説明

移動体における音声認識装置および方法

【課題】 音声認識を行う遠隔のサーバシステムに接続する場合に、通信状況が悪化してサーバからの応答が得られない場合に、即時にユーザにその旨を通知する「移動体における音声認識装置および方法」を提供する。
【解決手段】 本発明の音声認識装置は、ユーザの発話をサーバシステム260に送信してその解析を依頼する手段302と、移動体の通信環境に関する情報を取得する手段312と、サーバシステムからの解析結果を一定時間待ち受ける手段304と、待ち受け時間内に解析結果を受信した場合に、これをユーザに通知する手段308と、取得した通信環境に関する情報に基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測する手段314と、待ち受け時間内における通信状況が良好でないと判断される場合に、前記解析結果の待ち受けを中止し、その旨をユーザに通知する手段308とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体における音声認識装置に関し、特に、音声認識を行う遠隔のサーバシステムに接続して、ユーザの発話に対する音声認識を実現する移動体における音声認識装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載する音声認識装置に期待が集まっている。音声認識による機器の制御は、車両走行中におけるドライバの負担を軽減することから、最近では、その利用はマルチメディア端末の操作、ナビゲーション装置の操作に留まらず、エアコンやパワーウィンドウなど車両設備のコントロールにも広がっている。
【0003】
音声認識においては、認識率と応答性能がその利便性を大きく左右することになるが、認識率の向上には大量の学習データを利用した統計的手法が有効であり、したがって、ネットワーク上のサーバでデータ処理を行う、いわゆるクラウドコンピューティングを利用した音声認識が注目されている。特に、近年では移動体通信における低遅延無線ネットワークが普及してきており、これが移動体におけるサーバ型の音声認識の実用化を後押ししている。
【0004】
このような移動体におけるサーバ型の音声認識装置においては、サーバとの通信が円滑に行われることが重要となるが、従来、車両の走行に伴って通信状態が悪化した場合には、以下のような方法により音声認識を行うようにしていた。すなわち、通信状態が悪化した場合には、サーバからの応答が得られなくなるが、その際、一定のタイムアウト時間を設定しておき、この時間内に応答が得られなかった場合に、その通信を断念し、その旨をユーザに通知する。そして、通信状態が回復してから再度バッファに格納された音声データを送信して、サーバからの応答を待つようにしていた。
【0005】
図1に、従来技術における音声認識の処理フローを示した。図において、ユーザによる音声コマンドの発話がなされると(ステップS102)、システムは音声認識サーバに対しその音声データを送信して、解析処理を依頼する(ステップS104)。次いで、タイマーを起動して(ステップS106)、所定の待ち時間(以下、タイムアウト時間という)サーバからの応答を待ち受ける(ステップS110)。タイムアウト時間内にサーバからの音声解析結果を受信すると、システムはこれをユーザに通知し(ステップS112)、そのコマンドを実行する(ステップS114)。一方で、通信環境が悪化して、タイムアウト時間内にサーバからの応答が得られない場合には、その受信を諦めて通信の終了処理を実行し(ステップS116)、ユーザに対しその旨を通知する(ステップS118)。
【0006】
しかしながらこの方法によると、通信状況が悪い場合には、サーバとのコネクションが切れて、ユーザが音声コマンドを発話してから実際にそのコマンドが実行されるまでには、相当の時間が掛かる可能性があり、しかもユーザはその間システムからのレスポンスを待つことになる。また、最終的に通信状態が改善しなかった場合には、長い間システムのレスポンスを待った上に、ユーザ自らが手動でコマンドに相応する操作を実行する必要があり、ユーザの利便性が大きく損なわれるという問題があった。
【0007】
このような問題に関連して、移動体の移動ルートを参照して、通信が不能なエリアに入る可能性を予測し、これをユーザに事前に通知する技術などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001ー177869号公報
【特許文献2】特開2002ー142258号公報
