説明

磁気式駆動力変換機構

【課題】平板状磁石を使用することで制作の容易な磁気式駆動力変換機構を提供すること。
【解決手段】回転軸に固設される円盤の側面にN極とS極とを円盤の周方向に交互に配置した円盤状磁石111を設けた回転運動部材110と、円盤状磁石111の周方向に配置した磁極と対応してN極とS極とを長手方向に交互に配置した平板状磁石121を設けた直線運動部材120とを備え、円盤状磁石111の磁極と平板状磁石121の磁極の移動軌跡とを対向するように配置し、対向する二つの磁極間に作用する磁気的吸引力及び/又は磁気的反発力を利用して、回転運動と直線運動とを相互に変換する磁気式駆動力変換機構100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、真空雰囲気において基板と搬送する搬送装置などに使用される、駆動軸と従動軸の間で磁力により動力を伝達する磁気式動力伝達装置に関し、さらに詳しくは、磁気歯車を利用して回転運動を直線運動に変換する磁気式駆動力変換機構に関する。
【0002】
例えば、モータで昇降装置、搬送装置、ロボット等を駆動する場合、歯車やウォームギヤ、ラック及びピニオン等を用いた動力伝達装置が広く用いられている。このような、従来の動力伝達装置は、歯車を噛み合わせて動力を伝達するため、歯車が摩耗して摩耗粉が飛散したり、歯車の噛み合いによる騒音が発生したりするという問題があった。
特に、真空雰囲気において使用する場合には、歯車の噛み合い部等に潤滑油を使用することができないという事情のため摩耗量が増大し、上述した摩耗粉や騒音が顕著であるという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するものとして、モータと連結されて駆動側磁石帯を一定のピッチで螺旋状に巻き付けた状態の直丸棒と、搬送車と連結されて被動側磁石帯を駆動側磁石帯と同じピッチで螺旋状に内面に貼り付けた状態の半円溝部を有する被駆動部とからなり、これらの磁石帯は互いに吸引及び/又は反発するような磁力方向となっており、モータにより直丸棒を回転させると、直丸棒の上方に配置された被駆動部が直丸棒の回転に従って回転することなく直丸棒の長手方向に沿って直線運動するようにした、非接触式で動力の伝達を行う磁気式運動変換機構が提案されている(特許文献1)。
このような磁気式運動変換機構は、非接触であるゆえ摩耗粉等の塵埃の発生がきわめて少なく、半導体製造工場の真空雰囲気内での搬送装置等で使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2777131号公報(第7図)
【特許文献2】特開2008−297092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、図18乃至図20に示されるような従来の磁気式運動変換機構では、直丸棒の全長にわたって駆動側磁石帯511を巻き付けて駆動側磁石部510が構成されており、被動側磁石部520を装着した台車Vがこの直丸棒の長さ全体にわたって移動するため、駆動側磁石部510の中途の位置に軸受等の支持部材を設けることができず、駆動側磁石部510の直丸棒はどうしてもその両端で支持する構造となる。
このような従来の磁気式運動変換機構の場合、移動経路の長路化に伴い駆動側磁石部510を長くすると、駆動側磁石部510を製造する際の歪みや、駆動側磁石帯511と被動側磁石帯521との間に作用する磁気力により発生する駆動側磁石部510の撓み等が大きくなるため、この歪みや撓み等により発生する駆動側磁石部510の振れを考慮すると駆動側磁石帯511と被動側磁石帯521との間に設ける間隔についても大きめにせざるを得ない。
しかし、駆動側磁石帯511と被動側磁石帯521との間の間隔を大きくとると、両者の間に作用する磁気力が減殺されるため、駆動側磁石部510の回転力により印加される台車の直線方向の搬送力が小さくなってしまうという問題があった。
また、従来技術のような駆動側磁石帯511では、駆動側磁石帯510の長さが長くなると前述した撓み等に起因する振動が発生するため高速で駆動することが難しく、どうしても装置全体のタクトタイムが長くなってしまうという問題があった。
【0006】
次に、駆動側磁石部510は磁石帯を直丸棒に巻き付けた構造であり、装置の大きさからくる制約もあるため、その径をあまり大きくすることができない。
したがって、円柱状の駆動側磁石帯511と半円弧状の被動側磁石帯521との間に作用する磁気力を大きくして被動側磁石帯521に発生する直線運動の駆動力を大きくしようとすると、被動側磁石帯521の直丸棒方向の長さを長くする等なすことにより二つの磁石帯の対向する部分の面積を大きくすることになるが、半円筒状の被動側磁石帯521はその複雑な構造のために、これを大きくすると製造に手間がかかり製造コストが嵩んでしまうという問題があった。
また、相互作用する磁気力を大きくしようとして被駆動側磁石帯520を大きくすると、駆動側磁石帯510の長さに上限があるため、相対的に可動範囲が小さな機構となってしまうという問題があった。
【0007】
さらに、従来の磁気式運動変換機構の場合、駆動側磁石帯を駆動するモータMを直丸棒の軸と同軸に配置することとなるため、モータMが台車の移動の障害となるという問題があった。
加えて、移動距離が長くなる場合等、上述のような磁気式運動変換機構を長手方向に複数連ねて移動経路を構成しようとするときは、モータMのような駆動部を台車Vの移動経路を避けた位置に配置して、駆動部と駆動側磁石部510との間に歯車等の伝動機構を設けて回転運動を伝達することとなるので、このような伝達機構を設けて摩擦部分が増加する分、さらに摩耗塵が増大してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解消するものであって、すなわち、本発明の目的は、平板状磁石を使用することで制作の容易な磁気式駆動力変換機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、回転軸に固設される円盤の側面に磁極のN極とS極とを円盤の周方向に交互に配置した円盤状磁石を設けた回転運動部材と前記回転運動部材の円盤状磁石に配置した磁極と対応して磁極のN極とS極とを長手方向に交互に配置した平板状磁石を設けた直線運動部材とを備えるとともに、前記円盤状磁石の磁極と平板状磁石の磁極の移動軌跡とが対向するように配置され、前記二つの磁極間に作用する磁気的吸引力及び/又は磁気的反発力を利用して前記回転運動部材の回転駆動力を前記直線運動部材の直線運動に変換することにより、前述した課題を解決したものである。
