磁気溶解方法及び装置
細胞溶解方法を開示する。前記方法は細胞を溶解させるために十分な速度で複数の細胞溶解ビーズの存在下に細胞を磁気撹拌素子で撹拌する段階を含む。細胞溶解装置も開示する。前記装置は磁気撹拌素子と複数の細胞溶解ビーズを内側に配置した容器を含む。容器は容器の内側で磁気撹拌素子を回転させることができるような寸法に形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野はバイオテクノロジーであり、より具体的には細胞溶解方法及び装置である。
【背景技術】
【0002】
細胞溶解は細胞の膜又は壁の破壊ないし破砕であり、細胞を破裂させ、その内容物を露出させる。細胞の破砕には物理的方法、化学的方法(例えばデタージェント法、カオトロピック塩)及び生化学的方法(例えばリゾチーム等の酵素)を含む多数の技術が利用可能である。ボルテックス法やビーズビーティング法等の機械的溶解は1種の物理的溶解である。超音波処理は別種の物理的溶解であり、パルス高周波超音波を使用して細胞、細菌、胞子及び細断した組織を撹拌・溶解させる。しかし、これらのアプローチは統合型の低費用細胞溶解/核酸分析システムに対応しにくい。デタージェント法は多くの場合には物理的方法よりも効率的なプロトコルを用いて容易に使用できる。しかし、デタージェントの存在は統合システムの下流反応に支障を来す可能性があり、硬い細菌及び胞子では溶解効率が変動し易く、長時間のインキュベーション工程又は熱処理が必要になる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、費用効果的、効率的で統合型細胞溶解/分析システムに対応可能な細胞溶解方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
細胞、ウイルス粒子及び胞子の溶解方法を開示する。前記方法は細胞を容器内で複数の細胞溶解ビーズの存在下に磁気撹拌素子で撹拌する段階を含み、前記撹拌素子は細胞を溶解させるために十分な速度と時間で回転する。所定態様において、細胞溶解ビーズはポリマービーズ、ガラスビーズ、セラミックビーズ及び金属ビーズから構成される群から選択される。所定態様において、細胞溶解ビーズは10〜1000μmの範囲内の直径である。所定態様では、細胞溶解ビーズ1mg〜10gを溶解チャンバーに加える。所定態様では、水性液体1ul〜10mlを溶解チャンバーに加える。所定態様では、サンプルないし検体を単独で溶解チャンバーに直接加える。所定態様では、サンプルを水性液体と共に溶解チャンバーに直接加える(例えば固体検体を均質化・溶解させて水性形態にする)。所定態様において、磁気撹拌素子は長方形状、台形状、二股音叉状、棒状及びバー状である。所定態様において、細胞は真核細胞、原核細胞、内生胞子又はその組合せであり、1〜1×1010個/mlの濃度で液体媒体に懸濁する。所定態様において、細胞はウイルス粒子であり、1〜1×1013個/mlの濃度で液体媒体に懸濁する。
【0005】
細胞及びウイルス粒子の溶解方法も開示する。前記方法は、細胞又はウイルス粒子を液体媒体に懸濁して懸濁液を形成する段階と、複数の細胞溶解ビーズの存在下に1000〜5000rpm、好ましくは5000rpm付近の高速で1〜600秒間、好ましくは約90〜120秒間にわたって懸濁液を磁気撹拌素子で撹拌する段階を含む。
【0006】
細胞及びウイルス粒子の溶解装置も開示する。前記装置は1個以上の磁気撹拌素子と複数の細胞溶解ビーズを内側に配置したチャンバーを含む。前記チャンバーはチャンバーの内側で1個以上の磁気撹拌素子を回転させることができるような寸法に形成される。所定態様において、前記装置は更に回転磁場を生成するマグネチックスターラーを含み、1個以上の磁気撹拌素子は回転磁場の動作範囲内に置かれた場合にチャンバーの内側で回転する。所定態様において、前記装置は更にマグネチックスターラーにより生成される回転磁場の内側にチャンバーを保持するように構成されたチャンバーホルダーを含む。
【0007】
細胞から核酸を精製する方法も開示する。前記方法は、細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、撹拌素子を複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と、細胞溶解液から核酸を単離する段階を含む。
【0008】
細胞からポリヌクレオチドを増幅する方法も開示する。前記方法は、細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、撹拌素子を複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と、細胞溶解液からポリヌクレオチドを増幅する段階を含む。
【0009】
細胞からポリヌクレオチドを検出する方法も開示する。前記方法は、細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、撹拌素子を複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と、細胞溶解液からポリヌクレオチドを検出する段階を含む。所定態様において、検出段階は、細胞溶解液から核酸を単離する段階と、単離した核酸からポリヌクレオチドを増幅する段階と、増幅したポリヌクレオチドを検出する段階を含む。
【0010】
以下、図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】細胞溶解方法の1態様を示すフローチャートである。
【図2】細胞溶解方法の別の態様を示すフローチャートである。
【図3】磁石と溶解チャンバーの相対位置を示す図である。
【図4】未溶解大腸菌細胞(未溶解)、ビーズビーターで2分間溶解させた大腸菌細胞(2分ビーター)、及びビーズ/スターラーで30秒間(30秒併用)又は2分間(2分併用)溶解させた大腸菌細胞に由来する特定ゲノム領域のリアルタイムPCR増幅を示すグラフである。
【図5】未溶解大腸菌細胞(未溶解)、ビーズビーターで2分間溶解させた大腸菌細胞(2分ビーター)、及びビーズ/スターラーで1分間(1分併用)又は2分間(2分併用)溶解させた大腸菌細胞に由来する特定ゲノム領域のリアルタイムPCR増幅を示すグラフである。
【図6】未溶解Bacillus thuringiensis胞子(未溶解)、ビーズビーターで2分間溶解させたBacillus thuringiensis胞子(2分ビーター)、及びビーズ/スターラーで2分間溶解させたBacillus thuringiensis胞子(2分併用)に由来する特定ゲノム領域のリアルタイムPCR増幅を示すグラフである。
【図7】未溶解Bacillus thuringiensis胞子(未溶解)、ビーズビーターで2分間溶解させたBacillus thuringiensis胞子(2分ビーター)、及びビーズ/スターラーで1.5分間(1.5分併用)又は2分間(2分併用)溶解させたBacillus thuringiensis胞子に由来する特定ゲノム領域のリアルタイムPCR増幅を示すグラフである。
【図8】未溶解Bacillus thuringiensis胞子(未溶解)、ビーズビーターで2分間溶解させたBacillus thuringiensis胞子(2分ビーター)、及びビーズ/スターラーで1.5分間溶解させたBacillus thuringiensis胞子(1.5分併用)に由来する特定ゲノム領域のリアルタイムPCR増幅を示すグラフである。
【図9】Staphylococcus aureus細胞のリアルタイムPCR応答に及ぼす溶解時間とビーズブレンダー速度の影響を示すグラフである。ビーズブレンダーを高速で運転した場合には2分でS.aureus細胞の効率的な溶解が達せられた。低速では溶解時間を長くする必要があった。未溶解胞子は非溶解下で検出可能な細胞外DNA濃度が低かった(0分)。少量の遊離DNAがガラスビーズと結合する。ビーズブレンダー速度100は5000rpmに対応する。
【図10】Bacillus thuringiensis胞子のリアルタイムPCR応答に及ぼす溶解時間とビーズブレンダー速度の影響を示すグラフである。ビーズブレンダーを高速で運転した場合には2分でBacillus thuringiensis胞子の効率的な溶解が達せられた。低速では溶解時間を長くする必要があった。未溶解胞子は非溶解下で検出可能な細胞外DNA濃度が低かった(0分)。少量の遊離DNAがガラスビーズと結合する。ビーズブレンダー速度100は5000rpmに対応する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好ましい態様の説明では、明確にするために特定の専門用語を利用する。しかし、本発明はこうして選択した専門用語に限定するものではない。当然のことながら、各特定要素は同様の目的を達成するために同様に機能する全技術的等価物を包含する。
【0013】
細胞溶解方法の各種態様を開示する。先ず図1を参照すると、所定態様において、方法100は細胞サンプルをチャンバーに加える段階(ステップ110)と、複数の細胞溶解ビーズを容器に加える段階(ステップ120)と、磁気撹拌素子を容器に加える段階(ステップ130)と、細胞を溶解させるために十分な回転速度(1000〜5000rpm)で細胞サンプルを磁気撹拌素子で撹拌する段階(ステップ140)を含む。次に図2を参照すると、他の態様において、方法200は細胞と、液体媒体と、細胞溶解ビーズと、磁気撹拌素子を含む混合物を形成する段階(ステップ210)と、変動磁場を使用して混合物中で磁気撹拌素子の運動を誘導し、細胞を溶解させる段階(ステップ220)を含む。