【特許文献3】特開2007ー251662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記各文献に開示の技術を、サーバ型の音声認識における通信不良時の問題に適用した場合には、以下のような問題が生じる。すなわち、上記技術においては、移動体が通信が困難なエリア内にある場合には、ユーザは音声コマンドを発話できなくなるが、事前通知がされてから相当の時間が経過している場合などには、そのことを忘れてコマンドを発話する可能性もある。このような場合、ユーザは結局、通信が不能であることを発話をしてから相当時間が経過したのちに知ることになる。また、状況によっては通信が困難なエリアにおいても、音声コマンドに掛かるデータ容量は少ないことからその送受信が行える場合もあり、従来技術ではその機会を利用することができず、ユーザの利便性が下がる。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その通信状況を適切に判断して、その通信が困難になる場合にのみ、サーバからの応答待ち受け時間を待たずにその旨をユーザに通知することができる、移動体における音声認識装置および方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、音声認識を行う遠隔のサーバシステムに接続して、ユーザの発話に対する音声認識を実現する移動体における音声認識装置において、ユーザの発話を前記サーバシステムに送信してその解析を依頼する手段と、移動体の通信環境に関する情報を取得する手段と、前記サーバシステムからの解析結果を一定時間待ち受ける手段と、前記待ち受け時間内に前記解析結果を受信した場合に、これをユーザに通知する手段と、前記取得した通信環境に関する情報に基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測する手段と、前記待ち受け時間内における通信状況が良好でないと判断される場合に、前記解析結果の待ち受けを中止し、その旨をユーザに通知する手段と、を有する。
【0012】
好ましくは、前記移動体の通信環境に関する情報が、移動体の走行ルートの情報を含み、前記通信状況を予測する手段が、前記移動体の走行ルートの情報に基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測するものである。好ましくは、前記移動体の通信環境に関する情報が、移動体の通信可能エリアの情報を含み、前記通信状況を予測する手段が、前記移動体の走行ルートおよび前記通信可能エリアの情報に基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測するものである。好ましくは、前記通信状況を予測する手段が、移動体の走行ルートにおける通信不能区間と、移動体の走行速度とに基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測するものである。好ましくは、前記通信状況を予測する手段が、中断した通信が前記待ち受け時間内に回復するかを予測するものである。
【0013】
好ましくは、本発明の移動体における音声認識装置は、前記待ち受け時間内に前記解析結果を受信した場合に、それが移動体に対する制御を行う音声コマンドであるか否かを判断する手段と、前記受信した解析結果が、音声コマンドであると判断される場合に、そのコマンドに従い移動体を制御する手段と、をさらに有する。
【0014】
本発明は、また、前記記載の移動体の音声認識装置を備えたナビゲーション装置である。
【0015】
本発明は、また、前記記載の移動体の音声認識装置と、前記移動体の音声認識装置からの音声データを受信してその解析を行い、結果を該音声認識装置へ送信する音声認識サーバシステムと、からなる移動体の音声認識装置システムである。
【0016】
本発明は、また、音声認識を行う遠隔のサーバシステムに接続して、ユーザの発話に対する音声認識を実現する移動体における音声認識方法において、ユーザの発話を前記サーバシステムに送信してその解析を依頼するステップと、移動体の通信環境に関する情報を取得するステップと、前記サーバシステムからの解析結果を一定時間待ち受けるステップと、前記待ち受け時間内に前記解析結果を受信した場合に、これをユーザに通知するステップと、前記取得した通信環境に関する情報に基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測するステップと、前記待ち受け時間内における通信状況が良好でないと判断される場合に、前記解析結果の待ち受けを中止し、その旨をユーザに通知するステップと、を有する。
【0017】
