサーボ情報等を読み取る。
【0037】
書き込み部163は、ホストIF制御部120から受信した書き込み情報に従って、ライトヘッド12により磁気記憶媒体111に書き込み情報を書き込む。
【0038】
GAIN値取得部164は、GAIN監視部200により検出されたGAINまたはビタビメトリックマージンの値をGAIN監視部200から取得する。
【0039】
判定部165は、GAIN監視部200により検出されたGAINまたはビタビメトリックマージンの値が所定の値以上であるか否かを確認し、所定の値以上である場合に、オフトラックしているとして書き込みを中止する条件である書き込み中止条件を満たすと判定する。また、GAINまたはビタビメトリックマージンの値が所定の値以上でなく、書き込み中止条件を満たしていない場合であっても、読み取り部162により読み取られたサーボ情報等により、現在位置および目標位置を照合し、書き込み中止条件を満たすか否かを判定する。
【0040】
書き込み中止実行部166は、判定部165により書き込み中止条件を満たすと判定された場合に、書き込み部163による書き込みを中止させる。
【0041】
書き込み再開実行部167は、書き込み再開制御を行う。具体的には、書き込み再開実行部166は、現在位置と目標位置との位置偏差がゼロになるようにVCM制御信号を生成し、生成したVCM制御信号をサーボ制御部190へ出力する。そして、書き込み実行制御部167は、ヘッドをオントラックさせた後に、データの読み出し処理または書き込み処理を再開させる。
【0042】
次に、実施例1に係る磁気ディスク装置100による書き込み処理について説明する。図11は、実施例1に係る磁気ディスク装置100による書き込み処理の手順を示すフローチャートである。
【0043】
読み取り部162は、ホストIF制御部120からの読み取り指示を受信し、リードヘッド11によりセクタデータの読み出し処理を開始する(ステップS10)。続いて、書き込み部163は、ホストIF制御部120からの書き込み指示を受信し、磁気記憶媒体111にセクタデータの書き込み処理を開始する(ステップS11)。
【0044】
GAIN値取得部164は、リードヘッド11により読み出された信号のGAINの値またはビタビメトリックマージンまたはその他の信号品質を確認できる値を検出する(ステップS12)。
【0045】
判定部165は、GAIN監視部200から検出されたGAINまたはビタビメトリックマージンの値を受信し、当該値が閾値を超えるか否かを確認し、書き込み中止条件を満たすか否かを判定する(ステップS13)。
【0046】
ここで、具体的な判定方法を説明する。書き込み中止条件は、GAINまたはビタビメトリックマージンの値の上昇の変化率が所定の閾値を超えた場合に、書き込み中止条件を満たすとするものである。図12は、書き込み中止条件の発生を示す図である。図12は、GAINまたはビタビメトリックマージンの値と閾値との関係を示す。本図では、横軸は時間(Time)を示し、縦軸はGAINまたはビタビメトリックマージンの値を示している。ここでは、T1の時点で、GAINまたはビタビメトリックマージンの値が閾値を超えているので、書き込み中止条件が発生したことを示している。
【0047】
判定部165は、書き込み中止条件を満たすと判定した場合には(ステップS13:Yes)、エラー停止を書き込み中止実行部166に送信し、書き込み中止実行部166は、書き込み中止を実行する(ステップS16)。
【0048】
一方、判定部165は、書き込み中止条件を満たさないと判定した場合には(ステップS13:No)、サーボ情報による書き込み中止条件を満たすか否かを判定する(ステップS14)。判定部165は、サーボ情報による書き込み中止条件を満たすと判断した場合には(ステップS14:Yes)、エラー停止を書き込み中止実行部166に送信し、書き込み中止実行部166は、書き込み中止を実行する(ステップS16)。なお、ここでは、書き込み中止条件は、サーボ情報に基づき判断するが、書き込み中止条件を判定する手段であれば他の従来技術を用いることも可能である。
【0049】
一方、書き込み部163は、判定部165により、サーボ情報による書き込み中止条件を満たさないと判定された場合は(ステップS14:No)、書き込みが完了したか否かを確認し(ステップS15)、完了している場合は(ステップS15:Yes)書き込みを終了する。なお、書き込みが完了していない場合は(ステップS15:No)、ステップS12に戻り、判定部165による判定処理が繰り返される。
【0050】
