磁気ヘッド
【課題】より強い高周波磁場を印加することができるアシスト型記録ヘッドを提供する。
【解決手段】実施形態によれば、高周波アシスト法を利用する記録ヘッドは、マイクロ波磁場印加部と、記録磁極とを含む。前記マイクロ波磁場印加部は、記録媒体の記録トラックに対する書き込みを行うために、互いに位相同期された複数のスピントルク発振素子により形成される。前記記録磁極は、前記マイクロ波磁場印加部による前記書き込みを補助する。
【解決手段】実施形態によれば、高周波アシスト法を利用する記録ヘッドは、マイクロ波磁場印加部と、記録磁極とを含む。前記マイクロ波磁場印加部は、記録媒体の記録トラックに対する書き込みを行うために、互いに位相同期された複数のスピントルク発振素子により形成される。前記記録磁極は、前記マイクロ波磁場印加部による前記書き込みを補助する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スピントルク発振素子を用いた磁気ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
垂直磁化媒体の開発とTMR素子(トンネル磁気抵抗効果素子)を磁気センサーとして用いた読み出しヘッド(TMRヘッド)の採用により、磁気記録における記録密度は近年年率40%の速度で上昇を続けており2009年時点で500Gb/in2の記録密度が達成されている。
【0003】
(1)記録密度を更に飛躍的に高める方策としてパターン化媒体が従来から知られているが、最近では記録層を多層化した3次元記録の方法が提案されている。この方法では、各層毎に磁気共鳴周波数が異なる記録媒体を用い、スピントルク発振素子と磁極を併用して、各層への選択的書き込みと、各層からの選択的読み出しを行う。
【0004】
(2)一方、今後記録密度の更なる上昇に伴って現在のものに比較してより微小な磁性粒子で構成された媒体が用いられることになる。このような媒体の記録の安定性を確保するためには、熱ゆらぎによる微小粒子磁化の反転を防止するために、極めて大きな保磁力をもつ磁性粒子を用いることが必要となる。しかしながら、このような高保磁力媒体では記録磁極による書き込みが困難となり、書き込み時に記録磁極が発生する磁場に加えて他のエネルギーを同時に供給するアシスト記録法が必要になると考えられている。アシスト記録法においては、GHzの高速性と数10nmの局所性を併せ持つ大きなパワー密度のエネルギー供給が必要となるが、レーザーアシスト法、マイクロ波アシスト法などの方法が提案されている。中でもスピントルク発振素子を用いたマイクロ波アシスト法が近年大きな注目を集め、多くの研究機関で開発が進められている。スピントルク発振素子を用いたマイクロ波アシスト法は、フリー層磁化の歳差運動に伴う高周波磁場(マイクロ波磁場)を用い、媒体による高周波磁場の共鳴吸収現象を利用する方法である。この方法は、所望の媒体ビットに選択的にパワーを供給できる長所を持っているが、アシスト効果を高めるためには、強い高周波磁場を媒体ビットに印加することが必要となる。強い高周波磁場を発生する方法として、従来は厚いフリー層を含む発振素子の開発が試みられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−326006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(1)従来の3次元記録再生技術においては、多層化された磁気記録媒体への書き込み又は読み出しを各層ごとに逐次行うため、迅速な読み出し又は書き込みができないという課題があった。
【0007】
本実施形態は、上述した事情を考慮してなされたものであり、多層化された磁気記録媒体からの読み出しをより速くすることができる磁気ヘッドを提供することを目的とする。また、多層化された磁気記録媒体への書き込みをより速くすることができる磁気ヘッドを提供することを目的とする。
【0008】
(2)従来のアシスト型記録ヘッドでは、厚いフリー層を含む発振素子を安定して動作させることは容易ではなく、強い高周波磁場を印加するより効果的な手段が必要とされている。
【0009】
本実施形態は、上述した事情を考慮してなされたものであり、より強い高周波磁場を印加することができるアシスト型記録ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)実施形態によれば、互いに共鳴周波数が異なる磁性体により形成され積層される複数の磁性層を含み、それぞれの磁性層が記録トラックを含む磁気記録媒体に対して、記録トラックの媒体の磁気共鳴現象を利用して記録の読み出し又は書き込みを行う三次元磁気記録再生装置の磁気ヘッドは、スピントルク発振素子と、補助磁極とを含む。前記スピントルク発振素子は、同時に複数の異なる周波数で発振可能である。前記補助磁極は、前記スピントルク発振素子による前記読み出し又は書き込みを補助する。
【0011】
(2)実施形態によれば、高周波アシスト法を利用する記録ヘッドは、マイクロ波磁場印加部と、記録磁極とを含む。前記マイクロ波磁場印加部は、記録媒体の記録トラックに対する書き込みを行うために、互いに位相同期された複数のスピントルク発振素子により形成される。前記記録磁極は、前記マイクロ波磁場印加部による前記書き込みを補助する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】スピントルク発振素子を用いた三次元磁気記録再生装置の基本構成の概要を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態に係るスピントルク発振素子及びリング型磁極を用いた三次元記録媒体からの情報の読み出し方法に関するトラック方向と平行の断面図。
【図3】第1の実施形態に係るスピントルク発振素子及びリング型磁極を用いた三次元記録媒体からの情報の読み出し方法に関するトラック方向と垂直の断面図。
【図4】比較例に係るスピントルク発振素子及びリング型磁極を用いた三次元記録媒体からの情報の読み出し方法に関するトラック方向と垂直の断面図。
【図5】第1の実施形態に係る並列接続されたスピントルク発振素子の構成例を示す図。
【図6】第1の実施形態に係る多層の記録を一括して読み出すための回路の構成例を示す図。
【図7】第1の実施形態に係る直列接続されたスピントルク発振素子の構成例を示す図。
【図8】第1の実施形態に係る直列接続されたスピントルク発振素子の構成例を示す図。
【図9】第1の実施形態に係る直列接続されたスピントルク発振素子の構成例を示す図。
【図10】具体例で用いられる素子の構成を示す図。
【図11】具体例で用いられる素子の発振スペクトルを示す図。
【図12】第2の実施形態に係るマイクロ波アシスト型磁気ヘッドの第1の基本構成例を示す図。
【図13】第2の実施形態に係るマイクロ波アシスト型磁気ヘッドの第2の基本構成例を示す図。
【図14】アシスト用スピントルク発振素子の基本構成の概要を示すブロック図。
【図15】比較例に係る厚いフリー層のスピントルク発振素子の構成例を示す図。
【図16】第2の実施形態に係る4個のナノピラー型発振素子の積層構造の例を示す図。
【図17】第2の実施形態に係る人工反強磁性層を用いた発振素子の積層構造の例を示す図。
【図18】第2の実施形態に係るスピン波で結合したナノコンタクト型素子の構成例を示す図。
【図19】具体例における積層構造の発振素子を用いた記録ヘッドの構成例を示す図。
【図20】具体例で用いられる素子の発振スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る磁気ヘッドについて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
【0014】
はじめに、図1を参照しながら、スピントルク発振素子を利用した三次元磁気記録再生装置の基本構成について説明する。
【0015】
図1に示されるように、三次元磁気記録再生装置100は、スピントルク発振素子101と、DC電流源121と、負荷122とを含む。なお、本実施形態では、スピントルク発振素子に加えて図示しない補助磁極(記録磁極)を利用するが、補助磁極を利用する場合については後で説明する。
【0016】
スピントルク発振素子101は、その基本的な構成として、模式的に示したように、固定層(磁化固定層)102、非磁性層103、そして、フリー層104の順番から構成される3層構造をもち、数十ナノメートルのサイズをもつ素子である。固定層102の上層には上部電極105、フリー層104の下層には下部電極106が積層され、両電極にスピントルク発振素子101が挟まれた状態となる。なお、本実施形態で用いるスピントルク発振素子101の具体的な構成例は後で説明する。
【0017】
スピントルク発振素子101は、磁気記録媒体(図示していないが、下部電極106の下方に位置される)から情報を読み出すとき際の読み出し用発振素子として使用されることができ、または、磁気記録媒体に情報を書き込む際のアシスト用(書き込み用)発振素子として使用されることができる。
【0018】
なお、スピントルク発振素子101の記録媒体に対する向きは、図1に示す方法で用いる方法以外に、図1のスピントルク発振素子101の向きを右若しくは左に90度回転させて用いる方法、図1のスピントルク発振素子101の向きを180度回転させて用いる方法も可能である。この点は、これから説明する本実施形態の各種スピントルク発振素子についても同様である。
【0019】
固定層102は、磁化膜として、例えばCoあるいはCo/非磁性体積層膜あるいはCoCrTa、CoCrTaPt、CoTaNbなどのCoCr系合金が使用されるが、これに限らず、Co/Pd,Co/Pt、Co−Cr−Ta/PdなどのCo多層膜、CoCrPt系合金、FePt系合金、さらに希土類を含むSmCo系合金やTbFeCo合金を使用してもよい。また、固定層102は、磁化の向きが固定されている。
