磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石およびそれを用いた表示パネルセット
【課題】 磁気により泳動反転表示を行うことができるパネルに用いる泳動磁石において、その好適な磁力特性範囲などを提供し、また、それを用いた磁気泳動反転の表示パネルセットを提供すること。
【解決手段】 磁気泳動反転表示パネルに使用する泳動磁石であって、支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側と反対側の内壁面近傍における磁束密度を特定範囲としたことなどを特徴とする、磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石およびそれを用いた表示パネルセット。
【解決手段】 磁気泳動反転表示パネルに使用する泳動磁石であって、支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側と反対側の内壁面近傍における磁束密度を特定範囲としたことなどを特徴とする、磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石およびそれを用いた表示パネルセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気泳動反転表示パネルに用いる泳動磁石およびそれを用いた表示パネルセットに関し、さらに詳しくは、筆記用磁石により微小磁石を泳動または泳動/反転させて表示を形成し、さらに裏面から消去用磁石により微小磁石を引き寄せて表示を消去する、磁気泳動反転表示パネルにおいて、その筆記または消去の際に、より適した磁気特性範囲の泳動磁石(筆記用/消去用)およびそれを用いた表示パネルセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気により表示を行うことができる磁気表示パネルを用いた磁気表示システムは知られており、該磁気表示システムとしては、特許文献1に挙げられるような磁性粒子を泳動させて表示を行う磁気泳動表示パネルや特許文献2に挙げられるような磁性粒子を反転させて表示を行う磁気反転表示パネルが提案されている。
【0003】
前記磁気泳動表示パネルいわゆる泳動型は、図7に示したように、筆記前に磁気泳動表示パネルの裏面板(11)側全面を消去用磁石(4)でスライドし磁気パネル中の磁性粒子(13)を裏面板(11)側に引き寄せ、表面板(10)側を均一な面としてから、その表面板(10)側に筆記用磁石(5)を走査させ、部分的に磁性粒子(13)を表面板(10)側に引き寄せることにより磁気表示を得るという表示方法である。このような磁気表示を消去する場合には、磁気泳動表示パネルの裏面板(11)側で消去用磁石(4)をスライドさせ、表面板(10)側の磁性粒子(13)を裏面板(11)側に引き戻し、該磁気泳動表示シートの表面板(10)側に筆記された磁気表示を消去するものである。しかしながら、このような表示・消去方法では、磁気泳動表示パネルに筆記された磁気表示は、裏面板(11)側から消去するしかないため、磁気表示の所望の部分のみ色を変えるということはできないものであった。また、磁性粒子(13)はマグネタイト粒子に代表されるような、磁石構造でない、おおよそ保磁力/残留磁化を有していない/または少ない粒子を用いているため、強い磁石を用いても粒子の磁極が破壊されてしまうなどの課題はなく、筆記用並びに消去用の磁石の要求性能は磁性粒子(13)を泳動させるのに十分な磁力があれば良いという程度で、支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁力(磁束密度)に関する課題や、泳動後、支持材の泳動磁石を作用させる面の内壁面近傍における微小磁石の破壊にかかる磁力(磁束密度)、すなわち上限値の制約などはないものであった。
また、磁性粒子(13)はマグネタイト粒子に代表されるような、単色(黒色)の略球状粒子を用いているため、黒一色の磁気表示しか得られなかった。
【0004】
一方、前記磁気反転表示パネル、いわゆる反転型は、図8に示したように、筆記前に磁気反転表示パネルの表面板(10)側から特定の磁極を有する消去用磁石で磁気パネル中の微小磁石(2)の同一極をパネル表面板(10)側に向かせ、表面板(10)側を均一な面としてから、同じ表面板(10)側に反対の磁極を有する筆記用磁石(5)などを用いて微小磁石を部分的に反転させ、筆記用磁石(5)を作用させた磁極とは逆の磁極の微小磁石(2)の色を表示させることにより磁気表示を得るという表示方法である。このような磁気表示を消去する場合に、同じ表面板(10)側から消去を行うので、所望の部分のみの消去が可能で、裏面板(11)側を磁石でスライドさせることのできない用途などに用いることができるなど、利用範囲が広がっているものの、磁気反転表示パネルに筆記された磁気表示は、表裏を2色に色分けした微小磁石(2)の2色の色調に支配され、かつ、微小磁石(2)の表裏の色調をより忠実に表現するために分散媒としては透明な液体を用いる必要があった。
すなわち、微小磁石(2)の表裏の色調である、筆記前の均一状態の色調と、筆記用磁石による磁気表示の色調の2色表示しか得られず、微小磁石(2)を好適に泳動させることやそれに用いる泳動磁石についての開示は一切ないものであった。
【0005】
さらに、本発明者らは、先にPCT/JP2004/004625号などに、磁気泳動反転表示パネル等につき、その表示方法、好適な内包物特性(微小磁石特性)等の提案を行っている。しかし、そこにも、微小磁石(2)の泳動に好適な筆記磁石および消去磁石等に関する提案は行われていない。
【0006】
【特許文献1】特公昭62−53359号公報
【特許文献2】特公昭59−32796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は磁気により泳動反転表示を行うことができるパネルに用いる泳動磁石において、その好適な磁力特性範囲などを提供し、また、それを用いた磁気泳動反転の表示パネルセットを提供することを本発明の目的とし、そのような課題の解決手段を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は以下の各発明により解決される。
すなわち、本発明は、
「1.少なくとも、着色材を含有する分散媒中に、分散媒の色と異なり、かつ互いに表裏の色とも異なる色を有する微小磁石を分散して得られた降伏値を有する分散液体と、該分散液体を保持する支持材とを備えた磁気泳動反転表示パネルに使用する泳動磁石であって、支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側の内壁面近傍における磁束密度が400mT以下であり、パネル反対側の内壁面近傍における磁束密度が10mT以上、300mT以下であることを特徴とする、磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石。
2.磁気泳動反転表示パネル中の微小磁石の保磁力が4.0kA/m以上600kA/m以下である、第1項に記載された磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石。
3.磁気泳動反転表示パネル中の微小磁石の単位質量あたりの残留磁化が1〜35A・m2/kgであり、飽和磁化が1〜100A・m2/kgである、第1項または第2項に記載された磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石。
4.少なくとも、着色材を含有する分散媒中に、分散媒の色と異なり、かつ互いに表裏の色とも異なる色を有する微小磁石を分散して得られた降伏値を有する分散液体と、該分散液体を保持する支持材とを備えた磁気泳動反転表示パネルと、第1項ないし第3項の何れか1項に記載の泳動磁石、から少なくともなる、表示パネルセット。」に関する。
【発明の効果】
【0009】
上記磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石およびそれを用いた表示パネルセットによれば、筆記用磁石により微小磁石を泳動または泳動/反転させて表示を形成し、さらに裏面から消去用磁石により微小磁石を引き寄せて表示を消去する、磁気泳動反転表示パネルにおいて、その筆記または消去の際に、より適した磁気特性範囲の泳動磁石(筆記用/消去用)およびそれを用いた表示パネルセットを得ることができる。
さらに、微小磁石を泳動させるのにより適した磁気特性を有しつつ、比較的強い磁石を用いても微小磁石の磁極が破壊されてしまうなどの問題が生ずることがない磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石およびそれを用いた表示パネルセットを得ることができる優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いる磁気泳動反転表示パネルは、少なくとも、着色材を含有する分散媒中に、微小磁石を分散して得られた降伏値を有する分散液体(3)と、該分散液体を保持する支持材とを備えたものである。そして、泳動磁石(4、5)は、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」が特定範囲のものを使用する。このような構成にすることで微小磁石の磁極を破壊することなく、好適な微小磁石の泳動表示(筆記/消去)を行うことができるのである。さらに、磁極の色が異なる微小磁石を用いた際には3色の磁気表示が得られる。すなわち、図4に示したように、第1の色調は、泳動磁石のひとつである消去用磁石(以下、単に消去用磁石ということがある)(4)を用いて裏面板(11)側に微小磁石(2)を引き寄せた際には微小磁石(2)を除く分散液体(3)成分が着色されており、該微小磁石(2)を隠蔽するので、表面板(10)側から見ると、画一的な分散媒の色調の表示として得られる[図4−(a)]。第2の色調は、筆記したい部分に別の泳動磁石のひとつである筆記用磁石(以下、単に筆記用磁石ということがある)(5)の特定の磁極を選択して外部磁界を作用させることにより該分散液体(3)中の微小磁石(2)を泳動または泳動/反転させ、該微小磁石(2)の特定面(例えばN極面)の色調を表示させることで得られる[図4−(b)]。さらに第3の色調は、該磁気表示による筆跡を得た後、前記特定面の色調が表示された筆跡に対して、泳動磁石ではない別の反転磁石(6)による反対の磁極の磁界を筆跡を形成していない他の微小磁石(2)を泳動させない範囲で作用させることにより、筆跡を形成している任意の部分の微小磁石(2)を反転させ、筆跡の形態を変えることなく筆跡の任意の部分の色調を変化させることにより得られる[図4−(c)]。もっとも、この筆跡色は第2と第3の色調を得る際の外部磁界の磁極を反対にすれば反対に表示することができることはいうまでもない。
両面を同色にすれば、コントラストの良い鮮やかなカラー泳動表示パネルとしても使用でき、そのような態様も本発明に含まれる。
【0011】
上記、多色表示を行う際には、泳動または泳動/反転させる際に使用する外部磁界、すわなち泳動磁石(4)(5)と、表示色反転に用いる反転磁石(6)の磁気特性等をうまくコントロールすることで、泳動と反転による多色表示を制御することができる。つまり、微小磁石(2)が泳動するためには微小磁石(2)が本発明の磁気泳動反転表示パネルの一例として挙げた図5における仕切板(12)によってパネル支持材の分散液体が封入されるセルの高さ分だけ液中抵抗等に逆らって引き寄せられなければならない。
【0012】
微小磁石(2)が表裏を異なる磁極とし、異なる色に着色したものである場合には、N極、S極のどちらの磁極が選択されるかによって磁気表示色が決定される。その表示の際の微小磁石(2)の動作状態は、筆記用磁石(5)との関係で異極がパネル表示面を向いていた場合はそのまま泳動し、表面にその表示色を現し、同極が向いていた場合には反転しつつ泳動し、逆の色調の表示を現すこととなるのである。(図6)
【0013】
従って、微小磁石(2)をパネル表面まで泳動させるためには、支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の面(11)における内壁面近傍(11’)に存在する微小磁石を支持材の仕切板(12)の高さ分だけ泳動させる必要がある。すなわち、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」が重要な要素となるのである。
【0014】
ここで、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」としては、10mT以上が好ましい。さらに15mT以上がよく、20mT以上はよりよく、35mT以上が最適である。
【0015】
なお、反対側内壁面近傍(11’)より泳動磁石を作用させる一方の面に近い微小磁石については、さらに強い磁力がかかるため、好適に泳動することはいうまでもない。
【0016】
さらに、該内壁面近傍(11’)にかかる磁力は大きければ大きいほど良いというわけではない。後に詳述するが、微小磁石はそれ自体が磁石特性を有し安定的に保持されなければならないため、過度の磁力を与えすぎると微小磁石の磁極が破壊されてしまうおそれや、他の微小磁石を誤って泳動・反転させ、混色を生じさせてしまうおそれがあるからである。そこで、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」の上限値は300mT以下が好ましい。さらに150mT以下がよく、100mT以下が最適である。
【0017】
この上限値は、以下の理由により推論できる。
磁力は、その作用する距離の二乗に反比例して減衰する。すなわち、上記内壁面近傍(11’)から微小磁石(2)が泳動して表面近傍(10’)に位置した場合には、微小磁石(2)に作用する磁力はその分だけ強くなるということになる。従って、作用する磁力が強くなったとき(微小磁石(2)が表面近傍(10’)に位置したとき)に微小磁石(2)の磁極を破壊することや混色を生じさせることのない適正な範囲の磁気特性が必要なのである。ここで、その観点から「支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側の内壁面近傍における磁束密度」が400mT以下であることが必要であり、好ましくは300mT以下がよい。また、同様に「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」は300mT以下であることが好ましいく、150mT以下がより好ましい。さらに、100mT以下が材料入手の面等から最適である。
【0018】