なお、GAIN監視部200により検出される信号は、既に書き込まれたデータであるが、データは一般にはセクタ内に満遍なく書き込まれているわけではなく、セクタパルス近辺には書き込まれていないのが一般的である。従って、読み出し時のGAINまたはビタビマージンの値の検出は、通常のデータの読み出しタイミングと同じタイミングで実施する。つまり、PLL領域、データ領域およびPAD領域において、この判断処理を行う。これにより、リードヘッドでの従来の読み出し処理をそのまま利用することができる。
【0051】
また、磁気記憶媒体111のうちセクタの交代処理用にあらかじめ確保された領域については、予め工場にて初期値のデータを書き込みしておくことができる。これにより、交代処理により、交代先となる領域にセクタデータを書き込みする場合には、1セクタ単位で書き込みが行われるが、予め書き込みしておいた初期データのGAINまたはビタビマージンを確認することで、オフトラック検出に利用可能となる。
【0052】
なお、現在のディスク装置では1サーボフレーム内に10セクタ程度以上のセクタも存在しうるが、本方式を用いればサーボサンプリング周波数よりも高い周波数の衝撃からもデータを守ることができるようになる。
【0053】
上述してきたように、本実施例1では、ライトヘッドによる書き込み処理に先行して、リードヘッドによるオフトラック検出を行い、オフトラックを検出した場合、ライト動作を中止する。これにより、ライト動作時に衝撃を受け、オフトラックした場合に書き込みが継続されて隣接トラックのデータを消失するリスクを解消できるため、ディスク装置の品質を向上することができる。
【実施例2】
【0054】
実施例1に係る磁気ディスク装置100においては、GAIN値取得部164は、GAIN監視部200よりGAINまたはビタビメトリックマージンの値を取得し、判定部165は、当該値に基づいて、書き込み中止条件を満たすか否かを判定した。これに対し、本実施例では、GAINまたはビタビメトリックマージンの値の上昇の変化率に基づいて、書き込み中止条件を満たすか否かを判定する。
【0055】
実施例2に係る磁気ディスク装置300の外部構成および内部構成は実施例1に係る磁気ディスク装置100と同様であるため説明を省略する。
【0056】
まず、本実施例における磁気ディスク装置の内部構造について説明する。図13は、実施例2にかかる磁気ディスク装置300の内部構造を示すブロック図である。本図に示すように、磁気ディスク装置300は、ヘッドスライダ10と磁気記憶媒体111と、VCM112と、SPM113と、ヘッドIC114と、共有バス115と、ホストIF制御部120と、バッファ制御部130と、バッファメモリ131と、不揮発メモリ132と、フォーマット制御部140と、リードチャネル150と、MPU260と、メモリ170と、プログラムメモリ180と、サーボ制御部190と、GAIN監視部200とを有する。
【0057】
実施例2に係る磁気ディスク装置300の内部構成は、MPU260以外の構成は、実施例1に係る磁気ディスク装置100と同様であるため説明を省略する。以下、MPU260について以下説明する。
【0058】
図14は、MPU260が有する機能を示す機能ブロック図である。本図に示すように、MPU260は、位置決め制御部161と、読み取り部162と、書き込み部163と、GAIN値取得部264と、判定部265と、書き込み中止実行部166と、書き込み再開実行部167とを主に有する。ここでは、実施例1と異なる機能であるGAIN値取得部264と、判定部265について説明する。
【0059】
GAIN値取得部264は、GAIN監視部200により検出されたGAINまたはビタビメトリックマージンの値の変化率、即ちGAINまたはビタビメトリックマージンの時間微分をGAIN監視部200から取得する。
【0060】
判定部263は、GAIN監視部200により検出されたGAINまたはビタビメトリックマージンの値の変化率が所定の値以上であるか否かを確認し、所定の値以上である場合に、中止条件を満たすと判定する。さらに、読み取り部162により読み取られたサーボ情報により、現在位置および目標位置を照合し、書き込み中止条件を満たすか否かを判定する。なお、ここでは、書き込み中止条件は、サーボ情報に基づき判断するが、書き込み中止条件を判定する手段であれば他の従来技術を用いることも可能である。
【0061】
次に、実施例2に係る磁気ディスク装置300による書き込み処理について説明する。実施例2に係る磁気ディスク装置300による書き込み処理の手順は、実施例1に係る磁気ディスク装置による書き込み処理の手順と概要は同様であるため、図11を用いて実施例1との相違点を説明する。
