磁気共鳴イメージング装置及び反転RFパルス位相制御方法
【課題】 MPGパルスを印加するDWI法において、渦電流や残留磁場によらず安定したS/Nにて画像を取得する。
【解決手段】 k空間において、複数の平行軌跡からなるブレードを原点の回りに回転させて、各ブレードのエコーデータを計測するハイブリッドラディアル型のFSEシーケンスの各反転RFパルスまたは励起RFパルスの位相を制御する。具体的には反転RFパルスまたは励起RFパルスの初期位相に、最適位相を予備計測などを用いて計算し設定する。
【解決手段】 k空間において、複数の平行軌跡からなるブレードを原点の回りに回転させて、各ブレードのエコーデータを計測するハイブリッドラディアル型のFSEシーケンスの各反転RFパルスまたは励起RFパルスの位相を制御する。具体的には反転RFパルスまたは励起RFパルスの初期位相に、最適位相を予備計測などを用いて計算し設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(以下,「NMR」という)信号を測定し,核の密度分布や緩和時間分布等を画像化する核磁気共鳴イメージング(以下,「MRI」という)装置における拡散強調イメージングに関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は静磁場中に置かれた被検体に高周波磁場(RF)パルスを印加することにより被検体に生じるエコー信号を検出し、これを信号処理し画像化する装置である。
【0003】
MRI装置ではスピンエコー(SE)法やグラディエントエコー(GE)法に代表されるようなエコー信号計測方法が多数存在する。このエコー信号計測方法の一つに、被検体の組織における水分子のブラウン運動の強さをエコー信号強度に反映させて画像を取得する拡散強調イメージング(DWI)法がある。
【0004】
DWI法では、一般的に励起用RFパルス印加後と反転RFパルス印加後に、大強度の傾斜磁場パルスであるMPGパルス(Motion Probing Gradient)パルスを印加する。このMPGパルスを印加し、異なる位相エンコード量を付与して一枚の拡散強調画像を再構成するためのエコー信号を計測する。
【0005】
エコー信号を計測する本計測部は、高速撮像が可能なエコープラナーイメージング(EPI)法が主に用いられているが、静磁場不均一による画像の歪みに強いとされるファーストスピンエコー(FSE)法においても実現可能である。
【0006】
FSE法を用いたDWI法においては、[非特許文献1]のようにk空間を旋回しながら撮像するPROPELLER法を用いることが知られている。PROPELLER法は、体動によるエコー信号の位相乱れが特定方向に結像しないため、アーチファクトを目立たなくすることができる。
【0007】
さらにFSE法は、Carr Purcell Meiboom Gill(CPMG)条件を用いて撮像を可能としている。FSEは、フリップ角90°の励起RFパルスによる原子核スピンの励起の後に、フリップ角180°の反転RFパルスによる原子核スピンの再収束を複数回行う。その際に、反転RFパルスによる反転が、正確にフリップ角180°でない成分が生じる場合がある。そのような成分の反転誤差が累積加算されないように励起RFパルスと反転RFパルスの位相を直交する(つまり、励起RFパルスと反転RFパルスの位相90度異ならせる)ように印加する方法がCPMG法である。
【0008】
しかし、DWI法では極めて遅い流速を持つ水分子の磁化に位相回転を付与するために、大強度のMPGパルスを印加する必要がある。そのため、MPGパルスや他の傾斜磁場の印加に起因する渦電流や残留磁化等の不整磁場によって、局所的に原子核スピンが変化してしまい、励起RFパルスと反転RFパルスの位相の関係がCPMG法の通りに行えず、CPMG法が規定する条件を保つことが困難になる。
【0009】
それに対して、[特許文献1]、[非特許文献2]のように、原子核スピンの回転座標系において、1番目の反転RFパルスを基準にして、2番目以降の反転RFパルスの位相を、2番目が直交した位相を持っており、3番目が1番目と同位相、4番目が2番目と同位相...と偶数番目と奇数番目がそれぞれ直交する位相を持つ。以上のように反転RFパルスを印加し、局所的なスピンの位相変化に対応する方法が用いられている。
【0010】
しかし、偶数番目と奇数番目の反転RFパルスの位相が異なることによって、検出される偶数エコー信号、奇数エコー信号の位相差を補正する必要がある。そのため、位相エンコードを印加しないで偶数エコー信号と奇数エコー信号をそれぞれ2つずつ計測して、リファレンスエコー信号とする。そして偶数エコー信号間と奇数エコー信号間の位相に基づいて、本計測の偶数エコー信号と奇数エコー信号をそれぞれ位相補正することにより、MPGパルス印加によって生じる局所的なスピンの位相変化による画質劣化を低減することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6882148号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Pipe JG、「Motion Correction With PROPELLER MRI,Application to Head Motion and Free Breathing Cardiac Imaging」、Magenetic Resonance in Medichine、p.963-969、Vol.42、1999年
【非特許文献2】Pipe JG、Farhing VG、Forbes KP、「Multiple Diffusion-Weighted FSE Using PROPELLER MRI」、Magenetic Resonance in Medichine、p.45-52、Vol.47、2002年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし,[特許文献1][非特許文献2]に記されているシミュレーションように、反転RFパルスのフリップ角が正確に180度に倒れていない場合、1番目の反転RFパルスの初期位相に依存して、検出されるエコー信号値が変化する。特に、3番目に検出されるエコー信号値の変化が大きい。よって初期位相に依存してS/Nが変動してしまう。またMPGパルスを印加する場合、渦電流などの影響により最適な初期位相が分からなくなってしまう。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上記課題を鑑みてなされたものであり、MPGパルスを印加するDWI法において、渦電流や残留磁場によらず安定したS/Nにて画像を取得できるMRI装置及び反転RFパルス位相制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、k空間において、複数の平行軌跡からなるブレードを原点の回りに回転させて、各ブレードのエコーデータを計測するハイブリッドラディアル型のFSEシーケンスの各反転RFパルスの初期位相を制御する。
【0016】
具体的には、予め最適な初期位相を予備計測等で求めておき、反転RFパルス又は、励起RFパルスの初期位相を設定する。その際、ブレード毎に、前記反転RFパルス又は、励起RFパルスの初期位相を異ならせて設定する。或いは、全ブレードにおける前記反転RFパルス又は、励起RFパルスの初期位相を同一にする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のMRI装置及び反転RFパルス位相制御方法によれば、MPGパルスを印加するDWI法において、渦電流や残留磁場によらず安定したS/Nにて画像を取得できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るMRI装置の一実施例における全体基本構成のブロック図
【図2】同じスライスにMPGパルスを同じ印加強度で同じ方向に印加した場合の、反転RFパルスの初期位相値(δ)とS/Nとの関係を示すグラフ
【図3】MPGパルスの印加方向を変化したときの、反転RFパルスの初期位相値(δ)とS/Nの関係を示すグラフ
【図4】図2で示した初期位相201のときの画像401と、初期位相202のときの画像402
【図5】ハイブリッドラディアル型のDW-FSEシーケンスの一例のシーケンスチャート
【図6】実施例1のハイブリッドラディアル型のDW-FSEシーケンスの一例のシーケンスチャート
【図7】演算処理部8の機能ブロック図(a)は実施例1,3の機能ブロック図であり、(b)は実施例2の機能ブロック図
【図8】実施例1の処理フローを示すフローチャート
【図9】実施例2の処理フローを示すフローチャート
【図10】実施例2の、各ブレードの反転RFパルスの初期位相δ0と計測されるエコー信号のS/Nとの関係を示すグラフ
【図11】図10で示した初期位相1001のときの画像1101と、初期位相1002のときの画像1102
【図12】実施例3の処理フローを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に従って本発明のMRI装置の好ましい実施形態について詳説する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0020】
最初に、本発明に係るMRI装置の一例の全体概要を図1に基づいて説明する。図1は、本発明に係るMRI装置の一実施例の全体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、NMR現象を利用して被検体の断層画像を得るもので、図1に示すように、MRI装置は静磁場発生系2と、傾斜磁場発生系3と、送信系5と、受信系6と、信号処理系7と、計測制御部4と、演算処理部8とを備えて構成される。
【0021】