【0014】
本願で使用する「細胞」なる用語は真核細胞、原核細胞、ウイルス、内生胞子又はその任意組合せを意味する。従って、細胞としては、特に細菌、細菌胞子、真菌、ウイルス粒子、単細胞真核生物(例えば原生動物、酵母等)、多細胞生物からの単離もしくは凝集細胞(例えば初代細胞、培養細胞、組織、生物体等)、又はその任意組合せが挙げられる。
【0015】
「細胞サンプル」なる用語は任意の細胞含有サンプルを意味する。本願で使用する細胞サンプルとしてはヒト、植物、動物、食品、農業又は環境由来検体(例えば鼻スワブ、血液、糞便、血漿、組織、葉、水及び土壌サンプル)が挙げられる。好ましくは、細胞サンプルは磁気撹拌素子の運動を妨げない濃度で液体媒体に懸濁された細胞を含有する。
【0016】
細胞に関して「溶解」なる用語は細胞の少なくとも一部の完全性が破壊され、破壊された細胞から核酸やタンパク質等の細胞内成分が放出されることを意味する。
【0017】
「均質化」なる用語は(種々の成分、例えば糞便、組織、痰、唾液を)均質な混合物にブレンドすることを意味する。
【0018】
真核細胞、原核細胞、及び/又はウイルスは任意の適切な濃度で懸濁することができる。所定態様では、真核細胞及び/又は原核細胞を特に1〜1×1010個/ml、1〜1×105個/ml、又は1×103〜1×104個/mlの濃度で懸濁する。所定態様では、ウイルス粒子を1〜1×1013個/ml、1〜1×1010個/ml、又は1×105〜1×107個/mlの濃度で懸濁する。
【0019】
液体媒体は等張液でも、低張液でも、高張液でもよい。所定態様において、液体媒体は水性である。所定態様において、液体媒体は緩衝液及び/又は少なくとも1種の塩もしくは塩の組合せを含有する。所定態様において、液体媒体のpHは約5〜約8、約6〜8、又は約6.5〜約8.5である。所望のpHを達成するために種々のpH緩衝液を使用することができる。適切な緩衝液としては、限定されないが、トリス、MES、ビス−トリス、ADA、ACES、PIPES、MOPSO、ビス−トリスプロパン、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、MOBS、TAPSO、HEPPSO、POPSO、TEA、HEPPS、トリシン、Gly−Gly、ビシン及びリン酸緩衝液(例えば、特にリン酸ナトリウム又はリン酸ナトリウム−カリウム)が挙げられる。液体媒体は特に約10mM〜約100mM緩衝液、約25mM〜約75mM緩衝液、又は約40mM〜約60mM緩衝液を含有することができる。液体媒体中で使用される緩衝液の種類と量は用途毎に変えることができる。所定態様において、液体媒体はpH約7.4であり、約50mMトリス緩衝液を使用して達成することができる。所定態様において、液体媒体は水である。
【0020】
チャンバーは任意の適切な材料、寸法及び形状の容器とすることができる。所定態様において、チャンバーはプラスチック容器である。チャンバーは例えばマイクロ遠心管(例えばエッペンドルフチューブ)、遠心管、バイアル、マイクロウェルプレートの形状とすることができる。チャンバーは細胞とビーズと撹拌素子を保持するためにただ1個の区画/チャンバーを規定してもよいし、混合物(細胞とビーズと撹拌素子)を別々に保持するために複数の別個の区画/チャンバー(例えばウェルアレイ)を規定してもよい。チャンバーは蓋、キャップ又はカバー付き容器等の密閉容器又は密閉可能な容器とすることができる。対象検体の完全性を維持するために内面は化学的に不活性にすることができる。
【0021】
細胞溶解ビーズは細胞の硬度よりも硬度の大きい任意の粒子様及び/又はビーズ様構造とすることができる。細胞溶解ビーズはプラスチック、ガラス、セラミック、金属及び/又は他の任意の適切な材料から構成することができる。所定態様において、細胞溶解ビーズは非磁性材料から構成することができる。所定態様において、細胞溶解ビーズは少なくとも1本の軸に対して回転対称形である(例えば球形、円形、長円形、楕円形、卵形及び滴状粒子)。他の態様において、細胞溶解ビーズは多面体形状である。所定態様において、細胞溶解ビーズは不規則形状粒子である。所定態様において、細胞溶解ビーズは突起付き粒子である。所定態様において、各溶解容器に加えるビーズの量は特に1〜10,000mg、1〜1000mg、1〜100mg、1〜10mgの範囲である。
【0022】
所定態様において、細胞溶解ビーズは特に10〜1,000μm、20〜400μm、又は50〜200μmの範囲の直径である。
【0023】
磁気撹拌素子は任意形状とすることができ、容器に導入して容器の内側で運動又は回転又は撹拌できるように十分小さくすべきである。磁気撹拌素子は特にバー状、円筒形、十字形、V字形、三角形、長方形、棒状又は円盤状撹拌素子とすることができる。所定態様において、磁気撹拌素子は長方形である。所定態様において、磁気撹拌素子は二股音叉状である。所定態様において、磁気撹拌素子はV字形である。所定態様において、磁気撹拌素子は台形状である。所定態様において、撹拌素子の最長寸法は容器の直径よりもやや小さい(例えば容器の直径の約75〜95%)。所定態様において、磁気撹拌素子はポリマー、ガラス又はセラミック(例えば磁器)等の化学的に不活性な材料でコーティングされている。所定態様において、ポリマーはPTFEやパリレン等の生体適合性ポリマーである。
【0024】
細胞懸濁液、細胞溶解ビーズ及び磁気撹拌素子は任意順序でチャンバーに導入することができる。所定態様では、細胞溶解ビーズと磁気撹拌素子よりも前に細胞懸濁液をチャンバーに加える。他の態様では、細胞よりも前に(例えば細胞懸濁液よりも前に)細胞溶解ビーズ及び/又は磁気撹拌素子をチャンバーに導入する。
【0025】
チャンバー、特に細胞、ビーズ及び磁気撹拌素子を変動磁場の動作範囲内に置く。例えば、(例えばマグネチックスターラーの上方又は隣接位置に容器を配置することにより)チャンバーを回転磁場の動作範囲内に置くことができる。変動磁場は撹拌素子の運動(例えば特に回転運動、往復運動又はその組合せ)を誘導し、その結果、ビーズ、細胞及び液体媒体の運動を誘導する。所定態様では、容器の内側で細胞を溶解させるために十分な回転速度と時間で細胞懸濁液を磁気撹拌素子で撹拌する。適切な回転速度及び時間は用途によって異なり、当業者が実験により決定することができる。一般に、細胞を溶解させるために十分な回転速度は細胞の種類、細胞懸濁液の濃度、細胞懸濁液の体積、磁気撹拌素子の寸法と形状、細胞溶解ビーズの量/個数、寸法、形状及び硬度、並びにチャンバーの寸法と形状等の因子により決定される。
【0026】
所定態様において、磁気撹拌素子は1000〜6000rpm、好ましくは約5000rpmの速度で1〜600秒間、好ましくは約90〜120秒間回転する。所定態様では、(例えば試験管又はマイクロ遠心管の形状の)チャンバーをマグネチックスターラー(例えばVP710C1 Rotary Magnetic Tumble Stirrer,5000RPM,最長14cm撹拌デッキ,モーターハウジング及びプレートホルダー付き,ディープウェルマイクロプレート2枚又は標準マイクロプレート6枚を撹拌−115ボルトAC−60Hz,V&P Scientific)上のラックにセットし、最高速度設定(>1000rpm)で撹拌する。他の態様において、チャンバーはELISAプレート等のマイクロプレートのウェルである。他の態様において、チャンバーは細胞入口と細胞出口を備える円筒形チャンバーである。
【0027】
所定態様では、磁石、好ましくは永久磁石を磁気撹拌素子の近傍で回転させることにより変動磁場を発生させる。溶解チャンバーの上、下又は横で磁石の中心を通る軸の周囲に磁石を回転させることができる。所定態様では、1個以上のチャンバーが位置する表面に対して垂直な位置に1個以上のチャンバーを配置し、同様に1個以上のチャンバーが位置する表面に対して垂直な軸の周囲に磁石を回転させる。他の態様では、1個以上のチャンバーが位置する表面に対して垂直な位置に1個以上のチャンバーを配置し、1個以上のチャンバーが位置する表面に対して平行な軸の周囲に磁石を回転させる。更に他の態様では、1個以上のチャンバーが位置する表面に対して垂直な位置に1個以上のチャンバーを配置し、1個以上のチャンバーが位置する表面に対して角度を成す軸の周囲に磁石を回転させる。前記角度は0°よりも大きく且つ180°よりも小さい。他の態様において、磁石は更に細長い形状であり、磁石の最長寸法に沿って延びる軸の周囲に回転する。
【0028】
図3は円筒形磁石301と溶解チャンバー303の相対位置を示す。磁石301は軸Aの周囲に回転し、チャンバー303内の磁気撹拌素子305を軸Bの周囲に同一方向に回転させる。回転する磁気撹拌素子305はビーズ307と衝突し、工程中に細胞309を溶解させる。磁石301はチャンバー303の横、上、下又は対角線上に配置することができる。この態様において、チャンバー303はチャンバーに出入し易くするために入口311と出口313を備える。
【0029】
