説明

神経刺激装置および神経刺激装置の作動方法

【課題】治療効果の向上に寄与しない刺激の増強を省くことにより、電力の浪費および神経への過度な負荷を防ぐ。
【解決手段】心臓を支配する神経に接続される一対の電極3a,3b間に電気パルスを出力する神経刺激部5と、電極3a,3b間のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部7と、該インピーダンス測定部7によって測定されたインピーダンスが増加した場合に、電気パルスのエネルギを増大させるように神経刺激部5を制御する制御部10とを備える神経刺激装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経刺激装置および神経刺激装置の作動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、迷走神経に接続された電極を介して迷走神経に電気的な刺激を与えることにより、心拍数の上昇や交感神経の興奮を抑制して不整脈を治療する装置が知られている(例えば、特許文献1および2参照。)。特許文献1および2においては、刺激の強度を強めるまたは頻度を高めることによって、心拍数の上昇をより強く抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4563785号公報
【特許文献2】特許第4252826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、装置が迷走神経に対して刺激を続けるうちに心拍数の抑制効果が低下してしまうことがある。これには、迷走神経が刺激に対して鈍化する等して刺激に対して生体が十分に反応しなくなる生体側の要因と、電極の位置ずれや神経組織の繊維化等によって電極の接触インピーダンスが増加することにより刺激の電圧が低下する電極側の要因とが存在する。
【0005】
すなわち、特許文献1および2の装置の場合、生体側の要因によって心拍数の抑制効果が低下してきたときに、それ以上刺激を強めても心拍の抑制効果が得られないにもかかわらず刺激を強めることとなり、電池の消耗を早めたり迷走神経に過度な負荷を与えたりしてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、治療効果の向上に寄与しない刺激の増強を省くことにより、電力の浪費および神経への過度な負荷を防ぐことができる神経刺激装置および神経刺激装置の作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、心臓を支配する神経に接続される一対の電極間に電気パルスを出力する神経刺激部と、前記電極間のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、該インピーダンス測定部によって測定されたインピーダンスが増加した場合に、前記電気パルスのエネルギを増大させるように前記神経刺激部を制御する制御部とを備える神経刺激装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、神経刺激部が出力した電気パルスが電極を介して神経に供給されることにより、該神経を興奮させて心臓の機能を改善することができる。
この場合に、インピーダンス測定部は、電気パルスが印加される一対の電極間のインピーダンスを測定し、測定値が増加した場合に制御部が電気パルスのエネルギを増大させる。すなわち、神経に実際に供給される電気パルスが弱くなったときに該電気パルスが増強される。これにより、治療効果の向上に寄与しない刺激の増強を省き、電力の浪費および神経への過度な負荷を防ぐことができる。
【0009】
上記発明においては、心拍数を測定する心拍数測定部と、前記神経刺激部によって前記電気パルスが出力される前後に前記心拍数測定部によって測定された心拍数の変化量を算出する心拍数変化量算出部とを備え、前記制御部は、前記心拍数変化量算出部によって算出された前記変化量が減少した場合に、前記電気パルスのエネルギを増大させるように前記神経刺激部を制御することとしてもよい。
このようにすることで、電極間のインピーダンスの増加が要因で電気パルスによる心拍の調節効果の低下が生じたときに制御部によって神経に供給される刺激が増強されるので、刺激による神経への負荷をより確実に防ぎつつ心拍数を一定のレベルに調節し続けることができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記制御部は、前記インピーダンスが増加していない場合、および、前記インピーダンスが増加していても前記心拍数の変化量が減少しない場合に、前記電気パルスのエネルギを維持したまま次の電気パルスを出力するように前記神経刺激部を制御することとしてもよい。