静磁場発生系2は、垂直磁場方式であれば、被検体1の周りの空間にその体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば、体軸方向に均一な静磁場を発生させるもので、被検体1の周りに永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源が配置されている。
【0022】
傾斜磁場発生系3は、MRI装置の座標系(静止座標系)であるX,Y,Zの3軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源10とから成り、後述の計測制御部4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源10を駆動することにより、X,Y,Zの3軸方向に傾斜磁場Gx,Gy,Gzを印加する。撮影時には、スライス面(撮影断面)に直交する方向にスライス方向傾斜磁場パルス(Gs)を印加して被検体1に対するスライス面を設定し、そのスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード方向傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード方向傾斜磁場パルス(Gf)を印加して、エコー信号にそれぞれの方向の位置情報をエンコードする。
【0023】
計測制御部4は、高周波磁場パルス(以下、「RFパルス」という)と傾斜磁場パルスをある所定のパルスシーケンスで繰り返し印加する制御手段で、演算処理部8の制御で動作し、被検体1の断層画像のデータ収集に必要な種々の命令を送信系5、傾斜磁場発生系3、および受信系6に送る。
【0024】
送信系5は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるために、被検体1にRFパルスを照射するもので、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と送信側の高周波コイル(送信コイル)14aとから成る。高周波発振器11から出力された高周波パルスを計測制御部4からの指令によるタイミングで変調器12により振幅変調し、この振幅変調された高周波パルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体1に近接して配置された高周波コイル14aに供給することにより、RFパルスが被検体1に照射される。
【0025】
受信系6は、被検体1の生体組織を構成する原子核スピンの核磁気共鳴により放出されるエコー信号(NMR信号)を検出するもので、受信側の高周波コイル(受信コイル) 14bと信号増幅器15と直交位相検波器16と、A/D変換器17とから成る。送信側の高周波コイル14aから照射された電磁波によって誘起された被検体1の応答のNMR信号が被検体1に近接して配置された高周波コイル14bで検出され、信号増幅器15で増幅された後、計測制御部4からの指令によるタイミングで直交位相検波器16により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器17でディジタル量に変換されて、信号処理系7に送られる。
信号処理系7は、各種データ処理と処理結果の表示及び保存等を行うもので、光ディスク19、磁気ディスク18等の外部記憶装置と、CRT等からなるディスプレイ20とを有し、受信系6からのデータが演算処理部8に入力されると、演算処理部8が信号処理、画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体1の断層画像をディスプレイ20に表示すると共に、外部記憶装置の磁気ディスク18等に記録する。
【0026】
操作部25は、MRI装置の各種制御情報や上記信号処理系7で行う処理の制御情報を入力するもので、トラックボール又はマウス23、及び、キーボード24から成る。この操作部25はディスプレイ20に近接して配置され、操作者がディスプレイ20を見ながら操作部25を通してインタラクティブにMRI装置の各種処理を制御する。
【0027】
現在MRI装置の撮像対象核種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0028】
最初に、反転RFパルスの初期位相値(δ)と計測されるエコー信号のS/Nとの関係を説明する。図2は、同じスライスにMPGパルスを同じ印加強度で同じ方向に印加した場合の、反転RFパルスの初期位相値(δ)とS/Nとの関係を示すグラフである。また、図3は、MPGパルスの印加方向を変化したときの、反転RFパルスの初期位相値(δ)とS/Nの関係を示すグラフである。□はAP(Anterior-Posterior)方向に、△はRL(Right-Left)方向に、○はHF(Head-Feet)方向に、それぞれMPGパルスを印加した場合を示す。共に、横軸は初期位相値(δ)を示し、縦軸はエコー信号のS/Nを示す。
【0029】
図2からは、初期位相201のときがS/Nが最も高く、初期位相202のときS/Nが最も低いことが理解される。図4に、初期位相201のときの画像401と、初期位相202のときの画像402を示す。図2,3からMPGパルスの影響で初期位相とS/Nの関係が変化し、その変化の仕方がMPGパルスの印加方向にも依存することが理解される。
【0030】
本発明は、反転RFパルスの位相が奇数、偶数にて直交するときに、図2のように初期位相の違いによってS/Nの変化がおこらないようにする。反転RFパルスの初期位相を制御することで、MPGパルスの印加強度、印加方向、及び、スライス位置によらず安定した画質を提供する。
【0031】
そのために、本発明は初期位相の違いによってSNの変化がおこらないように、ブレード毎に反転RFパルスまたは励起RFパルスの初期位相を設定する。なお、反転RFパルスの初期位相を変えることは、励起RFパルスの初期位相を変えることと同じ意味でもある。
【0032】
以下、本発明の各実施例を詳細に説明する。
【0033】
(DWIシーケンス)
最初に、本発明に係るハイブリッドラディアル型のDW-FSEシーケンス(以下HybridDWFSEシーケンスという)について、図5に示すシーケンスチャートを用いて説明する。図5のシーケンスチャートは、回転角度がゼロ(即ち、k空間のkx軸に平行な)ブレードのエコー信号を計測するためのパルスシーケンスを示す。他の回転角度のブレードのエコー信号の計測の際には、このシーケンスチャートに示す各傾斜磁場パルス波形を回転角度に応じて、3軸に配分すれば良い。
【0034】
図5のシーケンスチャートにおいて、RF,MPG、Gs,Gp,Gf,Echoは、それぞれRFパルス、MPGパルス、スライス傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、周波数エンコード傾斜磁場、エコー信号を表す。90度励起RFパルス71とスライス選択傾斜磁場78を共に印加して、所望のスライスを励起する。次に、スライス軸、位相エンコード軸、周波数エンコード軸のいずれか1つ以上の軸に第1のMPGパルス76を印加する。MPGパルスが印加された軸方向の水分子のブラウン運動の強さをエコー信号強度に反映される。
【0035】
また、周波数エンコード軸にディフェイズパルス81を印加して、励起したスピンの位相を予め分散させておく。ディフェイズパルス81の印加量は、後に説明する読み出し傾斜磁場83等の印加量の1/2とする。次に、反転RFパルス72とスライス選択傾斜磁場79とを印加して、同じスライスのスピンの位相を180度反転させる。次に、第1のMPGパルス76と同じ印加量の第2のMPGパルス77を第1のMPGパルス76の印加軸を同じ軸に印加する。これにより、第1のMPGパルス76により分散された静止しているスピンの位相が元に戻るが、ブラウン運動している水分子の位相分散がゼロに戻らずに、その状態がエコー信号に反映される。次に、所定の位相エンコード量を有する位相エンコードパルス80と読み出し傾斜磁場82を印加してエコー信号83を計測する。
【0036】
エコー信号83を計測した後に、印加した位相エンコードパルス80と逆極性の位相エンコードパルスを印加して、位相エンコードパルス80の印加量をキャンセルする(ゼロに戻す)。そして、反転RFパルス73とスライス選択傾斜磁場79を印加して同じスライスのスピンの位相を180度反転させる。以下、同様にして、位相エンコードパルス80と読み出し傾斜磁場82を印加してエコー信号84,85,86、・・・の計測を反転RFパルス74,75、・・・毎に行う。
【実施例1】
【0037】
本発明のMRI装置及び反転RFパルス位相制御方法の実施例1を説明する。本実施例1は、ブレード毎に反転RFパルスの初期位相を、前のブレードで計測されたリファレンスエコー信号の位相を用いる。以下、図面を用いて本実施例を説明する。
【0038】
(反転RFパルスの位相設定)
最初に、FSEシーケンスにおける第j(j=1,2,・・・,全ブレード数)ブレードの反転RFパルスの位相計算について説明する。各反転RFパルスには以下の位相を設定する。
【0039】
1番目の反転RFパルス72の位相に(Y+α+δj)を設定する。ここで、Yは励起RFパルス71の位相に直交する位相値である。またαは励起RFパルス71の印加中心から1番目の反転RFパルス72の印加中心の間に変化する位相値である。またδjはj番目のブレードに設定する反転RFパルスの初期位相である。
【0040】
2番目の反転RFパルス73の位相に(X+2α+β/2+δj)を設定する。ここで、Xは励起RFパルス71の位相値である。またβは反転RFパルスの印加間隔であるインターエコータイムの時間に変化する位相である。
【0041】
3番目の反転RFパルス74の位相に(Y+2α+3β/2+δj)を設定する。
【0042】
4番目の反転RFパルス75の位相に(X+2α+5β/2+δj)を設定する。
以降、同様にして、以下のように設定する。
【0043】
(2n+1)番目の反転RFパルスの位相=(Y+2α+β/2+β・2n+δj)、
