説明

神仏礼拝祭事用香水

【課題】神仏礼拝祭事に於いて煙を出さず、また香炉などの道具を使わずに個人のレベルで手のひらなど体温で芳香を揮散してより効果的にその場にふさわしい心理的作用と環境浄化作用を得る事ができる、携帯可能でいつでも容易に利用できる神仏礼拝祭事用香水を提供する。
【解決手段】鎮静作用、リフレッシュ作用、殺菌作用、消臭作用のある精油を骨格に用い、組み合わせて香調を整え香水を調合した。これを身体または身辺に微量附香することにより神仏礼拝祭事によりふさわしい精神形成と環境浄化をはかることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神仏礼拝祭事時において、その場にふさわしいより高い心理的作用および環境浄化作用を得ることを目的とした神仏礼拝祭事用香水に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、神仏礼拝祭事において特定の芳香が利用されていることは身近に知られている。線香や焼香あるいは蓮の花や榊などを供えたり、また環境的に神社、仏寺には檜、杉、松、楠木などの香木が植えられ、周囲にその葉の芳香が漂うように配慮されている。また建材や調度などにもそれらの無垢の用材を多く用いるなど材の芳香が利用されている。また古代イエス・キリストの時代においても祭儀において乳香、没薬などが用いられていたことが記載されている。このように香木などの香りの持つ成分が精神の統一、集中、安定感などを生み出す心理的作用があり、また殺菌、消臭など周囲の空気を浄化する環境的作用のある理由で宗教儀式に利用されてきた。
【0003】
しかし、現在では線香等の使用は抹香臭く煙がでるので嫌がられるのも現実である。個人の家では普段敬遠される場合が多い。また一方、伊勢神宮などは別にして、通常神社寺院など植えられている檜、杉、松などから放散されるテルペン類の濃度は実際には低く周辺環境からの香り成分による心理的および環境浄化作用は期待できないのが現実である。まして個人宅ではほとんど周囲の環境からの恩恵は期待できない。また各種の精油がさまざまな生理活性を持つためにアロマテラピーとして利用されているが神仏の礼拝用として香水レベルに調香されたものは存在しない。
【0004】
沈香は礼拝用として用いる高級な線香の芳香基材に現在も用いられている。沈香(Agarwood)は奈良時代に淡路島に漂流した木を燃やした時に香気が発生したことより注目され、これを聖徳太子が沈香であると鑑定したと伝えられている。それ以来沈香は日本において薫香として最も気品ある香りとして珍重され平安時代から香道の主役も演じてきた。沈香の多くはベトナムやインドネシア、カンボジア、ミヤンマーの山奥で産出されており、それらは産地から由来した名前で六国と呼ばれ、それぞれ伽羅、羅国、真南蛮、真那加、佐曾羅、寸聞多羅の6種類に分類されている。沈香はジンチョウゲ科の主にアキラリア属の樹木に寄生したアオカビの1種アスペルギウス・ルーパーを主とした菌によって生成されると報告されている。沈香の最高の品質のものが伽羅と呼ばれて特に貴ばれている。伽羅は薫香して蒸散する成分が梅や桜の優美な香りに共通する化合物が多くふくまれ特に心を落ち着かせることが知られており瞑想して礼拝するときに最適なものの1つである。伽羅木にはクロモン類が多く含まれているのが他の沈香と区別する最大の特徴であり、低質の沈香抽出油から脂肪酸を除きクロモン類を添加して伽羅の香りに近づける薫香用の沈香オイル改質法が提案されている。(特開平10−140179)
【0005】
しかし沈香の香りは香木が180℃前後に加熱されて成分が一部分解され発生するもので、単に沈香の抽出成分やクロモン類などを香料成分として配合しても常温で使用する香水として用いた場合薫香の香りは得られない。そこで沈香の香りを香水用として再現するための研究がなされている。例えば沈香を加熱して香気を捕集して香料組成物を得る方法(特表2003−502482)や、沈香木を加熱しながら超臨界ガスによって香気成分を抽出して香料組成物を得る方法(特開平6−88095)などがある。しかし沈香木は非常に高価で希少なものでありこの方法で量産するのは困難である。
【0006】
一方蓮の花は色かたち姿とともに、その香りは気品が高く清らかで透明感があり、気分を新たにする朝の礼拝に最もふさわしい香りの代表であり、寺院の供花にも用いられている。しかし、日本において蓮の花は夏の一時、1日だけの生命であり季節を選ばずに利用することは困難である。また蓮の花の精油は希少であり入手することは難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記課題を解決することを目的としてなされてものであり、神仏礼拝祭事において煙を出さず、また香炉などの道具を使わずに個人のレベルで手のひらなど体温で芳香を揮散してより効果的にその場にふさわしい心理的作用と環境浄化作用を得ることができる、携帯可能でいつでも容易に利用できる神仏礼拝祭事用香水を提供することである。