以下に挙げる実施例のひとつを例にとれば、支持体の仕切板(12)の距離だけおいた磁束密度が150mTである、その際使用した泳動磁石は、表面磁束密度372mTである。「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」150mTの泳動磁石によれば、微小磁石(2)を泳動させるのに十分な磁束密度であり、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側の内壁面近傍における磁束密度」372mTはその表面近傍(10’)に微小磁石(2)が位置した際にも微小磁石(2)の磁極を破壊したり、混色を生じさせたりしない磁束密度である。なお、この例の磁石ではこのような関係になったが、実施例等から見ても判るように、その磁石の磁力線の形態およびパネル支持体の形状によっては、必ずしもこのような関係になるとは特定されないものであることは注意を要する。
【0019】
すなわち、同じような表面磁束密度(表面側(10’)の位置での磁束密度)であっても、その構成によっては「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」に差が生ずることがあり、良好な表示を得つつ、微小磁石の磁極を破壊せず、かつ、混色を生じさせることのない条件としては、上記「支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側と反対側の内壁面近傍における磁束密度」をそれぞれ特定範囲にすることが有効である。さらに、その表面側の磁束密度は直接的に微小磁石が破壊される、又は、混色が生ずる限界点ということもでき、泳動磁石の表面磁束密度が400mT以下であると微小磁石が破壊されにくい傾向となり、350mT以下であるとさらに好ましい。
【0020】
また、本発明においては、前記特定面の色調が表示された筆跡に反転磁石(6)による反対磁極の磁界の作用を与えることにより筆跡を形成した任意の部分の微小磁石(2)を反転させ、筆跡の形態を変えることなく筆跡の任意の部分の色調を変化させることが可能である。この際、表示されている筆跡の任意の部分の微小磁石(2)のみが反転し、色調が変化するためには、受ける磁界により筆跡を形成していない他の微小磁石(2)が泳動しない範囲で表示されている筆跡の任意の部分の微小磁石(2)のみが反転するようコントロールする必要がある。つまり、比較的弱い磁界の作用を受けた際に、他の微小磁石(2)が泳動しない範囲で表示された筆跡のみ、すなわち表示面側に泳動していた微小磁石(2)のみが反転するよう制御することで達成される。
従って、このような使い方をした場合、任意の色調を選択して任意の筆跡を得つつ、得られた筆跡の任意の部分のみの色調を変化させる多色表示を得ることができる。
【0021】
本発明のパネルに用いる泳動磁石のひとつである消去用磁石(4)においては、微小磁石(2)を表示面側から裏面側に引き寄せられればよく、そのための磁気特性を備えていれば、その磁極や配置などは特に問わない。また、単極の磁石でも良いし、複数個、並列に並べたものであっても良い。つまり、上記磁気特性範囲を満たすものであれば使用可能である。裏面側に引き寄せられた微小磁石(2)は表示面から見た際には微小磁石(2)を除く分散液体の成分により隠蔽されており、どちらの面が表示面側を向いていても特に問題がないからである。
なお、筆記用磁石(5)は特定の磁極を有するよう構成されている必要がある。
【0022】
以下に、泳動磁石および微小磁石の磁気特性等につきさらに詳しく述べる。
【0023】
一般的に磁石などを構成する磁性材料はその保磁力の強さなどにより概略、硬質磁性材料、半硬質磁性材料、軟質磁性材料に分類される。磁性材料の保磁力は0.001kA/mから1000kA/mまでと大きな幅を持つといわれている。その中で、軟質磁性材料は0.01kA/m以下と極端に小さな保磁力を有するものを指し、ハードディスクの磁気記録用ヘッドやトランスなど電力機器用磁心などに用いられている。一方、硬質磁性材料は、保磁力が大きく、磁気ヒステリシス曲線の張り出しの大きいものを指し、いわゆる永久磁石として用いられている。保磁力が硬質磁性材料と軟質磁性材料の中間的な値のものを半硬質磁性材料といい、10〜100kA/m近傍のものが多く、ハードディスクの記録用ディスクや磁気テープなどの磁気記録材料に用いられている。
【0024】
磁石は、その構造、材質、形状等により、それぞれ磁力線の形態が異なるのは周知の事実である。表面磁束密度の大きな磁石であっても、その磁力線の形態が偏平形状などであると距離をおいた場合に与える磁力が著しく小さなものになってしまう。
泳動反転が担磁気パネルにおいては、好適な泳動表示(筆記/消去)を確保しつつ、微小磁石の磁極の破壊を防止するという課題があり、特にその磁気特性の選択方法が重要となることが判った。
【0025】
すなわち、従来のように磁石固有の磁気特性のみによる泳動作用では、たとえ大きな表面磁束密度を有する磁石を泳動磁石として選択しても、その磁力線が偏平であった場合等には、好適な泳動をさせることができず、好適な泳動を求めるがゆえにさらに大きな表面磁束密度を有する磁石を選択すると、微小磁石の性能によっては該磁石の磁極が破壊されるという問題を生ずることとなっていたのである。その点、本発明の特定範囲によれば、特段の問題点を有することなく使用することができる。
【0026】
次に、微小磁石の磁気特性について述べる。
上記泳動磁石を用いれば広範な特性を有する微小磁石を使用することができるが、さらに耐久力のある微小磁石を用いれば泳動反転表示を好適に行うことができる。
【0027】
微小磁石自体の保磁力が4.0kA/m(50.3Oe)以上600kA/m(7560Oe)以下、好ましくは4.0kA/m(50.3Oe)以上310kA/m(3900Oe)以下、より好ましくは12.0kA/m(150.9Oe)以上80kA/m(1006Oe)以下であると良好な効果を奏する。
この範囲を下回ると微小磁石の反転性不良となる傾向があり、微小磁石の磁極面がパネル表示面側に均一に平行配列せず、表示が不鮮明、または不可能となる傾向がある。また、泳動磁石の選択によっては強い磁石を用いた場合に、微小磁石の磁極が破壊されやすくなってしまう傾向があることも挙げられる。
反対にこの範囲を上回ると、結果的に得られる微小磁石自体の表面磁束密度が大きくなりすぎて、微小磁石同士の凝集を起こしてしまうほか、泳動磁石等の外部磁界の影響をより敏感に受け、混色しやすくなる傾向にあり、やはり微小磁石の凝集を起こし、上記の不具合が発生しやすくなる傾向がある。
【0028】
また、微小磁石の単位質量あたりの磁気特性が以下のa)、b)からなるものであると良好である。
a)残留磁化・・・1〜35A・m2/kg(1〜35emu/g)
b)飽和磁化・・・1〜100A・m2/kg(1〜100emu/g)
残留磁化は、微小磁石が外部磁界に対し、極力迅速にその方向を変えるために必要となるもので、微小磁石の反転性に大きく寄与するものであり、この範囲を下回ると微小磁石が反転しない傾向があり、上回ると微小磁石同士が凝集してしまう傾向がある。
飽和磁化は、微小磁石が外部磁界により確実に磁気的に吸引される磁気感応力を生ずるためのもので、主に微小磁石の泳動性に寄与し、この範囲を下回ると微小磁石が泳動しない傾向があり、上回ると微小磁石が凝集してしまう傾向がある。
【0029】
さらに好ましい磁気特性は以下のようになる。
a’)残留磁化・・・3〜16A・m2/kg(3〜16emu/g)
b’)飽和磁化・・・5〜40A・m2/kg(5〜40emu/g)
【0030】
一方、本発明で用いる微小磁石は、主にN極とS極の二磁極を夫々異なる色に着色して色分けしたものである。上記のように、この微小磁石が外部磁界の作用により泳動および反転して表示を形成するのである。例えば、微小磁石が裏面側に集まっており、表示面が有色の分散媒等の色調になっている時に、筆記用磁石のS極でパネルの表示面を掃くと微小磁石が裏面側から表面側に泳動しつつ、N極面がパネル表面に並びN極面の色となる。この面を別の磁力の弱い磁石のN極で掃くと、表面側に泳動していた微小磁石のみが反転して微小磁石のS極面が表われ、表示形状を保持したまま表示色を変化させることができる。次いで、裏面側から比較的強い消去用磁石により走査すれば微小磁石が裏面側に泳動し表示は消えるのである。
【0031】
すなわち、本発明は筆記用磁石の磁極を選択することにより、選択的に2色の筆記が可能となるとともに、反転用磁石の磁極を選択することにより、これら2色の筆記部分を、他色に反転することが可能となるものである。
【0032】
本発明においては、上述の選択的に2色の筆記が可能で、さらにこれら2色の筆記部分を他色に反転可能という知見からなされたものであって、各極性に対応する2色の端面をもつ微小磁石と、比較的強い筆記用の泳動磁石と消去用の泳動磁石、並びに所望により使用される弱い磁力の反転用の外部磁石の組合せにより本発明の表示パネルセットは達成されるものである。
【0033】
さらに良好な筆記、つまり泳動表示を行うためには中でも比較的強い泳動磁石が必要な一方で、良好な反転表示を行うには反転させようとする部分以外の微小磁石を泳動させないようにし、かつ微小磁石の磁極を壊さないようにするため、上述のような比較的弱い磁石を選択するという相反する条件を満たすことが好ましい。しかし、本発明のように泳動と反転の両作用を同じパネルで行おうとすると、良好な泳動表示を行うことを優先して強い泳動磁石を選択したときに微小磁石の設計によっては磁極が破壊されるおそれがあり、その場合は反転表示を行うことが困難になる傾向が考えられる。反対に反転表示性能の維持を優先して弱い泳動磁石を選択すれば、泳動表示並びに消去をさせる際には与える磁力が弱く、泳動させること自体が困難となるなどの問題が生じる。従来の反転型磁気パネルのように微小磁石が表面に偏位している際であれば良好な反転表示ができるものの、泳動表示並びに消去をさせる際には与える磁力が弱く、分散液体の物性を子細に制御する必要性がでることなどの不都合が出る。その結果、工程管理の問題や使用環境が制限されることとなったり、泳動させること自体が困難となるなどの問題が生じるのである。つまり、外部磁界の選択次第で泳動/反転表示に難をきたし、良好に繰り返し筆記することができないといった課題が生じるおそれがあるのである。そこで、本発明に使用する磁気泳動反転表示パネルにおいては、泳動磁石の選択幅を広げ、本発明規定範囲の比較的自由な泳動磁石の選択と相まって良好な泳動/反転表示を行うことを可能とすべく、さらに特定条件の微小磁石を用いると、より一層の効果を得ることができる。
【0034】
微小磁石は前述のように泳動と反転の姿勢を制御できることが重要となる。すなわちその磁気特性を容易に制御することができるものが好ましいものとなる。従来、反転型の磁気表示パネルに用いられていた微小磁石は反転性能のみを考慮すれば足りたので、用いる磁性材料が単一系のものもしくは加工精度による製造公差程度の差しかないような非常に似通った磁気特性の材料からなるものであり、泳動に寄与するための磁気特性と反転に寄与するための磁気特性の両方をバランスよく具備することは行われていなかった。
【0035】
本発明において微小磁石を構成する磁性材料は1種類であっても構わない。さらに、上記特性範囲を好適に満たすものであればより好ましい。また、その他の発明で用いる微小磁石は保磁力の異なる2種以上の磁性材料からなる場合、微小磁石の見かけ上の保磁力等の磁気特性の幅が広がり、泳動性に寄与する部分と反転性に寄与する部分の双方を満たす微小磁石を得ることができるので好ましい。
【0036】
また、微小磁石が、少なくとも高保磁力材からなる第1の磁性材と低保磁力材からなる第2の磁性材を含む2種以上の磁性材料からなる場合、上記のように高保磁力材と低保磁力材といった磁気特性の違う材料を複合することにより、上述の磁気特性の幅はより明確に広がりを有し、良好な泳動性、反転性を得ることができるのでより好ましい。
【0037】
ここで、高保磁力材とは、硬質磁性材料を中心として一部半硬質磁性材料を含む比較的保磁力の高い磁性材料を指し、外部磁界により磁化されにくい磁性材料である。該高保磁力材は微小磁石の反転表示形成に際し、良好な反転性能を発揮することに寄与する。例えば、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライトなどの六方晶マグネトプランバイト型フェライト、サマリウムコバルト、セリウムコバルト、イットリウムコバルト、ブラセオジウムコバルト等の希土類コバルト、ネオジム合金、サマリウム-鉄-窒素合金、ネオジム系ナノ結晶スプリング磁粉などが挙げられる。
【0038】
一方、低保磁力材とは、軟質磁性材料および半硬質磁性材料のうちその保磁力が中間的なもの以下で、やや保磁力の小さなものを指し、比較的外部磁界の影響を受け易い磁性材料である。該低保磁力材は微小磁石の泳動表示形成に際し、良好な泳動性能を発揮することに寄与する。例えば、マグネタイト、マグヘマタイト、コバルト被着マグネタイト、コバルト被着マグヘマタイト、マンガンジンクフェライト、ニッケルジンクフェライト、鉛フェライト、希土類フェライト、二酸化クロムなどが挙げられる。
【0039】
本発明においては、微小磁石は磁気特性の違う磁性材料を複合することにより、微小磁石の磁気特性の幅はより明確に広がりを有し、良好な泳動性、反転性を得ることができる。
【0040】
高保磁力材のみを用いた場合、外部磁界を作用させた際の泳動性、反転性などの表示性能は満たすことが多いものの、微小磁石同士がその磁力の影響および筆記ペンなどの外部磁石による磁界を受けてパネル表面側に平行に配列せず、折り重なるように凝集してしまい、結果的にパネル表面を覆うだけの平行配列ができず、表示面に対して微小磁石が存在しない、いわゆる隙間が生ずるという不具合が発生し、十分な表示、コントラストが得られにくくなる。一度、微小磁石が凝集を起こすと、解きほぐすのは困難で、非常に重要な問題である。また、微小磁石の配合比を上げ、存在比率を上げると、相互干渉により重なる部分で反転不良が生ずる傾向があり、微小磁石の配合比により制御するのにも限りがある。また、高保磁力材のみを用いた際の問題点としては、一般的に、その性質上残留磁化が大きくなる傾向があるので、反転性能について、外部磁界を作用させた際に相互の磁力が必要以上に作用しあってしまい、作用させたくない部分の微小磁石まで反転し、混色を生じてしまうなど、微小磁石の姿勢制御が過敏になる傾向があり、それを避けるために、分散液体の降伏値や粘度を上げるなどの対処法はあるものの、経時変化で徐々に降伏値および粘度が上がってしまったり、周囲の環境温度による物性変化の幅が広くなり悪影響が発生し、微小磁石の反応が悪くなるなどの不具合が発生することもある。さらにそれを回避すべく、外部磁界を強くすると、所望の部分のみの筆記や再反転表示ができにくいなどの他の問題が発生し、累積的に問題が発生するおそれが考えられ、本発明の泳動磁石とのバランスが悪くなりがちである。
【0041】
なお複数種の磁性材料、すなわち高保磁力材と低保磁力材などを混合することにより、造粒された磁性材料として用いることもできる。例えば、ナノ磁性粉などの非常に微細な磁性材料を複数種混合し、バインダなどで固めたものなどが挙げられる。
