説明

移動台車

【課題】台車本体の姿勢を任意の姿勢角に保ちつつ、この台車本体が接床面上で任意の方向に移動することが可能な移動台車を提供する。
【解決手段】台車本体2と、この台車本体2にこの台車本体2を床面に対して任意の高さに保持するように一端が台車本体2に関節軸を介して枢着された4個の脚部3と、これらの脚部3の他端に設けられ、車輪部8およびこの車輪部8周囲に回転可能に設けられた複数の小回転体10からなる4個の全方向移動用車輪4と、台車本体2および脚部3の一端間に設けられた関節軸を回動駆動して脚部3の枢着角度を変化させる複数の回転駆動手段5と、を備え、関節軸周りの回転ベクトル、および複数の小回転体10のうち、床面に接地している小回転体10の回転ベクトルとがほぼ平行に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動台車に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭環境など一般環境では、ロボット用に通路が幅広にされているとは限らない。通路幅がロボットの横幅よりも広くされていても、ある場所だけ通路幅が狭くなっていることや、物体が通路に置かれているため一箇所だけ通路幅が狭くなっていることがある。胴周りが極めて細いロボットでは、物体を掴む作業を行うときにバランスを崩すおそれがある。ロボットの足周りの面積は広くする必要があり、ロボットの前方に物体の存在を検知し制御系が駆動系に対し停止を指令した場合でも、転倒しないようロボットには安定性が求められる。
【0003】
走破性を高めるため、車輪と胴体との間に駆動用のアームを設けた脚車輪型の移動台車が知られている。車両幅可変型全方向移動ロボットと呼ばれる脚車輪ロボットは、脚部をステアリング代わりに使用したものである(非特許文献1参照)。ローラーウォーカーと呼ばれる脚車輪ロボットは、車輪部に受動輪を備えた普及型4脚歩行機械を有し、この機械の脚部の運動でローラースケートのような動きを可能としている(非特許文献2参照)。
【0004】
また機敏性を高めるためには、ロボットに高加減速動作をさせる時や高速旋回をさせる時に姿勢制御が必要となる。EMIEW(Excellent Mobility and Interactive Existence as Workmate)と呼ばれるロボットは倒立移動型台車を有し、胴体腰部に自由度を設け、移動時のピッチ及びロール各姿勢を動的に変更可能としている。下半身の径を大きくし、低重心化されたロボットも提案されている(非特許文献3参照)。非特許文献3に記載のロボットでは、下肢部の最下部の外周が大きくされており、下肢部によって占められる床面の面積が大きいため、広いフットプリントエリアのサイズを確保でき、静的な姿勢安定性が高められるようにされている。フットプリントエリアとは、ロボットが床面を占める面積ないしはロボットの床面への投影面積を指す。
【0005】
また実用を考慮した場合、ロボットには、実環境に合わせたサイズの上限が存在する。EMIEW2と呼ばれるロボットは全体サイズを小型化することでロボットの狭所での通行を可能としている。
【0006】
フットプリントエリアのサイズはロボットの狭所走破性に影響を与える値であり、一般にフットプリントエリアのサイズと、作業性(可能となる作業)及び運動性(ロボットが素早く機敏に動作可能であるという特性)との間にはトレードオフが存在する。
【0007】
家庭用途のロボットに関しては、傾斜床でも姿勢維持を容易に行えるようにした移動ロボットが提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載の移動ロボットは、本体ユニットと、それぞれが床面に接触する接地部及び回転軸を有する3つの車輪ユニットとで構成し、床面への回転軸の投影線が互いに略等角度を成しすべての回転軸が同一平面に含まれないように車輪ユニットを備えている。また、全方向移動性を持つ移動機構に用いられる車輪に関しては、平面上を全方向に移動するロボットや自動搬送車、自動車といった全方向移動車に用いる全方向移動車用車輪が知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−249455号公報
【特許文献2】特許第3421290号明細書
【非特許文献1】高橋隆行、外4名、「車両幅可変型全方向移動ロボットの機構と制御」、日本ロボット学会誌、2001年7月、Vol.19, No.5 pp.638−645
【非特許文献2】遠藤玄、外1名、「ローラーウォーカーに関する研究−システムの構成と基本的動作実験−」、日本ロボット学会誌、2000年3月、Vol.18, No.2, pp.270−277
【非特許文献3】川内直人、外4名、「ホームユースロボット“wakamaru”」、三菱重工業技報、三菱重工業株式会社、2003年9月、Vol.40, No.5, pp.270−273
