説明

磁気熱量効果による熱発生器

本発明は、隣接する少なくとも2つの磁気熱量効果素子(2)を含む少なくとも1つの熱モジュール(1’)と、冷却液の循環手段(4)に接続し、互いに流体を介して連結する分配用共通チャンバ(3)であって、隣接する前記磁気熱量効果素子(2)および2つの端部チャンバ(5、6)も同じく循環手段(7)に接続してそれぞれが前記熱モジュール(1’)の加熱端部(9)と冷却端部に位置する2つの磁気熱量効果素子(2)と流体を介して連結するチャンバと、各磁気熱量効果素子(2)が変動可能な磁場の影響を受けるように設計される磁化配列とを有する熱発生器(1)において、前記分配用共通チャンバ(3)に接続する前記循環手段(4)は、冷却液を隣接する2つの磁気熱量効果素子(2)を通して別々の循環方向に同時に動かすことを特徴とする熱発生器(1)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却液を通過させるために隣接して配列される少なくとも2つの磁気熱量効果素子を含む少なくとも1つの熱モジュールと、冷却液の循環手段に接続し、互いに流体を介して連結する分配用共通チャンバであって、隣接する前記磁気熱量効果素子および2つの端部チャンバも同じく循環手段に接続してそれぞれが前記熱モジュールの端部、すなわち加熱端部および冷却端部に位置する磁気熱量効果素子と流体を介して連結するチャンバと、各磁気熱量効果素子が変動可能な磁場の影響を受けるように設計され、各磁気熱量効果素子に加熱サイクルと冷却サイクルを交互に生成する磁化配列とを有する熱発生器であって、前記磁気熱量効果素子を通過する冷却液の循環は、磁場変動と同期化した状態の循環手段によって実現する熱発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気冷却技術は20数年以上前から知られており、環境配慮および持続可能な開発の観点でこの技術がもたらす利点は承知している。また、この技術の発熱力および効率には限度があることも知られている。そのため、この分野に関わる研究者はこぞってこのような発熱器の性能改善に取り組み、磁力、磁気熱量効果素子の性能、冷却液と磁気熱量効果素子との間の熱交換面積、熱交換器の性能など、さまざまなパラメータを研究している。
【0003】
磁気熱量効果材料の選択は重要であり、磁気熱量効果を有する発熱器の性能に直接影響を及ぼす。この性能を向上させる一つの対策が、この集合体の両端間の温度勾配を上げるために、キュリー温度が異なる複数の磁気熱量効果材料を結合することである。
【0004】
図1Aおよび1Bに示すような少なくとも1つの熱モジュールMを有する熱発生器であって、隣接して一列に配置される磁気熱量効果材料MCと、ピストンPなどの冷却液の循環手段であって、磁気熱量効果材料の集合体MCを通って同材料の端から端までで、磁気熱量効果材料MCの冷却側Fと加熱側Cとの間を往来する動きに従って、磁場変動と同期化するように冷却液を駆動するようになっている循環手段とを有する熱発生器が知られている。図1Aおよび1Bに示すように、このピストンPは、磁気熱量効果材料MCの集合体の両側に配置され、ある方向に動いたのちにその反対方向に動くのを交互に繰り返す。図1Aおよび1Bは両端部にある2つのピストンを示す。
【0005】
図1Aおよび1Bからわかるように、流体は、磁気熱量効果材料が加熱サイクルに従う際の加熱端部Cへ向かう方向(冷却液が動く方向は点線の矢印で示している。図1Aを参照)か、磁気熱量効果材料が冷却サイクルに従う際の冷却端部Fへ向かう逆方向(冷却液が動く方向は実線の矢印で示している。図1Bを参照)のいずれかに動く。
【0006】
この熱モジュールMには、温度勾配を達成するためには材料の集合体を通過させて冷却液を循環させる必要があるという欠点がある。複数の磁気熱量効果素子MCを使用することにより、前記冷却液が通過する材料の長さが長くなってしまう。したがって、サイクル数(1サイクルは磁気熱量効果素子の1回の加熱と1回の冷却とするサイクル)を減らさないようにするには、冷却液の速度を上げる必要がある。ただし、速度を上げると圧力が上がることになり、これによって熱伝導損失が増して冷却液と磁気熱量効果素子との間の熱交換率が低下し、磁気熱量効果による熱発生器の熱効率の低下を招く。
【0007】
磁気熱量効果による熱発生器の発熱力を上げるには、サイクル数を増やすという可能性があることも知られている。ただし、それによって速度が増すことになり、前述の欠点を引き起こす。
【0008】
