説明

磁気部品ユニット

【課題】磁気部品への組付け性に優れ、コアの欠けが発生し難い簡易な構造のバネホルダを有した、磁気部品ユニットを提供する。
【解決手段】磁気部品ユニット1は、上コア21及び下コア22と、コイル23とを有する磁気部品2と、磁気部品2を保持するバネホルダ3とを備えている。バネホルダ3は、上コア21の上面に圧接する板バネ部31と、板バネ部31の両端から垂下すると共に下コア22の下面を係止する一対の保持脚部32とを有する。保持脚部32は、上コア21及び下コア22の側面210、220に対向配置される垂下部321と、垂下部321の先端側において下コア22の下面を係止する引掛け部322を有する。引掛け部322は、一対の保持脚部32の並び方向及び上下方向の双方に平行な断面において内側に凸となる、曲面323を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気部品と磁気部品を保持するためのバネホルダとを備えた磁気部品ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トランス、チョークコイル、リアクトル等の磁気部品として、導体を巻回してなるコイルと、該コイルを巻回軸方向の両側から挟持するように配された上コア及び下コアとを有するものがある。
かかる磁気部品を筐体等の被固定体に固定するに当たって、図11に示すごとく、上コア921と下コア922とコイル923とから構成されている磁気部品92において、磁気部品92の上コア921と下コア922とを保持する保持部934と、磁気部品92を被固定体である筐体94に固定する固定部935とを有するバネホルダ93を用いることが提案されている(特許文献1)。
【0003】
すなわち、まず、保持部934によって上コア921と下コア922とを巻回軸方向から挟持することにより、磁気部品92にバネホルダ93を装着して磁気部品ユニット9を形成する。上記保持部934は、保持用板バネ部931と保持脚部932から構成され、磁気部品92の上コア921と下コア922とを保持する機能を有する。
次いで、上記固定部935を筐体94に対してネジ95を用いてネジ留めすることにより、磁気部品ユニット9を筐体94に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−94312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記バネホルダ93の保持部934は、保持脚部932の下端部において、内側に屈曲して突出する下コア922の下面を支承する支承部936を形成している。そのため、磁気部品92に対して保持部934を上方から組付ける際、支承部936の端部を磁気部品92の側面に対して摺動させると、その組付け途中で支承部936が、上コア921と下コア922との境界部分に引掛かりやすい。そのため、上コア921や下コア922に欠けを生じさせるおそれがある。
【0006】
そこで、上記の問題を防ぐために、組付け作業において、上記保持部934の保持脚部932を、ある程度外側に開いて変形させた状態で組付けることが必要とされる。しかし、この場合は、以下の問題が生じやすい。すなわち、保持脚部932を上述のごとく変形させることで、保持脚部932の変位が塑性域まで達しやすく、保持脚部932が塑性変形を起こしやすい。その結果、保持脚部932が外側に開いて変形したまま復元せず、磁気部品92への組付けが不可能になるおそれがある。
【0007】
また、仮に保持脚部932の塑性変形を回避できたとしても、保持脚部932の組付け作業においては、保持脚部932を所定量弾性変形させる作業を必要とする。そのため、手組みではその手間がかかり作業性が悪化し、自動組付けでは設備が複雑となる。
また、保持脚部932を外側に開いて変形させるには、変形方向にある程度スペースが必要となる。そして、そのスペースは、保持脚部932の組付け後においてデッドスペースとなりやすい。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、磁気部品への組付け性に優れ、コアの欠けが発生し難い、省スペース化の可能な磁気部品ユニットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、互いに対向して配置された上コア及び下コアと、上記上コア及び下コアにより形成される磁路が鎖交するように上記上コアと上記下コアとの間に配されたコイルとを有する磁気部品と、該磁気部品を保持するバネホルダとを備え、