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、車両幅可変型全方向移動ロボットでは姿勢変形と移動とが独立して行われており、制御動作にタイムロスが生じる。車輪の移動もノンホロノミックな拘束条件下でおこなわれる。従って車両幅可変型全方向移動ロボットは作業性及び運動性が十分ではない。
【0009】
ローラーウォーカーではローラーウォーク時においてロボット自身の駆動原理に基づいたノンホロノミックな条件が存在する。そのためローラーウォーカーは車輪回転時には自由な方向への移動を行えない。ローラーウォーカーがホロノミックな自由移動を行うためには脚部を使用した一般的な4足歩行運動をとる必要があるが、このローラーウォーカー本体の移動速度は、車輪の移動速度に比べて極端に低下する。従ってローラーウォーカーも作業性及び運動性が十分ではない。
【0010】
EMIEWでは倒立台車の位置とピッチ姿勢とを同時に制御する必要がある。ロボット本体を任意の姿勢に移行させるためには制御手段が倒立台車を移動させるという予備動作をこの倒立台車に行わせなければならない。この制御上の制約が存在するため、EMIEWは自由な移動もしくは姿勢制御を行えない。またEMIEWでは、関節部の高さが上方へ上がるほど、ロボット本体が扱える質量及び重心変化量が小さくなるため、腰関節の重心位置を上げる場合、姿勢制御を行うためには関節軸は大きな角度変化を必要とする。従ってEMIEWも作業性及び運動性が十分ではない。
【0011】
ロボットが自分自身の姿勢を制御せずに、高加減速動作や高速旋回移動動作を安定して行うためには、フットプリントエリアサイズを十分広く取り、ZMP(ゼロ・モーメント・ポイント)がこのフットプリントエリア内に収まるように制御しなくてはならない。ZMPとは接地点の抗力中心であり、抗力によるモーメントが0になる床面上の点である。ZMPがフットプリントエリア内に収まるように制御する場合、ロボットの狭所での通行やすれ違い動作時に支障をきたす。狭所を通行するため横方向のサイズ(半径サイズ)が小さいロボットを作る場合、姿勢を安定化させる必要があるため、高さ方向にも小型化がすすみ、可能な作業が限定されてしまう。従ってEMIEW2もやはり作業性及び運動性が十分ではない。
【0012】
上述した特許文献1に記載の移動ロボットは、脚車輪と床面との摩擦力によって発生する推進力を用いて駆動を行っているため、制御が現実上困難であるうえ、脚数が4脚以上である場合には床面との接地手法が考慮されておらず、また冗長自由度の扱いが不明である。
【0013】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、各脚部の関節軸の駆動により台車本体の姿勢が任意の姿勢角になるよう保ちつつ、全方向移動用車輪を回転させ且つこの全方向移動用車輪の周囲に設けられた複数の小回転体を自由回転させることによりこの台車本体が床面上で任意の方向に移動することが可能な移動台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を解決するため、本発明の一態様によれば、台車本体と、この台車本体にこの台車本体を床面に対して任意の高さに保持するように一端が前記台車本体に関節軸を介して枢着された少なくとも3個の脚部と、これらの脚部の他端に設けられ、車輪部およびこの車輪部周囲に回転可能に設けられた複数の小回転体からなる少なくとも3個の全方向移動用車輪と、前記台車本体および前記脚部の一端間に設けられた前記関節軸を回動駆動して前記脚部の枢着角度を変化させる複数の回転駆動手段と、を備え、前記関節軸周りの回転ベクトル、および前記複数の小回転体のうち、前記床面に接地している小回転体の回転ベクトルとがほぼ平行に配置されていることを特徴とする移動台車が提供される。
【0015】
また、本発明の別の一態様によれば、台車本体と、この台車本体にこの台車本体を床面に対して任意の高さに保持するように一端が前記台車本体に関節軸を介して枢着された少なくとも3個の脚部と、これらの脚部の他端に設けられ、車輪部およびこの車輪部周囲に回転可能に設けられた複数の小回転体からなる少なくとも3個の全方向移動用車輪と、前記台車本体および各脚部の一端間に設けられ、これらの脚部を、前記床面に平行な面内で直動駆動する複数の直動機構と、を備え、これらの直動機構による駆動時に、これらの脚部が伸縮する方向、および前記複数の小回転体のうち、前記床面に接地している小回転体の回転ベクトルの方向とがほぼ直交することを特徴とする移動台車が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、全方向移動用車輪の周囲に設けられた各小回転体が自由回転した状態でこの全方向移動用車輪が床面上で回転できるため、台車本体の姿勢が任意の姿勢角になるよう保たれつつ、この台車本体が床面上で任意の方向に移動することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る移動台車について、図1乃至図12を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る移動台車の平面図である。