好ましくは、前記移動体の通信環境に関する情報が、移動体の走行ルートの情報を含み、前記通信状況を予測するステップが、前記移動体の走行ルートの情報に基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測するものである。好ましくは、前記移動体の通信環境に関する情報が、移動体の通信可能エリアの情報を含み、前記通信状況を予測するステップが、前記移動体の走行ルートおよび前記通信可能エリアの情報に基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測するものである。好ましくは、前記通信状況を予測するステップが、移動体の走行ルートにおける通信不能区間と、移動体の走行速度とに基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測するものである。好ましくは、前記通信状況を予測するステップが、中断した通信が前記待ち受け時間内に回復するかを予測するものである。
【0018】
好ましくは、本発明の移動体における音声認識方法は、請求項9に記載の移動体における音声認識方法において、前記待ち受け時間内に前記解析結果を受信した場合に、それが移動体に対する制御を行う音声コマンドであるか否かを判断するステップと、前記受信した解析結果が、音声コマンドであると判断される場合に、そのコマンドに従い移動体を制御するステップと、をさらに有する。
【0019】
本発明は、また、音声認識を行う遠隔のサーバシステムに接続して、ユーザの発話に対する音声認識を実現する移動体における音声認識プログラムにおいて、ユーザの発話を前記サーバシステムに送信してその解析を依頼するステップと、移動体の通信環境に関する情報を取得するステップと、前記サーバシステムからの解析結果を一定時間待ち受けるステップと、前記待ち受け時間内に前記解析結果を受信した場合に、これをユーザに通知するステップと、前記取得した通信環境に関する情報に基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測するステップと、前記待ち受け時間内における通信状況が良好でないと判断される場合に、前記解析結果の待ち受けを中止し、その旨をユーザに通知するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ユーザが発話した後に通信状況が悪化した場合には、その予想される通信状況の判断がなされる。そして、サーバからの応答待ち受け時間内における通信状況が良好でない場合には、その応答待ち受け時間を待たずに直ちにその旨がユーザに通知されることとなるので、通信不良の場合のユーザの待ち時間が短縮され、その利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来技術における音声認識の処理フローを示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施例に係る音声認識機能を備えた車載ナビゲーション装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】音声コマンド処理を実現するための機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施例における音声認識の処理フローを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例における音声認識の処理フローを示すフローチャートである。
【図6】通信環境が悪化した場合の本実施例による処理と、従来技術における処理とを比較したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。以下では、本発明に係る音声認識機能を備えた車載ナビゲーション装置の例をとって本発明の詳細を説明する。
【実施例】
【0023】
図2は、本発明の実施例に係る音声認識機能を備えた車載ナビゲーション装置の構成例を示すブロック図である。同図に示すように、ナビゲーション装置200は、車内バスからの車両の状態に関する各種信号を受信するバスインターフェース(I/F)202、GPS衛星からの信号を受信して自車位置を検出するGPS受信機204、VICSセンタから配信される道路交通情報を受信するVICS受信機206、ユーザが入力した音声コマンドを音声認識サーバ260へ送信するとともに、その結果を受信する音声コマンド送受信部207、ユーザからの入力を受け取る入力部208、無線または有線により外部機器とデータ通信をする通信制御部216、大容量ハードディスクなどの記憶媒体を含む記憶部218、スピーカ222から音声を出力させる音声出力部220、ディスプレイ226に道路地図等の画像を表示させる表示制御部224、プログラムを記憶するプログラムメモリ230、データを一時的に記憶するデータメモリ240、プログラムを実行することで各部を制御する制御部250を含んで構成される。