(2n)番目の反転RFパルスの位相=(X+2α+β/2+β・2(n-1)+δj) (1)
を設定する。ここで、n=1,2,3・・・とする
。
【0044】
また、反転RFパルスの初期位相の設定を行わずに、その変わりに励起RFパルスの初期位相に-δjを設定してもよい。
【0045】
次にj番目ブレードに設定するδjを説明する。1ブレード目のδ1に適当な値を設定する。しかし最適な初期位相の理論値としてδ1=π/4が好ましい。さらに、j番目ブレードの計測後に検出されるリファレンスエコー信号である偶数エコー信号と奇数エコー信号の位相をR1jとR2jとすると
δj+1=(R1j-R2j)/2+π/4 (2)
が最適とされる初期位相である。
【0046】
つまり、ブレード毎に反転RFパルスの初期位相を設定する。その初期位相は、直前のブレードで計測されたリファレンスエコー信号の位相を用いる。
【0047】
このように、位相を設定することで、MPGパルスの印加強度、印加時間、スライスによらず安定した画質を提供することが可能となる。
【0048】
(パルスシーケンスの説明)
本実施例に係るHybridDWFSEシーケンスの一例を図6に示す。図6に示したシーケンスチャートは、図5に示したHybridDWFSEシーケンスのシーケンスチャートにおいて、最初の2つのエコー信号を、後述するリファレンスエコー信号として計測するために、位相エンコードパルス80を印加しない。他は、図5のシーケンスチャートと同じなので、詳細な説明は省略する。
【0049】
(機能ブロック図)
次に、本実施例に係るHybridDWFSEシーケンスの計測を行うための演算処理部8の各機能を、図7(a)に示す機能ブロック図を用いて説明する。本実施例の演算処理部8の機能は、初期位相設定部701と、反転パルス位相設定部702と、を有してなる。
【0050】
初期位相設定部701は、第jブレードの反転RFパルスの初期位相(δj)を(2)式に基づいて設定する。例えば、第1ブレードの反転RFパルスの初期位相(δ1)として、上述したとおり、理論値としてπ/4が好ましい。そして、第jブレードで計測されたリファレンスエコー信号を用いて、式(2)に基づいて、第(j+1)ブレードの反転RFパルスの初期位相(δj+1)を設定する。
【0051】
反転パルス位相設定部702は、初期位相設定部701で設定された第jブレードの反転RFパルスの初期位相(δj)と式(1)とに基づいて、第jブレードの各反転RFパルスの位相を設定する。第jブレードの各反転RFパルスの位相を設定する。
【0052】
(フローチャート)
次に、上記各機能が連携して行う、本実施例の処理フローを図8に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0053】
ステップ801で、反転RFパルス位相設定部702は、ブレードカウンタ(j)に1を設定する。
【0054】
ステップ802で、反転RFパルス位相設定部702は、ブレードカウンタ(j)と全ブレード数とを比較し、ブレードカウンタ(j)が全ブレード数未満の場合にはステップ803へ移行し、以上である場合には、HybridDWFSEシーケンスの計測を終了する。
【0055】
ステップ803で、初期位相設定部701は、第jブレードの反転RFパルスの初期位相(δj)を設定する。設定の仕方は前述したとおりである。特に、初期位相設定部701は、後述するステップ805で第jブレードで計測されるリファレンスエコー信号を用いて、第(j+1)ブレードの反転RFパルスの初期位相(δj+1)を設定する。
【0056】
ステップ804で、反転RFパルス位相設定部702は、第jブレードの反転RFパルスの初期位相(δj)と式(1)とに基づいて、第jブレードの各反転RFパルスの位相を設定する。そして、反転RFパルス位相設定部702は、設定した第jブレードの各反転RFパルスの位相を計測制御部4に通知する。
【0057】
ステップ805で、計測制御部4は、各反転RFパルスの位相を、ステップ804で通知された各反転RFパルスの位相となるように制御しながら、第jブレードのエコー信号を計測する。その後に引き続いて、偶数エコー信号と奇数エコー信号のリファレンスエコー信号を計測する。そして、計測したリファレンスエコー信号のデータを反転RFパルス位相設定部702に通知する。
【0058】
ステップ806で、反転RFパルス位相設定部702は、ブレードカウンタ(j)をインクリメントして、ステップ802に以降する。
以上までが実施例1の処理フローの概要である。
【0059】
本実施例1の上記処理フローにより、安定して図2の201のSNにて図4の401の画像を得ることができる。
【0060】
以上説明したように、本実施例1のMRI装置及び反転RFパルス位相制御方法は、ブレード毎に反転RFパルスの初期位相を、前のブレードで計測されたリファレンスエコー信号の位相を用いる。その結果、MPGパルスを印加するDWI法において、渦電流や残留磁場によらず安定したS/Nにて画像を取得できるようになる。
【実施例2】
【0061】
本発明のMRI装置及び反転RFパルス位相制御方法の実施例2を説明する。本実施例2は、基本的に前述の実施例1と同様の構成を有する。ただし、位相エンコードを印加しない予備計測を行い、予備計測で計測したリファレンスエコー信号の位相を用いて反転RFパルスに設定する初期位相を計算し、計算した初期位相をブレードによらずに全ブレードに共通して適用する。以下、本実施例2を詳細に説明する。
【0062】
(反転RFパルスの位相設定)
最初に、HybridDWFSEシーケンスの全ブレードに共通して適用する反転RFパルスの位相の計算方法について説明する。
【0063】
位相エンコードを印加しないでリファレンスエコー信号を計測するための予備計測を行い、検出される偶数エコー信号と奇数エコー信号の位相をそれぞれR1pとR2pとすると
δ=(R1p-R2p)/2+π/4 (3)
を反転RFパルスの初期位相とする。この位相を用いて、全ブレードの各反転RFパルスの位相を以下のように計算する。
【0064】
1番目の反転RFパルスの位相に(Y+α+δ)を設定する。ここで、Yは励起RFパルスの位相に直交する位相値である。またαは励起RFパルスの印加中心から反転RFパルスの印加中心の間に変化する位相である。
【0065】
2番目の反転RFパルスの位相に(X+2α+β/2+δ)を設定する。Xは励起RFパルスの位相である。またβは反転RFパルスの印加間隔であるインターエコータイムの時間に変化する位相である。
3番目の反転RFパルスの位相に(Y+2α+3β/2+δ)を設定する。
4番目の反転RFパルスの位相に(X+2α+5β/2+δ)を設定する。
以降、同様にして、以下のように設定する。
【0066】
(2n+1)番目の反転RFパルスの位相=(Y+2α+β/2+β・2n+δ)、
(2n)番目の反転RFパルスの位相=(X+2α+β/2+β・2(n-1)+δ) (4)
を設定する。ここで、n=1,2,3・・・とする。つまり、ブレードによらずに全ブレードに計算した初期位相を適用する。本実施例の初期位相は、位相エンコードを印加しない予備計測で計測したリファレンスエコー信号の位相を用いて求める。
【0067】
また、反転RFパルスの初期位相の設定を行わずに、その変わりに励起RFパルスの初期位相に-δを設定してもよい。
【0068】
以上の位相を各版手RFパルスに設定することで、MPGパルスの印加強度、印加時間、スライスによらず安定した画質を提供することが可能となる。
【0069】
(パルスシーケンスの説明)
本実施例のHybridDWFSEシーケンスは図5に示したパルスシーケンスと同じである。また、本実施例の予備計測シーケンスは、図5に示したパルスシーケンスにおいて、位相エンコード80を印加しないものである。他は図5に示したパルスシーケンと同じなので詳細な説明は省略する。
【0070】
(機能ブロック図)
次に、本実施例に係るHybridDWFSEシーケンスの計測を行うための演算処理部8の各機能を、図7(b)に示す機能ブロック図を用いて説明する。本実施例の演算処理部8の機能は、前述の実施例1で説明した図7(a)に示した各機能の他に、予備計測設定部703を備える。
【0071】
初期位相設定部701は、全ブレードに共通して適用する反転RFパルスの初期位相(δ)を(3)式に基づいて設定する。
【0072】
反転パルス位相設定部702は、初期位相設定部701で設定された全ブレードの反転RFパルスの初期位相(δ)と式(4)とに基づいて、全ブレードの各反転RFパルスの位相を設定する。
【0073】
予備計測設定部703は、本計測と同じMPGパルス印加強度、印加時間、同スライス断面にて位相エンコードを印加しない予備計測シーケンスの制御データを生成して、計測制御部4に通知する。
【0074】
(フローチャート)
次に、上記各機能が連携して行う、本実施例の処理フローを図9に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0075】
ステップ901で、予備計測設定部703は、予備計測シーケンスの制御データを生成して、計測制御部4に通知する。計測制御部4は、通知された制御データを用いて予備計測シーケンスを実行し、計測したリファレンスエコー信号のエコーデータを初期位相設定部701に通知する。
【0076】
ステップ902で、初期位相設定部701は、ステップ901で通知された予備計測シーケンスのエコーデータを用いて、式(3)に基づいて、全ブレードで共通に適用する反転RFパルスの初期位相を計算する。
【0077】
ステップ903で、反転RFパル位相設定部702は、ステップ902で算出された反転RFパルスの初期位相(δ)と式(4)とに基づいて、各反転RFパルスの位相を計算して設定する。
【0078】
ステップ904で、反転RFパル位相設定部702は、ステップ903で求めた各反転RFパルスの位相を、全ブレードのHybridDWFSEシーケンスにおける反転RFパルスの位相に適用する。そして、反転RFパル位相設定部702は、HybridDWFSEシーケンスの各ブレードの反転RFパルスの位相を計測制御部4に通知する。