該バネホルダは、上記上コアの上面に圧接する板バネ部と、該板バネ部の両端から垂下すると共に上記下コアの下面を係止する一対の保持脚部とを有し、
該保持脚部は、上記上コア及び下コアの側面に対向配置される垂下部と、該垂下部の先端側において上記下コアの下面を係止する引掛け部を有し、
該引掛け部は、上記一対の保持脚部の並び方向及び上下方向の双方に平行な断面において内側に凸となる、曲面を備えていることを特徴とする磁気部品ユニットにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
上記磁気部品ユニットは、上記バネホルダの上記保持脚部が、上記垂下部と上記引掛け部を有すると共に、上記引掛け部が、上記一対の保持脚部の並び方向及び上下方向の双方に平行な断面において内側に凸となる曲面を備えている。これにより、上記バネホルダの上記磁気部品への組付けの際、上記保持脚部は、上記引掛け部の曲面において上記上コア又は下コアの側面に当接した状態のまま、下方に滑らせて組付けることができる。このとき、上記引掛け部は、上記上コアと下コアとの境界部分に引掛かりにくく、コア欠けを防ぐことができる。上記構成は、上記バネホルダの上記保持脚部の上記引掛け部を、上記断面において内側に凸となる曲面を備えた簡易な形状に構成することによって実現される。
【0011】
また、組付け作業において、上記保持脚部を必要以上に変形させる作業が不要であるため、上記保持脚部が塑性変形を起こすことも防止できると共に、その組付け性を向上させることができる。また、上記保持脚部を必要以上に変形させる作業が不要であるため、上コア及び下コアの側方に大きなスペースがなくてもバネホルダを磁気部品に容易に組付けることができる。そしてこれにより、上コア及び下コアの側方にデッドスペースが形成されることを防ぎ、上記磁気部品ユニットの省スペース化を図ることができる。
【0012】
以上のごとく、上記態様によれば、磁気部品への組付け性に優れ、コアの欠けが発生し難い、省スペース化の可能な磁気部品ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1における、磁気部品ユニットの斜視図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】実施例1における、バネホルダの斜視図。
【図4】実施例1における、図2に相当する磁気部品の断面説明図。
【図5】実施例1における、図2に相当する断面説明図であって、バネホルダの磁気部品への組付け途中における変形状態を示す説明図。
【図6】実施例2における、磁気部品ユニットの図2に相当する断面説明図。
【図7】実施例3における、磁気部品ユニットの斜視図。
【図8】実施例3における、磁気部品ユニットの平面図。
【図9】実施例4における、コイルアッセンブリの平面図。
【図10】実施例4における、磁気部品ユニットの平面図。
【図11】背景技術における、磁気部品ユニットの展開斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記磁気部品ユニットにおいて、上記上コア及び上記下コアは、特に、上下関係を限定するものではなく、便宜的な表現であり、これらの位置関係が上下逆になっても、水平方向や斜めとなってもよい。同様に、他の「上」、「下」の表現も、特に示さない限り実際の上下関係を限定するものではない。
【0015】
上記磁気部品としては、例えば、トランス、チョークコイル、リアクトル等がある。
また、上記バネホルダは、1個であっても、複数個配設されていてもよい。
また、上記上コア及び上記下コアは、それぞれ複数個あってもよい。この場合、コアの数に対応して、複数の上記バネホルダが配置されていることが好ましい。
また、上記磁気部品ユニットにおいては、上記バネホルダとは別に、筺体等の被固定体に固定可能な固定用バネ部材を配して構成してもよい。
【0016】
