説明

祭事用幔幕

【課題】 工事に先立って執り行われる起工式や地鎮祭等の儀式に伝統的に使用される幔幕であって、綱や複数の短尺紐等による結着作業を不要とし、脱着作業の効率を大幅に改善して設営および撤去に要する時間を短縮すると共に、汚損の頻度を格段に減少させることができるようにした幔幕を提供する。
【解決手段】 幕本体1の上端縁裏面に、縦長状とした帯状チチ2の基端を取着すると共に、帯状チチ2の取着部位に雄雌何れか一方の面ファスナー4を一体化し、自由端側に面ファスナー4縦寸法よりも大きくした雄雌何れか他方の面ファスナー5を一体化した祭事用幔幕である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、幔幕の張設技術に関連するあらゆる分野をその技術分野とするものであって、幔幕を製造する分野は勿論のこと、その製造に必要とする設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野、その他現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(視 点)
大規模な開発工事等の施工に先立ち、執り行われる起工式や地鎮祭等には、多数の工事施工者およびその関係者等が、未だ未舗装の更地に参列することとなるため、一般に屋根部分にのみ防水シートを張設した家型のテントを設置し、内側に折畳み椅子を配し、テントの周囲に紅白の縦縞模様の施された幔幕を垂下状に吊設して式場および祭場にすることが多く、それら幔幕1は、図8の張設された従来型幔幕の斜視図に示してあるように、所定縦、幅寸法の矩形状に設定された幔幕1の上端縁に沿う幅方向の所定間隔置き毎に、夫々短冊状の帯体を二つ折りにし、その両端で幔幕1上端縁を厚み方向から挟み込み縫合、一体化して複数のチチ2,2,……を形成し、これら幔幕1上端縁に沿って複数配列されたチチ2,2,……の一方端側から他方端側に紅白の紐を寄りあわせて造られた綱3を挿し通し、該綱3の両端をテント屋根部骨格の適所に繋着すると共に、各チチ2,2,……間に露出する綱3の中途複数箇所夫々を、テントの骨格であって軒桁に相当する横架棒材Tに対し、短尺紐31,31,……で縛り着け、確りと吊下、固定して設営するものであった。
【0003】
しかしながら、このようなテントを設営する場所は、普通には地面が露出していることから、現地で幔幕1のチチ2,2,……に綱3を挿し通す作業を行い、テント横架棒材Tに張設して行く過程で幔幕1が接地し、雨天時やその直後等には特に泥水等が付着、浸透して汚れてしまうことが多く、また、綱3の複数箇所を短尺紐31,31,……で縛り付ける作業も繁雑になる上、幔幕1の吊下作業は、大抵が起工式当日の朝に行わなければならず、関係者の案内や地鎮祭の準備等に追われる最中、短時間の中にその設営作業を完了しなければならず、設営作業者にとって非常に煩わしい作業となっており、さらに起工式の一切が終了した後、テントを撤収するときにも、多数結び着けた短尺紐31,31,……を一つ一つ外し、綱3の繋着を解いて各チチ2,2,……から抜き外しながら幔幕1を折り畳み撤去することとなるが、その際にも複数本の短尺紐31,31,……や綱3、幔幕1を同時に取り扱わなければならないため、複数の作業者が必要となるだけでなく、間違って地上に落してしまったり、一部が地面についてしまうと、土や泥が付着してしまうために頻繁にクリーニングしなければならないという問題があった。
【0004】
(従来の技術)
このような幔幕の取扱い上の不具合を改良するのに応用可能な技術として、特開2003−135259号公報に開示された、チチに相当する吊りバンドの一端にボタンを縫着し、他端にボタン穴を形成して、幔幕に相当するカーテンの上端縁に沿って複数のボタン穴を開口させ、吊りバンドを交換可能として季節毎のデザインの変更を可能とした「デザインカーテンやノレン等の吊下げ体」発明や、特開平11−76044号公報の、一端をカーテン上端縁に縫合した帯状吊具の他端に面ファスナーを設け、該面ファスナーと雄・雌関係となる面ファスナーを、吊下対象となる建築物や旅客機客室等の天井面に貼着し、簡易的に設営可能とした「隔離用カーテン」発明等の技術を利用することが可能な訳ではない。