なお、上記において「平板状磁石の移動軌跡」としているのは、平板状磁石は直線運動するものであり、特定の位置にある円盤状磁石との関係においては磁気力が作用しない位置まで移動していることもあり得るので、実際に円盤状磁石と平板状磁石とが対向している状態のみならず、ある時点では円盤状磁石と対向していなくても、別の時点では円盤状磁石と対向することが想定される位置を含める意味で「平板状磁石の移動軌跡」と表現としている。
【0010】
請求項2に係る発明の磁気式駆動力変換機構は、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記円盤状磁石が磁極のN極とS極とを円盤の周方向に螺旋状に交互に配置され、前記平板状磁石が磁極のN極とS極とを平板状磁石の長手方向に傾斜して交互に配置されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0011】
請求項3に係る発明の磁気式駆動力変換機構は、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記円盤状磁石が磁極のN極とS極とを支持円盤の周方向に放射状に交互に配置され、前記平板状磁石が磁極のN極とS極とを平板状の長手方向に直角に交互に配置されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0012】
請求項4に係る発明の磁気式駆動力変換機構は、請求項1乃至請求項3の何れかに係る発明の構成に加えて、前記回転運動部材が、前記直線運動部材の長手方向の長さ以下の距離だけ離間して前記直線運動部材の長手方向に複数配置されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
なお、上記において「平板状磁石の長手方向の長さ以下の距離」としているのは、隣りあう回転運動部材の間の距離、すなわち間隔が、平板状磁石の長さより大きいことはない、ということを意味しており、回転運動部材の間の距離をこのようにしたことにより、平板状磁石に対し、常に一あるいはそれ以上の数の円盤状磁石から磁気力が作用している状態となることを規定する意味で、上記のとおり「平板状磁石の長手方向の長さ以下の距離」と表現している。
【0013】
請求項5に係る発明の磁気式駆動力変換機構は、請求項1乃至請求項4の何れかに係る発明の構成に加えて、前記平板状磁石が前記直線運動部材の両側面に各々固設されているとともに、前記回転運動部材に設けた円盤状磁石が前記直線運動部材の両側面に固設された前記平板状磁石の各々に対向して配設されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0014】
請求項6に係る発明の磁気式駆動力変換機構は、請求項5に記載の発明の構成に加えて、前記回転運動部材が前記平板状磁石の長手方向に複数離間して配置されているとともに前記平板状磁石が前記直線運動部材の両側面に各々固設されていて、前記直線運動部材の両側面に固設された前記平板状磁石の各々に対向して前記円盤状磁石を配設した高推力領域と前記直線運動部材の両側面に配置された平板状磁石の一方の面のみに対向するように前記円盤状磁石を配設した軽推力領域とを備えていることにより前述した課題をさらに解決したものである。
【0015】
請求項7に係る発明の磁気式駆動力変換機構は、請求項1又は請求項4の何れかに係る発明の構成に加えて、前記直線運動部材が前記平板状磁石を対向して平行に一対設けられているとともに前記回転運動部材が前記円盤の両側に前記円盤状磁石を設けられているものであり、前記回転運動部材に設けた円盤状磁石が前記直線運動部材に設けた平板状磁石の各々に対向して配設されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0016】
請求項8に係る発明の磁気式駆動力変換機構は、請求項7係る発明の構成に加えて、前記回転運動部材が前記直線運動部材の長手方向に複数離間して配置されているとともに、前記直線運動部材の側面に固設された平板状磁石の各々に対向して円盤状磁石を両側に設けた回転運動部材を配設した高推力領域と前記直線運動部材の側面に固設された平板状磁石の一方のみに対向するように円盤状磁石を片側に設けた回転運動部材を配設した軽推力領域とを備えていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る本発明の磁気式駆動力変換機構によれば、回転軸に固設される円盤の側面に磁極のN極とS極とを円盤の周方向に交互に配置した円盤状磁石を設けた回転運動部材とこの回転運動部材の円盤状磁石と平行に円盤状磁石の周方向に配置した磁極と対応して磁極のN極とS極とを長手方向に交互に配置した平板状磁石を設けた直線運動部材とを備えるとともに円盤状磁石の磁極と平板状磁石の磁極の移動軌跡とが対向するように配置され、二つの磁極間に作用する磁気的吸引力及び/又は磁気的反発力を利用して回転運動部材の回転駆動力を直線運動部材の直線運動に変換することより、発塵が少ない無接触式の駆動力変換機構を提供することができるばかりではなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
【0018】