図1(b)は同図A方向から見たこの移動台車の正面図である。移動台車1は4本の脚を有する。移動台車1は、台車ベースである台車本体2と、それぞれ各一端部がこの台車本体2に回転可能に軸着された4本の脚部3と、それぞれが各脚部3の各他端部に回転自在に連結された4個のオムニホイール4と、それぞれが各脚部3をこれらの脚部3の軸線を含み床面と直交する面上で回動駆動する4個の脚軸アクチュエータ5(回転駆動手段)と、各脚部3に取付けられ、各オムニホイール4を回転駆動する車軸アクチュエータ6とを備えている。台車本体2は、CPU、ROM及びRAMからなるコントローラ11を有する。この台車本体2は、各オムニホイール4の車軸に設けられた回転角度センサ12aと、台車本体2の並進移動量を検出するための位置センサ12bと、台車本体2の姿勢角を検出するための姿勢センサ12cと、各脚部先端に設けられ脚部先端及び障害物間の距離を検出するための距離センサ12dとを有し、このコントローラ11及びこれらのセンサ類によって制御システムが構成されている。
【0019】
各脚軸アクチュエータ5には電動モータが用いられている。これらの脚軸アクチュエータ5は、台車本体2と各脚部3との接合部に設けられており、台車本体2、各脚部3及び各脚軸アクチュエータ5によって4箇所の脚関節7が構成されている。各脚軸アクチュエータ5がコントローラ11から変位指令を受けることにより、これらの脚関節7は各関節軸周りに稼動される。各脚部3の一端は台車本体2に枢支されているため、これらの脚部3は、各脚部3の脚軸を含む一垂直面内で床面を垂直に切るようにして動かされる。図1(a)の斜行する4本の点線は各垂直面を表す。
【0020】
脚関節7の動きに伴い、台車移動方向から見て前方に位置する2本の脚部3の先端(接地端)と、台車移動方向に向かって後方に位置する2本の脚部3の先端とはいずれも内方から外方へと拡げられ、あるいは外方から内方へと狭められるようにされている。
【0021】
車軸アクチュエータ6には電動モータが用いられる。この車軸アクチュエータ6は、図示しない駆動力伝達部材を介してオムニホイール4に対して車軸回りの回転力を与えることが可能にされている。
【0022】
また、各脚関節7の関節軸及び各オムニホイール4の車輪回転軸9に取付けられた回転角度センサ12aは、ポテンショメータやロータリーエンコーダである。これらの回転角度センサ12aによって各関節軸周りの回転角度量や車軸周りの回転角度量が計測される。各回転角度センサ12aからの回転角度量がコントローラ11へ出力されることにより、コントローラ11は、脚関節7の実関節変位を検知可能にされている。このコントローラ11は、目標脚関節変位に実関節変位が追従するよう、4つの脚関節7のそれぞれについて、脚軸アクチュエータ5へ変位指令を出力するようにしている。
【0023】
脚関節7を含む各脚部3の先端にはオムニホイール4が取付けられている。オムニホイール4は床面上で回転しながらこの床面でスライド可能な全方向移動用車輪である。図2はオムニホイール4単体の分解斜視図である。1個のオムニホイール4は、車輪部8と、それぞれがこの車輪部8の周囲に車輪部8の車輪回転軸9と直交する方向に軸支された複数のフリーローラ10(小回転体)とを備えている。これらのフリーローラ10は、車輪回転軸9の軸方向と直交する面内で自由回転可能になっている。
【0024】
図3はオムニホイール4と脚軸アクチュエータ5との配置関係を示す図である。同図には、4脚の脚部3のうちの1脚分の脚部3、オムニホイール4及び脚軸アクチュエータ5を上方から見た配置関係が示されている。同図に示す符号のうち上述した符号と同じ符号を有する要素はそれらと同じ要素を表す。オムニホイール4は、複数のフリーローラ10のうちの接地点でのフリーローラ10の自由回転による自由回転軸ベクトルV(回転ベクトル)と、脚関節7の関節軸の回転による脚関節軸回転ベクトルW(関節軸周りの回転ベクトル)とが平行になるように脚部先端に配置されている。脚軸アクチュエータ5が生成する回転駆動力の成分のうち、脚部3の基部からこの脚部3の脚軸方向に沿ってオムニホイール4へと向かう方向に作用する力の成分が接地点でのフリーローラ10に伝わらないようになっている。4脚の脚部3のうちの残りの3脚分のオムニホイール4及び脚軸アクチュエータ5の配置関係も、図3の例と同じである。