【0020】
非磁性層103は、例えばAl−0(アルミニウム酸化膜)などのトンネル絶縁膜あるいはCuなどの非磁性金属を採用することができる。
【0021】
フリー層104は、例えばFe、FeCo合金などの大きな飽和磁化をもつ磁性材料が使用される。これは、強い高周波磁場を得るには、飽和磁化Mが大きいことが必要だからである。また、フリー層104は、磁化の向きが自由に回転する。
【0022】
DC電流源121は、スピントルク発振素子101に直流電流を流す。
【0023】
負荷122は、歳差運動するフリー層104の磁化と固定層102の磁化との間のTMR効果(トンネル磁気抵抗効果)により、発生する数GHzから数十GHzの高周波電圧の値を読み取るために使用される。
【0024】
記録媒体からの読み出しの際のスピントルク発振素子101の動作と記録媒体への書き込みの際の動作について簡単に説明する。
【0025】
まず、DC電流源121からスピントルク発振素子101へ直流電流を流す。この直流電流の値が閾値以上の値である場合、スピントルク発振素子101に含まれるフリー層104の磁化Mが歳差運動を開始する。フリー層104の磁化Mが歳差運動する状態を図1右下に示す。このように電流ゼロの場合の磁化の向きを基準とした歳差運動が起こる。
【0026】
歳差運動するフリー層104の磁化と固定層102の磁化との間には、TMR効果により数GHz〜数十GHzの高周波電圧が発生し、負荷122に出力される。加えて、このスピントルク発振素子101の近傍には、フリー層磁化の歳差運動に伴う高周波(回転)磁場(数GHz〜数十GHz)も発生する。三次元磁気記録再生装置100では、上記電圧(電力)出力及び高周波磁場の両方を利用して、記録の書き込み/読み出しを行う。なお、高周波磁場は、マイクロ波磁場または近接場ともいう。
【0027】
なお、記録を行う場合と読み出しを行う場合との違いは、磁化反転を生じさせるために記録磁極による磁場及び発振素子による高周波磁場をともに読み出しの場合よりも強く印加することである。
【0028】
(1)第1の実施形態
第1の実施形態は、媒体の磁気共鳴現象を利用して記録の読み出しを行う3次元磁気記録において、スピントルク発振素子を磁気センサーとして利用して記録層を多層化した媒体からの読み出しを行うにあたって、複数の記録層に対する同時読み出し(一括読み出し)ができるようにするものである。また、媒体の磁気共鳴現象を利用して記録の書き込みを行う3次元磁気記録において、スピントルク発振素子をマイクロ波アシストとして利用して記録層を多層化した媒体への書き込みを行うにあたって、複数の記録層に対する同時書き込み(一括書き込み)ができるようにするものである。
【0029】
まず、スピントルク発振素子と補助磁極を用いた磁気ヘッド(読み出し用磁気ヘッド/書き込み用磁気ヘッド)の基本的な構成・動作について説明する。
【0030】
図2に、本実施形態のスピントルク発振素子と補助磁極を用いた磁気ヘッドのトラック方向の断面図を示し、図3に、そのトラックに垂直方向の断面図を示す。
【0031】
また、図4に、比較例に係る磁気ヘッドについて、トラックに垂直方向の断面図を示す(なお、比較例に係る磁気ヘッドのトラック方向の断面図は、図2と同じようになるので、省略する)。
【0032】
この磁気ヘッドの構造は、補助磁極150と、その近傍にあるスピントルク発振素子101とで構成される。磁気ヘッドは、磁気シールド180内に納められていても良い。詳しくは後述するが、このスピントルク発振素子101は、同時に複数の周波数を発信可能である。
【0033】
ここでは、補助磁極150としてリング型磁極を用いる場合を例にとって説明する。
【0034】
図中、200は記録媒体である。ここでは、記録媒体200として、共鳴周波数の異なる4層の面内磁化媒体(図中、221〜224)を用いる場合を例にとって説明する。この面内磁化媒体においては、既存の長手記録とは異なり、各ビットの磁化が記録トラックに垂直な方向を向いている。もちろん、2層、3層又は5層以上の記憶層をもつ記録媒体についても、本実施形態は適用可能である。
【0035】
三次元記録化された記録媒体200は、例えば、情報が記録された磁性層201と、非磁性層202とを交互に積層することにより構成される。非磁性層202で分離された各磁性層201は、それぞれ異なる共鳴周波数(本具体例では、f1,f2,f3,f4)をもつ磁性体で構成されており、記録媒体200のうち磁気ヘッドに最も近い磁性層201から最も遠い磁性層201へ向かって、順次、共鳴周波数の高い磁性層201が配置される。本具体例では、共鳴周波数は、f1<f2<f3<f4の順に大きくなる。
【0036】
図2及び図3は、磁気ヘッドがスピントルク発振素子101を一つ備える場合を例示している(この場合、スピントルク発振素子101は、読み出しヘッドの読み出し用発振素子として使用されるか、または、記録ヘッドのアシスト用発振素子として使用される)が、磁気ヘッドが、読み出し用発振素子として使用するスピントルク発振素子と、アシスト用発振素子として使用するスピントルク発振素子の二つのスピントルク発振素子を備える構成も可能である(この場合、例えば、図2及び図3において、スピントルク発振素子101からみて補助磁極150の反対側にもう一つのスピントルク発振素子が設けられる)。
【0037】
以下、スピントルク発振素子101を読み出し用発振素子として使用する場合について説明する。
【0038】
最初に、複数の記録層のうちの一つの記録層にあるビットを読み出す場合について説明する。
【0039】
スピントルク発振素子101に加えて補助磁極150を利用する場合に、この補助磁極150は、記録層内の所望のビットを選択するために使用され、補助磁極150により印加される磁場は、ビットの磁化を反転させない程度に弱いことが必要である。選択されたビットの磁気共鳴現象は、スピントルク発振素子101の出力電圧の低下として検知されるので、これによって読み出しがなされる。
【0040】
ここで、補助磁極150の直下にある4層の記録層のうちの一つ(例として、第4層の記録層(共鳴周波数=f4)とする)にある特定のビットを読み出す場合を考える。第4層のこの特定のビットは、補助磁極150によって、第4層の他のビットに比較してより強い磁場が印加され、共鳴周波数がf4からf4*に変化する。よって、スピントルク発振素子101の周波数をf4*に設定することにより、第4層の補助磁極150の直下のビットに選択的に共鳴吸収を生じさせることができる。
【0041】
ところで、スピントルク発振素子101により発生する高周波磁場は、記録媒体200の磁化の向きにかかわらず磁気共鳴吸収を生じさるが、補助磁極150を用いることにより一方の向きに磁気共鳴吸収を生じさせることができる。すなわち、補助磁石の発生する磁場が記録媒体200の磁化に作用すると、磁場に平行な磁化の共鳴周波数は、当該記録層の共鳴周波数fからf*=f+Δfへ、反平行な磁化の共鳴周波数はfからf*=f−Δfへそれぞれ変化する。したがって、スピントルク発振素子101の周波数をf+Δf(上記第4層の場合、f4+Δf4)に設定すれば平行な磁化に、f−Δf(上記第4層の場合、f4−Δf4)に設定すれば反平行な磁化に、それぞれ磁気共鳴を誘起することができる。よって、所望のビットを選択的に読み出すことが可能となる。
【0042】
なお、補助磁極を用いる場合には、スピントルク発振素子101を読み出したいビットの直上に設置することが難しい場合がある。しかし、公知であるように共鳴状態にある磁性体は、その高周波透磁率が非共鳴状態のものに比べて1桁以上大きい。その結果、スピントルク発振素子101が読み出したいビットの直上に設置されていない場合でも、高周波磁場の磁束が読み出したいビットに集中し、このビットに十分強い高周波磁場が印加される。なお、図2及び図3に示す補助磁極150は、スピントルク発振素子101に近接させているが、これに限らず、補助磁極150及びスピントルク発振素子101の位置関係は、スピントルク発振素子101が射出する電磁波が読み出しを行うビットに届く位置にあれば良い。
【0043】
次に、図4の比較例と、図3の本実施形態の読み出し動作に関する相違について説明する。
【0044】
図4の比較例のスピントルク発振素子は、単一周波数の発振素子を補助磁極150と併用し、逐次、各層の記録の読み出しを行うものである。
【0045】
よって、例えば、共鳴周波数の異なる4層の面内磁化媒体を用いる場合に、比較例のスピントルク発振素子9001では、4層のそれぞれについて、かつ、平行磁化と反平行磁化のそれぞれについて、逐次、読み出しを行うので、計8回の読み出しが必要になる。
【0046】
これに対して、図3の本実施形態では、異なる複数の周波数を発振するスピントルク発振素子101を補助磁極150と併用し、異なる共鳴周波数をもつ複数層媒体からの同時読み出し(一括読み出し)を行うことが可能である。例えば、共鳴周波数の異なる4層の面内磁化媒体を用いる場合に、スピントルク発振素子101が同時に4つの周波数を発振できるものであるならば、4層一括して読み出しを行うことができるので、平行磁化と反平行磁化のそれぞれについて1回ずつ読み出しを行えば良く、すなわち、全体で計2回の読み出し動作を行えば良いことになる。この場合に、例えば、第1層〜第4層の平行磁化について一括読み出しを行う第1のフェイズと、第1層〜第4層の反平行磁化について一括読み出しを行う第2のフェイズとを交互に実行しても良いし、他の方法も可能である。
【0047】
また、例えば、スピントルク発振素子101が同時に2つの周波数を発振できるものである場合に、4層に対して2層同時読み出しを2回行うとともに、平行磁化と反平行磁化のそれぞれについて1回ずつ読み出しを行っても良く、すなわち、全体で計4回の読み出動作を行えば良いことになる。