【0005】
しかし、前者は、ボタンによる係脱作業が繁雑であり、紐による縛着け作業と殆ど同程度の設営作業工数を必要とするだけではなく、吊り高さを可能な範囲で調整すること等現場に合わせて臨機応変に対応することは全く不可能とするものであり、したがってそれを利用したとしても従前までのものの大幅な改善が図られるものではなく、また、後者の技術では、吊下対象となるテント側への面ファスナーの貼着作業が伴うことになってしまうため、迅速な設営作業を実現するには、常にテントと幔幕とをセットで取り扱う必要があり、反って設営作業の自由度が失われて、テントと幔幕の組合せを間違えてしまうと、大幅な作業ロスを招いてしまう虞れがあり、一回毎に場所を変えて行う起工式や地鎮祭の式場や祭場用の幔幕に利用する技術としては不都合な面が多かった。
【特許文献1】(1)特開2003−135259号公報 (2)特開平11−76044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(問題意識)
この発明は、以上見てきたように、更地に簡易的に設営されるテントに対し、効率的に吊下可能とする幔幕は、何故か未だ開発されておらず、起工式や地鎮祭を執り行う施工主や工事関係者は、式場および祭場用のテントを設営するときに幔幕張設のために多大な手間と時間とを費やさざるを得ず、あいも変わらず式当日の早朝から多数の作業員が総出して準備作業に追われることから担当者には大きな負担となっており、また、設営および撤去の際にも幔幕やそれに使用する綱や多数の短尺紐等が地面に接触あるいは落下する等して汚れたり、残された短尺紐を見落としたまま幔幕を引き外してチチや幕自体を破損させてしまったりと、頻繁にクリーニングや修理を行わなければならず、不経済であるという欠点があった。
【0007】
(発明の目的)
そこで、この発明は、綱や複数の短尺紐等による結着作業を不要とし、脱着作業の効率を大幅に改善し、設営および撤去に要する時間を短縮すると共に、汚損の頻度を格段に減少させることができる幔幕を実現させることはできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の祭事用幔幕を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明に包含される祭事用幔幕は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、式場や会場等の周囲に張り付けるのに相応しい模様を有する幕本体の上端縁幅方向適宜間隔置き毎となる裏面に、縦長状とした帯状チチの基端側所定範囲を取着すると共に、夫々の帯状チチにおける少なくとも幕本体への取着部位範囲全面か略全面に対して雄雌何れか一方の面ファスナーを一体化した上、それら個々の帯状チチにおける自由端側であって且つ前記面ファスナーと同一側となる側には、前記面ファスナーの縦長寸法よりも大きくした雄雌何れか他方の面ファスナーを一体化してなるものとした構成を要旨とする祭事用幔幕である。
【0009】