すなわち、請求項1に係る本発明の磁気式駆動力変換機構によれば、回転軸に固設された円盤の側面に磁極のN極とS極とを円盤の周方向に交互に配置した円盤状磁石を設けた回転運動部材と、円盤状磁石に配置した磁極と対応して磁極のN極とS極とを長手方向に交互に配置した平板状磁石を設けた直線運動部材とを備えるようにしたことにより、円筒状の磁石帯を使用する場合と比べ磁気力が作用する磁極の面積を大きくとれるため、相互の間に作用する磁気力をより強力なものとすることができる。
【0019】
また、回転軸側に従来のように長尺な丸棒を使用する必要がないので、従来技術において記載したように、従来技術のように撓みや歪を考慮して駆動側磁石帯と被動側磁石帯との間の間隔を大きくとる必要がなく、円盤状磁石と平板状磁石との間隔を小さくして磁気力を強力に作用させるため、小型の磁石でも磁気力を強力に発揮することができる。
さらに、円盤状磁石及び平板状磁石のいずれも平板状の磁石を使用しており、従来の磁気式運動変換機構において使用されていた円筒型又は半円筒型の磁石帯のような複雑な構造を必要とせず、しかも、例えば、平板状磁石は移動台車の長さ程度の長さで円盤状磁石は平板状磁石の長さに応じて適宜の間隔を隔てて設ければ足り、これら円盤状磁石、平板状磁石いずれに関しても、従来技術における駆動側磁石帯のように移動経路全体にわたって一様に設ける必要がないので、機構全体で使用される磁石の数を減らせるため、従来技術のような磁気式運動変換機構に比べより低コストでかつ簡易に製造することができる。
【0020】
請求項2に係る本発明の磁気式駆動力変換機構は、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、円盤状磁石が磁極のN極とS極とを円盤の周方向に交互に螺旋状に配置され平板状磁石が磁極のN極とS極とを平板状磁石の長手方向に傾斜して交互に配置されていることにより、磁気力の作用する磁極部分が順次移行してゆく際に生ずる磁気力の変動がより小さくなるため、駆動側の運動部材に不規則な反力を生じさせることがなく、かつ従動側の運動部材の運動を円滑なものとすることができる。
【0021】
請求項3に係る本発明の磁気式駆動力変換機構は、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、円盤状磁石が磁極のN極とS極とを円盤の周方向に放射状に交互に配置され平板状磁石が磁極のN極とS極とを平板状磁石の長手方向に直角に交互に配置されていることにより、円盤状磁石の磁極パターン及び平板状磁石の磁極パターンが単純化されるため、これらの磁石を簡易に製造することができる。
【0022】
請求項4に係る本発明の磁気式駆動力変換機構によれば、請求項1乃至請求項3の何れかに係る発明が奏する効果に加えて、回転運動部材が平板状磁石の長手方向の長さ以下の距離だけ離間して平板状磁石の長手方向に複数配置されていることにより、先行する回転運動部材から後続する回転運動部材へと引き継いで順次直線運動部材を駆動するため、長経路の磁気駆動力変換機構を形成することができるとともに、長経路であっても直線運動部材が移動している間はいずれかの円盤状磁石から平板状磁石に対し常に磁気力が作用するため、直線運動部材を安定して駆動することができる。
【0023】
請求項5に係る本発明の磁気式駆動力変換機構によれば、請求項1乃至請求項4の何れかに係る発明が奏する効果に加えて、平板状磁石が直線運動部材の両側面に各々固設されているとともに回転運動部材に設けた円盤状磁石が直線運動部材の両側面に固設された平板状磁石の各々に対向して配設されていることにより、直線運動部材の両側面を有効に利用するとともに直線運動部材の両側にある回転運動部材の円盤状磁石の数が倍増するため、平板状磁石を設けた直線運動部材との間に作用する磁気力をより強力なものとすることができる。
【0024】
請求項6に係る本発明の磁気式駆動力変換機構によれば、請求項5に係る発明が奏する効果に加えて、回転運動部材が直線運動部材の長手方向に複数離間して配置されているとともに平板状磁石が直線運動部材の両側面に各々固設されていて直線運動部材の両側面に固設された平板状磁石の各々に対向して円盤状磁石を配設した高推力領域と直線運動部材の両側面に固設された平板状磁石の一方の面のみに対向するように円盤状磁石を配設した軽推力領域とを備えていることにより、例えば、加速、減速を伴うような高推力を必要とする直線運動領域と、加速を伴うこともなく特に高推力を必要としない直線運動領域というような、相互作用する磁気力の異なる領域を併存させて駆動力変換機構を構成するため、不必要に多数の円盤状磁石を配置することのない全体として効率的な駆動力変換機構を形成することができる。
【0025】
請求項7に係る本発明の磁気式駆動力変換機構によれば、請求項1乃至請求項4の何れかに係る発明が奏する効果に加えて、直線運動部材が平板状磁石を対向して平行に一対設けられているとともに回転運動部材が円盤の両側に円盤状磁石を設けられているものであり回転運動部材に設けた円盤状磁石が直線運動部材の側面に設けられた平板状磁石の各々に対向して配設されていることにより、回転運動部材の空きスペースを有効に利用するとともに、回転運動部材の両側に設けた円盤状磁石と一対の直線運動部材のそれぞれに設けた平板状磁石との間で磁気力の作用する面積が倍増するため、一対の直線運動部材と回転運動部材との間に作用する磁気力を一層強力なものとすることができる。
【0026】
請求項8に係る本発明の磁気式駆動力変換機構によれば、請求項7に係る発明が奏する効果に加えて、回転運動部材が直線運動部材の長手方向に複数離間して配置されているとともに直線運動部材の側面に固設された平板状磁石の各々に対向して円盤状磁石を両側に設けた回転運動部材を配設した高推力領域と直線運動部材の側面に固設された平板状磁石の一方のみに対向するように円盤状磁石を片側に設けた回転運動部材を配設した軽推力領域とを備えていることにより、例えば、加速、減速を伴うような高推力を必要とする直線運動領域と特に加速を伴うこともなく特に高推力を必要としない直線運動領域というような、相互作用する磁気力の異なる領域を併存させて駆動力変換機構を構成するため、不必要に多数の円盤状磁石を配置することのない全体として効率的な駆動力変換機構を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施例である磁気式駆動力変換機構の斜視図。
