説明

磁気記録媒体の製造方法及び製造装置

【課題】ICカード等を製造する際に発生する磁気ストライプカスは、薄くて軽く静電気に吸着されやすく、粘着ローラーや粘着テープでは完全には除去できない。磁気ストライプカスを効率的効果的に除去する技術を提供する。
【解決手段】ロール供給されたウエブ状シートに対し、少なくとも磁気ストライプベースフィルムから磁気ストライプを転写する工程と、前記ウエブ状シートを断裁する工程と、を有する磁気記録媒体の製造方法において、前記磁気ストライプから生じる磁気ストライプカスを、磁石を利用して吸着除去する工程と、磁気記録媒体とした後に強磁界にて磁気ストライプを初期化する工程とを有することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ストライプを備える磁気記録媒体、特にICカード、通帳等に使用する磁気記録媒体の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来ICカード等情報入出力手段や送受信機能を内蔵するカードは、ICチップ、メモリー、アンテナを実装したインレットを2枚のシート基材の間に挿入するか、又は接触型IC、セキュリティー用ホログラムをシート基材中に埋め込んだり貼付するかを問わず、製造工程においては複数の基材を接着剤を用いて貼り合わせて硬化させたり、ホットプレス装置で熱圧着させた後に個片に断裁することが含まれる。
【0003】
これらのカード類は表裏にプリンターやオフセット印刷装置を使用して文字情報及び画像情報が印刷され、必要であれば保護層を設けた後、使用に供される。しかしながら、文字・画像情報を印刷する前に被印刷シート基材上に、工程上で発生したゴミ、異物等の塵埃が付着すると、印字カスレや画像抜けが生じ、使用上種々の不都合を招来し外観上も好ましいものではない。
【0004】
したがって、断裁カスや装置由来の金属粉等塵埃の除去は非常に重要な問題であって、例えば特許文献1に除去方法の一例が記載されている。さらに、上記の断裁カス、装置由来の金属粉等に加え、カード類は一般的に情報記録媒体として磁気ストライプを備えることから、磁気ストライプ転写工程や断裁工程で磁気ストライプカスが発生する。この磁気ストライプカスを除去する手段としては、上記の塵埃も含めて粘着ローラーや粘着テープを使用して回収除去する手段、あるいはエアーで吹き飛ばしたり吸引する手段が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−332259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、磁気ストライプカスの特徴を検討すると、磁気ストライプは厚みが約15μmと極めて薄く軽いため空気中に浮遊して存在する。そのため静電気を帯びた物体表面に吸着されやすいという性質がある。一方、カード類を構成するプラスチックシートは静電気を帯びやすく、浮遊異物を吸着しやすいという性質がある。したがって、発生した磁気ストライプカスはシート表面に吸着されやすく、一旦吸着されてしまうとエアーブローや吸引では取りきれないという問題がある。
【0007】
吸着カスを粘着ローラーや粘着テープで引き剥がす方法では、既にカスがこびりついた粘着部位では当該カスを取り除かなければ再度粘着させることができないので除去効率が次第に低くなる。粘着力を高めすぎると作業性が低下して、シート表面の磁気ストライプカスを完全には除去できないという問題がある。
【0008】
さらに、カード製造時には熱圧着ラミネート工程が含まれるので、シート表面に、磁気ストライプカスが残置するとカード基材中に埋め込まれてしまうことになる。磁気ストライプは茶色とか黒色系のものが多く、埋め込まれると目立って外観不良を招来することになる。また、磁気ストライプ上に残置すると磁気特性不良となるという問題もある。
【0009】
そこで、本発明は磁気ストライプカスを効率的・効果的に除去する技術の提供を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するための請求項1に係る発明は、ロール供給されたウエブ状シートに対し、少なくとも磁気ストライプベースフィルムから磁気ストライプを転写する工程と、前記ウエブ状シートを断裁する工程と、を有する磁気記録媒体の製造方法において、前記磁気ストライプから生じる磁気ストライプカスを、磁石を利用して吸着除去する工程と、磁気記録媒体とした後に強磁界にて磁気ストライプを初期化する工程とを有することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法としたものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記磁石が電磁石であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法としたものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、ロール供給されたウエブ状シートに対し、少なくとも磁気ストライプベースフィルムから磁気ストライプを転写する手段と、前記ウエブ状シートを断裁する手段と、を備える磁気記録媒体の製造装置において、少なくとも、ウエブ状シートに磁気ストライプを転写した後、及び/又はウエブ状シートを断裁する手段の前後に磁石を備えることと、磁気記録媒体とした後に強磁界にて磁気ストライプを初期化する機構を備えることを特徴とする磁気記録媒体の製造装置としたものである。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記磁石が電磁石であることを特徴とする請求項3に記載の磁気記録媒体の製造装置としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、磁石を使用することにより静電気でシート上に吸着した磁気ストライプカス及び磁性を有する鉄系の金属カスを、磁石を使用することにより選択的に除去することができる。