これを換言すれば、式場や会場等の周囲に張り付けるのに相応しい模様を有する幕本体の上端縁幅方向適宜間隔置き毎となる裏面に、縦長状とした帯状チチの基端側所定範囲を取着すると共に、夫々の帯状チチにおける少なくとも幕本体への取着部位範囲全面か略全面に対して雄雌何れか一方の面ファスナーを一体化した上、それら個々の帯状チチにおける自由端側であって且つ前記面ファスナーと同一側となる側には、前記面ファスナーの縦長寸法よりも大きくした雄雌何れか他方の面ファスナーを一体化してなるものとし、吊着対象とする横架棒材もしくは紐材等に沿って配した各帯状チチを、それら横架棒材もしくは紐材等に夫々巻付け、夫々の自由端側に一体化してある雄雌何れか他方の面ファスナーの連結位置を無段階的且つ自在に調節しながら、基端側に一体化してある雄雌何れか一方の面ファスナーに対して夫々着脱自在に取着、連結してなるものとした祭事用幔幕であるということができる。
【0010】
そして、上記基本的な構成によるこの発明には、式場や会場等の周囲に張り付けるのに相応しい模様を有する幕本体の上端縁幅方向適宜間隔置き毎となる裏面に、夫々所定縦横寸法の雄雌何れか一方の面ファスナーを一体化し、当該幕本体とは別体であって縦長状とした帯状チチの基端側所定範囲の表裏面双方に雄雌何れか他方の面ファスナーを一体化すると共に、自由端側の少なくとも裏面に、基端側面ファスナーの縦長寸法よりも大きくした雄雌何れか一方の面ファスナーを一体化した上、自由端側面ファスナーが設けられていない一面側の基端側面ファスナーか、あるいは表裏面双方に自由端側面ファスナーが設けられている場合には、表裏面側何れか一方の基端側面ファスナーかの何れか一方を、前記幕本体の上端縁に配設された複数の各面ファスナー毎に脱着自在に連結してなるものとした祭事用幔幕が含まれている。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり、この発明の祭事用幔幕によれば、各帯状チチの自由端側に一体化された面ファスナーの縦長寸法を、帯状チチの基端側に一体化された面ファスナーの縦長寸法よりも大きく設定したことにより、当該幕本体を吊着する際に、吊着の対象となる横架棒材や紐材等の巻付け、繋着に必要な帯状チチの長さ寸法に応じて、自由端側の面ファスナーの基端側の面ファスナーに対する貼着位置を現場の状況に応じ、高い自由度をもって調節することを可能とし、未だに使用を続けている従来型の幔幕のように、設営の際に幅方向の一方の端部に位置するチチから順次、紅白の綱等を挿し通し、さらに各チチ間に露出した綱を、複数本の短尺紐等を用いて横架材等に縛り着け張設するという面倒な作業を不要とし、また撤去の際に、多数の短尺紐を解いたり、綱を抜き取ったりという繁雑作業が一切不要となることから、幔幕自体の張設および撤去作業の効率を大幅に改善し、設営・撤去の作業時間を短縮すると共に、片手で幕本体を確りと保持しながら他方の手で次々に帯状チチの面ファスナーを着脱できることとなって、幕本体および帯状チチの地上面への落下や接触の危険性をなくし、汚損の頻度を格段に減少させることになるという秀れた特徴が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
幕本体は、様々な式場や会場等となる建築物室内の壁やテントの骨格、もしくはそれに変わるもの等に張り付けて装飾するのに相応しい模様を表示可能とする機能を果たすものであり、実質的に所定表面積を有して装飾の目標となる範囲に張設可能な所定形状の天然繊維または合成繊維、あるいはそれらの混紡等からなる布地または合成樹脂シート等から形成したものとすることが可能であり、少なくとも表面側となる一側面の略全面に渡って、紅白の縦縞模様や黒白の縦縞模様あるいはそれ以外の式場または会場等の目的に応じた模様や絵柄、もしくは写真等を紡織、刺繍、染色および/または印刷等の外、現在開発済みの、もしくは今後開発されるあらゆる技術によって表示したものとすることが可能であり、さらに、少なくとも上縁の幅方向端角部に、吊着紐装着用のグロメットを添設したものとして少なくとも上縁左右端を紐で繋着可能とすることができる。
【0013】