【図2】図1に示した磁気式駆動力変換機構の矢視II方向から見た斜視図。
【図3】図1に示した磁気式駆動力変換機構の(a)正面図、(b)平面図。
【図4】図1に示した磁気式駆動力変換機構に使用される磁石の磁極パターンの説明図。
【図5】本発明の第2の実施例である磁気式駆動力変換機構の斜視図。
【図6】図5に示した磁気式駆動力変換機構の正面図。
【図7】図5に示した磁気式駆動力変換機構に使用される磁石の磁気パターンの説明図。
【図8】本発明の第3の実施例である磁気式駆動力変換機構の斜視図。
【図9】図8に示した磁気式駆動力変換機構の(a)正面図、(b)平面図。
【図10】本発明の第4の実施例である磁気式駆動力変換機構の斜視図。
【図11】図10に示した磁気式駆動力変換機構の(a)正面図、(b)平面図。
【図12】本発明の第1の実施例である磁気式駆動力変換機構を適用した第1の搬送装置の斜視図。
【図13】図12に示した搬送装置の正面図。
【図14】図13のIII−III断面矢視図。
【図15】本発明の第1の実施例である磁気式駆動力変換機構を適用した第2の搬送装置の斜視図。
【図16】図15に示した搬送装置の(a)正面図、(b)平面図。
【図17】図16(a)のIV−IV断面矢視図。
【図18】従来技術である磁気式運動変換機構の斜視図。
【図19】従来技術である磁気式運動変換機構に使用される駆動側磁石部の(a)断面図、(b)側面図。
【図20】従来技術である磁気式運動変換機構に使用される被動側磁石部の(a)縦断面図、(b)横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、回転軸に固設される円盤の側面に磁極のN極とS極とを円盤の周方向に交互に配置した円盤状磁石を設けた回転運動部材と、円盤状磁石の周方向に配置した磁極と対応して磁極のN極とS極とを長手方向に交互に配置した平板状磁石を設けた直線運動部材とを備え、円盤状磁石の磁極と平板状磁石の磁極の移動軌跡とを対向するように配置し、対向する二つの磁極間に作用する磁気的吸引力及び/又は磁気的反発力を利用して、回転運動部材の回転駆動力を直線運動部材の直線運動に変換し、平板状磁石を使用することで制作の容易なものであれば、その具体的態様はいかなるものであっても構わない。
【0029】
例えば、本発明の円盤状磁石あるいは平板状磁石において使用される磁石は、平板状であればよく、アルニコ磁石、フェライト磁石等種々の磁石を使用可能であるが、ネオジウム系、サマリウムコバルト系等の希土類磁石を使用するとより高い推力を得ることができるため望ましい。
【0030】
また、円盤状磁石又は平板状磁石は、それぞれ支持円盤又は平板状磁石支持板に取り付けられているが、これら支持円盤又は平板状磁石支持板を磁性材料で構成すると磁力線が集中し磁気力をより強力に作用させることができるため、支持円盤又は平板状磁石支持板を磁性材料、特に強磁性体で形成することが望ましい。
【0031】
加えて、本発明の駆動力変換機構は、回転駆動力により直線運動を行わせる動力変換機構としても使用可能であるとともに、直線駆動力により回転運動を行わせる動力変換機構としても使用可能であるが、回転運動を行う円盤状磁石の設置数を適宜に変更可能であることを考慮すれば、例えば、必要とされる直線駆動力に応じて回転する円盤状磁石の数を配置するというように、円盤状磁石を設けた回転運動部材を駆動側とし平板状磁石を設けた直線運動部材を従動側として使用するほうがより有効に活用できる。
【0032】
さらに、搬送レールの間にモータ駆動される回転運動部材を配置し、搬送レール上を走行する搬送台車に直線運動部材を設けて搬送装置を構成し、比較的重量のあるものを搬送する場合には、回転運動部材を直線運動部材の両側面に配置するばかりではなく、長手方向に回転運動部材を配設する数を多くし、円盤状磁石を密度高く配設すれば、より強力な搬送力をもつ搬送装置とすることができる。
【実施例1】
【0033】
以下、本発明の一実施例を図1乃至図4に基づいて以下に説明する。
図1は、本発明の第1の実施例(以下、「実施例1」と称する)である磁気式駆動力変換装置の斜視図、図2は、図1に示した磁気式駆動力変換装置を矢印II側から見た斜視図、図3(a)、(b)は、それぞれ、図1に示した磁気式駆動力変換装置の正面図、平面図であり、図4は、図1に示した磁気式駆動力変換機構に使用される磁石の磁極パターンを示す説明図である。
【0034】
図1に示されるように、実施例1において回転運動部材110は、円形をした支持円盤112の一側面に、厚み方向に磁力を作用させる磁極であるN極、S極を、周方向に交互に螺旋状に配置した円盤状磁石111を設けたものである。
また、回転運動部材110とあわせて使用される直線運動部材120は、長手方向に長い長方形状をしており、平板状磁石支持板122の側面に、直線運動部材120の長手方向からみて、厚み方向に磁力を作用させる磁極であるN極、S極を長手方向に傾斜して交互に配置した平板状磁石121を固設したものである。
円盤状磁石111上に配置された磁極のパターン及び平板状磁石121上に配置された磁極のパターンが、図4に示されている。
【0035】
これにより、回転運動部材110の回転により円盤状磁石111上の磁極であるN極、S極が回転すると、直線運動部材120に固設された平板状磁石121上の磁極であるN極、S極との間に磁気的吸引力又は磁気的反発力が作用して、直線運動部材120を長手方向に直線運動させることになるので、回転軸113から回転運動部材110に加えられた回転駆動力が、直線運動部材120の直線運動に変換されることとなる。