このようにすることで、電極間インピーダンスの増大によって心拍の調節効果が弱くなったとき以外は刺激の強度が強められることなく維持される。これにより、刺激の不要な増強をさらに確実に省略することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記制御部が、前記電気パルスの電圧、幅、周波数および出力期間のうち少なくとも1つを増大させることにより、電気パルスのエネルギを増大させることとしてもよい。
【0012】
また、本発明は、心臓を支配する神経に接続される一対の電極間に電気パルスを出力する神経刺激装置の作動方法であって、前記電極間のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスが増加した場合に前記電気パルスのエネルギを増大するように制御する神経刺激装置の作動方法を提供する。
【0013】
上記発明においては、前記電気パルスを出力する前後の心拍数の変化量を算出し、算出された変化量が減少している場合に前記電気パルスのエネルギを増大するように制御することとしてもよい。
また、上記発明においては、前記インピーダンスが増加していない場合、および、前記インピーダンスが増加していても前記心拍数の変化量が減少しない場合に、前記電気パルスのエネルギを維持したまま次の電気パルスを出力するように制御することとしてもよい。
また、上記発明においては、前記電気パルスの電圧、幅、周波数および出力期間のうち少なくとも1つを増大することとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、治療効果の向上に寄与しない刺激の増強を省くことにより、電力の浪費および神経への過度な負荷を防ぐことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る神経刺激装置の全体構成図である。
【図2】図1の神経刺激装置の変形例を示す全体構成図である。
【図3】(a)図1の神経刺激装置の神経刺激部が出力する刺激パルスの仕様と、(b)該刺激パルスが迷走神経に供給されることによる心拍数の変化とを説明する図である。
【図4】図1の神経刺激装置の作動方法を説明するフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートの続きを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態に係るに神経刺激装置1について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る神経刺激装置1は、図1に示されるように、患者の体外に配置される本体2と、該本体2とリード(図示略)を介して接続された神経電極3および心拍電極4とを備えている。
神経電極3は、例えば、迷走神経の側面に巻き付けられるカフ型であり、体内に埋め込まれて迷走神経に接続されている。神経電極3は、一対の陽極3aと陰極3bとからなる。
【0017】
心拍電極4は、患者の体表面に接続され、該患者の心拍を検出する。なお、心拍電極4は、心拍を検出可能な位置であれば患者の身体のどの位置に接続されてもよい。例えば、心拍電極4は、体内に埋め込まれて心臓に直接接続されてもよく、神経電極3と同一のリードに設けられて迷走神経の近傍に存在する血管に接続されてもよい。また、心拍電極4は、図2に示されるように、神経電極3と共通で使用され、切替部15によって後述する刺激パルスの供給、電極間インピーダンスの測定および心拍数の測定が切り替えられながら行われてもよい。
【0018】
本体2は、神経電極3に刺激パルス(電気パルス)を出力する神経刺激部5と、心拍電極4によって検出された心拍に基づいて心拍数を測定する心拍数測定部6と、神経電極3のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部7と、心拍数測定部6およびインピーダンス測定部7による測定値を記憶する記憶部8と、心拍数測定部6によって測定された心拍数の低下量を算出する心拍数低下量算出部(心拍数変化量算出部)9と、各部5,6,7,9の動作を制御する制御部10と、電池11とを備えている。
【0019】
本体2は、例えば、樹脂製または金属製の筺体を備え、神経刺激部5、心拍数測定部6、インピーダンス測定部7、記憶部8、心拍数低下算出部9、制御部10および電池11は筐体内に収容されている。また、本体2は、筐体の外側に該本体2に対して操作者が操作するためのユーザインタフェース12として表示部13および操作入力部14を備えている。
【0020】