【0048】
また、図3の本実施形態のスピントルク発振素子101について、同時に発信可能な周波数の個数を上限として、任意の1又は複数の記録層について(かつ、個々の記録層ごとに、平行磁化と反平行磁化とのうちの任意のものについて)、選択的に読み出しを行うことができる(図3では、第2層と第4層を選択的に読み出す場合を例示した)。
【0049】
なお、異なる複数の周波数を発振する(読み出し用発振素子として使用する)スピントルク発振素子101の具体的な構成例については後で説明する。
【0050】
以下、スピントルク発振素子101をアシスト用発振素子として使用する場合について説明する。
【0051】
最初に、複数の記録層のうちの一つの記録層にビットを書き込む場合について説明する。
【0052】
アシスト型記録ヘッドの構造は、補助磁極150を用いた読み出しヘッドの構造と同じである。読み出しの場合との相違は、磁化反転を生じさせるために記録磁極(補助磁極)150による磁場及び発振素子による高周波磁場を、ともに読み出しの場合よりも強く印加することである。
【0053】
記録磁極150の直下にある第n層のビットの磁化を反転する場合の一例を説明する。高周波磁場によるアシスト作用(高周波アシスト法ともいう)は2つの原理に基づいて発生する。第1の原理は、高周波磁場による磁化の共鳴反転によるものであり、第2の原理は、高周波磁場による磁性体の共鳴吸収加熱によるものである。前者は減衰定数αの小さな磁性体で形成された媒体において主要な原理となり、後者は減衰定数αの大きな磁性体で形成された媒体において主要な原理となる。
【0054】
第1の原理について簡単に説明する。第n層にある磁性体の異方性磁場Hkより小さな記録ヘッド磁場Hnを、所望のビットの磁化Mと逆向きに印加する。HnはHkより小さいのでこの状態では磁化反転は生じないが、同時に式(1)で表される共鳴周波数の高周波磁場hを、微小磁性発振素子により印加すると磁化Mは歳差運動を始める。
fn=(γ/2π)(HK−Hn) (1)
高周波磁場hが十分大きく
(γ/2π)h>αfn (2)
の関係が満たされれば歳差運動の振幅は時間とともに増大し、最後には磁化Mが反転する。ただし、γは磁気回転比である。
【0055】
記録ヘッドの直下にないビットの磁化や他の記録層のビットの磁化は、式(1)の条件を満たしていないので、高周波磁場に共鳴せず磁化反転は生じない。
【0056】
第2の原理について簡単に説明する。記録媒体に吸収される高周波パワーPは記録媒体の帯磁率の虚数部χ″に依存し、高周波磁場をhとすると下記の式(3)と表される。
【0057】
P=(1/2)χ″h2ω (3)
χ″(ω)は周波数に強く依存し、媒体の共鳴周波数から離れた周波数では小さく1程度であるが、共鳴周波数近くでは10から100程度に増大する。記録媒体の加熱効率は吸収パワーに依存するので、共鳴周波数近くの高周波磁場により記録媒体は強く加熱される。すなわち、記録磁極の直下にある第n層のビットが選択的に加熱され他のビットはほとんど加熱されない。媒体温度が上昇するとレーザーアシストと同様に異方性定数Ku1が減少し、記録ヘッドの磁場により選択的に磁化を反転させることにより書き込みが行われる。
【0058】
これら第1の原理及び第2の原理は典型的な場合であり、多くの現実の系では第1の原理及び第2の原理が共存する状態で磁化反転が生じ、高周波アシスト法により三次元記録媒体の所望のビット磁化を反転させることにより記録媒体に書き込みを行うことができる。
【0059】
図4の比較例と図3の本実施形態の書き込み動作に関する相違については、前述したそれらの読み出し動作に関する相違と同様である。
【0060】
例えば、共鳴周波数の異なる4層の面内磁化媒体を用いる場合に、比較例のスピントルク発振素子9001では計8回の書き込みが必要になるのに対して、図3の本実施形態のスピントルク発振素子101が同時に4つの周波数を発振できるものであるならば、4層一括書き込みを行って、全体で計2回の書き込み動作を行えば良いことになる。また、例えば、スピントルク発振素子101が同時に2つの周波数を発振できるものであるならば、2層同時書き込みを行って、全体で計4回の書き込み動作を行えば良いことになる。
【0061】
また、図3の本実施形態のスピントルク発振素子101について、同時に発信可能な周波数の個数を上限として、任意の1又は複数の記録層について(かつ、個々の記録層ごとに、平行磁化と反平行磁化とのうちの任意のものについて)、選択的に書き込みを行うことができる(図3では、第2層と第4層を選択的に書き込む場合を例示した)。
【0062】
なお、異なる複数の周波数を発振する(アシスト用発振素子として使用する)スピントルク発振素子101の具体的な構成例については後で説明する。
【0063】
次に、読み出し用発振素子として使用するスピントルク発振素子101の構成例について説明する。
【0064】
記録媒体からの記録の読み出しは図1に示されるように素子の出力電圧の変化を測定することによって行われることから、読み出し用発振素子として使用するスピントルク発振素子101には、電圧出力の大きいTMR型素子を利用するのが好ましい。
【0065】
ただし、TMR型素子は抵抗が大きいことから、測定回路とのインピーダンス整合を考慮して、図3のスピントルク発振素子101は、異なる発振周波数をもつ複数のTMR型素子を並列接続して用いることが好ましい。
【0066】
図5に、複数の記録層(例として、4つの記録層)に対応する素子が並列接続されたスピントルク発振素子101の例を示す。図中、121はDC電流源を示し、1001〜1004はそれぞれ第1記録層用の読み出し用発振素子(共鳴周波数=f1)〜第4記録層用の読み出し用発振素子(共鳴周波数=f4)を示す。また、個々の素子の構成例を、図5の右側に示す。図中、102は固定層、103は非磁性層、104はフリー層、107は反強磁性層(交換バイアス)である。
【0067】
図6に、一括読み出しする場合に各記録層ごとに発生し得る高周波電圧の値を読み取るための回路構成の例を示す。この例では、各記録層用に高周波電圧信号を通過させるバンドパスフィルタ141〜144を設ける。
【0068】
例えば、第1記録層に関して発生された高周波電圧は、第1記録層用のバンドパスフィルタ141を通過して、図示しない第1記録層用の負荷に導かれて、該高周波電圧の値を読み取ることを可能にする。他の記録層についても同様である。
【0069】
図6では、第2層と第4層が読み出された場合を例示した。
【0070】
次に、アシスト用発振素子として使用するスピントルク発振素子101の構成例について説明する。
【0071】
記録媒体への記録の書き込みはスピントルク発振素子101の近傍に発生する高周波磁場によるアシスト効果を利用するので、アシスト用発振素子として使用するスピントルク発振素子101には、大電流による磁化の大振幅運動が発生するCPP−GMR型素子を利用するのが好ましい。
【0072】
ただし、CPP−GMR型素子は抵抗が小さいことから、測定回路とのインピーダンス整合を考慮して、図3のスピントルク発振素子101は、異なる発振周波数をもつ複数のCPP−GMR型素子を直列接続して用いることが好ましい。
【0073】
図7に、複数の記録層(例として、4つの記録層)に対応する素子が直列接続されたスピントルク発振素子101の例を示す。図中、1021〜1024はそれぞれ第1記録層用のアシスト用発振素子(共鳴周波数=f1)〜第4記録層用のアシスト用発振素子(共鳴周波数=f4)を示す。図中、115は上部電極、116は下部電極である。また、個々の素子の構成例を、図7の右側に示す。図中、102は固定層、103は非磁性層、104はフリー層、107は反強磁性層(交換バイアス)である。
【0074】
図8及び図9に、それぞれ、2つ及び4つの記録層に対応する素子が直列接続されたスピントルク発振素子101の他の例を示す。図中、1041〜1044はそれぞれ第1記録層用のアシスト用発振素子(共鳴周波数=f1)〜第4記録層用のアシスト用発振素子(共鳴周波数=f4)を示す。図中、135は上部電極、136は下部電極である。また、個々の素子の構成例を、各図中に示す。図中、102は固定層、103は非磁性層、104はフリー層、108及び109は人工反強磁性層(Mp11及びMp22)である。
【0075】
次に、実際に作成・実験を行った具体例について説明する。
【0076】
スパッタ法によりガラス基板上に成膜した磁性積層膜を電子線及び光リソグラフィーを用いて加工し、図10に示すように2つの素子(ここでは、図5で説明した素子)が並列接続されたスピントルク発振素子を作製した。ただし、素子1001のフリー層はCoFeB(2nm)、素子1002のフリー層はCoFeであり、人工反強磁性層及び非磁性層はいずれもCoFeB(4nm)/Ru(0.95nm)/CoFe(4nm)及びCu(4nm)とし、素子サイズはいずれも40nmx80nmとした。
【0077】
この素子に500Oeの外部磁場の下で図10の回路を用いてDC電流を流した状態で発振スペクトルをスペクトルアナライザ(SA)123を用いて観測した。この結果を、図11に示す。5.3GHzと6.5GHzに強い発振スペクトルが観測される。
【0078】
以上述べたように、単一のスピントルク発振素子に替えて異なる周波数の複数のスピントルク発振素子と補助磁極を併用することにより、多層化3次元媒体から一括読み出しを行うことができ、読み出しを効率的に行うことができる。また、単一のスピントルク発振素子に替えて異なる周波数の複数のスピントルク発振素子と補助磁極(記録磁極)を併用することにより、多層化3次元媒体から一括書き込みを行うことができ、書き込みを効率的に行うことができる。
【0079】
(2)第2の実施形態