円盤状磁石110も平板状磁石120も、平面状の構造であるため、従来技術のような直丸棒に巻き掛けた円筒状磁石帯を使用することはなく、また、直線運動部材120は、通常、搬送台車のような剛性の高い装置に固定して使用されるためそれ自体の撓みはほとんど考慮する必要がないものであるから、円盤状磁石111の磁気力が作用し撓みが生じたとしても、実際上、全く問題にならない。
【0036】
実施例1においては、円盤状磁石111に形成される磁極のパターンを、図4に示すようにN極、S極を円盤上の周方向に交互に螺旋状に配列したものとし、また平板状磁石121の磁極のパターンを、N極、S極を長手方向に交互に傾斜して配列したものとしている。
これにより、回転運動部材110と直線運動部材120とが同期して動作するときに、個々の磁極どうしは相互の相対位置に微妙なずれを生じ磁気的吸引力と反発力とに微妙なずれを生ずるとしても、各磁極に作用する磁気力の全体としては、個々のずれが解消され相互作用する磁気力の平均化が図られる。
また、N極、S極が傾斜していることにより、相互作用する磁極が順次移行してゆく際に生ずる磁気力の変動が緩和されるので、回転運動あるいは直進運動といった相互の運動がより円滑に進行するようになる。
なお、このような動作は、各係合点が相互に滑ることが許容されない歯車式運動変換機構では実現が困難であり、対応する磁極どうしの相対位置の微小なずれが許容される非接触の磁気式駆動力変換機構であるからこそ実現可能なものである。
【0037】
このようにして得られた実施例1の磁気式駆動力変換機構によれば、回転軸113に固設される円盤の側面に磁極のN極とS極とを円盤の周方向に交互に配置した円盤状磁石111を設けた回転運動部材110と、円盤状磁石111に配置した磁極と対応して磁極のN極とS極とを長手方向に交互に配置した平板状磁石121を設けた直線運動部材120とを備え、円盤状磁石111の磁極と平板状磁石121の磁極の移動軌跡とを対向するように配置し、対向する前記二つの磁極間に作用する磁気的吸引力及び/又は磁気的反発力を利用して、回転運動部材110の回転駆動力を直線運動部材120の直線運動に変換することにより、従来の円筒状磁石に比べ磁気力の作用する面積を広くとり、また、従来のような長尺の磁石を巻き付けた直丸棒を使用していないので従来のように直丸棒の撓みを考慮する必要はなく、円盤状磁石111と平板状磁石121との間隔を小さくして二つの磁極間に磁気力を強力に作用させるようにして、小型でも強力に磁気力を作用させることができる。
【0038】
また、実施例1の磁気式駆動力変換機構100において、円盤状磁石111が磁極のN極とS極とを支持円盤112の周方向に交互に螺旋状に配置され、平板状磁石121が磁極のN極とS極とを平板状磁石121の長手方向に交互に傾斜して配置されていることにより、磁気力が滑らかに作用しより安定した駆動力を得ることができる。
さらに、いずれの磁極も平板であるから、従来の円筒状の磁石帯に比べ製造を容易化できるなど、その効果は甚大である。
【実施例2】
【0039】
次に、本発明の第2の実施例を、図5乃至図7に基づいて以下に説明する。
図5は、本発明の第2の実施例((以下、「実施例2」と称する)である磁気式駆動力変換機構200の斜視図、図6は、図5に示した磁気式駆動力変換機構の正面図、図7は、図5に示した磁気式駆動力変換機構に使用される磁石の磁気パターンの説明図である。
【0040】
実施例2の磁気式駆動力変換機構200は、実施例1の磁気式駆動力変換機構100とでは、円盤状磁石に配置された磁極のパターン、及び板状磁石に配置された磁極のパターンを相違する。その他の点については実施例1と同じであるので、対応する各要素については200番台の符号を付して下二桁を一致させて対応関係を示すにとどめ、詳しい説明は割愛する。
【0041】
図7に示されるように、実施例2において円盤状磁石211は、支持円盤212の外周部に、厚み方向に磁力を作用させるN極、S極を、支持円盤212の周方向に放射状に交互に配置したものであり、また、平板状磁石221は、厚み方向に磁力を作用させるN極、S極を長手方向に直角に交互に配置したものである。
【0042】
実施例2において使用されるような磁極の構造としたことにより、円盤状磁石211及び平板状磁石221とに形成される磁極の構造がより簡便なものとなる。
また、図5及び図6に示されるように、回転運動部材210あるいは円盤状磁石211を直線運動部材220の長手方向に、直線運動部材220あるいは平板状磁石221の長手方向長さ程度の距離、あるいはそれ以下の距離毎に複数配置すれば、直線運動部材220の平板状磁極221は、複数配設された円盤状磁石211のいずれかと必ず磁気力を作用しあうので、直線運動部材220に対し円盤状磁石210の磁気力が作用しない領域が存在しないため、直線運動部材220の直線運動が不安定になることがない。
他方、平板状磁石221の長手方向長さ程度の間隔で回転運動部材210を配置すれば、最小限の数の回転運動部材210により直線運動部材220が駆動される。
【0043】
以上のようにして得られた本発明の実施例2である磁気式駆動力変換機構によれば、回転軸213に固設される円盤の側面に磁極のN極とS極とを円盤の周方向に交互に配置した円盤状磁石211を設けた回転運動部材210と、円盤状磁石211に配置した磁極と対応して磁極のN極とS極とを長手方向に交互に配置した平板状磁石221を設けた直線運動部材220とを備え、円盤状磁石211の磁極と平板状磁石221の磁極の移動軌跡とを対向するように配置し、対向する前記二つの磁極間に作用する磁気的吸引力及び/又は磁気的反発力を利用して回転運動部材210の回転駆動力を直線運動部材220の直線運動に変換する磁気式駆動力変換機構200であって、回転運動部材210が平板状磁石221の長手方向の長さだけ離間して直線運動部材220の長手方向に複数配置されていることにより、前述した実施例1の奏する効果に加えて、従来技術のような長尺の棒状の駆動側磁石帯を使用することがなく、長経路にわたって直線運動部材220を移動させることができるとともに、長経路の移動においても常にいずれかの円盤状磁石211の磁気力が作用して直線運動部材220を安定して駆動できるなど、その効果は甚大である。
