説明

秤量センサ重量信号の揺れ振動を補償する装置

【課題】秤量センサ重量信号の揺れ振動を補償する装置を得る。
【解決手段】アナログ/デジタル変換ユニット5を含む秤量信号分岐ラインを備え、そのユニットに秤量センサ3のアナログ秤量信号が送られ、アナログ秤量信号の分離された検知値を含むデジタルの秤量信号をつくり出し、少なくとも一つの補償信号分岐ラインを備え、その分岐ラインが、アナログ/デジタル変換ユニット11を有し、規定の直動方向または規定の回転軸を中心とした加速雑音量を検出する加速度センサ19のアナログ雑音量信号を、そのユニット13に送ることができ、そのユニットが加速度センサの検知アナログ雑音量信号の分離された検知値を含むデジタル雑音量信号をつくり出し、その分岐ラインが、デジタルフィルタユニット15を有し、デジタル秤量信号の信号値とデジタル雑音量信号にマイナスの符号を加えられた信号値を加算する加算ユニット7を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1のプレアンブルに記載の特徴を有して秤量センサ重量信号の揺れ振動を補償する装置、およびこの種の揺れ振動補償装置を有する秤量装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
単位時間当たりの秤量プロセス数を出来るだけ多く維持するために、従来の秤量装置では比較的高いカットオフ周波数を有するローパスフィルタにのみ測定信号を当てることが公知である。それにより、フィルタリングされた測定信号に対して希望する短い初期振動時間が得られる。即ち、検出すべき荷重の他に干渉加速力が、秤量センサに例えば比較的高周波の振動形態で作用すると、測定信号におけるこの種の干渉成分を、ローパスフィルタを使って秤量装置の出力部で排除することができる。
【0003】
加えて秤量センサには比較的高い周波数だけでなく、低周波の干渉加速力が作用する可能性がある。一般的なローパスフィルタを使ったのでは、当該低周波の干渉加速力を殆ど除去できない。その理由は、この場合にローパスフィルタのカットオフ周波数を、初期振動時間が最早許容できる範囲にないように小さく選ばねばならないからである。
【0004】
よって、重量測定時において本質的な干渉源としての加速力を適切な加速センサにより検出し、適切な方法を使って補償することが一般的である。そのとき加速センサの信号を、雑音量をまだ含む測定信号を補正するために使用する。公知であるこの種の秤量装置では、加速度センサが本来の秤量センサと同構造で構成されており、そして秤量センサの直ぐ近くで同じ向きをしていることが優先される。その場合にしばしば加速度センサには秤量センサと同じ前荷重がかかるが、秤量センサの場合にはその前荷重が、例えば秤量皿または搬送コンベアの搬送装置で構成されることがある。
【0005】
このように処置することにより加速度センサでは(機械的な)雑音信号に関して、秤量センサが雑音信号に関して有するものとほぼ同じ動的挙動が得られる。秤量センサに作用する本来の荷重力も考慮するために、荷重力ないし秤量センサにかかる質量に従って雑音量信号を増幅することが後で行われる。
【0006】
秤量センサが加速度センサと構造的に同じでない場合には、アナログの信号処理を使って、本来の秤量センサのシステム的挙動を模倣する固定のコピーフィルタを実現することが公知である。そのときシステム挙動は、秤量センサの機械的要素の動的な挙動により影響を受ける。機械的要素によって決まるシステム的挙動の他に、特定の秤量センサではメカトロ要素もシステム的挙動に影響を与える。これに関して例えばエレクトロダイナミックに力を補償する原理に従う秤量センサでは、位置コントローラが重要な役割を果たす。本明細書では秤量センサを、任意商品を計量する目的で使用できる任意の力ピックアップと解釈することを、ここで示唆しておきたい。
【0007】
この従来技術における問題は、掛けられる質量、即ち荷重力に秤量センサの動的挙動が関係し、よって変動する質量ないし変化する荷重力の時に、コピーフィルタが最早最適で合っていないことである。例えば一般的な秤量センサでは、荷重力の増加と共に秤量センサの固有振動数が低下する。この場合の解決方法は、秤量センサを対応して大きくそして剛性を持たせて非常に高い固有振動数を有するものをつくることである。しかしながらこれは、しばしば大きな役割を果たす小さい構造および測定技術的な高感度に対する要求と矛盾する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE 10 2005 018 708 B4号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって本発明の課題は、秤量センサ重量信号の揺れ振動を補償する装置を得ることであり、本来の測定セルないし秤量センサと同一で構成されていない加速度センサを使用する場合にも、秤量センサに作用する荷重力が広い範囲に亘るときでも高い測定精度を保証するものである。さらに本発明の課題は、そのような揺れ振動補償装置を有する秤量装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を本発明は、特許請求項1ないし15の特徴を使って解決する。