【0062】
本実施例では、ステップS12において、GAIN値取得部264は、GAINの値の変化率またはビタビメトリックマージンの値の変化率を検出する(ステップS12)。
【0063】
また、本実施例では、ステップS13において、判定部265は、GAIN監視部200から検出されたGAINまたはビタビメトリックマージンの値の上昇の変化率を受信し、当該値が閾値を超えるか否かを確認し、書き込み中止条件を満たすか否かを判定する(ステップS13)。
【0064】
図15は、GAINまたはビタビメトリックマージンの値の上昇の変化率と閾値との関係を示す。本図では、横軸に時間(Time)を、縦軸にGAINまたはビタビメトリックマージンの変化率を示している。ここでは、T2の時点で、GAINまたはビタビメトリックマージンの値の上昇の変化率が閾値を超えており、T2の時点で書き込み中止条件が発生したことを示している。
【0065】
上述してきたように、本実施例1では、ライトヘッドによる書き込み処理に先行して、リードヘッドによるオフトラック検出を行い、オフトラックを検出した場合、ライト動作を中止する。これにより、ライト動作時に衝撃を受け、オフトラックした場合に書き込みが継続されて隣接トラックのデータを消失するリスクを解消できるため、ディスク装置の品質を向上することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 アーム
5 ヘッドアクチュエータ
10 ヘッドスライダ
11 リードヘッド
12 ライトヘッド
30 トラック
31 セクタ
100、300 磁気ディスク装置
111 磁気記憶媒体
112 VCM
113 SPM
114 ヘッドIC
115 共有バス
120 ホストIF制御部
130 バッファ制御部
131 バッファメモリ
132 不揮発メモリ
140 フォーマット制御部
150 リードチャネル
160、260 MPU
161 位置決め制御部
162 読み取り部
163 書き込み部
164、264 GAIN値取得部
165、265 判定部
166 書き込み中止実行部
167 書き込み再開実行部
170 メモリ
180 プログラムメモリ
190 サーボ制御部
200 GAIN監視部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロアクチュエータを備え、記憶媒体に情報を書き込むライトヘッドと、前記記憶媒体から情報を読み出す複数のリードヘッドとを有するヘッドスライダと、
前記リードヘッドと前記ライトヘッドを結ぶ幾何学的中心線が、書き込み対象トラックの同心円に対して接線となるように位置づけ制御する制御部を備え、かつ、前記リードヘッドが前記ライトヘッドに対して先行する読み出し位置に備え付けられ、
前記制御部は、前記ライトヘッドによる書き込み中であって、同時に、書き込み直前の同一トラック上のデータをリードヘッドで読み出し処理すること、
を特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記リードヘッドによる読み出し時のゲインまたはビタビメトリックマージンである信号値を測定し、所定の値以上の値を検出した場合に、書き込み動作を停止すること、
を特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記制御部は、測定した前記信号値の時間微分が所定の値以上の値であることを検出した場合に、書き込み動作を停止すること、
を特徴とする請求項2に記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
前記制御部は、一定期間所定の値以上の値を検出した場合に、書き込み動作を停止すること、
を特徴とする請求項2または3に記載の磁気ディスク装置。
【請求項5】
前記制御部は、利用者のセクタデータが記録可能な領域で読み出し処理すること、
を特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の磁気ディスク装置。
【請求項6】
前記制御部は、交代処理用にあらかじめ定められた領域で読み出し処理すること、
を特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の磁気ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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