神経刺激部5は、刺激パルスを生成し、生成した刺激パルスを神経電極3の電極3a,3b間に出力することにより、迷走神経の電極3a,3b間に挟まれた領域に刺激パルスを供給する。神経刺激部5は、図3(a)に示されるように、所定の電圧V1、幅W1および周波数F1を有する刺激パルスを繰り返し出力し続ける所定の出力期間T1と、刺激パルスの出力を停止する所定の休止期間Toffとを1サイクルとし、このサイクルを繰り返す。神経刺激部5は、刺激パルスの各パラメータについて、電圧V1が0〜20V程度、幅W1が0〜1ミリ秒、周波数F1が5〜20Hzに設定可能となっている。神経刺激部5は、刺激パルスの各パラメータの初期値として、例えば、電圧V1が5V、幅W1が100μ秒、周波数F1が10Hz、出力時間T1が10秒に設定されている。
【0021】
刺激パルスが神経電極3を介して迷走神経に供給されると、図3(b)に示されるように、刺激パルスの供給開始とともに心拍数が一時的に低下し、刺激パルスの供給停止とともに心拍数は上昇する。ここで、神経刺激部5から各パラメータが同一の値に設定された刺激パルスが出力されても、迷走神経の刺激パルスに対する鈍化や神経電極3と迷走神経との接触状態の変化などが原因で、心拍数の低下量D,D’が時間の経過とともに小さくなる、すなわち、刺激パルスによる心拍数抑制効果が弱くなることがある。
【0022】
心拍数測定部6は、心拍電極4によって検出された心拍の時間間隔の逆数から心拍数を算出する。心拍数測定部6は、算出した心拍数を記憶部8に出力する。
【0023】
インピーダンス測定部7は、神経電極3の電極3a,3b間に電圧を印加し、印加した電圧の降下量を測定し、測定された降下量に基づいて電極3a,3b間のインピーダンス(以下、電極間インピーダンスという。)R1を算出する。電極間インピーダンスR1は、神経電極3と迷走神経との間の接触インピーダンス、および、電極3a,3b間に配置された迷走神経や体液等の組織のインピーダンスを含む。したがって、各電極3a,3bの接続位置や接触状態が変化したり、または、電極3a,3b間において迷走神経の線維化や体液の付着などが生じたりすることにより、インピーダンス測定部7によって測定される電極間インピーダンスR1は徐々に増加し得る。インピーダンス測定部7は、算出した電極間インピーダンスR1を記憶部8に出力する。
【0024】
記憶部8は、心拍数測定部6、インピーダンス測定部7および心拍数低下量算出部(後述)9からそれぞれ入力された心拍数H1,H2、電極間インピーダンスR1および心拍数低下率D1を時系列で記憶する。また、記憶部8は、電極間インピーダンスの初期値R0(後述)および心拍数低下率の初期値D0(後述)を記憶する。
【0025】
心拍数低下量算出部9は、神経刺激部5から刺激パルスが出力される直前の心拍数H1、および、刺激パルスが停止させられる直前の心拍数H2を記憶部8から読み出し、これらの心拍数H1,H2から心拍数の低下量(変化量)を算出する。すなわち、心拍数低下量算出部9は、刺激パルスによって迷走神経が刺激されることに因る心拍数の低下量を算出する。本実施形態においては、心拍数の低下量として心拍数低下率D1=(H1−H2)/H1を算出する。心拍数低下量算出部9は、算出した心拍数低下率D1を制御部10に出力する。
【0026】
制御部10は、刺激パルスの出力1サイクル毎に、インピーダンス測定部7および心拍数低下量算出部9によって電極間インピーダンスR1および心拍数低下率D1をそれぞれ算出させ、算出されたこれらの値R1,D1に基づいて、次に神経刺激部5に生成させる刺激パルスのパルス電圧V1を決定する。
【0027】
具体的には、制御部10は、電極間インピーダンスR1が初期値R0から上昇し、かつ、心拍数低下率D1が初期値D0から低下している場合に、刺激パルスの電圧V1を所定の値αだけ大きな値V1+αに設定する。すなわち、制御部10は、電極間インピーダンスR1の増加が要因となって刺激パルスによる心拍数抑制効果が低下した場合に、次に出力させる刺激パルスのエネルギを増大させる。
【0028】
一方、制御部10は、電極間インピーダンスR1が増加していない場合、および、電極間インピーダンスR1が増加していても心拍数低下率D1が低下していない場合は、現在の刺激パルスの電圧を維持したまま次の刺激パルスを出力させる。すなわち、電極間インピーダンスR1が増加していないにもかかわらず心拍数低下率D1が低下した場合は、迷走神経の刺激パルスに対する反応が飽和していること要因であるので、それ以上刺激パルスを増強することなく現在の刺激パルスの強度を維持する。また、電極間インピーダンスR1が増加していても心拍数低下率D1が低下していない場合は、現在の刺激パルスの強度によって十分に心拍数抑制効果が現れているので、現在の刺激パルスの強度を維持する。
【0029】
