説明

移動仕切壁

【課題】 移動仕切壁を円滑かつ的確に移動させること。
【解決手段】 前後左右上下の壁パネルからなる箱体内に左右方向へ移動可能に組み付けられて前記箱体内に形成される区画室の容積を変更可能で、壁本体21の下端部前後にそれぞれ左右一対の車輪23を前記各区画室に突出して組み付けてなる移動仕切壁において、各車輪23の前後壁パネル11,12側に配設されて壁本体21の中央部を軸とする左右方向の振れを前後壁パネル11,12との当接により防止する振れ止め機能部28bと、各車輪23に近接して配設されて壁本体21の前記各区画室への転倒傾動時に壁本体21の上部が傾動により前記上壁パネルに当接するよりも先に下壁パネル(ベース)27に係合する転倒防止機能部28eと、各車輪23の反壁本体21側に配設されて各車輪23への異物の侵入を防止する異物侵入防止機能部28cのうち少なくとも1つを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、箱体内に移動可能に組み付けられて箱体内に形成される区画室の容積を変更可能な移動仕切壁に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の移動仕切壁は、例えば、特開平10−47846号に示されていて、この公報に示されている移動仕切壁は、前後左右上下の壁パネルからなる箱体内に左右方向へ移動可能に組み付けられて前記箱体内に形成される区画室の容積を変更可能であり、壁本体の下端部前後にそれぞれ左右一対の車輪を前記各区画室に突出して組み付けてなるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、移動仕切壁を箱体内において円滑に移動させるためには、移動仕切壁の前後両端部の左右方向への振れ防止及び各区画室への転倒防止、車輪への異物の侵入防止等が必要となるが、上記した公報に示されている移動仕切壁においては、これらのことが考慮されていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記した問題に対処すべくなされたものであり、前後左右上下の壁パネルからなる箱体内に左右方向へ移動可能に組み付けられて前記箱体内に形成される区画室の容積を変更可能で、壁本体の下端部前後にそれぞれ左右一対の車輪を前記各区画室に突出して組み付けてなる移動仕切壁において、前記各車輪の前記前後壁パネル側に配設されて前記壁本体の中央部を軸とする左右方向の振れを前記前後壁パネルとの当接により防止する振れ止め機能部と、前記各車輪に近接して配設されて前記壁本体の前記各区画室への転倒傾動時に前記壁本体の上部が傾動により前記上壁パネルに当接するよりも先に前記下壁パネルに係合する転倒防止機能部と、前記各車輪の反壁本体側に配設されて前記各車輪への異物の侵入を防止する異物侵入防止機能部のうち少なくとも1つを備えていることに特徴がある。
【0005】
【発明の作用効果】本発明による移動仕切壁において、振れ止め機能部を有している場合には、壁の移動時における壁本体の中央部を軸とした壁本体の左右方向への振れを、前壁パネル及び後壁パネルとの当接により防止することができ、転倒防止機能部を有している場合には、壁の移動時における壁本体の各区画室への転倒を、壁本体の上部が傾動により上壁パネルに当接するよりも先に下壁パネルに係合することにより壁本体の傾動を規制して防止することができ、異物侵入防止機能部を有している場合には、壁の静止時における各車輪への異物の侵入を防止することができることは勿論のこと、壁の移動時における各車輪への異物の侵入も防止することができる。したがって、本発明による移動仕切壁においては、上記各機能の少なくとも1つが機能して、その移動を円滑かつ的確に行うことができる。
【0006】
【発明の実施の形態】以下に本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2はプレハブ型の貯蔵庫を示していて、この貯蔵庫における断熱箱体10内には移動仕切壁20によって容積が可変の冷蔵温度室R1と冷凍温度室R2が区画形成されている。
【0007】断熱箱体10は、6面の断熱パネル、すなわち前後・左右の側壁パネル11,12,13,14と天井パネル15と床パネル16を備えていて、前面の側壁パネル11に設けた一対の出入口11a,11bには冷蔵温度室R1用の開閉扉17と冷凍温度室R2用の開閉扉18がそれぞれ組付けられている。また、冷蔵温度室R1と冷凍温度室R2には、室内冷却器A1とA2がそれぞれ組付けられていて、冷蔵温度室R1と冷凍温度室R2がそれぞれ設定温度範囲(適宜に設定可能)に維持されるようになっている。