【0042】
低保磁力材のみを用いた場合は、泳動磁石の選択次第では、その表面側の磁束密度等が微小磁石の保磁力を超え、微小磁石の磁極を壊し、致命的な反転性不良を引き起こすおそれがある。
【0043】
本発明において微小磁石は磁気特性の違う材料を複合する場合に、高保磁力材が低保磁力材の2倍以上の保磁力を有するものであると、さらによりよい効果を奏することができる。なお、その他、磁性材料となりうる材料は泳動性、反転性の諸性能に悪影響を与えるおそれが少ないものについて、問題の生じない範囲であれば適宜配合することができる。そのような磁性材料としては、黒色のマグネタイト、ベンガラ色や赤色のマグヘマタイト、緑色の酸化クロム、黄色のリチウムフェライトなどの磁性のある金属酸化物などがあり、それらは微小磁石の着色の目的などで配合される。
【0044】
前記、微小磁石内の2種類の磁性材料は、第1の磁性材の保磁力が65.0kA/m(817Oe)以上600kA/m(7560Oe)以下、さらに好ましくは65.0kA/m(817Oe)以上350kA/m(4402Oe)以下、第2の磁性材の保磁力が65.0kA/m(817Oe)未満であるとさらによい効果を奏する。
【0045】
第1の磁性材がこの範囲を下回ると上記の低保磁力材を単独で用いた際のように微小磁石の反転性不良となり、微小磁石の磁極面がパネル表示面側に均一に平行配列せず、表示が不鮮明、または不可能となる傾向がある。
【0046】
第1の磁性材の保磁力が大きくなると微小磁石が磁気的に安定すると同時に、一般的に残留磁化も大きくなる傾向が見られ、その反転性能が向上し、より少量で反転性に対する効果が得られやすくなる。しかしながら、上記範囲を上回ると、配合設計が繊細になる制約がある。すなわち、僅かな配合バランスの崩れにより磁気特性が左右され易くなるので、仮に設計配合より多く配合された場合には、結果的に得られる微小磁石自体の表面磁束密度が大きくなりすぎて、微小磁石の凝集を起こしてしまう傾向があり、少なく配合された場合には、第1の磁性材の上記範囲を下回ったときと同様な反転性の不具合が発生しやすくなる傾向があるため、製造上、設計上、扱いづらい側面が出るなど、本発明の泳動磁石とのバランスが悪くなりがちである。
【0047】
また、第2の磁性材がこの範囲を上回ると、高保磁力材を単独で用いた際のように、微小磁石自体の表面磁束密度が大きくなりすぎて、微小磁石の凝集を起こしてしまう傾向があり、反転性能を満足するために磁性材を少なく配合すると、結果的に泳動性不良となる傾向があり、本発明の泳動磁石とのバランスが悪くなりがちである。
【0048】
したがって、第1の磁性材及び第2の磁性材のそのいずれかが上記範囲外となると微小磁石の泳動性能と反転性能の両者の調和をとることが難しくなりやすく、本発明の泳動磁石とのバランスが悪くなりがちである。
【0049】
ここで、第1の磁性材と第2の磁性材の保磁力の境界を65.0kA/m(817Oe)としたのは、反転性と泳動性の表示性能の挙動バランスがもっとも取れている臨界点が実験的に求められたことなどがある。泳動磁石の影響を受けつつも、磁力は距離に反比例して減衰することから、表面パネル、分散液体、さらに微小磁石中の表面塗装やバインダ成分などの影響により65.0kA/m(817Oe)が良好な臨界点となることが挙げられる。さらに第2の磁性材としては、0.5kA/m(6.3Oe)以上65.0kA/m(817Oe)未満の半硬質磁性材料であると好ましい。軟磁性材料は、理論上、0kA/m(0Oe)を含む0.001kA/m以下程度の材料で、本発明に使用する磁性材料の磁気特性としては有効に作用する。しかしながら、保磁力が極端に小さい半硬質磁性材料や軟質磁性材料は、微粉末として加工するのが一般的に困難であるという問題がある。微小磁石は上述のように複合材料から構成されることから、磁性材料としても微粉末状にしてコーティングなどするのが好ましいが、その性質上、微粉末として加工するのが困難であるということから微小磁石のサイズが比較的大きくなってしまい、反転性、泳動性に不具合を生ずるおそれがある。
【0050】
本発明で使用する微小磁石は、主にS極面とN極面を異なる色で着色されていれば、形状は特に限定されないが、いわゆる磁気ペン(泳動磁石)で書いたときの表示形成性と形成された表示の鮮明性から色分けした微小磁石が、特定の色の合成樹脂および/または合成ゴム組成物に磁性材を分散した層の片面に他の色の着色組成物を塗布した層状体を裁断または粉砕してなるものが好ましい。あるいは、着色した金属蒸着層の上に磁性材を分散した層を設け、裁断または粉砕してなるもの、微小磁石が特定の色の合成樹脂および/または合成ゴム組成物に磁性粒子を分散した層の片面に他の色の着色シートをラミネートした層状体を裁断または粉砕してなるものなども好ましい例である。
両面を同色にすれば、コントラストの良い鮮やかなカラー泳動表示パネルとしても使用でき、そのような態様も本発明に含まれる。
【0051】
微小磁石を分散した分散液体は、着色材を含有し、有色であって、特定の降伏値を持つのが好ましい。有色である理由は、上記のように微小磁石が裏面側に泳動したときに表示を消去する、つまり、表面側から離間し、裏面側に泳動した微小磁石の色調を隠蔽し、確実に泳動表示・消去を行うためである。なお、この際、完全に隠蔽することで微小磁石の色調を隠蔽することもできるし、補色関係にある色調の利用などにより実質上微小磁石の表現色を消去することもできる。着色材としては各種顔料や染料などが適宜選択される。降伏値は、分散液体中の微小磁石が適正に分散されるためと沈降防止に必要となるものである。すなわち、0.15〜7.5N/m2 、さらに好ましくは0.3〜5.0N/m2程度の分散液体であることが好ましい。これらの物性値を得るには、従来の手法が適宜用いられ、分散媒、増稠剤、着色材、帯電防止剤などを適宜配合することにより得られる。また、粘度は、表示パネルに磁界を作用させた時にその部分のみ泳動または反転するのに必要となるもので、粘度3〜350mPa・s程度の分散液体であることが好ましい。
【0052】
前記分散液体を保持する支持材としては特に限定されず、間隔を設けて配設し二枚の周辺を封じた支持体、この二枚の基板間に略六角形のハニカムセルを配置した支持体、基板にマイクロカプセルを配置した支持体等が適宜使用される。
【0053】
以下、本発明の実施の形態について磁気泳動反転表示パネルの例を挙げ、図面により本発明を具体的に説明する。
【実施例】
【0054】
<磁気泳動反転表示パネルの作製>
<微小磁石例1>
厚さ25.0μmのポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という)フィルム上に表1に記載の組成をメチルエチルケトン(以下、「MEK」という)に分散・溶解した磁性インクを次の手段で塗工乾燥し、青色磁性シートを得た。この時青色磁性インク層の厚みは25.5μmであり、塗工質量は51.3g/m2であった。
(手順1)
表1の配合割合でMEKに樹脂成分を溶解し、これに異なる磁気特性を持つ2種類の磁性材を加えた後にアトライターで1時間分散した。
(手順2)
この分散液に、MEKに青色顔料を分散した顔料分散体を表1に記載の配合割合で加えた後に混合攪拌し、青色を呈する磁性インクを得た。(固形分60質量%)
(手順3)
この磁性インクをワイヤーバーにて塗工乾燥し上述の青色磁性シートを得た。
次に、このシートの青色磁性層上に以下の配合の白色インクを上記手順に準じて塗工乾燥し、青色磁性層に白色インク層を積層した。
この白色インク層の厚みは8.0μmであり、塗工質量は16.0g/m2であった。
白色顔料分散体 60.0質量部(酸化チタン顔料MEK分散体:固形分66.0%)
樹脂 31.8質量部(エポキシ樹脂MEK溶解液:固形分60.0%)
溶剤 8.2質量部(MEK)
次に、このシートの白色インク層上に以下の配合のピンクインク層を上記手順に準じて塗工乾燥し、白色層の上にピンク色インク層を積層した。
このピンク色インク層の厚みは8.0μmであり塗工質量は9.6g/m2であった。
ピンク色顔料分散体 75.0質量部(ピンク顔料MEK分散体:固形分30.0%) 樹脂 25.0質量部(エポキシ樹脂MEK溶解液:固形分60.0%)
このようにして塗工して得られた3層は、合わせて41.5μm、塗工質量76.9g/m2の塗工シートであった。
引き続いて、この塗工層をベースフィルムごと着磁し、青面をN極、ピンク面をS極とした後に塗工層をベースフィルムから剥離し薄片とし、カッターミル粉砕機にて微粉砕した後に篩い分けを行い、粒径が63〜180μmの範囲にある青/ピンク色に磁極の色を塗り分けた微小磁石を得た。ここで微小磁石の磁気特性は表1に示した。
【0055】
<磁気特性測定方法>
本発明において微小磁石の保磁力、残留磁化そして飽和磁化の測定は、振動試料型磁力計(東英工業株式会社製VSM−P7−15型)で行い、その方法は次のようである。すなわち、次のふた(A)と本体(B)からなる測定ケースに微小磁石を密につめ込み、この測定ケースに磁力計の684.4kA/mの磁界を及ぼすとX−Yレコーダ上にヒステリシスカーブが記録される。このヒステリシスカーブから保磁力、残留磁化そして飽和磁化を求める。残留磁化、飽和磁化においては、この値を測定ケースに詰め込んだ微小磁石の質量で割って単位質量当たりの残留磁化、飽和磁化(A・m2/kg)を換算する。
(A)厚み1mmで直径7.0mmの円板と、この円板表面から一方に隆起した高さが0.5mmで直径6mmの突起からなるアクリル樹脂のふた
(B)内径が6.0mmで奥ゆき2.5mmの孔を有する外形が7.0mmで深さが4.0mmのアクリル樹脂製有底円筒形ケース本体
【0056】
<パネル例1>
一方、分散媒として20℃における粘度が3.2mPa・Sであるイソパラフィンに、増稠剤を加え、これを加熱溶解した後に冷却し、増稠剤ペーストを調製した。次にイソパラフィンに増稠剤ペースト、着色材、帯電防止剤を添加、攪拌し、以下の配合比(合計100質量部)の塑性分散液を得た。
増稠剤 1.3質量部[エチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アマイド(伊藤製油社製:商品名ITOHWAX J−530)]
着色材 1.4質量部(酸化チタン)
耐電防止剤 0.1質量部
分散媒 残部(エッソ化学社製:商品名アイソパーM)
次に、この塑性分散液に前記青/ピンクの2色に塗り分けられた箔片状の微小磁石例1を、分散液89.3質量部に対し微小磁石10.7質量部の割合で配合し攪拌を行い、分散液中に微小磁石が均一に分散してなる表1に記載したような降伏値を有する塑性分散液体を得た。
降伏値の測定方法は従来から行われているのと同様にブルックフィールド型粘度計(東京計器社製BL型)を用い、ローターを分散液体中で低速回転(0.3rpm)させた時のローターのねじれ角度を読み取る方法で測定した。使用したローターは上記BL型粘度計に付属の2号ローターを使用した。
さらに引き続き、この分散液体を板厚が0.25mmの塩化ビニル樹脂フィルムに接着剤を用いて片面に接着した、セルサイズ3.5mm、正六角形状で高さ1.0mmの塩化ビニル樹脂製ハニカムセルの、多セル構造物のセル内に充填し、その後、多セル構造物の開放面を厚み0.08mmの塩化ビニル樹脂フィルムで接着剤を用いて被覆し、セル中に分散液体を封入して表示パネルを得た。
【0057】
<その他の微小磁石例およびパネル例>
微小磁石例3、11〜12、15、24(青色/ピンク色)
第1の磁性層を表1〜4に記載のものとした他は微小磁石例1と同様にして、微小磁石を作製した。また、増稠剤を適宜表1〜4の通りに配合した以外はパネル例1と同様にして分散液体とした後にパネル化して評価を行った。
【0058】
微小磁石例2、4〜10、13〜14、16〜23、25〜33、参考例1〜8(金色/黒色)
第1の磁性層を表1に記載のものとし、厚さ25.0μmの離型処理を施したPETフィルム上に黄色着色層とアルミニウム蒸着層を合わせて3.0μmになるよう設け、該アルミニウム蒸着層上に第1の磁性層を塗工し、白色インク層、ピンク色インク層を施工しなかった他は微小磁石例1と同様にして、微小磁石を作製した。また、増稠剤を適宜表1〜5の通りに配合した以外はパネル例1と同様にして分散液体とした後にパネル化して評価を行った。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
(注)BaO・6Fe2O3・・・バリウムフェライト
SrO・6Fe2O3・・・ストロンチウムフェライト
NixZn1-xFe2O4(O<x≦1)・・・ニッケルジンクフェライト
Fe3O4・・・マグネタイト
Co−γ−Fe2O3・・・コバルト被着マグヘマタイト
Co−Fe3O4・・・コバルト被着マグネタイト
【0065】
<泳動磁石>
<筆記用磁石>
実施例1
ネオジム合金磁石(φ1×5mm)、表面磁束密度155mT、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」30mTの泳動磁石を用い、筆記用磁石を作製した。
【0066】
<「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」の測定方法>
磁気泳動反転表示パネルの支持材の一方の面に泳動磁石を作用させる際に、そのパネル反対側の内壁面近傍に相当する距離(本実施例では1mm)をおき、その部分にかかる磁束密度を「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」とし、泳動磁石の磁束密度測定を行った。(図13参照)
測定値は、上記測定における最大値を本発明における磁束密度とした。
測定にあたっては、「電子磁気工業(株)社製、GAUSS METER MODEL GM−4000」を用いた。
【0067】
<「支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側の内壁面近傍における磁束密度」の測定方法>
「支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側の内壁面近傍における磁束密度」は、すなわち、上記反対側の測定と同様に「微小磁石(2)が表面近傍(10’)に位置したときの磁束密度」となる。
磁気泳動反転表示パネルの支持材の表面側に泳動磁石を作用させる際に、微小磁石(2)が表面近傍(10’)に泳動した位置として、その面の厚みに相当する距離をおき、その部分にかかる磁束密度を「支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側の内壁面近傍における磁束密度」とし、泳動磁石の磁束密度測定を行った。
測定値は、上記測定における最大値を本発明における磁束密度とした。
測定にあたっては、「電子磁気工業(株)社製、GAUSS METER MODEL GM−4000」を用いた。