また、上記バネホルダは、少なくとも上記板バネ部が変形可能となっており、その変形は、主に弾性変形であるが、その変位によっては、塑性変形をも生じることもある。すなわち、板バネ部の変位が弾性域内に収まっていれば、弾性変形のみとなるが、板バネ部の変位が塑性域まで達すれば、弾性変形に併せて塑性変形も生じる。ただし、この場合でも、弾性変形分の復元力は保持した状態にあるため、塑性変形を伴って変形した状態で上記バネホルダが磁気部品に装着されても、その機能を発揮することは可能である。
したがって、本明細書では、上記板バネ部を含め上記バネホルダの各部に関して「変形」と言った場合には、主に弾性変形を意味するが、弾性変形と併せて塑性変形する場合をも意味する。
【0017】
上記バネホルダは、上記一対の保持脚部が、下方に向かうほど互いに近づくように傾斜して形成されると共に、互いに近づく方向に付勢されていることが好ましい(請求項2)。この場合には、上記保持脚部の上記引掛け部を上記下コアの下面に確実に引掛けることができる。そのため、上記バネホルダに上記磁気部品を安定して保持させることができる。
【0018】
また、上記引掛け部の突出量は、上記保持脚部と上記上コアとの間に形成されるクリアランスの最大幅と同等になるように形成されていることが好ましい(請求項3)。この場合には、上記バネホルダを上記磁気部品へ組付ける途中において、上記保持脚部の上記垂下部を、上記上コア及び下コアの側面と略平行になるようにすることができる。
それゆえ、上記バネホルダの組付け時に必要な上記上コア及び下コアの側方におけるスペースを広げることなく、上記引掛け部の突出量を最大限に大きくすることができる。その結果、上記磁気部品ユニットの省スペース化と上記バネホルダよる上記磁気部品の保持の安定性との両立を効果的に図ることができる。
【0019】
また、上記保持脚部は、上記垂下部の一部を内側に突出させて上記上コアの側面と上記下コアの側面とにわたって当接する側面当接部を有していることが好ましい(請求項4)。この場合には、上記上コアと下コアとが、一対の上記保持脚部の並び方向にずれることを防止することができる。
【0020】
また、上記コイルは絶縁部材に固定されてコイルアッセンブリを構成し、該コイルアッセンブリは、上記上コア及び下コアを、上下に直交する方向の四方から囲うように配され、上記バネホルダにおける上記保持脚部の上記垂下部は、上記上コア及び下コアと上記コイルアッセンブリとの間に配されていることが好ましい(請求項5)。この場合には、上記バネホルダを上記磁気部品へ組付ける際に、上記保持脚部を上記上コア及び下コアと上記コイルアッセンブリとの間に挿入することとなるが、その組付け作業を容易に行うことができる。すなわち、上記保持脚部を上記上コア及び下コアと上記コイルアッセンブリとの間に挿入するためには、上記保持脚部を大きく広げることができない。そのため、上記曲面を備えた引掛け部を有する上記バネホルダを用いることで、上記上コア及び下コアに欠けを生じさせることなく、これらの側面に引掛け部を摺動させて、容易に上記磁気部品に上記バネホルダを装着することができる。また、例えば、通常行われる上記上コアと上記下コアとを保持するために両者の接合面の外周をテープで巻く、いわゆるテープ巻きを行った場合では容易に行えない組付け作業を容易に実現することができる。
【0021】
また、上記磁気部品ユニットは、該磁気部品ユニットを被固定部に固定するための固定用バネ部材を備え、該固定用バネ部材は、上記被固定部への固定時に上記上コアの上面を押圧する固定用板バネ部を有し、該固定用板バネ部において、上記磁気部品と上記バネホルダとの間に挟持されていることが好ましい(請求項6)。この場合には、上記固定用バネ部材を、上記上コアの上面に対して、上記バネホルダによって挟持させて配置させることができる。そのため、上記固定用バネ部材によって、上記磁気部品を筺体などの被固定部に対して固定することができる。
また、上記固定用バネ部材が、上記固定用板バネ部において、上記バネホルダの上記板バネと上記上コアとの間に挟持された状態となるため、上記磁気部品ユニットの一部として、上記固定用バネ部材を上記磁気部品と一体化できる。そのため、部品の搬送、組付け等の取扱いが容易となる。なお、上記バネホルダの上記固定用バネ部材に対する押圧を安定させるため、上記固定用板バネ部は、平面部を有していることがより好ましい。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