【実施例3】
【0044】
本発明の第3の実施例を、図8及び図9に基づいて説明する。
図8は、本発明の第3の実施例((以下、「実施例3」と称する)である磁気式駆動力変換機構300の斜視図、図9(a)、(b)は、それぞれ、図8に示した磁気式駆動力変換機構300の正面図、平面図である。
【0045】
実施例3の磁気式駆動力変換機構300において使用される個々の回転運動部材310は、実施例2と同様のものであり、また直線運動部材320は、図8に示されるように、平板状磁石支持板322の両側面に、厚み方向に磁力を作用させる磁極であるN極、S極を長手方向に直角に交互に配置した平板状磁石321を、それぞれ固設したものである。
また、実施例3において、3箇所に並設された回転運動部材310のうち両端側に配設されたものは、直線運動部材320の両側に配設された平板状磁石321の各々について、2つの回転運動部材310に設けた円盤状磁石311を対向して配設されている。
その他の点については実施例2又は実施例1と同様であるので、対応する各要素については300番台の符号を付して下二桁を一致させて対応関係を示すにとどめ、詳しい説明は割愛する。
【0046】
実施例3の磁気式駆動力変換装置300において、加速又は減速のような加速度を伴う運動を行う領域では、直線運動部材320の両側に固設された平板状磁石321のそれぞれに対向して円盤状磁石311が配置され、直線運動部材320の両側で磁気力が作用するので、回転運動部材310と直線運動部材320との間に作用する磁気力が倍増し、直線運動部材320を強力に駆動するものとされている(高推力領域A)。
また、直線運動部材320が、加速又は減速する必要がなく定速で走行するのみでよい中央領域においては、一つの回転運動部材310が直線運動部材320の一方の側にのみ配設されている(軽推力領域B)。
このように、回転運動部材310の設置数を変更するのみで、高推力領域A及び軽推力領域Bを形成している。
【0047】
以上のようにして得られた本発明の実施例3である磁気式駆動力変換機構300によれば、回転軸313に固設される円盤の側面に磁極のN極とS極とを円盤の周方向に交互に配置した円盤状磁石311を設けた回転運動部材310と、円盤状磁石311に配置した磁極と対応して磁極のN極とS極とを長手方向に交互に配置した平板状磁石321を設けた直線運動部材320とを備え、円盤状磁石311の磁極と平板状磁石321の磁極の移動軌跡とを対向するように配置し、対向する前記二つの磁極間に作用する磁気的吸引力及び/又は磁気的反発力を利用して、回転運動部材310の回転駆動力を直線運動部材320の直線運動に変換する磁気式駆動力変換機構300であって、回転運動部材310が平板状磁石の長手方向の長さだけ離間して直線運動部材320の長手方向に複数配置され、平板状磁石321が、直線運動部材320の両側面に各々固設されており、直線運動部材320の両側面に固設された平板状磁石321各々に対向して円盤状磁石311を配設した高推力領域Aと、直線運動部材320の両側面に固設された平板状磁石321の一方の面のみに対向するように回転運動部材310の円盤状磁石311を配設した軽推力領域Bと、を備えていることにより、上述した実施例1又は実施例2が奏する効果に加え、直線運動部材320の両側面を有効利用できるとともに、直線運動部材320の両側面に配設した平板状磁石321に対向する円盤状磁石311の配置態様を適宜に調整することで一つの機構の中でも不必要な部材を設けることがなく全体として無駄のない効率的なものとすることができるなど、その効果は甚大である。
【実施例4】
【0048】
本発明の第4の実施例を、図10及び図11に基づいて説明する。
図10は、本発明の第4の実施例((以下、「実施例4」と称する)である磁気式駆動力変換機構400の斜視図、図11(a)、(b)は、それぞれ、図10に示した磁気式駆動力変換機構400の正面図、平面図である。
【0049】
実施例4の磁気式駆動力変換機構400において使用される回転運動部材410は、図10に示されるように、支持円盤412の両側方の平面部に、厚み方向に磁気力を作用させるN極、S極を、支持円盤412の周方向に放射状に交互に配置したものである。
また、直線運動部材420は、図10に示されるように、回転運動部材部材410の両側に一対配置され、それぞれ、平板状磁石支持板322の回転運動部材と対向する面に、厚み方向に磁力を作用させる磁極であるN極、S極を長手方向に直角に交互に配置した平板状磁石321を固設したものである。
その他の点については実施例2又は実施例1と同様であるので、対応する各要素については400番台の符号を付して下二桁を一致させて対応関係を示すにとどめ、詳しい説明は割愛する。
【0050】
実施例4の磁気式駆動力変換装置400の場合は、回転運動部材410の両側の平面部に円盤状磁石411を設けて回転運動部材410において磁気力が作用する面積を倍増させており、またこれら両側面の円盤状磁石411と協働する平板状磁石421を、回転運動部材410の両側に配設した直線運動部材420のそれぞれに設けてこれらを一対として使用しているので、一対の直線運動部材420が回転運動部材410の駆動力を倍増して受けることが可能となる。
そして、実施例4の磁気式駆動力変換機構400の場合も、前述した実施例3の場合と同様に、加減速を伴うような高推力領域Aでは両側に円盤状磁石を設けた回転運動部材410を使用し、特に加減速を要することのない軽推力領域Bでは一方の面のみに円盤状磁石411を配置した回転運動部材410’を使用し、領域毎に必要とされる推力に応じて、回転運動部材410,410’を使い分けている。
なお、直線運動部材420を常に対として使用する必要はなく、それぞれ独立した被動部材として使用することもできる。
【0051】