第2の実施形態は、磁気記録において記録磁極と併用される書き込みアシスト用のマイクロ波磁場印加機構を改良するもので、スピントルク発振素子を用いたマイクロ波アシスト法(マイクロ波磁場により媒体ビットに磁気共鳴吸収を生じさせ、記録磁極による書き込みを容易にする方法)により媒体への書き込みを行うにあたって、より強いマイクロ波磁場を印加することができ、アシスト効果を高めることができるようにするものである。
【0080】
図12に、アシスト用スピントルク発振素子(マイクロ波磁場印加機構)と読み出しヘッドを別々に設けたマイクロ波アシスト型磁気ヘッドの基本構成例を示す。また、図13に、マイクロ波磁場印加機構(マイクロ波磁場印加部)が読み出しヘッドも兼ねるマイクロ波アシスト型磁気ヘッドの基本構成例を示す。本実施形態は、いずれのタイプのマイクロ波アシスト型磁気ヘッド(のマイクロ波磁場印加機構)にも適用可能である。
【0081】
図12において、2100はマイクロ波アシスト型磁気ヘッド、2120はアシスト用のスピントルク発振素子(マイクロ波磁場印加機構)、2130は読み出しヘッド、2140は磁気シールド、2150は記録磁極、2160,2170は電極、2180は非磁性層であり、また、2200は記録媒体、2210は記録層である。記録磁極2150の近傍にアシスト用スピントルク発振素子2120が配置され、読み出しヘッド2130は磁気シールド2140内に納められている。
【0082】
図13において、2300はマイクロ波アシスト型磁気ヘッド、2190は読み出し/アシスト兼用のスピントルク発振素子である。記録磁極2150の近傍に読み出し/アシスト兼用スピントルク発振素子2190が配置されており、図12と異なり、独立した読み出しヘッドをもたない。なお、記録磁極(補助磁極)2150及び読み出し/アシスト兼用スピントルク発振素子2190が磁気シールド内に納められていても良い(図示せず)。
【0083】
以下、図12のタイプを例にとって説明するが、図13のタイプも基本的には同様である。
【0084】
図14を参照しながら、アシスト用スピントルク発振素子の基本的な構成・動作の概要について説明する。図14は、アシスト用スピントルク発振素子(マイクロ波磁場印加機構)2120がもつ基本的な構造を示す。図中、2102は固定層、2103は非磁性層、2104はフリー層、2115,2116は電極である。なお、本実施形態のアシスト用スピントルク発振素子の具体的な構成例については後で説明する。
【0085】
図示されるように、スピントルク発振素子2120が、記録磁極2150に隣接して配置されている。フリー層2104の磁化の歳差運動に伴ってスピントルク発振素子2120の近傍に高周波磁場(マイクロ波磁場)が発生し、記録媒体2200のビットに磁気共鳴吸収を生じさせ、記録磁極2150による磁化反転(書き込み)をアシストする。アシストが有効であるためには1KOe程度の強い高周波磁場が媒体ビットに印加される必要があるが、そのためには厚いフリー層を媒体ビットに近づけて配置することが必要である。例えば、約1Tb/inch2の記録密度では図15に示すように厚さ約30nmのフリー層(2141)を記録媒体から10nmの近さに配置しなければならないことが数値計算から導かれている。しかしながら、スピントルク発振素子においては、フリー層磁化に作用するスピントルクは、非磁性層との界面部分(厚さ数nm)に作用し、それ以外には作用しないため、厚さ数10nmの厚いフリー層を駆動することは容易ではない。このような困難を打開する一つの方法は、数nmの薄いフリー層をもつ複数の発振素子を位相同期させて発振させることである。この方法により、媒体ビットに強い高周波磁場を印加することが可能となる。
【0086】
図16に、複数個の(例として、4個の)ナノピラー型発振素子を積層したスピントルク発振素子2120の例を示す。図中、2001〜2004は4個の素子をそれぞれ示す。また、個々の素子の構成例を、図16の右側に示す。図中、2102は固定層、2103は非磁性層、2104はフリー層、2107は反強磁性層(交換バイアス)である。この例の場合には、素子を流れる電流のマイクロ波成分を介して、4個の素子2001〜2004が位相同期する。
【0087】
図17に、図16の反強磁性体層の代わりに、人工反強磁性層を用いた発振素子を積層した例を示す。図中、2201〜2204は4個の素子をそれぞれ示す。また、個々の素子の構成例を、図17の右側に示す。2108,2109が人工反強磁性層(固定層)である。この例の場合にも、素子を流れる電流のマイクロ波成分を介して、4個の素子2201〜2204が位相同期する。
【0088】
図16又は図17の積層構造を例えば図1と同様のDC電流源(105)で駆動すると、4個の素子が同一の位相で発振する。
【0089】
図18に、他の例として、ナノコンタクト型発振素子の場合を示す。図中、3115は上部電極、3116は下部電極である。2つのナノコンタクト(図中のナノコンタクト1とナノコンタクト2)は、スピン波(図中の3200)を介して相互作用するため、それぞれのナノコンタクトに通電すると、2つのナノコンタクト直下の磁化は同一の位相で発振する。
【0090】
図16の方法や図17の方法は、素子を流れるマイクロ波電流を介して位相同期が発生するため、磁気抵抗効果比(MR比)の大きなTMR型発振素子の場合に極めて有効である。非磁性層に金属を用いたMR比の小さいGMR型素子の場合には、位相同期を確実にするために、外部からDC電流に加えてマイクロ波電流を重畳して印加することが有効である。この方法は注入同期法と呼ばれ、より確実に位相同期が得られる。マイクロ波アシストに用いる発振素子には、大きな電力(電圧)出力ではなく、大きな磁場出力が必要とされるため、抵抗が高いTMR型素子よりも抵抗が低く大きな電流を流すことが可能なGMR型素子の方が適している。GMR型素子に大きな電流を流すことにより、大振幅磁化運動が発生し、高周波磁場出力が増大する。
【0091】
例えば図16又は図17の積層型素子と記録磁極2150を組み合わせることにより、図19の書き込みヘッドが得られるが、この素子は容易に発振し、図15に例示したような厚いフリー層の素子と同等の強さの高周波磁場を媒体ビットに印加することができる。
【0092】
次に、実際に作成・実験を行った具体例について説明する。
【0093】
スパッタ法によりガラス基板上に成膜した磁性積層膜を電子線及び光リソグラフィーを用いて加工し、図17の4層積層型素子を作製した。ただし、フリー層はCoFeB(2nm)、人工反強磁性層はCoFeB(4nm)/Ru(0.95nm)/CoFe(4nm)、非磁性層はCu(4nm)とし、素子サイズは40nmx80nmとした。
【0094】
この素子に500Oeの外部磁場の下で図1と同様の回路を用いてDC電流を流した状態で発振スペクトルを観測した。この結果を、図20に示す。図20中の(a)で示されるブロードなスペクトルは電流0.6mAの下でのもので、発振周波数の異なる4層のフリー層が位相同期せず、発振していることを示している。電流を0.65mAに増大させると4層のフリー層は互いに同一位相で同期発振するため、図20中の(b)で示される線幅の狭い強い発振スペクトルが観測される。
【0095】
以上述べたように、単一のスピントルク発振素子に替えて互いに位相同期した複数のスピントルク発振素子を用いることにより、媒体ビットに強いマイクロ波磁場を印加することができ、アシスト効果を高めることができる。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
100…三次元磁気記録再生装置、101,2120,2190…スピントルク発振素子、102,2102…固定層、103,202,2180,2103…非磁性層、104,2104…フリー層、105,106,2115,2116,2160,2170,3115,3116…電極、107,2107…反強磁性層、108,109,2108,2109…人工反強磁性層、121…DC電流源、122…負荷、141〜144…バンドパスフィルタ、150,2150…磁極、180,2140…磁気シールド、200,2200…記録媒体、2210…記録層、201…磁性層、1001〜1004,1021〜1024,1041〜1044,2001〜2004,2201〜2204…発振素子、2100,2300…マイクロ波アシスト型磁気ヘッド、2130…読み出しヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スピントルク発振素子を用いた磁気ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
垂直磁化媒体の開発とTMR素子(トンネル磁気抵抗効果素子)を磁気センサーとして用いた読み出しヘッド(TMRヘッド)の採用により、磁気記録における記録密度は近年年率40%の速度で上昇を続けており2009年時点で500Gb/in2の記録密度が達成されている。
【0003】
(1)記録密度を更に飛躍的に高める方策としてパターン化媒体が従来から知られているが、最近では記録層を多層化した3次元記録の方法が提案されている。この方法では、各層毎に磁気共鳴周波数が異なる記録媒体を用い、スピントルク発振素子と磁極を併用して、各層への選択的書き込みと、各層からの選択的読み出しを行う。
【0004】
