説明

磁気記録媒体及びその製造方法

【構成】 非磁性基体(1)上に、アンダーコート層(2)、磁性層(3)及びトップコート層を順次積層して構成され、アンダーコート層(2)が一般式SiOn(ただし、1.8≦n≦1.95)で表わされるケイ素酸化物であり、トップコート層がケイ素の炭化物と酸化物との混合系から成る第一保護層(4)と、その上に形成された屈折率1.9以上、接触角80度未満のダイヤモンド様炭素層又は液体潤滑剤層から成る第二保護層(5)との複合層である磁気記録媒体である。
【効果】 摩擦耐久性に優れ、しかも高温高湿下で、長期間にわたって性能低下がない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気テープや磁気ディスクのような磁気記録媒体、特に耐久性、耐候性の優れた磁気記録媒体又はその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁気テープ、磁気ディスクのような磁気的記録装置に用いられる磁気記録媒体は、一般に、プラスチックのような非磁性基体上に、鉄やクロムの酸化物、コバルト、ニッケルのような金属又はこれらの合金から成る磁性膜を設けることによって構成されている。この磁性膜は通常酸素雰囲気中で形成されるが、このようにして形成された磁性膜は耐食性を欠き、腐食性環境下、例えば海岸や火山の近くではそのままでは実用に供し得ない上、摩擦耐久性も低いため、表面に保護層を設けることが行われている。
【0003】これまで、このような保護層としてはフッ素化炭化水素、フッ素化ケトン、フッ素化エーテルなどの含フッ素有機化合物(特開昭57−135442号公報)、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレン、エチレン、塩化ビニル、スチレンなどのモノマーのプラズマ重合体(特開昭57−135443号公報)、ポリカーボネートと高級脂肪酸又はそのエステルとの複合層(特開昭57−164432号公報)、各種低分子化合物のプラズマ重合体(特開昭59−72653号公報、特開昭59−171028号公報)などが提案されているが、これらの保護層は、有機物から構成されているため、摩擦耐久性の点では必ずしも満足すべきものではなかった。
【0004】そのほか、磁性層の上に、ロジウムやクロムのような非磁性金属及び酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化クロムのような非磁性酸化物とから成る保護層と、ダイヤモンド様炭素のような炭化物から成る保護層との2種の保護層を設けたもの(特開昭60−258727号公報)も提案されているが、このものは摩擦摺動特性は改善されるとしても、基体についての保護はまったく考慮されていないため、耐環境特性が低いという欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これまでの磁気記録媒体がもつ欠点を克服し、優れた摩擦摺動特性及び耐環境特性を有する新規な磁気記録媒体を提供することを目的としてなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、摩擦摺動特性と耐環境特性の両方が改善された磁気記録媒体、特にビデオテープを開発するために鋭意研究を重ねた結果、特定の組成をもつケイ素酸化物をあらかじめアンダーコート層として施した非磁性基体上に磁性層を設け、さらにその上に特定のケイ素化合物から成るトップコート層を設けたものの表面を特定の保護層で被覆することによりその目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0007】すなわち、本発明は、非磁性基体上に、アンダーコート層、磁性層及びトップコート層を順次積層して構成された多層構造体において、(イ)アンダーコート層が一般式SiOn(ただし、1.8≦n≦1.95)で表わされるケイ素酸化物から成ること、(ロ)トップコート層がケイ素の炭化物と酸化物との混合系から成る第一保護層と、その上に形成された屈折率1.9以上、接触角80度未満のダイヤモンド様炭素層又は液体潤滑剤層から成る第二保護層との複合層から構成されることを特徴とする磁気記録媒体を提供するものである。
【0008】図1は、本発明の磁気記録媒体の構造を説明するための断面拡大図であって、非磁性基体1の上に、アンダーコート層2、その上に磁性層3、さらにその上にトップコート層4が積層され、最上面は、いわゆる損傷保護又は摩擦防止のための被覆層5が施されている。
【0009】
【構成】本発明で用いる非磁性基体1は、プラスチックの中でビデオテープやビデオディスクとして使用できるような適度なたわみ性及び硬さを有するものであればよく、特に制限はない。このようなプラスチックとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、ポリイミンイミド、アラミド樹脂などが挙げられるが、特に表面性がある程度コントロールできるエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックが好適である。そのほか、ビデオディスクの場合は、アルミニウムシートのような金属シートも用いることができる。この基体の厚さは通常4〜75μmの範囲内で選ばれ、磁気記録媒体の仕様に応じて決められる。