【0011】
本発明が前提にする見識は、適合したデジタルフィルタを雑音量検出のための信号パスに設けることにより、秤量装置ないし揺れ振動を補償する装置の出力信号に従うデジタルフィルタの周波数特性、当該雑音量(定義された方向における純粋に直動的な加速度または定義された軸を中心とする純粋の回転的な角加速度)に対する(加速度センサを含む)補償信号分岐ラインの全周波数特性を、秤量信号分岐ラインにある要素の周波数特性に、特に(同じ雑音量に関して)使用する秤量センサの荷重力に従う周波数特性に適合させることができるということである。よって適切なデジタルの信号処理により、即ち規定の直動方向における加速度または規定の軸を中心とする角加速度を検出し、そしてこの検出値を前記雑音量をまだ含む測定信号から減算することができる。
【0012】
以上により補償信号分岐ラインを使って、該当雑音量信号をそれぞれ定義された自由度でつくり出すことにより、干渉加速力の影響を考慮することができる。その後、多数の雑音量信号がまだ歪んだ状態の測定信号から減算される。個々の補償信号分岐ラインそれぞれにおいて、それぞれの雑音量に関して秤量信号分岐ラインの周波数特性を対応して追跡することにより、秤量センサに作用する全体負荷に依存した雑音量を正確に検出し考慮することができる。
【0013】
本発明の実施形態によれば、適合したデジタルフィルタユニットが、規定数のフィルタパラメータを有する実際のデジタルフィルタ、および、制御変数が送られると共に送られた制御変数ないし制御信号の機能としてフィルタユニットのフィルタパラメータを検出しデジタルフィルタに伝達する規定数のフィルタパラメータ検出ユニットで構成されることがある。その制御変数は、加算ユニットの出力信号とすることができ、それを使って補償信号分岐ラインで雑音量をまだ含む測定信号、および場合により多数のそれぞれマイナスの符号を付けられた補償信号が加算される。この加算信号を直接使用する代わりに、ローパスフィルタでフィルタリングされた加算ユニット出力信号を使用することもある。最後に、雑音量をまだ含むデジタルの測定信号を制御信号として使用することも可能である。
【0014】
フィルタパラメータ検出ユニットは、制御信号からの一つ又は複数の関数的に解析した関係からフィルタパラメータを計算することができる。
【0015】
本発明の別の実施形態によれば、フィルタパラメータ検出ユニットは、制御信号用の値の関数又は制御信号用の値の範囲の関数に関係するパラメータセットとしてフィルタパラメータがメモリーされている一つ又は複数の表から、フィルタパラメータを検出することができる。
【0016】
いずれの場合にも、制御変数に従ったフィルタパラメータの検出および検出されたフィルタパラメータのデジタルフィルタへの伝達(よって揺れ振動補償の全体プロセス)が、クローズのコントロールループとして実現されていることがある。
【0017】
フィルタ全体の設計を容易にするためにデジタルフィルタが、自己のフィルタパラメータを制御変数に従って適合して検出する少なくとも一つの第一デジタル部分フィルタ、および自己のフィルタパラメータを制御変数とは関係なく一定に保持する少なくとも一つの第二デジタル部分フィルタに分割されていることがある。そのとき補償信号分岐ラインにある第二デジタル部分フィルタを使って、秤量信号分岐ラインの周波数特性で秤量センサに作用する荷重力とは関係のない部分を考慮することができる。勿論この部分は、秤量信号分岐ラインの周波数特性の、秤量センサに作用する加速度雑音量とは完全に関係のない部分を含んでいる。そこで対象となることがあるのは、例えばエレクトロニクス要素、例えばデジタル又はアナログのフィルタの周波数特性である。
【0018】
少なくとも一つの第二デジタル部分フィルタのフィルタパラメータは、秤量センサに作用する荷重力とは関係のない秤量分岐ライン特性に従って、較正プロセスで検出することができる。その検出は、上位配設された制御ユニットを使用して、又はそのために較正モードに転換可能であるフィルタパラメータ検出ユニットを使っても行うことができる。
【0019】