(2)一方、今後記録密度の更なる上昇に伴って現在のものに比較してより微小な磁性粒子で構成された媒体が用いられることになる。このような媒体の記録の安定性を確保するためには、熱ゆらぎによる微小粒子磁化の反転を防止するために、極めて大きな保磁力をもつ磁性粒子を用いることが必要となる。しかしながら、このような高保磁力媒体では記録磁極による書き込みが困難となり、書き込み時に記録磁極が発生する磁場に加えて他のエネルギーを同時に供給するアシスト記録法が必要になると考えられている。アシスト記録法においては、GHzの高速性と数10nmの局所性を併せ持つ大きなパワー密度のエネルギー供給が必要となるが、レーザーアシスト法、マイクロ波アシスト法などの方法が提案されている。中でもスピントルク発振素子を用いたマイクロ波アシスト法が近年大きな注目を集め、多くの研究機関で開発が進められている。スピントルク発振素子を用いたマイクロ波アシスト法は、フリー層磁化の歳差運動に伴う高周波磁場(マイクロ波磁場)を用い、媒体による高周波磁場の共鳴吸収現象を利用する方法である。この方法は、所望の媒体ビットに選択的にパワーを供給できる長所を持っているが、アシスト効果を高めるためには、強い高周波磁場を媒体ビットに印加することが必要となる。強い高周波磁場を発生する方法として、従来は厚いフリー層を含む発振素子の開発が試みられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−326006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(1)従来の3次元記録再生技術においては、多層化された磁気記録媒体への書き込み又は読み出しを各層ごとに逐次行うため、迅速な読み出し又は書き込みができないという課題があった。
【0007】
本実施形態は、上述した事情を考慮してなされたものであり、多層化された磁気記録媒体からの読み出しをより速くすることができる磁気ヘッドを提供することを目的とする。また、多層化された磁気記録媒体への書き込みをより速くすることができる磁気ヘッドを提供することを目的とする。
【0008】
(2)従来のアシスト型記録ヘッドでは、厚いフリー層を含む発振素子を安定して動作させることは容易ではなく、強い高周波磁場を印加するより効果的な手段が必要とされている。
【0009】
本実施形態は、上述した事情を考慮してなされたものであり、より強い高周波磁場を印加することができるアシスト型記録ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)実施形態によれば、互いに共鳴周波数が異なる磁性体により形成され積層される複数の磁性層を含み、それぞれの磁性層が記録トラックを含む磁気記録媒体に対して、記録トラックの媒体の磁気共鳴現象を利用して記録の読み出し又は書き込みを行う三次元磁気記録再生装置の磁気ヘッドは、スピントルク発振素子と、補助磁極とを含む。前記スピントルク発振素子は、同時に複数の異なる周波数で発振可能である。前記補助磁極は、前記スピントルク発振素子による前記読み出し又は書き込みを補助する。
【0011】
(2)実施形態によれば、高周波アシスト法を利用する記録ヘッドは、マイクロ波磁場印加部と、記録磁極とを含む。前記マイクロ波磁場印加部は、記録媒体の記録トラックに対する書き込みを行うために、互いに位相同期された複数のスピントルク発振素子により形成される。前記記録磁極は、前記マイクロ波磁場印加部による前記書き込みを補助する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】スピントルク発振素子を用いた三次元磁気記録再生装置の基本構成の概要を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態に係るスピントルク発振素子及びリング型磁極を用いた三次元記録媒体からの情報の読み出し方法に関するトラック方向と平行の断面図。
【図3】第1の実施形態に係るスピントルク発振素子及びリング型磁極を用いた三次元記録媒体からの情報の読み出し方法に関するトラック方向と垂直の断面図。
【図4】比較例に係るスピントルク発振素子及びリング型磁極を用いた三次元記録媒体からの情報の読み出し方法に関するトラック方向と垂直の断面図。
【図5】第1の実施形態に係る並列接続されたスピントルク発振素子の構成例を示す図。
【図6】第1の実施形態に係る多層の記録を一括して読み出すための回路の構成例を示す図。
【図7】第1の実施形態に係る直列接続されたスピントルク発振素子の構成例を示す図。
【図8】第1の実施形態に係る直列接続されたスピントルク発振素子の構成例を示す図。
【図9】第1の実施形態に係る直列接続されたスピントルク発振素子の構成例を示す図。
【図10】具体例で用いられる素子の構成を示す図。
【図11】具体例で用いられる素子の発振スペクトルを示す図。
【図12】第2の実施形態に係るマイクロ波アシスト型磁気ヘッドの第1の基本構成例を示す図。
【図13】第2の実施形態に係るマイクロ波アシスト型磁気ヘッドの第2の基本構成例を示す図。
【図14】アシスト用スピントルク発振素子の基本構成の概要を示すブロック図。
【図15】比較例に係る厚いフリー層のスピントルク発振素子の構成例を示す図。
【図16】第2の実施形態に係る4個のナノピラー型発振素子の積層構造の例を示す図。
【図17】第2の実施形態に係る人工反強磁性層を用いた発振素子の積層構造の例を示す図。
【図18】第2の実施形態に係るスピン波で結合したナノコンタクト型素子の構成例を示す図。
【図19】具体例における積層構造の発振素子を用いた記録ヘッドの構成例を示す図。
【図20】具体例で用いられる素子の発振スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る磁気ヘッドについて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
【0014】
はじめに、図1を参照しながら、スピントルク発振素子を利用した三次元磁気記録再生装置の基本構成について説明する。
【0015】
図1に示されるように、三次元磁気記録再生装置100は、スピントルク発振素子101と、DC電流源121と、負荷122とを含む。なお、本実施形態では、スピントルク発振素子に加えて図示しない補助磁極(記録磁極)を利用するが、補助磁極を利用する場合については後で説明する。
【0016】
スピントルク発振素子101は、その基本的な構成として、模式的に示したように、固定層(磁化固定層)102、非磁性層103、そして、フリー層104の順番から構成される3層構造をもち、数十ナノメートルのサイズをもつ素子である。固定層102の上層には上部電極105、フリー層104の下層には下部電極106が積層され、両電極にスピントルク発振素子101が挟まれた状態となる。なお、本実施形態で用いるスピントルク発振素子101の具体的な構成例は後で説明する。
【0017】
スピントルク発振素子101は、磁気記録媒体(図示していないが、下部電極106の下方に位置される)から情報を読み出すとき際の読み出し用発振素子として使用されることができ、または、磁気記録媒体に情報を書き込む際のアシスト用(書き込み用)発振素子として使用されることができる。
【0018】
なお、スピントルク発振素子101の記録媒体に対する向きは、図1に示す方法で用いる方法以外に、図1のスピントルク発振素子101の向きを右若しくは左に90度回転させて用いる方法、図1のスピントルク発振素子101の向きを180度回転させて用いる方法も可能である。この点は、これから説明する本実施形態の各種スピントルク発振素子についても同様である。
【0019】
固定層102は、磁化膜として、例えばCoあるいはCo/非磁性体積層膜あるいはCoCrTa、CoCrTaPt、CoTaNbなどのCoCr系合金が使用されるが、これに限らず、Co/Pd,Co/Pt、Co−Cr−Ta/PdなどのCo多層膜、CoCrPt系合金、FePt系合金、さらに希土類を含むSmCo系合金やTbFeCo合金を使用してもよい。また、固定層102は、磁化の向きが固定されている。
【0020】
非磁性層103は、例えばAl−0(アルミニウム酸化膜)などのトンネル絶縁膜あるいはCuなどの非磁性金属を採用することができる。
【0021】
フリー層104は、例えばFe、FeCo合金などの大きな飽和磁化をもつ磁性材料が使用される。これは、強い高周波磁場を得るには、飽和磁化Mが大きいことが必要だからである。また、フリー層104は、磁化の向きが自由に回転する。
【0022】
DC電流源121は、スピントルク発振素子101に直流電流を流す。
【0023】
負荷122は、歳差運動するフリー層104の磁化と固定層102の磁化との間のTMR効果(トンネル磁気抵抗効果)により、発生する数GHzから数十GHzの高周波電圧の値を読み取るために使用される。
【0024】
記録媒体からの読み出しの際のスピントルク発振素子101の動作と記録媒体への書き込みの際の動作について簡単に説明する。
【0025】
まず、DC電流源121からスピントルク発振素子101へ直流電流を流す。この直流電流の値が閾値以上の値である場合、スピントルク発振素子101に含まれるフリー層104の磁化Mが歳差運動を開始する。フリー層104の磁化Mが歳差運動する状態を図1右下に示す。このように電流ゼロの場合の磁化の向きを基準とした歳差運動が起こる。
【0026】
歳差運動するフリー層104の磁化と固定層102の磁化との間には、TMR効果により数GHz〜数十GHzの高周波電圧が発生し、負荷122に出力される。加えて、このスピントルク発振素子101の近傍には、フリー層磁化の歳差運動に伴う高周波(回転)磁場(数GHz〜数十GHz)も発生する。三次元磁気記録再生装置100では、上記電圧(電力)出力及び高周波磁場の両方を利用して、記録の書き込み/読み出しを行う。なお、高周波磁場は、マイクロ波磁場または近接場ともいう。
【0027】
なお、記録を行う場合と読み出しを行う場合との違いは、磁化反転を生じさせるために記録磁極による磁場及び発振素子による高周波磁場をともに読み出しの場合よりも強く印加することである。
【0028】
(1)第1の実施形態