【0010】次にこの上に施されるアンダーコート層2は、一般式SiOnで表わされるケイ素酸化物から成り、水分バリアー層であると同時に基体表面と磁性層との接着層の役割を果すものであるが、この式中のnは1.8から1.95の範囲にあることが必要である。nがこの範囲を逸脱した組成を有するものは、水分遮断性が低く、十分な保護効果を示さない。
【0011】この際用いるケイ素化合物としては、10-3Torr程度好ましくは10-5Torr程度の圧力下でガス化するものであればよく、特に制限はないが取り扱いやすさの点で200℃程度の沸点を有するものが好ましい。このようなものとしては、例えばシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどを挙げることができる。
【0012】このケイ素化合物と酸素とは、ケイ素1原子当り酸素3当量以上の割合の混合ガスとして用いられるが、このような混合ガスは、例えば液体ケイ素化合物を収容したタンクを定温に保ち、その中に酸素をバブリングさせることによって調製するのが有利である。この際のタンクの温度を変えることによりケイ素と酸素との混合比を調整することができる。またシランのような室温でガス状のものは、マスフローコントローラを用いて適量ずつ供給することができるし、液状のものでも気化器を用いれば別々に制御して供給することができる。このアンダーコート層2の厚さは、通常0.02〜0.1μmの範囲で選ばれる。
【0013】このアンダーコート層2の形成は、プラズマ重合法又は蒸着法によって行われる。プラズマ重合法では、例えば非磁性基体を走行処理させることができるチャンバー内をあらかじめ10-6Torr程度まで排気し、原料のケイ素化合物と酸素との混合ガスを所定の流量で導入し、10-3〜10-5Torrの圧力に達したときに、電極に交番電圧を印加して放電させる。この際、非磁性基体は、アース電位に密着させておくことが必要である。単に放電空間に非磁性基体を通過させるだけでは、白粉のみが生成し、保護効果の高い膜が形成されない。
【0014】このアンダーコート層の形成に際しては、各原料の導入速度と基体の走行速度とを調整し、厚さを0.02〜0.1μmの範囲内に制御する。一般に磁気記録媒体については、10μm厚のポリエチレンテレフタレートフイルム上に積層した状態におけるJIS Z−0208に従って測定した水分透過率が20g/m2・day以下になることが必要である。
【0015】ケイ素1原子当り、酸素3当量以上を用いてプラズマ重合法により成膜したものは、200Åを境にして水分バリヤ性が急激に向上する。図2はポリエチレンテレフタレートフイルム(10μm厚)に、SiOx(x=1.9)の膜を形成させたときのJIS Z0208で測定した水分バリヤー性の相対値を示したグラフであるが、これから明らかなように100Åまでは全く効果がないが、150〜200Åの間で急激に水分透過が減少し、また200Å以上では、膜厚が大きくなっても効果は飽和状態を示し、変らない。したがって膜厚としては200Å以上あればよいことになる。
【0016】この際の放電電源としては、周波数50〜400kHzの範囲のものを用いるのが望ましい。50kHzよりも低い周波数とすると安定な放電が継続しないし、また400kHzよりも高くなると緻密な層が形成されず、水分透過性が増大する。
【0017】次に、蒸着法の場合は、常法に従い、酸素雰囲気中でケイ素を加熱蒸発させ、非磁性基体表面に、所定の厚さに達するまでSiO又はSiO2を蒸着させる。
【0018】また、このようにして形成された、アンダーコート層2の上に設けられる磁性層3としては、通常コバルト又はコバルト合金が用いられるが、コバルト合金は、コバルトの結晶異方性がそこなわれない程度のコバルト含有量、通常は70重量%以上のものが好ましい。コバルト合金としては例えばCo−Fe、Co−Ni、Co−Cr、Co−Ni−Crなどを挙げることができる。
【0019】この磁性層3は、コバルトやコバルト合金に限る必要はなく、そのほかの磁気記録媒体の磁性層に用いられている材料、例えばCo−Sm、Co−Cu、Co−Pt、Co−Bなども用いることができる。本発明においては磁性層の構造は、単層、多層のいずれでもよく、所望に応じ適宜選択される。
【0020】この磁性層3の形成は、真空蒸着法、化学的気相成長法(CVD法)、イオンプレーティング法、スパッタリング法などによって行うことができるが、ビデオテープを製造する場合は真空蒸着法が有利である。この方法は、例えば10-5〜10-4Torrに減圧したチャンバー内で電子銃により蒸着材料を加熱蒸発させ、非磁性基体テープを走行させながら、その表面に蒸着させる。この際、磁気特性のコントロール及び表面硬度の向上のために、通常は酸素を導入させる。この酸素の導入量は、要求特性に応じて実験によって容易に求めることができる。この磁気特性は、通常Bmが3,000〜10,000G、Hcが900〜2000エルステッド、角形が0.5〜0.9の範囲になるように選ばれる。また磁性層の厚さは0.02〜5μm、好ましくは0.05〜2μmの範囲内で選ばれる。