【0024】
バスインターフェース202は、自立航法センサ(例えば、車速センサや加速度センサ、ジャイロセンサ等)からの検出信号、パーキングのオン/オフを示す信号、方向指示器のオン/オフを示す信号などを受け取り、これを制御部250へ提供する。VICS受信機206は、光ビーコン、電波ビーコン、FM多重放送などによりVICSセンタ側から配信された道路交通情報を受信し、これを制御部250へ提供する。
【0025】
音声コマンド送受信部207は、遠隔の音声認識サーバ260との通信インタフェースである。すなわち、ユーザが入力した音声コマンドを遠隔の音声認識サーバへ送信するとともに、そのサーバからの解析結果を受信する。音声認識サーバ260は、例えば、インターネットの公開サーバ上に構築された音声認識サービスであり、特定の規約に従った音声バイナリデータを受信して、その解析を行い、その音声コマンドの内容を表したテキストメッセージを特定のフォーマットで送信元へ返す。もっとも音声認識サーバは、VICSセンタその他のネットワーク通信設備に統合された非公開のものでこれを構築しても良い。
【0026】
入力部208は、ユーザがディスプレイ226に接触して入力を可能にする操作パネル210、音声により入力を可能にする音声入力部212、およびリモコン214を含む。記憶部218は、ナビゲーションに必要な道路地図データを格納する。道路地図データには、道路を識別するためのリンクデータ、交差点を識別するためのノードデータ、施設等のPOIを識別する施設データ、市区町村の行政区画の境界または範囲を識別するための行政区画に関する情報、VICSリンク情報と道路地図データに含まれるリンクデータとの対応関係を示す情報などが含まれる。
【0027】
プログラムメモリ230は、自立航法センサやGPS受信機204からの検出信号に基づき自車位置を算出する自車位置算出プログラム232、自車位置やその他の開始位置から目的地までの最適な誘導経路を探索しこれを案内する誘導経路案内プログラム234、自車位置あるいはユーザが指定した特定エリア内の施設を検索するための周辺施設検索プログラム236、ユーザの発話する音声コマンドを受け付け、データ処理する音声コマンド処理プログラム238、走行ルートから車両の通信環境を取得し、通信状況を予測する通信状況予測プログラム239などを含む。データメモリ240は、例えば、記憶部218から読み出した道路地図データ242、自車位置算出プログラム232で算出された自車位置情報244、周辺施設検索プログラム236で検索された施設データ246、音声認識サーバ260から受信した音声解析情報248、通信状況予測プログラム239で取得した通信環境情報249などを記憶する。
【0028】
次に、上記構成のナビゲーション装置200における音声コマンド処理について説明する。ナビゲーション装置200においては、ユーザが音声にて車両上の各種機器、例えば、マルチメディア端末の操作、ナビゲーション装置の操作、エアコンやパワーウィンドウなど車両設備のコントロールを行うことができる。ユーザが、ハンドル近傍に設置したスイッチを操作することによって、音声コマンド処理プログラム238が起動し、音声入力部212が音声コマンドの受け付け可能な状態になる。
【0029】
図3は、音声コマンド処理を実現するための機能ブロック図を示している。図に示すように、音声コマンド処理は、音声コマンド処理プログラム238と通信状況予測プログラム239における各機能が協働することによって実現される。音声コマンド処理プログラム238は、音声認識サーバ260へユーザの発話データを送信する音声コマンド送信プログラム302、音声認識サーバからの音声解析結果を受信する音声解析データ受信プログラム304、受信した音声解析に係るテキストメッセージからその内容に係る制御コマンドを特定する制御コマンド特定プログラム306、音声認識の結果をユーザに通知する音声認識結果通知プログラム308、および特定された制御コマンドを実行する音声コマンド実行プログラム310を含む。また、通信状況予測プログラム239は、車両の通信環境に関する情報を取得する通信環境情報取得プログラム312、およびこの情報に基づいてこの先の通信状況の変化を予測し、通信の確立を維持するかを判断する状況予測判断プログラム314を含んでいる。
【0030】
前記音声コマンド送信プログラム302は、ユーザからの音声コマンドの入力があった場合に、音声コマンド送受信部207と音声認識サーバ260とのコネクションを確立し、必要な前処理、例えば、音声データが期待するデータフォーマットおよびプロトコルで音声データをパッケージ化し、これを送出する。音声解析データ受信プログラム304は、音声コマンド送信プログラム302により音声データが送信されてから所定のタイムアウト時間が経過するまで、音声認識サーバ260からの応答データを待ち受ける。制御コマンド特定プログラム306は、受信した音声認識結果に基づくテキストメッセージが、音声で実行可能な制御コマンドの何れかに該当するか判断する。