なお、本実施例においては、表示パネルの支持材として板厚0.08mmないし0.25mmのフィルムを用いたため、その表面磁束密度と大きな差がなく、近似的に表面磁束密度の値を用いることとした。
【0068】
実施例2
ネオジム合金磁石(φ1.5×8mm)、表面磁束密度247mT、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」59mTの泳動磁石を用い、筆記用磁石を作製した。
【0069】
実施例3
ネオジム合金磁石(φ2×5.5mm)、表面磁束密度266mT、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」73mTの泳動磁石を用い、筆記用磁石を作製した。
【0070】
実施例4
ネオジム合金磁石(φ3×6mm)、表面磁束密度372mT、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」150mTの泳動磁石を用い、筆記用磁石を作製した。
【0071】
実施例1〜4の筆記用磁石を用い、以下のように、前記微小磁石例を用いた前記パネル例に筆記したところ、すべて良好に繰り返して筆記ができ、微小磁石の磁極が壊れるようなことはなかった。(参考例は除く)
このように、同じような表面磁束密度(表面側(10’)の位置での磁束密度)であっても、その構成によっては「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」に差が生ずることがあり、微小磁石の磁極を破壊しない、又は、混色を生じない条件としては、上記「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」を特定範囲にすることが有効である。さらに、その表面側の磁束密度は直接的に微小磁石が破壊される限界点ということもでき、これらの例の範囲であれば、微小磁石が破壊されにくい傾向があることも判った。
【0072】
<消去用磁石>
実施例5
フェライト系ゴム磁石(L=100mm)(W=6mm×t=1mm)(着磁ピッチ4mm)、表面磁束密度60.4mT、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」20.9mTの泳動磁石を用い、消去用磁石を作製した。
【0073】
実施例6〜9、比較例1
フェライト系ゴム磁石(L=100mm)を用い、表6に示した幅×厚さ、着磁ピッチ、表面磁束密度、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」(距離1mmでの磁力)の泳動磁石を用い、消去用磁石を作製した。
【0074】
【表6】
【0075】
実施例10〜12
フェライト系ゴム磁石(L=100mm)を用い、表6に示した幅×厚さ、着磁ピッチ、表面磁束密度、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」(距離1mmでの磁力)の泳動磁石を用い、消去用磁石を作製した。
【0076】
なお、図14に実施例10〜12の態様を示した。すなわち、多極磁石の条件を変化させたものである。この結果からも、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」が泳動性(消去性)に直接的に影響していることが判る。
【0077】
<表示パネル例への筆記および消去>
図1のようにパネル(1)の裏面から消去用磁石(4)を用いて裏面側に微小磁石(2)を引き寄せ、筆記の準備をする。その際には微小磁石(2)を除く分散液体成分が着色されており、該微小磁石(2)を隠蔽するので、画一的な分散媒の色調が表示(7)として得られた(第1の色調)。
次に、図2のように筆記したい部分をパネル表面から実施例1〜4の筆記用磁石(5)のS極でパネル(1)の表示面を掃き、微小磁石(2)を裏面側から表示面側に泳動しつつ(一部反転)、微小磁石(2)のN極面をパネルの表示面側に並ばせN極面の色調の筆跡(8)を得た(第2の色調)。
さらに、図3のようにこの面を別の磁力の弱い反転磁石(6)のN極で掃くと、表示面側に泳動していない微小磁石(2−B)を引き寄せることなく、表示面側に泳動していた微小磁石(2−A)のみが反転して、該泳動していた微小磁石(2−A)にて構成されるS極面による筆跡(9)が表われ、表示形状を保持したまま表示色を変化させることができた(第3の色調)。
そして、最後に裏面側から実施例5〜12の消去用磁石(4)により走査し、微小磁石(2)を裏面側に泳動させ表示を消すことができた(第1の色調)。
【0078】
各例における磁気泳動反転表示パネル、泳動磁石、表示パネルセットの各評価は表1〜6に示してある。
【0079】
<パネル評価方法>
評価試験は上記筆記および消去の手順に準じ、1.泳動性、2.反転性(凝集性)、3.印字品質、4.微小磁石の磁極を壊さないかどうか、混色があるかどうか、を含めた総合評価、の項目で行った。
泳動性
◎:微小磁石は表面側に完全に泳動しており、裏面側の残留が無い
○:微小磁石は表面側に泳動しているが、やや裏面側の残留が有る
△:微小磁石が表面側に泳動しにくく、裏面側の残留が有る
×:表面側に泳動している微小磁石が無い、或いはその量が極端に少ない
反転性(凝集性)
◎:微小磁石同士の凝集が無く、整列性も良好で完全に反転している
○:微小磁石同士の凝集はやや見られるが、反転している
△:微小磁石同士の凝集が見られるものの、ほぼ反転している
×:微小磁石が反転しない、或いはその量が極端に少ない
印字品質
◎:表示が鮮明でコントラストも良く、印字品質が良好である
○:コントラストが良く表示ができる
△:微小磁石の沈降または泳動性不良がみられ、表示はできるが一部不鮮明である
×:コントラストが不良で表示が不鮮明、もしくは表示ができない
総合評価
◎:非常に良好で実用できるパネル
○:良好で実用できるパネル
△:一部問題はあるが実用できるパネル
×:性能が劣り実用できないパネル
【0080】
各実施例についての評価については、表中に示したが、以下に詳述する。
【0081】
微小磁石例1〜33のものは、各々性能差はあるものの、総じて良好なものであった。
【0082】
特に、微小磁石例1〜5、9〜10、15については、各評価項目ともバランスが取れており、非常に良好であった。微小磁石例5、10からもわかるように降伏値を変化させても性能差が出にくく、分散液体の物性設計の自由度が増し、経時変化や環境温度などの諸条件などによる性能劣化が少なく、泳動磁石等の選択の幅も広がっておる好適なものであった。
【0083】
微小磁石例8、13、18、20は、やや凝集傾向が見られたものの、総合的には良好であった。
【0084】
微小磁石例6、11、12、24、27については、残留磁化がやや低いので、未反転微小磁石が発生する傾向が見られたが、総合的には良好であった。
【0085】
微小磁石例7は、残留磁化がさらに低いので、未反転微小磁石が微小磁石例6などに比べるとやや多く発生する傾向が見られたが、総合的には良好であった。
【0086】
微小磁石例14は、微小磁石例13において凝集傾向が見られたので、降伏値を制御することにより、より好ましい形態とすることができた。
【0087】
微小磁石例16は、飽和磁化が低いので、泳動性にやや難があったが、総合的には良好であり、微小磁石例17として降伏値を下げた場合にはさらに良好に制御することができた。また、残留磁化がやや低いので、未反転微小磁石が発生する傾向も見られたが、総合的には良好であった。
【0088】
微小磁石例19は、やや凝集傾向が見られたので、降伏値を上げて凝集を押さえることができたが、降伏値を高く設定しなければならず、経時変化や環境温度への依存性があったり、泳動磁石を強くしなければならないなど制約が生じた。
【0089】
微小磁石例21は、泳動性能は良好であるが、反転性能に難があり、使用可能な限界レベルであった。
【0090】
微小磁石例22は、やや凝集傾向が見られたが微小磁石は泳動でき、使用可能な限界レベルであった。また、やや凝集傾向が見られたので、微小磁石例23において降伏値を上げたが、残留磁化、飽和磁化の値が低めなので、泳動性に影響を与えることとなり、降伏値により制御できる限界レベルにあることがわかった。
【0091】
微小磁石例25は、残留磁化および飽和磁化がともに低かったので、微小磁石が泳動しにくく、かつ未反転微小磁石が発生する傾向が見られ、微小磁石例26において降伏値制御を試みたが、同様に使用可能な限界レベルであった。
【0092】
微小磁石例28並びに31〜33については、泳動性はよいが、反転性にやや劣り、微小磁石の磁極が壊れないような比較的弱い泳動磁石を選択しなくてはならず、結果的に泳動/反転性能に影響がでるなど制約が多いものであった。また、微小磁石例29〜30は、泳動性に難があり、また、凝集が発生しやすい傾向があるので、適正な泳動磁石並びに分散液体物性の調整に制約が多いもので、微小磁石例28〜33は、総合評価で△であるものの、他の微小磁石例に比べてやや劣るものであった。
【0093】
参考例1〜8は、総じて磁性材が単一系でかつ、十分な性能を有する磁性材を用いていなかったため、微小磁石の磁気特性の制御に限界があり、満足する性能が得られにくかった。
【0094】
参考例1、2は微小磁石が泳動しづらく、強い泳動磁石を使うと泳動はするが、微小磁石が凝集してしまい、コントラストがでないものであった。参考例3、4は、参考例1、2に比べるとややよいもののやはり泳動性が悪く、本発明の好適範囲を超えるような強い泳動磁石を使用すると微小磁石の磁極が壊れてしまうものであった。
【0095】
参考例5、6は泳動性はよいが、反転性に劣り、少し強い泳動磁石を使うと微小磁石の磁極が壊れ易い傾向があった。参考例7、8は、微小磁石がまったくと言ってよいほど反転せず、泳動の契機となる反転も生じにくいので、泳動性に劣るものであった。
【0096】
参考例2、4、6、8は、それぞれ参考例1、3、5、7のものに降伏値制御を試みたものであるが、使用可能なレベルにすることは困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0097】
上記磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石およびそれを用いた表示パネルセットによれば、良好に表示と消去を繰り返し行うことができ、とりわけ、背景色の上に微小磁石の表裏の色調である2色の表示ができ、分散媒等の微小磁石を除いた分散液体成分の色調と併せて、3色の表現が可能となる。また、その磁気表示については、任意の筆跡の任意の部分を選択して色を変えることができるという優れた効果も奏するものである。すなわち、黒板やホワイトボードなどではできなかった、一度筆記した文字の重要ポイントを色を変えて表示することや広告ディスプレイなどで注目を惹きたいところのみ簡単に色を変えるということができるようになる上、不要になった場合には簡単に元に戻すこともできるという優れた効果を有するのである。学校などで黒板やホワイトボードなどの代わりに使うとよりよい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】第1の色調を表示する際の(a)模式図(b)表示例を示す図である。
【図2】第2の色調を表示する際の(a)模式図(b)表示例を示す図である。
【図3】第3の色調を表示する際の(a)模式図(b)表示例を示す図である。
【図4】本発明の磁気泳動反転表示パネルセットにおける表示メカニズムを示す模式図である。
【図5】本発明の磁気泳動反転表示パネルセットにおける表示メカニズムを示す模式図である。
【図6】本発明の磁気泳動反転表示パネルセットにおける微小磁石挙動メカニズムを示す模式図である。
【図7】従来の磁気泳動型表示パネルにおける表示メカニズムを示す模式図である。
【図8】従来の磁気反転型表示パネルにおける表示メカニズムを示す模式図である。
【図9】本発明の磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石の例を示す模式図である。
【図10】本発明の磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石の例を示す模式図である。
【図11】本発明の磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石の例を示す模式図である。
【図12】本発明の磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石の例を示す模式図である。
【図13】本発明における泳動磁石の磁束密度測定を行う際の概略説明図である。
【図14】本発明の磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石の構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0099】
1 表示パネル
2 微小磁石
3 分散液体
4 消去用磁石(泳動磁石)
5 筆記用磁石(泳動磁石)
6 反転磁石
7 第1の色調の表示
8 第2の色調の筆跡
9 第3の色調の筆跡
10 表面板
10’支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側の内壁面近傍
11 支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の面
11’支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍
12 仕切板
13 磁性粒子
14 プローブ
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気泳動反転表示パネルに用いる泳動磁石およびそれを用いた表示パネルセットに関し、さらに詳しくは、筆記用磁石により微小磁石を泳動または泳動/反転させて表示を形成し、さらに裏面から消去用磁石により微小磁石を引き寄せて表示を消去する、磁気泳動反転表示パネルにおいて、その筆記または消去の際に、より適した磁気特性範囲の泳動磁石(筆記用/消去用)およびそれを用いた表示パネルセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気により表示を行うことができる磁気表示パネルを用いた磁気表示システムは知られており、該磁気表示システムとしては、特許文献1に挙げられるような磁性粒子を泳動させて表示を行う磁気泳動表示パネルや特許文献2に挙げられるような磁性粒子を反転させて表示を行う磁気反転表示パネルが提案されている。
【0003】