【0021】本発明においては、上記のようにして形成された磁性層3の上に、さらにトップコート層4が設けられるが、このトップコート層4は、2種の保護層の複合層として構成される。一般に、DLC層又は液体潤滑剤層のみでも保護効果を奏するが、十分な摩擦耐久性が得られない。また、DLC層単独では、耐環境特性の改善が不十分で、耐久性も不足するし、液体潤滑剤単独では、保存後の特性低下を免れない。
【0022】第一保護層は、一般式Sixyz(ただし0.3≦x≦0.45、0.3≦y≦0.6、x+y≦0.95、x+y+z=1)で表わされるケイ素の炭化物と酸化物との混合系から成っている。この第一保護層は、有機ケイ素化合物と炭化水素と酸素との混合ガスを用い、プラズマ重合法により形成される。この際の有機ケイ素化合物と酸素との混合比はケイ素原子1個当り酸素3モル以上であり、炭化水素の混合比は、所望の炭素量すなわち前記一般式中のZに応じて選ばれる。プラズマ重合法の操作条件は、アンダーコート層の形成条件と同じであるが、残存炭素を生じないように留意する必要がある。例えばRFのような高周波数を用いると反応が十分に進行しないで残存炭素を生じ、硬度が高くならないため十分な保護効果が得られない。Zの範囲としては、0.05〜0.1、特に0.07〜0.08が望ましい。
【0023】このようにして形成される第一保護層の組成は、例えばエスカ(ESCA)法又はオージェ(Auger)分光法によって求めることができる。
【0024】次に第一保護層の上に設ける第二保護層としてはDLC層又は液体潤滑剤層のいずれかが用いられる。
【0025】本発明において第一保護層として用いるケイ素の炭化物と酸化物の混合系から成る層は、DLCや液体潤滑剤との間で良好な相容性を示すとともに、それ自体優れた水分遮断性を有するので、DLCや液体潤滑剤による摩擦耐久性の向上に対する相乗効果をもたらす。
【0026】このDLCの形成は、チャンバーをあらかじめ10-6Torr程度まで真空排気したのち炭化水素ガスと水素ガスとをモル比1:3ないし3:1好ましくは1:2ないし2:1の割合で導入し、10-2Torrないし1Torrの圧力に達したときに放電を開始する。この際の放電周波数は50〜400kHzの範囲のものが適当である。これよりも低いと放電を安定した状態で継続することが困難な上に基板へのダメージが大きくなるし、またこれよりも高いとイオンが電極空間に閉じ込められ、イオン衝撃を生じないので、硬質のDLC層が形成されない。
【0027】この場合に、使用される炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、アセチレン、プロペンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素やベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素が好適である。
【0028】このDLC層は、屈折率1.9以上、接触角80度未満、膜厚30〜150Åにするのが好ましい。このDLC層は、耐食性を与えると同時に潤滑性を付与し、摩擦耐久性を向上させる作用がある。
【0029】このDLC層の形成に際しては、炭化水素ガスと水素ガスを所定の圧力まで導入し、電極に電圧を印加し、所望の層厚が得られるように非磁性基体テープの走行速度を増減してコントロールする。
【0030】他方、液体潤滑剤層を用いる場合は、適当な手段で第一保護層表面に液体潤滑剤を塗布する。この塗布厚としては10〜50Åの範囲が適当である。液体潤滑剤としては、通常ビデオテープの潤滑剤として用いられているものの中から任意に選ぶことができ、特に制限はない。このようなものとしては、例えばパーフルオロポリエーテル、高級脂肪酸又はそのエステル、シリコンオイル、フォスファゼン、パーフルオロ脂肪酸、フルオロリン酸エステル、パーフルオロアクリレートなどのオイル状化合物がある。
【0031】
【実施例】次に実施例、比較例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これらの例における各物性は以下の方法により測定した。
【0032】(1)DLCの屈折率;エプソメーター(溝尻光学社製)を用いて測定した。
【0033】(2)DLCの接触角;接触角計(協和界面科学社製)を用い、液滴として水(イオン交換水)を使用して測定した。
【0034】(3)初期摩擦;試料テープを180度抱き角の繰り返し摩擦試験機(ソニー株式会社)に1回通したときの摩擦係数(μ)として示した。
【0035】(4)耐久摩擦;試料テープを上記と同じ180度抱き角の繰り返し摩擦試験機に200回通したときの摩擦係数(μ)として示した。
【0036】(5)スチル;ソニー社製S1500デッキを用い、温度40℃,湿度20%(低湿度)、温度20℃,湿度60%(普通)、温度60℃,湿度90%(高温多湿)の3通りの環境下において、7MHzの信号を記録し、その出力が−5dBになるまでの時間(分)を測定した。
【0037】(6)摺動特性;WA2000の研磨テープを回転ロールに装着し、試料テープを接触させて回転させ、傷が付くまでの時間(分)を測定した。
【0038】(7)耐環境テスト;温度60℃、湿度90%の環境下で1週間保存した後の飽和磁束密度の変化を測定し、次式に従って求めた。
【0039】
【数1】