多数の雑音量を例えば異なった加速度自由度に対して検出する場合、種々の補償信号分岐ラインで少なくとも一つの第二デジタル部分フィルタが同一で構成されている、即ち同一のフィルタ構造を有し、そして同じフィルタパラメータで機能することがある。
【0020】
この場合に補償装置全体の構造を、補償分岐ラインが共通した部分分岐ラインを有するように選ぶことがあり、その部分分岐ラインに、補償信号分岐ライン全体のために秤量信号分岐ラインの周波数特性で荷重力とは関係のない部分を模倣する第二デジタル部分フィルタがある。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施形態によれば、デジタルフィルタ、従って一つの又はそれ以上の第一又は第二のデジタルフィルタも複数の二次フィルタに分割されるか、又は第一又は第二のデジタルフィルタのそれぞれが二次フィルタから構成されることが可能である。それによりフィルタの設計が容易になる。適合した部分フィルタとして構成された二次サブフィルタのために、可変制御に関するフィルタパラメータのより簡単な関数依存性が得られる。
【0022】
本発明によれば、補償信号分岐ラインにおける各フィルタユニットは、デジタルの増倍ユニットとして構成されているデジタルの増幅ユニットを含んでいることがある。そのとき補償信号分岐ラインのデジタル増幅ユニットが、第一デジタル部分フィルタに含まれていることがある。というのは、ここで対象になるのはフィルタ機能前の一定乗数のみであるからである。
【0023】
デジタルの増幅ユニットの増幅係数は、制御変数に従って適合して求めることもある。
【0024】
単一の補償分岐ライン一つのみが設けられている場合には、本発明によれば、適合したデジタルフィルタが秤量分岐ラインにも設けられていることがあり、この場合にも(前記の記述に類似して)秤量センサを含めた秤量分岐ラインの周波数特性が、加速度センサを含めた補償分岐ラインの周波数特性に適合させられる。
【0025】
本発明の更に別の実施形態は、従属請求項から分かる。
【0026】
以下において本発明を、図面で示した実施例を使って詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】単一の雑音量センサを使って揺れ振動を補償する装置の、第一実施形態を備えているがその他の点では詳細に図示していない秤量装置の信号処理要素の概略ブロック図。
【図2】二つの雑音量センサを有して揺れ振動を補償する装置を備えた秤量装置の別の実施形態で、図1に類似した図。
【図3】二つの雑音量センサを有して揺れ振動を補償する装置を備えた秤量装置の別の実施形態で、図2に類似した図であり、そのセンサ信号が別の雑音量を計算するために、および/または秤量センサ位置における当該雑音量の影響を計算するために結びつけられる。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明を理解するために必要な要素のみを概略ブロック図で表した秤量装置1を示している。秤量装置1は秤量センサ3を有しており、計量する質量mLにより秤量センサ3の荷重受け部に作用する荷重力FLを、そのセンサが受けている。その秤量センサは、計量する質量mLの重量力を検知するために電磁的に力を補償する原理に従って、又は可能性のある別のいずれかの物理的原理に従って機能していてもよい。そのとき秤量センサ3が独立した秤量セルとして、そして例えばアナログ/デジタル変換ユニット5と一体化されて構成されているか、あるいはその秤量センサ3が別個の独自のユニットとして設けられているかは、本発明にとっては問題ではない。
【0029】
まず、秤量センサ3の未だアナログである測定信号または秤量信号umess(t)が、アナログ/デジタル変換ユニット5の変換入力部に送られ、そのユニットが出力部でデジタルの秤量信号umess(ti)を生み出すが、そこではデジタルの測定信号umess(ti)のデジタル化された検知値をUmess,iで表している。そのデジタル化された測定信号が加算ユニット7に送られる。
【0030】
更に秤量装置1は、規定の直動方向で又は規定の回転軸を中心とした加速度雑音量を検出するために、加速度センサ9を有している。その加速度センサ9は例えば、秤量センサに荷重力FLがかかる方向に、即ち竪方向に働く加速度に対してのみ反応することができる。このような加速度が勿論、アナログの測定信号umess(t)ないしデジタル化された信号umess(ti)にも影響を及ぼす。
【0031】
