説明

磁気記録再生装置および磁気テープカートリッジ

【課題】本発明は、低湿度がもたらすエラーレートの悪化が抑制された磁気記録再生装置を提供する。
【解決手段】筐体110と、磁気テープカートリッジを収納しうる磁気テープカートリッジ収容部90と、磁気テープを移送させうる移送機構と、磁気テープ50への情報の記録および再生を行いうる磁気ヘッド30と、所定量の水分を含んだ吸水性樹脂を含む、1つ以上の調湿部材40とを含み、筐体内において、磁気テープカートリッジ収容部、移送機構、および磁気ヘッドが配置された領域Aと、残余の領域Bとが、隔離部材により隔たれており、調湿部材は、領域A内に配置され、吸水性樹脂は、その限界吸水量が100g/g以上であり、吸水性樹脂の総乾燥重量が、領域A内の空間100cm3あたり0.10g〜5.00gである、磁気記録再生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録再生装置、および磁気テープカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピューターに搭載されたハードディスクに記録されているデータをバックアップするものとして、磁気テープが多く用いられている。データバックアップ用の磁気テープの分野では、ハードディスクの大容量化に伴い、1巻あたり数百GB〜数TBの記憶容量を有する磁気テープが商品化されている。今後、さらなるハードディスクの大容量化に対応するため、データバックアップ用の磁気テープの高容量化は不可欠である。
【0003】
この高容量化を達成するためには、磁気テープの線記録密度を上げることが必須であり、そのために、磁気テープの磁性層表面は極めて平滑に仕上げられている。よって、磁性層の磁気ヘッドに対する研磨能(クリーニング性能)は低下する傾向にある。
【0004】
このような磁気テープに対して情報の記録および再生を可能とする磁気記録再生装置では、短波長の微小な磁束を検出するために、MRヘッドが用いられている。高密度記録された磁気テープでは、磁束が微小で短波長である。そのため、再生時に磁気ヘッドの表面に僅かな汚れが付着すること等が原因で、磁気ヘッドの表面と磁気テープの磁性層表面との間に僅かなスペーシングが発生すると、スペーシング損失による書き込み損じと、バイアス磁界の変化により再生出力が低下し、再生エラーが生じてエラーレートが増大するなどの問題が発生する。このような現象は、特に低湿環境下で顕著に発生し、大きな問題となっている。
【0005】
このような背景下、珪藻土等の調湿材料を含んだ調湿部材を含む磁気テープカートリッジが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−294225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に開示されている技術は、磁気テープカートリッジ内を所定の湿度範囲内に調整可能とするものであるため、磁気テープカートリッジ内での磁気テープの品質保持や幅方向の寸法の保持には寄与するものの、上記磁気ヘッドの表面に付着する僅かな汚れ等が引き起こす、エラーレートの増大の問題解決には、十分に寄与しない。
【0007】
本発明は、低湿度がもたらすエラーレートの増大が抑制された磁気記録再生装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の磁気記録再生装置は、
磁気テープカートリッジの磁気テープに情報を記録および再生可能とする磁気記録再生装置であって、
筐体と、
前記磁気テープカートリッジを収納しうる磁気テープカートリッジ収容部と、
前記磁気テープを移送させうる移送機構と、
前記磁気テープへの情報の記録および再生を行いうる磁気ヘッドと、
所定量の水分を含んだ吸水性樹脂を含む、1つ以上の調湿部材とを含み、
前記筐体内において、前記磁気テープカートリッジ収容部、前記移送機構、および前記磁気ヘッドが配置された領域Aと、残余の領域Bとが、隔離部材により隔たれており、
前記調湿部材は、前記領域A内に配置され、前記吸水性樹脂は、その限界吸水量が100g/g以上であり、前記吸水性樹脂の総乾燥重量が、前記領域A内の空間100cm3あたり0.10g〜5.00gである。
【0009】
また、本発明の磁気記録再生装置は、
磁気テープカートリッジの磁気テープに情報を記録および再生可能とする磁気記録再生装置であって、
筐体と、
前記磁気テープカートリッジを収納しうる磁気テープカートリッジ収容部と、
前記磁気テープを移送させうる移送機構と、
前記磁気テープへの情報の記録および再生を行いうる磁気ヘッドと、
所定量の水分を含んだ吸水性樹脂を含む、1つ以上の調湿部材とを含み、
前記筐体内において、前記磁気テープカートリッジ収容部、前記移送機構、および前記磁気ヘッドが配置された領域Aと、残余の領域Bとが、隔離部材により隔たれており、
前記調湿部材が、前記領域A内に配置されることにより、前記領域A内の湿度が20〜60%RHに保たれている。
【0010】
本発明の磁気テープカートリッジは、
本発明の磁気記録再生装置により情報が記録および再生される磁気テープを含む磁気テープカートリッジであって、
ケースと、
前記ケース内に配置された磁気テープと、
前記磁気テープが巻回されたハブ部を含むリールと、
所定量の水分を含んだ吸水性樹脂を含む1つ以上の調湿部材と、を含み、
前記ケース内の湿度が20〜60%RHに保たれている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低湿度がもたらすエラーレートの増大が抑制された磁気記録再生装置、および、この磁気記録再生装置を用いて好適に情報が記録および再生される磁気テープカートリッジを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の磁気記録再生装置の一例の内部構成を示す平面概略図であり、図2は、図1に示した磁気記録再生装置のI-I'断面概略図である。図3は、本発明の磁気記録再生装置の他の一例を説明する部分概略図である。尚、図の理解の容易化のために、図2において、図1中の、磁気ヘッド20、アクチュエータ30、調湿部材40、磁気テープ50、テープガイド60は省略している。
【0013】
