説明

磁気記録媒体の抗磁力判定方法

【課題】磁気ヘッド・磁気記録媒体の特性や記録電流値のばらつきによる影響を受けにくく、磁気記録媒体の抗磁力を判定することができる磁気記録媒体の抗磁力判定方法を提供することにある。
【解決手段】低抗磁力の磁気媒体又は高抗磁力の磁気媒体に形成される磁気情報を磁気ヘッドにより記録するための磁気記録媒体の抗磁力判定方法であって、低抗磁力の磁気媒体の書き込みに適した第一の記録電流値、及び、高抗磁力の磁気媒体の書き込みに適した第二の記録電流値を交互に使用して磁気記録媒体に磁気情報を書き込む磁気情報記録ステップ(ステップS5)と、磁気記録媒体に書き込まれた磁気情報を再生する磁気情報再生ステップ(ステップS6)と、第一の記録電流値で書き込まれた磁気情報の第一の再生出力Aと、第二の記録電流値で書き込まれた磁気情報の第二の再生出力Bとを比較して、磁気記録媒体の抗磁力を判定する判定ステップ(ステップS7)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体の抗磁力判定方法に関し、磁気記録媒体の異なる抗磁力を判定する機能を有する磁気カードリーダ等の媒体処理装置に好適な磁気記録媒体の抗磁力判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、媒体処理装置は、磁気ヘッドが磁気カードまたは通帳などの磁気記録媒体に設けられた磁気ストライプ等の磁気記録部に当接し、磁気ヘッドを相対移動させて、磁気記録部に記録されている磁気情報の書き込み・読み取り(記録・再生)を行っている。近年、このような磁気記録媒体の媒体処理装置において、磁気カード等の磁気記録媒体(以下、「磁気カード」という)は、その磁気ストライプ等の磁気記録部の抗磁力の大きさについて異なるものが規格化されている。例えば、磁気記録部が、従来から規格化されていた低抗磁力(例えば、300〜400Oe)を持つ磁気カード(以下、「低抗磁力の磁気カード」という)に加えて、高抗磁力(例えば、2750Oe)を持つ磁気カード(以下、「高抗磁力の磁気カード」という)が新たに規格化されている。ここで、高抗磁力の磁気カードは、磁気記録部が、より高い逆磁界(一般的に、2750Oe以上)を加えなければ磁化された磁気情報が零にならない磁性材料で成形されたものであり、低抗磁力の磁気カードは、磁気記録部が比較的低い逆磁界(一般的に、65Oe以下)を加えるだけでも磁化された磁気情報が零になる磁性材料で成形されたものである。
近年、磁気カードに記録された磁気情報の信頼性向上等を図るため、または、磁気カードの磁気記録部に記録される磁気情報保護の観点から、高抗磁力の磁気カードの使用が多くなってきているが、低抗磁力の磁気カードも広く普及しており、高抗磁力の磁気カードと低抗磁力の磁気カードとが混在して使用されている。
【0003】
一般に、低抗磁力または高抗磁力と抗磁力が異なる磁気カードを書き込みする場合、抗磁力に応じた適正な書き込み電流を設定しないと適正な再生出力が得ることができない。このため、磁気カードの抗磁力に応じて適正な書き込み電流を設定するためには、磁気カードが高抗磁力の磁気媒体か低抗磁力の磁気媒体かの判定を行う必要がある。抗磁力の判定行う抗磁力判定方法としては、例えば、カード挿入口より挿入された低抗磁力の磁気カード又は高抗磁力の磁気カードに形成された磁気情報を磁気ヘッドにより再生又は記録するようにした磁気カードの抗磁力判定方法であって、低抗磁力の磁気カードの磁気情報のみ消去可能な電流にて挿入された磁気カードの磁気情報を消去したのち、磁気カードの磁気情報を再生し、磁気情報が破壊状態である場合に挿入された磁気カードを低抗磁力の磁気カードと判定する。磁気情報の破壊状態は、予め定められた磁気カードに記録されているべき特定の磁気情報が認識されないことにより判定するようにした抗磁力判定方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−155816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の抗磁力判定方法では、磁気情報が破壊されたか否かを、一定出力値以上の残存出力ピーク数を数えることにより判定しているため、判定する出力レベル及び残存出力ピーク数によって判定結果が決まり、この判定出力レベル及び判定残存出力ピーク数の閾値の設定が、判定結果に大きく影響を及ぼすという問題があった。
【0006】
また、抗磁力の判定結果は、磁気ヘッドの飽和特性・再生出力によって決まるため、飽和特性・再生出力のばらつきの影響を受けやすいという問題があった。
【0007】
また、特許文献1に記載の抗磁力判定方法は、磁気情報の書き込みを行う高抗磁力用の記録電流値と、磁気情報の消去を行う低抗磁力用の電流値によって判定結果が決まるため、これらの電流値の設定及びばらつきが判定結果に影響を及ぼすという問題があった。
【0008】
近年は、低抗磁力の磁気カードの中でも比較的高い抗磁力の磁気カード(例えば、650Oe)を持つものも混在して使用されるようになってきたことから、低抗磁力用の電流値の設定が判定結果に大きく影響を及ぼすようになってきた。
【0009】
また、低抗磁力用の電流値でDC消去した後の再生出力は、磁気ヘッドの特性・記録電流値・磁気カードと磁気ヘッドとのスペーシング・磁気カードの特性等で変動しやすいという問題もあった。例えば、反った磁気カードが挿入された場合や磁気ストライプにゴミ等が付着している場合等には磁気ストライプと磁気ヘッドとの距離が通常よりも大きくなるため、磁束の変化が通常時とは異なり、その結果、磁気カードの抗磁力を誤って判定してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁気ヘッド・磁気記録媒体の特性や記録電流値のばらつきによる影響を受けにくく、磁気記録媒体の抗磁力を判定することができる磁気記録媒体の抗磁力判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のような課題を解決するために、本発明は、以下のものを提供する。