【0025】
本実施形態に係る移動台車1では、床面に接地しているフリーローラ10の回転軸と車輪部8の回転軸とが平行に配置されることにより、脚部3の回動運動に対して、オムニホイール4の移動とこのオムニホイール4の床面上でのスライド動作とが互いに干渉しない。移動に使用するオムニホイール4の回転力と、脚部3の回動運動時におけるオムニホイール4のスライド動作とが互いに干渉せず、これらのオムニホイール4の回転と、脚軸アクチュエータ5の回転とを同時にそれぞれ独立して制御できるようにされている。オムニホイール4が全方向に移動可能な状態で移動台車1は姿勢制御を受けられるようになっている。従って、台車本体2の姿勢が任意の姿勢角になるよう保たれつつ、この台車本体2が床面上で任意の方向に移動可能にされている。
【0026】
厳密には、フリーローラ10の自由回転軸ベクトルVは、床面と、脚部3の軸線を含む一つの垂直面との双方に直交する面(以下、直交平面という)内に含まれるようにする必要がある。自由回転軸ベクトルVが、この直交平面の法線方向の成分を含まないようにこれらの2つのベクトルV、Wが配置されていればよい。
【0027】
仮にこの自由回転軸ベクトルVが直交平面の法線方向成分を含むような配置関係の下では、コントローラ11は特異状態を検知する。特異状態では、脚軸アクチュエータ5が出している駆動力が、オムニホイール4の車輪部8の車輪回転軸9に作用してしまう。オムニホイール4が用いられていない従来例による配置構造の移動台車では、4本の車輪が設けられている場合、これらの車輪に加わる力どうしが相互に干渉し合い、移動台車は動くことができない。これに対して、本実施形態に係る移動台車1では、各オムニホイール4とも、脚部3から伝えられる力をフリーローラ10の自由回転により逃がすことができるようになっている。進行方向に向かって前方の2つのオムニホイール4と、後方の2つのオムニホイール4との間でも力が及ぼされず、また、左右一組のオムニホイール4の間でも力が及ぼされないようにされている。各オムニホイール4は、本来、自分自身が前進、後退及び回転するときに、車輪回転軸9に与えられる回転力や接地力以外の力は加えられないものである。単に4個の車輪を台車本体に取付けただけのような配置では、台車本体の姿勢に応じて様々な角度から各車輪に回転力や接地力以外の力が作用するため、車軸間で干渉力が及ぼしあって自由回転ができない。本実施形態に係る移動台車1では、回転をしにくくする力の影響がオムニホイール4間で互いに及ぼされずに互いに独立して回転可能である。各脚軸アクチュエータ5が独立してオムニホイール4の運動を制御することができるようになっている。
【0028】
(姿勢制御)
図1の例では、正面視で前方2つの脚部3の先端側が拡がったハの状にこれらの前方の脚部3は保持されている。後方2つの脚部3もこれらの接地端側が拡がった状態に保持されている。4本の脚部3間の広がり具合を個別にコントローラ11が狭めるあるいは拡げることが可能になっている。4箇所の接地点を頂点とする長方形状のフットプリントエリアのサイズが決まる。このフットプリントエリアサイズをコントローラ11が小さくすることにより、移動台車1は狭所でも通行可能になっている。また、コントローラ11は、前方2つのオムニホイール4を互いにハの字になるように拡げる場合、拡げられた前方2つのオムニホイール4の床面からの高さと、後方2つのオムニホイール4の床面からの高さとを合わせるために、後方2つのオムニホイール4は先に動かされた前方2つのオムニホイール4を拡げた後、これらに追随して拡げるなど個別制御も可能にされている。
【0029】
また、コントローラ11は、4本の脚部3を駆動制御する際に、これらの脚部3を個別に所望の量で動かすことができるようにされている。例えば前方2つのオムニホイール4のうちの一方を動かさずに、他方のオムニホイール4だけを、大きな移動量で動かすなどをコントローラ11は行う。コントローラ11は、各脚部3を個別に駆動することにより台車姿勢を制御しつつ、床面上のフットプリントエリアサイズを取得するようにしている。コントローラ11は、このフットプリントエリアサイズに基づいて、オムニホイール4の回転角速度を変化させるようにもしており、フットプリントエリアサイズが小さいときに生じる転倒などが起こらないように各脚関節7や車輪回転軸9の回転制御を行う。つまり、フットプリントエリアサイズは、台車本体2の姿勢制御や速度制御の指標にされている。
【0030】
また、コントローラ11は、台車本体2を大きな速度で移動させるときは脚部3どうしの間隔を拡げるように制御する。移動台車1の進行方向の先に、狭所が現れたときだけ、このコントローラ11は脚部3の間の間隔をすぼめるなどの制御を行う。この場合、コントローラ11は、移動台車1の並進速度を、通路幅など通行場所に見合った速度に制限するようにする。狭所を移動台車1が通過後、コントローラ11が各脚部3の間隔を拡げるなどの制御も行うようにしている。