本実施の形態の磁気記録再生装置100は、磁気ヘッド20と、アクチュエータ30と、テープガイド60と、巻き取りリール80と、磁気テープカートリッジを収納可能とするカートリッジ収納部90と、調湿部材40と、回路基板130と、駆動部140と、ファン150と、電源部120と、これらを収容する筐体110とを含む。筐体110は、取り出し口110a(図1および図2参照)を開閉可能に覆う開閉扉(図示せず。)を有している。
【0014】
磁気ヘッド20は、磁気テープ50に各種情報を書き込み、および、磁気テープ50に記録された各種情報を読み出すことができる。磁気ヘッド20は、例えば、磁気抵抗効果素子(MR素子)を用いたMRヘッドで構成される。
【0015】
アクチュエータ30は、磁気テープ50に各種情報を記録する際、または磁気テープ50に記録された各種情報を読み出す際に、磁気ヘッド20を磁気テープ5の幅方向に移動させるように機能する。
【0016】
テープガイド60は、磁気テープ50が磁気記録再生装置100内の所定の位置を走行可能なように、磁気テープ5を案内するものである。テープガイド6は、例えば、略円筒形状のローラを備えている。また、テープガイド60は、磁気ヘッド20の入側及び出側にそれぞれ配され、磁気ヘッド20に対する磁気テープ5の相対位置を規制している。
【0017】
巻き取りリール80は、磁気テープカートリッジから引き出された磁気テープ50が巻回されるリールである。巻き取りリール80は、別途設けられたモータ等の駆動部140により回転駆動される。
【0018】
上記テープガイド60および巻き取りリール80等からなる磁気テープ50を移送させる構成は、本発明における移送機構の一例である。本実施の形態の磁気記録再生装置100は、LTO(Linear Tape-Open)規格に準拠した磁気テープ50への情報の記録および再生が行えるものである。磁気記録再生装置100で磁気テープ50へ情報を書き込む際は、磁気テープ50をその始端から終端まで走行させながらデータトラックに沿って磁気ヘッド20により情報を書き込む。次に、磁気ヘッド20を磁気テープ50の幅方向に所定量移動させ、磁気テープ50をその終端から始端まで走行させながら別のデータトラックに沿って情報を書き込む。上記動作を繰り返して、磁気テープ50の長手方向に平行な複数のデータトラックに沿って情報を書き込む。
【0019】
筐体110内の領域Aには、テープガイド60と巻き取りリール80とを含む移送機構、磁気テープカートリッジ収容部90、磁気ヘッド20、アクチュエータ30が配置されている。一方、残余の領域B内には、ファン150、電源部120、駆動部140、回路基板130が配置されている。そして、領域Aと領域Bは、隔離部材111により隔たれている。すなわち、磁気記録再生装置の稼動中に筐体110内の磁気テープ50が存在し得る領域(領域A)と、磁気記録再生装置の稼動中に発熱する構成部品(電源部120、駆動部140、回路基板130等)と、当該発熱により加熱された空気を筐体外に排出して領域B内の温度を制御可能とするファン150とを含む領域(領域B)とが、隔離部材111により隔たれている。
【0020】
ここで、「隔たれている」とは、領域Aと領域Bとの気体の積極的な流通が阻害されている状態を意味する。
【0021】
したがって、ファン150により引き起こされる気体の流れや、加熱された空気の拡散等が原因で、領域A内において温度変化および湿度変化が生じることを抑制可能とし、かつ、領域Aの湿度を効率的に所望の範囲内(20〜60%RH)の値にできる限りにおいて、領域Aと領域Bとの間の気体の流通が隔離部材111により完全に妨げられる必要はない。よって、隔離部材111の形状等についても特に制限はなく、例えば、板状、磁気テープカートリッジ1を出し入れ可能とする開口部を有するボックス状等であってもよい。
【0022】
しかし、隔離部材111の形状は、可能なかぎり、領域Aが、領域A外(例えば、領域Bおよび磁気記録再生装置外)の温度および湿度の影響を受けることを抑制可能な形状であると好ましい。具体的には、隔離部材111は、領域A内の気体と領域A外の気体の行き来を許す開口として磁気記録再生装置を機能させる上で必要な開口のみを有したボックス状のものであると好ましい。上記開口としては、例えば、ドライブ信号等の信号の伝達用配線等を領域Aおよび領域Bにまたがって配置させるために要する開口(図示せず)、駆動部140と磁気テープカートリッジ内に配置されたリール7(図6参照)および巻き取りリール80との係合のために要する開口(図示せず)、および磁気テープカートリッジを出し入れ可能とする開口等が挙げられる。
【0023】
上記領域Aは、その湿度をより効率的に所望の範囲(20〜60%RH)の値に均一化でき、かつ、吸収性樹脂の使用量を低減できるという理由から、可能なかぎり小さいと好ましい。
【0024】
尚、領域Aの湿度が20%RHよりも低いと、エラーレートの増大に伴う記録容量の低下の程度が大きくなる。一方、領域Aの湿度が60%RHよりも高いと、磁気ヘッドのテープ摺動面の摩擦係数が高くなることで、磁気テープの摺動スピードを一定に保つことが困難になる。よって、磁気ヘッドは、磁気テープから正常に情報を読み出すことができず、エラーレートが増大する。
【0025】
上記領域Aには、上記磁気テープカートリッジ収容部90、移送機構、アクチュエータ30、および磁気ヘッド30以外に、磁気記録再生装置の稼動中に周囲の温度および/または湿度を変化させるほどには発熱しない、例えば、温湿度センサー等がさらに配置されていてもよい。
【0026】
隔離部材111の材料については、領域Aと領域Bとの気体の積極的な流通を阻害可能とするものであれば特に制限はなく、例えば、筐体110と同じ材料であってもよい。
【0027】
調湿部材40は、例えば、所定量の水分を含んだ吸水性樹脂と、当該吸水性樹脂を収容した容器とを含む。
【0028】
調湿部材40を構成する容器の材料は、所定量の水分を含んだ吸水性樹脂による調湿が十分に行える限り、特に制限はない。例えば、コンパクトかつ取り扱いが簡便で、粉末状の吸水性樹脂が飛散しない程度の目開きを有する、不織布若しくは織布、または透湿性のフィルム等が好ましい。
【0029】
また、調湿部材40は、吸水性樹脂を水に溶解させた溶液をフィルム状にキャストし、それを乾燥して得たものに、水分を含浸させたものであってもよい。
【0030】