【0012】
(1) 低抗磁力の磁気媒体又は高抗磁力の磁気媒体に形成される磁気情報を磁気ヘッドにより記録するための磁気記録媒体の抗磁力判定方法であって、前記低抗磁力の磁気媒体の書き込みに適した第一の記録電流値、及び、前記高抗磁力の磁気媒体の書き込みに適した第二の記録電流値を交互に使用して前記磁気記録媒体に磁気情報を書き込む磁気情報記録ステップと、前記磁気記録媒体に書き込まれた磁気情報を再生する磁気情報再生ステップと、前記第一の記録電流値で書き込まれた磁気情報の第一の再生出力と、前記第二の記録電流値で書き込まれた磁気情報の第二の再生出力とを比較して、前記磁気記録媒体の抗磁力を判定する判定ステップと、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、低抗磁力の磁気媒体の書き込みに適した第一の記録電流値で書き込まれた磁気情報の第一の再生出力と、高抗磁力の磁気媒体の書き込みに適した第二の記録電流値で書き込まれた磁気情報の第二の再生出力とを比較することにより、再生出力差に基づいて磁気記録媒体が低抗磁力の磁気媒体であるか高抗磁力の磁気媒体であるかを判定することができる。
【0014】
従って、本発明に係る磁気記録媒体の抗磁力判定方法は、磁気ヘッドの再生出力のばらつきが判定結果に影響しにくいから、信頼性の高い判定結果を得ることができる。
【0015】
(2) 前記判定ステップは、前記第一の再生出力>前記第二の再生出力の場合に前記磁気記録媒体が低抗磁力の磁気媒体であると判定し、その他の場合に前記磁気記録媒体が高抗磁力の磁気媒体であると判定することを特徴とする磁気記録媒体の抗磁力判定方法。
【0016】
本発明によれば、識別が容易な低抗磁力の磁気媒体について、第一の再生出力>第二の再生出力の場合に磁気記録媒体が低抗磁力の磁気媒体であると判定することにより、磁気情報の再生出力差を判定不能の場合でも高抗磁力の磁気媒体であると識別することができるから、確実に判定結果を得ることができる。
【0017】
(3) 前記磁気情報記録ステップの前に、前記磁気記録媒体に書き込まれた磁気情報を再生して磁気情報の有無を確認する確認ステップを有することを特徴とする磁気記録媒体の抗磁力判定方法。
【0018】
本発明によれば、磁気記録媒体に磁気情報が書き込まれているか否かを事前に確認することができ、磁気情報の有無に応じて適切な処理ステップに移行することができる。例えば、磁気記録媒体に磁気情報が書き込まれていない場合には、そのまま磁気情報記録ステップに移行することができる。
【0019】
(4) 前記確認ステップにおいて、前記磁気記録媒体に磁気情報が書き込まれている場合に、前記高抗磁力の磁気媒体の磁気情報を消去可能な消去電流値にて該磁気情報を消去する消去ステップを備えたことを特徴とする磁気記録媒体の抗磁力判定方法。
【0020】
本発明によれば、磁気記録媒体に磁気情報が書き込まれている場合に、高抗磁力の磁気媒体の磁気情報を消去可能な消去電流値にて磁気情報を消去することにより、磁気情報記録ステップで書き込まれた磁気情報の再生出力差に基づいて抗磁力の判定を行うことができ、既に磁気記録媒体に書き込まれている磁気情報が判定結果に与える影響を排除することができる。
【0021】
(5) 前記判定ステップは、前記第一の再生出力>前記第二の再生出力の場合に前記磁気記録媒体が低抗磁力の磁気媒体であると判定し、前記第一の再生出力<前記第二の再生出力の場合に前記磁気記録媒体が高抗磁力の磁気媒体であると判定することを特徴とする磁気媒体の抗磁力判定方法。
【0022】
本発明によれば、磁気記録媒体の飽和特性によって、第一の再生出力>第二の再生出力の場合には磁気記録媒体が低抗磁力の磁気媒体であると識別することができ、第一の再生出力<第二の再生出力の場合には磁気記録媒体が高抗磁力の磁気媒体であると識別することができるから、磁気記録媒体が低抗磁力媒体であるか高抗磁力媒体であるかを明確に判定することができる。
【0023】
(6) 前記磁気情報記録ステップは、前記磁気記録媒体の磁気情報が記録される磁気情報記録部を長さ方向に分割し、この分割された比較領域毎に前記第一の記録電流値と前記第二の記録電流値とを交互に使用して前記磁気情報記録部に磁気情報を書き込むことを特徴とする磁気記録媒体の抗磁力判定方法。
【0024】
本発明によれば、磁気情報記録部を、例えば2から10分割した比較領域に形成し、この分割された比較領域毎に第一の記録電流値と第二の記録電流値とを交互に使用して磁気情報記録部に磁気情報を書き込むことにより、磁気記録媒体の変形や磁気特性のばらつき、磁気記録媒体と磁気ヘッドとのスペーシングのばらつきに起因する再生出力のばらつきを抑制することができ、さらに信頼性の高い判定結果を得ることができる。
【0025】
本発明に係る磁気記録媒体の抗磁力判定方法は、例えば、複数の比較領域に同一の記録電流値で書き込まれた磁気情報の再生出力の平均値を求め、再生出力の平均値を比較することにより、再生出力のばらつきを抑制して信頼性の高い判定結果を得ることができる。
【0026】
(7) 前記判定ステップは、前記第一の再生出力と前記第二の再生出力との差又は比率を求め、前記磁気記録媒体の抗磁力を求めることを特徴とする磁気記録媒体の抗磁力判定方法。
【0027】