帯状チチは、その複数が幕本体の上端縁幅方向適宜間隔置き毎となる裏面に配され、幕本体の吊着対象となる横架棒材や紐材等に沿って脱着自在に装着可能とする機能を果たすものであり、それら吊着対象物に対して巻付け状に装着可能な比較的柔軟且つ十分な吊着強度を確保できる縦長帯状のものに形成しなければならず、例えば天然繊維や合成繊維またはそれらの混紡からなる布地製、あるいは合成樹脂シート製等とすることが可能であり、その基端側所定範囲を幕本体の上端縁裏面に取着、一体化し、取着部位範囲全面か略全面に雄雌何れか一方の面ファスナーを一体化すると共に、自由端側であって且つ前記面ファスナーと同一側となる側に、前記面ファスナーの縦長寸法よりも大きくした雄雌何れか他方の面ファスナーを一体化したものとするのが望ましい。
【0014】
なお、幕本体上端縁の該当する裏面箇所の夫々と、各帯状チチ基端側の所定範囲との夫々に、雄雌面ファスナーの何れか一方を一体化し、互いに脱着可能なものとすることができ、より具体的には、幕本体への結合部分を含む全長寸法を、基端側面ファスナー縦寸法の約7ないし8倍程度に設定すると共に、先端側面ファスナー縦寸法を、基端側面ファスナー縦寸法の約3倍程度に設定したものとするのが望ましく、さらに具体的には、全長を約30cm前後、幅寸法を約6cmとし、基端側の幕本体への結合部分もしくは基端側面ファスナー縦寸法を約4cmとする一方、先端側面ファスナー縦寸法を約12cmとすることができ、使い勝手を考慮すると、先端側所定範囲の表裏面双方に、基端側面ファスナーに脱着自在に連結可能な組合せとなる雄・雌何れか一方もしくは他方の面ファスナーを一体化し、幕本体に脱着可能な別体部品とした場合には、基端側所定範囲の表裏面双方に、幕本体上端縁裏面の面ファスナーおよび先端側面ファスナーの双方に連結可能な組合せとなる雄・雌何れか他方もしくは一方の面ファスナーを一体化したものとすることができる。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【実施例1】
【0015】
図1の幔幕要部の斜視図、および図2の帯状チチ裏面側の正面図に示される事例は、幕本体1の上端縁幅方向適宜間隔置き毎となる裏面に、縦長状とした帯状チチ2,2,……の基端側所定範囲を取着すると共に、夫々の帯状チチ2,2,……における少なくとも幕本体1への取着範囲の略全面に対して雄雌何れか一方の面ファスナー4を一体化した上、それら個々の帯状チチ2,2,……における自由端側であって且つ前記面ファスナー4と同一側となる側には、前記面ファスナー4の縦長寸法よりも大きくした雄雌何れか他方の面ファスナー5を一体化してなるものとしたこの発明に包含される祭事用幔幕における代表的な一実施例を示すものである。
【0016】
当該祭事用幔幕は、縦約170ないし180cm程度、幅370ないし390cm程度の矩形状に形成され、図1中に示すように、適宜紅白の縦縞模様が施された幕本体1と、該幕本体1の上端縁裏面の、幅方向に沿って約30ないし80cm程度の間隔を隔てた箇所の夫々に帯状チチ2,2,……の各基端側所定範囲を夫々縫着することにより、一体化したものとなっている。
【0017】
幕本体1上端縁裏面の略全幅には、図2中に示すように、上下幅寸法S約2cm程度の補強用帯紐12を縫着、一体化したものとなっており、該上端縁幅方向裏面の端部から、約70cm程度の間隔を隔てた箇所毎に、全長約30cm前後、幅寸法W約6cmmの短冊状に形成された帯状チチ2の基端から縦寸法L3約4cmの矩形状範囲を、前記補強用帯紐12に重ねた状態に縫合、一体化したものとし、さらに、幕本体1への帯状チチ2の縫合と同時か、あるいは、それとは別の縫着かの何れかによって該基端側縦寸法L3約4cmの矩形状範囲と略同一範囲に、雄面ファスナー4を縫着したものとする一方、各帯状チチ2の基端側雄面ファスナー4が一体化されたのと同一側面であって、先端から縦寸法L1約12cmの範囲略全面に、雌面ファスナー5を縫合、一体化したものとなっており、従って雄面ファスナー4と雌面ファスナー5との間には、縦寸法L2約14cmの帯状部分が形成されたものとなっている。