【0040】実施例1〜3、比較例1〜3厚さ10μmのポリエチレンテレフタレートのテープを、真空チャンバー中で走行させ、アンダーコート層、磁性層、トップコート層を形成させた。各層の形成に用いた条件は次のとおりである。
【0041】(i)アンダーコート層方法;プラズマ重合法周波数;100KHz圧力;10Pa有機ケイ素化合物;テトラメトキシシラン酸素量;ケイ素1当量当り5モル
【0042】(ii)磁性層方法;真空蒸着法圧力;10-5Torr材料;コバルト酸素量;50SCCM(膜中の含量Coに対し、35%)
【0043】(iii)第一保護層;
方法;プラズマ重合法周波数;100KHz圧力;10Paケイ素源;テトラメトキシシラン炭化水素;エタン、酸素=C/(Si+C+O)=0.05酸素量;ケイ素1当量当り5モル
【0044】(iv)第二保護層(DLC);
方法;プラズマ重合法周波数;100KHz圧力;10Pa炭化水素;メタン炭化水素/水素=1/1
【0045】このようにして、磁性層が厚さ0.1μmのコバルト層で、第一保護層が厚さ50Åの、Si0.330.60.07層で、第二保護層が厚さ30Åの屈折率1.95、接触角75度をもつDLC層で厚さ100Åのアンダーコート層SiOnのnが異なる6種の磁気テープを得た。このものの物性を表1に示す。
【0046】
【表1】