第1の実施形態は、媒体の磁気共鳴現象を利用して記録の読み出しを行う3次元磁気記録において、スピントルク発振素子を磁気センサーとして利用して記録層を多層化した媒体からの読み出しを行うにあたって、複数の記録層に対する同時読み出し(一括読み出し)ができるようにするものである。また、媒体の磁気共鳴現象を利用して記録の書き込みを行う3次元磁気記録において、スピントルク発振素子をマイクロ波アシストとして利用して記録層を多層化した媒体への書き込みを行うにあたって、複数の記録層に対する同時書き込み(一括書き込み)ができるようにするものである。
【0029】
まず、スピントルク発振素子と補助磁極を用いた磁気ヘッド(読み出し用磁気ヘッド/書き込み用磁気ヘッド)の基本的な構成・動作について説明する。
【0030】
図2に、本実施形態のスピントルク発振素子と補助磁極を用いた磁気ヘッドのトラック方向の断面図を示し、図3に、そのトラックに垂直方向の断面図を示す。
【0031】
また、図4に、比較例に係る磁気ヘッドについて、トラックに垂直方向の断面図を示す(なお、比較例に係る磁気ヘッドのトラック方向の断面図は、図2と同じようになるので、省略する)。
【0032】
この磁気ヘッドの構造は、補助磁極150と、その近傍にあるスピントルク発振素子101とで構成される。磁気ヘッドは、磁気シールド180内に納められていても良い。詳しくは後述するが、このスピントルク発振素子101は、同時に複数の周波数を発信可能である。
【0033】
ここでは、補助磁極150としてリング型磁極を用いる場合を例にとって説明する。
【0034】
図中、200は記録媒体である。ここでは、記録媒体200として、共鳴周波数の異なる4層の面内磁化媒体(図中、221〜224)を用いる場合を例にとって説明する。この面内磁化媒体においては、既存の長手記録とは異なり、各ビットの磁化が記録トラックに垂直な方向を向いている。もちろん、2層、3層又は5層以上の記憶層をもつ記録媒体についても、本実施形態は適用可能である。
【0035】
三次元記録化された記録媒体200は、例えば、情報が記録された磁性層201と、非磁性層202とを交互に積層することにより構成される。非磁性層202で分離された各磁性層201は、それぞれ異なる共鳴周波数(本具体例では、f1,f2,f3,f4)をもつ磁性体で構成されており、記録媒体200のうち磁気ヘッドに最も近い磁性層201から最も遠い磁性層201へ向かって、順次、共鳴周波数の高い磁性層201が配置される。本具体例では、共鳴周波数は、f1<f2<f3<f4の順に大きくなる。
【0036】
図2及び図3は、磁気ヘッドがスピントルク発振素子101を一つ備える場合を例示している(この場合、スピントルク発振素子101は、読み出しヘッドの読み出し用発振素子として使用されるか、または、記録ヘッドのアシスト用発振素子として使用される)が、磁気ヘッドが、読み出し用発振素子として使用するスピントルク発振素子と、アシスト用発振素子として使用するスピントルク発振素子の二つのスピントルク発振素子を備える構成も可能である(この場合、例えば、図2及び図3において、スピントルク発振素子101からみて補助磁極150の反対側にもう一つのスピントルク発振素子が設けられる)。
【0037】
以下、スピントルク発振素子101を読み出し用発振素子として使用する場合について説明する。
【0038】
最初に、複数の記録層のうちの一つの記録層にあるビットを読み出す場合について説明する。
【0039】
スピントルク発振素子101に加えて補助磁極150を利用する場合に、この補助磁極150は、記録層内の所望のビットを選択するために使用され、補助磁極150により印加される磁場は、ビットの磁化を反転させない程度に弱いことが必要である。選択されたビットの磁気共鳴現象は、スピントルク発振素子101の出力電圧の低下として検知されるので、これによって読み出しがなされる。
【0040】
ここで、補助磁極150の直下にある4層の記録層のうちの一つ(例として、第4層の記録層(共鳴周波数=f4)とする)にある特定のビットを読み出す場合を考える。第4層のこの特定のビットは、補助磁極150によって、第4層の他のビットに比較してより強い磁場が印加され、共鳴周波数がf4からf4*に変化する。よって、スピントルク発振素子101の周波数をf4*に設定することにより、第4層の補助磁極150の直下のビットに選択的に共鳴吸収を生じさせることができる。
【0041】
ところで、スピントルク発振素子101により発生する高周波磁場は、記録媒体200の磁化の向きにかかわらず磁気共鳴吸収を生じさるが、補助磁極150を用いることにより一方の向きに磁気共鳴吸収を生じさせることができる。すなわち、補助磁石の発生する磁場が記録媒体200の磁化に作用すると、磁場に平行な磁化の共鳴周波数は、当該記録層の共鳴周波数fからf*=f+Δfへ、反平行な磁化の共鳴周波数はfからf*=f−Δfへそれぞれ変化する。したがって、スピントルク発振素子101の周波数をf+Δf(上記第4層の場合、f4+Δf4)に設定すれば平行な磁化に、f−Δf(上記第4層の場合、f4−Δf4)に設定すれば反平行な磁化に、それぞれ磁気共鳴を誘起することができる。よって、所望のビットを選択的に読み出すことが可能となる。
【0042】
なお、補助磁極を用いる場合には、スピントルク発振素子101を読み出したいビットの直上に設置することが難しい場合がある。しかし、公知であるように共鳴状態にある磁性体は、その高周波透磁率が非共鳴状態のものに比べて1桁以上大きい。その結果、スピントルク発振素子101が読み出したいビットの直上に設置されていない場合でも、高周波磁場の磁束が読み出したいビットに集中し、このビットに十分強い高周波磁場が印加される。なお、図2及び図3に示す補助磁極150は、スピントルク発振素子101に近接させているが、これに限らず、補助磁極150及びスピントルク発振素子101の位置関係は、スピントルク発振素子101が射出する電磁波が読み出しを行うビットに届く位置にあれば良い。
【0043】
次に、図4の比較例と、図3の本実施形態の読み出し動作に関する相違について説明する。
【0044】
図4の比較例のスピントルク発振素子は、単一周波数の発振素子を補助磁極150と併用し、逐次、各層の記録の読み出しを行うものである。
【0045】
よって、例えば、共鳴周波数の異なる4層の面内磁化媒体を用いる場合に、比較例のスピントルク発振素子9001では、4層のそれぞれについて、かつ、平行磁化と反平行磁化のそれぞれについて、逐次、読み出しを行うので、計8回の読み出しが必要になる。
【0046】
これに対して、図3の本実施形態では、異なる複数の周波数を発振するスピントルク発振素子101を補助磁極150と併用し、異なる共鳴周波数をもつ複数層媒体からの同時読み出し(一括読み出し)を行うことが可能である。例えば、共鳴周波数の異なる4層の面内磁化媒体を用いる場合に、スピントルク発振素子101が同時に4つの周波数を発振できるものであるならば、4層一括して読み出しを行うことができるので、平行磁化と反平行磁化のそれぞれについて1回ずつ読み出しを行えば良く、すなわち、全体で計2回の読み出し動作を行えば良いことになる。この場合に、例えば、第1層〜第4層の平行磁化について一括読み出しを行う第1のフェイズと、第1層〜第4層の反平行磁化について一括読み出しを行う第2のフェイズとを交互に実行しても良いし、他の方法も可能である。
【0047】
また、例えば、スピントルク発振素子101が同時に2つの周波数を発振できるものである場合に、4層に対して2層同時読み出しを2回行うとともに、平行磁化と反平行磁化のそれぞれについて1回ずつ読み出しを行っても良く、すなわち、全体で計4回の読み出動作を行えば良いことになる。
【0048】
また、図3の本実施形態のスピントルク発振素子101について、同時に発信可能な周波数の個数を上限として、任意の1又は複数の記録層について(かつ、個々の記録層ごとに、平行磁化と反平行磁化とのうちの任意のものについて)、選択的に読み出しを行うことができる(図3では、第2層と第4層を選択的に読み出す場合を例示した)。
【0049】
なお、異なる複数の周波数を発振する(読み出し用発振素子として使用する)スピントルク発振素子101の具体的な構成例については後で説明する。
【0050】
以下、スピントルク発振素子101をアシスト用発振素子として使用する場合について説明する。
【0051】
最初に、複数の記録層のうちの一つの記録層にビットを書き込む場合について説明する。
【0052】
アシスト型記録ヘッドの構造は、補助磁極150を用いた読み出しヘッドの構造と同じである。読み出しの場合との相違は、磁化反転を生じさせるために記録磁極(補助磁極)150による磁場及び発振素子による高周波磁場を、ともに読み出しの場合よりも強く印加することである。
【0053】
記録磁極150の直下にある第n層のビットの磁化を反転する場合の一例を説明する。高周波磁場によるアシスト作用(高周波アシスト法ともいう)は2つの原理に基づいて発生する。第1の原理は、高周波磁場による磁化の共鳴反転によるものであり、第2の原理は、高周波磁場による磁性体の共鳴吸収加熱によるものである。前者は減衰定数αの小さな磁性体で形成された媒体において主要な原理となり、後者は減衰定数αの大きな磁性体で形成された媒体において主要な原理となる。
【0054】
第1の原理について簡単に説明する。第n層にある磁性体の異方性磁場Hkより小さな記録ヘッド磁場Hnを、所望のビットの磁化Mと逆向きに印加する。HnはHkより小さいのでこの状態では磁化反転は生じないが、同時に式(1)で表される共鳴周波数の高周波磁場hを、微小磁性発振素子により印加すると磁化Mは歳差運動を始める。
fn=(γ/2π)(HK−Hn) (1)
高周波磁場hが十分大きく
(γ/2π)h>αfn (2)
の関係が満たされれば歳差運動の振幅は時間とともに増大し、最後には磁化Mが反転する。ただし、γは磁気回転比である。
【0055】
記録ヘッドの直下にないビットの磁化や他の記録層のビットの磁化は、式(1)の条件を満たしていないので、高周波磁場に共鳴せず磁化反転は生じない。