【0031】
また、本実施形態に係る移動台車1は、オムニホイール4が床面から離れないように各脚軸アクチュエータ5が制御される。床面に常時オムニホイール4が接地するように制御することによって、移動台車1自体の推進力を確保するようにしている。コントローラ11が、4脚のバランスを制御することによって、全てのオムニホイール4が接地するよう4脚の上げ下げも制御されている。コントローラ11は、移動台車1の自分自身の幾何学的構造の情報を保持しており、この情報を元に4脚の各脚をどう動かせば台車本体2がどのような姿勢になるかを演算取得可能になっている。
【0032】
本実施形態に係る移動台車1は、接地力を計測するための後述する圧力センサを配置しており、この圧力センサから床面からの接地力を計測するようにしている。接地力とはオムニホイール4が床面を押しつける押圧力に対抗する抗力である。コントローラ11が、このセンサ情報を、フィードバックする状態量の中に加えてやることにより、各オムニホイール4の床面との接地力を指標として、これらのオムニホイール4の上げ下げを制御することもできるようにされている。いずれかのオムニホイール4が床面から浮き上がったときにも、脚関節7の駆動時に、接地力がフィードバックされて回転角速度に制御がかかるようにし、4本の脚部3の間の相対的な位置関係を定めることができるようになっている。床面に凹凸や起伏がある場合でも、コントローラ11が、台車本体2の姿勢角を演算できるようにされ、台車本体2が予期せぬ段差などを通行している際にも、姿勢制御を行えるようになっている。
【0033】
移動台車1には、前後方向、左右方向及び上下方向の3つの並進運動と、ロール、ピッチ及びヨーの3つの回転運動の6自由度の運動が存在するため、この移動台車1に設けられた位置センサ12b及び姿勢センサ12cは、これらの6自由度の運動を検出する。
【0034】
図4は移動台車1の並進3軸成分及び回転3軸成分を示す図である。同図においても既出の符号と同じ符号を持つ要素はそれらと同じ要素である。平面XYは床面であり、+X方向は移動台車1の前進方向を表す。コントローラ11は姿勢センサ12c及び位置センサ12bからのセンサ値を入力されるようになっており、移動台車1の位置を、X、Y及びZの座標を用いた演算によって取得し、移動台車1の姿勢を、X軸周りの回転角ロール、Y軸周りの回転角ピッチ、及びZ軸周りの回転角ヨーを用いた演算によって取得するようにしている。
【0035】
ここでは、移動台車部にジャイロセンサが回転3軸分備えられており、これらのジャイロセンサにより姿勢センサ12cの機能が実現される。姿勢センサ12cは、ロール軸の角速度を検出するジャイロセンサと、ピッチ軸の角速度を検出するジャイロセンサと、ヨー軸の角速度を検出するジャイロセンサとからなる。これらのジャイロセンサが計測する角速度情報はコントローラ11に入力され、このコントローラ11がロール、ピッチ及びヨーの各軸の姿勢角度を推定する。ここで、姿勢センサ12cは特にジャイロセンサに限定するものではない。傾斜センサや地磁気センサなど他の角度測定センサ等をコントローラ11は使用することができる。もしくはジャイロセンサと角度測定センサとを併用して姿勢センサ12cを構成しても構わない。
【0036】
また移動台車部には慣性センサが並進3軸分備えられており、これらの慣性センサにより位置センサ12bの機能が実現される。位置センサ12bは、X、Y及びZの各方向についての移動台車1の角速度及び加速度を計測する慣性センサである。各慣性センサが計測するセンサ値はコントローラ11に入力されて、このコントローラ11がX、Y、Zの各方向の並進移動量を推定する。各慣性センサのほか、移動台車1には、脚関節7の関節軸の角度とオムニホイール4の回転量とによりこの移動台車1の移動量を推定するデッドレコニングが備えられており、このデッドレコニングと、X、Y及びZの各方向の慣性センサからなる位置センサ12bとによって、並進移動量が推定される。ここで、移動台車1の並進移動量を計測する位置センサ12bとしては、慣性センサに限られるものではない。コントローラ11は、位置センサ12bとして、カメラ等外界センサを使用して微小移動変位量を計測してもよい。コントローラ11はレーザレンジファインダ等を使用した地形スキャンマッチングを用いて移動量を計測してもよい。台車本体2にGPS(Global Positioning System)受信器を設け、コントローラ11がGPS情報などの外部からの入力により移動台車1自身の絶対位置を得るなど他の位置計測システムを使用して移動量を計測してもよい。もしくは位置センサ12bには、慣性センサと、これらの外界センサ、地形スキャンマッチングやGPSとが併用されても構わない。