【発明を解決するための手段】
【0008】
本発明者は神仏礼拝祭事時において臭覚に刺激を与え祈る行為にふさわしい心理状態を形成しかつ環境浄化をはかる精油を組み合わせて調香した香水とし、さらによりふさわしい香りとして、夕の礼拝や弔事のときの瞑想に適した気持ちを落ち着かせ、心を穏やかにするウッディオリエンタル沈香調の香料配合を、また朝の礼拝、慶事のときに適した爽やかに気分を新たにリフレッシュさせるグリーンフローラルフレッシュ蓮花調の香料配合を誠意研究した結果本発明に至った。
【0009】
本発明に使用できる精油は心理作用として鎮静作用または抗うつ作用、リフレッシュ作用のあるもの、環境浄化作用として殺菌作用または消臭作用のあるものを選び組み合わせればよい。上記の作用のある精油はウッディグリーンノートとして沈香、アミリス、安息香、イモーテル、サイプレス、サンダルウッド、シダーウッド、乳香、ファー、ジュニパー、エレミー、ティートリー、グアヤックウッド、ユーカリ、ミルラ、パチュリー、ベチパー、ヒノキ、スギ、ビャクシン、ローレルなどの精油が使用できる。フローラルベノートとしてイランイラン、カモミール、ジャスミン、ネロリ、バイオレット、ローズ、マンダリン、メリッサ、ラベンダー、ローズウッド、パルマローザなどの精油が使用できる。ハーバル・スパイシーノートとしてマートル、クラリセージ、セロリ、ディル、パセリ、ヒソップ、ライムブロッサム、マージョラム、クローブ、シナモン、バジル、コリアンダー、カルダモンなどの精油が使用できる。シトラス・フルーティーノートとしてオレンジ、タジェティーズ、タンジェリン、ベルガモット、バーベナ、グレープフルーツ、レモングラス、ライム、プチグレンなどの精油が使用できる。
【0010】
これらの精油から心理的作用及び環境浄化作用を考慮し、香りのノートを加味して選択ブレンドし香水を調合する。また香りの奥行きや味を深めるなどの調香のために他の精油類や合成香料成分を添加することもできる。また揮発性を調整するための希釈剤や保留剤を加えることができる。
【0011】
本発明の神仏礼拝祭事用香水に用いられる心理的作用及び環境浄化作用を有する精油類の含有量は5重量%以上、好ましくは20重量%〜60重量%である。通常使用する量が1滴程度の微量なので濃度が低すぎては効果が期待できない。
【0012】
請求項2記載の発明は特に夕の礼拝や弔事のときに気持ちを落ち着かせ、心を穏やかにし瞑想するのに最適なものである。本発明のウッディオリエンタル沈香調の神仏礼拝祭事用香水を得るためには以下のような香調骨格を中心に組み立てればよい。
【0013】
まず深く重いウッディノート骨格成分としては沈香、アミリス、安息香、イモーテル、サイプレス、サンダルウッド、シダーウッド、乳香、ファー、ジュニパー、エレミー、ティートリー、ミルラ、パチュリー、ベチパーなどやその他の樹木の精油などが使用できる。またこれらの精油に含まれる香りの成分であるピネン、カジネン、ミルセン、サイメン、カジネンなどのテルペン類化合物、サンタロール、セドロール、ターピネオール、ベチベロールなどのテルペン系アルコール類化合物などの単品も使用できる。また香木調の香りをもつ化合物としてβ−イオネン、サンダローレ、フェニルアルキルアルコール類などの合成香料を用いることもできる。
【0014】
さらにオリエンタルノート骨格成分としてはマートル、クラリセージ、ヒソップ、ライムブロッサム、マージョラム、クローブ、シナモン、コリアンダー、カルダモンなどの精油が使用できる。特にスパイシーで甘い香りをもつクローブ、シナモン、コリアンダーを用いることが好ましい。これらにまたバルサミックな香りをもつシンナミックアルコール、ベンジルベンゾエート、ベンゾインなどの単品化合物も用いることができる。
【0015】
これらに適量の、調香保留成分としてオークモス、動物性香料のムスク系、アンバー系、カストリウムなどを用いることができる。さらに微量のフローラル香調の成分を用いることもできる。
【0016】
とくに本発明においては沈香のうち伽羅香を再現するために伽羅の特徴である5味すなわち辛、苦、甘、酸、塩の5つの要素を併せ持つように成分を加味して調合することが好ましい。例えば、辛味成分としてはシナモンバークやクローブ、苦味成分としてはカカオ、甘味成分としてはバニリンやヘリオトロピン、酸味成分としてコリアンダーやベルガモット、塩味成分としてはオークモスやパチュリーなどを使用することができる。
【0017】
請求項3記載の発明は特に朝の礼拝、慶事のときに爽やかに気分を新たにすのに最適なものである。本発明のグリーンフローラルフレッシュ蓮花調の神仏礼拝祭事用香水を得るためには以下のような香調骨格を中心に組み立てればよい。