加速度センサ9のアナログ出力信号BA(t)が、次のアナログ/デジタル変換ユニット11に送られ、そのユニットがアナログの雑音量信号BA(t)を検知して、デジタル化された信号BA(ti)に変換する。そのとき両方のアナログ/デジタル変換ユニット5ないし11の検知時点が出来るだけ同時であるように選ぶと好ましく、それにより該当する位相ズレが遅れて補償されることを回避する。両方の場合に検知を等間隔の時間区分で行う。
【0032】
デジタル化された雑音量信号のデジタル化された出力信号ないし該当検知値BA(ti)は、まずデジタルの増幅ユニット13に送られるが、そのときこれが簡単なデジタルの増倍ユニットとして構成されていることもある。
【0033】
以上のようにしてデジタル化され増幅された雑音量信号は、デジタルフィルタユニット15に送られる。デジタルフィルタユニット15は、独立した信号処理ユニットとして、あるいは該当フィルタソフトウエアを含むマイクロコントローラユニットにより構成されていることがある。フィルタユニット15のデジタル出力信号は、マイナスの符号が加えられて、補正信号ないし補償信号として加算ユニット7に送られる。このようにすることにより、雑音量をまだ含む秤量信号umess(ti)のデジタル化された値Umess,iから、デジタルでフィルタリングされた雑音量信号BAiに対応して増幅された(即ち、規定の係数が掛けられた)値が差し引かれ、それにより加算ユニット7の出力部に補正ないし補償された秤量信号ukorr(ti)が現れる。この補正されたデジタルの信号ukorr(ti)がローパスフィルタユニット17に送られるが、そのユニットは例えばスライドする平均値の形成により実施されていることがある。そして秤量装置1の出力部には、補正されローパスフィルタリングされたデジタルの秤量信号u(ti)が現れる。
【0034】
マイナスの符号が加えられて加算ユニット7に送られる、数値と位相それぞれで正しいデジタルの雑音量信号をつくり出すためには、(当該の機械的な加速度雑音量に関して)補償信号分岐ラインの周波数特性が、それと繋がる加速度センサを含め、(同じ機械的な加速度雑音量に関して)秤量センサを含む秤量信号分岐ラインの周波数特性と出来る限り同一であるか、又は少なくとも充分な(規定の)精度でこれに近似していることが必要である。そのとき補償信号分岐ラインが、アナログ/デジタル変換ユニット11、デジタルの増幅ユニット13、デジタルフィルタユニット15を含んでいるのに対して、秤量信号分岐ラインはアナログ/デジタル変換ユニット5を含んでいる。
【0035】
秤量センサ3と加速度センサ9用にそれぞれ同構造のセンサを使用する場合には、従来技術で公知のように、少なくとも両方のセンサそれぞれに同じ荷重力FLが作用する時、デジタルの増幅ユニット13とデジタルフィルタユニット15をなくすことができる。しかしながら、これは殆ど実現不可能であるので、それ故、検出された測定信号umess(t)ないしumess(ti)の補正を行わねばならない。その理由は、秤量センサ3の周波数特性、従って秤量センサを含む秤量信号分岐ラインの周波数特性全体が規則どおりに荷重力FLに関係するからである。
【0036】
秤量センサ3と加速度センサ9用にそれぞれ同構造でないセンサを使用する場合には、秤量センサの周波数特性に対する異なった荷重力の影響だけでなく、異なった特性、即ちセンサおよび場合により分岐ラインで異なって構成されたエレクトロニクス信号処理要素の一般的に異なった周波数特性を、補償分岐ラインにおいて補償せねばならない。
【0037】
秤量センサ周波数特性で荷重力に関係する変化を補償するために、デジタルフィルタユニット15および必要な場合にはデジタルの増幅ユニット13にも、秤量装置の出力信号u(ti)が送られる。このようにすることにより、フィルタユニット15ないしデジタルの増幅ユニット13はそれぞれ、瞬間的に秤量センサ3に作用する荷重力FLに対して秤量センサの周波数特性を含めた秤量信号分岐ラインの周波数特性が、(特定の加速度雑音量に関して)加速度センサの周波数特性を含む補償信号分岐ラインの周波数特性と一致するように、出力信号(ti)に従ってフィルタパラメータないし増幅係数を決めることができる。
【0038】
そのとき前記で既に説明しているようにフィルタユニット15は、デジタルの増幅ユニット13の機能も担うことができる。デジタルフィルタユニット15は、本来のデジタルフィルタおよび、制御変数として出力信号u(ti)が送られるフィルタパラメータ検出ユニットで構成することができる。そこでフィルタパラメータ検出ユニットが、デジタルの増幅ユニット13を実現する一定の乗数を検出することができる。
【0039】