本発明によれば、第一の再生出力と第二の再生出力との差又は比率を求めることにより、磁気記録媒体の抗磁力の値を推定することができ、低抗磁力の磁気媒体と高抗磁力の磁気媒体の識別精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る磁気記録媒体の抗磁力判定方法は、以上説明したように、磁気ヘッド・磁気記録媒体の特性や記録電流値のばらつきによる影響を受けにくく、磁気記録媒体の抗磁力を明確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る磁気記録媒体の抗磁力判定方法を実施する媒体処理装置の磁気ヘッドおよび磁気ヘッドの制御回路を示すブロック図である。
【図2】各抗磁力の磁気媒体の飽和特性を示す図である。
【図3】低抗磁力の磁気媒体の再生出力波形を示す図である。
【図4】高抗磁力の磁気媒体の再生出力波形を示す図である。
【図5】異なる記録電流値の磁気情報を記録する比較領域の一例を示す図である。
【図6】本発明に係る磁気記録媒体の抗磁力判定方法の一実施例を示すフローチャートである。
【図7】磁気記録媒体の抗磁力の判定状況を示す図である。
【図8】磁気記録媒体の抗磁力の判定状況を示す図である。
【図9】本発明に係る磁気記録媒体の抗磁力判定方法の他の実施例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る磁気記録媒体の抗磁力判定方法は、低抗磁力の磁気媒体又は高抗磁力の磁気媒体に形成される磁気情報を磁気ヘッドにより記録するための磁気記録媒体の抗磁力判定方法であって、前記低抗磁力の磁気媒体の書き込みに適した第一の記録電流値、及び、前記高抗磁力の磁気媒体の書き込みに適した第二の記録電流値を交互に使用して前記磁気記録媒体に磁気情報を書き込む磁気情報記録ステップと、前記磁気記録媒体に書き込まれた磁気情報を再生する磁気情報再生ステップと、前記第一の記録電流値で書き込まれた磁気情報の第一の再生出力と、前記第二の記録電流値で書き込まれた磁気情報の第二の再生出力とを比較して、前記磁気記録媒体の抗磁力を判定する判定ステップと、を有することを特徴とする。
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
[媒体処理装置の構成]
図1は、本発明に係る判定方法を実施する媒体処理装置の磁気ヘッドおよび磁気ヘッドの制御回路を示すブロック図である。図2は、各抗磁力媒体の飽和特性を示す図である。図3は、低抗磁力媒体の再生出力波形を示す図である。図4は、高抗磁力媒体の再生出力波形を示す図である。図5は、異なる記録電流値の磁気情報を記録する比較領域の一例を示す図である。
本発明に係る磁気記録媒体の異なる抗磁力を判定する機能を有する媒体処理装置としては、例えば、磁気カードリーダがある。この磁気カードリーダは、磁気カード(磁気記録媒体)を本体部の挿入口に挿入してローラ等の搬送手段により本体部の内部を搬送しながら、搬送路に設けられた磁気ヘッドにより磁気情報の書き込み(記録)または読み取り(再生)を行う。
【0033】
磁気記録媒体としての磁気カード20は、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。図1に示すように、磁気カード20は、その表面に、磁気情報が記録される磁気記録部(磁気ストライプ)21が形成されている。なお、磁気記録媒体は、磁気カード20以外に、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードや、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0034】
本実施形態において、磁気カードリーダは、異なる抗磁力媒体として、例えば300Oeの低抗磁力の磁気カードと2750Oeの高抗磁力の磁気カードの2種類に対応するものである。
このような磁気カードリーダには、図1に示すように、制御回路10及び磁気ヘッド4が構成されている。
【0035】
制御回路10には、制御部1と、磁気R/W−IC2と、記録電流回路3と、磁気ヘッド4と、オペアンプ7と、を有する。
制御部1は、磁気ヘッド4およびこの制御回路全体を制御するCPU1Aと、磁気ストライプ21に書き込まれた磁気情報の抗磁力を判定する抗磁力判定手段1Bと、磁気ストライプ21に低抗磁力で書き込む領域と高抗磁力で書き込む領域とに分割する比較領域設定手段1Cと、比較領域設定手段1Cで決定した領域に書き込みに適した記録電流を切り替える抗磁力切替手段1Dとを有している。また、CPU1Aには、制御回路を制御するプログラムを格納するROMおよびその制御データを読出し可能に記憶するRAMとを有している。
なお、本実施形態では、CPU1Aは、磁気ヘッド4、制御回路以外、例えば、磁気カード20を搬送する搬送機構(図示せず)を制御するようになっている。
【0036】
抗磁力判定手段1Bは、磁気ストライプ21や磁気記録媒体の位置を検出するセンサ等(図示せず)の磁気カードリーダ全体に書き込まれた磁気情報の抗磁力を判定する。具体的には、低抗磁力の磁気カード及び高抗磁力の磁気カードにおける飽和特性は図2に示す波形で示されているが、低抗磁力の磁気カードと高抗磁力の磁気カードにおける飽和特性の再生出力(ピーク値)の差を利用して、磁気カード20の抗磁力を識別している。図2に示すように、低抗磁力の磁気カードでは、第一の記録電流Iaにおける再生出力値A>第二の記録電流Ibにおける再生出力値Bとなり、再生出力値Aは、低抗磁力の磁気カードの場合の再生出力ピーク値となっているが、高抗磁力の磁気カードはピーク値とはなっていない。次に、第二の記録電流Ibにおける再生出力値A'<第二の記録電流Ibにおける再生出力値B'となっている。再生出力値B'は、高抗磁力の磁気カードの再生出力ピーク値となっているが、低抗磁力の磁気カードはピーク値ではない。なお、再生出力AまたはA'は「第1の再生出力値」に相当し、再生出力値BまたはB'は「第2の再生出力値」に相当する。