【0037】
また各脚関節7及び車軸3に取付けられた回転角度センサ12aが計測したセンサ値はコントローラ11に入力され、このコントローラ11は各軸の回転角度量を計測する。移動台車1に設けられたROMには、脚部3の脚長など移動台車1自身の幾何パラメータが予め記憶されている。コントローラ11は、この各軸の現在角度情報と、この幾何パラメータとから、移動台車1自身の保有する内部座標系における各脚の先端の3次元位置情報や、オムニホイール4の接地地点の部位の3次元位置情報などをリアルタイムで把握することが可能となっている。
【0038】
また移動台車1にはサスペンション機構が設けられている。図5はサスペンション機構の概略構成図である。サスペンション機構13は、脚部3と、オムニホイール4と、車軸アクチュエータ6と、この脚部3の先端に取付けられた固定部材14aと、オムニホイール4が直接取付けられる可動部材14bと、車軸アクチュエータ6が固定されこれらの固定部材14a及び可動部材14bを可動状態で連結する緩衝部材15と、可動部材14bに設けられこの可動部材14b及び緩衝部材15間の当接点に加えられる押圧力を検出する圧力センサ16とを備えている。圧力センサ16には感圧センサが用いられる。緩衝部材15の上端部は固定部材14aに連結され、この緩衝部材15の下端部は可動部材14bに連結されている。オムニホイール4は脚部3に対して上下動自在にされており、台車本体2はオムニホイール及び緩衝部材15によって弾性支持されている。
【0039】
脚部3の脚軸の軸線を含み床面に垂直な面内で脚部3が駆動されると、この駆動と連動して、オムニホイール4は、床面上を図5で左右にスライドするように配置されている。サスペンション機構13では、スライドする部分に圧力センサ16が取付けられているといえる。この圧力センサ16が計測したセンサ値はコントローラ11に入力され、このコントローラ11が床面から脚部3へ作用する接地力を計測するようになっている。この圧力センサ16のほか、脚関節7にはトルクセンサ17aが設けられている。脚関節駆動モータ(脚軸アクチュエータ5を構成するモータ)には、電力線を介して電源から電力が供給されており、この電力線には電流センサ17bが備えられている。これらのトルクセンサ17a及び電流センサ17bのセンサ値はコントローラ11へ入力されており、コントローラ11は、これらのセンサ17a、17bからのセンサ出力よりトルクの大きさを検知し、接地力の大きさを推定する。脚関節駆動モータから出力されているトルクの大きさが、現在の姿勢角を移動台車1が保つために必要なトルク値であるかをコントローラ11が検知することにより、コントローラ11は接地力を推定することが可能にされている。コントローラ11はこれら以外の接地力計測センサを使用しても構わない。
【0040】
また4本の各脚部3には距離センサ12dが備えられている。距離センサ12dには、超音波発信源及び超音波エコー信号を受信する超音波センサが用いられたり、あるいは、赤外線の送信器及び赤外線反射波を受光する赤外線センサが用いられてもよい。この距離センサ12dは、脚部先端からオムニホイール4が床面に対して水平方向にスライドする方向に障害物が有るかどうかを検知する。距離センサ12d及びCPUによって、床面上で各オムニホイール4がスライドする方向に障害物が存在することを検出し、この障害物及び各脚部先端間の距離を計測する障害物検出部としての機能が実現される。この距離センサ12dからのセンサ値に基づき、コントローラ11が距離センサ12dの感度方向に障害物が存在すると判定した場合、測定された距離に基づき脚軸角速度が制御されるようになっている。
【0041】
(制御システム)
図6は制御システムのブロック図である。制御システム18は、4つの車軸部からなる車軸部ユニット19aと、4つの脚軸部からなる脚軸部ユニット19bと、センサ類と、4個のオムニホイール4がそれぞれ床面から受ける接地力を推定する接地力推定部20と、台車本体2の並進移動量を推定する位置推定部21と、台車本体2の姿勢を推定する姿勢推定部22と、台車本体2の床面上での位置及び台車本体2の旋回姿勢を制御するサブシステム23と、接地点により形成されるフットプリントエリアのサイズの目標値に基づき台車本体2のピッチ角及びロール角を制御するサブシステム24とを有する。接地力推定部20、位置推定部21、姿勢推定部22、サブシステム23及びサブシステム24によりコントローラ11が構成される。
【0042】
本実施形態に係る移動台車1では、制御システム18にこのサブシステム24が設けられている点が従来例の移動台車やロボットの制御システムと異なる。サブシステム24はROMを持っており、このROMに、4本の脚部3の台車本体2への取付け位置や各取付け位置の間の距離、及びこれらの脚部3の軸長や各オムニホイール4の半径等を記憶してある。サブシステム24は、記憶してある脚部3の取付け位置間の距離、脚部3の長さ及びオムニホイール4の半径などから、台車本体2、4本の脚部3及び4個のオムニホイール4の間の幾何学的な位置関係を求めることができるようにされている。