【0079】
ステップ905で、計測制御部4は、全ブレードのエコー信号を計測する。
以上までが実施例1の処理フローの概要である。
【0080】
本実施例2の上記処理フローでも、安定して図2の201のSNにて図4の401の画像を得ることができる。
【0081】
以上説明したように、本実施例2のMRI装置及び反転RFパルス位相制御方法は、位相エンコードを印加しない予備計測を行い、予備計測で計測したリファレンスエコー信号の位相を用いて反転RFパルスに設定する初期位相を計算し、計算した初期位相をブレードによらずに全ブレードに共通して適用する。その結果、MPGパルスを印加するDWI法において、実施例1と比較して、撮像中での反転RFパルスの初期位相の計算及び設定を簡略化でき、渦電流や残留磁場によらず安定したS/Nにて画像を取得できるようになる。
【実施例3】
【0082】
本発明のMRI装置及び反転RFパルス位相制御方法の実施例3を説明する。本実施例3は、基本的に前述の実施例1と同様の構成を有する。ただし、全ブレードに0〜πまでの初期位相を均等に設定する。以下、本実施例3を詳細に説明する。
【0083】
(反転RFパルスの位相設定)
最初に、HybridDWFSEシーケンスにおける第j(j=1,2,・・・,全ブレード数)ブレードの反転RFパルスの位相計算について説明する。
【0084】
第jブレードの反転RFパルスの位相の計算方法は、前述の実施例1で説明した計算方法と同様である。具体的には(1)式に基づいて計算する。よって、詳細な説明を省略する。前述の実施例1と異なる箇所は、以下の第jブレードの初期位相δjの計算方法である。
【0085】
第j(j=1,2,・・・,全ブレード数)ブレードの反転RFパルスの初期位相δjは、
δj=(π/全ブレード数)×n+δ0 (6)
とする。つまり、全ブレードに0〜πまでの初期位相を均等に設定する。ただし,δ0は全ブレード共通の初期値とする。
【0086】
また、反転RFパルスの初期位相の設定を行わずに、その変わりに励起RFパルスの初期位相に-δjを設定してもよい。
【0087】
図10はδ0と計測されるエコー信号のS/Nとの関係を示す。横軸は初期位相値(δ)を示し、縦軸はエコー信号のS/Nを示す。δ0によらずS/Nが安定していることが理解される。ここで、図11に、初期位相1001のときの画像1101と、初期位相1002のときの画像1102とを示す。
【0088】
全ブレードに0〜πまでの初期位相を均等に設定することで、MPGパルスの印加強度、印加時間、スライス位置によらず安定した画質を提供することが可能となる。
【0089】
(機能ブロック図)
次に、本実施例に係るHybridDWFSEシーケンスの計測を行うための演算処理部8の各機能を説明する。本実施例の演算処理部8の機能は、前述の図7(a)で説明した実施例1の機能ブロック図と同様であるが、各機能の処理内容が異なる。以下、本実施例3の処理フローの説明を通して、各機能部の処理内容を説明する。
【0090】
初期位相設定部701は、ブレード毎の反転RFパルスの初期位相(δj)を(6)式に基づいて設定する。
【0091】
反転パルス位相設定部702は、初期位相設定部701で設定された各ブレードの反転RFパルスの初期位相(δj)と式(1)とに基づいて、各ブレードの各反転RFパルスの位相を設定する。
【0092】
(フローチャート)
次に、上記各機能が連携して行う、本実施例の処理フローを図12に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0093】
ステップ1201で、初期位相設定部701は、式(6)に基づいて、ブレード毎に反転RFパルスの初期位相を設定する。
【0094】
ステップ1202で、反転RFパル位相設定部702は、ステップ1101で設定されたブレード毎の反転RFパルスの初期位相を用いて、式(1)に基づいて、ブレード毎に各反転RFパルスの位相を設定する。そして、反転RFパル位相設定部702は、設定した第jブレードの各反転RFパルスの位相を計測制御部4に通知する。
【0095】
ステップ1203で、計測制御部4は、各ブレードの各反転RFパルスの位相を、ステップ1202で通知された各反転RFパルスの位相となるように制御しながら、各ブレードのエコー信号を計測する。
【0096】
以上までが実施例1の処理フローの概要である。
【0097】
本実施例3の上記処理フローを行うことで、安定して図10のSNにて図11の1101または1102の画像を得ることができる。
【0098】
以上説明したように、本実施例2のMRI装置及び反転RFパルス位相制御方法は、全ブレードに0〜πまでの初期位相を均等に設定する。その結果、MPGパルスを印加するDWI法において、実施例1、2と比較して、反転RFパルスの初期位相の計算及び設定を行うことなく、渦電流や残留磁場によらず安定したS/Nにて画像を取得できるようになる。
【符号の説明】
【0099】
1 被検体、2 静磁場発生系、3 傾斜磁場発生系、4 計測制御部、5 送信系、6 受信系、7 信号処理系、8 演算処理部、9 傾斜磁場コイル、10 傾斜磁場電源、11 高周波発信器、12 変調器、13 高周波増幅器、14a 高周波コイル(送信コイル)、14b 高周波コイル(受信コイル)、15 信号増幅器、16 直交位相検波器、17 A/D変換器、18 磁気ディスク、19 光ディスク、20 ディスプレイ、21 ROM、22 RAM、23 トラックボール又はマウス、24 キーボード、71 励起RFパルス、72 第1反転RFパルス、73 第2反転RFパルス、74 第3反転RFパルス、75 第4反転RFパルス、76 前方MPGパルス、77 後方MPGパルス、78 励起RFスライス選択磁場パルス、79反転RFスライス選択磁場パルス、80 位相エンコードパルス、81 ディフェイズパルス、82 周波数エンコードパルス、83 第1エコー、84 第2エコー、85 第3エコー、86 第4エコー
【技術分野】
【0001】
本発明は,被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(以下,「NMR」という)信号を測定し,核の密度分布や緩和時間分布等を画像化する核磁気共鳴イメージング(以下,「MRI」という)装置における拡散強調イメージングに関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は静磁場中に置かれた被検体に高周波磁場(RF)パルスを印加することにより被検体に生じるエコー信号を検出し、これを信号処理し画像化する装置である。
【0003】
MRI装置ではスピンエコー(SE)法やグラディエントエコー(GE)法に代表されるようなエコー信号計測方法が多数存在する。このエコー信号計測方法の一つに、被検体の組織における水分子のブラウン運動の強さをエコー信号強度に反映させて画像を取得する拡散強調イメージング(DWI)法がある。
【0004】
DWI法では、一般的に励起用RFパルス印加後と反転RFパルス印加後に、大強度の傾斜磁場パルスであるMPGパルス(Motion Probing Gradient)パルスを印加する。このMPGパルスを印加し、異なる位相エンコード量を付与して一枚の拡散強調画像を再構成するためのエコー信号を計測する。
【0005】
エコー信号を計測する本計測部は、高速撮像が可能なエコープラナーイメージング(EPI)法が主に用いられているが、静磁場不均一による画像の歪みに強いとされるファーストスピンエコー(FSE)法においても実現可能である。
【0006】
FSE法を用いたDWI法においては、[非特許文献1]のようにk空間を旋回しながら撮像するPROPELLER法を用いることが知られている。PROPELLER法は、体動によるエコー信号の位相乱れが特定方向に結像しないため、アーチファクトを目立たなくすることができる。
【0007】
さらにFSE法は、Carr Purcell Meiboom Gill(CPMG)条件を用いて撮像を可能としている。FSEは、フリップ角90°の励起RFパルスによる原子核スピンの励起の後に、フリップ角180°の反転RFパルスによる原子核スピンの再収束を複数回行う。その際に、反転RFパルスによる反転が、正確にフリップ角180°でない成分が生じる場合がある。そのような成分の反転誤差が累積加算されないように励起RFパルスと反転RFパルスの位相を直交する(つまり、励起RFパルスと反転RFパルスの位相90度異ならせる)ように印加する方法がCPMG法である。
【0008】
しかし、DWI法では極めて遅い流速を持つ水分子の磁化に位相回転を付与するために、大強度のMPGパルスを印加する必要がある。そのため、MPGパルスや他の傾斜磁場の印加に起因する渦電流や残留磁化等の不整磁場によって、局所的に原子核スピンが変化してしまい、励起RFパルスと反転RFパルスの位相の関係がCPMG法の通りに行えず、CPMG法が規定する条件を保つことが困難になる。
【0009】
それに対して、[特許文献1]、[非特許文献2]のように、原子核スピンの回転座標系において、1番目の反転RFパルスを基準にして、2番目以降の反転RFパルスの位相を、2番目が直交した位相を持っており、3番目が1番目と同位相、4番目が2番目と同位相...と偶数番目と奇数番目がそれぞれ直交する位相を持つ。以上のように反転RFパルスを印加し、局所的なスピンの位相変化に対応する方法が用いられている。
【0010】