【0018】
前記雄雌面ファスナー4,5は、互いに逆転配置させて帯状チチ2の基端側に雌面ファスナー5を一体化し、先端側に雄面ファスナー4を設けたものとすることが可能であり、また、帯状チチ2基端側に設けられた雄面ファスナー5は、図3の帯状チチ裏面の正面図に示すように、帯状チチ2基端側の縦寸法L3約4cmを大きく越えて、幕本体1の下方に向けて縦寸法L4約18cm程度延伸されたものとすることができる。
【実施例2】
【0019】
この発明の祭事用幔幕は、図5の脱着可能な帯状チチを有する幔幕の斜視図、および図6の帯状チチ裏面側の正面図に示したように、全ての帯状チチ2,2,……を、幕本体1に対して脱着自在としたものとすることが可能である。
紅白の縦縞模様が施された幕本体1は、図6中に示すように、上端縁裏面の幅方向に渡り、補強用帯紐12が一体化されており、上端縁幅方向約70cm前後置き毎となる裏面に、縦5cm幅7cm前後の矩形状の雄面ファスナー4,4,……が、縫合により一体化されており、これら各雄面ファスナー4,4,……の夫々には、全長約30cm、幅約6cmの帯状チチ2,2,……が脱着自在に装着可能なものとなっており、各帯状チチ2,2,……は、基端から縦寸法L3約4cmの矩形状範囲である表裏面双方に、雌面ファスナー5,5が夫々縫合、一体化されており、また、各帯状チチ2,2,……の少なくとも一側面の先端側から縦寸法L1約12cmの矩形状範囲に渡り、雄面ファスナー4が縫合によって一体化されたものとなっている。
【0020】
また、前記各帯状チチ2,2,……の先端側雄面ファスナー4は、帯状チチ2,2,……の表裏面同一範囲の双方に一体化したものとすることが可能であり、さらにまた、図7の幕本体の上端角部裏面の正面図に示すように、幕本体1の少なくとも上端幅方向の両端角部付近に、金属製あるいは硬質または強化樹脂製もしくは合成ゴム製等のグロメット13,13を設け、幅方向内側の近傍適所に、帯状チチ2脱着用の雄面ファスナー4を一体化したものとすることが可能であり、さらに、同様のグロメット13,13,……を、幕本体1左右端縦縁の上下間に沿う適宜間隔毎となる箇所の夫々に一体化したものとすることも可能である。
【0021】
(実施例の作用)
以上のとおりの構成からなるこの発明の祭事用幔幕は、図1および図2中に示したものとすると、例えばテント骨格部材適所の横架棒材Tに沿って吊着しようとする場合に、作業者は折り畳まれた状態の幕本体1を片方の手で抱え持ち、横架棒材Tの一方の端部側から順次、他方の手で、幕本体1の一方端側の帯状チチ2の先端側を巻き付けるようにして同一帯状チチ2基端側の雄面ファスナー4に対して同じ側面の先端側雌面ファスナー5を、上下最適な箇所に調節しながら圧接して結着させ、横架棒材Tの一方端側から他方端側へ、次々と各帯状チチ2,2,……を巻き付け、結合させて行き、その過程で帯状チチ2,2,……の装着が完了した部分の幕本体1を順次、吊下げ状に展開させてテントの内壁面を、紅白縦縞模様の幔幕で装飾することが可能となる。
【0022】
また、図2中に示したように、各帯状チチ2,2,……の先端側雌面ファスナー5,5,……の縦寸法L1を、基端側雄面ファスナー4,4,……の縦寸法L3よりも長く設定したことにより、互いの連結位置を上下方向に自由に移動、調節することが可能となり、太さの違う横架棒材Tへの対応が可能であると共に、水平状に掛け渡され逆放物線状に橈んだ紐等への装着に際しては、各部での紐の高低に合わせて帯状チチ2,2,……の結合位置を調節し、幕本体1上端縁を略水平状に吊下することが可能となる。
【0023】