【0037】
本実施形態では、磁気カード20に書き込まれた磁気情報を再生ヘッド6で再生し、図3及び図4に示すように、一定周波数の再生出力波形を得る。抗磁力判定手段1Bは、第一の記録電流Iaで書き込まれた磁気情報の再生出力値Aと、第二の記録電流Ibで書き込まれた磁気情報の再生出力値Bとを比較する。
【0038】
例えば、図3は、低抗磁力の磁気カード20の再生出力波形を示す図であり、再生出力値(ほぼ再生出力ピーク値)A>再生出力値Bとなっているので、図2に示す飽和特性に基づいて、磁気カード20が低抗磁力媒体であると判定する。
また、図4は、高抗磁力の磁気カード20の再生出力波形を示す図であり、再生出力値A'<再生出力値(ほぼ再生出力ピーク値)B'となっているので、図2に示す飽和特性に基づいて、磁気カード20が高抗磁力媒体であると判定する。
【0039】
なお、本実施形態では、磁気カード20に記録される磁気情報は、磁気カードリーダ等のF2F記録方式における1F周波数で書き込まれている。すなわち、図3、4に示す再生出力波形は、1F周波数の波形である。一般に、磁気カードリーダ等の媒体処理装置に用いられる磁気記録方式としては、F及び2Fという2種類の周波数の組合せによって、2値の磁気情報が磁気カード20に記録されるFM変調方式が知られている。より具体的には、1Fとは一定時間内に1回変化する磁気情報であり、2Fとは一定時間内に2回変化する磁気情報である。そして、1Fの磁気情報は2値化として「0」を、また2Fの磁気情報は2値化として「1」をそれぞれ表す。なお、磁気情報は2F周波数で書き込まれてもよい。
【0040】
比較領域設定手段1Cは、磁気ストライプ21に、長さ方向に2以上に分割した領域を設定するものである。分割された領域(比較領域)には、比較領域毎に異なる記録電流値の磁気情報を記録するようにしている。具体的には、図3に示す比較領域22において、「A」と示す領域は低抗磁力媒体の書き込みに適した第一の記録電流Iaで磁気情報が書き込まれた領域であり、「B」と示す領域は高抗磁力媒体の書き込みに適した第二の記録電流Ibで磁気情報が書き込まれた領域である。同様に、図4に示す比較領域22において、「A'」と示す領域は低抗磁力媒体の書き込みに適した第一の記録電流Iaで磁気情報が書き込まれた領域であり、「B'」と示す領域は高抗磁力媒体の書き込みに適した第二の記録電流Ibで磁気情報が書き込まれた領域である。
【0041】
磁気カード20は、記録電流値及び記録周波数を一定にして書き込みしても、図5に示すように、再生出力波形のピーク値が均一にならない場合がある。この要因としては、磁気カード20の磁気特性(抗磁力・媒体厚み)の場所によるバラツキ、磁気カード20の変形による磁気ストライプと磁気ヘッドとのスペーシングの場所によるバラツキ等が考えられる。
【0042】
そこで、再生出力波形のピーク値が均一で無い場合においても、判定の精度を上げるために、図5に示すように、磁気ストライプ21を長さ方向に2以上に分割し、比較領域22毎に異なる記録電流値の磁気情報を、記録ヘッド5を用いて磁気ストライプ21上に書き込む。本実施形態では、図5に示すように、比較領域22は、磁気ストライプ21を長さ方向に等分して5分割に設定されている。より詳細に述べれば、本実施形態における磁気カードリーダの場合では、磁気ストライプ21を5等分割して設定されており、磁気カード20を磁気ヘッド4に対して等速で搬送しているので、等時間に分割設定されている。
【0043】
なお、比較領域22は、磁気ストライプ21を細かく分割する程、判定の精度を向上させることができるが、CPU1Aの処理能力、記録電流値を切り換える記録電流回路3の応答時間能力、再生出力波形のピーク値の不均一の度合い等を考慮して、本発明の適用装置毎に分割数を決定する。磁気カードリーダ等の媒体処理装置では、磁気ストライプ21を2から10に分割することが好ましい。本実施形態では、比較領域22において、分割された各比較領域は等分割されているが、これに限定されるものではない。また、磁気ストライプ21の全体において、再生出力波形のピーク値が均一である場合には、磁気ストライプ21を分割する必要はなく、磁気ストライプ21の全体について第一の記録電流Iaと第二の記録電流Ibを1回ずつ使用して磁気情報を書き込んでもよい。
【0044】
抗磁力切替手段1Dは、比較領域設定手段1Cで決定した比較領域22内で書き込みに適した記録電流を切り替えるものである。
【0045】
磁気ヘッド4は、記録ヘッド5と再生ヘッド6とを備え、記録ヘッド5が磁気カード20に磁気情報を書き込み(記録)し、再生ヘッド6が磁気カード20に記録された磁気情報を読み取る(再生する)。本実施形態では、記録ヘッド5は、例えば2750Oeの高抗磁力用のもので、記録電流の大きさを変化させることで300Oeの低抗磁力用としても使用することができる。
【0046】
さらに、図2は低抗磁力の磁気カードと高抗磁力の磁気カードの飽和特性を示す図であり、横軸が記録電流値、縦軸が再生出力値である。図2において、太い実線は低抗磁力の磁気カードの再生出力と第一の記録電流Iaの関係を示す。細い実線は高抗磁力の磁気カードの再生出力と第二の記録電流Ibの関係を示す。
【0047】
ここで、記録電流値は、通常、再生出力の飽和電流値Iapの80%の出力がとれる記録電流の1.5倍乃至5倍程度の電流値を、第一の記録電流Iaとして設定している。このように設定される第一の記録電流Iaは、電流の変動に対して出力変動の少ない部分で磁気記録を行うので、記録電流としては一般に最適と考えられている。同様にして、高抗磁力(2750Oe)の磁気カードの飽和電流値Ibpの80%の出力がとれる記録電流の1.5倍乃至5倍程度の電流値を、第二の記録電流Ibとしている。