しかし、偶数番目と奇数番目の反転RFパルスの位相が異なることによって、検出される偶数エコー信号、奇数エコー信号の位相差を補正する必要がある。そのため、位相エンコードを印加しないで偶数エコー信号と奇数エコー信号をそれぞれ2つずつ計測して、リファレンスエコー信号とする。そして偶数エコー信号間と奇数エコー信号間の位相に基づいて、本計測の偶数エコー信号と奇数エコー信号をそれぞれ位相補正することにより、MPGパルス印加によって生じる局所的なスピンの位相変化による画質劣化を低減することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6882148号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Pipe JG、「Motion Correction With PROPELLER MRI,Application to Head Motion and Free Breathing Cardiac Imaging」、Magenetic Resonance in Medichine、p.963-969、Vol.42、1999年
【非特許文献2】Pipe JG、Farhing VG、Forbes KP、「Multiple Diffusion-Weighted FSE Using PROPELLER MRI」、Magenetic Resonance in Medichine、p.45-52、Vol.47、2002年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし,[特許文献1][非特許文献2]に記されているシミュレーションように、反転RFパルスのフリップ角が正確に180度に倒れていない場合、1番目の反転RFパルスの初期位相に依存して、検出されるエコー信号値が変化する。特に、3番目に検出されるエコー信号値の変化が大きい。よって初期位相に依存してS/Nが変動してしまう。またMPGパルスを印加する場合、渦電流などの影響により最適な初期位相が分からなくなってしまう。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上記課題を鑑みてなされたものであり、MPGパルスを印加するDWI法において、渦電流や残留磁場によらず安定したS/Nにて画像を取得できるMRI装置及び反転RFパルス位相制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、k空間において、複数の平行軌跡からなるブレードを原点の回りに回転させて、各ブレードのエコーデータを計測するハイブリッドラディアル型のFSEシーケンスの各反転RFパルスの初期位相を制御する。
【0016】
具体的には、予め最適な初期位相を予備計測等で求めておき、反転RFパルス又は、励起RFパルスの初期位相を設定する。その際、ブレード毎に、前記反転RFパルス又は、励起RFパルスの初期位相を異ならせて設定する。或いは、全ブレードにおける前記反転RFパルス又は、励起RFパルスの初期位相を同一にする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のMRI装置及び反転RFパルス位相制御方法によれば、MPGパルスを印加するDWI法において、渦電流や残留磁場によらず安定したS/Nにて画像を取得できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るMRI装置の一実施例における全体基本構成のブロック図
【図2】同じスライスにMPGパルスを同じ印加強度で同じ方向に印加した場合の、反転RFパルスの初期位相値(δ)とS/Nとの関係を示すグラフ
【図3】MPGパルスの印加方向を変化したときの、反転RFパルスの初期位相値(δ)とS/Nの関係を示すグラフ
【図4】図2で示した初期位相201のときの画像401と、初期位相202のときの画像402
【図5】ハイブリッドラディアル型のDW-FSEシーケンスの一例のシーケンスチャート
【図6】実施例1のハイブリッドラディアル型のDW-FSEシーケンスの一例のシーケンスチャート
【図7】演算処理部8の機能ブロック図(a)は実施例1,3の機能ブロック図であり、(b)は実施例2の機能ブロック図
【図8】実施例1の処理フローを示すフローチャート
【図9】実施例2の処理フローを示すフローチャート
【図10】実施例2の、各ブレードの反転RFパルスの初期位相δ0と計測されるエコー信号のS/Nとの関係を示すグラフ
【図11】図10で示した初期位相1001のときの画像1101と、初期位相1002のときの画像1102
【図12】実施例3の処理フローを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に従って本発明のMRI装置の好ましい実施形態について詳説する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0020】
最初に、本発明に係るMRI装置の一例の全体概要を図1に基づいて説明する。図1は、本発明に係るMRI装置の一実施例の全体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、NMR現象を利用して被検体の断層画像を得るもので、図1に示すように、MRI装置は静磁場発生系2と、傾斜磁場発生系3と、送信系5と、受信系6と、信号処理系7と、計測制御部4と、演算処理部8とを備えて構成される。
【0021】
静磁場発生系2は、垂直磁場方式であれば、被検体1の周りの空間にその体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば、体軸方向に均一な静磁場を発生させるもので、被検体1の周りに永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源が配置されている。
【0022】
傾斜磁場発生系3は、MRI装置の座標系(静止座標系)であるX,Y,Zの3軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源10とから成り、後述の計測制御部4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源10を駆動することにより、X,Y,Zの3軸方向に傾斜磁場Gx,Gy,Gzを印加する。撮影時には、スライス面(撮影断面)に直交する方向にスライス方向傾斜磁場パルス(Gs)を印加して被検体1に対するスライス面を設定し、そのスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード方向傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード方向傾斜磁場パルス(Gf)を印加して、エコー信号にそれぞれの方向の位置情報をエンコードする。
【0023】
計測制御部4は、高周波磁場パルス(以下、「RFパルス」という)と傾斜磁場パルスをある所定のパルスシーケンスで繰り返し印加する制御手段で、演算処理部8の制御で動作し、被検体1の断層画像のデータ収集に必要な種々の命令を送信系5、傾斜磁場発生系3、および受信系6に送る。
【0024】
送信系5は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるために、被検体1にRFパルスを照射するもので、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と送信側の高周波コイル(送信コイル)14aとから成る。高周波発振器11から出力された高周波パルスを計測制御部4からの指令によるタイミングで変調器12により振幅変調し、この振幅変調された高周波パルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体1に近接して配置された高周波コイル14aに供給することにより、RFパルスが被検体1に照射される。
【0025】
受信系6は、被検体1の生体組織を構成する原子核スピンの核磁気共鳴により放出されるエコー信号(NMR信号)を検出するもので、受信側の高周波コイル(受信コイル) 14bと信号増幅器15と直交位相検波器16と、A/D変換器17とから成る。送信側の高周波コイル14aから照射された電磁波によって誘起された被検体1の応答のNMR信号が被検体1に近接して配置された高周波コイル14bで検出され、信号増幅器15で増幅された後、計測制御部4からの指令によるタイミングで直交位相検波器16により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器17でディジタル量に変換されて、信号処理系7に送られる。
信号処理系7は、各種データ処理と処理結果の表示及び保存等を行うもので、光ディスク19、磁気ディスク18等の外部記憶装置と、CRT等からなるディスプレイ20とを有し、受信系6からのデータが演算処理部8に入力されると、演算処理部8が信号処理、画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体1の断層画像をディスプレイ20に表示すると共に、外部記憶装置の磁気ディスク18等に記録する。
【0026】
操作部25は、MRI装置の各種制御情報や上記信号処理系7で行う処理の制御情報を入力するもので、トラックボール又はマウス23、及び、キーボード24から成る。この操作部25はディスプレイ20に近接して配置され、操作者がディスプレイ20を見ながら操作部25を通してインタラクティブにMRI装置の各種処理を制御する。
【0027】
現在MRI装置の撮像対象核種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0028】
最初に、反転RFパルスの初期位相値(δ)と計測されるエコー信号のS/Nとの関係を説明する。図2は、同じスライスにMPGパルスを同じ印加強度で同じ方向に印加した場合の、反転RFパルスの初期位相値(δ)とS/Nとの関係を示すグラフである。また、図3は、MPGパルスの印加方向を変化したときの、反転RFパルスの初期位相値(δ)とS/Nの関係を示すグラフである。□はAP(Anterior-Posterior)方向に、△はRL(Right-Left)方向に、○はHF(Head-Feet)方向に、それぞれMPGパルスを印加した場合を示す。共に、横軸は初期位相値(δ)を示し、縦軸はエコー信号のS/Nを示す。