所定態様では、溶解効率を高め、溶解を達成するために必要な時間を短縮するために撹拌素子の回転速度を上げる。所定の他の態様では、所定種の細胞のみを溶解させるように回転速度を調節する。例えば、複数種の細胞を含有する細胞懸濁液中で、撹拌素子は第1の速度で回転して第1組の細胞を溶解させた後に第2の速度で回転して第2組の細胞を溶解させることができる。他の態様では、溶解工程の前、工程中、及び/又は工程後に細胞懸濁液の温度を制御する温度制御モジュールに容器を連結する。所定態様では、細胞懸濁液の温度を8〜2℃に維持する。
【0030】
所定態様では、撹拌段階の前及び/又は段階中に細胞懸濁液に助剤を添加することにより特定細胞種の溶解を助長することができる。添加剤の例としては、酵素、デタージェント、界面活性剤及び他の薬品(例えば塩基及び酸)が挙げられる。アルカリ条件(例えば10mM NaOH)は所定種の細胞の撹拌中の溶解効率を増強できることが分かっている。溶解効率を増強するために助剤と併用又はその代用として細胞懸濁液を撹拌中に加熱してもよい。しかし、助剤が核酸増幅及び検出を含む下流処理段階に支障を来す可能性もある。助剤を添加しなければ検体処理を著しく簡略化できるので、効率的な溶解を達成するために助剤の必要をなくすことが望ましい。
【0031】
スターラー/ビーズ併用は従来の溶解方法にまさる多くの利点が得られる。スターラー/ビーズ法は化学的アプローチ及び酵素的アプローチよりも著しく迅速であり、他の多くの型の物理的溶解方法に比較して細胞又はウイルス溶解を改善できる。スターラー/ビーズ法はロボット及び/又はマイクロフルイディクスを使用する自動化にも対応し易い。磁気源は再使用可能であり、容器と厳密に整列させる必要がなく、複数のチャンバーを駆動することができる。磁気撹拌素子は低価格であるため、使い捨てが可能である。
【0032】
細胞溶解装置も開示する。前記装置は磁気撹拌素子と複数の細胞溶解ビーズを内側に配置したチャンバーを含む。使用者は単に細胞懸濁液をチャンバーに加え、チャンバーをマグネチックスターラーにセットし、細胞を溶解させるために十分な速度で細胞懸濁液を磁気撹拌素子で撹拌すればよい。
【0033】
細胞溶解システムも開示する。前記システムは磁気撹拌素子と複数の細胞溶解ビーズを内側に配置したチャンバーと、回転磁場を生成するマグネチックスターラーを含み、前記磁気撹拌素子は回転磁場の動作範囲内に置かれた場合にチャンバーの内側で回転する。
【0034】
所定態様において、前記システムは更にチャンバーを保持するように構成されたラックを含む。ラックは複数のチャンバーを保持するように構成することができ、複数のサンプルを同時に処理するためにマグネチックスターラーの支持表面に配置することができる。ラックは保存目的でチャンバーのホルダーとして使用することもできる。例えば、複数のチャンバーをラックにセットし、後期分析に備えて冷蔵庫又は冷凍庫に保存することができる。チャンバーを外部機器(例えば液体操作ロボット、マイクロフルイディクス装置、分析機器)と接続してもよい。
【0035】
細胞から核酸を精製する方法も開示する。前記方法は、細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、撹拌素子を複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と、細胞溶解液から核酸を単離する段階を含む。
【0036】
細胞からポリヌクレオチドを増幅する方法も開示する。前記方法は、細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、撹拌素子を複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と、細胞溶解液からポリヌクレオチドを増幅する段階を含む。
【0037】
細胞からポリヌクレオチドを検出する方法も開示する。前記方法は、細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、撹拌素子を複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と、細胞溶解液からポリヌクレオチドを検出する段階を含む。所定態様において、検出段階は、細胞溶解液から核酸を単離する段階と、単離した核酸からポリヌクレオチドを増幅する段階と、増幅したポリヌクレオチドを検出する段階を含む。
【実施例1】
【0038】
大腸菌細胞の溶解
大腸菌細胞をトリス−EDTA緩衝液に104個/mlの濃度で懸濁した。ガラスビーズ(106μm以下,Sigma G8893)800mgと磁気撹拌ディスク(VP−7195 Super Tumble Stir Disc,V&P Scientific)を入れたチャンバー(2mlプラスチックバイアル,Wheaton)に細胞懸濁液1mlを加えた。
【0039】
次にプラスチックバイアルをマグネチックスターラー(VP710C1 Rotary Magnetic Tumble Stirrer,5000RPM,V&P Scientific)にセットし、5000rpmで30秒間、1分間又は2分間撹拌した。ビーズビーター(Mini Bead Beater−1,Biospec)を製造業者の指示に従って使用し、陽性対照サンプルを2分間4800rpmで処理した。未処理細胞懸濁液を対照として使用した。次に、Roche LightCycler 480を使用し、溶解した細胞と対照を特定遺伝子のリアルタイムPCR増幅に供した。増幅条件は、95℃で250秒後に、95℃で10秒、60℃で20秒、及び72℃で10秒を45サイクル繰返し、最終サイクルとして40℃で10秒とした。
【0040】
図4及び5に示すように、ビーズ/スターラー法(30秒併用,1分併用及び2分併用)のほうがビーズビーター法(2分ビーター)よりも良好な細胞溶解が得られる。
【実施例2】
【0041】
Bacillus thuringiensis胞子の溶解
Bacillus thuringiensis胞子を104個/mlの濃度で水に懸濁した。ガラスビーズ(106μm以下,Sigma)800mgと磁気撹拌ディスク(VP−7195 Super Tumble Stir Disc,V&P Scientific)を入れた2mlプラスチックバイアル(Wheaton)に細胞懸濁液500μlを加えた。
【0042】
次にプラスチックバイアルをマグネチックスターラー(VP710C1 Rotary Magnetic Tumble Stirrer,5000RPM,V&P Scientific)にセットし、5000rpmで1.5分間又は2分間撹拌した。ビーズビーター(Mini Bead Beater−1,Biospec)を製造業者の指示に従って使用し、陽性対照サンプルを2分間処理した。未処理細胞懸濁液を対照として使用した。次に、Roche LightCycler 480を実施例1に記載した条件下で使用し、溶解した細胞と対照を特定B.thuringiensis遺伝子のリアルタイムPCR増幅に供した。
【0043】
図3〜6に示すように、ビーズ/スターラー法(1.5分併用及び2分併用)のほうがビーズビーター法(2分ビーター)よりも良好な細胞溶解が得られる。
【実施例3】
【0044】
Staphylococcus aureus細胞のリアルタイムPCR応答に及ぼす溶解時間とビーズブレンダー速度の影響
実施例2に記載したと同一装置及び手順を使用してStaphylococcus aureus細胞を種々のブレンダー速度で種々の時間にわたって懸濁及び溶解させた。
【0045】
図9はStaphylococcus aureus細胞のリアルタイムPCR応答に及ぼす溶解時間とビーズブレンダー速度の影響を示すグラフである。ビーズブレンダーを高速で運転した場合には2分でS.aureus細胞の効率的な溶解が達せられた。低速では溶解時間を長くする必要があった。未溶解胞子は非溶解下で検出可能な細胞外DNA濃度が低かった(0分)。少量の遊離DNAがガラスビーズと結合する。ビーズブレンダー速度100は5000rpmに対応する。
【実施例4】
【0046】
Bacillus thuringiensis胞子のリアルタイムPCR応答に及ぼす溶解時間とビーズブレンダー速度の影響
実施例2に記載したと同一装置及び手順を使用してBacillus thuringiensis胞子を種々のブレンダー速度で種々の時間にわたって懸濁及び溶解させた。
【0047】
図10はBacillus thuringiensis胞子のリアルタイムPCR応答に及ぼす溶解時間とビーズブレンダー速度の影響を示すグラフである。ビーズブレンダーを高速で運転した場合には2分でBacillus thuringiensis胞子の効率的な溶解が達せられた。低速では溶解時間を長くする必要があった。未溶解胞子は非溶解下で検出可能な細胞外DNA濃度が低かった(0分)。少量の遊離DNAがガラスビーズと結合する。ビーズブレンダー速度100は5000rpmに対応する。
【0048】
以上、本発明の構成及び動作原理を理解し易くするために詳細な内容を含む特定態様について本発明を説明した。特定態様とその詳細に関する本願のこのような記載は以下の特許請求の範囲を制限するものではない。当業者に自明の通り、本発明の趣旨と範囲から逸脱せずに例証の目的で選択した態様に変更を加えることができる。
【技術分野】
【0001】
技術分野はバイオテクノロジーであり、より具体的には細胞溶解方法及び装置である。