実施例にかかる磁気部品ユニットにつき、図1〜図5を用いて説明する。
本例の磁気部品ユニット1は、図1〜図3に示すごとく、互いに対向して配置された上コア21及び下コア22と、上コア21及び下コア22により形成される磁路が鎖交するように上コア21と下コア22との間に配されたコイル23とを有する磁気部品2と、磁気部品2を保持するバネホルダ3とを備えている。
【0023】
バネホルダ3は、上コア21の上面211に圧接する板バネ部31と、板バネ部31の両端から垂下すると共に下コア22の下面221を係止する一対の保持脚部32とを有している。
また、保持脚部32は、上コア21及び下コア22の側面210、220に対向配置される垂下部321と、垂下部321の先端側において下コア22の下面221を係止する引掛け部322を有している。
また、図2に示すごとく、引掛け部322は、一対の保持脚部32の並び方向及び上下方向の双方に平行な断面において内側に凸となる、曲面323を備えている。
【0024】
また、バネホルダ3は、一対の保持脚部32が、下方に向かうほど互いに近づくように傾斜して形成されると共に、互いに近づく方向に付勢されている。
また、引掛け部322の突出量W1は、保持脚部32と上コア21との間に形成されるクリアランスの最大幅W2と同等になるように形成されている。
【0025】
ここで、上記同等とは、上記突出量W1と上記クリアランスの最大幅W2とが完全に一致することのみを表すものではなく、後述するごとく、引掛け部322を上コア21又は下コア22の側面210、220に当接した状態において、保持脚部32の垂下部321が、上コア21及び下コア22の側面210、220に対して略平行となる程度であればよい。つまり、上記突出量W1と上記クリアランスの最大幅W2とに多少の誤差が生じ得る範囲において同等であることを意味する。
【0026】
また、バネホルダ3は、少なくとも板バネ部31が弾性変形可能となっている。そのため、図2に示すごとく、バネホルダ3の磁気部品2への組付け後の状態では、弾性変形した板バネ部31は、上コア21の上面211を下方へ押圧した状態となる。かかる板バネ部31による上コア21の上面211の押圧と、引掛け部322による下コア22の下面221の係止とによって、バネホルダ3は、上コア21と下コア22とを上下方向に保持している。
【0027】
本例においては、磁気部品2は、DC−DCコンバータ等において使用されるチョークコイルである。
また、図1に示すごとく、上コア21及び下コア22は、コイル23の巻回中心軸に沿った平面による断面の形状が略E字状となる、いわゆるE型コアであり、コイル23の内側に挿入配置される中心磁脚212、222と、コイル23の外周に配される外側磁脚213、223とを有する。そして、上コア21と下コア22とは、中心磁脚212、222同士において、互いに当接している。そして、中心磁脚212、222における上コア21の側面210と下コア22の側面220とは同一面を構成している。
本例においては、中心磁脚212、222における上コア21の側面210と下コア22の側面220に沿って、保持脚部32の垂下部321が配されるように、バネホルダ3が磁気部品2に対して装着されている。
【0028】
また、バネホルダ3は、例えばステンレス鋼、銅または銅合金等の金属板を切り曲げすることによって構成されている。
また、板バネ部31は、図2、図3に示すごとく、中央が下方へ向かうように湾曲しており、その中央部において上コア21の上面211に当接している。
【0029】
また、バネホルダ3は、一対の保持脚部32が互いに近付く方向に付勢されている。すなわち、図3に示すごとく、磁気部品2に装着する前の状態(自由状態)においては、装着された状態(図2)よりも、一対の保持脚部32が互いに近付いており両者の間の距離が小さい状態にある。
また、上コア21及び下コア22はフェライトからなる。
【0030】
本例の磁気部品ユニット1を形成するに当たっては、まず、図4に示すごとく、コイル23(図4においては省略)をその上下から上コア21と下コア22とによって挟持した状態の磁気部品2を構成し、この磁気部品2に対して、図3に示すバネホルダ3を装着する。