所定量の水分を含んだ吸水性樹脂は、雰囲気の湿度が、第1の湿度以上になるとその雰囲気の水分を吸収し(「吸湿」とも言う。)、雰囲気の湿度が第1の湿度よりも低い第2の湿度以下になると、水分を雰囲気に放出する(「放湿」とも言う。)性質を有している。そのため、湿度変化に伴い、当該吸水性樹脂により吸湿、放湿が繰り返され、領域A内の湿度は所定範囲(20〜60%RH)内に保持される。よって、磁気ヘッド20の周囲の湿度についても上記所定範囲内に保持されることとなる。これにより、磁気ヘッド20の周囲の湿度が低くなり過ぎることが抑制され、その結果、磁気テープ50による磁気ヘッド20の研磨が良好に行われ、磁気ヘッド20の汚れに起因して生じるエラーレートの悪化が抑制される。
【0031】
磁気記録再生装置が稼動している時の、領域A内の温度は、通常、10℃〜60℃であり、好ましくは、20℃〜50℃である。この温度範囲における、磁気ヘッド20の周囲の湿度は、磁気テープ50による磁気ヘッド20の良好な研磨およびエラーレートの悪化の抑制等を考慮すると、20〜60%RHであることが望ましいが、同様の理由により30〜55%RHであると好ましい。したがって、所定量の水分を含んだ吸水性樹脂による吸湿が起こる第1の湿度は、例えば55%RHより高く、かつ60%RH以下の湿度であると好ましく、当該吸水性樹脂による放湿が起こる第2の湿度は30%RHよりも低くかつ20%RH以上の湿度であるとより好ましい。
【0032】
なお、磁気記録再生装置の稼動中、領域A内では、巻き取りリール80が回転し、磁気テープ50が走行しているので、巻き取りリール80および磁気テープ50の周囲の気体は、比較的速く流動している。よって、例えば、図1に示されるように、1つ以上の調湿部材40を、領域A内の磁気ヘッド20に比較的近い位置に配置しても、領域A内の磁気ヘッド20から比較的離れた箇所の湿度も、磁気ヘッド20の周囲の湿度に徐々に等しくなり、領域A内の湿度は、ほぼ均一になる。
【0033】
したがって、調湿部材40の配置位置は、領域A内であれば特に制限はない。調湿部材40は、例えば、磁気ヘッド20の近くに固定されていてもよいが、領域A内の磁気ヘッド20から離れた場所に配置されてもよい。具体的には、図3に示されるように、調湿部材40は、例えば、アクチュエータ30の底面上および/又は上面上に固定されてもよい。または、図4Aおよび図4Bに示されるように、調湿部材400は、移送機構を構成する巻き取りリール80に固定されていてもよい。また、調湿部材は、固定対象に対して着脱可能であってもよい。
【0034】
巻き取りリール80は、磁気テープが巻かれうる軸部50aと、相互に離間して軸部50aの両端部に固定された、1対の円盤状のフランジ50b,50cとを有するが、調湿部材40は、各フランジ50b,50cの相互に対向する面51b,51c、またはその反対面52b,52cに各々固定されていてもよい。
【0035】
吸水性樹脂としては、特に制限はなく、従来公知の吸水性樹脂が用いられる。吸水性樹脂としては、具体的には下記(1)〜(6)等が挙げられる。
【0036】
(1)デンプン又はセルロース等の多糖類(イ−1)及び/または単糖類(イ−2)と、水溶性単量体及び/または加水分解により水溶性となる単量体から選ばれる1種以上の単量体(ロ)と、架橋剤(ハ)とを重合させて得られた重合体を必要に応じて加水分解を行うことにより得られる吸水性樹脂。
【0037】
多糖類(イ−1)としては、ショ糖、セルロース、CMC、デンプン等が挙げられる。単糖類(イ−2)としては、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、ジペンタエリスリトール、グルコース、フルクトース等が挙げられる。
【0038】
単量体(ロ)としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、若しくはリン酸基を有するラジカル重合性水溶性単量体若しくはそれらの塩、または、酸基、アミド基、3級アミノ基、若しくは第4級アンモニウム塩基を有するラジカル重合性水溶性単量体等が挙げられる。
【0039】
カルボキシル基を有するラジカル重合性水溶性単量体としては、例えば、不飽和モノまたはポリ(2価〜6価)カルボン酸が挙げられ、より具体的には、(メタ)アクリル酸(アクリル酸及び/又はメタクリル酸をいう。以下同様の記載を用いる。)、マレイン酸、マレイン酸モノアルキル(炭素数1〜9)エステル、フマル酸、フマル酸モノアルキル(炭素数1〜9)エステル、クロトン酸、ソルビン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキル(炭素数1〜9)エステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、ケイ皮酸、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキル(炭素数1〜9)エステル、またはこれらの無水物(例えば、無水マレイン酸)等が挙げられる。
【0040】
スルホン酸基を有するラジカル重合性水溶性単量体としては、例えば、脂肪族又は芳香族ビニルスルホン酸(ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸等)、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、(メタ)アクリルアルキルスルホン酸[(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等)]等が挙げられる。
【0041】
リン酸基を有するラジカル重合性水溶性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルリン酸モノエステル[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、フェニル−2−アクリロイルロキシエチルホスフェート等]等が挙げられる。
【0042】
上記カルボキシル基、スルホン酸基、またはリン酸基を含有するラジカル重合性水溶性単量体の塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アミン塩もしくはアンモニウム塩等が挙げられる。
【0043】