【0008】移動仕切壁20は、壁本体21と、この壁本体21の下端部前後に冷蔵温度室R1及び冷凍温度室R2にそれぞれ突出して組付けた左右一対の取付板22及び車輪23と、壁本体21の表裏全周にそれぞれ組付けたパッキン24と、壁本体21の冷蔵温度室R1側に一対組付けた把手25と、壁本体21の冷蔵温度室R1側に二対組付けたロック装置26等を備えていて、床パネル16上に配設したベース27上に図1の左右方向へ移動可能に配置されており、その移動量(移動範囲)を二対4個(図では2個省略されている)のストッパ30によって規定されるようになっている。なお、床パネル16のベース27が配設されていない部位には、滑り止め及び衝撃吸収のためのゴムシートが貼着されることがある。
【0009】各取付板22は、各車輪23を支持するものであり、壁本体21にスペーサS1を介して取り付けられる取付壁部22aと、この取付壁部22aの一側から略直角に折り曲げられて前面の側壁パネル11または後面の側壁パネル12に対向する側壁部22bと、この側壁部22bの下端から略直角に折り曲げられて床パネル16に対向する底壁部22cによって構成されている。各車輪23は、各取付板22の各下端にブラケット29を介して一体的に組付けられていて、ベース27上を転動するようになっている。
【0010】各パッキン24は、壁本体21の周縁部全周に一体的に組付けられていて、冷蔵温度室R1と冷凍温度室R2間での冷気の流通を遮断している。各把手25は、壁本体21の上下方向中間部に一体的に組付けられていて、移動仕切壁20の移動時に使用されるようになっている。各ロック装置26は、壁本体21に一体的に組付けられていて、手動式のロックピン26aが前面または後面の側壁パネル11または12の内面に所定のピッチで設けた孔11c(後面の側壁パネル12に設けた孔は図示省略)に嵌合することにより、移動仕切壁20を移動不能に固定できるようになっている。ベース27は、前面の側壁パネル11に設けた一対の出入口11a,11b間の長さに略等しい長さ(両出入口11a,11bに対してオーバーラップまたはアンダーラップしない長さ)を有していて、上面が平坦に形成されている。
【0011】各ストッパ30は、図2に示したように、直角二等辺三角形に形成されていて、等辺部位に一対の取付孔を有する取付片を有しており、ねじ(図示省略)を用いて断熱箱体10の天井パネル15と前面または後面の側壁パネル11または12に移動仕切壁20の移動方向にて所定の間隔で一体的に固定されるようになっている。また、各ストッパ30は、移動仕切壁20の上部コーナーとの当接により、移動仕切壁20の移動を規制して移動量(移動範囲)を設定量に規定するようになっていて、各ストッパ30に移動仕切壁20が当接した状態では各車輪23がベース27から脱輪しないようになっている。
【0012】ところで、本実施形態においては、図3及び図4に示したように、各取付板22の各底壁部22cに、カバー金具28が4個のボルト41とナット42によってブラケット29及び上下位置調整用のスペーサS2と共に組付けられている。カバー金具28は、各ボルト41が貫通する左右方向に長い長孔28a1を有して取付板22に取付けられる上壁部28aと、この上壁部28aの一側から略直角に折り曲げられて前面の側壁パネル11または後面の側壁パネル12に対向する側壁部28bと、上壁部28aの一端から下方に折り曲げられて下降傾斜し車輪23を覆う傾斜壁部28cと、この傾斜壁部28cの下端から略水平となるように折り曲げられてベース27に対向する底壁部28dによって構成されていて、傾斜壁部28cと底壁部28d間に、折り曲げにより(詳細には曲面の)下方隅角部28eが連続的に形成されている。
【0013】また、カバー金具28は、前面の側壁パネル11と後面の側壁パネル12に対して僅かな隙間で対向していて、4個のボルト41を緩めることにより、取付板22に対して左右方向の位置調整を行うことが可能であり、前面の側壁パネル11または後面の側壁パネル12との距離を調整することができるようになっている。