バネホルダ3の装着にあたっては、図5に示すごとく、バネホルダ3における保持脚部32を外方へ広げるように若干変形させる。このとき、板バネ部31も多少変形する。そして、一対の引掛け部322の曲面323の間の距離が、磁気部品2の幅と同等以上となるまで変形させる。
【0031】
この状態で、保持脚部32を、引掛け部322の曲面323において上コア21の側面210に当接させ、下方に滑らせる。これにより、引掛け部322の曲面323は、上コア21の側面210と、下コア22の側面220との間の継ぎ目を越えて、下コア22の側面220に当接した状態でさらに下方へ滑る。その後、板バネ部31が上コア21の上面211に当接する。この状態において、一対の保持脚部32を押し下げることにより、板バネ部31を弾性変形させる。これにより、一対の引掛け部322は下コア22の下面221に係合される。
以上により、図1に示す磁気部品ユニット1を組み立てる。
【0032】
次に、本例の作用効果につき、説明する。
上記磁気部品ユニット1は、バネホルダ3の保持脚部32が、垂下部321と引掛け部322を有すると共に、引掛け部322が、一対の保持脚部32の並び方向及び上下方向の双方に平行な断面において内側に凸となる曲面323を備えている。これにより、図5に示すごとく、バネホルダ3の磁気部品2への組付けの際、保持脚部32は、引掛け部322の曲面323において上コア21又は下コア22の側面210、220に当接した状態のまま、下方に滑らせて組付けることができる。このとき、引掛け部322は、上コア21と下コア22との境界部分に引掛かりにくく、コア(上コア21又は下コア22)の欠けを防ぐことができる。上記構成は、バネホルダ3の保持脚部32の引掛け部322を、上記断面において内側に凸となる曲面323を備えた簡易な形状に構成することによって実現される。
【0033】
また、組付け作業において、保持脚部32を必要以上に変形させる作業が不要であるため、保持脚部32が塑性変形を起こすことも防止できると共に、その組付け性を向上させることができる。また、図5に示すごとく、保持脚部32を必要以上に変形させる作業が不要であるため、上コア21及び下コア22の側方に大きなスペースがなくてもバネホルダ3を磁気部品2に容易に組付けることができる。そしてこれにより、上コア21及び下コア22の側方にデッドスペースが形成されることを防ぎ、磁気部品ユニット1の省スペース化を図ることができる。
【0034】
また、バネホルダ3は、一対の保持脚部32が、下方に向かうほど互いに近づくように傾斜して形成されると共に、互いに近づく方向に付勢されている。これにより、保持脚部32の引掛け部322を下コア22の下面221に確実に引掛けることができる。そのため、バネホルダ3に磁気部品2を安定して保持させることができる。
【0035】
また、引掛け部322の突出量W1は、保持脚部32と上コア21との間に形成されるクリアランスの最大幅W2と同等になるように形成されている。これにより、バネホルダ3を磁気部品2へ組付ける途中において、保持脚部32の垂下部321を、上コア21及び下コア22の側面210、220と略平行にとなるようにすることができる。それゆえ、バネホルダ3の組付け時に必要な上コア21及び下コア22の側方におけるスペースを広げることなく、引掛け部322の突出量W1を最大限に大きくすることができる。その結果、磁気部品ユニット1の省スペース化と、バネホルダ3よる磁気部品2の保持の安定性との両立を効果的に図ることができる。
【0036】
以上のごとく、本例によれば、磁気部品への組付け性に優れ、コアの欠けが発生し難い、省スペース化の可能な磁気部品ユニットを提供することができる。
【0037】
(実施例2)
本例は、図6に示すごとく、保持脚部32の一部に側面当接部324を形成した例である。
保持脚部32は、図6に示すごとく、垂下部321の一部を内側に突出させて、上コア21の側面210と下コア22の側面220とにわたって当接する側面当接部324を形成している。
【0038】
また、側面当接部324は、図6に示すごとく、上コア21の側面210と下コア22の側面220とに面接触できるように平面状に形成されている。この平面状の側面当接部324が、下コア22と上コア21との接合面の上下にわたって、側面210と側面220とに当接している。