【0048】
記録電流回路3は、低抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第一の記録電流Ia、又は、高抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第二の記録電流Ibを記録ヘッド5に供給して、磁気カード20の抗磁力に適した記録電流値で磁気情報を記録する。具体的には、上述したように、図2に示すとおり、第一の記録電流Ia及び第二の記録電流Ibを記録ヘッド5に供給している。
【0049】
さらに、本実施形態では、低抗磁力及び高抗磁力の磁気カード20に記録されている磁気情報を消去する場合にも、磁気ヘッド5を用いている。具体的には、記録ヘッド5の磁気カード20に対するDC消去(直流消去)は、低抗磁力(300Oe)のみ消去できる電流値(例えば、20〜30mA程度)及び低抗磁力と高抗磁力(2750Oe)の両方を消去できる電流(例えば、120mA以上)に設定している。
【0050】
磁気R/W−IC2は、記録電流回路3とCPU1Aとの間に配置され、記録ヘッド5に対して、CPU1Aからの指令により記録電流回路3の磁気書込電流を制御する制御回路である。本実施形態では、磁気R/W−IC2は、磁気カード20に設けられた磁気ストライプ21へ磁気情報の書き込み(記録)を行う磁気ヘッド5および磁気情報の読み取り(再生)を行う再生ヘッド6との間で信号の制御を行う。これにより、記録ヘッド5が低抗磁力(300Oe)及び高抗磁力(2750Oe)に対応可能にしている。また、本実施形態では、磁気R/WーIC2はCPU1Aから入出力要求を受信したとき磁気ヘッド4の入出力制御を行う。
【0051】
オペアンプ7は、再生ヘッド6で読み取られた磁気カード20の磁気情報を増幅し、再生出力としてCPU1Aのアナログポートに入力する。
【0052】
[抗磁力判定方法の一実施例]
次に、上述した磁気カードリーダで行われる磁気カードの抗磁力判定方法について説明する。図6は、本発明に係る磁気カードの抗磁力判定方法の一実施例を示すフローチャートである。
【0053】
図6に示す磁気カード20の抗磁力判定方法は、低抗磁力又は高抗磁力の磁気カード20に形成される磁気情報を記録ヘッド5により記録するためのものであり、低抗磁力の磁気カード20の書き込みに第一の記録電流Iaと第二の記録電流Ibとを交互に使用して磁気カード20に磁気情報を書き込む磁気情報記録ステップと、磁気カード20に書き込まれた磁気情報を再生する磁気情報再生ステップと、低抗磁力媒体の書き込みに適した第一の記録電流Iaで書き込まれた磁気情報の再生出力値Aと、高抗磁力媒体の書き込みに適した第二の記録電流Ibで書き込まれた磁気情報の再生出力値Bとを比較して、磁気カード20の抗磁力を判定する判定ステップと、を主なステップとしている。
【0054】
図6に示すように、磁気カードリーダは、カード挿入口に挿入された磁気カード20をセンサ等で検知し、本体部の内部に磁気カード20を取り込む(ステップS1)。まず磁気カードリーダにおいて、磁気カード20がカード挿入口より挿入される。
【0055】
カード挿入口から挿入された磁気カード20は、図示しないローラ等の搬送手段により本体部の内部を搬送しながら、搬送路に設けられた再生ヘッド6により、磁気ストライプ21に形成された磁気情報を読み取る(ステップS2)。
【0056】
CPU1Aは、再生ヘッド6により読み取られた再生出力に磁気情報が含まれているか否かを確認する(ステップS3)。なお、このステップS3は確認ステップと呼ばれている。
【0057】
CPU1Aが、磁気カード20に磁気情報が書き込まれていると判定した場合には、記録電流回路3が記録ヘッド5に高抗磁力の磁気カード20の磁気情報を消去可能な消去電流を供給し、磁気カード20に記録されている磁気情報をDC消去(直流消去)する(ステップS4)。磁気ストライプ21に記録されている磁気情報は、直流消去ヘッドとして用いた記録ヘッド5により直流消去され、磁気ストライプ21の磁化状態が均一化される。なお、このステップS4は消去ステップと呼ばれている。
【0058】
一方、ステップS3において、CPU1Aが、磁気カード20に磁気情報が書き込まれていないと判定した場合には、消去ステップ(ステップS4)を行わず、次の磁気情報記録ステップ(S5)に移行する。
【0059】
記録ヘッド5が磁気ストライプ21上に第一または第二の記録電流Ia、Ibで判定用の磁気情報を書き込む(記録する)(ステップS5)。なお、このステップS5は磁気情報記録ステップと呼ばれている。ここで、CPU1Aの比較領域設定手段1Cは、磁化状態が均一化された磁気ストライプ21を長さ方向に、図5に示すように、5等分割された比較領域22を設定する。また、制御部1は、磁気R/W−IC2を介して再生ヘッド6から記録ヘッド5に切り替える。記録ヘッド5には、記録電流回路3から低抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第一の記録電流Ia、又は、高抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第二の記録電流Ibが供給される。搬送される磁気カード20の磁気ストライプ21に記録ヘッド5が摺動し、磁気ストライプ21上に磁気情報が書き込まれる(記録される)。
【0060】