図1Aおよび1Bに示すような熱モジュールMを有する熱発生器では、使用する材料数が多いために、両端間に得られる温度勾配を達成するには事前にある程度長い時間作動させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、実用が容易で、熱効率が周知の熱発生器よりも改良され、磁気熱量効果材料の分量または長さが周知のものと同じ熱発生器を提案することによって、これらの欠点を緩和することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため、本発明は前述した類の熱発生器であって、前記分配用共通チャンバに接続する前記循環手段が冷却液を隣接する2つの磁気熱量効果素子を通って別々の循環方向に同時に動かすことを特徴とする熱発生器に関する。
【0011】
磁化配列は、隣接する前記磁気熱量効果素子が常に異なる2つのサイクルにあるように拘束し、前記共通チャンバとつながる前記循環手段は、加熱サイクルに従う磁気熱量効果素子を通って前記熱モジュールの加熱端部の方向と、冷却サイクルに従う磁気熱量効果素子を通って前記熱モジュールの冷却端部の方向とに冷却液を同時に動かすことができることが好ましい。
【0012】
前記熱モジュールはさらに、少なくとも3つの磁気熱量効果素子を有することができ、前記共通チャンバにつながる前記循環手段は、隣接する2つの磁気熱量効果素子の方向へ交互に冷却液を動かしたのちに、その反対方向である隣接する前記熱モジュールの出口まで動かすことができ、またこの逆も行い、連続する2つの共通チャンバの2つの循環手段は冷却液を常に2つの反対方向に動かすことができ、前記端部のチャンバにつながる循環手段は、この循環手段と隣接する共通チャンバとは反対の方向に冷却液を動かすことができる。
【0013】
熱発生器は、偶数の磁気熱量効果素子を有することが好ましい。こうすることにより、各熱モジュールは常に加熱サイクルと冷却サイクルに同数の磁気熱量効果素子を有することになる。
【0014】
熱発生器が作動する温度範囲(たとえば−25°C〜+65°C)を拡大するため、前記磁気熱量効果素子はそれぞれ異なるキュリー温度を有し、前記熱モジュールの加熱端部の方へ向かって各キュリー温度が低い順に並ぶようにして配置される。
【0015】
この構成では、前記磁気熱量効果素子はそれぞれ、前記熱モジュールの加熱端部の方へ向かってキュリー温度の低い順に配列した複数の磁気熱量効果材料を有することもできる。
【0016】
特徴として、一方の端部チャンバにつながる循環手段が動かす冷却液の量は、共通チャンバにつながる循環手段が動かす冷却液の量の半分に相当するようにすることができる。
【0017】
循環手段は、共通チャンバおよび端部チャンバに搭載されるピストンとすることができ、そのうちの一方の端部のみが冷却液に作用することが好ましい。端部とは、冷却液と接触しているピストンのうち作用を及ぼす面またはヘッドのことである。当然のことだが、これ以外のどのような形態の循環手段を想定してもよい。
【0018】
第1の実施形態では、前記熱モジュールは、磁気熱量効果素子が並列している線構造で、前記ピストンの操作は、回転軸自体に取り付けられる対応する制御カムによって行う。
【0019】
この構成では、前記熱発生器は4つの熱モジュールで構成され、前記制御カムは互いに90°離れたローブを有し、前記熱モジュールは前記軸の周りに半径方向に配置されて各ローブが4つの前記熱モジュールのそれぞれのピストンに作用するようにすることができる。
【0020】
第2の実施形態では、前記熱モジュールは、磁気熱量効果素子が並列している線構造で、前記ピストンの操作は、前記熱モジュールの全長にわたって往来する移動運動に沿って動いて各ピストンに対応する接続素子が誘導される誘導用の溝を有する操作用スライドによって行う。
【0021】
誘導用の溝は鋸歯の形状をとることができ、ピストンは操作用のスライドとほぼ水平に配列することができる。
【0022】
さらに、前記熱発生器は、段状構造となるように互いに重ねて配置される複数の熱モジュールを有することができる。
【0023】
本発明は、前記熱発生器が少なくとも2つの熱モジュールを有し、加熱端部チャンバ同士の間が流体を介してつながるとともに、冷却端部チャンバ同士の間も流体を介してつながるようにすることができることも想定している。
【0024】
その上、本発明による熱発生器は、同数の磁気熱量効果素子を持つ少なくとも2つの熱モジュールを有することができ、前記熱モジュールの共通チャンバは流体を介して2つずつながるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明およびその利点は、添付の図を参照しながら、非限定的に例として挙げる実施形態に沿った次の説明文を読むことによりさらに明らかになるだろう。