【0056】
第2の原理について簡単に説明する。記録媒体に吸収される高周波パワーPは記録媒体の帯磁率の虚数部χ″に依存し、高周波磁場をhとすると下記の式(3)と表される。
【0057】
P=(1/2)χ″h2ω (3)
χ″(ω)は周波数に強く依存し、媒体の共鳴周波数から離れた周波数では小さく1程度であるが、共鳴周波数近くでは10から100程度に増大する。記録媒体の加熱効率は吸収パワーに依存するので、共鳴周波数近くの高周波磁場により記録媒体は強く加熱される。すなわち、記録磁極の直下にある第n層のビットが選択的に加熱され他のビットはほとんど加熱されない。媒体温度が上昇するとレーザーアシストと同様に異方性定数Ku1が減少し、記録ヘッドの磁場により選択的に磁化を反転させることにより書き込みが行われる。
【0058】
これら第1の原理及び第2の原理は典型的な場合であり、多くの現実の系では第1の原理及び第2の原理が共存する状態で磁化反転が生じ、高周波アシスト法により三次元記録媒体の所望のビット磁化を反転させることにより記録媒体に書き込みを行うことができる。
【0059】
図4の比較例と図3の本実施形態の書き込み動作に関する相違については、前述したそれらの読み出し動作に関する相違と同様である。
【0060】
例えば、共鳴周波数の異なる4層の面内磁化媒体を用いる場合に、比較例のスピントルク発振素子9001では計8回の書き込みが必要になるのに対して、図3の本実施形態のスピントルク発振素子101が同時に4つの周波数を発振できるものであるならば、4層一括書き込みを行って、全体で計2回の書き込み動作を行えば良いことになる。また、例えば、スピントルク発振素子101が同時に2つの周波数を発振できるものであるならば、2層同時書き込みを行って、全体で計4回の書き込み動作を行えば良いことになる。
【0061】
また、図3の本実施形態のスピントルク発振素子101について、同時に発信可能な周波数の個数を上限として、任意の1又は複数の記録層について(かつ、個々の記録層ごとに、平行磁化と反平行磁化とのうちの任意のものについて)、選択的に書き込みを行うことができる(図3では、第2層と第4層を選択的に書き込む場合を例示した)。
【0062】
なお、異なる複数の周波数を発振する(アシスト用発振素子として使用する)スピントルク発振素子101の具体的な構成例については後で説明する。
【0063】
次に、読み出し用発振素子として使用するスピントルク発振素子101の構成例について説明する。
【0064】
記録媒体からの記録の読み出しは図1に示されるように素子の出力電圧の変化を測定することによって行われることから、読み出し用発振素子として使用するスピントルク発振素子101には、電圧出力の大きいTMR型素子を利用するのが好ましい。
【0065】
ただし、TMR型素子は抵抗が大きいことから、測定回路とのインピーダンス整合を考慮して、図3のスピントルク発振素子101は、異なる発振周波数をもつ複数のTMR型素子を並列接続して用いることが好ましい。
【0066】
図5に、複数の記録層(例として、4つの記録層)に対応する素子が並列接続されたスピントルク発振素子101の例を示す。図中、121はDC電流源を示し、1001〜1004はそれぞれ第1記録層用の読み出し用発振素子(共鳴周波数=f1)〜第4記録層用の読み出し用発振素子(共鳴周波数=f4)を示す。また、個々の素子の構成例を、図5の右側に示す。図中、102は固定層、103は非磁性層、104はフリー層、107は反強磁性層(交換バイアス)である。
【0067】
図6に、一括読み出しする場合に各記録層ごとに発生し得る高周波電圧の値を読み取るための回路構成の例を示す。この例では、各記録層用に高周波電圧信号を通過させるバンドパスフィルタ141〜144を設ける。
【0068】
例えば、第1記録層に関して発生された高周波電圧は、第1記録層用のバンドパスフィルタ141を通過して、図示しない第1記録層用の負荷に導かれて、該高周波電圧の値を読み取ることを可能にする。他の記録層についても同様である。
【0069】
図6では、第2層と第4層が読み出された場合を例示した。
【0070】
次に、アシスト用発振素子として使用するスピントルク発振素子101の構成例について説明する。
【0071】
記録媒体への記録の書き込みはスピントルク発振素子101の近傍に発生する高周波磁場によるアシスト効果を利用するので、アシスト用発振素子として使用するスピントルク発振素子101には、大電流による磁化の大振幅運動が発生するCPP−GMR型素子を利用するのが好ましい。
【0072】
ただし、CPP−GMR型素子は抵抗が小さいことから、測定回路とのインピーダンス整合を考慮して、図3のスピントルク発振素子101は、異なる発振周波数をもつ複数のCPP−GMR型素子を直列接続して用いることが好ましい。
【0073】
図7に、複数の記録層(例として、4つの記録層)に対応する素子が直列接続されたスピントルク発振素子101の例を示す。図中、1021〜1024はそれぞれ第1記録層用のアシスト用発振素子(共鳴周波数=f1)〜第4記録層用のアシスト用発振素子(共鳴周波数=f4)を示す。図中、115は上部電極、116は下部電極である。また、個々の素子の構成例を、図7の右側に示す。図中、102は固定層、103は非磁性層、104はフリー層、107は反強磁性層(交換バイアス)である。
【0074】
図8及び図9に、それぞれ、2つ及び4つの記録層に対応する素子が直列接続されたスピントルク発振素子101の他の例を示す。図中、1041〜1044はそれぞれ第1記録層用のアシスト用発振素子(共鳴周波数=f1)〜第4記録層用のアシスト用発振素子(共鳴周波数=f4)を示す。図中、135は上部電極、136は下部電極である。また、個々の素子の構成例を、各図中に示す。図中、102は固定層、103は非磁性層、104はフリー層、108及び109は人工反強磁性層(Mp11及びMp22)である。
【0075】
次に、実際に作成・実験を行った具体例について説明する。
【0076】
スパッタ法によりガラス基板上に成膜した磁性積層膜を電子線及び光リソグラフィーを用いて加工し、図10に示すように2つの素子(ここでは、図5で説明した素子)が並列接続されたスピントルク発振素子を作製した。ただし、素子1001のフリー層はCoFeB(2nm)、素子1002のフリー層はCoFeであり、人工反強磁性層及び非磁性層はいずれもCoFeB(4nm)/Ru(0.95nm)/CoFe(4nm)及びCu(4nm)とし、素子サイズはいずれも40nmx80nmとした。
【0077】
この素子に500Oeの外部磁場の下で図10の回路を用いてDC電流を流した状態で発振スペクトルをスペクトルアナライザ(SA)123を用いて観測した。この結果を、図11に示す。5.3GHzと6.5GHzに強い発振スペクトルが観測される。
【0078】
以上述べたように、単一のスピントルク発振素子に替えて異なる周波数の複数のスピントルク発振素子と補助磁極を併用することにより、多層化3次元媒体から一括読み出しを行うことができ、読み出しを効率的に行うことができる。また、単一のスピントルク発振素子に替えて異なる周波数の複数のスピントルク発振素子と補助磁極(記録磁極)を併用することにより、多層化3次元媒体から一括書き込みを行うことができ、書き込みを効率的に行うことができる。
【0079】
(2)第2の実施形態
第2の実施形態は、磁気記録において記録磁極と併用される書き込みアシスト用のマイクロ波磁場印加機構を改良するもので、スピントルク発振素子を用いたマイクロ波アシスト法(マイクロ波磁場により媒体ビットに磁気共鳴吸収を生じさせ、記録磁極による書き込みを容易にする方法)により媒体への書き込みを行うにあたって、より強いマイクロ波磁場を印加することができ、アシスト効果を高めることができるようにするものである。
【0080】
図12に、アシスト用スピントルク発振素子(マイクロ波磁場印加機構)と読み出しヘッドを別々に設けたマイクロ波アシスト型磁気ヘッドの基本構成例を示す。また、図13に、マイクロ波磁場印加機構(マイクロ波磁場印加部)が読み出しヘッドも兼ねるマイクロ波アシスト型磁気ヘッドの基本構成例を示す。本実施形態は、いずれのタイプのマイクロ波アシスト型磁気ヘッド(のマイクロ波磁場印加機構)にも適用可能である。
【0081】
図12において、2100はマイクロ波アシスト型磁気ヘッド、2120はアシスト用のスピントルク発振素子(マイクロ波磁場印加機構)、2130は読み出しヘッド、2140は磁気シールド、2150は記録磁極、2160,2170は電極、2180は非磁性層であり、また、2200は記録媒体、2210は記録層である。記録磁極2150の近傍にアシスト用スピントルク発振素子2120が配置され、読み出しヘッド2130は磁気シールド2140内に納められている。
【0082】
図13において、2300はマイクロ波アシスト型磁気ヘッド、2190は読み出し/アシスト兼用のスピントルク発振素子である。記録磁極2150の近傍に読み出し/アシスト兼用スピントルク発振素子2190が配置されており、図12と異なり、独立した読み出しヘッドをもたない。なお、記録磁極(補助磁極)2150及び読み出し/アシスト兼用スピントルク発振素子2190が磁気シールド内に納められていても良い(図示せず)。
【0083】
以下、図12のタイプを例にとって説明するが、図13のタイプも基本的には同様である。
【0084】
図14を参照しながら、アシスト用スピントルク発振素子の基本的な構成・動作の概要について説明する。図14は、アシスト用スピントルク発振素子(マイクロ波磁場印加機構)2120がもつ基本的な構造を示す。図中、2102は固定層、2103は非磁性層、2104はフリー層、2115,2116は電極である。なお、本実施形態のアシスト用スピントルク発振素子の具体的な構成例については後で説明する。