【0031】
前記通信環境情報取得プログラム312は、車両の通信環境に関する情報を取得する。実施例において、この情報には、自車位置、ナビゲーションに係る誘導経路、走行エリアの通信環境情報(例えば、そのエリアが通信不能エリアであるかの情報など)、および車両の走行情報(例えば、走行速度など)を含む。これらの情報を取得するために、通信環境情報取得プログラム312は、自車位置算出プログラム232、誘導経路案内プログラム234で生成され記憶部218に逐次記憶される、自車位置や誘導経路の情報、並びに道路地図データベース242などにアクセスする。通信環境情報取得プログラム312はまた、音声認識サーバ260との通信状況を判断し、その結果を記録する。音声認識サーバ260との通信状況の判断は、例えば、一定間隔でサーバのIPアドレスに対してpingを送信してその応答状況を把握するなどの方法を取ることができる。
【0032】
前記状況予測判断プログラム314は、通信環境情報取得プログラム312で取得された情報に基づいて、音声コマンドが音声認識サーバ260に送出されてからその待ち受けをする間のタイムアウト時間内における、通信状況の変化を予測する。この予測は、車両の走行ルートと走行速度からタイムアウト時間内における車両の到達エリアを予測し、道路地図データベース242から得られたそのエリアにおける通信状況を把握することで実現する。例えば、走行ルート上には通信環境のないトンネルが存在し、タイムアウト時間内では車両はトンネルをから出られないと判断される場合には、通信環境情報取得プログラム312は、サーバとの通信が確立できないと判断する。
【0033】
次に、前記音声コマンド処理プログラム238に基づいた、音声コマンド処理のワークフローを、図4および図5に沿って説明する。音声コマンド処理は、ユーザが、ハンドル近傍に設置したスイッチを操作することによって開始され、この操作で音声入力部212は音声コマンドを受け付け可能な状態になる。
【0034】
システムに対するユーザの音声コマンドの発話がなされると(ステップS402)、システムは、音声データに対する前処理を実行し、音声コマンド送受信部207と音声認識サーバ260とのコネクションを確立して、この音声データを送信する(ステップS404)。次いで、所定のタイムアウト時間(例えば、30秒)をカウントするタイマーを起動し(ステップS406)、これがタイムアウトするまで音声認識サーバ260からの応答を待ち受ける(ステップS408〜S414)。この待ち受け中に、システムは通信環境情報を取得し(ステップS410)、現在の通信状況が良好であるか判断する(ステップS412)。
【0035】
タイムアウト時間が経過するまでに音声認識サーバ260からの応答が得られない場合には(ステップS408)、その受信を断念し、通信終了処理を実行した後(ステップS418)、その旨をユーザに音声通知して本処理を終える(ステップS420)。
【0036】
一方で、タイムアウト時間が経過する前において、音声認識サーバ260とのコネクションが切断されるなど、通信状況が良好でない状況が生じた場合には、処理はステップS416に移行し、ここで状況予測判断プログラム314が起動されて、車両の走行状況などからタイムアウト時間内に通信状況が改善するかの判断がなされる。車両がトンネル内を走行中など、タイムアウト時間内に通信状況が改善される可能性がないと判断される場合、システムはタイムアウト時間の経過を待たずに、音声認識サーバとの通信を断念し、通信終了処理を実行した後(ステップS418)、その旨をユーザに音声通知して本処理を終える(ステップS420)。
【0037】
タイムアウト時間が経過する前に、音声認識サーバ260からの応答が得られた場合、処理はステップS422に移行し、その応答テキストメッセージの表す制御コマンドを特定する処理を実行する。そして、制御コマンドが特定できた場合には(ステップS424)、そのコマンドをユーザに音声通知し(ステップS426)、その実行の可否を確認する(ステップS428)。そして、ユーザからの音声またはスイッチ操作による了承の応答を経て、その制御コマンドを実行し(ステップS430)、本処理を終了する。また、ステップS424で制御コマンドが特定できなかった場合には、その旨をユーザに音声通知して(ステップS432)、処理を終了する。
【0038】