さらに、当該祭事用幔幕を撤去する場合には、前述の説明とは殆ど逆の手順によって行うことが可能であり、作業者は、横架棒材Tの一方端側に相当する幕本体1の下端側角を片方の手で保持し、その上方に位置する上端側角付近の帯状チチ2を他方の手で引き剥がして横架棒材Tから取り外し、順次取り外した部分の幕本体1を、片方の手で適宜折り畳みながら保持し、他方の手では帯状チチ2,2,……を順次取り外して行くことが可能であり、脱着に際して幕本体1の裾付近等が地上に接触したり落下したりするのを防ぐのに好都合なものとなる。
【0024】
そして、図3中に示したように、帯状チチ2基端側の雄面ファスナー4を、縦寸法L4約18cm程度とすると、図4の横架棒材に吊着した帯状チチの断面図中に白抜き矢印で示すように、帯状チチ2の先端側雌面ファスナー5の基端側雄面ファスナー4に対する上下調節範囲を拡大することが可能となり、結果として幕本体1の上端縁が、横架棒材Tを覆い隠す巻き付け状態に装着することが可能となる外、断面形状のより大きな横架棒材Tへの取付にも対応で可能となる。
【0025】
図5および図6に示したように、帯状チチ2,2,……を幕本体1から離脱可能とした祭事用幔幕によれば、予め各帯状チチ2,2,……を幕本体1の対応箇所に装着して置き、前記図1に示したものと同様の吊着および撤去作業を行うことが可能である外、先ず始めに横架棒材Tの適宜間隔毎となる適所の夫々に、各帯状チチ2,2,……を巻き付け、夫々の基端側雄面ファスナー5に、これと同一面側となる先端側雌面ファスナー5を結合して装着状とした上、横架棒材Tの幕本体1を装着する一方側に、未だ結合されていない側面の雌面ファスナー5、5,……が、揃うように配置させて置き、続いて折り畳まれている幕本体1を片方の手で保持し、他方の手で上端縁の各雄面ファスナー4,4,……を、順次対応する帯状チチ2,2,……の夫々露出状となっている雌面ファスナー5,5,……に接合させ、吊着が完了した部分から幕本体1を展開、吊下げ状として行くという手順で吊着作業を進めることが可能となる。
【0026】
さらに、撤去の際にも、始めに幕本体1の上端縁の各雄面ファスナー4,4,……を、横架棒材T一方端側に配置された帯状チチ2,2,……の基端側雌面ファスナー5,5,……から、他方端側に配置されたものに渡り、順次取り外しながら、同時に幕本体1を折り畳み、幕本体1を取り外した後に、各帯状チチ2,2,……を横架棒材Tから取り外すという手順で作業を進めることができる。
【0027】
また、図7中に示したように、幕本体1の少なくとも上端幅方向端の角部付近にグロメット13,13を設けると、各グロメット13、13に挿し通した図示しない短尺紐を、テント骨格の適所等に縛り付けることにより、より強い強度で幕本体1の上端角を吊下することが可能となる。
【0028】
(実施例の効果)
以上のような構成からなる実施例の祭事用幔幕は、前記この発明の効果の項で記載の特徴に加え、帯状チチ2,2,……の仮止めに面ファスナー4,5を用いたことにより、撤去の際に、帯状チチ2の外し忘れたがあった場合でも、幕本体を引き剥がす操作によって帯状チチ2,2,……の面ファスナー4,5が自動的に外れるので、幔幕の破損を防止することができる。
【0029】
また、各帯状チチ2の基端側に配された雄面ファスナー4の縦長寸法L4を、図3および図4中に示したように、基端側縫着範囲の縦長寸法L3や、先端側雌面ファスナー5の縦長寸法L1に比較して長く設定したことにより、図4に示すように、先端側雌面ファスナー5の基端側雄面ファスナー4への結着位置を縦寸法L4内で自在に調節することが可能となり、横架棒材Tに吊下げるだけでなく、幕本体1の上端縁で横架棒材Tを隠蔽状にして帯状チチ2,2,……ならびに横架棒材Tを会場または式場内から見えないように設営して、装飾性や美観の向上を図ることができる。
【0030】