【0014】また、カバー金具28においては、例えば冷蔵温度室R1側の前方のカバー金具28を例にして説明すると、図6に示したように、車輪23の接地部mよりも壁本体21から遠い側の下方隅角部28eから壁本体21の冷凍温度室R2側上端隅角部21aまでの同一面での長さL1が、天井パネル15の下端からベース27の上端までの長さL2(ベース27上での冷蔵温度室R1及び冷凍温度室R2の高さ)よりも長くなるように設定されており、車輪23の接地部mを支点とする壁本体21の冷蔵温度室R1側への傾動時に壁本体21の冷凍温度室R2側上端隅角部21aが天井パネル15に当接するよりも先に下方隅角部28eがベース27に係合するようになっている。なお、車輪23の接地部mから壁本体21の冷凍温度室R2側上端隅角部21aまでの長さは、天井パネル15の下端からベース27の上端までの長さL2よりも短くなっていて、カバー金具28が無い状態にて接地部mを支点として壁本体21が傾動した場合には、壁本体21が天井パネル15と係合することなく転倒するようになっている。また、冷蔵温度室R1側の後方のカバー金具28、冷凍温度室R2側の前方のカバー金具28及び冷凍温度室R2側の後方のカバー金具28においても同様に設定されている。
【0015】上記のように構成した本実施形態においては、移動仕切壁20の移動時において壁本体21がその中央部を軸として左右方向へ振れようとしても、側壁部28bが前面の側壁パネル11及び後面の側壁パネル12と当接することにより振れを防止する。また、移動仕切壁20の移動時において壁本体21が車輪23の接地部mを支点として各区画室R1,R2へ傾動しても、壁本体21の上部(21a)が傾動により天井パネル15に当接するよりも先に下方隅角部28eがベース27に係合して壁本体21の傾動を規制し、各区画室R1,R2への転倒を防止する。下方隅角部28eのベース27への係合時には、下方隅角部28eの曲面部分がベース27に係合するため、下方隅角部28eがベース27に引掛かることがなくてベース27が傷付くことがない。また、傾斜壁部28cが車輪23を覆っていて、移動仕切壁20の静止時における各車輪23への異物の侵入を防止するとともに移動仕切壁20の移動時における各車輪23への異物の侵入を防止するため、車輪23の良好な回転が保証される。したがって、本実施形態の移動仕切壁20においては、その移動を円滑かつ的確に行うことができる。
【0016】上記実施形態においては、カバー金具28に、振れ止め機能部としての側壁部28b、異物侵入防止機能部としての傾斜壁部28c及び転倒防止機能部としての下方隅角部28eを一体的に設けて実施したが、これらを例えば、取付板22又はブラケット29に一体的に設けて実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施したプレハブ型貯蔵庫の一部破断正面図である。
【図2】 図1に示した貯蔵庫の内側を部分的に示した斜視図である。
【図3】 図1に示した左方の車輪、カバー金具及び取付板等の拡大正面図である。
【図4】 図3に示した左方の車輪、カバー金具及び取付板等の拡大側面図である。
【図5】 図3に示した左方の車輪、カバー金具及び取付板等の拡大平面図である。
【図6】 本発明による移動仕切壁と冷蔵温度室及び冷凍温度室との寸法関係を示す概略正面図である。
【符号の説明】
10…断熱箱体、11,12,13,14…側壁パネル、15…天井パネル、16…床パネル、20…移動仕切壁、21…壁本体、22…取付板、23…車輪、28…カバー金具、28b…側壁部(振れ止め機能部)、28c…傾斜壁部(異物侵入防止機能部)、28e…下方隅角部(転倒防止機能部)、R1…冷蔵温度室(区画室)、R2…冷凍温度室(区画室)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 前後左右上下の壁パネルからなる箱体内に左右方向へ移動可能に組み付けられて前記箱体内に形成される区画室の容積を変更可能で、壁本体の下端部前後にそれぞれ左右一対の車輪を前記各区画室に突出して組み付けてなる移動仕切壁において、前記各車輪の前記前後壁パネル側に配設されて前記壁本体の中央部を軸とする左右方向の振れを前記前後壁パネルとの当接により防止する振れ止め機能部と、前記各車輪に近接して配設されて前記壁本体の前記各区画室への転倒傾動時に前記壁本体の上部が傾動により前記上壁パネルに当接するよりも先に前記下壁パネルに係合する転倒防止機能部と、前記各車輪の反壁本体側に配設されて前記各車輪への異物の侵入を防止する異物侵入防止機能部のうち少なくとも1つを備えていることを特徴とする移動仕切壁。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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