このようにして、本実施例に係る音声コマンド処理においては、ユーザが音声コマンドを発話したあと、一定時間通信状況の改善が見られないような場合においては、タイムアウト時間が経過するのを待たずに通信を断念し、その旨をユーザに即時通知することができる。
【0039】
図6は、通信環境が悪化した場合の本実施例による処理と、従来技術における処理とを比較するためのタイミングチャートを示している。従来技術における処理(A)では、音声認識サーバとの通信が開始されたあとに、通信環境が悪化した場合でも、システムは予め指定されたタイムアウト時間t1が経過するまで、サーバからの応答を待ち受け、その後、音声認識ができなかったことをユーザに通知している。
【0040】
一方で、本実施例における処理(B)では、音声認識サーバとの通信が開始されたあとに、通信環境が悪化した場合、その後の通信状況を予測して、その改善が期待できない場合、音声認識を断念し、タイムアウト時間t1が経過するのを待たずにユーザにその旨を通知している(t2を参照)。その結果、ユーザは即時に、音声認識によるコマンドの実行が困難である状況を理解し、手動でコマンドに係る操作を実行できるようになる。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形・変更が可能である。例えば、先の実施例において、ナビゲーション装置側にも音声データに対する音声解析機能を持たせ、音声認識サーバからのデータに係る制御コマンドが特定できない場合に、この音声解析機能により音声データを再解析し制御コマンドを特定することを試みる、などの変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
200:ナビゲーション装置 202:バスインターフェース
204:GPS受信機 206:VICS受信機
207:音声コマンド送受信部 208:入力部
210:操作パネル 212:音声入力部
214:リモコン 216:通信制御部
218:記憶部 220:音声出力部
222:スピーカ 224:表示制御部
226:ディスプレイ 230:プログラムメモリ
232:自車位置算出プログラム 234:誘導経路案内プログラム
236:周辺施設検索プログラム 238:音声コマンド処理プログラム
239:通信状況予測プログラム 240:データメモリ
242:道路地図データベース 244:自車位置情報
246:施設データ 248:音声解析情報
249:通信環境情報 250:制御部
260:音声認識サーバ 302:音声コマンド送信プログラム
304:音声解析データ受信プログラム 306:制御コマンド特定プログラム
308:音声認識結果通知プログラム 310:音声コマンド実行プログラム
312:通信環境情報取得プログラム 314:状況予測判断プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声認識を行う遠隔のサーバシステムに接続して、ユーザの発話に対する音声認識を実現する移動体における音声認識装置において、
ユーザの発話を前記サーバシステムに送信してその解析を依頼する手段と、
移動体の通信環境に関する情報を取得する手段と、
前記サーバシステムからの解析結果を一定時間待ち受ける手段と、
前記待ち受け時間内に前記解析結果を受信した場合に、これをユーザに通知する手段と、
前記取得した通信環境に関する情報に基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測する手段と、
前記待ち受け時間内における通信状況が良好でないと判断される場合に、前記解析結果の待ち受けを中止し、その旨をユーザに通知する手段と、
を有する移動体における音声認識装置。
【請求項2】
前記移動体の通信環境に関する情報が、移動体の走行ルートの情報を含み、
前記通信状況を予測する手段が、前記移動体の走行ルートの情報に基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測するものである、請求項1に記載の移動体における音声認識装置。
【請求項3】
前記移動体の通信環境に関する情報が、移動体の通信可能エリアの情報を含み、
前記通信状況を予測する手段が、前記移動体の走行ルートおよび前記通信可能エリアの情報に基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測するものである、請求項1に記載の移動体における音声認識装置。
【請求項4】
前記通信状況を予測する手段が、移動体の走行ルートにおける通信不能区間と、移動体の走行速度とに基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測するものである、請求項3に記載の移動体における音声認識装置。
【請求項5】