フィルタパラメータを検出するためにフィルタパラメータ検出ユニットが、制御変数に従ってフィルタパラメータそれぞれをつくりだす機能上の従属性を有していることがある。しかしながら勿論、フィルタパラメータは、制御変数用の値の関数又は制御変数用の値の範囲の関数としてのパラメータセットが格納された表から求めることもできる。フィルタパラメータの検出は一般に経験的に、例えばフィルタユニットないしフィルタパラメータ検出ユニットの較正モードで、および/または純粋に計算的に(例えばシミュレーションにより)行うことができる。
【0040】
勿論、デジタルフィルタユニット15ないしデジタルの増幅ユニット13に、秤量装置1の出力信号u(ti)の代わりに加算ユニット7のローパスフィルタリングしていない出力信号ukorr(ti)又は雑音量をまだ含むデジタルの測定信号umess(ti)が、制御信号として送られることもある。
【0041】
よって、適応したデジタルフィルタユニット15の使用により、そして場合により追加して適応したデジタルの増幅ユニット13により、秤量センサ3に作用する異なった荷重力FLによる周波数特性変化の影響を補償することができる。
【0042】
出来るだけ正確な補正を達成するためには、加速度センサ9を出来るだけ秤量センサの近くに配置するか、或いは更に進んで秤量センサに一体化する。これを確保できない場合には、加速度センサ9の位置で検出された加速度雑音量が秤量センサの位置では別の値を有していることがあるという事実を、当該位置関係の中で考慮することがある。これを同様にフィルタユニット15ないし増幅ユニット13において、フィルタ係数の計算時ないし増幅係数の計算時に考慮することがある。
【実施例2】
【0043】
図1による実施形態では単一の加速度雑音量のみを補正する(即ち、定義された直動方向の又は軸を中心とした任意加速度による成分の影響のみが補正される)のに対して、図2は秤量装置10の別の実施形態を示しており、その装置は同じ又は異なった二つの加速度量を補正するために二つの加速度センサ9を有している。ここでもまず、加速度センサが出来るだけ秤量センサの近くに配設されていることを前提とすることにし、それにより(例えば出願人による特許文献1に記載のように)位置関係についての補正を行う必要がない。
【0044】
加速度センサ9に関して例えば第一加速度センサが、秤量センサに作用する荷重力FLで荷重のかかる方向の加速度を検出する一方で、第二加速度センサが、荷重のかかる方向に直角で荷重アームの軸に直角に延伸する(例えば、電磁的に力を補償する原理により機能する秤量セルの平行四辺形アームがある面に直角に)軸を中心とする角度加速度を検出する。
【0045】
よって図2による実施形態は、アナログ/デジタル変換ユニット11それぞれを含む二つの補償分岐ラインを有しており、そのユニットにそれぞれ加速度センサ9のアナログの測定信号ないし雑音量信号BA1(t),BA2(t)が送られている。更に各補償信号分岐ラインはそれぞれデジタルの増幅ユニット13を含んでおり、その増幅ユニットに該当アナログ/デジタル変換ユニットのデジタル化された雑音量信号BA1(ti),BA2(ti)が送られている。増幅されたデジタルの信号量BA1(ti)およびBA2(ti)がそれぞれ、ここでも適合して構成されているデジタルフィルタユニット15aに送られる。それに加えて、各デジタルフィルタユニットには、装置1のデジタル出力信号u(ti)が送られる。それぞれ異なる雑音量に関して各デジタルフィルタユニット15aが、加速度センサ9の周波数特性に対する荷重力FLの異なった影響のそれぞれを考慮する。引き続いて、デジタルで適合してフィルタリングされたデジタルフィルタユニット15aの出力信号が、加算ユニットを使って加算され、加算されたデジタル信号が更に、同じく適合して構成されている別のデジタルフィルタユニット15bに送られる。追加されたデジタルフィルタユニット15bが、両方の補償信号分岐ラインのそれぞれに含まれているので(その代わりにフィルタユニット15bをダブルで用意し、両方の分岐ラインそれぞれで加算ポイントの前に設けていることもある)、両方の分岐ラインのそれぞれで現れる影響を考慮するために、例えば周波数特性で両方の加速度センサに共通している荷重の関係を考慮するためにそれを使用できる。
【0046】
デジタルフィルタユニット15bの出力信号は更に、適合されていない簡単なフィルタユニットとして構成されている別のデジタルフィルタユニット15cに送られる。これは同じく両方の補償分岐ラインのそれぞれに振り当てられており、そして各分岐ラインで同じように出現する影響、例えば秤量センサ3の周波数特性と較べた加速度センサ9の周波数特性の荷重に関係しない差異を適合させること、または別のエレクトロニクス要素が原因(アナログの増幅器など)となっていると共に両方の分岐ラインに存在する周波数特性差異を考慮することができる。
【0047】