アミド基を有するラジカル重合性水溶性単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。3級アミノ基を有するラジカル重合性水溶性単量体としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。第4級アンモニウム塩基を有するラジカル重合性水溶性単量体としては、例えば、上記3級アミノ基含有モノマーの4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等が挙げられる。
【0044】
単量体(ロ)としては、上記以外に、例えば、エポキシ基含有モノマー[例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等]、その他モノマー[4−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン等]等が挙げられる。
【0045】
上記単量体(ロ)は、2種以上併用してもよい。これらの単量体(ロ)内で好ましい単量体(ロ)は、カルボキシル基を有するラジカル重合性水溶性単量体及びその塩であり、より好ましくは不飽和モノ又はポリカルボン酸及びその塩であり、特に好ましくは(メタ)アクリル酸及びその塩である。
【0046】
架橋剤(ハ)としては、例えば、ラジカル重合性不飽和基を2個以上有する架橋剤、ラジカル重合性不飽和基と反応性官能基とを有する架橋剤、反応性官能基を2個以上有する架橋剤等が挙げられる。
【0047】
ラジカル重合性不飽和基を2個以上有する化合物(架橋剤)の具体例としては、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ又はトリ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタン、またはペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられる。
【0048】
ラジカル重合性不飽和基と反応性官能基とを有する架橋剤としては、多糖類(イ−1)、単糖類(イ−2)又は単量体(ロ)の官能基と反応し得る官能基を少なくとも1個有し、且つ少なくとも1個のラジカル重合性不飽和基を有する化合物[例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド及びグリシジル(メタ)アクリレート等]が挙げられる。
【0049】
反応性官能基を2個以上有する架橋剤としては、多糖類(イ−1)、単糖類(イ−2)又は単量体(ロ)の官能基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物[多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール及びトリメチロールプロパン等)、アルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミン等)、及びポリアミン(例えば、ポリエチレンイミン等)等]が挙げられる。
【0050】
これらの架橋剤は、2種類以上を併用してもよい。これらの架橋剤うち、好ましくは、ラジカル重合性不飽和基を2個以上有する共重合性の架橋剤であり、更に好ましくはN,N'−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラアリロキシエタン、ペンタエリスルトールトリアリルエーテル、またはトリアリルアミンである。
【0051】
多糖類(イ−1)、単糖類(イ−2)、単量体(ロ)及び架橋剤(ハ)の割合、吸水性樹脂の製造法は特に限定されない。吸水性樹脂の具体例としては、例えば、特開昭52−25886号、特公昭53−46199号、特公昭53−46200号、または特公昭55−21041号公報に記載のものが挙げられる。
【0052】
(2)上記多糖類(イ−1)及び/又は単糖類(イ−2)と、単量体(ロ)とを重合させて得られたもの(デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、セルロース−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物等)。
【0053】
(3)上記多糖類(イ−1)及び/又は単糖類(イ−2)の架橋物(カルボキシメチルセルロースの架橋物等)。
【0054】
(4)上記単量体(ロ)と架橋剤(ハ)との共重合体(架橋されたポリアクリルアミド及びその部分加水分解物、架橋されたアクリル酸−アクリルアミド共重合体、架橋されたポリスルホン酸塩(架橋されたスルホン化ポリスチレン等)、架橋されたポリアクリル酸塩/ポリスルホン酸塩共重合体、ビニルエステル(炭素数2〜6のカルボン酸とのエステル;酢酸ビニル等)−不飽和カルボン酸共重合体ケン化物(特開昭52−14689号及び特開昭52−27455号公報に記載されているもの等)、架橋されたポリアクリル酸(塩)、および、架橋されたアクリル酸−アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜4;メチルエステル、エチルエステル又はブチルエステル等)共重合体等、架橋されたイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、架橋されたポリビニルピロリドン、及び架橋されたカルボン酸変性ポリビニルアルコール)。
【0055】
(5)自己架橋性を有する上記単量体(ロ)の重合体(自己架橋型ポリアクリル酸塩等)
【0056】
(6)アミノ酸を単量体としてポリペプチド化した重合体、その架橋体、またはそれらの塩。例えば、ポリグルタミン酸、その架橋体、及びそれらの塩など。
【0057】
以上例示した(1)〜(6)の吸水性樹脂は2種以上併用してもよい。なかでも、架橋度をコントロールしやすく、入手が容易な、架橋されたアクリル酸系重合体および/またはその塩(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム部分架橋体)が好ましい。なお、アクリル酸残基が50モル%以上含まれていれば、架橋されたアクリル酸系重合体および/またはその塩に該当するものとする。
【0058】