【0085】
図示されるように、スピントルク発振素子2120が、記録磁極2150に隣接して配置されている。フリー層2104の磁化の歳差運動に伴ってスピントルク発振素子2120の近傍に高周波磁場(マイクロ波磁場)が発生し、記録媒体2200のビットに磁気共鳴吸収を生じさせ、記録磁極2150による磁化反転(書き込み)をアシストする。アシストが有効であるためには1KOe程度の強い高周波磁場が媒体ビットに印加される必要があるが、そのためには厚いフリー層を媒体ビットに近づけて配置することが必要である。例えば、約1Tb/inch2の記録密度では図15に示すように厚さ約30nmのフリー層(2141)を記録媒体から10nmの近さに配置しなければならないことが数値計算から導かれている。しかしながら、スピントルク発振素子においては、フリー層磁化に作用するスピントルクは、非磁性層との界面部分(厚さ数nm)に作用し、それ以外には作用しないため、厚さ数10nmの厚いフリー層を駆動することは容易ではない。このような困難を打開する一つの方法は、数nmの薄いフリー層をもつ複数の発振素子を位相同期させて発振させることである。この方法により、媒体ビットに強い高周波磁場を印加することが可能となる。
【0086】
図16に、複数個の(例として、4個の)ナノピラー型発振素子を積層したスピントルク発振素子2120の例を示す。図中、2001〜2004は4個の素子をそれぞれ示す。また、個々の素子の構成例を、図16の右側に示す。図中、2102は固定層、2103は非磁性層、2104はフリー層、2107は反強磁性層(交換バイアス)である。この例の場合には、素子を流れる電流のマイクロ波成分を介して、4個の素子2001〜2004が位相同期する。
【0087】
図17に、図16の反強磁性体層の代わりに、人工反強磁性層を用いた発振素子を積層した例を示す。図中、2201〜2204は4個の素子をそれぞれ示す。また、個々の素子の構成例を、図17の右側に示す。2108,2109が人工反強磁性層(固定層)である。この例の場合にも、素子を流れる電流のマイクロ波成分を介して、4個の素子2201〜2204が位相同期する。
【0088】
図16又は図17の積層構造を例えば図1と同様のDC電流源(105)で駆動すると、4個の素子が同一の位相で発振する。
【0089】
図18に、他の例として、ナノコンタクト型発振素子の場合を示す。図中、3115は上部電極、3116は下部電極である。2つのナノコンタクト(図中のナノコンタクト1とナノコンタクト2)は、スピン波(図中の3200)を介して相互作用するため、それぞれのナノコンタクトに通電すると、2つのナノコンタクト直下の磁化は同一の位相で発振する。
【0090】
図16の方法や図17の方法は、素子を流れるマイクロ波電流を介して位相同期が発生するため、磁気抵抗効果比(MR比)の大きなTMR型発振素子の場合に極めて有効である。非磁性層に金属を用いたMR比の小さいGMR型素子の場合には、位相同期を確実にするために、外部からDC電流に加えてマイクロ波電流を重畳して印加することが有効である。この方法は注入同期法と呼ばれ、より確実に位相同期が得られる。マイクロ波アシストに用いる発振素子には、大きな電力(電圧)出力ではなく、大きな磁場出力が必要とされるため、抵抗が高いTMR型素子よりも抵抗が低く大きな電流を流すことが可能なGMR型素子の方が適している。GMR型素子に大きな電流を流すことにより、大振幅磁化運動が発生し、高周波磁場出力が増大する。
【0091】
例えば図16又は図17の積層型素子と記録磁極2150を組み合わせることにより、図19の書き込みヘッドが得られるが、この素子は容易に発振し、図15に例示したような厚いフリー層の素子と同等の強さの高周波磁場を媒体ビットに印加することができる。
【0092】
次に、実際に作成・実験を行った具体例について説明する。
【0093】
スパッタ法によりガラス基板上に成膜した磁性積層膜を電子線及び光リソグラフィーを用いて加工し、図17の4層積層型素子を作製した。ただし、フリー層はCoFeB(2nm)、人工反強磁性層はCoFeB(4nm)/Ru(0.95nm)/CoFe(4nm)、非磁性層はCu(4nm)とし、素子サイズは40nmx80nmとした。
【0094】
この素子に500Oeの外部磁場の下で図1と同様の回路を用いてDC電流を流した状態で発振スペクトルを観測した。この結果を、図20に示す。図20中の(a)で示されるブロードなスペクトルは電流0.6mAの下でのもので、発振周波数の異なる4層のフリー層が位相同期せず、発振していることを示している。電流を0.65mAに増大させると4層のフリー層は互いに同一位相で同期発振するため、図20中の(b)で示される線幅の狭い強い発振スペクトルが観測される。
【0095】
以上述べたように、単一のスピントルク発振素子に替えて互いに位相同期した複数のスピントルク発振素子を用いることにより、媒体ビットに強いマイクロ波磁場を印加することができ、アシスト効果を高めることができる。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
100…三次元磁気記録再生装置、101,2120,2190…スピントルク発振素子、102,2102…固定層、103,202,2180,2103…非磁性層、104,2104…フリー層、105,106,2115,2116,2160,2170,3115,3116…電極、107,2107…反強磁性層、108,109,2108,2109…人工反強磁性層、121…DC電流源、122…負荷、141〜144…バンドパスフィルタ、150,2150…磁極、180,2140…磁気シールド、200,2200…記録媒体、2210…記録層、201…磁性層、1001〜1004,1021〜1024,1041〜1044,2001〜2004,2201〜2204…発振素子、2100,2300…マイクロ波アシスト型磁気ヘッド、2130…読み出しヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波アシスト法を利用する記録ヘッドにおいて、
記録媒体の記録トラックに対する書き込みを行うために、互いに位相同期された複数のスピントルク発振素子により形成されるマイクロ波磁場印加部と、
前記マイクロ波磁場印加部による前記書き込みを補助する記録磁極とを備えたことを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項2】
前記複数のスピントルク発振素子は、外部からのマイクロ波信号により位相同期されることを特徴とする請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項3】
前記マイクロ波磁場印加部は、積層された複数のスピントルク発振素子により形成されることを特徴とする請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
前記マイクロ波磁場印加部は、スピン波により結合された複数のスピントルク発振素子により形成されることを特徴とする請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項5】
前記スピントルク発振素子は、非磁性層を含むものであり、該非磁性層は非磁性金属により構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の磁気ヘッド。
【請求項1】
高周波アシスト法を利用する記録ヘッドにおいて、
記録媒体の記録トラックに対する書き込みを行うために、互いに位相同期された複数のスピントルク発振素子により形成されるマイクロ波磁場印加部と、
前記マイクロ波磁場印加部による前記書き込みを補助する記録磁極とを備えたことを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項2】
前記複数のスピントルク発振素子は、外部からのマイクロ波信号により位相同期されることを特徴とする請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項3】
前記マイクロ波磁場印加部は、積層された複数のスピントルク発振素子により形成されることを特徴とする請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
前記マイクロ波磁場印加部は、スピン波により結合された複数のスピントルク発振素子により形成されることを特徴とする請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項5】
前記スピントルク発振素子は、非磁性層を含むものであり、該非磁性層は非磁性金属により構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の磁気ヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−16256(P2013−16256A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−233230(P2012−233230)
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【分割の表示】特願2010−217598(P2010−217598)の分割
【原出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【分割の表示】特願2010−217598(P2010−217598)の分割
【原出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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