【0026】
【図1A】先行技術による熱モジュールの概略図である。
【図1B】先行技術による熱モジュールの概略図である。
【図2A】図2Aおよび図2Bはそれぞれが2つの別の状態にある4つの磁気熱量効果素子で構成される熱モジュールの概略図であり、この4つの磁気熱量効果素子を通って冷却液が動く様子を示す図である。
【図2B】図2Aおよび図2Bはそれぞれが2つの別の状態にある4つの磁気熱量効果素子で構成される熱モジュールの概略図であり、この4つの磁気熱量効果素子を通って冷却液が動く様子を示す図である。
【図3】本発明による熱発生器の第1の実施形態の斜視図である。
【図4】図3の詳細部Aを上から見た透過図である。
【図5】本発明による熱発生器の第2の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図に示す実施例では、同じ部品または部分には同一の符号を付してある。
【0028】
図3および図4に示す熱発生器1は、本発明の第1の実施形態に沿って作製される。この熱発生器は、2つの熱モジュール1’を有し、それぞれが並列する磁気熱量効果素子2を有する。冷却液を動かす循環手段を形成するピストン4を有する共通チャンバ3は常に、隣接する2つの磁気熱量効果素子2の間に配置される。さらに、前記熱モジュール1’は、前記熱モジュール1’の加熱端部9と冷却端部11にある端部チャンバ5と6も有し、各チャンバは循環手段を形成するピストン7も有する。
【0029】
各磁気熱量効果素子2は、ピストン4、7が駆動する冷却液を通すことができ、加熱サイクルと冷却サイクルを交互に発生させる磁化配列(図示せず)を介して磁場変動の影響を受ける。ピストン4、7の動きは、磁場変動と同期化して、冷却液が加熱サイクル(点線の矢印)に従って各磁気熱量効果素子2を通って加熱端部9の方向に動き、冷却サイクル(実線の矢印)に従って各磁気熱量効果素子2を通って冷却端部11の方向に動く。この動きは、共通チャンバ3および端部チャンバ5、6にあるピストン4、7の配置、ならびにそこから流れる冷却液の特定の分配によって可能になる。実際に、共通チャンバ3にあるピストン4はそれぞれ、隣接する2つの磁気熱量効果素子2に冷却液を分配する。図3および4では、ピストン4、7は、該ピストン4、7の一方の端部のみで冷却液を動かすことができるように、磁気熱量効果素子2の配列に対して垂直になっている。当然のことだが、共通チャンバ3にあるピストン4の一方の端部のみが冷却液と接触して冷却液を2つの磁気熱量効果素子2へ動かすことができるかぎり、これ以外の構成を検討してもよい。
【0030】
上に述べた冷却液の動きによって、熱モジュールの加熱端部9と冷却端部11との間に温度勾配を生成することができ、あるアプリケーションまたは外部回路に対する熱エネルギーの採取または交換が行われる際にはこの勾配を維持することができる。実際に、本発明による熱発生器は、(暖房、冷房、温度調節などに)使用する1つまたは複数の外部回路との熱エネルギーの交換を目的としており、少なくとも1つの端部チャンバ5、6、場合によっては1つの熱交換器を介して外部回路と連結している。
【0031】
さらに、これは図示した2つの実施形態に適用可能なことだが、冷却液を共通チャンバ3から隣接する2つの磁気熱量効果素子2へ通過させると同時に、この2つの磁気熱量効果素子2のそれぞれに対して別々の方向に流すことは、周知の熱発生器と比べて多数の利点があり、流体が磁気熱量効果素子MCすべてを最初の磁気熱量効果素子から最後の磁気熱量効果素子まで第1の方向で同時に通過したのち、同じ磁気熱量効果素子MCを今度は第1の方向とは逆の方向で通過する(図1Aおよび1Bを参照)。
【0032】
第1の利点は、図2Aおよび2Bからわかるように、熱伝導損失が分散されて減少することにあり、ピストン7が駆動する冷却液は一度に1つの磁気熱量効果素子2しか通過せず、ピストン4が駆動する冷却液は一度に2つの磁気熱量効果素子しか通過せず、熱モジュール1’、10’を構成する磁気熱量効果素子2のすべては通過しないという点である。このために、図2Aおよび2Bを見ると、磁気熱量効果素子2の下に描かれた矢印は冷却液の動く方向を示しており、点線の矢印は加熱端部9へ向かう動きに相当し、実線の矢印は冷却端部11に向かう動きを示す。
【0033】
第2の利点は、図1Aおよび1Bに示す周知のシステムと、磁気熱量効果材料が同じ長さである本発明によるシステムとを比較すると明らかになる。磁気熱量効果素子MC、2を通過する冷却液の速度を同じにするには、本発明の熱発生器1、10ではサイクルの回数が4倍になることがわかる。その結果、このような熱発生器10の発熱力も同じ割合で増大する。