本実施形態では、設定された各比較領域22において、「A」で示す領域には、低抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第一の記録電流Iaで判定用の磁気情報を書き込む。次に、「B」で示す領域には、高抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第二の記録電流Ibで判定用の磁気情報が書き込む。なお、本実施形態では、磁気カード20に記録される磁気情報は、磁気カードリーダ等のF2F記録方式における1F周波数で書き込まれている。
【0061】
このように、比較領域22に記録電流値及び記録周波数を一定にして書き込みしても、図5に示すように、再生出力波形のピーク値が均一にならない場合がある。この要因としては、磁気カード20の磁気特性(抗磁力・媒体厚み)の場所によるバラツキ、磁気カード20の変形による磁気ストライプと磁気ヘッドとのスペーシングの場所によるバラツキ等が考えられる。
【0062】
本実施形態では、低抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第一の記録電流Iaと、高抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第二の記録電流Ibとを、この順に交互に記録しているが、その逆に、高抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第二の記録電流Ibと、低抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第一の記録電流Iaとを、この順に交互に記録することも可能である。
【0063】
再生ヘッド6が磁気カード20に書き込まれた磁気情報を読み取り(再生)する(ステップS6)。なお、このステップS6は磁気情報再生ステップと呼ばれている。ここで、制御部1は、磁気カード20の磁気ストライプ21に磁気記録を書き込んだ後、磁気カード20を図示しない搬送手段等を用いて搬送方向を逆転する。さらに、磁気R/W−IC2を介して記録ヘッド5から再生ヘッド6に切り替える。再生ヘッド6が磁気ストライプ21に摺動し、再生信号を出力する。CPU1Aには、例えば、図3及び図4に示すように、一定周波数の再生出力波形が入力される。
【0064】
CPU1Aの抗磁力判定手段1Bは、各比較領域22毎に、再生ヘッド6で読み込まれた判定用の磁気情報を、低抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第一の記録電流Iaで書き込まれた磁気情報の再生出力Aと、高抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第二の記録電流Ibで書き込まれた第二の記録電流Ibで書き込まれた磁気情報の再生出力Bとを比較して、磁気カード20の抗磁力を判定する(ステップS7)。なお、このステップS7は判定ステップと呼ばれている。
【0065】
本実施形態では、抗磁力判定手段1Bでは、図2に示すような、低抗磁力または高抗磁力の飽和特性に基づいて、再生出力A>再生出力B(図3)の場合に磁気カード20が低抗磁力の磁気媒体であると判定し、再生出力A'<再生出力B'(図4)の場合に磁気カード20が高抗磁力の磁気媒体であると判定することができる。なお、再生出力Aと再生出力Bとを比較する方法としては、再生出力Aと再生出力Bとの差又は比率を求め、磁気カード20の抗磁力を求めるようにしてもよい。これにより、磁気カード20の抗磁力の値を推定することができ、低抗磁力の磁気媒体と高抗磁力の磁気媒体の識別精度を向上させることができる。
【0066】
(本実施形態の主な効果)
本実施形態の抗磁力判定方法は、低抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第一の記録電流Iaで書き込まれた磁気情報の再生出力Aと、高抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第二の記録電流Ibで書き込まれた磁気情報の再生出力Bとを比較して判定している。これにより、磁気カード20が低抗磁力の磁気媒体であるか高抗磁力の磁気媒体であるかを判定することができる。このように、本実施形態の抗磁力判定方法は、再生出力(再生出力ピーク値)の大小に基づいて磁気カード20の抗磁力を判定しているから、従来のような再生ヘッド6の再生出力のばらつきが判定結果に影響しにくくなり、信頼性の高い判定結果が得られる。
【0067】
また、本実施形態では、磁気カードリーダが、一般的に使用されている回路及びソフトウェアによって構成されるから、本実施形態の抗磁力判定方法を行うために、新たな回路や機構の追加が不要となり、コストを低減することができる。
【0068】
また、本実施形態では、磁気情報記録ステップ(ステップS5)の前に、磁気カード20に書き込まれた磁気情報を再生して磁気情報の有無を確認する確認ステップ(ステップS3)を有するので、磁気カード20に磁気情報が書き込まれているか否かを事前に確認することができ、磁気情報の有無に応じて適切な処理ステップ、例えば、磁気カード20に磁気情報が書き込まれていない場合には、そのまま磁気情報記録ステップ(ステップS5)に移行することができる。
【0069】
次に、確認ステップ(ステップS3)において、磁気カード20に磁気情報が書き込まれている場合に、高抗磁力の磁気カード20の磁気情報を消去可能な消去電流値にて磁気情報を消去する消去ステップ(ステップS4)を備えたので、磁気情報記録ステップ(ステップS5)で第一または第二の記録電流Ia、Ibで書き込まれた判定用の磁気情報の再生出力を比較して抗磁力の判定を行うことができ、既に磁気カード20に書き込まれている磁気情報が判定結果に与える影響を排除することができる。さらに、本実施形態では、高抗磁力の磁気カード20の磁気情報を消去可能な消去電流値にて磁気情報を消去するので、磁気カード20が低抗磁力の磁気媒体であっても、その磁気情報を消去することが可能である。