なお、本例の側面当接部324は、垂下部321の一部を内側に突出させるように屈曲して形成されている。
しかし、側面当接部324は上述した平面状の部分を有して形成されればよく、例えば、垂下部321の一部を内側に突出させるように打抜いて、輪郭の一部を垂下部321から切り離して側面当接部324を成形してもよい。
その他は、実施例1と同様である。
【0039】
本例の場合には、保持脚部32は、垂下部321の一部を内側に突出させて上コア21の側面210と下コア22の側面220とにわたって当接する側面当接部324を有している。これにより、上コア21と下コア22とが、一対の保持脚部の並び方向にずれることを防止することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0040】
(実施例3)
本例は、図7、図8に示すごとく、上コア21の上面211において、バネホルダ3と磁気部品2との間に、固定用バネ部材4を配置した例である。
固定用バネ部材4は、図示しないDC−DCコンバータの筺体あるいは基板等に磁気部品ユニット1を固定するための部材である。
固定用バネ部材4は、図7に示すごとく、固定用板バネ部41と一対の固定用脚部42とから構成されている。固定用板バネ部41は、平面状をなす平面部410を中央に有している。固定用脚部42は、固定用板バネ部41の両端からそれぞれ下方に垂下した垂下部421と、該垂下部421の下端から外方へ屈曲したフランジ部422とを有する。フランジ部422には、固定用ネジ(図示略)を挿通するための貫通孔423が形成されている。貫通孔423は、図8に示すごとく、フランジ部422の突出方向に長い長孔からなる。
【0041】
固定用バネ部材4は、固定用板バネ部41が、バネホルダ3の板バネ31に対して直交する方向となるように配されている。そして、固定用板バネ部41は、上コア21の上面211と板バネ31との間を通過するように配されている。また、垂下部421は、バネホルダ3の垂下部321が対向する磁気部材2の側面210と直交する側面214に対向配置されている。
なお、本例の固定用バネ部材4は、バネホルダ3とは別体で形成されている。しかし、これに限定されるものではなく、例えば、固定用バネ部材4をバネホルダ3と一体に形成してもよい。
その他は、実施例1と同様である。
【0042】
本例の場合には、図7、図8に示すごとく、固定用バネ部材4を、上コア21の上面211に対して、バネホルダ3によって挟持させて配置させることができる。そのため、固定用バネ部材4によって、磁気部品2を筺体などの被固定部に対して固定することができる。
【0043】
また、固定用バネ部材4が、固定用板バネ部41において、バネホルダ3の板バネ31と上コア21との間に挟持された状態となるため、磁気部品ユニット1の一部として、固定用バネ部材4を磁気部品2と一体化できる。そのため、部品の搬送、組付け等の取扱いが容易となる。
また、固定用板バネ部41は、平面部410を中央に有している。これによって、バネホルダ3の固定用バネ部材41に対する押圧を安定させることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0044】
(実施例4)
本例は、図9、図10に示すごとく、コイル23を固定してなるコイルアッセンブリ24を構成し、上コア21及び下コア22とコイルアッセンブリ24との間に、バネホルダ3の垂下部321を配置した例である。
コイル23は、図9に示すごとく、絶縁部材(絶縁材フレーム25)に固定されてコイルアッセンブリ24を構成している。そして、図10に示すごとく、コイルアッセンブリ24は、上コア21及び下コア22を、上下に直交する方向の四方から囲うように配されている。
また、バネホルダ3における保持脚部32の垂下部321は、上コア21及び下コア22とコイルアッセンブリ24との間に配されている。
【0045】
コイルアッセンブリ24は、図9に示すごとく、コイル23が絶縁材フレーム25に固定されることにより構成されている。なお本例では、絶縁材フレーム25は樹脂から形成されている。