【0029】
図2からは、初期位相201のときがS/Nが最も高く、初期位相202のときS/Nが最も低いことが理解される。図4に、初期位相201のときの画像401と、初期位相202のときの画像402を示す。図2,3からMPGパルスの影響で初期位相とS/Nの関係が変化し、その変化の仕方がMPGパルスの印加方向にも依存することが理解される。
【0030】
本発明は、反転RFパルスの位相が奇数、偶数にて直交するときに、図2のように初期位相の違いによってS/Nの変化がおこらないようにする。反転RFパルスの初期位相を制御することで、MPGパルスの印加強度、印加方向、及び、スライス位置によらず安定した画質を提供する。
【0031】
そのために、本発明は初期位相の違いによってSNの変化がおこらないように、ブレード毎に反転RFパルスまたは励起RFパルスの初期位相を設定する。なお、反転RFパルスの初期位相を変えることは、励起RFパルスの初期位相を変えることと同じ意味でもある。
【0032】
以下、本発明の各実施例を詳細に説明する。
【0033】
(DWIシーケンス)
最初に、本発明に係るハイブリッドラディアル型のDW-FSEシーケンス(以下HybridDWFSEシーケンスという)について、図5に示すシーケンスチャートを用いて説明する。図5のシーケンスチャートは、回転角度がゼロ(即ち、k空間のkx軸に平行な)ブレードのエコー信号を計測するためのパルスシーケンスを示す。他の回転角度のブレードのエコー信号の計測の際には、このシーケンスチャートに示す各傾斜磁場パルス波形を回転角度に応じて、3軸に配分すれば良い。
【0034】
図5のシーケンスチャートにおいて、RF,MPG、Gs,Gp,Gf,Echoは、それぞれRFパルス、MPGパルス、スライス傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、周波数エンコード傾斜磁場、エコー信号を表す。90度励起RFパルス71とスライス選択傾斜磁場78を共に印加して、所望のスライスを励起する。次に、スライス軸、位相エンコード軸、周波数エンコード軸のいずれか1つ以上の軸に第1のMPGパルス76を印加する。MPGパルスが印加された軸方向の水分子のブラウン運動の強さをエコー信号強度に反映される。
【0035】
また、周波数エンコード軸にディフェイズパルス81を印加して、励起したスピンの位相を予め分散させておく。ディフェイズパルス81の印加量は、後に説明する読み出し傾斜磁場83等の印加量の1/2とする。次に、反転RFパルス72とスライス選択傾斜磁場79とを印加して、同じスライスのスピンの位相を180度反転させる。次に、第1のMPGパルス76と同じ印加量の第2のMPGパルス77を第1のMPGパルス76の印加軸を同じ軸に印加する。これにより、第1のMPGパルス76により分散された静止しているスピンの位相が元に戻るが、ブラウン運動している水分子の位相分散がゼロに戻らずに、その状態がエコー信号に反映される。次に、所定の位相エンコード量を有する位相エンコードパルス80と読み出し傾斜磁場82を印加してエコー信号83を計測する。
【0036】
エコー信号83を計測した後に、印加した位相エンコードパルス80と逆極性の位相エンコードパルスを印加して、位相エンコードパルス80の印加量をキャンセルする(ゼロに戻す)。そして、反転RFパルス73とスライス選択傾斜磁場79を印加して同じスライスのスピンの位相を180度反転させる。以下、同様にして、位相エンコードパルス80と読み出し傾斜磁場82を印加してエコー信号84,85,86、・・・の計測を反転RFパルス74,75、・・・毎に行う。
【実施例1】
【0037】
本発明のMRI装置及び反転RFパルス位相制御方法の実施例1を説明する。本実施例1は、ブレード毎に反転RFパルスの初期位相を、前のブレードで計測されたリファレンスエコー信号の位相を用いる。以下、図面を用いて本実施例を説明する。
【0038】
(反転RFパルスの位相設定)
最初に、FSEシーケンスにおける第j(j=1,2,・・・,全ブレード数)ブレードの反転RFパルスの位相計算について説明する。各反転RFパルスには以下の位相を設定する。
【0039】
1番目の反転RFパルス72の位相に(Y+α+δj)を設定する。ここで、Yは励起RFパルス71の位相に直交する位相値である。またαは励起RFパルス71の印加中心から1番目の反転RFパルス72の印加中心の間に変化する位相値である。またδjはj番目のブレードに設定する反転RFパルスの初期位相である。
【0040】
2番目の反転RFパルス73の位相に(X+2α+β/2+δj)を設定する。ここで、Xは励起RFパルス71の位相値である。またβは反転RFパルスの印加間隔であるインターエコータイムの時間に変化する位相である。
【0041】
3番目の反転RFパルス74の位相に(Y+2α+3β/2+δj)を設定する。
【0042】
4番目の反転RFパルス75の位相に(X+2α+5β/2+δj)を設定する。
以降、同様にして、以下のように設定する。
【0043】
(2n+1)番目の反転RFパルスの位相=(Y+2α+β/2+β・2n+δj)、
(2n)番目の反転RFパルスの位相=(X+2α+β/2+β・2(n-1)+δj) (1)
を設定する。ここで、n=1,2,3・・・とする
。
【0044】
また、反転RFパルスの初期位相の設定を行わずに、その変わりに励起RFパルスの初期位相に-δjを設定してもよい。
【0045】
次にj番目ブレードに設定するδjを説明する。1ブレード目のδ1に適当な値を設定する。しかし最適な初期位相の理論値としてδ1=π/4が好ましい。さらに、j番目ブレードの計測後に検出されるリファレンスエコー信号である偶数エコー信号と奇数エコー信号の位相をR1jとR2jとすると
δj+1=(R1j-R2j)/2+π/4 (2)
が最適とされる初期位相である。
【0046】
つまり、ブレード毎に反転RFパルスの初期位相を設定する。その初期位相は、直前のブレードで計測されたリファレンスエコー信号の位相を用いる。
【0047】
このように、位相を設定することで、MPGパルスの印加強度、印加時間、スライスによらず安定した画質を提供することが可能となる。
【0048】
(パルスシーケンスの説明)
本実施例に係るHybridDWFSEシーケンスの一例を図6に示す。図6に示したシーケンスチャートは、図5に示したHybridDWFSEシーケンスのシーケンスチャートにおいて、最初の2つのエコー信号を、後述するリファレンスエコー信号として計測するために、位相エンコードパルス80を印加しない。他は、図5のシーケンスチャートと同じなので、詳細な説明は省略する。
【0049】
(機能ブロック図)
次に、本実施例に係るHybridDWFSEシーケンスの計測を行うための演算処理部8の各機能を、図7(a)に示す機能ブロック図を用いて説明する。本実施例の演算処理部8の機能は、初期位相設定部701と、反転パルス位相設定部702と、を有してなる。
【0050】
初期位相設定部701は、第jブレードの反転RFパルスの初期位相(δj)を(2)式に基づいて設定する。例えば、第1ブレードの反転RFパルスの初期位相(δ1)として、上述したとおり、理論値としてπ/4が好ましい。そして、第jブレードで計測されたリファレンスエコー信号を用いて、式(2)に基づいて、第(j+1)ブレードの反転RFパルスの初期位相(δj+1)を設定する。
【0051】
反転パルス位相設定部702は、初期位相設定部701で設定された第jブレードの反転RFパルスの初期位相(δj)と式(1)とに基づいて、第jブレードの各反転RFパルスの位相を設定する。第jブレードの各反転RFパルスの位相を設定する。
【0052】
(フローチャート)
次に、上記各機能が連携して行う、本実施例の処理フローを図8に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0053】
ステップ801で、反転RFパルス位相設定部702は、ブレードカウンタ(j)に1を設定する。
【0054】
ステップ802で、反転RFパルス位相設定部702は、ブレードカウンタ(j)と全ブレード数とを比較し、ブレードカウンタ(j)が全ブレード数未満の場合にはステップ803へ移行し、以上である場合には、HybridDWFSEシーケンスの計測を終了する。
【0055】
ステップ803で、初期位相設定部701は、第jブレードの反転RFパルスの初期位相(δj)を設定する。設定の仕方は前述したとおりである。特に、初期位相設定部701は、後述するステップ805で第jブレードで計測されるリファレンスエコー信号を用いて、第(j+1)ブレードの反転RFパルスの初期位相(δj+1)を設定する。
【0056】
ステップ804で、反転RFパルス位相設定部702は、第jブレードの反転RFパルスの初期位相(δj)と式(1)とに基づいて、第jブレードの各反転RFパルスの位相を設定する。そして、反転RFパルス位相設定部702は、設定した第jブレードの各反転RFパルスの位相を計測制御部4に通知する。
【0057】
ステップ805で、計測制御部4は、各反転RFパルスの位相を、ステップ804で通知された各反転RFパルスの位相となるように制御しながら、第jブレードのエコー信号を計測する。その後に引き続いて、偶数エコー信号と奇数エコー信号のリファレンスエコー信号を計測する。そして、計測したリファレンスエコー信号のデータを反転RFパルス位相設定部702に通知する。
【0058】
ステップ806で、反転RFパルス位相設定部702は、ブレードカウンタ(j)をインクリメントして、ステップ802に以降する。
以上までが実施例1の処理フローの概要である。
【0059】
本実施例1の上記処理フローにより、安定して図2の201のSNにて図4の401の画像を得ることができる。
【0060】