【背景技術】
【0002】
細胞溶解は細胞の膜又は壁の破壊ないし破砕であり、細胞を破裂させ、その内容物を露出させる。細胞の破砕には物理的方法、化学的方法(例えばデタージェント法、カオトロピック塩)及び生化学的方法(例えばリゾチーム等の酵素)を含む多数の技術が利用可能である。ボルテックス法やビーズビーティング法等の機械的溶解は1種の物理的溶解である。超音波処理は別種の物理的溶解であり、パルス高周波超音波を使用して細胞、細菌、胞子及び細断した組織を撹拌・溶解させる。しかし、これらのアプローチは統合型の低費用細胞溶解/核酸分析システムに対応しにくい。デタージェント法は多くの場合には物理的方法よりも効率的なプロトコルを用いて容易に使用できる。しかし、デタージェントの存在は統合システムの下流反応に支障を来す可能性があり、硬い細菌及び胞子では溶解効率が変動し易く、長時間のインキュベーション工程又は熱処理が必要になる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、費用効果的、効率的で統合型細胞溶解/分析システムに対応可能な細胞溶解方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
細胞、ウイルス粒子及び胞子の溶解方法を開示する。前記方法は細胞を容器内で複数の細胞溶解ビーズの存在下に磁気撹拌素子で撹拌する段階を含み、前記撹拌素子は細胞を溶解させるために十分な速度と時間で回転する。所定態様において、細胞溶解ビーズはポリマービーズ、ガラスビーズ、セラミックビーズ及び金属ビーズから構成される群から選択される。所定態様において、細胞溶解ビーズは10〜1000μmの範囲内の直径である。所定態様では、細胞溶解ビーズ1mg〜10gを溶解チャンバーに加える。所定態様では、水性液体1ul〜10mlを溶解チャンバーに加える。所定態様では、サンプルないし検体を単独で溶解チャンバーに直接加える。所定態様では、サンプルを水性液体と共に溶解チャンバーに直接加える(例えば固体検体を均質化・溶解させて水性形態にする)。所定態様において、磁気撹拌素子は長方形状、台形状、二股音叉状、棒状及びバー状である。所定態様において、細胞は真核細胞、原核細胞、内生胞子又はその組合せであり、1〜1×1010個/mlの濃度で液体媒体に懸濁する。所定態様において、細胞はウイルス粒子であり、1〜1×1013個/mlの濃度で液体媒体に懸濁する。
【0005】
細胞及びウイルス粒子の溶解方法も開示する。前記方法は、細胞又はウイルス粒子を液体媒体に懸濁して懸濁液を形成する段階と、複数の細胞溶解ビーズの存在下に1000〜5000rpm、好ましくは5000rpm付近の高速で1〜600秒間、好ましくは約90〜120秒間にわたって懸濁液を磁気撹拌素子で撹拌する段階を含む。
【0006】
細胞及びウイルス粒子の溶解装置も開示する。前記装置は1個以上の磁気撹拌素子と複数の細胞溶解ビーズを内側に配置したチャンバーを含む。前記チャンバーはチャンバーの内側で1個以上の磁気撹拌素子を回転させることができるような寸法に形成される。所定態様において、前記装置は更に回転磁場を生成するマグネチックスターラーを含み、1個以上の磁気撹拌素子は回転磁場の動作範囲内に置かれた場合にチャンバーの内側で回転する。所定態様において、前記装置は更にマグネチックスターラーにより生成される回転磁場の内側にチャンバーを保持するように構成されたチャンバーホルダーを含む。
【0007】
細胞から核酸を精製する方法も開示する。前記方法は、細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、撹拌素子を複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と、細胞溶解液から核酸を単離する段階を含む。
【0008】
細胞からポリヌクレオチドを増幅する方法も開示する。前記方法は、細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、撹拌素子を複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と、細胞溶解液からポリヌクレオチドを増幅する段階を含む。
【0009】
細胞からポリヌクレオチドを検出する方法も開示する。前記方法は、細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、撹拌素子を複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と、細胞溶解液からポリヌクレオチドを検出する段階を含む。所定態様において、検出段階は、細胞溶解液から核酸を単離する段階と、単離した核酸からポリヌクレオチドを増幅する段階と、増幅したポリヌクレオチドを検出する段階を含む。
【0010】
以下、図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】細胞溶解方法の1態様を示すフローチャートである。
【図2】細胞溶解方法の別の態様を示すフローチャートである。
【図3】磁石と溶解チャンバーの相対位置を示す図である。
【図4】未溶解大腸菌細胞(未溶解)、ビーズビーターで2分間溶解させた大腸菌細胞(2分ビーター)、及びビーズ/スターラーで30秒間(30秒併用)又は2分間(2分併用)溶解させた大腸菌細胞に由来する特定ゲノム領域のリアルタイムPCR増幅を示すグラフである。
【図5】未溶解大腸菌細胞(未溶解)、ビーズビーターで2分間溶解させた大腸菌細胞(2分ビーター)、及びビーズ/スターラーで1分間(1分併用)又は2分間(2分併用)溶解させた大腸菌細胞に由来する特定ゲノム領域のリアルタイムPCR増幅を示すグラフである。
【図6】未溶解Bacillus thuringiensis胞子(未溶解)、ビーズビーターで2分間溶解させたBacillus thuringiensis胞子(2分ビーター)、及びビーズ/スターラーで2分間溶解させたBacillus thuringiensis胞子(2分併用)に由来する特定ゲノム領域のリアルタイムPCR増幅を示すグラフである。
【図7】未溶解Bacillus thuringiensis胞子(未溶解)、ビーズビーターで2分間溶解させたBacillus thuringiensis胞子(2分ビーター)、及びビーズ/スターラーで1.5分間(1.5分併用)又は2分間(2分併用)溶解させたBacillus thuringiensis胞子に由来する特定ゲノム領域のリアルタイムPCR増幅を示すグラフである。
【図8】未溶解Bacillus thuringiensis胞子(未溶解)、ビーズビーターで2分間溶解させたBacillus thuringiensis胞子(2分ビーター)、及びビーズ/スターラーで1.5分間溶解させたBacillus thuringiensis胞子(1.5分併用)に由来する特定ゲノム領域のリアルタイムPCR増幅を示すグラフである。
【図9】Staphylococcus aureus細胞のリアルタイムPCR応答に及ぼす溶解時間とビーズブレンダー速度の影響を示すグラフである。ビーズブレンダーを高速で運転した場合には2分でS.aureus細胞の効率的な溶解が達せられた。低速では溶解時間を長くする必要があった。未溶解胞子は非溶解下で検出可能な細胞外DNA濃度が低かった(0分)。少量の遊離DNAがガラスビーズと結合する。ビーズブレンダー速度100は5000rpmに対応する。
【図10】Bacillus thuringiensis胞子のリアルタイムPCR応答に及ぼす溶解時間とビーズブレンダー速度の影響を示すグラフである。ビーズブレンダーを高速で運転した場合には2分でBacillus thuringiensis胞子の効率的な溶解が達せられた。低速では溶解時間を長くする必要があった。未溶解胞子は非溶解下で検出可能な細胞外DNA濃度が低かった(0分)。少量の遊離DNAがガラスビーズと結合する。ビーズブレンダー速度100は5000rpmに対応する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好ましい態様の説明では、明確にするために特定の専門用語を利用する。しかし、本発明はこうして選択した専門用語に限定するものではない。当然のことながら、各特定要素は同様の目的を達成するために同様に機能する全技術的等価物を包含する。
【0013】
細胞溶解方法の各種態様を開示する。先ず図1を参照すると、所定態様において、方法100は細胞サンプルをチャンバーに加える段階(ステップ110)と、複数の細胞溶解ビーズを容器に加える段階(ステップ120)と、磁気撹拌素子を容器に加える段階(ステップ130)と、細胞を溶解させるために十分な回転速度(1000〜5000rpm)で細胞サンプルを磁気撹拌素子で撹拌する段階(ステップ140)を含む。次に図2を参照すると、他の態様において、方法200は細胞と、液体媒体と、細胞溶解ビーズと、磁気撹拌素子を含む混合物を形成する段階(ステップ210)と、変動磁場を使用して混合物中で磁気撹拌素子の運動を誘導し、細胞を溶解させる段階(ステップ220)を含む。
【0014】
本願で使用する「細胞」なる用語は真核細胞、原核細胞、ウイルス、内生胞子又はその任意組合せを意味する。従って、細胞としては、特に細菌、細菌胞子、真菌、ウイルス粒子、単細胞真核生物(例えば原生動物、酵母等)、多細胞生物からの単離もしくは凝集細胞(例えば初代細胞、培養細胞、組織、生物体等)、又はその任意組合せが挙げられる。