【0034】
例を挙げると、冷却液の速度が100mm/秒で、磁気熱量効果素子あたりの長さが100ミリメートルの場合、
− 図1Aおよび1Bに示す周知のシステムの磁気熱量効果素子MCすべてを通過するのに必要な時間は、(4×100)÷100=4秒となり、これは0.25ヘルツの周波に等しい。
− 一方、本発明による熱発生器1、10の磁気熱量効果素子2すべてを通過するのに必要な時間は、(1×100)÷100=1秒となり、これは1ヘルツの周波に等しい。
【0035】
また、同じように本発明による熱発生器1、10を周知のシステムと比較すると、同じサイクル数(非磁化および磁化)に対して、冷却液が動く速度は本発明による熱発生器1、10では4分の1になる。その結果、本発明による熱発生器では熱伝導損失が減少するため、熱交換にかける時間が長くなり、この熱交換による発熱力が増大する。
【0036】
例を挙げると、1秒の加熱サイクル(または磁化)と1秒の冷却サイクル(または非磁化)、および磁気熱量効果素子あたりの長さが100ミリメートルに相当する0.5ヘルツの周波数の場合、
− 図1Aおよび1Bに示す周知のシステムの磁気熱量効果素子MCすべてを1秒間で通過するには、冷却液の速度は、(4×0.100)÷1=0.4m/秒である必要がある。
− 一方、本発明による熱発生器1、10の磁気熱量効果素子2すべてを通過するには、各共通チャンバ3が駆動する冷却液の速度は、(1×0.100)÷1=0.1m/秒である。
【0037】
磁気熱量効果素子2は、簡略化のため図3には表示していない。この磁気熱量効果素子は、流体を通過させる通路を有し、この通路は、たとえば中実ブロックに加工されたり溝入りプレートを積層した集合体によって得られたりするミニチャンネルまたはマイクロチャンネルなどの多孔質材料の孔で構成することができる。
【0038】
加熱端部9と冷却端部11との間の温度勾配を増大させるため、前記磁気熱量効果素子2はそれぞれキュリー温度の低い順に配置され、キュリー温度が最も高い磁気熱量効果素子2は対応する熱モジュール1’の加熱端部9の方に配置するのが好ましい。
【0039】
さらに、各磁気熱量効果素子2は、同じくキュリー温度の低い順に配置されたさまざまに異なる複数の磁気熱量効果材料からなる集合体で作製することができる。
【0040】
図3からわかるように、共通チャンバ3に搭載されるピストン4は、軸14を回転するように取り付けられる制御カム13によって操作され、前記カムは互いに90°ずれているローブ15を有する。軸14の回転角度に応じて、ローブ15は対応するピストン4、7の棒を押すこともあれば押さないこともあり、これによって各ピストン4、7が動く方向が決定される。
【0041】
図4は、ピストン4、7が取り得る端部での位置を示す。素子1’の冷却端部11側の端部チャンバ5および共通チャンバ3(図4中の右)にそれぞれ配置されるピストン7および4は、引いた位置にあり、この状態で搭載されたチャンバを冷却液で満たすことができる。一方、真ん中のピストン4は、対応する共通チャンバ3内の流体を前記共通チャンバ3から隣接する2つの磁気熱量効果素子2に向かって反対方向に押した位置にある。冷却液は、この図4に描いた湾曲した矢印に沿って動く。
【0042】
この図から、端部チャンバ5に接続するピストン7によって動く冷却液の量は、冷却液隣の共通チャンバ3にあるピストン4によって動く冷却液の量の半分に相当することが明らかにわかる。
【0043】
さらに、とりわけ偶数の磁気熱量効果素子2が熱モジュールに搭載された場合、共通チャンバ3は冷却液の温度を平均温度にすることができる仲介液を形成することができるため、各熱モジュール1、10’の加熱端部9と冷却端部11との間の温度勾配を達成する時間を短縮することができる。
【0044】
図3および4の熱発生器1は、2つの熱モジュール1’を有する。この数はこれに限定されるわけではなく、可能な寸法および必要な発熱力に応じてこれ以下にもこれ以上にしてもよい。実際に、この熱発生器2は、軸14の周りに星状に配置される4つの熱モジュール1’を有することもでき、そのピストン4、7はカム13によって作動される。
【0045】
図5に示した熱発生器10は、これ以前の図のものとはピストン4、7の操作が異なる。この操作は、該当する熱モジュール10’の全長にわたって矢印Fに沿った往来の動きのとおりに動く操作用のスライド16によって行う。この操作用スライド16は、鋸歯形状の誘導用の溝17を有し、この溝をピストン4、7に連結する結合素子18が動く。