絶縁材フレーム25は、上方から見た形状において、略四角形状に形成された外周壁251と、外周壁251の内側において、互いに対向する一対の外周壁251同士を連結するように形成された2つの連結壁252とから構成されている。これにより、絶縁材フレーム25には、一対の連結壁252と一対の外周壁251とによって囲まれた中央隙間部254が形成され、中央隙間部254の両脇において、外周壁251と連結壁252との間に外側隙間部253が一対形成されている。
【0046】
そして、コイル23は、絶縁材フレーム25における外周壁251及び連結壁252に沿って蛇行するようにこれらに固定されている。なお本例では、絶縁材フレーム25の内部にコイル23をインサート成形している。しかし、かかる固定方法は、これに限定されるものでなく、例えば、アウトサート成形によってコイル23を絶縁材フレーム25に固定してもよい。
そして、コイル23は、外側隙間部253及び中央隙間部254を三方から囲むように、配設されている。
【0047】
そして、コイルアッセンブリ24は、図10に示すごとく、上コア21と下コア22(図示略)によって、上下方向の両側から挟持されている。具体的には、コイルアッセンブリ24の一対の外側隙間部253、253に、上コア21及び下コア22の外側磁脚213、223が配され、中央隙間部254に、上コア21及び下コア22の中心磁脚212、222が配されている。
【0048】
これにより、上コア21及び下コア22の中心磁脚212、222と、外側磁脚213、223との間にコイル23が配線されることとなる。そして、図9、図10に示すごとく、コイルアッセンブリ24は、上コア21及び下コア22の中心磁脚212、222及び外側磁脚213、223のそれぞれを、コイル23によって上下に直交する方向の三方から囲い、絶縁材フレーム25によって、上下に直交する方向の四方から囲うように配された状態となる。
また、コイル23の一対のコイル端子231は、絶縁材フレーム25の外周壁251から外側へ露出している。
【0049】
また、バネホルダ3における保持脚部32の垂下部321は、上コア21及び下コア22が配された状態のコイルアッセンブリ24における、外周壁251と上コア21及び下コア22の側面210、220の間に配されている。
また、絶縁材フレーム25における外側隙間部253と中央隙間部254との並び方向Xに対向する一対の外周壁251には、固定用脚部42を、絶縁材フレーム25の上下方向と上記並び方向Xとの双方に直交する方向(以下、これを幅方向Yという)に位置決めできる一対の位置決め部26が設けられている。各位置決め部26は、一対の突出片261によって構成されている。
なお、一対の位置決め部26のうち一方の位置決め部26には、突出片261から更に上方に突出して、他方の位置決め部26の位置決め方向(上記幅方向Y)と直交する方向(上記並び方向X)において、固定用脚部42の垂下部421を外側から支承できる支承部262が一対形成されている。
その他は、実施例3と同様である。
【0050】
本例の場合には、コイル23は絶縁部材(絶縁材フレーム25)に固定されてコイルアッセンブリ24を構成し、コイルアッセンブリ24は、上コア21及び下コア22を、上下に直交する方向の四方から囲うように配され、バネホルダ3における保持脚部32の垂下部321は、上コア21及び下コア22とコイルアッセンブリ24との間に配されている。これにより、バネホルダ3を磁気部品2へ組付ける際に、保持脚部32を上コア21及び下コア22とコイルアッセンブリ24との間に挿入することとなるが、その組付け作業を容易に行うことができる。すなわち、保持脚部32を上コア21及び下コア22とコイルアッセンブリ24との間に挿入するためには、保持脚部32を大きく広げることができない。そのため、曲面323を備えた引掛け部322を有するバネホルダ3を用いることで、上コア21及び下コア22に欠けを生じさせることなく、これらの側面210、220に引掛け部322を摺動させて、容易に磁気部品2にバネホルダ3を装着することができる。また、例えば、通常行われる上コア21と下コア22とを保持するために両者の接合面の外周をテープで巻く、いわゆるテープ巻きを行った場合では容易に行えない組付け作業を容易に実現することができる。
【0051】