【0070】
さらに、磁気情報記録ステップ(ステップS5)において、磁気カード20の磁気情報が記録される磁気ストライプ21を長さ方向に、比較領域(本実施形態では5等分に分割)に設定し、この分割された比較領域22毎に第一の記録電流Iaと第二の記録電流Ibとを交互に使用して磁気ストライプ21に磁気情報を書き込む。これにより、磁気カード20の変形や磁気特性のばらつき、磁気カード20と磁気ヘッド4とのスペーシングのばらつきに起因する再生出力のばらつきを抑制することができ、さらに信頼性の高い判定結果を得ることができる。このように、再生出力波形のピーク値が均一で無い場合には、比較領域22毎に第一の記録電流Iaと第二の記録電流Ibとを交互に使用して磁気ストライプ21に磁気情報を書き込むことにより、判定の精度を上げることができる。
【0071】
[抗磁力判定方法の他の実施例]
図9は、本発明に係る磁気カードの抗磁力判定方法の他の実施例を示すフローチャートである。
【0072】
図9に示す磁気カード20の抗磁力判定方法は、磁気カードリーダは、カード挿入口に挿入された磁気カード20をセンサ等で検知し、本体部の内部に磁気カード20を取り込む(ステップS11/図6に示すステップS1に相当)。
【0073】
記録ヘッド5が磁気ストライプ21上に第一または第二の記録電流Ia、Ibで判定用の磁気情報を書き込む(ステップS12)。具体的には、低抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第一の記録電流Ia、及び、高抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第二の記録電流Ibを交互に使用して磁気カード20に磁気情報を書き込む。なお、このステップS12は、磁気情報記録ステップと呼ばれ、図6に示すステップS5に相当する。
なお、磁気情報記録ステップ(S12)は、上述した実施形態と同様に、磁気カード20の磁気情報が記録される磁気ストライプ21を長さ方向に比較領域(本実施形態では5等分に分割)に設定し、この分割された比較領域22毎に第一の記録電流Iaと第二の記録電流Ibとを交互に使用して磁気ストライプ21に磁気情報を書き込むこともできる。
【0074】
再生ヘッド6が磁気カード20に書き込まれた磁気情報を読み取り(再生)する(ステップS13)。なお、このステップS13は磁気情報再生ステップと呼ばれ、図6に示すステップS5に相当する。ステップS13は、ステップS5と同様に、再生ヘッド6が磁気カード20に書き込まれた磁気情報を再生し、CPU1Aには、例えば、図3及び図4に示すように、一定周波数の再生出力波形が入力される。
【0075】
CPU1Aの抗磁力判定手段1Bは、各比較領域22毎に、再生ヘッド6で読み込まれた判定用の磁気情報を、低抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第一の記録電流Iaで書き込まれた磁気情報の再生出力Aと、高抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第二の記録電流Ibで書き込まれた第二の記録電流Ibで書き込まれた磁気情報の再生出力Bとを比較して、磁気カード20の抗磁力を判定する。なお、このステップS14は判定ステップと呼ばれ、図6に示すステップS7に相当する。
【0076】
判定ステップ(ステップS14)は、図6に示す判定ステップ(ステップS6)とは異なり、再生出力A>再生出力Bの場合に磁気カード20が低抗磁力の磁気媒体であると判定し、その他の場合に磁気カード20が高抗磁力の磁気媒体であると判定する。図2に示すように、高抗磁力の磁気カード20の再生出力の差(B'−A')は、低抗磁力の磁気カード20の再生出力の差(A−B)より一般的に小さい。このため、判定ステップ(ステップS14)が、高抗磁力の磁気カード20の再生出力の差(B'−A')を識別し難い場合(B'=A')も生じるが、このときA'>B'でなければ高抗磁力の磁気媒体であると判定することにより、判定不能の事態を回避することができる。したがって、確実に判定結果を得ることができる。
【0077】
図9に示す実施形態では、識別が容易な低抗磁力の磁気カード20について、再生出力A>再生出力Bの場合に磁気カード20が低抗磁力の磁気媒体であると判定することにより、磁気情報の再生出力差を判定不能の場合でも高抗磁力の磁気媒体であると識別することができる。
【0078】
[他の実施形態]
本発明の抗磁力判定方法は、例えば図7及び図8に示す再生出力(再生出力ピーク値)を得た場合に、複数の比較領域に同一の記録電流値で書き込まれた磁気情報の再生出力(再生出力A及び再生出力B)の平均値をそれぞれ求め、この再生出力の平均値を比較して磁気カード20の抗磁力を判定することができる。このように、再生出力の平均値を比較することにより、再生出力のばらつきを抑制してより信頼性の高い判定結果を得ることができる。
【0079】
また、上述した磁気情報記録ステップでは、低抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第一の記録電流Ia、及び、高抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第二の記録電流Ibを交互に使用して磁気カード20に磁気情報を書き込むようにしているがこれに限定されるものではない。例えば、3以上の記録電流値を交互に使用して磁気記録媒体に磁気情報を書き込む手段を備えてもよい。このような方法であれば、磁気情報記録ステップにおいて、3以上の記録電流値を交互に使用して磁気記録媒体に磁気情報を書き込むことにより、低抗磁力の磁気媒体と高抗磁力の磁気媒体の識別に限らず、複数種類の抗磁力、例えば、低抗磁力(例えば、650Oe以下)、中抗磁力(例えば、1500Oe程度)、高抗磁力(例えば、2750Oe以上)を識別することができる。