そうして求められたデジタルの補正信号は、マイナスの符号が付けられ、そしてデジタル化された測定信号に加算ユニット7を使って加算される。
【0048】
既に前記で簡単に説明しているように、勿論、両方の補償信号分岐ラインが完全にお互いから独立して構成され、それぞれアナログ/デジタル変換ユニット11、デジタルの増幅ユニット13、デジタルフィルタユニット15a,15b,15cを有していることもあり、その場合には二つの別々の補償信号が、加算ユニット7により構成されている加算ポイントでデジタルの測定信号umess(ti)から減算される。しかしながら、追加の加算ポイント19は重要度が遙かに少ないので、これはダブルにしたデジタルフィルタユニット15bと15cと較べて大きな浪費を意味している。
【0049】
勿論、適合して構成されたフィルタユニット15aと15bが、先に図1との関連で説明したものと同様に構成されていることがある。しかしながら、補償信号分岐ラインで未だ分離している二つの部分分岐ラインにあるフィルタユニット15a用に共通のフィルタパラメータ検出ユニットが設けられている、又は適合して構成されているデジタルフィルタユニット15a,15b全体用に、フィルタパラメータを特定する中央フィルタパラメータ検出ユニットが設けられていることもある。同じく又、部分分岐ラインそれぞれにあるデジタルの増幅ユニット13が、それぞれのデジタルフィルタ15aに一体化され同じく適合して構成されていることもある。
【0050】
デジタルフィルタユニット15a,15bが、(図1のデジタルフィルタユニットと同じく)直列に並んだ二次サブフィルタユニットに分割されていることがある。これは、より簡単なフィルタの寸法およびより簡単なフィルタパラメータの検出という利点をもたらす。図2で分かるように例えばフィルタユニット15bが、直列に並んだ二つの二次サブフィルタユニットの形態で構成されていることがある。勿論同じく、二つの部分分岐ラインにあるフィルタユニット15aが、一つまたは複数の直列に並んだ二次サブフィルタユニットとして実現されていることもある。
【0051】
(直動方向の又は回転軸を中心とする)当該雑音量信号は、二つまたはそれ以上の加速度センサの信号から求めることもでき、それが出願人による特許文献1に記載されている。例えば、特定の間隔で配設されている二つの直動方向の加速度センサ信号から、両加速度センサの接続区間に直角である軸を中心にした角加速度を求めることができる。
【実施例3】
【0052】
図3は、図2に似た別の変形例を示しており、そこでは二つの分岐ラインで(直動または回転方向の次元に関する)実際の干渉信号が、それぞれ加速度センサ9のデジタル化された二つの信号を結びつけることにより求められる。図3における加速度センサ9では、例えば出願人による特許文献1に記載されているように、秤量センサ3を含むラインに配設されていると共にこのセンサから規定の区間だけ間隔を隔てている二つの加速度センサが対象になることがある。そのとき加速度センサ9は、同じく荷重力FLの方向に作用する加速度に対してのみ感応するものとできる、即ち任意加速度で竪方向に走る要素のみを検出する。そして形状データを使用して、デジタル化された雑音量信号BA1(ti)とBA2(ti)の結びつけることにより、荷重力FLの方向で秤量センサ3の位置に作用する純粋に直動的な加速度を、そしてセンサの接続ライン上で直角にあり秤量センサ3の位置を走る軸を中心とする秤量センサ3の位置で作用する回転方向の加速度(角加速度)それぞれを求めることができる。
【0053】
一般的には秤量センサの位置におけるデジタル化された雑音信号を求めるために、デジタル化された雑音量信号BA1(ti)ないしBA2(ti)(秤量センサ3の位置における直動方向の加速度)それぞれを規定の係数でウエイト付けして加算して、又はそれぞれウエイト付けした雑音量信号の差異を形成することにより行う必要があろう。しかしながら補償分岐ラインにおいて適合したフィルタユニット15aを使用することにより、当該加算ユニット19,21の前のウエイト付けを廃止することができる。その代わりに秤量センサ3の位置に作用する雑音量信号を直接結びつけて求めることにより、例えば実際に検出されデジタル化された雑音信号の加算または減算(該当する位置関係を考慮する係数を使ったウエイト付けなしで)を行うことができ、そのときには位置との関係を、(各補償信号分岐ラインにおけるそれぞれデジタルの増幅ユニットのパラメータを含めた)フィルタパラメータを対応して決めることにより考慮する。
【0054】