前記磁気泳動表示パネルいわゆる泳動型は、図7に示したように、筆記前に磁気泳動表示パネルの裏面板(11)側全面を消去用磁石(4)でスライドし磁気パネル中の磁性粒子(13)を裏面板(11)側に引き寄せ、表面板(10)側を均一な面としてから、その表面板(10)側に筆記用磁石(5)を走査させ、部分的に磁性粒子(13)を表面板(10)側に引き寄せることにより磁気表示を得るという表示方法である。このような磁気表示を消去する場合には、磁気泳動表示パネルの裏面板(11)側で消去用磁石(4)をスライドさせ、表面板(10)側の磁性粒子(13)を裏面板(11)側に引き戻し、該磁気泳動表示シートの表面板(10)側に筆記された磁気表示を消去するものである。しかしながら、このような表示・消去方法では、磁気泳動表示パネルに筆記された磁気表示は、裏面板(11)側から消去するしかないため、磁気表示の所望の部分のみ色を変えるということはできないものであった。また、磁性粒子(13)はマグネタイト粒子に代表されるような、磁石構造でない、おおよそ保磁力/残留磁化を有していない/または少ない粒子を用いているため、強い磁石を用いても粒子の磁極が破壊されてしまうなどの課題はなく、筆記用並びに消去用の磁石の要求性能は磁性粒子(13)を泳動させるのに十分な磁力があれば良いという程度で、支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁力(磁束密度)に関する課題や、泳動後、支持材の泳動磁石を作用させる面の内壁面近傍における微小磁石の破壊にかかる磁力(磁束密度)、すなわち上限値の制約などはないものであった。
また、磁性粒子(13)はマグネタイト粒子に代表されるような、単色(黒色)の略球状粒子を用いているため、黒一色の磁気表示しか得られなかった。
【0004】
一方、前記磁気反転表示パネル、いわゆる反転型は、図8に示したように、筆記前に磁気反転表示パネルの表面板(10)側から特定の磁極を有する消去用磁石で磁気パネル中の微小磁石(2)の同一極をパネル表面板(10)側に向かせ、表面板(10)側を均一な面としてから、同じ表面板(10)側に反対の磁極を有する筆記用磁石(5)などを用いて微小磁石を部分的に反転させ、筆記用磁石(5)を作用させた磁極とは逆の磁極の微小磁石(2)の色を表示させることにより磁気表示を得るという表示方法である。このような磁気表示を消去する場合に、同じ表面板(10)側から消去を行うので、所望の部分のみの消去が可能で、裏面板(11)側を磁石でスライドさせることのできない用途などに用いることができるなど、利用範囲が広がっているものの、磁気反転表示パネルに筆記された磁気表示は、表裏を2色に色分けした微小磁石(2)の2色の色調に支配され、かつ、微小磁石(2)の表裏の色調をより忠実に表現するために分散媒としては透明な液体を用いる必要があった。
すなわち、微小磁石(2)の表裏の色調である、筆記前の均一状態の色調と、筆記用磁石による磁気表示の色調の2色表示しか得られず、微小磁石(2)を好適に泳動させることやそれに用いる泳動磁石についての開示は一切ないものであった。
【0005】
さらに、本発明者らは、先にPCT/JP2004/004625号などに、磁気泳動反転表示パネル等につき、その表示方法、好適な内包物特性(微小磁石特性)等の提案を行っている。しかし、そこにも、微小磁石(2)の泳動に好適な筆記磁石および消去磁石等に関する提案は行われていない。
【0006】
【特許文献1】特公昭62−53359号公報
【特許文献2】特公昭59−32796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は磁気により泳動反転表示を行うことができるパネルに用いる泳動磁石において、その好適な磁力特性範囲などを提供し、また、それを用いた磁気泳動反転の表示パネルセットを提供することを本発明の目的とし、そのような課題の解決手段を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は以下の各発明により解決される。
すなわち、本発明は、
「1.少なくとも、着色材を含有する分散媒中に、分散媒の色と異なり、かつ互いに表裏の色とも異なる色を有する微小磁石を分散して得られた降伏値を有する分散液体と、該分散液体を保持する支持材とを備えた磁気泳動反転表示パネルに使用する泳動磁石であって、支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側の内壁面近傍における磁束密度が400mT以下であり、パネル反対側の内壁面近傍における磁束密度が10mT以上、300mT以下であることを特徴とする、磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石。
2.磁気泳動反転表示パネル中の微小磁石の保磁力が4.0kA/m以上600kA/m以下である、第1項に記載された磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石。
3.磁気泳動反転表示パネル中の微小磁石の単位質量あたりの残留磁化が1〜35A・m2/kgであり、飽和磁化が1〜100A・m2/kgである、第1項または第2項に記載された磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石。
4.少なくとも、着色材を含有する分散媒中に、分散媒の色と異なり、かつ互いに表裏の色とも異なる色を有する微小磁石を分散して得られた降伏値を有する分散液体と、該分散液体を保持する支持材とを備えた磁気泳動反転表示パネルと、第1項ないし第3項の何れか1項に記載の泳動磁石、から少なくともなる、表示パネルセット。」に関する。
【発明の効果】
【0009】
上記磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石およびそれを用いた表示パネルセットによれば、筆記用磁石により微小磁石を泳動または泳動/反転させて表示を形成し、さらに裏面から消去用磁石により微小磁石を引き寄せて表示を消去する、磁気泳動反転表示パネルにおいて、その筆記または消去の際に、より適した磁気特性範囲の泳動磁石(筆記用/消去用)およびそれを用いた表示パネルセットを得ることができる。
さらに、微小磁石を泳動させるのにより適した磁気特性を有しつつ、比較的強い磁石を用いても微小磁石の磁極が破壊されてしまうなどの問題が生ずることがない磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石およびそれを用いた表示パネルセットを得ることができる優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いる磁気泳動反転表示パネルは、少なくとも、着色材を含有する分散媒中に、微小磁石を分散して得られた降伏値を有する分散液体(3)と、該分散液体を保持する支持材とを備えたものである。そして、泳動磁石(4、5)は、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」が特定範囲のものを使用する。このような構成にすることで微小磁石の磁極を破壊することなく、好適な微小磁石の泳動表示(筆記/消去)を行うことができるのである。さらに、磁極の色が異なる微小磁石を用いた際には3色の磁気表示が得られる。すなわち、図4に示したように、第1の色調は、泳動磁石のひとつである消去用磁石(以下、単に消去用磁石ということがある)(4)を用いて裏面板(11)側に微小磁石(2)を引き寄せた際には微小磁石(2)を除く分散液体(3)成分が着色されており、該微小磁石(2)を隠蔽するので、表面板(10)側から見ると、画一的な分散媒の色調の表示として得られる[図4−(a)]。第2の色調は、筆記したい部分に別の泳動磁石のひとつである筆記用磁石(以下、単に筆記用磁石ということがある)(5)の特定の磁極を選択して外部磁界を作用させることにより該分散液体(3)中の微小磁石(2)を泳動または泳動/反転させ、該微小磁石(2)の特定面(例えばN極面)の色調を表示させることで得られる[図4−(b)]。さらに第3の色調は、該磁気表示による筆跡を得た後、前記特定面の色調が表示された筆跡に対して、泳動磁石ではない別の反転磁石(6)による反対の磁極の磁界を筆跡を形成していない他の微小磁石(2)を泳動させない範囲で作用させることにより、筆跡を形成している任意の部分の微小磁石(2)を反転させ、筆跡の形態を変えることなく筆跡の任意の部分の色調を変化させることにより得られる[図4−(c)]。もっとも、この筆跡色は第2と第3の色調を得る際の外部磁界の磁極を反対にすれば反対に表示することができることはいうまでもない。
両面を同色にすれば、コントラストの良い鮮やかなカラー泳動表示パネルとしても使用でき、そのような態様も本発明に含まれる。
【0011】
上記、多色表示を行う際には、泳動または泳動/反転させる際に使用する外部磁界、すわなち泳動磁石(4)(5)と、表示色反転に用いる反転磁石(6)の磁気特性等をうまくコントロールすることで、泳動と反転による多色表示を制御することができる。つまり、微小磁石(2)が泳動するためには微小磁石(2)が本発明の磁気泳動反転表示パネルの一例として挙げた図5における仕切板(12)によってパネル支持材の分散液体が封入されるセルの高さ分だけ液中抵抗等に逆らって引き寄せられなければならない。
【0012】
微小磁石(2)が表裏を異なる磁極とし、異なる色に着色したものである場合には、N極、S極のどちらの磁極が選択されるかによって磁気表示色が決定される。その表示の際の微小磁石(2)の動作状態は、筆記用磁石(5)との関係で異極がパネル表示面を向いていた場合はそのまま泳動し、表面にその表示色を現し、同極が向いていた場合には反転しつつ泳動し、逆の色調の表示を現すこととなるのである。(図6)
【0013】
従って、微小磁石(2)をパネル表面まで泳動させるためには、支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の面(11)における内壁面近傍(11’)に存在する微小磁石を支持材の仕切板(12)の高さ分だけ泳動させる必要がある。すなわち、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」が重要な要素となるのである。
【0014】
ここで、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」としては、10mT以上が好ましい。さらに15mT以上がよく、20mT以上はよりよく、35mT以上が最適である。
【0015】
なお、反対側内壁面近傍(11’)より泳動磁石を作用させる一方の面に近い微小磁石については、さらに強い磁力がかかるため、好適に泳動することはいうまでもない。
【0016】
さらに、該内壁面近傍(11’)にかかる磁力は大きければ大きいほど良いというわけではない。後に詳述するが、微小磁石はそれ自体が磁石特性を有し安定的に保持されなければならないため、過度の磁力を与えすぎると微小磁石の磁極が破壊されてしまうおそれや、他の微小磁石を誤って泳動・反転させ、混色を生じさせてしまうおそれがあるからである。そこで、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」の上限値は300mT以下が好ましい。さらに150mT以下がよく、100mT以下が最適である。
【0017】
この上限値は、以下の理由により推論できる。
磁力は、その作用する距離の二乗に反比例して減衰する。すなわち、上記内壁面近傍(11’)から微小磁石(2)が泳動して表面近傍(10’)に位置した場合には、微小磁石(2)に作用する磁力はその分だけ強くなるということになる。従って、作用する磁力が強くなったとき(微小磁石(2)が表面近傍(10’)に位置したとき)に微小磁石(2)の磁極を破壊することや混色を生じさせることのない適正な範囲の磁気特性が必要なのである。ここで、その観点から「支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側の内壁面近傍における磁束密度」が400mT以下であることが必要であり、好ましくは300mT以下がよい。また、同様に「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」は300mT以下であることが好ましいく、150mT以下がより好ましい。さらに、100mT以下が材料入手の面等から最適である。
【0018】
以下に挙げる実施例のひとつを例にとれば、支持体の仕切板(12)の距離だけおいた磁束密度が150mTである、その際使用した泳動磁石は、表面磁束密度372mTである。「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」150mTの泳動磁石によれば、微小磁石(2)を泳動させるのに十分な磁束密度であり、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側の内壁面近傍における磁束密度」372mTはその表面近傍(10’)に微小磁石(2)が位置した際にも微小磁石(2)の磁極を破壊したり、混色を生じさせたりしない磁束密度である。なお、この例の磁石ではこのような関係になったが、実施例等から見ても判るように、その磁石の磁力線の形態およびパネル支持体の形状によっては、必ずしもこのような関係になるとは特定されないものであることは注意を要する。
【0019】
すなわち、同じような表面磁束密度(表面側(10’)の位置での磁束密度)であっても、その構成によっては「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」に差が生ずることがあり、良好な表示を得つつ、微小磁石の磁極を破壊せず、かつ、混色を生じさせることのない条件としては、上記「支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側と反対側の内壁面近傍における磁束密度」をそれぞれ特定範囲にすることが有効である。さらに、その表面側の磁束密度は直接的に微小磁石が破壊される、又は、混色が生ずる限界点ということもでき、泳動磁石の表面磁束密度が400mT以下であると微小磁石が破壊されにくい傾向となり、350mT以下であるとさらに好ましい。
【0020】
また、本発明においては、前記特定面の色調が表示された筆跡に反転磁石(6)による反対磁極の磁界の作用を与えることにより筆跡を形成した任意の部分の微小磁石(2)を反転させ、筆跡の形態を変えることなく筆跡の任意の部分の色調を変化させることが可能である。この際、表示されている筆跡の任意の部分の微小磁石(2)のみが反転し、色調が変化するためには、受ける磁界により筆跡を形成していない他の微小磁石(2)が泳動しない範囲で表示されている筆跡の任意の部分の微小磁石(2)のみが反転するようコントロールする必要がある。つまり、比較的弱い磁界の作用を受けた際に、他の微小磁石(2)が泳動しない範囲で表示された筆跡のみ、すなわち表示面側に泳動していた微小磁石(2)のみが反転するよう制御することで達成される。