【0080】
さらに、磁気ストライプ21の全体において、再生出力波形のピーク値が均一である場合には、磁気ストライプ21を分割する必要はなく、比較領域設定手段1Cは、磁気ストライプ21の全体について第一の記録電流値Iaと第二の記録電流値Ibとを1回ずつ使用して磁気情報を書き込むように設定してもよい。
また、比較領域は、本実施形態では磁気ストライプ21全体として説明しているが、これに限定されるものではなく、長さ方向の所定の領域であってもよい。具体的には、磁気ストライプ21全体の長さの半分程度で前半または後半であってもよく、さらには、例えば、磁気ストライプ21の長さ方向の真ん中付近を、比較領域と設定してもよい。
【0081】
本実施形態では、図5に示すように、低抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第一の記録電流値Ia(再生出力A領域)と、高抗磁力の磁気カード20の書き込みに適した第二の記録電流値Ib(再生出力B領域)とを、この順に交互に記録しているが、その逆に、高抗磁力の磁気カードの書き込みに適した第二の記録電流値Ibと、低抗磁力の磁気カードの書き込みに適した第一の記録電流値Iaとを、この順に交互に記録するようにしてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、確認ステップ(ステップS3)を設けているが、確認ステップ(S3)を設けないで、常に消去ステップ(ステップS4)を行う構成にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明に係る磁気記録媒体の抗磁力判定方法は、磁気ヘッド・磁気記録媒体の特性や記録電流値のばらつきによる影響を受けることなく、磁気記録媒体の抗磁力を明確に判定することができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0084】
1 CPU
2 磁気R/W−IC
3 記録電流回路
4 磁気ヘッド
5 記録ヘッド
6 再生ヘッド
7 オペアンプ
10 磁気カードリーダ(媒体処理装置)
20 磁気カード(磁気記録媒体)
21 磁気ストライプ(磁気記録部)
22 比較領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低抗磁力の磁気媒体又は高抗磁力の磁気媒体に形成される磁気情報を磁気ヘッドにより記録するための磁気記録媒体の抗磁力判定方法であって、
前記低抗磁力の磁気媒体の書き込みに適した第一の記録電流値、及び、前記高抗磁力の磁気媒体の書き込みに適した第二の記録電流値を交互に使用して前記磁気記録媒体に磁気情報を書き込む磁気情報記録ステップと、
前記磁気記録媒体に書き込まれた磁気情報を再生する磁気情報再生ステップと、
前記第一の記録電流値で書き込まれた磁気情報の第一の再生出力と、前記第二の記録電流値で書き込まれた磁気情報の第二の再生出力とを比較して、前記磁気記録媒体の抗磁力を判定する判定ステップと、
を有することを特徴とする磁気記録媒体の抗磁力判定方法。
【請求項2】
前記判定ステップは、前記第一の再生出力>前記第二の再生出力の場合に前記磁気記録媒体が低抗磁力の磁気媒体であると判定し、その他の場合に前記磁気記録媒体が高抗磁力の磁気媒体であると判定することを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体の抗磁力判定方法。
【請求項3】
前記磁気情報記録ステップの前に、前記磁気記録媒体に書き込まれた磁気情報を再生して磁気情報の有無を確認する確認ステップを有することを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体の抗磁力判定方法。
【請求項4】
前記確認ステップにおいて、前記磁気記録媒体に磁気情報が書き込まれている場合に、前記高抗磁力の磁気媒体の磁気情報を消去可能な消去電流値にて該磁気情報を消去する消去ステップを備えたことを特徴とする請求項3記載の磁気記録媒体の抗磁力判定方法。
【請求項5】
前記判定ステップは、前記第一の再生出力>前記第二の再生出力の場合に前記磁気記録媒体が低抗磁力の磁気媒体であると判定し、前記第一の再生出力<前記第二の再生出力の場合に前記磁気記録媒体が高抗磁力の磁気媒体であると判定することを特徴とする請求項3又は4記載の磁気記録媒体の抗磁力判定方法。
【請求項6】
前記磁気情報記録ステップは、前記磁気記録媒体の磁気情報が記録される磁気記録部を長さ方向に分割し、この分割された比較領域毎に前記第一の記録電流値と前記第二の記録電流値とを交互に使用して前記磁気記録部に磁気情報を書き込むことを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の磁気記録媒体の抗磁力判定方法。
【請求項7】
前記判定ステップは、前記第一の再生出力と前記第二の再生出力との差又は比率を求め、前記磁気記録媒体の抗磁力を求めることを特徴とする請求項3から6のいずれか記載の磁気記録媒体の抗磁力判定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−243374(P2012−243374A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115821(P2011−115821)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】