帯状チチ2,2,……を、図5および図6中に示したように、幕本体1に対して脱着自在に取着可能なものとすることにより、祭事用幔幕を設営、撤去ならびに保管する際に、幕本体1と帯状チチ2,2,……とを別々に取り扱うことができるので、付属部品の無い矩形シート状の幕本体1を、嵩張らせずに整然と折り畳むことが可能であり、また多数の帯状チチ2,2,……を束ねたり、纏めて袋詰したりすることにより、様々な場面での取扱い作業性を高めることができるものとなり、しかも、幾つかの帯状チチ2,2,……が破損してしまったような場合にも、縫合等の修理を必要とせずに、簡便に交換することができる上、予め幕本体1の上端縁裏面側の雄面ファスナー4,4,……の幅方向間隔を狭めて形成して置くことにより、強風や雨天等によって幕本体1に通常より大きな荷重が掛るような場合には、帯状チチ2,2,……を幅方向に沿って高い配置密度とするよう装着し、また、好天に恵まれた場合には、然程負荷が掛からないので、幅方向に沿った間隔を広げて帯状チチ2,2,……を装着する等、自在に吊着強度を調節することができ、天候や横架棒材Tや紐等の横架対象物の強度等の各種条件に応じて、多様な対応が可能となる。
【0031】
さらに、図7中に示したように、少なくとも幕本体1の上端縁幅方向角部分付近にグロメット13,13を設け、これらに短尺紐等を通して横架棒材T等に結着し、吊着強度を補完可能なものとしたことにより、特に、脱着自在な帯状チチ2,2,……を装着するものとした場合等には、幅方向端角部付近に配された帯状チチ2,2への過大な負荷を軽減し、高い設営強度を確保することができるという利点を得られることになる。
【0032】
(結 び)
叙述の如く、この発明の祭事用幔幕は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも、製造も容易であって従前からの幔幕に比較して設営ならびに撤去に要する作業時間を大幅に短縮することができ、それに要する労力も格段に削減することができることから、例えば一人の作業者であっても効率的且つ迅速な設営、撤去作業が可能となり、しかも煩わしい多数本の紐の縛り付けや解き放し作業を解消して作業の簡潔化を図り、幔幕を地面に落下、接触させてしまう等のうっかりミスなどを極力防止し、汚染による幔幕のクリーニング頻度を大幅に減少させ、経済的にも秀れたものとなり、冠婚葬祭や各種の行事あるいは地鎮祭や起工式等を執り行う様々な方面の企業や団体等からも高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図面は、この発明の祭事用幔幕の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
【図1】祭事用幔幕を示す斜視図である。
【図2】帯状チチの裏面側を示す正面図である。
【図3】面ファスナーを変更した帯状チチの裏面側を示す正面図である。
【図4】面ファスナーの結合位置を調節可能な帯状チチを示す断面図である。
【図5】別体型の帯状チチを有する祭事用幔幕を示す斜視図である。
【図6】幕本体から離脱した帯状チチの裏面側を示す正面図である。
【図7】グロメットを設けた幕本体の要部裏面側を示す正面図である。
【図8】従来型の幔幕の吊着状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 幕本体
12 同 補強用帯紐
13 同 グロメット
2 帯状チチ
3 綱
31 同 短尺紐
4 雄面ファスナー
5 雌面ファスナー
T 横架棒材(テント)
S 補強用帯紐の上下幅寸法
W 帯状チチ幅寸法
L1 帯状チチ先端側所定範囲の縦寸法
L2 L1、L3間の縦寸法
L3 帯状チチ基端側所定範囲の縦寸法
L4 帯状チチ基端側の延長された縦寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式場や会場等の周囲に張り付けるのに相応しい模様を有する幕本体の上端縁幅方向適宜間隔置き毎となる裏面に、縦長状とした帯状チチの基端側所定範囲を取着すると共に、夫々の帯状チチにおける少なくとも幕本体への取着部位範囲全面か略全面に対して雄雌何れか一方の面ファスナーを一体化した上、それら個々の帯状チチにおける自由端側であって且つ前記面ファスナーと同一側となる側には、前記面ファスナーの縦長寸法よりも大きくした雄雌何れか他方の面ファスナーを一体化してなるものとしたことを特徴とする祭事用幔幕。