電池11は、1次電池であり、各部5〜10,12〜14にこれらを作動させる電力を供給する。なお、電池11として充電可能な2次電池が用いられてもよく、また、電池11を備える代わりにACアダプタ等によって電力が供給される構成であってもよい。
【0030】
表示部13は、液晶ディスプレイまたはLED(発光ダイオード)ディスプレイ等であり、刺激パルスのパラメータV1,W1,F1,T1、心拍数測定部6によって測定された心拍数H1,H2、心拍数低下量算出部9によって算出された心拍数低下率D1などを表示する。操作者は、表示部13に表示されたこれらの数値を観察することにより、現在の刺激パルスの仕様や刺激パルスによる頻脈の治療効果等を確認することができる。
【0031】
操作入力部14は、スイッチやタッチパネル等である。操作者は、操作入力部14を操作することにより、刺激パルスの各パラメータV1,W1,F1,T1の初期値などを設定し、神経刺激の開始・終了の指示を本体2内の制御部10に入力することができる。
【0032】
次に、このように構成された神経刺激装置1の作用について図4および図5のフローチャートを参照して説明する。
神経刺激装置1は、神経刺激開始の指示が操作者によって操作入力部14に入力されることにより作動を開始する(ステップS1)。
【0033】
このときに、神経刺激装置1は、心拍数低下率の初期値D0を0に初期設定する。また、神経刺激装置1は、電極間インピーダンスを測定し、その測定値を電極間インピーダンスの初期値R0として記憶部8に記憶する。この初期値R0の測定は、神経電極3を体内に埋め込んだ直後ではなく、神経電極3と迷走神経との接触状態が安定する時期、例えば、埋め込んでから2週間〜1ヶ月程度後に実施されることが好ましい。
【0034】
次に、神経刺激装置1は、電極間インピーダンスR1および心拍数H1を測定および記憶してから(ステップS2,S3)、神経刺激部5によって刺激パルスの出力を開始する(ステップS4)。神経刺激装置1は、刺激パルスの供給を停止する直前に(ステップS5)再度心拍数H2を測定してから(ステップS6)、刺激パルスを停止する(ステップS7)。そして、神経刺激装置1は、刺激パルスの出力前後における心拍数H1,H2から心拍数低下率D1を算出する(ステップS8)。
【0035】
神経刺激装置1は、電極間インピーダンスR1の初期値R0に対する変化を判断し(ステップS9)、電極間インピーダンスR1が増加していた場合には(ステップS9のYES)さらに心拍数低下率D1の変化を判断し(ステップS10)、心拍数低下率D1が減少していた場合に(ステップS10のYES)刺激パルスのパルス電圧をαV、例えば、1Vだけ大きい値に設定変更する(ステップS11)。一方、神経刺激装置1は、電極間インピーダンスR1が増加していなかった場合(ステップS9のNO)および心拍数低下率D1が減少していなかった場合は(ステップS10のNO)、刺激パルスの設定をそのまま維持する。
【0036】
次に、神経刺激装置1は、現在の心拍数低下率D1を初期値D0として記憶部8に記憶することにより初期値D0を更新した後(ステップS12)、休止期間Toffを空けて(ステップS13)上述の工程(ステップS2〜S12)を、操作者によって神経刺激停止の指示が操作入力部14に入力されるまで(ステップS14)繰り返す。このときに、神経刺激装置1は、電極間インピーダンスR1が増加し(ステップS9のYES)かつ心拍数低下率D1が低下した(ステップS10のYES)場合には、心拍数低下率D1が一定になるまで(ステップS10のNO)、すなわち、心拍数抑制効果が十分に現れるまで刺激パルスの電圧V1をαずつ増加させる(ステップS11)。
【0037】
このように、本実施形態によれば、迷走神経に刺激パルスを供給する度に、電極間インピーダンスR1が増加しているか否かを判断し、電極間インピーダンスR1の増加によって心拍数低下率D1が低下している場合には刺激パルスのエネルギを増大する。これにより、神経電極3と迷走神経との接触状態が変化しても、迷走神経に実際に供給される刺激パルスの強度を一定に維持することができる。
【0038】
また、迷走神経の刺激パルスに対する反応が飽和することによって心拍数の抑制効果が低下している場合にはそれ以上刺激パルスを増強することがない。これにより、治療効果に寄与しないにもかかわらず刺激パルスのエネルギを不要に増大してしまうことがなく、電池11を浪費することおよび迷走神経に過度な負荷を与えることを防ぐことができる。
【0039】
なお、本実施形態においては、刺激パルスのエネルギを増大するために刺激パルスの電圧V1を大きくすることとしたが、これに代えて、刺激パルスの幅W1、周波数F1または出力期間T1を大きくしてもよく、これらのパラメータV1,W1,F1,T1のうち複数を大きくしてもよい。
【0040】