以上のようにして得られた本発明の実施例4である磁気式駆動力変換機構によれば、前述した実施例3である磁気式駆動力変換装置において、直線運動部材420が平板状磁石421を対向して平行に一対配置されて回転運動部材410が回転運動部材410の一方又は両方の平面部に前記円盤状磁石411を設けられていて、回転運動部材410に設けた円盤状磁石411が直線運動部材420の側面に固設された平板状磁石421に対向して直線運動部材420の長手方向に3個離間して配置されているとともに、直線運動部材420の側面に固設された平板状磁石421の各々に対向して円盤状磁石411を両側に設けた回転運動部材410を配設した高推力領域Aと直線運動部材420に固設された平板状磁石421の一方のみに対向するように円盤状磁石411を片側に設けた回転運動部材410’を配設した軽推力領域Bとを備えていることにより、上述した実施例1乃至実施例3のいずれかが奏する効果に加え、回転運動部材410の両側の平面部を有効に利用した駆動力変換機構を形成することができるとともに、対向して設けた一対の平板状磁石421の間に配設した円盤状磁石411の配置態様を適宜に調整することで、一つの磁気式駆動力変換機構400の中でも不必要な部材を設けることがなく全体として無駄のない効率的なものとすることができるなど、その効果は甚大である。
【0052】
次に、実施例1の磁気式駆動力変換機構を搬送装置に適用した例を、図12乃至図14に基づいて説明する。
図12は、本発明の第1の実施例である磁気式駆動力変換機構100を適用した搬送装置(以下、「搬送装置1」と称する)の斜視図、図13は、図12に示した搬送装置の正面図、図14、図13のIII−III断面矢視図である。
図12に示される搬送装置1において、Rは、搬送経路に延設された一対の搬送レール、Mは、回転軸113に結合されて回転運動部材110を回転させる駆動モータ、Cは、モータ軸と回転軸とを断続するクラッチであり、回転運動部材110は一対の搬送レールRの間に長手方向に離間して2箇所に配置されている。
Vは、レールRの上を走行する搬送台車であり、その下部略中央箇所に、長手方向に直線運動部材120が固設され、その左右両側にローラWを、この例では4対、備えている。
【0053】
図14に示されるように、搬送台車Vの下部略中央箇所に固設された直線運動部材120の一側面に設けた平板状磁石121と、搬送レールRの間に配設された回転運動部材110に設けた円盤状磁石111とが対向して配設されており、この箇所において磁気的吸引力又は磁気的反発力が作用するので、駆動モータMによって回転運動部材110が回転駆動されると、その回転駆動力により直線運動部材120に直線方向の推進力が加わり、搬送台車Vが搬送レールR上を走行する。
なお、回転運動部材110は、搬送レールRの長手方向に沿って、搬送台車Vの長さ程度の距離あるいはそれより短い距離を離間して配設されており、各回転運動部材110は、走行台車Vが走行している間、順次回転駆動されるように制御される。
このようにしたことにより、回転運動部材110は必要最小限の数設けることとなり、不必要に多数の回転運動部材110を設ける必要がなくなる。
なお、直線運動部材120は、搬送台車Vの下方中央部に設けるのみならず、搬送台車Vの両側面に固設するようにしてもよいし、また、搬送台車の両側面を下方に延設してその延接部の両方の内側に平板状磁石411を設けその間に位置させた両面又は片面に円盤状磁石411を設けた回転運動部材410を配設した、実施例4のような機構を使用してもよい。
【0054】
さらに、実施例1の磁気式駆動力変換機構を搬送装置に適用した別の例を、図15乃至図17に基づいて説明する。
図15は、実施例1である磁気式駆動力変換機構を適用した第2の搬送装置(以下、「搬送装置2」と称する)の斜視図、図16(a)、(b)は、それぞれ、図15に示した搬送装置の正面図、平面図であり、図17は、図16(a)のIV−IV断面矢視図である。
図15に示される搬送装置2において、搬送レールR、搬送台車V等は、基本的に図12等に示される先に記載した搬送装置1と同様のものであるが、図15では2つの搬送レールR及びRを備え、この間を引き継ぎ搬送レールRによって接続されたものとなっている。
【0055】
この例においても、図17に示されるように、磁気式駆動力変換機構100は、先に記述した搬送装置1と同様な態様で設置されている。
図15に示されるように、搬送装置2においては、搬送台車Vが、図において左側の搬送レールR上から、引き継ぎ搬送レールRを経て右側の搬送レールRへと走行してゆくものであり、当初、搬送レールR上を走行する間は、左方の回転運動部材110により駆動されている。
搬送台車Vが右方に走行してゆき、走行台車Vの先端が、引き継ぎ搬送レールRを経て右方の搬送レールR上に達し、右方の回転運動部材110の位置まで到達した時点から、搬送台車Vに対して、右方の回転運動部材110に設けた円盤状磁石111の磁気力が作用するようになる。
【0056】
搬送台車Vがさらに走行し、左方の回転運動部材110に設けた円盤状磁石111の磁気力が作用しなくなると、右方の回転運動部材110に設けた円盤状磁石111の駆動力のみにより搬送台車Vが駆動されるようになる。
この間において、直線運動部材120の平板状磁石121に対し左右の回転運動部材110に設けた円盤状磁石111の双方から磁気力が作用する時期が存在し、この時期においては、左右の円盤状磁石111の作動する位相を同期させる必要が生ずるが、搬送装置2では、駆動モータMと駆動軸113との間に介在するクラッチ114を断続して両者の位相を同期させている。
具体的には、まず、搬送台車Vが右方の回転運動部材110に到達するまでは、右方の回転運動部材110に設けられたクラッチ114をオフにしておき、回転運動部材110を自由に回転できる状態としておく。