吸水性樹脂が中和塩である場合、その塩の種類及び中和度については特に限定はないが、塩の種類としては、好ましくは、アルカリ金属塩、より好ましくはナトリウム塩またはカリウム塩である。酸基(スルホ基、ホスホノ基またはカルボキシル基等の水中で酸性を示す官能基)に対する中和度は、酸基のモル数に対して、好ましくは50〜90モル%であり、より好ましくは60〜80モル%である。
【0059】
吸水性樹脂が、架橋されたアクリル酸系重合体および/またはその塩である場合、吸水性樹脂の合成に用いられる架橋剤の使用量は、水溶性単量体と架橋剤の合計質量を100質量%とすると、好ましくは0.001〜5質量%であると好ましい。架橋剤の量が、0.001〜5質量%であると、吸水・保水能力の大きく、吸収速度が大きい吸水性樹脂を生産性よく得られる。同様の理由から、架橋剤の使用量は、より好ましくは0.05〜2質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。
【0060】
重合体の乾燥や粉砕については、例えば、以下の通り行う。重合体を水溶液重合により得る場合は、例えば、重合により得られた含水ゲルを、ミートチョッパーやカッター式の粗砕機である程度細分化またはヌードル化し、必要に応じて、含水ゲルにアルカリ金属塩水酸化物を添加して、含水ゲルの中和を行った後、透気乾燥や通気乾燥等の乾燥を行う。乾燥方法は、透気乾燥が短時間で効率的な乾燥が行えるので好ましい。
【0061】
重合体を逆相懸濁重合により得る場合は、重合により得られた含水ゲルと有機溶媒をデカンテーション等の方法で固液分離した後、減圧乾燥(減圧度;100〜50,000Pa程度)または通気乾燥等により乾燥させる。
【0062】
重合体を水溶液重合により得る場合の乾燥方法としては、例えば、特公平8−28216号公報に記載のドラムドライヤー上で、薄膜状の含水ゲルを乾燥する、接触乾燥法等が挙げられる。乾燥温度は、使用する乾燥機や乾燥時間等により種々異なるが、好ましくは50〜150℃、より好ましくは80〜130℃である。乾燥時間も、使用する乾燥機の機種及び乾燥温度等により異なるが、好ましくは5〜300分、より好ましくは、5〜120分である。
【0063】
このようにして得られた架橋重合体の乾燥物は、粉砕により粉末化される。粉砕方法は、通常の方法でよく、例えば、衝撃粉砕機(ピンミル、カッターミル、スキレルミル、ACMパルペライザー等)を用いた粉砕や、空気粉砕(ジェット粉砕機等)で行える。
【0064】
乾燥粉末は、必要に応じて、所望のスクリーンを備えた篩い機(振動篩い機、遠心篩い機等)を用いて、所望の範囲の粒径の粉末とそれ以外とに振るい分けられる。
【0065】
このようにして得られる吸水性樹脂(乾燥状態)の平均粒子径は、吸水時にダマ(いわゆる「ママコ」)になりにくく、均一性よく吸水/保水できるという理由から、好ましくは100〜850μmであり、より好ましくは100〜700μmである。
【0066】
ここで「乾燥状態」とは、吸水させていない状態の吸水性高分子について、70℃で6時間減圧(圧力1Pa以下)乾燥させた直後の状態をいう。
【0067】
平均粒子径は、粉砕及び篩いによりコントロールできる。また、重合体を逆相懸濁重合により得る場合は、重合条件によりコントロールすることもできる。平均粒子径は、試料を50倍の光学顕微鏡で写真撮影し、各粒子の最大直径を各々の粒子の粒子径としてもとめ、100の粒子の粒子径を平均することにより得ることができる。
【0068】
乾燥状態にある吸水性樹脂の限界吸水量は、20℃の雰囲気下において、好ましくは100〜5000g/gであり、より好ましくは400〜1200g/gである。限界吸水量が100g/g以上であると、磁気ヘッド2の周囲の吸湿が容易に行える。また、限界吸水量が5000g/gを越える吸水性樹脂は、その平均粒子径が小さいため、吸湿後に凝集して再吸湿性が悪くなる。限界吸水量は、上記の吸水性樹脂の製造条件等によりコントロールできる。
【0069】
限界吸水量とは、乾燥状態にある吸水性樹脂1gが吸水できる水の重量をいい、下記のようにして測定される値である。
【0070】
乾燥状態にある吸水性樹脂の粉末0.02gを不織布製の袋(60mm×80mm)に均一に入れ、25℃に調温した500mlのイオン交換水(電気伝導度5μS/cm以下)に浸漬する。次いで、24時間後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250Gで3分間水切りを行った後、吸水した吸水性樹脂と不織布製の袋の合計重量W2(g)を測定する。同様の操作を、不織布製の袋(60mm×80mm)の中に吸水性樹脂をいれずに行い、水切り後の不織布製の袋の重量W1(g)を測定する。これら重量W1、W2を用いて、下記式から限界吸水量(g/g)が算出される。なお、この値は、ばらつきがあるので5回測定して得た値を範囲で表す。
限界吸水量(g/g)=(W2−W1−乾燥状態にある吸水性樹脂の重量)/0.02
【0071】
乾燥状態にある吸水性樹脂は、所定量の水分を含有させた場合に、高い放湿性能が得られ、かつ、取り扱い性も良好であるという理由から、その吸湿性、すなわち、30℃、80%RHの環境下に24hr放置したときの吸水量が、吸水性樹脂1g(乾燥重量)当り0.2g〜5gであると好ましく、0.5〜2gであるとより好ましい。ここで、乾燥重量とは、積極的に吸水させていない状態の吸水性高分子の、70℃で6時間減圧(圧力1Pa以下)乾燥させた直後の重量のことである。
【0072】
また、上記のようにして、30℃、80%RHの環境下に24hr放置して吸湿(吸水)させた吸水性樹脂を、20℃、10%RHの環境下に24hr放置したときの放湿率は、45〜100%であると好ましい。この場合、低湿環境下でも、領域A内の調湿が良好に行えるので好ましい。ここで、放湿率とは、下式で定義される値である。
放湿率(%)=(a−b)/(a−c)×100
a:30℃、80%RHの環境下に24hr放置したときの吸水性樹脂の重量
b:20℃、10%RHの環境下に24hr放置したときの吸水性樹脂の重量
c:吸水性樹脂の乾燥重量
【0073】
吸水性樹脂に水分を含有させる方法としては、吸水性樹脂を高湿度の環境下に所定時間放置する方法が好ましい。例えば、20〜60℃、70〜90%RHの環境下に、吸水性樹脂を6〜72hr保存すると好ましい。吸水性樹脂の種類によって若干異なるが、この方法により、吸水性樹脂1g(乾燥重量)当たり0.2〜5g程度の水分を含有させることができる。この場合、高い放湿性能を有し、取り扱い性も良好な、所定量の水分を含んだ吸水性高分子を得ることができる。