【0043】
車軸部ユニット19aを構成する4つの車軸部は、それぞれ脚部3、オムニホイール4及び車軸アクチュエータ6からなる。脚軸部ユニット19bを構成する4つの脚軸部は、それぞれ台車本体2、脚部3及び脚軸アクチュエータ5からなる。台車本体2にはフットプリントエリアのサイズを取得する手段が設けられており、この手段は、脚軸部ユニット19bからのセンサ出力と、幾何学的位置関係により決まる4個のオムニホイール4の各接地点とに基づいて、移動台車1の現在のフットプリントエリアサイズSを求めるようにしている。
【0044】
接地力推定部20は、圧力センサ16からの出力に基づき推定した4つの現在の車輪接地力Nnを出力する。位置推定部21、姿勢推定部22は、各軸の回転角情報及びジャイロ・加速度センサの情報から移動台車1の位置・姿勢を推定する。接地力、姿勢角及び並進移動量はそれぞれ圧力センサ16、姿勢推定部22及び位置推定部21によって直接計測される。もしくは接地力、姿勢角及び並進移動量はそれぞれオブザーバ等により間接的に推定される。
【0045】
サブシステム23は、1m前進といった台車本体2の位置Xr、Yrや、45°右回りなど台車本体2のヨー角θzrを出力する目標位置・旋回姿勢出力部25と、この目標位置・旋回姿勢出力部25が発行した目標情報Xr、Yr、θzrと位置推定部21からの現在並進位置x、y及び姿勢推定部22からの現在姿勢角θzとを比較演算する演算部26とを有する。更にサブシステム23は、この演算部26から出力される差分を埋めるよう移動の目標並進移動速度や旋回の目標角速度を計算する台車移動旋回目標計算部27と、台車移動旋回目標計算部27が出力した並進移動目標速度Vr及び旋回目標角速度ωrを達成するために必要な4個のオムニホイール4の各車軸の目標回転角速度を生成する車軸目標角速度生成部28とを有する。更にサブシステム23は、この車軸目標角速度生成部28が出力した車軸回転目標角速度dψnr/dtと、車軸部ユニット19aから出力された現在の車軸回転角速度dψn/dtとを比較演算する演算部29と、この演算部29から出力される差分を埋めるように車軸の回転角速度を求めて4個のオムニホイール4の各回転軸の電流指令値iψnを出力する車軸回転制御部30とを有する。
【0046】
なお、「dψ/dt」と表記した記号は「ψドット」を表す。即ち、

また、車軸目標角速度生成部28へは、脚軸部ユニット19bから4脚分の各脚関節7の脚軸回転角度φnが入力されるようにされている。この車軸目標角速度生成部28は、この脚軸回転角度φnと旋回目標角速度ωrとに基づき、各オムニホイール4と台車本体2との間の幾何関係を求め、この幾何関係を用いて各オムニホイール4の目標回転角速度を生成している。
【0047】
これにより、サブシステム23では、台車移動旋回目標計算部27により台車本体2の並進移動量及び旋回量が計算され、車軸目標角速度生成部28によりこれらの並進移動量及び旋回量を実現するために要するオムニホイール4の目標回転角速度が計算される。演算部29においてこの目標値と現在の回転角速度値との差分が比較され、車軸回転制御部30によりこの差分が小さくなるように計算された値の電流が車軸部ユニット19aへ指令され、車軸の回転制御が行われるようになっている。車軸回転制御部30からの電流による指令値が各オムニホイール4毎に生成され、各指令値はアクチュエータドライバに出力され、各車軸アクチュエータ6が駆動される。目標位置・旋回姿勢出力部25、演算部26、29、台車移動旋回目標計算部27、車軸目標角速度生成部28、車軸回転制御部30の機能はCPU、ROM及びRAMにより実現される。
【0048】
サブシステム24は、台車本体2の目標姿勢角(目標ロール角θxr及び目標ピッチ角θyr)を出力する目標姿勢角出力部31と、移動台車1が床面を占有する面積であるフットプリントエリアサイズの目標値を出力する目標フットプリントエリアサイズ出力部32と、目標姿勢角出力部31が発行した目標ロール角θxr、目標ピッチ角θyr及び姿勢推定部22が出力した現在のロール角θx、ピッチ角θyをそれぞれ比較演算する演算部33と、目標フットプリントエリアサイズ出力部32が出力した目標フットプリントエリアサイズSr及び脚軸部ユニット19bが出力する現在のフットプリントエリアサイズSを比較演算する演算部34とを備えている。
【0049】