以上説明したように、本実施例1のMRI装置及び反転RFパルス位相制御方法は、ブレード毎に反転RFパルスの初期位相を、前のブレードで計測されたリファレンスエコー信号の位相を用いる。その結果、MPGパルスを印加するDWI法において、渦電流や残留磁場によらず安定したS/Nにて画像を取得できるようになる。
【実施例2】
【0061】
本発明のMRI装置及び反転RFパルス位相制御方法の実施例2を説明する。本実施例2は、基本的に前述の実施例1と同様の構成を有する。ただし、位相エンコードを印加しない予備計測を行い、予備計測で計測したリファレンスエコー信号の位相を用いて反転RFパルスに設定する初期位相を計算し、計算した初期位相をブレードによらずに全ブレードに共通して適用する。以下、本実施例2を詳細に説明する。
【0062】
(反転RFパルスの位相設定)
最初に、HybridDWFSEシーケンスの全ブレードに共通して適用する反転RFパルスの位相の計算方法について説明する。
【0063】
位相エンコードを印加しないでリファレンスエコー信号を計測するための予備計測を行い、検出される偶数エコー信号と奇数エコー信号の位相をそれぞれR1pとR2pとすると
δ=(R1p-R2p)/2+π/4 (3)
を反転RFパルスの初期位相とする。この位相を用いて、全ブレードの各反転RFパルスの位相を以下のように計算する。
【0064】
1番目の反転RFパルスの位相に(Y+α+δ)を設定する。ここで、Yは励起RFパルスの位相に直交する位相値である。またαは励起RFパルスの印加中心から反転RFパルスの印加中心の間に変化する位相である。
【0065】
2番目の反転RFパルスの位相に(X+2α+β/2+δ)を設定する。Xは励起RFパルスの位相である。またβは反転RFパルスの印加間隔であるインターエコータイムの時間に変化する位相である。
3番目の反転RFパルスの位相に(Y+2α+3β/2+δ)を設定する。
4番目の反転RFパルスの位相に(X+2α+5β/2+δ)を設定する。
以降、同様にして、以下のように設定する。
【0066】
(2n+1)番目の反転RFパルスの位相=(Y+2α+β/2+β・2n+δ)、
(2n)番目の反転RFパルスの位相=(X+2α+β/2+β・2(n-1)+δ) (4)
を設定する。ここで、n=1,2,3・・・とする。つまり、ブレードによらずに全ブレードに計算した初期位相を適用する。本実施例の初期位相は、位相エンコードを印加しない予備計測で計測したリファレンスエコー信号の位相を用いて求める。
【0067】
また、反転RFパルスの初期位相の設定を行わずに、その変わりに励起RFパルスの初期位相に-δを設定してもよい。
【0068】
以上の位相を各版手RFパルスに設定することで、MPGパルスの印加強度、印加時間、スライスによらず安定した画質を提供することが可能となる。
【0069】
(パルスシーケンスの説明)
本実施例のHybridDWFSEシーケンスは図5に示したパルスシーケンスと同じである。また、本実施例の予備計測シーケンスは、図5に示したパルスシーケンスにおいて、位相エンコード80を印加しないものである。他は図5に示したパルスシーケンと同じなので詳細な説明は省略する。
【0070】
(機能ブロック図)
次に、本実施例に係るHybridDWFSEシーケンスの計測を行うための演算処理部8の各機能を、図7(b)に示す機能ブロック図を用いて説明する。本実施例の演算処理部8の機能は、前述の実施例1で説明した図7(a)に示した各機能の他に、予備計測設定部703を備える。
【0071】
初期位相設定部701は、全ブレードに共通して適用する反転RFパルスの初期位相(δ)を(3)式に基づいて設定する。
【0072】
反転パルス位相設定部702は、初期位相設定部701で設定された全ブレードの反転RFパルスの初期位相(δ)と式(4)とに基づいて、全ブレードの各反転RFパルスの位相を設定する。
【0073】
予備計測設定部703は、本計測と同じMPGパルス印加強度、印加時間、同スライス断面にて位相エンコードを印加しない予備計測シーケンスの制御データを生成して、計測制御部4に通知する。
【0074】
(フローチャート)
次に、上記各機能が連携して行う、本実施例の処理フローを図9に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0075】
ステップ901で、予備計測設定部703は、予備計測シーケンスの制御データを生成して、計測制御部4に通知する。計測制御部4は、通知された制御データを用いて予備計測シーケンスを実行し、計測したリファレンスエコー信号のエコーデータを初期位相設定部701に通知する。
【0076】
ステップ902で、初期位相設定部701は、ステップ901で通知された予備計測シーケンスのエコーデータを用いて、式(3)に基づいて、全ブレードで共通に適用する反転RFパルスの初期位相を計算する。
【0077】
ステップ903で、反転RFパル位相設定部702は、ステップ902で算出された反転RFパルスの初期位相(δ)と式(4)とに基づいて、各反転RFパルスの位相を計算して設定する。
【0078】
ステップ904で、反転RFパル位相設定部702は、ステップ903で求めた各反転RFパルスの位相を、全ブレードのHybridDWFSEシーケンスにおける反転RFパルスの位相に適用する。そして、反転RFパル位相設定部702は、HybridDWFSEシーケンスの各ブレードの反転RFパルスの位相を計測制御部4に通知する。
【0079】
ステップ905で、計測制御部4は、全ブレードのエコー信号を計測する。
以上までが実施例1の処理フローの概要である。
【0080】
本実施例2の上記処理フローでも、安定して図2の201のSNにて図4の401の画像を得ることができる。
【0081】
以上説明したように、本実施例2のMRI装置及び反転RFパルス位相制御方法は、位相エンコードを印加しない予備計測を行い、予備計測で計測したリファレンスエコー信号の位相を用いて反転RFパルスに設定する初期位相を計算し、計算した初期位相をブレードによらずに全ブレードに共通して適用する。その結果、MPGパルスを印加するDWI法において、実施例1と比較して、撮像中での反転RFパルスの初期位相の計算及び設定を簡略化でき、渦電流や残留磁場によらず安定したS/Nにて画像を取得できるようになる。
【実施例3】
【0082】
本発明のMRI装置及び反転RFパルス位相制御方法の実施例3を説明する。本実施例3は、基本的に前述の実施例1と同様の構成を有する。ただし、全ブレードに0〜πまでの初期位相を均等に設定する。以下、本実施例3を詳細に説明する。
【0083】
(反転RFパルスの位相設定)
最初に、HybridDWFSEシーケンスにおける第j(j=1,2,・・・,全ブレード数)ブレードの反転RFパルスの位相計算について説明する。
【0084】
第jブレードの反転RFパルスの位相の計算方法は、前述の実施例1で説明した計算方法と同様である。具体的には(1)式に基づいて計算する。よって、詳細な説明を省略する。前述の実施例1と異なる箇所は、以下の第jブレードの初期位相δjの計算方法である。
【0085】
第j(j=1,2,・・・,全ブレード数)ブレードの反転RFパルスの初期位相δjは、
δj=(π/全ブレード数)×n+δ0 (6)
とする。つまり、全ブレードに0〜πまでの初期位相を均等に設定する。ただし,δ0は全ブレード共通の初期値とする。
【0086】
また、反転RFパルスの初期位相の設定を行わずに、その変わりに励起RFパルスの初期位相に-δjを設定してもよい。
【0087】
図10はδ0と計測されるエコー信号のS/Nとの関係を示す。横軸は初期位相値(δ)を示し、縦軸はエコー信号のS/Nを示す。δ0によらずS/Nが安定していることが理解される。ここで、図11に、初期位相1001のときの画像1101と、初期位相1002のときの画像1102とを示す。
【0088】
全ブレードに0〜πまでの初期位相を均等に設定することで、MPGパルスの印加強度、印加時間、スライス位置によらず安定した画質を提供することが可能となる。
【0089】
(機能ブロック図)
次に、本実施例に係るHybridDWFSEシーケンスの計測を行うための演算処理部8の各機能を説明する。本実施例の演算処理部8の機能は、前述の図7(a)で説明した実施例1の機能ブロック図と同様であるが、各機能の処理内容が異なる。以下、本実施例3の処理フローの説明を通して、各機能部の処理内容を説明する。
【0090】
初期位相設定部701は、ブレード毎の反転RFパルスの初期位相(δj)を(6)式に基づいて設定する。
【0091】
反転パルス位相設定部702は、初期位相設定部701で設定された各ブレードの反転RFパルスの初期位相(δj)と式(1)とに基づいて、各ブレードの各反転RFパルスの位相を設定する。
【0092】
(フローチャート)
次に、上記各機能が連携して行う、本実施例の処理フローを図12に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0093】
ステップ1201で、初期位相設定部701は、式(6)に基づいて、ブレード毎に反転RFパルスの初期位相を設定する。
【0094】
ステップ1202で、反転RFパル位相設定部702は、ステップ1101で設定されたブレード毎の反転RFパルスの初期位相を用いて、式(1)に基づいて、ブレード毎に各反転RFパルスの位相を設定する。そして、反転RFパル位相設定部702は、設定した第jブレードの各反転RFパルスの位相を計測制御部4に通知する。
【0095】
ステップ1203で、計測制御部4は、各ブレードの各反転RFパルスの位相を、ステップ1202で通知された各反転RFパルスの位相となるように制御しながら、各ブレードのエコー信号を計測する。
【0096】
以上までが実施例1の処理フローの概要である。
【0097】
本実施例3の上記処理フローを行うことで、安定して図10のSNにて図11の1101または1102の画像を得ることができる。
【0098】