【0047】実施例4〜6、比較例4〜6第二保護層として、DLC層の代りにパーフルオロポリエーテルの塗布膜(厚さ30Å)を用いたこと以外は実施例1〜3、比較例1〜3と全く同じにして磁気テープを製造した。このものの物性を表2に示す。
【0048】
【表2】


【0049】この表1及び表2から分るように、第二保護層として、DLC層及び液体潤滑剤層のいずれを用いた場合でも、アンダーコート層のnが1.8未満又は1.95よりも大きくなると、磁気テープの耐久特性が低下する。
【0050】実施例7〜9第一保護層中の酸素と炭素の割合を表3に示すように変えること以外は実施例2と全く同様にして磁気テープを製造した。このものの物性を表3に示す。
【0051】
【表3】


【0052】実施例10〜12第一保護層中の酸素と炭素の割合を表4に示すように変えること以外は実施例5と全く同様にして磁気テープを製造した。このものの物性を表4に示す。
【0053】
【表4】


【0054】表3及び表4から分るように、第二保護層として、DLC層及び液体潤滑剤層のいずれを用いた場合でも、第一保護層中のxとyとの和が0.95よりも大きくなると、磁気テープの耐久特性が低下する。
【0055】実施例13,14、比較例7〜9第二保護層として、表5に示すような屈折率及び接触角をもつDLC層を用いること以外は、実施例2と全く同様にして磁気テープを製造した。このものの物性を表5に示す。
【0056】
【表5】


【0057】この表から分るように、第二保護層として用いるDLCの屈折率が1.9未満、接触角が80度以上の場合は、耐久特性が低下する。
【0058】実施例15〜21実施例5における第二保護層のパーフルオロポリエーテルの代りに、表6に示すような他の液体潤滑剤を用いること以外は全く実施例5と同様にして磁気テープを製造した。このものの物性を表6に示す。
【0059】
【表6】


* パーフロロアクリレート(共栄油脂化学社)
** CF3−(CH3CF2−O)n−PO32(Mw=2000)
【0060】この表から明らかなように液体潤滑剤の種類を変えても、いずれも良好な結果が得られる。
【0061】比較例10〜13実施例1においてアンダーコート層とトップコート層の両方を省いた場合(比較例10)、アンダーコート層のみを省いた場合(比較例11)、トップコート層の第一保護層を省いた場合(比較例12)、実施例4においてトップコート層の第一保護層を省いた場合(比較例13)について、同様に物性を測定した。その結果を表7に示す。
【0062】
【表7】


【0063】実施例22実施例2で得た磁気テープの表面に、パーフルオロポリエーテルの厚さ20Åの塗布層を設けたものについて物性を測定したところ、初期摩擦0.20μm、耐久摩擦0.28μm、スチル耐久性いずれも60分以上、摺動特性30分以上、耐環境テスト3%で、摩擦耐久性が向上していることが分った。
【0064】
【発明の効果】本発明によれば、高温高湿の環境下において長期間にわたって使用しても性能低下がなく、しかも摩擦耐久性の優れた、ビデオテープとして好適な磁気記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の構造を示す断面拡大図
【図2】 ポリエチレンテレフタレート基体上に設けられたアンダーコート層の膜厚と水分バリヤ性との関係を示すグラフ
【符号の説明】
1 非磁性基体
2 アンダーコート層
3 磁性層
4 第一保護層
5 第二保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 非磁性基体上に、アンダーコート層、磁性層及びトップコート層を順次積層して構成された多層構造体において、(イ)アンダーコート層が一般式SiOn(ただし、1.8≦n≦1.95)で表わされるケイ素酸化物から成ること、及び(ロ)トップコート層がケイ素の炭化物と酸化物との混合系から成る第一保護層と、その上に形成された屈折率1.9以上、接触角80度未満のダイヤモンド様炭素層又は液体潤滑剤層から成る第二保護層との複合層から構成されていることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】 トップコート層中の第一保護層が一般式Sixyz(ただし0.3≦x≦0.45、0.3≦y≦0.6、x+y≦0.95、x+y+z=1)で表わされる組成を有する請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項3】 磁性層がコバルト又はコバルト合金の蒸着層である請求項1、2又は3記載の磁気記録媒体。
【請求項4】 非磁性基体上に、有機ケイ素化合物と酸素との混合ガスを用いるプラズマ重合法によりアンダーコート層を形成させ、次いでこの上にコバルト又はコバルト合金を蒸着させて磁性層を形成させ、さらにこの上に有機ケイ素化合物と炭化水素と酸素との混合物を用いるプラズマ重合法により、ケイ素の炭化物と酸化物との混合系より成るトップコート層を形成させたのち、ダイヤモンド様炭素保護層又は液体潤滑剤塗布層を施すことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】 有機ケイ素化合物と酸素との混合ガスを用いる化学的気相成長法の代りに、ケイ素酸化物の蒸着によりアンダーコート層を形成させる請求項5記載の磁気記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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