【0015】
「細胞サンプル」なる用語は任意の細胞含有サンプルを意味する。本願で使用する細胞サンプルとしてはヒト、植物、動物、食品、農業又は環境由来検体(例えば鼻スワブ、血液、糞便、血漿、組織、葉、水及び土壌サンプル)が挙げられる。好ましくは、細胞サンプルは磁気撹拌素子の運動を妨げない濃度で液体媒体に懸濁された細胞を含有する。
【0016】
細胞に関して「溶解」なる用語は細胞の少なくとも一部の完全性が破壊され、破壊された細胞から核酸やタンパク質等の細胞内成分が放出されることを意味する。
【0017】
「均質化」なる用語は(種々の成分、例えば糞便、組織、痰、唾液を)均質な混合物にブレンドすることを意味する。
【0018】
真核細胞、原核細胞、及び/又はウイルスは任意の適切な濃度で懸濁することができる。所定態様では、真核細胞及び/又は原核細胞を特に1〜1×1010個/ml、1〜1×105個/ml、又は1×103〜1×104個/mlの濃度で懸濁する。所定態様では、ウイルス粒子を1〜1×1013個/ml、1〜1×1010個/ml、又は1×105〜1×107個/mlの濃度で懸濁する。
【0019】
液体媒体は等張液でも、低張液でも、高張液でもよい。所定態様において、液体媒体は水性である。所定態様において、液体媒体は緩衝液及び/又は少なくとも1種の塩もしくは塩の組合せを含有する。所定態様において、液体媒体のpHは約5〜約8、約6〜8、又は約6.5〜約8.5である。所望のpHを達成するために種々のpH緩衝液を使用することができる。適切な緩衝液としては、限定されないが、トリス、MES、ビス−トリス、ADA、ACES、PIPES、MOPSO、ビス−トリスプロパン、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、MOBS、TAPSO、HEPPSO、POPSO、TEA、HEPPS、トリシン、Gly−Gly、ビシン及びリン酸緩衝液(例えば、特にリン酸ナトリウム又はリン酸ナトリウム−カリウム)が挙げられる。液体媒体は特に約10mM〜約100mM緩衝液、約25mM〜約75mM緩衝液、又は約40mM〜約60mM緩衝液を含有することができる。液体媒体中で使用される緩衝液の種類と量は用途毎に変えることができる。所定態様において、液体媒体はpH約7.4であり、約50mMトリス緩衝液を使用して達成することができる。所定態様において、液体媒体は水である。
【0020】
チャンバーは任意の適切な材料、寸法及び形状の容器とすることができる。所定態様において、チャンバーはプラスチック容器である。チャンバーは例えばマイクロ遠心管(例えばエッペンドルフチューブ)、遠心管、バイアル、マイクロウェルプレートの形状とすることができる。チャンバーは細胞とビーズと撹拌素子を保持するためにただ1個の区画/チャンバーを規定してもよいし、混合物(細胞とビーズと撹拌素子)を別々に保持するために複数の別個の区画/チャンバー(例えばウェルアレイ)を規定してもよい。チャンバーは蓋、キャップ又はカバー付き容器等の密閉容器又は密閉可能な容器とすることができる。対象検体の完全性を維持するために内面は化学的に不活性にすることができる。
【0021】
細胞溶解ビーズは細胞の硬度よりも硬度の大きい任意の粒子様及び/又はビーズ様構造とすることができる。細胞溶解ビーズはプラスチック、ガラス、セラミック、金属及び/又は他の任意の適切な材料から構成することができる。所定態様において、細胞溶解ビーズは非磁性材料から構成することができる。所定態様において、細胞溶解ビーズは少なくとも1本の軸に対して回転対称形である(例えば球形、円形、長円形、楕円形、卵形及び滴状粒子)。他の態様において、細胞溶解ビーズは多面体形状である。所定態様において、細胞溶解ビーズは不規則形状粒子である。所定態様において、細胞溶解ビーズは突起付き粒子である。所定態様において、各溶解容器に加えるビーズの量は特に1〜10,000mg、1〜1000mg、1〜100mg、1〜10mgの範囲である。
【0022】
所定態様において、細胞溶解ビーズは特に10〜1,000μm、20〜400μm、又は50〜200μmの範囲の直径である。
【0023】
磁気撹拌素子は任意形状とすることができ、容器に導入して容器の内側で運動又は回転又は撹拌できるように十分小さくすべきである。磁気撹拌素子は特にバー状、円筒形、十字形、V字形、三角形、長方形、棒状又は円盤状撹拌素子とすることができる。所定態様において、磁気撹拌素子は長方形である。所定態様において、磁気撹拌素子は二股音叉状である。所定態様において、磁気撹拌素子はV字形である。所定態様において、磁気撹拌素子は台形状である。所定態様において、撹拌素子の最長寸法は容器の直径よりもやや小さい(例えば容器の直径の約75〜95%)。所定態様において、磁気撹拌素子はポリマー、ガラス又はセラミック(例えば磁器)等の化学的に不活性な材料でコーティングされている。所定態様において、ポリマーはPTFEやパリレン等の生体適合性ポリマーである。
【0024】
細胞懸濁液、細胞溶解ビーズ及び磁気撹拌素子は任意順序でチャンバーに導入することができる。所定態様では、細胞溶解ビーズと磁気撹拌素子よりも前に細胞懸濁液をチャンバーに加える。他の態様では、細胞よりも前に(例えば細胞懸濁液よりも前に)細胞溶解ビーズ及び/又は磁気撹拌素子をチャンバーに導入する。
【0025】
チャンバー、特に細胞、ビーズ及び磁気撹拌素子を変動磁場の動作範囲内に置く。例えば、(例えばマグネチックスターラーの上方又は隣接位置に容器を配置することにより)チャンバーを回転磁場の動作範囲内に置くことができる。変動磁場は撹拌素子の運動(例えば特に回転運動、往復運動又はその組合せ)を誘導し、その結果、ビーズ、細胞及び液体媒体の運動を誘導する。所定態様では、容器の内側で細胞を溶解させるために十分な回転速度と時間で細胞懸濁液を磁気撹拌素子で撹拌する。適切な回転速度及び時間は用途によって異なり、当業者が実験により決定することができる。一般に、細胞を溶解させるために十分な回転速度は細胞の種類、細胞懸濁液の濃度、細胞懸濁液の体積、磁気撹拌素子の寸法と形状、細胞溶解ビーズの量/個数、寸法、形状及び硬度、並びにチャンバーの寸法と形状等の因子により決定される。
【0026】
所定態様において、磁気撹拌素子は1000〜6000rpm、好ましくは約5000rpmの速度で1〜600秒間、好ましくは約90〜120秒間回転する。所定態様では、(例えば試験管又はマイクロ遠心管の形状の)チャンバーをマグネチックスターラー(例えばVP710C1 Rotary Magnetic Tumble Stirrer,5000RPM,最長14cm撹拌デッキ,モーターハウジング及びプレートホルダー付き,ディープウェルマイクロプレート2枚又は標準マイクロプレート6枚を撹拌−115ボルトAC−60Hz,V&P Scientific)上のラックにセットし、最高速度設定(>1000rpm)で撹拌する。他の態様において、チャンバーはELISAプレート等のマイクロプレートのウェルである。他の態様において、チャンバーは細胞入口と細胞出口を備える円筒形チャンバーである。
【0027】
所定態様では、磁石、好ましくは永久磁石を磁気撹拌素子の近傍で回転させることにより変動磁場を発生させる。溶解チャンバーの上、下又は横で磁石の中心を通る軸の周囲に磁石を回転させることができる。所定態様では、1個以上のチャンバーが位置する表面に対して垂直な位置に1個以上のチャンバーを配置し、同様に1個以上のチャンバーが位置する表面に対して垂直な軸の周囲に磁石を回転させる。他の態様では、1個以上のチャンバーが位置する表面に対して垂直な位置に1個以上のチャンバーを配置し、1個以上のチャンバーが位置する表面に対して平行な軸の周囲に磁石を回転させる。更に他の態様では、1個以上のチャンバーが位置する表面に対して垂直な位置に1個以上のチャンバーを配置し、1個以上のチャンバーが位置する表面に対して角度を成す軸の周囲に磁石を回転させる。前記角度は0°よりも大きく且つ180°よりも小さい。他の態様において、磁石は更に細長い形状であり、磁石の最長寸法に沿って延びる軸の周囲に回転する。
【0028】
図3は円筒形磁石301と溶解チャンバー303の相対位置を示す。磁石301は軸Aの周囲に回転し、チャンバー303内の磁気撹拌素子305を軸Bの周囲に同一方向に回転させる。回転する磁気撹拌素子305はビーズ307と衝突し、工程中に細胞309を溶解させる。磁石301はチャンバー303の横、上、下又は対角線上に配置することができる。この態様において、チャンバー303はチャンバーに出入し易くするために入口311と出口313を備える。
【0029】
所定態様では、溶解効率を高め、溶解を達成するために必要な時間を短縮するために撹拌素子の回転速度を上げる。所定の他の態様では、所定種の細胞のみを溶解させるように回転速度を調節する。例えば、複数種の細胞を含有する細胞懸濁液中で、撹拌素子は第1の速度で回転して第1組の細胞を溶解させた後に第2の速度で回転して第2組の細胞を溶解させることができる。他の態様では、溶解工程の前、工程中、及び/又は工程後に細胞懸濁液の温度を制御する温度制御モジュールに容器を連結する。所定態様では、細胞懸濁液の温度を8〜2℃に維持する。
【0030】