図3の実施形態では、加速度センサ9が構造的に同じである、ないしは検出する雑音量に関して充分同じ挙動を有していること前提とする。よって、加速度センサ9の周波数で異なった部分の補償を廃止することができる。よって必要な場合にはデジタル化されたセンサ信号の結びつけを行う前に、場合により適合した別のデジタルフィルタをアナログセンサ信号のデジタル化直後に設ける必要があろう。
【符号の説明】
【0055】
1 秤量装置
3 秤量センサ
5 アナログ/デジタル変換ユニット
7 加算ユニット
9 加速度センサ
10 秤量装置
11 アナログ/デジタル変換ユニット
13 増幅ユニット
15 フィルタユニット
19 加算ユニット
21 加算ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
秤量センサの重量信号の揺れ振動を補償するための装置であって、
(a)アナログ/デジタル変換ユニットを含む秤量信号分岐ラインを備えており、そのユニットに秤量センサのアナログ秤量信号が送られ、そのユニットが秤量センサで検知されたアナログ秤量信号の分離された検知値を含むデジタルの秤量信号をつくり出し、
(b)少なくとも一つの補償信号分岐ラインを備えており、
(i)その分岐ラインが、アナログ/デジタル変換ユニットを有しており、規定の直動方向または規定の回転軸を中心とした加速度雑音量を検出する加速度センサのアナログ雑音量信号を、そのユニットに送ることができ、そのユニットが、加速度センサの検知アナログ雑音量信号の分離された検知値を含むデジタル雑音量信号をつくり出し、そして
(ii)その分岐ラインが、デジタルの雑音量信号が送られるデジタルフィルタユニットを有しており、
(c)送られたデジタルの秤量信号の信号値と送られたデジタルの雑音量信号にマイナスの符号を加えられた信号値を加算するための、加算ユニットを備えている
装置において、
(d)少なくとも一つの補償信号分岐ラインのデジタルフィルタユニットが、適合したデジタルフィルタユニットとして構成されており、
(i)加算ユニットの出力信号または加算ユニットのフィルタリングされた出力信号またはデジタルの秤量信号が、フィルタユニットに制御信号として送られ、
(ii)フィルタユニットの周波数特性が、規定の直動方向または規定の回転軸を中心とする干渉加速力に対応して、制御信号に従って秤量センサに作用する全荷重力に従う周波数特性に合わされて、当該補償信号分岐ラインの周波数特性が、それと繋がる加速度センサを含め、規定の直動方向または規定の回転軸を中心とする干渉加速力と対応した秤量センサを含む秤量信号分岐ラインの周波数特性と基本的に同一となる、又は規定の精度でこれに近似する
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
フィルタユニットが、規定数のフィルタパラメータを有するデジタルフィルタおよびフィルタパラメータ検出ユニットを含んでおり、そのフィルタパラメータ検出ユニットに制御変数が送られ、そのフィルタパラメータ検出ユニットが送られた制御信号に従ってフィルタユニットのフィルタパラメータを検出し、デジタルフィルタに伝達する
ことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、
フィルタパラメータ検出ユニットが、制御信号からの一つ又は複数の関数的に解析した関係からフィルタパラメータを計算する
ことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項2に記載の装置において、
フィルタパラメータ検出ユニットが、制御信号のための値の関数又は制御信号のための値の範囲の関数としてのパラメータセットとしてフィルタパラメータが格納されている一つ又は複数の表から、フィルタパラメータを求める
ことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一に記載の装置において、
制御変数に従ったフィルタパラメータの検出および検出されたフィルタパラメータのデジタルフィルタへの伝達が、クローズのコントロールループとして実現されている
ことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一に記載の装置において、
デジタルフィルタが、自己のフィルタパラメータを制御変数に従って適合して検出する少なくとも一つの第一デジタル部分フィルタ、および自己のフィルタパラメータが制御変数とは関係なく一定である少なくとも一つの第二デジタル部分フィルタに分割されている
ことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、
少なくとも一つの第二デジタル部分フィルタのフィルタパラメータが、秤量センサに作用する荷重力とは関係のない秤量分岐ライン特性に従って較正プロセスで検出し、そして少なくとも一つの第二デジタル部分フィルタに送ることができる