【0046】
図5に示す熱発生器10は、積み重なった2つの熱モジュール10’を有するが、本発明による熱発生器10は、この熱モジュール10’の数にも積み重ねたような配置にも限定されるわけではない。
【0047】
さらに、これは添付の図面には表示していないことだが、複数の熱モジュールを有する本発明による熱発生器では、加熱端部チャンバ5同士が流体を介してつながり、冷却端部チャンバ6同士も同じく流体を介してつながることを想定してもよい。とりわけ、前記加熱端部チャンバ5を混合して1つの同じチャンバのみを形成するようにすることもできる。これは、冷却端部チャンバ6についても同じである。
【0048】
このような構成であれば、さまざまに異なる熱モジュール同士を熱的に連結させることができ、とりわけ外部アプリケーションとの熱交換を容易にすることができる。また、このような構成により、さまざまな熱モジュールの発熱力を追加したり併合したりすることが可能になる。
【0049】
さらに別の変形例では、本発明による熱発生器のさまざまな熱モジュールの共通チャンバ3が2つずつその間を流体を介してつながるようにすることができる。このようにするには、熱モジュールは同数の磁気熱量効果素子2を有する必要がある。
【0050】
このような構成の利点は、熱発生器の安定した作動が得られるように、共通チャンバ3の温度差が少なく平均的であることである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本明細書により、本発明が設定した目的、すなわち、簡易な構造で、効率を改良した熱発生器1、10を提案するという目的を達成することが可能であることが明らかとなる。
【0052】
このような熱発生器1、10であれば、暖房、冷房、温度調節、冷却またはその他の分野で、競争に耐え得る費用かつ場所を取らない寸法で、工業用にも家庭用にも用途を見出すことができる。
【0053】
さらに、この熱発生器1、10を構成する部品はすべて、再製可能な工業プロセスに従って作製することができる。
【0054】
本発明は、記載した実施例に限定されるものではなく、添付の請求項に定義した保護範囲内である限り、当業者に自明のあらゆる修正および変形例も範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液を通過させるために隣接して配列される少なくとも2つの磁気熱量効果素子(2)を含む少なくとも1つの熱モジュール(1’、10’)と、前記冷却液の循環手段(4)に接続し、互いに流体を介して連結する分配用共通チャンバ(3)であって、隣接する前記磁気熱量効果素子(2)および2つの端部チャンバ(5、6)も同じく循環手段(7)に接続してそれぞれが前記熱モジュール(1’、10’)の端部、すなわち加熱端部(9)および冷却端部(11)に位置する磁気熱量効果素子(2)と流体を介して連結するチャンバと、各磁気熱量効果素子(2)が変動可能な磁場の影響を受けるように設計され、各磁気熱量効果素子(2)に加熱サイクルと冷却サイクルを交互に生成する磁化配列とを有する熱発生器であって、前記磁気熱量効果素子(2)を通過する前記冷却液の循環は、磁場変動と同期化した状態の前記循環手段(4、7)によって実現する熱発生器(1、10)において、前記分配用し共通チャンバ(3)に接続する前記循環手段(4)が前記冷却液を隣接する2つの磁気熱量効果素子(2)を通して別々の循環方向に同時に動かすことを特徴とする熱発生器(1、10)。
【請求項2】
前記磁化配列は、隣接する前記磁気熱量効果素子(2)が常に異なる2つのサイクルにあるように拘束し、前記共通チャンバ(3)とつながる前記循環手段(4)は、加熱サイクルに従う磁気熱量効果素子(2)を通って前記熱モジュールの加熱端部(9)の方向と、冷却サイクルに従う磁気熱量効果素子(2)を通って前記熱モジュール(1’、10’)の冷却端部(11)の方向とに冷却液を同時に動かすことを特徴とする、請求項1に記載の熱発生器。
【請求項3】
前記熱モジュール(1’、10’)は、少なくとも3つの磁気熱量効果素子(2)を有することと、前記共通チャンバ(3)につながる前記循環手段(4)は、隣接する2つの磁気熱量効果素子(2)の方向に前記冷却液を動かしたのちに、その反対方向である隣接する前記熱モジュール(2)の出口まで動かし、またこの逆も行うことと、連続する2つの共通チャンバ(3)の2つの循環手段(4)は前記冷却液を常に2つの反対方向に動かすことと、前記端部チャンバ(5、6)につながる循環手段(7)は、この循環手段と隣接する共通チャンバ(3)とは反対の方向に前記冷却液を動かすこととを特徴とする。請求項1〜2のいずれか一項に記載の熱発生器。