また、磁石を電磁石とすることにより、吸着する磁力の調整と磁石表面に引き付けたカスを容易に引き離せるので、磁性カスの除去と除去装置としてのメンテナンスが容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)〜(f)は磁気カードの製造工程の一部を模式的に説明する斜視図である。
【図2】(g)〜(i)は磁気カードの残りの製造工程を模式的に説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、磁気カードの製造工程を例として、本発明を説明するが、本発明は、磁気ストライプベースフィルムに圧力をかけて磁気ストライプをシート上へ転写する工程、あるいは磁気ストライプ転写済みシートの切断工程前後等、磁性カスの発生しやすい箇所に磁石を近接して設置することで発生した磁気ストライプカスを吸着除去し、磁気カードの外観不良及び磁気効果の異常発生を低減するとともに、磁性カスの回収と磁石のメンテナンスを容易にするものである。
【0017】
先ず、塩化ビニルあるいはPETからなる基材シートの裏面にスクリーン印刷法により金・銀色の下地層を形成する。次いで、下地層の上にオフセット印刷法により文字情報・マーク等を印刷する(図1(a))。次いで、基材シート表面にアライメント用のトンボ
をオフセット印刷する。
【0018】
次に、基材シートの両面に保護シートを貼り付けるための接着剤をロールコートし(図1(b))、引き続き、保護シート上に磁気ストライプを転写し、定寸に断裁して基材シートの表裏へ仮貼りする(図1(c))。
【0019】
この仮貼りしたシートを多段に積み重ねて熱圧着ラミネート処理を行う(図1(d))。該ラミネートにより磁気ストライプが基材シート表面に固着される。
【0020】
次に、枚葉の基材シートに改めて針・咥えの印刷基準を作製するために、基材シート端面を断裁する(図1(e))。
【0021】
次に、基材シート表面に形成した磁気ストライプを隠蔽する目的も兼ね、スクリーン印刷法により下地層を基材シート表面に印刷し、さらに表面用の文字情報、絵柄情報をオフセット印刷する(図1(f))。
【0022】
次に、熱圧着ラミネート機にて、基材シート表面を面一にして同時に鏡面仕上げ処理を施すためのラミネート処理を行う(図2(g))。
【0023】
次いで、金型を使用してカードサイズに抜き加工を施す(図1(h))。最後に、ホログラム・サインパネルの転写、接触式ICチップの埋め込みなど、仕様に応じた加工を施して磁気カードを得ることができる(図1(i))。
【0024】
磁気ストライプカスは、磁気ストライプの転写工程(図1(c))や2箇所の断裁工程(図1(c)、(e))で主として発生する。これらの工程の前後に磁気ストライプカスを吸着するための磁石を設置するのが望ましい。
磁石は磁束密度が0.45テスラ程度のフェライト磁石を使用し、磁石と保護シートや基材シートとの距離は5mm程度が好ましい。この他、アルニコ磁石、鉄・クロム・コバルト磁石、あるいは希土類磁石を使用しても構わない。
【0025】
実際、磁気ストライプカスを吸着するフェライト磁石を保護シートの幅で、磁気ストライプを保護シートに熱転写ローラーで転写した後、及び枚葉の保護シートに断裁する断裁箇所の前後に設置したところ、設置前は8〜9%程度であった磁気ストライプカスに起因する不良が2〜3%に低減し、磁石設置の磁性カス除去効果が確認できた。
【0026】
また、上記の永久磁石の代わりに電磁石の使用もできる。この場合は、電磁石への通電を止めれば簡単に磁性カスを取り除くことができる。
【0027】
さらに、粘着ローラーやエアーブローなどを複合的に組み合わせれば、より効果的に磁性カスの回収が可能である。磁石はできるだけ保護シートの磁気ストライプに近づけて、吸着効果を高めるのがよい。磁気ストライプが磁化する可能性があるが、カードあるいは媒体とした後、強磁界で消去とデータ書き込みを行い初期化する工程を備えたため問題とはならない。
【0028】
本実施例では、磁気カードについて記載したが、通帳や、ICカード等他の磁気ストライプを備える製品にも適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1:基材シート
2:印刷用ヘッド(スキージ)
3:磁気ストライプ
4:熱圧着ラミネート装置-1
5:熱圧着ラミネート装置-2
6:打ち抜き金型
7:接触型ICチップ
8:ホログラム
9:サインパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール供給されたウエブ状シートに対し、少なくとも磁気ストライプベースフィルムから磁気ストライプを転写する工程と、前記ウエブ状シートを断裁する工程と、を有する磁気記録媒体の製造方法において、前記磁気ストライプから生じる磁気ストライプカスを、磁石を利用して吸着除去する工程と、磁気記録媒体とした後に強磁界にて磁気ストライプを初期化する工程とを有することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記磁石が電磁石であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
ロール供給されたウエブ状シートに対し、少なくとも磁気ストライプベースフィルムから磁気ストライプを転写する手段と、前記ウエブ状シートを断裁する手段と、を備える磁気記録媒体の製造装置において、少なくとも、ウエブ状シートに磁気ストライプを転写した後、及び/又はウエブ状シートを断裁する手段の前後に磁石を備えることと、磁気記録媒体とした後に強磁界にて磁気ストライプを初期化する機構を備えることを特徴とする磁気記録媒体の製造装置。
【請求項4】
前記磁石が電磁石であることを特徴とする請求項4に記載の磁気記録媒体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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