従って、このような使い方をした場合、任意の色調を選択して任意の筆跡を得つつ、得られた筆跡の任意の部分のみの色調を変化させる多色表示を得ることができる。
【0021】
本発明のパネルに用いる泳動磁石のひとつである消去用磁石(4)においては、微小磁石(2)を表示面側から裏面側に引き寄せられればよく、そのための磁気特性を備えていれば、その磁極や配置などは特に問わない。また、単極の磁石でも良いし、複数個、並列に並べたものであっても良い。つまり、上記磁気特性範囲を満たすものであれば使用可能である。裏面側に引き寄せられた微小磁石(2)は表示面から見た際には微小磁石(2)を除く分散液体の成分により隠蔽されており、どちらの面が表示面側を向いていても特に問題がないからである。
なお、筆記用磁石(5)は特定の磁極を有するよう構成されている必要がある。
【0022】
以下に、泳動磁石および微小磁石の磁気特性等につきさらに詳しく述べる。
【0023】
一般的に磁石などを構成する磁性材料はその保磁力の強さなどにより概略、硬質磁性材料、半硬質磁性材料、軟質磁性材料に分類される。磁性材料の保磁力は0.001kA/mから1000kA/mまでと大きな幅を持つといわれている。その中で、軟質磁性材料は0.01kA/m以下と極端に小さな保磁力を有するものを指し、ハードディスクの磁気記録用ヘッドやトランスなど電力機器用磁心などに用いられている。一方、硬質磁性材料は、保磁力が大きく、磁気ヒステリシス曲線の張り出しの大きいものを指し、いわゆる永久磁石として用いられている。保磁力が硬質磁性材料と軟質磁性材料の中間的な値のものを半硬質磁性材料といい、10〜100kA/m近傍のものが多く、ハードディスクの記録用ディスクや磁気テープなどの磁気記録材料に用いられている。
【0024】
磁石は、その構造、材質、形状等により、それぞれ磁力線の形態が異なるのは周知の事実である。表面磁束密度の大きな磁石であっても、その磁力線の形態が偏平形状などであると距離をおいた場合に与える磁力が著しく小さなものになってしまう。
泳動反転が担磁気パネルにおいては、好適な泳動表示(筆記/消去)を確保しつつ、微小磁石の磁極の破壊を防止するという課題があり、特にその磁気特性の選択方法が重要となることが判った。
【0025】
すなわち、従来のように磁石固有の磁気特性のみによる泳動作用では、たとえ大きな表面磁束密度を有する磁石を泳動磁石として選択しても、その磁力線が偏平であった場合等には、好適な泳動をさせることができず、好適な泳動を求めるがゆえにさらに大きな表面磁束密度を有する磁石を選択すると、微小磁石の性能によっては該磁石の磁極が破壊されるという問題を生ずることとなっていたのである。その点、本発明の特定範囲によれば、特段の問題点を有することなく使用することができる。
【0026】
次に、微小磁石の磁気特性について述べる。
上記泳動磁石を用いれば広範な特性を有する微小磁石を使用することができるが、さらに耐久力のある微小磁石を用いれば泳動反転表示を好適に行うことができる。
【0027】
微小磁石自体の保磁力が4.0kA/m(50.3Oe)以上600kA/m(7560Oe)以下、好ましくは4.0kA/m(50.3Oe)以上310kA/m(3900Oe)以下、より好ましくは12.0kA/m(150.9Oe)以上80kA/m(1006Oe)以下であると良好な効果を奏する。
この範囲を下回ると微小磁石の反転性不良となる傾向があり、微小磁石の磁極面がパネル表示面側に均一に平行配列せず、表示が不鮮明、または不可能となる傾向がある。また、泳動磁石の選択によっては強い磁石を用いた場合に、微小磁石の磁極が破壊されやすくなってしまう傾向があることも挙げられる。
反対にこの範囲を上回ると、結果的に得られる微小磁石自体の表面磁束密度が大きくなりすぎて、微小磁石同士の凝集を起こしてしまうほか、泳動磁石等の外部磁界の影響をより敏感に受け、混色しやすくなる傾向にあり、やはり微小磁石の凝集を起こし、上記の不具合が発生しやすくなる傾向がある。
【0028】
また、微小磁石の単位質量あたりの磁気特性が以下のa)、b)からなるものであると良好である。
a)残留磁化・・・1〜35A・m2/kg(1〜35emu/g)
b)飽和磁化・・・1〜100A・m2/kg(1〜100emu/g)
残留磁化は、微小磁石が外部磁界に対し、極力迅速にその方向を変えるために必要となるもので、微小磁石の反転性に大きく寄与するものであり、この範囲を下回ると微小磁石が反転しない傾向があり、上回ると微小磁石同士が凝集してしまう傾向がある。
飽和磁化は、微小磁石が外部磁界により確実に磁気的に吸引される磁気感応力を生ずるためのもので、主に微小磁石の泳動性に寄与し、この範囲を下回ると微小磁石が泳動しない傾向があり、上回ると微小磁石が凝集してしまう傾向がある。
【0029】
さらに好ましい磁気特性は以下のようになる。
a’)残留磁化・・・3〜16A・m2/kg(3〜16emu/g)
b’)飽和磁化・・・5〜40A・m2/kg(5〜40emu/g)
【0030】
一方、本発明で用いる微小磁石は、主にN極とS極の二磁極を夫々異なる色に着色して色分けしたものである。上記のように、この微小磁石が外部磁界の作用により泳動および反転して表示を形成するのである。例えば、微小磁石が裏面側に集まっており、表示面が有色の分散媒等の色調になっている時に、筆記用磁石のS極でパネルの表示面を掃くと微小磁石が裏面側から表面側に泳動しつつ、N極面がパネル表面に並びN極面の色となる。この面を別の磁力の弱い磁石のN極で掃くと、表面側に泳動していた微小磁石のみが反転して微小磁石のS極面が表われ、表示形状を保持したまま表示色を変化させることができる。次いで、裏面側から比較的強い消去用磁石により走査すれば微小磁石が裏面側に泳動し表示は消えるのである。
【0031】
すなわち、本発明は筆記用磁石の磁極を選択することにより、選択的に2色の筆記が可能となるとともに、反転用磁石の磁極を選択することにより、これら2色の筆記部分を、他色に反転することが可能となるものである。
【0032】
本発明においては、上述の選択的に2色の筆記が可能で、さらにこれら2色の筆記部分を他色に反転可能という知見からなされたものであって、各極性に対応する2色の端面をもつ微小磁石と、比較的強い筆記用の泳動磁石と消去用の泳動磁石、並びに所望により使用される弱い磁力の反転用の外部磁石の組合せにより本発明の表示パネルセットは達成されるものである。
【0033】
さらに良好な筆記、つまり泳動表示を行うためには中でも比較的強い泳動磁石が必要な一方で、良好な反転表示を行うには反転させようとする部分以外の微小磁石を泳動させないようにし、かつ微小磁石の磁極を壊さないようにするため、上述のような比較的弱い磁石を選択するという相反する条件を満たすことが好ましい。しかし、本発明のように泳動と反転の両作用を同じパネルで行おうとすると、良好な泳動表示を行うことを優先して強い泳動磁石を選択したときに微小磁石の設計によっては磁極が破壊されるおそれがあり、その場合は反転表示を行うことが困難になる傾向が考えられる。反対に反転表示性能の維持を優先して弱い泳動磁石を選択すれば、泳動表示並びに消去をさせる際には与える磁力が弱く、泳動させること自体が困難となるなどの問題が生じる。従来の反転型磁気パネルのように微小磁石が表面に偏位している際であれば良好な反転表示ができるものの、泳動表示並びに消去をさせる際には与える磁力が弱く、分散液体の物性を子細に制御する必要性がでることなどの不都合が出る。その結果、工程管理の問題や使用環境が制限されることとなったり、泳動させること自体が困難となるなどの問題が生じるのである。つまり、外部磁界の選択次第で泳動/反転表示に難をきたし、良好に繰り返し筆記することができないといった課題が生じるおそれがあるのである。そこで、本発明に使用する磁気泳動反転表示パネルにおいては、泳動磁石の選択幅を広げ、本発明規定範囲の比較的自由な泳動磁石の選択と相まって良好な泳動/反転表示を行うことを可能とすべく、さらに特定条件の微小磁石を用いると、より一層の効果を得ることができる。
【0034】
微小磁石は前述のように泳動と反転の姿勢を制御できることが重要となる。すなわちその磁気特性を容易に制御することができるものが好ましいものとなる。従来、反転型の磁気表示パネルに用いられていた微小磁石は反転性能のみを考慮すれば足りたので、用いる磁性材料が単一系のものもしくは加工精度による製造公差程度の差しかないような非常に似通った磁気特性の材料からなるものであり、泳動に寄与するための磁気特性と反転に寄与するための磁気特性の両方をバランスよく具備することは行われていなかった。
【0035】
本発明において微小磁石を構成する磁性材料は1種類であっても構わない。さらに、上記特性範囲を好適に満たすものであればより好ましい。また、その他の発明で用いる微小磁石は保磁力の異なる2種以上の磁性材料からなる場合、微小磁石の見かけ上の保磁力等の磁気特性の幅が広がり、泳動性に寄与する部分と反転性に寄与する部分の双方を満たす微小磁石を得ることができるので好ましい。
【0036】
また、微小磁石が、少なくとも高保磁力材からなる第1の磁性材と低保磁力材からなる第2の磁性材を含む2種以上の磁性材料からなる場合、上記のように高保磁力材と低保磁力材といった磁気特性の違う材料を複合することにより、上述の磁気特性の幅はより明確に広がりを有し、良好な泳動性、反転性を得ることができるのでより好ましい。
【0037】
ここで、高保磁力材とは、硬質磁性材料を中心として一部半硬質磁性材料を含む比較的保磁力の高い磁性材料を指し、外部磁界により磁化されにくい磁性材料である。該高保磁力材は微小磁石の反転表示形成に際し、良好な反転性能を発揮することに寄与する。例えば、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライトなどの六方晶マグネトプランバイト型フェライト、サマリウムコバルト、セリウムコバルト、イットリウムコバルト、ブラセオジウムコバルト等の希土類コバルト、ネオジム合金、サマリウム-鉄-窒素合金、ネオジム系ナノ結晶スプリング磁粉などが挙げられる。
【0038】
一方、低保磁力材とは、軟質磁性材料および半硬質磁性材料のうちその保磁力が中間的なもの以下で、やや保磁力の小さなものを指し、比較的外部磁界の影響を受け易い磁性材料である。該低保磁力材は微小磁石の泳動表示形成に際し、良好な泳動性能を発揮することに寄与する。例えば、マグネタイト、マグヘマタイト、コバルト被着マグネタイト、コバルト被着マグヘマタイト、マンガンジンクフェライト、ニッケルジンクフェライト、鉛フェライト、希土類フェライト、二酸化クロムなどが挙げられる。
【0039】
本発明においては、微小磁石は磁気特性の違う磁性材料を複合することにより、微小磁石の磁気特性の幅はより明確に広がりを有し、良好な泳動性、反転性を得ることができる。
【0040】
高保磁力材のみを用いた場合、外部磁界を作用させた際の泳動性、反転性などの表示性能は満たすことが多いものの、微小磁石同士がその磁力の影響および筆記ペンなどの外部磁石による磁界を受けてパネル表面側に平行に配列せず、折り重なるように凝集してしまい、結果的にパネル表面を覆うだけの平行配列ができず、表示面に対して微小磁石が存在しない、いわゆる隙間が生ずるという不具合が発生し、十分な表示、コントラストが得られにくくなる。一度、微小磁石が凝集を起こすと、解きほぐすのは困難で、非常に重要な問題である。また、微小磁石の配合比を上げ、存在比率を上げると、相互干渉により重なる部分で反転不良が生ずる傾向があり、微小磁石の配合比により制御するのにも限りがある。また、高保磁力材のみを用いた際の問題点としては、一般的に、その性質上残留磁化が大きくなる傾向があるので、反転性能について、外部磁界を作用させた際に相互の磁力が必要以上に作用しあってしまい、作用させたくない部分の微小磁石まで反転し、混色を生じてしまうなど、微小磁石の姿勢制御が過敏になる傾向があり、それを避けるために、分散液体の降伏値や粘度を上げるなどの対処法はあるものの、経時変化で徐々に降伏値および粘度が上がってしまったり、周囲の環境温度による物性変化の幅が広くなり悪影響が発生し、微小磁石の反応が悪くなるなどの不具合が発生することもある。さらにそれを回避すべく、外部磁界を強くすると、所望の部分のみの筆記や再反転表示ができにくいなどの他の問題が発生し、累積的に問題が発生するおそれが考えられ、本発明の泳動磁石とのバランスが悪くなりがちである。
【0041】
なお複数種の磁性材料、すなわち高保磁力材と低保磁力材などを混合することにより、造粒された磁性材料として用いることもできる。例えば、ナノ磁性粉などの非常に微細な磁性材料を複数種混合し、バインダなどで固めたものなどが挙げられる。
【0042】
低保磁力材のみを用いた場合は、泳動磁石の選択次第では、その表面側の磁束密度等が微小磁石の保磁力を超え、微小磁石の磁極を壊し、致命的な反転性不良を引き起こすおそれがある。
【0043】
本発明において微小磁石は磁気特性の違う材料を複合する場合に、高保磁力材が低保磁力材の2倍以上の保磁力を有するものであると、さらによりよい効果を奏することができる。なお、その他、磁性材料となりうる材料は泳動性、反転性の諸性能に悪影響を与えるおそれが少ないものについて、問題の生じない範囲であれば適宜配合することができる。そのような磁性材料としては、黒色のマグネタイト、ベンガラ色や赤色のマグヘマタイト、緑色の酸化クロム、黄色のリチウムフェライトなどの磁性のある金属酸化物などがあり、それらは微小磁石の着色の目的などで配合される。
【0044】
前記、微小磁石内の2種類の磁性材料は、第1の磁性材の保磁力が65.0kA/m(817Oe)以上600kA/m(7560Oe)以下、さらに好ましくは65.0kA/m(817Oe)以上350kA/m(4402Oe)以下、第2の磁性材の保磁力が65.0kA/m(817Oe)未満であるとさらによい効果を奏する。
【0045】
第1の磁性材がこの範囲を下回ると上記の低保磁力材を単独で用いた際のように微小磁石の反転性不良となり、微小磁石の磁極面がパネル表示面側に均一に平行配列せず、表示が不鮮明、または不可能となる傾向がある。
【0046】
第1の磁性材の保磁力が大きくなると微小磁石が磁気的に安定すると同時に、一般的に残留磁化も大きくなる傾向が見られ、その反転性能が向上し、より少量で反転性に対する効果が得られやすくなる。しかしながら、上記範囲を上回ると、配合設計が繊細になる制約がある。すなわち、僅かな配合バランスの崩れにより磁気特性が左右され易くなるので、仮に設計配合より多く配合された場合には、結果的に得られる微小磁石自体の表面磁束密度が大きくなりすぎて、微小磁石の凝集を起こしてしまう傾向があり、少なく配合された場合には、第1の磁性材の上記範囲を下回ったときと同様な反転性の不具合が発生しやすくなる傾向があるため、製造上、設計上、扱いづらい側面が出るなど、本発明の泳動磁石とのバランスが悪くなりがちである。
【0047】