【請求項2】
式場や会場等の周囲に張り付けるのに相応しい模様を有する幕本体の上端縁幅方向適宜間隔置き毎となる裏面に、縦長状とした帯状チチの基端側所定範囲を取着すると共に、夫々の帯状チチにおける少なくとも幕本体への取着部位範囲全面か略全面に対して雄雌何れか一方の面ファスナーを一体化した上、それら個々の帯状チチにおける自由端側であって且つ前記面ファスナーと同一側となる側には、前記面ファスナーの縦長寸法よりも大きくした雄雌何れか他方の面ファスナーを一体化してなるものとし、吊着対象とする横架棒材もしくは紐材等に沿って配した各帯状チチを、それら横架棒材もしくは紐材等に夫々巻付け、夫々の自由端側に一体化してある雄雌何れか他方の面ファスナーの連結位置を無段階的且つ自在に調節しながら、基端側に一体化してある雄雌何れか一方の面ファスナーに対して夫々着脱自在に取着、連結してなるものとしたことを特徴とする祭事用幔幕。
【請求項3】
式場や会場等の周囲に張り付けるのに相応しい模様を有する幕本体の上端縁幅方向適宜間隔置き毎となる裏面に、夫々所定縦横寸法の雄雌何れか一方の面ファスナーを一体化し、当該幕本体とは別体であって縦長状とした帯状チチの基端側所定範囲の表裏面双方に雄雌何れか他方の面ファスナーを一体化すると共に、自由端側の少なくとも裏面側に、基端側面ファスナーの縦長寸法よりも大きくした雄雌何れか一方の面ファスナーを一体化した上、自由端側面ファスナーが設けられていない一面側の基端側面ファスナーか、あるいは表裏面双方に自由端側面ファスナーが設けられている場合には、表裏面側何れか一方の基端側面ファスナーかの何れか一方を、前記幕本体の上端縁に配設された複数の各面ファスナー毎に、脱着自在に連結してなるものとしたことを特徴とする祭事用幔幕。
【請求項4】
帯状チチが、幕本体への結合部分を含む全長寸法を、基端側面ファスナー縦寸法の約7ないし8倍程度に設定すると共に、先端側面ファスナー縦寸法を、基端側面ファスナー縦寸法の約3倍程度に設定したものとしてなる、請求項1または3何れか一項記載の祭事用幔幕。
【請求項5】
帯状チチが、その全長を約30cm前後、幅寸法を約6cmとし、基端側の幕本体への結合部分および/または基端側面ファスナーの縦寸法を約4cmとする一方、先端側面ファスナー縦寸法を約12cmとしてなる、請求項1または3何れか一項記載の祭事用幔幕。
【請求項6】
幕本体が、少なくとも上縁の幅方向端角部に、吊着紐装着用のグロメットを添設したものとしてなる、請求項1ないし5何れか一項記載の祭事用幔幕。
【請求項7】
帯状チチが、先端側所定範囲の表裏面双方に、基端側面ファスナーに脱着自在に連結可能な組合せとなる雄・雌何れか一方もしくは他方の面ファスナーを一体化し、幕本体に脱着可能な別体部品とした場合には、基端側所定範囲の表裏面双方に、幕本体上端縁裏面の面ファスナーおよび先端側面ファスナーの双方に連結可能な組合せとなる雄・雌何れか他方もしくは一方の面ファスナーを一体化したものとしてなる、請求項1ないし6何れか一項記載の祭事用幔幕。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−81850(P2006−81850A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272496(P2004−272496)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(598069788)
【出願人】(504354324)
【Fターム(参考)】