前記通信状況を予測する手段が、中断した通信が前記待ち受け時間内に回復するかを予測するものである、請求項1に記載の移動体における音声認識装置。
【請求項6】
前記待ち受け時間内に前記解析結果を受信した場合に、それが移動体に対する制御を行う音声コマンドであるか否かを判断する手段と、
前記受信した解析結果が、音声コマンドであると判断される場合に、そのコマンドに従い移動体を制御する手段と、
をさらに有する、請求項1に記載の移動体における音声認識装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の移動体の音声認識装置を備えたナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項1〜6の何れかに記載の移動体の音声認識装置と、
前記移動体の音声認識装置からの音声データを受信してその解析を行い、結果を該音声認識装置へ送信する音声認識サーバシステムと、
からなる移動体の音声認識装置システム。
【請求項9】
音声認識を行う遠隔のサーバシステムに接続して、ユーザの発話に対する音声認識を実現する移動体における音声認識方法において、
ユーザの発話を前記サーバシステムに送信してその解析を依頼するステップと、
移動体の通信環境に関する情報を取得するステップと、
前記サーバシステムからの解析結果を一定時間待ち受けるステップと、
前記待ち受け時間内に前記解析結果を受信した場合に、これをユーザに通知するステップと、
前記取得した通信環境に関する情報に基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測するステップと、
前記待ち受け時間内における通信状況が良好でないと判断される場合に、前記解析結果の待ち受けを中止し、その旨をユーザに通知するステップと、
を有する移動体における音声認識方法。
【請求項10】
前記移動体の通信環境に関する情報が、移動体の走行ルートの情報を含み、
前記通信状況を予測するステップが、前記移動体の走行ルートの情報に基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測するものである、請求項9に記載の移動体における音声認識方法。
【請求項11】
前記移動体の通信環境に関する情報が、移動体の通信可能エリアの情報を含み、
前記通信状況を予測するステップが、前記移動体の走行ルートおよび前記通信可能エリアの情報に基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測するものである、請求項9に記載の移動体における音声認識方法。
【請求項12】
前記通信状況を予測するステップが、移動体の走行ルートにおける通信不能区間と、移動体の走行速度とに基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測するものである、請求項11に記載の移動体における音声認識方法。
【請求項13】
前記通信状況を予測するステップが、中断した通信が前記待ち受け時間内に回復するかを予測するものである、請求項9に記載の移動体における音声認識方法。
【請求項14】
前記待ち受け時間内に前記解析結果を受信した場合に、それが移動体に対する制御を行う音声コマンドであるか否かを判断するステップと、
前記受信した解析結果が、音声コマンドであると判断される場合に、そのコマンドに従い移動体を制御するステップと、
をさらに有する、請求項9に記載の移動体における音声認識方法。
【請求項15】
音声認識を行う遠隔のサーバシステムに接続して、ユーザの発話に対する音声認識を実現する移動体における音声認識プログラムにおいて、
ユーザの発話を前記サーバシステムに送信してその解析を依頼するステップと、
移動体の通信環境に関する情報を取得するステップと、
前記サーバシステムからの解析結果を一定時間待ち受けるステップと、
前記待ち受け時間内に前記解析結果を受信した場合に、これをユーザに通知するステップと、
前記取得した通信環境に関する情報に基づいて、前記待ち受け時間内における通信状況を予測するステップと、
前記待ち受け時間内における通信状況が良好でないと判断される場合に、前記解析結果の待ち受けを中止し、その旨をユーザに通知するステップと、
を有する移動体における音声認識プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−256001(P2012−256001A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130258(P2011−130258)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】