【請求項4】
前記熱発生器は、偶数の磁気熱量効果素子(2)を有することを特徴とする、請求項3に記載の熱発生器。
【請求項5】
前記磁気熱量効果素子(2)はそれぞれ異なるキュリー温度を有し、前記熱モジュールの前記加熱端部(9)の方へ向かって各キュリー温度が低い順に並ぶようにして配置されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱発生器。
【請求項6】
前記磁気熱量効果素子(2)はそれぞれ、前記熱モジュールの前記加熱端部(9)の方へ向かってキュリー温度の低い順に配列した複数の磁気熱量効果材料を有することを特徴とする、請求項3および4のいずれか一項に記載の熱発生器。
【請求項7】
一方の端部チャンバ(5、6)につながる循環手段(7)が動かす冷却液の量は、共通チャンバ(3)につながる循環手段(4)が動かす冷却液の量の半分に相当することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱発生器。
【請求項8】
前記循環手段(4、7)は、前記共通チャンバ(3)および前記端部チャンバ(5、6)に搭載されるピストンとすることができ、そのうちの一方の端部(12)のみが冷却液に作用することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱発生器。
【請求項9】
前記熱モジュール(1’)は、前記磁気熱量効果素子(2)が並列している線構造で、前記ピストン(4、7)の操作は、回転軸(14)自体に取り付けられる対応する制御カム(13)によって行うことを特徴とする、請求項8に記載の熱発生器。
【請求項10】
前記熱発生器は4つの熱モジュール(1’)で構成されることと、前記制御カム(13)は互いに90°離れたローブ(15)を有することと、前記熱モジュール(1’)は前記軸(14)の周りに半径方向に配置されて各ローブ(15)が4つの前記熱モジュール(1’)のそれぞれのピストン(4、7)に作用することとを特徴とする、請求項9に記載の熱発生器。
【請求項11】
前記熱モジュール(10’)は、前記磁気熱量効果素子(2)が並列している線構造であることと、前記ピストン(4、7)の操作は、前記熱モジュール(10’)の全長にわたって往来する移動運動に沿って動いて各ピストン(4、7)に対応する接続素子(18)が誘導される誘導用の溝(17)を有する操作用スライド(16)によって行うこととを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱発生器。
【請求項12】
前記誘導用の溝(15)は鋸歯の形状であることと、前記ピストン(4、7)は操作用のスライド(16)スライドとほぼ水平に配列されることとを特徴とする、請求項11に記載の熱発生器。
【請求項13】
前記熱発生器は、段状構造となるように互いに重ねて配置される複数の熱モジュール(10’)を有することを特徴とする、請求項11または12のいずれか一項に記載の熱発生器。
【請求項14】
前記熱発生器は少なくとも2つの熱モジュール(1’、10’)を有することと、加熱端部チャンバ(5)同士の間が流体を介してつながるとともに、冷却端部チャンバ(6)同士の間も流体を介してつながることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の熱発生器。
【請求項15】
前記熱発生器は、同数の磁気熱量効果素子(2)を持つ少なくとも2つの熱モジュール(1’、10’)を有することと、前記熱モジュール(1’、10’)の共通チャンバ(3)は流体を介して2つずつながることとを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の熱発生器。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−506529(P2012−506529A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532679(P2011−532679)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【国際出願番号】PCT/FR2009/001223
【国際公開番号】WO2010/046559
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(308026872)クールテック アプリケーションズ エス.エー.エス. (9)