また、本実施形態においては、電極間インピーダンスR1が増大したときに、その旨を操作者に対して報知する報知部、例えば、警告灯を点灯するランプや警告音を発するスピーカを備えてもよい。
このようにすることで、患者は神経電極3の接続不良を早期に認識することができる。
【0041】
また、本実施形態においては、迷走神経を刺激する場合について説明したが、心臓を支配する交感神経または迷走神経以外の副交感神経を刺激することとしてもよい。交感神経を刺激する場合には、心拍数低下量算出部9に代えて、刺激パルスの出力前後における心拍数の上昇量を算出する心拍数上昇量算出部(心拍数変化量算出部)を備え、算出された上昇量が低下したときに刺激パルスのエネルギを増大すればよい。また、交感神経および副交感神経以外の神経を刺激することとしてもよい。
【0042】
このように迷走神経以外の神経も、刺激が繰り返されることによって刺激に対して徐々に鈍化したり、電極の接触状態が変化したりすることにより、治療対象の臓器に対する治療効果が時間の経過とともに弱まり得る。このときに、刺激による治療効果の低下の要因が神経側と電極側のいずれに存在しているかを判断し、電極側に要因がある場合にのみ刺激を増強することにより、神経への過度な負荷および電力の浪費を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0043】
1 神経刺激装置
2 本体
3 神経電極
4 心拍電極
5 神経刺激部
6 心拍数測定部
7 インピーダンス測定部
8 記憶部
9 心拍数低下量算出部(心拍数変化量算出部)
10 制御部
11 電池
12 ユーザインタフェース
13 表示部
14 操作入力部
15 切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓を支配する神経に接続される一対の電極間に電気パルスを出力する神経刺激部と、
前記電極間のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、
該インピーダンス測定部によって測定されたインピーダンスが増加した場合に、前記電気パルスのエネルギを増大させるように前記神経刺激部を制御する制御部とを備える神経刺激装置。
【請求項2】
心拍数を測定する心拍数測定部と、
前記神経刺激部によって前記電気パルスが出力される前後に前記心拍数測定部によって測定された心拍数の変化量を算出する心拍数変化量算出部とを備え、
前記制御部は、前記心拍数変化量算出部によって算出された前記変化量が減少した場合に、前記電気パルスのエネルギを増大させるように前記神経刺激部を制御する請求項1に記載の神経刺激装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記インピーダンスが増加していない場合、および、前記インピーダンスが増加していても前記心拍数の変化量が減少しない場合に、前記電気パルスのエネルギを維持したまま次の電気パルスを出力するように前記神経刺激部を制御する請求項2に記載の神経刺激装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記電気パルスの電圧、幅、周波数および出力期間のうち少なくとも1つを増大させる請求項1から請求項3のいずれかに記載の神経刺激装置。
【請求項5】
心臓を支配する神経に接続される一対の電極間に電気パルスを出力する神経刺激装置の作動方法であって、
前記電極間のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスが増加した場合に前記電気パルスのエネルギを増大するように制御する神経刺激装置の作動方法。
【請求項6】
前記電気パルスを出力する前後の心拍数の変化量を算出し、算出された変化量が減少している場合に前記電気パルスのエネルギを増大するように制御する請求項5に記載の神経刺激装置の作動方法。
【請求項7】
前記インピーダンスが増加していない場合、および、前記インピーダンスが増加していても前記心拍数の変化量が減少しない場合に、前記電気パルスのエネルギを維持したまま次の電気パルスを出力するように制御する請求項6に記載の神経刺激装置の作動方法。
【請求項8】
前記電気パルスの電圧、幅、周波数および出力期間のうち少なくとも1つを増大させる請求項5から請求項7のいずれかに記載の神経刺激装置の作動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−404(P2013−404A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135522(P2011−135522)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】