所定態様では、撹拌段階の前及び/又は段階中に細胞懸濁液に助剤を添加することにより特定細胞種の溶解を助長することができる。添加剤の例としては、酵素、デタージェント、界面活性剤及び他の薬品(例えば塩基及び酸)が挙げられる。アルカリ条件(例えば10mM NaOH)は所定種の細胞の撹拌中の溶解効率を増強できることが分かっている。溶解効率を増強するために助剤と併用又はその代用として細胞懸濁液を撹拌中に加熱してもよい。しかし、助剤が核酸増幅及び検出を含む下流処理段階に支障を来す可能性もある。助剤を添加しなければ検体処理を著しく簡略化できるので、効率的な溶解を達成するために助剤の必要をなくすことが望ましい。
【0031】
スターラー/ビーズ併用は従来の溶解方法にまさる多くの利点が得られる。スターラー/ビーズ法は化学的アプローチ及び酵素的アプローチよりも著しく迅速であり、他の多くの型の物理的溶解方法に比較して細胞又はウイルス溶解を改善できる。スターラー/ビーズ法はロボット及び/又はマイクロフルイディクスを使用する自動化にも対応し易い。磁気源は再使用可能であり、容器と厳密に整列させる必要がなく、複数のチャンバーを駆動することができる。磁気撹拌素子は低価格であるため、使い捨てが可能である。
【0032】
細胞溶解装置も開示する。前記装置は磁気撹拌素子と複数の細胞溶解ビーズを内側に配置したチャンバーを含む。使用者は単に細胞懸濁液をチャンバーに加え、チャンバーをマグネチックスターラーにセットし、細胞を溶解させるために十分な速度で細胞懸濁液を磁気撹拌素子で撹拌すればよい。
【0033】
細胞溶解システムも開示する。前記システムは磁気撹拌素子と複数の細胞溶解ビーズを内側に配置したチャンバーと、回転磁場を生成するマグネチックスターラーを含み、前記磁気撹拌素子は回転磁場の動作範囲内に置かれた場合にチャンバーの内側で回転する。
【0034】
所定態様において、前記システムは更にチャンバーを保持するように構成されたラックを含む。ラックは複数のチャンバーを保持するように構成することができ、複数のサンプルを同時に処理するためにマグネチックスターラーの支持表面に配置することができる。ラックは保存目的でチャンバーのホルダーとして使用することもできる。例えば、複数のチャンバーをラックにセットし、後期分析に備えて冷蔵庫又は冷凍庫に保存することができる。チャンバーを外部機器(例えば液体操作ロボット、マイクロフルイディクス装置、分析機器)と接続してもよい。
【0035】
細胞から核酸を精製する方法も開示する。前記方法は、細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、撹拌素子を複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と、細胞溶解液から核酸を単離する段階を含む。
【0036】
細胞からポリヌクレオチドを増幅する方法も開示する。前記方法は、細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、撹拌素子を複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と、細胞溶解液からポリヌクレオチドを増幅する段階を含む。
【0037】
細胞からポリヌクレオチドを検出する方法も開示する。前記方法は、細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、撹拌素子を複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と、細胞溶解液からポリヌクレオチドを検出する段階を含む。所定態様において、検出段階は、細胞溶解液から核酸を単離する段階と、単離した核酸からポリヌクレオチドを増幅する段階と、増幅したポリヌクレオチドを検出する段階を含む。
【実施例1】
【0038】
大腸菌細胞の溶解
大腸菌細胞をトリス−EDTA緩衝液に104個/mlの濃度で懸濁した。ガラスビーズ(106μm以下,Sigma G8893)800mgと磁気撹拌ディスク(VP−7195 Super Tumble Stir Disc,V&P Scientific)を入れたチャンバー(2mlプラスチックバイアル,Wheaton)に細胞懸濁液1mlを加えた。
【0039】
次にプラスチックバイアルをマグネチックスターラー(VP710C1 Rotary Magnetic Tumble Stirrer,5000RPM,V&P Scientific)にセットし、5000rpmで30秒間、1分間又は2分間撹拌した。ビーズビーター(Mini Bead Beater−1,Biospec)を製造業者の指示に従って使用し、陽性対照サンプルを2分間4800rpmで処理した。未処理細胞懸濁液を対照として使用した。次に、Roche LightCycler 480を使用し、溶解した細胞と対照を特定遺伝子のリアルタイムPCR増幅に供した。増幅条件は、95℃で250秒後に、95℃で10秒、60℃で20秒、及び72℃で10秒を45サイクル繰返し、最終サイクルとして40℃で10秒とした。
【0040】
図4及び5に示すように、ビーズ/スターラー法(30秒併用,1分併用及び2分併用)のほうがビーズビーター法(2分ビーター)よりも良好な細胞溶解が得られる。
【実施例2】
【0041】
Bacillus thuringiensis胞子の溶解
Bacillus thuringiensis胞子を104個/mlの濃度で水に懸濁した。ガラスビーズ(106μm以下,Sigma)800mgと磁気撹拌ディスク(VP−7195 Super Tumble Stir Disc,V&P Scientific)を入れた2mlプラスチックバイアル(Wheaton)に細胞懸濁液500μlを加えた。
【0042】
次にプラスチックバイアルをマグネチックスターラー(VP710C1 Rotary Magnetic Tumble Stirrer,5000RPM,V&P Scientific)にセットし、5000rpmで1.5分間又は2分間撹拌した。ビーズビーター(Mini Bead Beater−1,Biospec)を製造業者の指示に従って使用し、陽性対照サンプルを2分間処理した。未処理細胞懸濁液を対照として使用した。次に、Roche LightCycler 480を実施例1に記載した条件下で使用し、溶解した細胞と対照を特定B.thuringiensis遺伝子のリアルタイムPCR増幅に供した。
【0043】
図3〜6に示すように、ビーズ/スターラー法(1.5分併用及び2分併用)のほうがビーズビーター法(2分ビーター)よりも良好な細胞溶解が得られる。
【実施例3】
【0044】
Staphylococcus aureus細胞のリアルタイムPCR応答に及ぼす溶解時間とビーズブレンダー速度の影響
実施例2に記載したと同一装置及び手順を使用してStaphylococcus aureus細胞を種々のブレンダー速度で種々の時間にわたって懸濁及び溶解させた。
【0045】
図9はStaphylococcus aureus細胞のリアルタイムPCR応答に及ぼす溶解時間とビーズブレンダー速度の影響を示すグラフである。ビーズブレンダーを高速で運転した場合には2分でS.aureus細胞の効率的な溶解が達せられた。低速では溶解時間を長くする必要があった。未溶解胞子は非溶解下で検出可能な細胞外DNA濃度が低かった(0分)。少量の遊離DNAがガラスビーズと結合する。ビーズブレンダー速度100は5000rpmに対応する。
【実施例4】
【0046】
Bacillus thuringiensis胞子のリアルタイムPCR応答に及ぼす溶解時間とビーズブレンダー速度の影響
実施例2に記載したと同一装置及び手順を使用してBacillus thuringiensis胞子を種々のブレンダー速度で種々の時間にわたって懸濁及び溶解させた。
【0047】
図10はBacillus thuringiensis胞子のリアルタイムPCR応答に及ぼす溶解時間とビーズブレンダー速度の影響を示すグラフである。ビーズブレンダーを高速で運転した場合には2分でBacillus thuringiensis胞子の効率的な溶解が達せられた。低速では溶解時間を長くする必要があった。未溶解胞子は非溶解下で検出可能な細胞外DNA濃度が低かった(0分)。少量の遊離DNAがガラスビーズと結合する。ビーズブレンダー速度100は5000rpmに対応する。
【0048】
以上、本発明の構成及び動作原理を理解し易くするために詳細な内容を含む特定態様について本発明を説明した。特定態様とその詳細に関する本願のこのような記載は以下の特許請求の範囲を制限するものではない。当業者に自明の通り、本発明の趣旨と範囲から逸脱せずに例証の目的で選択した態様に変更を加えることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個以上の対象細胞を含有する懸濁液をチャンバー内で複数のビーズの存在下に磁気撹拌素子で撹拌する段階を含み、前記磁気撹拌素子が前記1個以上の対象細胞を溶解させるために十分な速度で回転する細胞溶解方法。
【請求項2】