また、絶縁材フレーム25には、位置決め部26が設けられている。これにより、固定用脚部42を位置決め部26における一対の突出片261の間に配置し、さらに支承部262に垂下部421を当接させることができる。そのため、絶縁材フレーム25に対して上記幅方向Y及び上記並び方向Xに固定用バネ部材4を容易に位置決めすることができる。
その他、実施例1及び実施例3と同様の作用効果を有する。
また、上記実施例1〜3においては、磁気部品2がチョークコイルである例を示したが、本発明はチョークコイルに限らず、例えば、トランス、リアクトル等、他の磁気部品にも適用できる。
【0052】
また、上記実施例1〜3において、磁気部品2は上コア21と下コア22とが、中心軸を含む断面形状が略E字形状であるE型コア同士の組み合わせである、いわゆるEEタイプの磁気部品の例を示したが、本発明は、上記EEタイプ以外の種々のタイプの磁気部品にも適用できる。
例えば、上記E型コアと、上記E型コアにおける中心磁脚及び外側磁脚を有しない板状であって中心軸を含む断面形状が略I字状のいわゆるI型コアと、を組み合わせた、いわゆるEIタイプの磁気部品にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 磁気部品ユニット
2 磁気部品
21 上コア
210 側面
22 下コア
220 側面
23 コイル
3 バネホルダ
31 板バネ部
32 保持脚部
321 垂下部
322 引掛け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置された上コア及び下コアと、上記上コア及び下コアにより形成される磁路が鎖交するように上記上コアと上記下コアとの間に配されたコイルとを有する磁気部品と、該磁気部品を保持するバネホルダとを備え、
該バネホルダは、上記上コアの上面に圧接する板バネ部と、該板バネ部の両端から垂下すると共に上記下コアの下面を係止する一対の保持脚部とを有し、
該保持脚部は、上記上コア及び下コアの側面に対向配置される垂下部と、該垂下部の先端側において上記下コアの下面を係止する引掛け部を有し、
該引掛け部は、上記一対の保持脚部の並び方向及び上下方向の双方に平行な断面において内側に凸となる、曲面を備えていることを特徴とする磁気部品ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気部品ユニットにおいて、上記バネホルダは、上記一対の保持脚部が、下方に向かうほど互いに近づくように傾斜して形成されると共に、互いに近づく方向に付勢されていることを特徴とする磁気部品ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の磁気部品ユニットにおいて、上記引掛け部の突出量は、上記保持脚部と上記上コアとの間に形成されるクリアランスの最大幅と同等になるように形成されていることを特徴とする磁気部品ユニット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気部品ユニットにおいて、上記保持脚部は、上記垂下部の一部を内側に突出させて上記上コアの側面と上記下コアの側面とにわたって当接する側面当接部を有していることを特徴とする磁気部品ユニット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気部品ユニットにおいて、上記コイルは絶縁部材に固定されてコイルアッセンブリを構成し、該コイルアッセンブリは、上記上コア及び下コアを、上下に直交する方向の四方から囲うように配され、上記バネホルダにおける上記保持脚部の上記垂下部は、上記上コア及び下コアと上記コイルアッセンブリとの間に配されていることを特徴とする磁気部品ユニット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の磁気部品ユニットにおいて、該磁気部品ユニットを被固定部に固定するための固定用バネ部材を備え、該固定用バネ部材は、上記被固定部への固定時に上記上コアの上面を押圧する固定用板バネ部を有し、該固定用板バネ部において、上記磁気部品と上記バネホルダとの間に挟持されていることを特徴とする磁気部品ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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