【0074】
限界吸水量、吸湿性、放湿率が上記範囲の吸水性樹脂の使用量(総乾燥重量)は、領域A内の調湿が良好に行われ、かつ、吸水性樹脂の過剰供給によるコストおよび占有空間の増大を抑制する観点から、領域A100cm3当たり0.10g〜5.00gであると好ましく、1.50g〜5.00gであるとより好ましい。なお、図1に示されるように、領域A内に2つ以上の調湿部材40が配置される場合は、各調湿部材40に含まれる吸水性樹脂の乾燥重量の総和(総乾燥重量)が、領域A100cm3当たり0.10g〜5.00gであると好ましく、1.50g〜5.00gであるとより好ましい。なお、領域A内の各部品により占有されていない部分に存在する空気の量は、通常、0.8×103〜3×103cm3である。
【0075】
また、本発明の磁気記録再生装置の一例により情報が記録再生される磁気テープを含む磁気テープカートリッジ内にも、上記調湿部材が配置されていると好ましい。以下に図5〜図7を用いて本発明の磁気テープカートリッジの一例を説明する。
【0076】
図5は、本実施形態のカートリッジの一例の斜視図であり、図6は図5に示したカートリッジのII−II'断面図である。図7は、図5の第1容器の内部の状態を示した平面図である。
【0077】
尚、図5および図6では、説明の都合上、第1容器2aが第2容器2bの下に配置されているが、通常の使用では、第1容器2aが第2容器2bよりも上となるように使用される。
【0078】
図5および図6に示す本実施形態のカートリッジ1は、ケース2と、ケース2内に収納された磁気テープ6とを備えている。ケース2は、第1容器2aと第2容器2bとが、内部空間を形成するように互いに合わされ、ビス等により締結されて形成されている。磁気テープ6は、ケース2内に回動可能に収容されたリール7に巻き付けられており、リール7から繰り出して、ケース2の開口(図示せず)からケース2外へ引き出すことが可能である。磁気テープ6の繰り出し端には、金属製の先導体(図示せず)が固定されており、テープカートリッジを磁気記録再生装置のドライブに装填すると、先導体は、ドライブの連結具によって捕捉される。
【0079】
ケース2内において、リール7は、軸27を介して作用する圧縮コイルバネ28等のバネ状弾性体により、図6において上方に押圧付勢されている。これにより、不使用時にリール7が遊転することが防止されている。尚、第1容器2aの底部のほぼ中央には、その外径が圧縮コイルバネ28の内径よりも小さいガイド突起19が設けられている。このガイド突起19が圧縮コイルバネ28の内腔内に挿入されることにより、圧縮コイルバネ28の位置ずれが抑制されている。
【0080】
リール7は、磁気テープ6が巻かれたハブ部7aと、ハブ部7aに一体成形された円盤状の第1フランジ7bと、ハブ部7aに溶着固定された第2フランジ7cとを有する。ハブ部7aは空洞を有した略有底円筒形状をしている。ハブ部7aの底部の外表面には、磁気記録再生装置のドライブの駆動部140(図2参照)を構成する駆動軸のギア歯と係合可能な係合ギア歯7dが形成されている。ハブ部7aの底部の外表面は、第2容器2bの底部の開口部からケース2外に露出されており、この開口部からケース2内に挿入されるドライブの駆動軸のギア歯に、係合ギア歯7dが係合された状態で、リール7は回転する。リール7が回転すると、テープ6がリール7に巻き取られ、またはリール7から繰り出される。
【0081】
図6に示されるように、本実施形態の磁気テープカートリッジ1は、ケース2内に配置された調湿部材40を備えているので、例えば、磁気テープカートリッジ1の長期保管中には、保管環境の湿度変化に伴い、調湿部材40により吸湿、放湿が繰り返され、ケース2内の湿度は所定範囲(20〜60%RH)内に保持される。このため、本実施形態の磁気テープカートリッジ1は、ケース2内の湿度変化に伴う磁気テープ6の劣化、例えば、幅方向の寸法変化が抑制されており、信頼性が高い。磁気テープの幅方向の寸法変化が少なくなると、トラックズレによるエラーレートの増大を防ぐことができる。また、磁気テープカートリッジ内の磁気テープが、湿度20〜60%RHの雰囲気下で保管されるので、当該磁気テープと本発明の磁気記録再生装置を構成する磁気ヘッド20(図1および図2参照)との接触により、磁気ヘッド20に付着した汚れの除去が良好に行われ、磁気ヘッド2の汚れに起因して生じるエラーレートの悪化がより効果的に抑制されることが期待できる。なお、磁気テープカートリッジ内の磁気テープが保管される雰囲気の温度は通常、20℃〜30℃である。
【0082】
磁気テープカートリッジ1における吸水性樹脂の使用量(乾燥重量)は、吸水性樹脂の種類、磁気テープカートリッジ1の使用環境、ケースの構造、およびケース2内の空間部分の容積等によって異なるが、ケース2内の調湿が良好に行われ、かつ、吸水性樹脂の過剰供給によるコストおよび占有空間の増大を抑制する観点から、ケース内の空間100cm3あたり0.10g〜5.00gであると好ましく、1.50g〜5.00gであるとより好ましい。なお、ケース2内の各部品により占有されていない部分の総容積、すなわち、ケース2内の空気の量は、通常、20〜100cm3である。
【0083】
調湿部材40の形態については、磁気記録再生装置の筐体内に配置される調湿部材と同様であってもよい。図6に示されるように、調湿部材40は、例えば、リールのハブ部7aの内面に貼り付けられることにより上記ハブ部7aの空洞内に配置されてもよいし、図7に示されるように、ケースの内面(例えば、ケース内部を平面視した場合のケースの隅等)に貼り付け等により固定されてもよい。
【実施例】
【0084】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
(実施例1)
厚さ6μmのポリエステルフイルムの一方の主面上に、まず、カーボンブラックと針状酸化鉄粉末と結合剤樹脂とを含む非磁性塗料、磁性粉末(平均粒子径60nm、保持力Hc=149.6kA/m(1880Oe))とアルミナ粉末(平均粒子径0.2μm)と結合剤樹脂とを含む磁性塗料をこの順に塗布し、乾燥処理及びカレンダ処理を行って、厚さ1.4μmの非磁性層と厚さ0.15μmの磁性層を形成した。
【0086】