更に、前記1個以上の細胞を液体媒体に懸濁し、前記懸濁液を形成する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビーズがプラスチック、ガラス、セラミック及び金属から構成される群から選択される材料からなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ビーズがシリカビーズである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ビーズが10〜1000μmの範囲内の直径である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記磁気撹拌素子が金属又は合金からなる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記磁気撹拌素子が円形、正方形、長方形、湾曲棒状、断面長方形、円盤状、棒状、環状、三日月形、台形及び二股音叉状から構成される群から選択される形状である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記対象細胞が真核細胞又は原核細胞であり、前記懸濁液が前記細胞を1〜1×1010個/mlの濃度で含有する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞がウイルス粒子であり、前記懸濁液が前記ウイルス粒子を1〜1×1013個/mlの濃度で含有する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
対象細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容するチャンバーに磁場を印加し、前記磁場により、前記細胞の崩壊を生じるために十分な力で前記撹拌素子を前記ビーズと衝突させる段階を含む細胞溶解方法。
【請求項11】
前記ビーズがガラスビーズ、プラスチックビーズ、セラミックビーズ、金属ビーズ又はその混合物からなる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記撹拌素子がステンレス鋼からなる請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記撹拌素子がポリマーをコーティングした合金コアからなる請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記合金コアがネオジム・鉄・ボロン又はサマリウム・コバルトからなる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーが生体適合性ポリマーである請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記生体適合性ポリマーがPTFE又はパリレンである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
1個以上の容器の内側で細胞を溶解させる方法であって、
1個以上の細胞と、1個以上の磁気撹拌素子と、複数のビーズを各々収容する1個以上の容器を第1の軸に沿って表面に配置する段階と;
前記1個以上の容器の近傍で第2の軸の周囲に磁石を回転させる段階を含み、
前記第2の軸が前記磁石の中心を通り、前記磁石の前記回転により、各容器内の前記1個以上の磁気撹拌素子を転動させる前記方法。
【請求項18】
前記第2の軸が前記第1の軸に平行である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の軸が前記第1の軸と角度を成し、前記角度が0°よりも大きく且つ180°よりも小さい請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記磁石が永久磁石である請求項17に記載の方法。
【請求項21】
磁石の前記回転により、少なくとも1個の容器内の前記1個以上の磁気撹拌素子を1000rpmよりも高速で回転させる請求項17に記載の方法。
【請求項22】
磁石の前記回転により、各容器内の前記1個以上の磁気撹拌素子を約1分間〜約15分間回転させる請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の軸が前記表面に対して垂直であり、前記磁石の前記回転により、各容器内の前記1個以上の磁気撹拌素子を前記表面に対して垂直な軸の周囲に回転させる請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の軸が前記表面に対して垂直であり、前記磁石の前記回転により、各容器内の前記1個以上の磁気撹拌素子を前記表面に対して平行な軸の周囲に回転させる請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の軸が前記1個以上の容器の上に配置されている請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の軸が前記1個以上の容器の下に配置されている請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の軸が前記1個以上の容器の横に配置されている請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記1個以上の容器がバイアル、試験管、マイクロプレートのウェル及びフローチャンバーから構成される群から選択される形態である請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記1個以上の容器が前記第1の軸に平行な方向に延びる形状であり、前記磁石が前記第2の軸に平行な方向に延びる形状である請求項17に記載の方法。
【請求項30】
前記1個以上の容器が2種類以上の細胞を収容しており、前記回転段階が、第1の種類の細胞の溶解を生じる第1の速度で前記磁石を回転させる段階を含む請求項17に記載の方法。
【請求項31】
前記回転段階が更に第2の種類の細胞の溶解を生じる第2の速度で前記磁石を回転させる段階を含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
磁気撹拌素子と複数のビーズを内側に配置した容器を含み、前記容器が容器の内側で磁気撹拌素子を回転させることができるような寸法に形成されている細胞溶解装置。
【請求項33】
ビーズがガラスビーズ、プラスチックビーズ、セラミックビーズ又はその混合物からなる請求項32に記載の装置。
【請求項34】
更に回転磁場を生成するマグネチックスターラーを含み、磁気撹拌素子が回転磁場の動作範囲内に置かれた場合に容器の内側で回転する請求項32に記載の装置。
【請求項35】
更に容器を回転磁場の内側に保持するように構成された容器ホルダーを含む請求項32に記載の装置。
【請求項36】
更に前記容器の温度を制御する温度制御モジュールを含む請求項32に記載の装置。
【請求項37】
細胞から核酸を精製する方法であって、
前記細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、前記撹拌素子を前記複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と;
前記細胞溶解液から核酸を単離する段階を含む前記方法。
【請求項38】
細胞からポリヌクレオチドを増幅する方法であって、
前記細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、前記撹拌素子を前記複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と;
前記細胞溶解液から前記ポリヌクレオチドを増幅する段階を含む前記方法。
【請求項39】
細胞からポリヌクレオチドを検出する方法であって、
前記細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、前記撹拌素子を前記複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と;
前記細胞溶解液から前記ポリヌクレオチド核酸を検出する段階を含む前記方法。
【請求項40】
前記検出段階が、
前記細胞溶解液から核酸を単離する段階と;
単離した核酸から前記ポリヌクレオチドを増幅する段階と;
増幅したポリヌクレオチドを検出する段階
を含む請求項39に記載の方法。
【請求項1】
1個以上の対象細胞を含有する懸濁液をチャンバー内で複数のビーズの存在下に磁気撹拌素子で撹拌する段階を含み、前記磁気撹拌素子が前記1個以上の対象細胞を溶解させるために十分な速度で回転する細胞溶解方法。
【請求項2】
更に、前記1個以上の細胞を液体媒体に懸濁し、前記懸濁液を形成する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビーズがプラスチック、ガラス、セラミック及び金属から構成される群から選択される材料からなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ビーズがシリカビーズである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ビーズが10〜1000μmの範囲内の直径である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記磁気撹拌素子が金属又は合金からなる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記磁気撹拌素子が円形、正方形、長方形、湾曲棒状、断面長方形、円盤状、棒状、環状、三日月形、台形及び二股音叉状から構成される群から選択される形状である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記対象細胞が真核細胞又は原核細胞であり、前記懸濁液が前記細胞を1〜1×1010個/mlの濃度で含有する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞がウイルス粒子であり、前記懸濁液が前記ウイルス粒子を1〜1×1013個/mlの濃度で含有する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