また、第2の磁性材がこの範囲を上回ると、高保磁力材を単独で用いた際のように、微小磁石自体の表面磁束密度が大きくなりすぎて、微小磁石の凝集を起こしてしまう傾向があり、反転性能を満足するために磁性材を少なく配合すると、結果的に泳動性不良となる傾向があり、本発明の泳動磁石とのバランスが悪くなりがちである。
【0048】
したがって、第1の磁性材及び第2の磁性材のそのいずれかが上記範囲外となると微小磁石の泳動性能と反転性能の両者の調和をとることが難しくなりやすく、本発明の泳動磁石とのバランスが悪くなりがちである。
【0049】
ここで、第1の磁性材と第2の磁性材の保磁力の境界を65.0kA/m(817Oe)としたのは、反転性と泳動性の表示性能の挙動バランスがもっとも取れている臨界点が実験的に求められたことなどがある。泳動磁石の影響を受けつつも、磁力は距離に反比例して減衰することから、表面パネル、分散液体、さらに微小磁石中の表面塗装やバインダ成分などの影響により65.0kA/m(817Oe)が良好な臨界点となることが挙げられる。さらに第2の磁性材としては、0.5kA/m(6.3Oe)以上65.0kA/m(817Oe)未満の半硬質磁性材料であると好ましい。軟磁性材料は、理論上、0kA/m(0Oe)を含む0.001kA/m以下程度の材料で、本発明に使用する磁性材料の磁気特性としては有効に作用する。しかしながら、保磁力が極端に小さい半硬質磁性材料や軟質磁性材料は、微粉末として加工するのが一般的に困難であるという問題がある。微小磁石は上述のように複合材料から構成されることから、磁性材料としても微粉末状にしてコーティングなどするのが好ましいが、その性質上、微粉末として加工するのが困難であるということから微小磁石のサイズが比較的大きくなってしまい、反転性、泳動性に不具合を生ずるおそれがある。
【0050】
本発明で使用する微小磁石は、主にS極面とN極面を異なる色で着色されていれば、形状は特に限定されないが、いわゆる磁気ペン(泳動磁石)で書いたときの表示形成性と形成された表示の鮮明性から色分けした微小磁石が、特定の色の合成樹脂および/または合成ゴム組成物に磁性材を分散した層の片面に他の色の着色組成物を塗布した層状体を裁断または粉砕してなるものが好ましい。あるいは、着色した金属蒸着層の上に磁性材を分散した層を設け、裁断または粉砕してなるもの、微小磁石が特定の色の合成樹脂および/または合成ゴム組成物に磁性粒子を分散した層の片面に他の色の着色シートをラミネートした層状体を裁断または粉砕してなるものなども好ましい例である。
両面を同色にすれば、コントラストの良い鮮やかなカラー泳動表示パネルとしても使用でき、そのような態様も本発明に含まれる。
【0051】
微小磁石を分散した分散液体は、着色材を含有し、有色であって、特定の降伏値を持つのが好ましい。有色である理由は、上記のように微小磁石が裏面側に泳動したときに表示を消去する、つまり、表面側から離間し、裏面側に泳動した微小磁石の色調を隠蔽し、確実に泳動表示・消去を行うためである。なお、この際、完全に隠蔽することで微小磁石の色調を隠蔽することもできるし、補色関係にある色調の利用などにより実質上微小磁石の表現色を消去することもできる。着色材としては各種顔料や染料などが適宜選択される。降伏値は、分散液体中の微小磁石が適正に分散されるためと沈降防止に必要となるものである。すなわち、0.15〜7.5N/m2 、さらに好ましくは0.3〜5.0N/m2程度の分散液体であることが好ましい。これらの物性値を得るには、従来の手法が適宜用いられ、分散媒、増稠剤、着色材、帯電防止剤などを適宜配合することにより得られる。また、粘度は、表示パネルに磁界を作用させた時にその部分のみ泳動または反転するのに必要となるもので、粘度3〜350mPa・s程度の分散液体であることが好ましい。
【0052】
前記分散液体を保持する支持材としては特に限定されず、間隔を設けて配設し二枚の周辺を封じた支持体、この二枚の基板間に略六角形のハニカムセルを配置した支持体、基板にマイクロカプセルを配置した支持体等が適宜使用される。
【0053】
以下、本発明の実施の形態について磁気泳動反転表示パネルの例を挙げ、図面により本発明を具体的に説明する。
【実施例】
【0054】
<磁気泳動反転表示パネルの作製>
<微小磁石例1>
厚さ25.0μmのポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という)フィルム上に表1に記載の組成をメチルエチルケトン(以下、「MEK」という)に分散・溶解した磁性インクを次の手段で塗工乾燥し、青色磁性シートを得た。この時青色磁性インク層の厚みは25.5μmであり、塗工質量は51.3g/m2であった。
(手順1)
表1の配合割合でMEKに樹脂成分を溶解し、これに異なる磁気特性を持つ2種類の磁性材を加えた後にアトライターで1時間分散した。
(手順2)
この分散液に、MEKに青色顔料を分散した顔料分散体を表1に記載の配合割合で加えた後に混合攪拌し、青色を呈する磁性インクを得た。(固形分60質量%)
(手順3)
この磁性インクをワイヤーバーにて塗工乾燥し上述の青色磁性シートを得た。
次に、このシートの青色磁性層上に以下の配合の白色インクを上記手順に準じて塗工乾燥し、青色磁性層に白色インク層を積層した。
この白色インク層の厚みは8.0μmであり、塗工質量は16.0g/m2であった。
白色顔料分散体 60.0質量部(酸化チタン顔料MEK分散体:固形分66.0%)
樹脂 31.8質量部(エポキシ樹脂MEK溶解液:固形分60.0%)
溶剤 8.2質量部(MEK)
次に、このシートの白色インク層上に以下の配合のピンクインク層を上記手順に準じて塗工乾燥し、白色層の上にピンク色インク層を積層した。
このピンク色インク層の厚みは8.0μmであり塗工質量は9.6g/m2であった。
ピンク色顔料分散体 75.0質量部(ピンク顔料MEK分散体:固形分30.0%) 樹脂 25.0質量部(エポキシ樹脂MEK溶解液:固形分60.0%)
このようにして塗工して得られた3層は、合わせて41.5μm、塗工質量76.9g/m2の塗工シートであった。
引き続いて、この塗工層をベースフィルムごと着磁し、青面をN極、ピンク面をS極とした後に塗工層をベースフィルムから剥離し薄片とし、カッターミル粉砕機にて微粉砕した後に篩い分けを行い、粒径が63〜180μmの範囲にある青/ピンク色に磁極の色を塗り分けた微小磁石を得た。ここで微小磁石の磁気特性は表1に示した。
【0055】
<磁気特性測定方法>
本発明において微小磁石の保磁力、残留磁化そして飽和磁化の測定は、振動試料型磁力計(東英工業株式会社製VSM−P7−15型)で行い、その方法は次のようである。すなわち、次のふた(A)と本体(B)からなる測定ケースに微小磁石を密につめ込み、この測定ケースに磁力計の684.4kA/mの磁界を及ぼすとX−Yレコーダ上にヒステリシスカーブが記録される。このヒステリシスカーブから保磁力、残留磁化そして飽和磁化を求める。残留磁化、飽和磁化においては、この値を測定ケースに詰め込んだ微小磁石の質量で割って単位質量当たりの残留磁化、飽和磁化(A・m2/kg)を換算する。
(A)厚み1mmで直径7.0mmの円板と、この円板表面から一方に隆起した高さが0.5mmで直径6mmの突起からなるアクリル樹脂のふた
(B)内径が6.0mmで奥ゆき2.5mmの孔を有する外形が7.0mmで深さが4.0mmのアクリル樹脂製有底円筒形ケース本体
【0056】
<パネル例1>
一方、分散媒として20℃における粘度が3.2mPa・Sであるイソパラフィンに、増稠剤を加え、これを加熱溶解した後に冷却し、増稠剤ペーストを調製した。次にイソパラフィンに増稠剤ペースト、着色材、帯電防止剤を添加、攪拌し、以下の配合比(合計100質量部)の塑性分散液を得た。
増稠剤 1.3質量部[エチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アマイド(伊藤製油社製:商品名ITOHWAX J−530)]
着色材 1.4質量部(酸化チタン)
耐電防止剤 0.1質量部
分散媒 残部(エッソ化学社製:商品名アイソパーM)
次に、この塑性分散液に前記青/ピンクの2色に塗り分けられた箔片状の微小磁石例1を、分散液89.3質量部に対し微小磁石10.7質量部の割合で配合し攪拌を行い、分散液中に微小磁石が均一に分散してなる表1に記載したような降伏値を有する塑性分散液体を得た。
降伏値の測定方法は従来から行われているのと同様にブルックフィールド型粘度計(東京計器社製BL型)を用い、ローターを分散液体中で低速回転(0.3rpm)させた時のローターのねじれ角度を読み取る方法で測定した。使用したローターは上記BL型粘度計に付属の2号ローターを使用した。
さらに引き続き、この分散液体を板厚が0.25mmの塩化ビニル樹脂フィルムに接着剤を用いて片面に接着した、セルサイズ3.5mm、正六角形状で高さ1.0mmの塩化ビニル樹脂製ハニカムセルの、多セル構造物のセル内に充填し、その後、多セル構造物の開放面を厚み0.08mmの塩化ビニル樹脂フィルムで接着剤を用いて被覆し、セル中に分散液体を封入して表示パネルを得た。
【0057】
<その他の微小磁石例およびパネル例>
微小磁石例3、11〜12、15、24(青色/ピンク色)
第1の磁性層を表1〜4に記載のものとした他は微小磁石例1と同様にして、微小磁石を作製した。また、増稠剤を適宜表1〜4の通りに配合した以外はパネル例1と同様にして分散液体とした後にパネル化して評価を行った。
【0058】
微小磁石例2、4〜10、13〜14、16〜23、25〜33、参考例1〜8(金色/黒色)
第1の磁性層を表1に記載のものとし、厚さ25.0μmの離型処理を施したPETフィルム上に黄色着色層とアルミニウム蒸着層を合わせて3.0μmになるよう設け、該アルミニウム蒸着層上に第1の磁性層を塗工し、白色インク層、ピンク色インク層を施工しなかった他は微小磁石例1と同様にして、微小磁石を作製した。また、増稠剤を適宜表1〜5の通りに配合した以外はパネル例1と同様にして分散液体とした後にパネル化して評価を行った。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
(注)BaO・6Fe2O3・・・バリウムフェライト
SrO・6Fe2O3・・・ストロンチウムフェライト
NixZn1-xFe2O4(O<x≦1)・・・ニッケルジンクフェライト
Fe3O4・・・マグネタイト
Co−γ−Fe2O3・・・コバルト被着マグヘマタイト
Co−Fe3O4・・・コバルト被着マグネタイト
【0065】
<泳動磁石>
<筆記用磁石>
実施例1
ネオジム合金磁石(φ1×5mm)、表面磁束密度155mT、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」30mTの泳動磁石を用い、筆記用磁石を作製した。
【0066】
<「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」の測定方法>
磁気泳動反転表示パネルの支持材の一方の面に泳動磁石を作用させる際に、そのパネル反対側の内壁面近傍に相当する距離(本実施例では1mm)をおき、その部分にかかる磁束密度を「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」とし、泳動磁石の磁束密度測定を行った。(図13参照)
測定値は、上記測定における最大値を本発明における磁束密度とした。
測定にあたっては、「電子磁気工業(株)社製、GAUSS METER MODEL GM−4000」を用いた。
【0067】
<「支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側の内壁面近傍における磁束密度」の測定方法>
「支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側の内壁面近傍における磁束密度」は、すなわち、上記反対側の測定と同様に「微小磁石(2)が表面近傍(10’)に位置したときの磁束密度」となる。
磁気泳動反転表示パネルの支持材の表面側に泳動磁石を作用させる際に、微小磁石(2)が表面近傍(10’)に泳動した位置として、その面の厚みに相当する距離をおき、その部分にかかる磁束密度を「支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側の内壁面近傍における磁束密度」とし、泳動磁石の磁束密度測定を行った。
測定値は、上記測定における最大値を本発明における磁束密度とした。
測定にあたっては、「電子磁気工業(株)社製、GAUSS METER MODEL GM−4000」を用いた。
なお、本実施例においては、表示パネルの支持材として板厚0.08mmないし0.25mmのフィルムを用いたため、その表面磁束密度と大きな差がなく、近似的に表面磁束密度の値を用いることとした。
【0068】
実施例2
ネオジム合金磁石(φ1.5×8mm)、表面磁束密度247mT、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」59mTの泳動磁石を用い、筆記用磁石を作製した。
【0069】
実施例3
ネオジム合金磁石(φ2×5.5mm)、表面磁束密度266mT、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」73mTの泳動磁石を用い、筆記用磁石を作製した。
【0070】
実施例4
ネオジム合金磁石(φ3×6mm)、表面磁束密度372mT、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」150mTの泳動磁石を用い、筆記用磁石を作製した。
【0071】
実施例1〜4の筆記用磁石を用い、以下のように、前記微小磁石例を用いた前記パネル例に筆記したところ、すべて良好に繰り返して筆記ができ、微小磁石の磁極が壊れるようなことはなかった。(参考例は除く)
このように、同じような表面磁束密度(表面側(10’)の位置での磁束密度)であっても、その構成によっては「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」に差が生ずることがあり、微小磁石の磁極を破壊しない、又は、混色を生じない条件としては、上記「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」を特定範囲にすることが有効である。さらに、その表面側の磁束密度は直接的に微小磁石が破壊される限界点ということもでき、これらの例の範囲であれば、微小磁石が破壊されにくい傾向があることも判った。
【0072】
<消去用磁石>
実施例5
フェライト系ゴム磁石(L=100mm)(W=6mm×t=1mm)(着磁ピッチ4mm)、表面磁束密度60.4mT、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」20.9mTの泳動磁石を用い、消去用磁石を作製した。
【0073】
実施例6〜9、比較例1