搬送台車Vが右方に走行してきて平板状磁石120の磁気力が右方の回転運動部材110の円盤状磁石111に作用し始めると、右方の円盤状磁石111が平板状磁石121と同期して回転し始めるので、この状態でクラッチ114を接続すれば円盤状磁石111の同期回転を駆動モータMにより継続して回転させることとなるので、右方の回転運動部材110が搬送台車Vと同期した状態で回転することとなり、結果的に、平板状磁石121の磁気力を通じて、先行して回転していた左方の回転運動部材110と後続して回転駆動される右方の回転運動部材110とを同期させて回転させることになる。
【0057】
上述した本搬送装置1又は搬送装置2から理解されるように、本実施例1乃至3のような磁気式駆動力変換機構は、長経路の搬送装置を形成することに好適に適用できる。
特に、搬送経路が長経路となり、加減速を伴う移動が頻繁であったり、途中でワークが載置されたり離脱されたりと、領域によって搬送台車Vに必要とされる駆動力に相違があるようなシステムに対し、非常に有効である。
【0058】
すなわち、本実施例1乃至実施例3の磁気式駆動力変換機構において、回転運動部材の設置位置、設置数等の自由度が大きいことは、種々の装置への多様な適用可能性を示すものであり、本発明の磁気式駆動力変換機構を適用すれば、全体として無駄の少ない効率的な応用装置を形成することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0059】
100、200、300、400 ・・・ 磁気式駆動力変換機構
110、210、310、410 ・・・ 回転運動部材
111、211、311、411 ・・・ 円盤状磁石
112、212、312、412 ・・・ 支持円盤
113、213、313、413 ・・・ 回転軸
120、220、320、420 ・・・ 直線運動部材
121、221、321、421 ・・・ 平板状磁石
122、222、322、422 ・・・ 平板状磁石支持板
R、R1、R2、R3 ・・・ 搬送レール
V ・・・ 搬送台車
C ・・・ クラッチ
M ・・・ 駆動モータ
A ・・・ 高推力領域
B ・・・ 軽推力領域
510 ・・・ 駆動側磁石部
511 ・・・ 駆動側磁石帯
520 ・・・ 被動側磁石部
521 ・・・ 被動側磁石帯



【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に固設される円盤の平面部に磁極のN極とS極とを円盤の周方向に交互に配置した円盤状磁石を設けた回転運動部材と前記回転運動部材の円盤状磁石に配置した磁極と対応して磁極のN極とS極とを長手方向に交互に配置した平板状磁石を設けた直線運動部材とを備えるとともに、
前記円盤状磁石の磁極と平板状磁石の磁極の移動軌跡とが対向するように配置され、
前記二つの磁極間に作用する磁気的吸引力及び/又は磁気的反発力を利用して前記回転運動部材の回転駆動力を前記直線運動部材の直線運動に変換することを特徴とする磁気式駆動力変換機構。
【請求項2】
前記円盤状磁石が磁極のN極とS極とを支持円盤の周方向に螺旋状に交互に配置され、
前記平板状磁石が磁極のN極とS極とを平板状磁石の長手方向に傾斜して交互に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気式駆動力変換機構。
【請求項3】
前記円盤状磁石が磁極のN極とS極とを支持円盤の周方向に放射状に交互に配置され、
前記平板状磁石が磁極のN極とS極とを平板状の長手方向に直角に交互に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気式駆動力変換機構。
【請求項4】
前記回転運動部材が、前記平板状磁石の長手方向の長さ以下の距離だけ離間して前記直線運動部材の長手方向に複数配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の磁気式駆動力変換機構。
【請求項5】
前記平板状磁石が前記直線運動部材の両側面に各々固設されているとともに、
前記回転運動部材に設けた前記円盤状磁石が前記直線運動部材の両側面に固設された前記平板状磁石の各々に対向して配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の磁気式駆動力変換機構。
【請求項6】
前記回転運動部材が前記直線運動部材の長手方向に複数離間して配置されているとともに前記平板状磁石が前記直線運動部材の両側面に各々固設され、
前記直線運動部材の両側面に固設された平板状磁石の各々に対向して円盤状磁石を配設した高推力領域と前記直線運動部材の両側面に固設された平板状磁石の一方の面のみに対向するように円盤状磁石を配設した軽推力領域とを備えていることを特徴とする請求項5に記載の磁気式駆動力変換機構。
【請求項7】
前記直線運動部材が前記平板状磁石を対向して平行に一対設けられているとともに前記回転運動部材が前記円盤の両側に前記円盤状磁石を設けられているものであり、
前記回転運動部材に設けた円盤状磁石が前記直線運動部材の側面に設けた平板状磁石の各々に対向して配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の磁気駆動力変換機構。
【請求項8】
前記回転運動部材が前記直線運動部材の長手方向に複数離間して配置されているとともに、
前記直線運動部材の側面に固設された平板状磁石の各々に対向して円盤状磁石を両側に設けた回転運動部材を配設した高推力領域と前記直線運動部材の側面に固設された平板状磁石の一方のみに対向するように円盤状磁石を片側に設けた回転運動部材を配設した軽推力領域とを備えていることを特徴とする請求項7に記載の磁気式駆動力変換機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−17776(P2012−17776A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154236(P2010−154236)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)