対象細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容するチャンバーに磁場を印加し、前記磁場により、前記細胞の崩壊を生じるために十分な力で前記撹拌素子を前記ビーズと衝突させる段階を含む細胞溶解方法。
【請求項11】
前記ビーズがガラスビーズ、プラスチックビーズ、セラミックビーズ、金属ビーズ又はその混合物からなる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記撹拌素子がステンレス鋼からなる請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記撹拌素子がポリマーをコーティングした合金コアからなる請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記合金コアがネオジム・鉄・ボロン又はサマリウム・コバルトからなる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーが生体適合性ポリマーである請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記生体適合性ポリマーがPTFE又はパリレンである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
1個以上の容器の内側で細胞を溶解させる方法であって、
1個以上の細胞と、1個以上の磁気撹拌素子と、複数のビーズを各々収容する1個以上の容器を第1の軸に沿って表面に配置する段階と;
前記1個以上の容器の近傍で第2の軸の周囲に磁石を回転させる段階を含み、
前記第2の軸が前記磁石の中心を通り、前記磁石の前記回転により、各容器内の前記1個以上の磁気撹拌素子を転動させる前記方法。
【請求項18】
前記第2の軸が前記第1の軸に平行である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の軸が前記第1の軸と角度を成し、前記角度が0°よりも大きく且つ180°よりも小さい請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記磁石が永久磁石である請求項17に記載の方法。
【請求項21】
磁石の前記回転により、少なくとも1個の容器内の前記1個以上の磁気撹拌素子を1000rpmよりも高速で回転させる請求項17に記載の方法。
【請求項22】
磁石の前記回転により、各容器内の前記1個以上の磁気撹拌素子を約1分間〜約15分間回転させる請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の軸が前記表面に対して垂直であり、前記磁石の前記回転により、各容器内の前記1個以上の磁気撹拌素子を前記表面に対して垂直な軸の周囲に回転させる請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の軸が前記表面に対して垂直であり、前記磁石の前記回転により、各容器内の前記1個以上の磁気撹拌素子を前記表面に対して平行な軸の周囲に回転させる請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の軸が前記1個以上の容器の上に配置されている請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の軸が前記1個以上の容器の下に配置されている請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の軸が前記1個以上の容器の横に配置されている請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記1個以上の容器がバイアル、試験管、マイクロプレートのウェル及びフローチャンバーから構成される群から選択される形態である請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記1個以上の容器が前記第1の軸に平行な方向に延びる形状であり、前記磁石が前記第2の軸に平行な方向に延びる形状である請求項17に記載の方法。
【請求項30】
前記1個以上の容器が2種類以上の細胞を収容しており、前記回転段階が、第1の種類の細胞の溶解を生じる第1の速度で前記磁石を回転させる段階を含む請求項17に記載の方法。
【請求項31】
前記回転段階が更に第2の種類の細胞の溶解を生じる第2の速度で前記磁石を回転させる段階を含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
磁気撹拌素子と複数のビーズを内側に配置した容器を含み、前記容器が容器の内側で磁気撹拌素子を回転させることができるような寸法に形成されている細胞溶解装置。
【請求項33】
ビーズがガラスビーズ、プラスチックビーズ、セラミックビーズ又はその混合物からなる請求項32に記載の装置。
【請求項34】
更に回転磁場を生成するマグネチックスターラーを含み、磁気撹拌素子が回転磁場の動作範囲内に置かれた場合に容器の内側で回転する請求項32に記載の装置。
【請求項35】
更に容器を回転磁場の内側に保持するように構成された容器ホルダーを含む請求項32に記載の装置。
【請求項36】
更に前記容器の温度を制御する温度制御モジュールを含む請求項32に記載の装置。
【請求項37】
細胞から核酸を精製する方法であって、
前記細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、前記撹拌素子を前記複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と;
前記細胞溶解液から核酸を単離する段階を含む前記方法。
【請求項38】
細胞からポリヌクレオチドを増幅する方法であって、
前記細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、前記撹拌素子を前記複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と;
前記細胞溶解液から前記ポリヌクレオチドを増幅する段階を含む前記方法。
【請求項39】
細胞からポリヌクレオチドを検出する方法であって、
前記細胞と、撹拌素子と、複数のビーズを収容する容器に磁場を印加し、前記磁場により、前記撹拌素子を前記複数のビーズと衝突させ、細胞溶解液を生成する段階と;
前記細胞溶解液から前記ポリヌクレオチド核酸を検出する段階を含む前記方法。
【請求項40】
前記検出段階が、
前記細胞溶解液から核酸を単離する段階と;
単離した核酸から前記ポリヌクレオチドを増幅する段階と;
増幅したポリヌクレオチドを検出する段階
を含む請求項39に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2013−505018(P2013−505018A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529754(P2012−529754)
【出願日】平成22年9月20日(2010.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/002569
【国際公開番号】WO2011/034621
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(510048369)アコーニ バイオシステムズ (8)
【氏名又は名称原語表記】AKONNI BIOSYSTEMS
【出願人】(512071318)クォンタライフ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月20日(2010.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/002569
【国際公開番号】WO2011/034621
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(510048369)アコーニ バイオシステムズ (8)
【氏名又は名称原語表記】AKONNI BIOSYSTEMS
【出願人】(512071318)クォンタライフ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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