フェライト系ゴム磁石(L=100mm)を用い、表6に示した幅×厚さ、着磁ピッチ、表面磁束密度、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」(距離1mmでの磁力)の泳動磁石を用い、消去用磁石を作製した。
【0074】
【表6】
【0075】
実施例10〜12
フェライト系ゴム磁石(L=100mm)を用い、表6に示した幅×厚さ、着磁ピッチ、表面磁束密度、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」(距離1mmでの磁力)の泳動磁石を用い、消去用磁石を作製した。
【0076】
なお、図14に実施例10〜12の態様を示した。すなわち、多極磁石の条件を変化させたものである。この結果からも、「支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍における磁束密度」が泳動性(消去性)に直接的に影響していることが判る。
【0077】
<表示パネル例への筆記および消去>
図1のようにパネル(1)の裏面から消去用磁石(4)を用いて裏面側に微小磁石(2)を引き寄せ、筆記の準備をする。その際には微小磁石(2)を除く分散液体成分が着色されており、該微小磁石(2)を隠蔽するので、画一的な分散媒の色調が表示(7)として得られた(第1の色調)。
次に、図2のように筆記したい部分をパネル表面から実施例1〜4の筆記用磁石(5)のS極でパネル(1)の表示面を掃き、微小磁石(2)を裏面側から表示面側に泳動しつつ(一部反転)、微小磁石(2)のN極面をパネルの表示面側に並ばせN極面の色調の筆跡(8)を得た(第2の色調)。
さらに、図3のようにこの面を別の磁力の弱い反転磁石(6)のN極で掃くと、表示面側に泳動していない微小磁石(2−B)を引き寄せることなく、表示面側に泳動していた微小磁石(2−A)のみが反転して、該泳動していた微小磁石(2−A)にて構成されるS極面による筆跡(9)が表われ、表示形状を保持したまま表示色を変化させることができた(第3の色調)。
そして、最後に裏面側から実施例5〜12の消去用磁石(4)により走査し、微小磁石(2)を裏面側に泳動させ表示を消すことができた(第1の色調)。
【0078】
各例における磁気泳動反転表示パネル、泳動磁石、表示パネルセットの各評価は表1〜6に示してある。
【0079】
<パネル評価方法>
評価試験は上記筆記および消去の手順に準じ、1.泳動性、2.反転性(凝集性)、3.印字品質、4.微小磁石の磁極を壊さないかどうか、混色があるかどうか、を含めた総合評価、の項目で行った。
泳動性
◎:微小磁石は表面側に完全に泳動しており、裏面側の残留が無い
○:微小磁石は表面側に泳動しているが、やや裏面側の残留が有る
△:微小磁石が表面側に泳動しにくく、裏面側の残留が有る
×:表面側に泳動している微小磁石が無い、或いはその量が極端に少ない
反転性(凝集性)
◎:微小磁石同士の凝集が無く、整列性も良好で完全に反転している
○:微小磁石同士の凝集はやや見られるが、反転している
△:微小磁石同士の凝集が見られるものの、ほぼ反転している
×:微小磁石が反転しない、或いはその量が極端に少ない
印字品質
◎:表示が鮮明でコントラストも良く、印字品質が良好である
○:コントラストが良く表示ができる
△:微小磁石の沈降または泳動性不良がみられ、表示はできるが一部不鮮明である
×:コントラストが不良で表示が不鮮明、もしくは表示ができない
総合評価
◎:非常に良好で実用できるパネル
○:良好で実用できるパネル
△:一部問題はあるが実用できるパネル
×:性能が劣り実用できないパネル
【0080】
各実施例についての評価については、表中に示したが、以下に詳述する。
【0081】
微小磁石例1〜33のものは、各々性能差はあるものの、総じて良好なものであった。
【0082】
特に、微小磁石例1〜5、9〜10、15については、各評価項目ともバランスが取れており、非常に良好であった。微小磁石例5、10からもわかるように降伏値を変化させても性能差が出にくく、分散液体の物性設計の自由度が増し、経時変化や環境温度などの諸条件などによる性能劣化が少なく、泳動磁石等の選択の幅も広がっておる好適なものであった。
【0083】
微小磁石例8、13、18、20は、やや凝集傾向が見られたものの、総合的には良好であった。
【0084】
微小磁石例6、11、12、24、27については、残留磁化がやや低いので、未反転微小磁石が発生する傾向が見られたが、総合的には良好であった。
【0085】
微小磁石例7は、残留磁化がさらに低いので、未反転微小磁石が微小磁石例6などに比べるとやや多く発生する傾向が見られたが、総合的には良好であった。
【0086】
微小磁石例14は、微小磁石例13において凝集傾向が見られたので、降伏値を制御することにより、より好ましい形態とすることができた。
【0087】
微小磁石例16は、飽和磁化が低いので、泳動性にやや難があったが、総合的には良好であり、微小磁石例17として降伏値を下げた場合にはさらに良好に制御することができた。また、残留磁化がやや低いので、未反転微小磁石が発生する傾向も見られたが、総合的には良好であった。
【0088】
微小磁石例19は、やや凝集傾向が見られたので、降伏値を上げて凝集を押さえることができたが、降伏値を高く設定しなければならず、経時変化や環境温度への依存性があったり、泳動磁石を強くしなければならないなど制約が生じた。
【0089】
微小磁石例21は、泳動性能は良好であるが、反転性能に難があり、使用可能な限界レベルであった。
【0090】
微小磁石例22は、やや凝集傾向が見られたが微小磁石は泳動でき、使用可能な限界レベルであった。また、やや凝集傾向が見られたので、微小磁石例23において降伏値を上げたが、残留磁化、飽和磁化の値が低めなので、泳動性に影響を与えることとなり、降伏値により制御できる限界レベルにあることがわかった。
【0091】
微小磁石例25は、残留磁化および飽和磁化がともに低かったので、微小磁石が泳動しにくく、かつ未反転微小磁石が発生する傾向が見られ、微小磁石例26において降伏値制御を試みたが、同様に使用可能な限界レベルであった。
【0092】
微小磁石例28並びに31〜33については、泳動性はよいが、反転性にやや劣り、微小磁石の磁極が壊れないような比較的弱い泳動磁石を選択しなくてはならず、結果的に泳動/反転性能に影響がでるなど制約が多いものであった。また、微小磁石例29〜30は、泳動性に難があり、また、凝集が発生しやすい傾向があるので、適正な泳動磁石並びに分散液体物性の調整に制約が多いもので、微小磁石例28〜33は、総合評価で△であるものの、他の微小磁石例に比べてやや劣るものであった。
【0093】
参考例1〜8は、総じて磁性材が単一系でかつ、十分な性能を有する磁性材を用いていなかったため、微小磁石の磁気特性の制御に限界があり、満足する性能が得られにくかった。
【0094】
参考例1、2は微小磁石が泳動しづらく、強い泳動磁石を使うと泳動はするが、微小磁石が凝集してしまい、コントラストがでないものであった。参考例3、4は、参考例1、2に比べるとややよいもののやはり泳動性が悪く、本発明の好適範囲を超えるような強い泳動磁石を使用すると微小磁石の磁極が壊れてしまうものであった。
【0095】
参考例5、6は泳動性はよいが、反転性に劣り、少し強い泳動磁石を使うと微小磁石の磁極が壊れ易い傾向があった。参考例7、8は、微小磁石がまったくと言ってよいほど反転せず、泳動の契機となる反転も生じにくいので、泳動性に劣るものであった。
【0096】
参考例2、4、6、8は、それぞれ参考例1、3、5、7のものに降伏値制御を試みたものであるが、使用可能なレベルにすることは困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0097】
上記磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石およびそれを用いた表示パネルセットによれば、良好に表示と消去を繰り返し行うことができ、とりわけ、背景色の上に微小磁石の表裏の色調である2色の表示ができ、分散媒等の微小磁石を除いた分散液体成分の色調と併せて、3色の表現が可能となる。また、その磁気表示については、任意の筆跡の任意の部分を選択して色を変えることができるという優れた効果も奏するものである。すなわち、黒板やホワイトボードなどではできなかった、一度筆記した文字の重要ポイントを色を変えて表示することや広告ディスプレイなどで注目を惹きたいところのみ簡単に色を変えるということができるようになる上、不要になった場合には簡単に元に戻すこともできるという優れた効果を有するのである。学校などで黒板やホワイトボードなどの代わりに使うとよりよい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】第1の色調を表示する際の(a)模式図(b)表示例を示す図である。
【図2】第2の色調を表示する際の(a)模式図(b)表示例を示す図である。
【図3】第3の色調を表示する際の(a)模式図(b)表示例を示す図である。
【図4】本発明の磁気泳動反転表示パネルセットにおける表示メカニズムを示す模式図である。
【図5】本発明の磁気泳動反転表示パネルセットにおける表示メカニズムを示す模式図である。
【図6】本発明の磁気泳動反転表示パネルセットにおける微小磁石挙動メカニズムを示す模式図である。
【図7】従来の磁気泳動型表示パネルにおける表示メカニズムを示す模式図である。
【図8】従来の磁気反転型表示パネルにおける表示メカニズムを示す模式図である。
【図9】本発明の磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石の例を示す模式図である。
【図10】本発明の磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石の例を示す模式図である。
【図11】本発明の磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石の例を示す模式図である。
【図12】本発明の磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石の例を示す模式図である。
【図13】本発明における泳動磁石の磁束密度測定を行う際の概略説明図である。
【図14】本発明の磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石の構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0099】
1 表示パネル
2 微小磁石
3 分散液体
4 消去用磁石(泳動磁石)
5 筆記用磁石(泳動磁石)
6 反転磁石
7 第1の色調の表示
8 第2の色調の筆跡
9 第3の色調の筆跡
10 表面板
10’支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側の内壁面近傍
11 支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の面
11’支持材の泳動磁石を作用させるパネル反対側の内壁面近傍
12 仕切板
13 磁性粒子
14 プローブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、着色材を含有する分散媒中に、分散媒の色と異なり、かつ互いに表裏の色とも異なる色を有する微小磁石を分散して得られた降伏値を有する分散液体と、該分散液体を保持する支持材とを備えた磁気泳動反転表示パネルに使用する泳動磁石であって、支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側の内壁面近傍における磁束密度が400mT以下であり、パネル反対側の内壁面近傍における磁束密度が10mT以上、300mT以下であることを特徴とする、磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石。
【請求項2】
磁気泳動反転表示パネル中の微小磁石の保磁力が4.0kA/m以上600kA/m以下である、請求項1に記載された磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石。
【請求項3】
磁気泳動反転表示パネル中の微小磁石の単位質量あたりの残留磁化が1〜35A・m2/kgであり、飽和磁化が1〜100A・m2/kgである、請求項1または2に記載された磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石。
【請求項4】
少なくとも、着色材を含有する分散媒中に、分散媒の色と異なり、かつ互いに表裏の色とも異なる色を有する微小磁石を分散して得られた降伏値を有する分散液体と、該分散液体を保持する支持材とを備えた磁気泳動反転表示パネルと、請求項1ないし3の何れか1項に記載の泳動磁石、から少なくともなる、表示パネルセット。
【請求項1】
少なくとも、着色材を含有する分散媒中に、分散媒の色と異なり、かつ互いに表裏の色とも異なる色を有する微小磁石を分散して得られた降伏値を有する分散液体と、該分散液体を保持する支持材とを備えた磁気泳動反転表示パネルに使用する泳動磁石であって、支持材の泳動磁石を作用させるパネル表面側の内壁面近傍における磁束密度が400mT以下であり、パネル反対側の内壁面近傍における磁束密度が10mT以上、300mT以下であることを特徴とする、磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石。
【請求項2】
磁気泳動反転表示パネル中の微小磁石の保磁力が4.0kA/m以上600kA/m以下である、請求項1に記載された磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石。
【請求項3】
磁気泳動反転表示パネル中の微小磁石の単位質量あたりの残留磁化が1〜35A・m2/kgであり、飽和磁化が1〜100A・m2/kgである、請求項1または2に記載された磁気泳動反転表示パネル用泳動磁石。
【請求項4】
少なくとも、着色材を含有する分散媒中に、分散媒の色と異なり、かつ互いに表裏の色とも異なる色を有する微小磁石を分散して得られた降伏値を有する分散液体と、該分散液体を保持する支持材とを備えた磁気泳動反転表示パネルと、請求項1ないし3の何れか1項に記載の泳動磁石、から少なくともなる、表示パネルセット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−259709(P2006−259709A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38383(P2006−38383)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
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