【0018】
まずフローラルノート骨格成分としてはイランイラン、ローズ、ジャスミン、カモマイル、ネロリ、バイオレット、ローズ、マンダリン、メリッサ、ローズウッド、パルマローザ、ゼラニウム、などの精油が使用できる。
【0019】
また上記のフローラルノートとしてローズ調のローズフェノン、シトロネロール、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、ローズP、ネロールなど、またジャスミン調のベンジルアセテート、ヘディオン、ヘキシルシンナミックアルデヒド、シスジャスモン、ジャスマールなど、その他リナロール、リラール、ヘリオナールなどの単品香料が使用できる。
【0020】
さわやかなグリーンノート骨格成分としてはコリアンダー、ユーカリ、ラベンダー、オリガナム、ガルバナム、ローレル、バーベナ、マートル、パチュリーなどの精油が使用できる。
【0021】
また上記のグリーンノートとしてシス3ヘキセン1オール、フェニルアセトアルデヒド、スチラリルアセテート、アリルアミルグリコレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、2−ヘキサノール、リガストラール、フロラパール、ヨノン、イソEスーパー、ピネン、テルピネオール、ボルネオール、シネオールなどの単品香料が使用できる。
【0022】
これらに適量の、調香保留成分としてオークモス、動物性香料のムスク、アンバー、カストリウムなどやその他の調香成分を用いることができる。
【0023】
本発明においてクロモジ精油を香料成分のうち0.5%〜2%配合することによって沈香及び蓮花香調をより深い味わいを醸し出すことができる。本発明に用いるクロモジ精油は葉及び幹から水蒸気蒸留によって得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明品を神仏礼拝祭事に手に1滴または周囲に少量散布することによって、煙を出さずまた香炉などの発熱装置を使用しないで、容易に精神が鎮静またはリフレッシュされ、かつ周囲の空気が殺菌または消臭されて神仏礼拝祭事の場によりふさわしい心理的、環境的状態を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明品は礼拝時に手などにつけて使用する場合はガラス瓶やセラミック製容器に本発明の香水を充填し、適量を身体に付けられるように口を細くしたり、キャップに付着棒をつけることが好ましい。この場合香料成分の附香率は20%以上にすることが好ましい。また噴霧して周囲を附香させる場合はアトマイザーに本発明の香水を充填して用いる。この場合は附香率は20%以下にすることが好ましい。
【0026】
以下、本発明の実施例を表1〜3に基づいて説明する。
【0027】
表1は請求項1記載の発明の実施例の香料配合を示したものである。実施例1は夕の礼拝や弔事のときに適した気持ちを落ち着かせ瞑想するための配合であり、また実施例2は朝の礼拝、慶事のときに適した爽やかに気分を新たにするための配合である。
【0028】
表2は請求項2及び4記載の発明の実施例の香料配合を示したものである。実施例3は夕の礼拝や弔事のときに適した気持ちを落ち着かせ瞑想するための配合のうち、沈香調の配合である。また実施例4はクロモジ精油を配合し5味を加味した伽羅香調のものである。
【0029】
表3は請求項3及び4記載の実施例の香料配合を示したものである。実施例5は朝の礼拝、慶事のときに適した爽やかに気分を新たにするための配合のうち蓮花香調のものである。また実施例6はクロモジ精油を配合した蓮花香調のものである。
【0030】
【表1】


【0031】
【表2】

【0032】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭覚に刺激を与え祈る行為にふさわしい精神状態を導き、かつ身辺の環境浄化をはかる精油または香料成分を含有することを特徴とする神仏礼拝祭事用香水。
【請求項2】
ウッディオリエンタル沈香調に精油または香料成分を配合してなることを特徴とする神仏礼拝祭事用香水。
【請求項3】
グリーンフローラルフレッシュ蓮花調に精油または香料成分を配合してなることを特徴とする神仏礼拝祭事用香水。
【請求項4】
クロモジ精油を配合することを特徴とする請求項1〜3の神仏礼拝祭事用香水。

【公開番号】特開2006−219468(P2006−219468A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68065(P2005−68065)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(502224630)