ことを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の装置において、
二つ又はそれ以上の補償信号分岐ラインのうち、少なくとも一つの第二デジタル部分フィルタが同一で構成されている
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置において、
二つ又はそれ以上の補償信号分岐ラインの少なくとも一つの第一デジタル部分フィルタのデジタル出力信号の信号値が、加算ユニットを使って加算され、二つ又はそれ以上の補償信号分岐ラインの少なくとも一つの第二デジタル部分フィルタが、加算ユニットの出力信号が送られる単一の少なくとも一つの第二デジタル部分フィルタに纏められており、それにより二つ又はそれ以上の補償信号分岐ラインがそれぞれ、加算ユニットまでの当該部分分岐ラインおよび、それぞれ補償信号分岐ラインの加算ユニットとデジタル秤量信号とデジタルの雑音量信号の信号値を加算する加算ユニット間の共通した部分を含む
ことを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか一に記載の装置において、
デジタルフィルタが、複数の二次フィルタに分割されている
ことを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか一に記載の装置において、
少なくとも一つの第一デジタル部分フィルタおよび/または少なくとも一つの第二デジタル部分フィルタが、それぞれ一つ又は複数の二次デジタルサブフィルタとして構成されている
ことを特徴とする装置。
【請求項12】
前記請求項のいずれか一に記載の装置において、
フィルタユニットが、デジタルの増倍ユニットとして構成されているデジタルの増幅ユニットを含んでいる
ことを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項6〜11、12のいずれか一に記載の装置において、
補償信号分岐ラインのデジタルの増幅ユニットが、第一デジタル部分フィルタに含まれている
ことを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項12または13に記載の装置において、
フィルタユニットがデジタルの増幅ユニットの増幅係数を、それに送られる制御変数に従って適合して求める
ことを特徴とする装置。
【請求項15】
前記請求項1〜14のいずれか一に記載の装置において、
単一の補償分岐ラインが設けられており、そして適合したデジタルフィルタユニットが補償信号分岐ラインにではなく秤量分岐ラインに設けられており、
(a)加算ユニットの出力信号または加算ユニットのフィルタリングされた出力信号またはデジタルの秤量信号が、フィルタユニットに制御信号として送られ、そして
(b)フィルタユニットの周波数特性が、制御信号に従って秤量センサに作用する全荷重力に従う周波数に、規定の直動方向または規定の回転軸を中心にする干渉加速力に対応して適合させられて、加速度センサを含む秤量信号分岐ラインの周波数特性が、規定の直動方向または規定の回転軸を中心とする干渉加速力と対応した補償信号分岐ラインの周波数特性と基本的に同一となる、又は規定の精度でこれに近似する
ことを特徴とする装置。
【請求項16】
前記請求項1〜15のいずれか一に記載の揺れ振動補償装置がついた秤量装置において、
秤量装置が、少なくとも一つの秤量センサおよび少なくとも一つの加速度センサを有しており、そのアナログ信号がそれぞれ、秤量信号分岐ラインのアナログ/デジタル変換ユニットないし少なくとも一つの補償信号分岐ラインのアナログ/デジタル変換ユニットに送られる
ことを特徴とする装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−151812(P2010−151812A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274356(P2009−274356)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(506186673)ヴィポテック ヴィーゲ−ウント ポジティオニエルシステーメ ゲーエムベーハー (21)
【氏名又は名称原語表記】WIPOTEC WIEGE−UND POSITIONIER−SYSTEME GMBH
【住所又は居所原語表記】ADAM−HOFFMANN STRASSE 26, 67657 KAISERSLAUTERN,GERMANY