次に、ポリエステルフイルムの他方の主面に、カーボンブラックと粒状酸化鉄粉末と結合剤樹脂とを含むカーボン塗料を塗布し、乾燥処理及びカレンダ処理を行って、厚さ0.6μmのバックコート層を形成した(ジャンボロール)。その後、ジャンボロールを1/2インチ幅に裁断してパンケーキを形成し、磁性層にサーボライターを用いてサーボ信号を記録して、LTOカートリッジ用の磁気テープを作製した。この磁気テープをLTOカートリッジ用のケース内に組み込み、評価用磁気テープカートリッジとした。
【0087】
LTOドライブ(日本ヒューレットパッカード社製Ultrium960ドライブ)の領域A(領域A内の空間の容積(空気の容積):1700cm3)の内壁面(図1参照)に、6個の調湿部材40を取り付け、領域A内に配置されたアクチュエータの側面(図1参照)に2個の調湿部材40を取り付け、本発明の磁気記録再生装置を作製した。各調湿部材40は、吸水性樹脂と、吸収性樹脂を収納した不織布とからなる。
【0088】
調湿部材は、乾燥状態の吸水性樹脂が封入された不織布袋を、30℃、80%RHの環境下に24時間放置して、吸水性樹脂10g(乾燥重量)当たりに7.5g(吸水性樹脂1g(乾燥重量)当たりに0.75g)の水分を吸水させることにより得た。上記吸水性樹脂(乾燥状態)には、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物(スミカゲルN−100、住友化学(株)製、限界吸水量400〜1200g/g、平均粒子径300μm)を、70℃で6hr減圧(1Pa以下)乾燥して得たものを用いた。8個の調湿部材40に含まれる吸水性樹脂の総乾燥重量は80gである。不織布には、日本バイリーン(株)社製、4000CRを用いた。なお、吸水後の吸水性樹脂を20℃、10%RHの環境下に放置して吸水性樹脂の放湿率を評価したところ、90%であった。
【0089】
(実施例2〜5)
表1に示したように、磁気記録再生装置内に設置する吸水性樹脂の重量(乾燥重量)を変えたこと以外は、実施例1と同様にして磁気記録再生装置を作成した。
【0090】
(比較例1〜2)
表1に示したように、磁気記録再生装置内に設置する吸水性樹脂の重量(乾燥重量)を変えたこと以外は、実施例1と同様にして磁気記録再生装置を作成した。
【0091】
(比較例3)
吸水性樹脂に代えて、市販のシリカゲル(豊田化工(株)社製、Bタイプ品)を、70℃で6hr減圧乾燥して得たもの10g(乾燥重量)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして磁気記録再生装置を作製した。なお、当該シリカゲルが収納された不織布袋についても、LTOドライブに取り付ける前に、30℃、80%RHの環境下に1日放置して、シリカゲル10g当たりに7.2gの水分を吸水させた。
【0092】
<耐久走行試験および耐久性の評価>
実施例1〜5および比較例1〜3の磁気記録再生装置内に、各々、上記評価用磁気テープカートリッジを装填して、相対湿度10%RH、温度45℃の室内環境下で、磁気テープの全長を繰り返し往復走行させることにより、評価用磁気テープの耐久走行試験を行った。磁気テープにおけるデータ記録可能領域の全てにデータを書き込み、その後、磁気テープに書き込んだデータを読み出すことを1サイクルとして、100サイクルの走行を行った。サイクル毎に、エラーレートの増大に伴う記録容量の低下の推移を求めた。使用できる領域の容量(記録容量)の低下量により磁気テープの耐久性を評価した。その評価結果を表1に示した。表1において、記録容量の低下量が0の場合を「○」、記録容量の低下量が10%未満の場合を「△」、記録容量の低下量が10%以上の場合を「×」とした。
【0093】
なお、各サイクルの初めに、磁気ヘッドの周囲(図8参照)に取り付けた温湿度センサー(ティアンドデイ(株)製、TR−7Uシリーズ)により磁気ヘッド20の周囲の湿度を測定した。図8に示すように、湿度センサーのプローブ170の先端と磁気ヘッドとの距離Lは2cmとした。また、耐久走行試験中の磁気記録再生装置内の領域Aの温度は48〜50℃であった。
【0094】
表1に示されるように、吸収性樹脂を含む調湿部材を有することにより、領域A内の湿度が20〜60%RHに保たれた実施例1〜5の磁気記録再生装置では、磁気ヘッドの周囲の湿度が20%RHよりも低い比較例1〜3の磁気記録再生装置よりも、エラーレートの増大が抑制されていることが確認できた。なお、吸水性樹脂に代えてシリカゲルを用いた比較例6の磁気記録再生装置では、吸水量については、実施例3のそれと同等であるものの、放湿速度が早いため、早い段階で放湿し切って調湿部材による湿度保持効果がなくなっている。そのため、エラーレートが増加し、容量が著しく低下しているものと考えられる。
【0095】
(実施例6)
評価用磁気テープカートリッジ(ケース内の空間の容積(空気の容積):約33cm3)のリールのハブ部の内側に調湿部材(ただし、吸水性樹脂は乾燥状態にある。)を取り付け、本発明の磁気テープカートリッジを作製した。調湿部材を構成する吸水性樹脂には、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物(スミカゲルN−100、住友化学(株)製、限界吸水量400〜1200g/g、平均粒子径300μm)を、70℃で6hr減圧(圧力1Pa以下)乾燥して得たものを用いた。調湿部材に含まれる吸水性樹脂の総乾燥重量は1.65g(乾燥重量)である。吸水性樹脂収納用の不織布には、日本バイリーン(株)社製、4000CRを用いた。
【0096】
(実施例7〜10)
表2に示したように、評価用磁気テープカートリッジ内部に設置する吸水性樹脂の重量(乾燥重量)を変えたこと以外は、実施例6と同様にして評価用磁気テープカートリッジを作製した。
【0097】
(比較例4〜5)
表2に示したように、評価用磁気テープカートリッジ内部に設置する吸水性樹脂の重量(乾燥重量)を変えたこと以外は、実施例6と同様にして評価用磁気テープカートリッジを作製した。
【0098】
(比較例6)
吸水性樹脂に代えて、市販のシリカゲル(豊田化工(株)社製、Bタイプ品)を、70℃で6hr減圧(圧力1Pa以下)乾燥して得たもの0.2g(乾燥重量)用いたこと以外は、実施例6と同様にして評価用磁気テープカートリッジを作製した。
【0099】
<環境サイクル試験>