以上説明したように、本実施例2のMRI装置及び反転RFパルス位相制御方法は、全ブレードに0〜πまでの初期位相を均等に設定する。その結果、MPGパルスを印加するDWI法において、実施例1、2と比較して、反転RFパルスの初期位相の計算及び設定を行うことなく、渦電流や残留磁場によらず安定したS/Nにて画像を取得できるようになる。
【符号の説明】
【0099】
1 被検体、2 静磁場発生系、3 傾斜磁場発生系、4 計測制御部、5 送信系、6 受信系、7 信号処理系、8 演算処理部、9 傾斜磁場コイル、10 傾斜磁場電源、11 高周波発信器、12 変調器、13 高周波増幅器、14a 高周波コイル(送信コイル)、14b 高周波コイル(受信コイル)、15 信号増幅器、16 直交位相検波器、17 A/D変換器、18 磁気ディスク、19 光ディスク、20 ディスプレイ、21 ROM、22 RAM、23 トラックボール又はマウス、24 キーボード、71 励起RFパルス、72 第1反転RFパルス、73 第2反転RFパルス、74 第3反転RFパルス、75 第4反転RFパルス、76 前方MPGパルス、77 後方MPGパルス、78 励起RFスライス選択磁場パルス、79反転RFスライス選択磁場パルス、80 位相エンコードパルス、81 ディフェイズパルス、82 周波数エンコードパルス、83 第1エコー、84 第2エコー、85 第3エコー、86 第4エコー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
k空間において、複数の平行軌跡からなるブレードを原点の回りに回転させて、各ブレードのエコーデータを計測するハイブリッドラディアル型の高速スピンエコーシーケンスの各反転RFパルスの位相を設定する演算処理部と、
前記高速スピンエコーシーケンスの各反転RFパルスの位相を前記設定された値にして、各ブレードのエコーデータを計測する計測制御部と、
を備えた磁気共鳴イメージング装置であって、
前記演算処理部は、
前記反転RFパルス又は、励起RFパルスの初期位相を設定する初期位相設定部と、
前記初期位相に基づいて、2番目以降の反転RFパルスの位相を設定する反転RFパルス位相設定部と、を備え、
前記初期位相設定部は、ブレード毎に、前記反転RFパルスの初期位相を異ならせて設定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記初期位相設定部は、一つのブレードにおける前記反転RFパルスの初期位相を、直前のブレードで計測されたリファレンスエコー信号の位相を用いて、設定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
k空間において、複数の平行軌跡からなるブレードを原点の回りに回転させて、各ブレードのエコーデータを計測するハイブリッドラディアル型の高速スピンエコーシーケンスの各反転RFパルスの位相を設定する演算処理部と、
前記高速スピンエコーシーケンスの各反転RFパルスの位相を前記設定された値にして、各ブレードのエコーデータを計測する計測制御部と、
を備えた磁気共鳴イメージング装置であって、
前記演算処理部は、
前記反転RFパルスの初期位相を設定する初期位相設定部と、
前記初期位相に基づいて、2番目以降の反転RFパルスの位相を設定する反転RFパルス位相設定部と、を備え、
前記初期位相設定部は、全ブレードにおける前記反転RFパルスの初期位相を同一にすることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記演算処理部は、位相エンコードを印加しない予備計測シーケンスの制御データを生成する予備計測設定部をさらに備え、
前記計測制御部は、前記予備計測シーケンスを実行してリファレンスエコー信号を計測し、
前記初期位相設定部は、前記リファレンスエコー信号の位相を用いて、前記反転RFパルスの初期位相を設定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記初期位相設定部は、全ブレードに0〜πまでの初期位相を均等に設定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
k空間において、複数の平行軌跡からなるブレードを原点の回りに回転させて、各ブレードのエコーデータを計測するハイブリッドラディアル型の高速スピンエコーシーケンスの各反転RFパルスの位相を制御する反転RFパルス位相制御方法であって、
前記反転RFパルス又は、励起RFパルスの初期位相を設定する初期位相設定ステップと、
前記初期位相に基づいて、2番目以降の反転RFパルスの位相を設定する反転RFパルス位相設定ステップと、
を備え、
反転RFパルス位相設定ステップは、ブレード毎に、前記反転RFパルスの初期位相を異ならせて設定することを特徴とする反転RFパルス位相制御方法。
【請求項7】
k空間において、複数の平行軌跡からなるブレードを原点の回りに回転させて、各ブレードのエコーデータを計測するハイブリッドラディアル型の高速スピンエコーシーケンスの各反転RFパルスの位相を制御する反転RFパルス位相制御方法であって、
前記反転RFパルスの初期位相を設定する初期位相設定ステップと、
前記初期位相に基づいて、2番目以降の反転RFパルスの位相を設定する反転RFパルス位相設定ステップと、
を備え、
反転RFパルス位相設定ステップは、全ブレードにおける前記反転RFパルスの初期位相を、同一にすることを特徴とする反転RFパルス位相制御方法。
【請求項1】
k空間において、複数の平行軌跡からなるブレードを原点の回りに回転させて、各ブレードのエコーデータを計測するハイブリッドラディアル型の高速スピンエコーシーケンスの各反転RFパルスの位相を設定する演算処理部と、
前記高速スピンエコーシーケンスの各反転RFパルスの位相を前記設定された値にして、各ブレードのエコーデータを計測する計測制御部と、
を備えた磁気共鳴イメージング装置であって、
前記演算処理部は、
前記反転RFパルス又は、励起RFパルスの初期位相を設定する初期位相設定部と、
前記初期位相に基づいて、2番目以降の反転RFパルスの位相を設定する反転RFパルス位相設定部と、を備え、
前記初期位相設定部は、ブレード毎に、前記反転RFパルスの初期位相を異ならせて設定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記初期位相設定部は、一つのブレードにおける前記反転RFパルスの初期位相を、直前のブレードで計測されたリファレンスエコー信号の位相を用いて、設定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
k空間において、複数の平行軌跡からなるブレードを原点の回りに回転させて、各ブレードのエコーデータを計測するハイブリッドラディアル型の高速スピンエコーシーケンスの各反転RFパルスの位相を設定する演算処理部と、
前記高速スピンエコーシーケンスの各反転RFパルスの位相を前記設定された値にして、各ブレードのエコーデータを計測する計測制御部と、
を備えた磁気共鳴イメージング装置であって、
前記演算処理部は、
前記反転RFパルスの初期位相を設定する初期位相設定部と、
前記初期位相に基づいて、2番目以降の反転RFパルスの位相を設定する反転RFパルス位相設定部と、を備え、
前記初期位相設定部は、全ブレードにおける前記反転RFパルスの初期位相を同一にすることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記演算処理部は、位相エンコードを印加しない予備計測シーケンスの制御データを生成する予備計測設定部をさらに備え、
前記計測制御部は、前記予備計測シーケンスを実行してリファレンスエコー信号を計測し、
前記初期位相設定部は、前記リファレンスエコー信号の位相を用いて、前記反転RFパルスの初期位相を設定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記初期位相設定部は、全ブレードに0〜πまでの初期位相を均等に設定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
k空間において、複数の平行軌跡からなるブレードを原点の回りに回転させて、各ブレードのエコーデータを計測するハイブリッドラディアル型の高速スピンエコーシーケンスの各反転RFパルスの位相を制御する反転RFパルス位相制御方法であって、
前記反転RFパルス又は、励起RFパルスの初期位相を設定する初期位相設定ステップと、
前記初期位相に基づいて、2番目以降の反転RFパルスの位相を設定する反転RFパルス位相設定ステップと、
を備え、
反転RFパルス位相設定ステップは、ブレード毎に、前記反転RFパルスの初期位相を異ならせて設定することを特徴とする反転RFパルス位相制御方法。
【請求項7】
k空間において、複数の平行軌跡からなるブレードを原点の回りに回転させて、各ブレードのエコーデータを計測するハイブリッドラディアル型の高速スピンエコーシーケンスの各反転RFパルスの位相を制御する反転RFパルス位相制御方法であって、
前記反転RFパルスの初期位相を設定する初期位相設定ステップと、
前記初期位相に基づいて、2番目以降の反転RFパルスの位相を設定する反転RFパルス位相設定ステップと、
を備え、
反転RFパルス位相設定ステップは、全ブレードにおける前記反転RFパルスの初期位相を、同一にすることを特徴とする反転RFパルス位相制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−43033(P2013−43033A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184449(P2011−184449)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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