実施例6〜10および比較例4〜6の磁気テープカートリッジを、各々30℃、80%RHの環境(A環境)のチャンバー内に24時間放置し(1サイクル目前半)、次いで、20℃、10%RHの環境(B環境)のチャンバー内に24時間放置し(1サイクル目後半)、これを繰り返し行った。カートリッジ内部に設置した湿度センサーにより、各環境放置後に、評価用磁気テープカートリッジ内部の湿度を測定し、表2に示した。図7に示すように、温湿度センサー(ティアンドデイ(株)製TR−7Uシリーズ)のプローブの先端は、カートリッジのテープ引き出し口近傍の空間に設置した。プローブの先端の位置は図7において、×印で示している。
【0100】
尚、環境サイクル試験用の実施例6〜10および比較例4〜6の磁気テープカートリッジは、各々2巻づつ用意し、うち1巻については、1サイクル目前半のA環境放置後に吸水性樹脂の重量を測定し、吸水量を求めた。残りの1巻について、5サイクル目後半のB環境放置後に吸水性樹脂の重量を測定し、吸水量を求めた。
【0101】
表2に示されるように、実施例6〜10の評価用磁気テープカートリッジでは、そのケース内の湿度が20〜60%RHに保持されているので、本発明の磁気記録再生装置を用いた磁気テープへの情報の記録および再生において、エラーレートのさらなる低下が期待できる。シリカゲルを用いた比較例6の磁気テープカートリッジでは、吸湿・放湿速度が、同量の吸水性樹脂を用いた実施例8の磁気テープカートリッジに比較して速く、早い段階で放湿し切って湿度保持効果がなくなっている。そのため、比較例6の磁気テープカートリッジ内の湿度は外部環境のそれに近い値となっている。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、磁気ヘッドの周囲の湿度を所定範囲内に保持可能であるので、特に、高密度記録が行われる磁気記録再生装置の分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1は、本発明の磁気記録再生装置の一例の内部構成を示す平面概略図
【図2】図2は、図1に示した磁気記録再生装置のI-I'断面概略図
【図3】図3は、本発明の磁気記録再生装置の他の一例を説明する部分概略図
【図4】図4AおよびBは、本発明の磁気記録再生装置の一例を構成する巻き取りリールの一例の斜視概略図
【図5】図5は、本発明の磁気テープカートリッジの一例の斜視概略図
【図6】図6は、図5のII-II'断面概略図
【図7】図7は、図5の磁気テープカートリッジを構成する第1容器の内部の状態を示した平面概略
【図8】図8は、磁気ヘッドの周囲の湿度を測定する様子を説明する概略図
【符号の説明】
【0106】
100 磁気記録再生装置
110 筐体
111 隔離部材
90 カートリッジ収納部
80 巻き取りリール
60 テープガイド
50 磁気テープ
40 調湿部材
30 アクチュエータ
20 磁気ヘッド
1 磁気テープカートリッジ
2 ケース
6 磁気テープ
7 リール
7a ハブ部
7b 第1フランジ
7c 第2フランジ
A 領域A
B 領域B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気テープカートリッジの磁気テープに情報を記録および再生可能とする磁気記録再生装置であって、
筐体と、
前記磁気テープカートリッジを収納しうる磁気テープカートリッジ収容部と、
前記磁気テープを移送させうる移送機構と、
前記磁気テープへの情報の記録および再生を行いうる磁気ヘッドと、
所定量の水分を含んだ吸水性樹脂を含む、1つ以上の調湿部材とを含み、
前記筐体内において、前記磁気テープカートリッジ収容部、前記移送機構、および前記磁気ヘッドが配置された領域Aと、残余の領域Bとが、隔離部材により隔たれており、
前記調湿部材は、前記領域A内に配置され、前記吸水性樹脂は、その限界吸水量が100g/g以上であり、前記吸水性樹脂の総乾燥重量が、前記領域A内の空間100cm3あたり0.10g〜5.00gである、磁気記録再生装置。
【請求項2】
磁気テープカートリッジの磁気テープに情報を記録および再生可能とする磁気記録再生装置であって、
筐体と、
前記磁気テープカートリッジを収納しうる磁気テープカートリッジ収容部と、
前記磁気テープを移送させうる移送機構と、
前記磁気テープへの情報の記録および再生を行いうる磁気ヘッドと、
所定量の水分を含んだ吸水性樹脂を含む、1つ以上の調湿部材とを含み、
前記筐体内において、前記磁気テープカートリッジ収容部、前記移送機構、および前記磁気ヘッドが配置された領域Aと、残余の領域Bとが、隔離部材により隔たれており、
前記調湿部材が、前記領域A内に配置されることにより、前記領域A内の湿度が20〜60%RHに保たれている磁気記録再生装置。
【請求項3】
前記吸水性樹脂が、架橋したアクリル酸系重合体および/またはその塩を含む請求項1または2に記載の磁気記録再生装置。
【請求項4】
前記移送機構は、前記磁気テープカートリッジ収容部から移送される前記磁気テープを巻き取りうる巻き取りリールを含み、
前記巻き取りリールは、
前記磁気テープが巻かれうる軸部と、
前記軸部に固定され相互に離間して配置された1対の円盤状のフランジとを含み、
前記調湿部材が、各フランジの相互に向かい合う面、またはその反対面に各々固定された請求項1〜3のいずれかの項に記載の磁気記録再生装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの項に記載の磁気記録再生装置により情報が記録および再生されうる磁気テープを含む磁気テープカートリッジであって、
ケースと、
前記ケース内に配置された前記磁気テープと、
前記磁気テープが巻回されたハブ部を含むリールと、
所定量の水分を含んだ吸水性樹脂を含む1つ以上の調湿部材と、を含み、
前記ケース内の湿度が20〜60%RHに保たれている磁気テープカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−146664(P2010−146664A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324319(P2008−324319)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】