更にサブシステム24は、目標姿勢角情報、目標フットプリントエリアサイズ、及び接地力推定部20により推定された床面からの抗力値に基づき、各脚部3の角速度の目標値を生成する脚軸目標角速度生成部35を備えている。この脚軸目標角速度生成部35は、演算部33により演算された差分と、演算部34により演算された差分とに基づいて、4本の脚部3の回転目標角速度dφnr/dtを出力する。
【0050】
更にサブシステム24は、脚軸部ユニット19bから出力される4つの関節軸7の現在の脚軸回転角度φnを微分して現在の脚軸回転角速度dφn/dtを出力する微分演算部36と、脚軸目標角速度生成部35からの各脚部3の回転目標角速度dφnr/dt及び微分演算部36からの現在の脚軸回転角速度dφn/dtを比較演算する演算部37と、この演算部37から出力される差分を埋めるように各脚部3の回転角速度を求めて4脚各軸の電流指令値iφnを出力する脚軸回転制御部38とを備えている。なお、目標姿勢角出力部31、目標フットプリントエリアサイズ出力部32、演算部33、34、37、脚軸目標角速度生成部35、微分演算部36、脚軸回転制御部38の機能はCPU等により実現される。
【0051】
全体の制御システム18は図6のようになっている。サブシステム24では、ピッチ軸、ロール軸及びヨー軸の各角度情報と、推定された位置、姿勢角及び接地力とがフィードバックされ、これらの各軸角度情報と目標入力との偏差情報から各軸の制御指令値が生成される。フィードバックされる状態量のうち、次の(1)から(4)の状態量が脚軸目標角速度生成部35へ入力されている。(1)姿勢推定部22により推定された3軸姿勢角のうちロール角θx及びピッチ角θyと、目標ロール角θxr,目標ピッチ角θyrとの偏差情報θxe,θye。(2)接地力推定部20により推定された各オムニホイール4の床面との接地力Nn(nは車輪番号を表す)と、各オムニホイール4の床面との接地力の規定値Nrnとの偏差情報Nen。(3)各脚部3の幾何情報に基づき求められる各オムニホイール接地点により形成される移動台車1のフットプリントエリアサイズ(床占有面積)Sと、フットプリントエリアサイズの規定サイズSrとの偏差情報Se。(4)各脚軸先端においてオムニホイール4がスライドする方向に存在する障害物とこれらの脚軸先端との間の距離ln(nは車輪番号を表す)。脚軸目標角速度生成部35はこれらの(1)から(4)の状態量を入力として各脚部3の目標角度を生成する。
【0052】
(作用)
このような構成の本実施形態に係る移動台車1における4脚の脚部3及び4本のオムニホイール4の各駆動動作について図7から図9を参照して説明する。以下の各フローチャートで示される処理は、CPUがROMからプログラムを読込み、このCPUが脚軸目標角速度生成部35として機能する場合の処理である。移動台車1は脚軸目標角速度生成部35によるプログラム処理に沿った動作を行う。
【0053】
図7は姿勢制御用の脚軸目標角速度指令値を生成する処理を説明するためのフローチャートである。脚軸目標角速度生成部35は、車軸部ユニット19a及び脚軸部ユニット19bを制御対象としてアクチュエータモータの回転制御等のサーボ周期毎に制御動作を実行する。脚軸目標角速度生成部35はステップA1において、各脚軸先端からオムニホイール4がスライドする方向の先に障害物が存在しているかどうかを判定し、障害物が存在する場合、各脚部3の関節軸7周りの角速度を補正する。ここで、角速度の補正が必要とされる例を述べると、脚軸目標角速度生成部35により各脚部3が内方から外方へ拡げられると、各オムニホイール4は床面上を外方へ向かってスライドし始める。このとき、4脚の脚部3のうちのいずれかの脚部3の距離センサ12dにより障害物の存在が検知された場合、この障害物有りと検知された脚部3についてはこの脚部3が展開する動作を停止させるよう脚軸目標角速度生成部35は角速度を出力する。脚軸目標角速度生成部35が残りの3脚の脚部3を動かすことによって、システム指定の接地力や姿勢を台車本体2が得られるように制御している。
【0054】
ステップA2において、脚軸目標角速度生成部35は、4脚分の各距離センサ12dの出力値lnと予め決めておいた閾値d2とを比較して、ln<d2となる脚部3の数が3本以上あるかどうかを判定する。脚部3の数が3以上である場合、y(Yes)ルートを通り、ステップA3において脚軸目標角速度生成部35は台車本体2の位置を復帰させるためのモードの処理を行う。また、ステップA2において、脚部3の数が3未満である場合、n(No)ルートを通り、ステップA4において、脚軸目標角速度生成部35はロール角θx及びピッチ角θyと、目標ロール角θxr,目標ピッチ角θyrとの偏差情報θxe,θyeを計算する。
【0055】
ステップA5において、脚軸目標角速度生成部35は、各距離センサ12dの出力値lnと閾値d2とを比較して、ln<d2となる脚部3の数が2本であるかどうかを判定する。脚部3の数が2本である場合、yルートを通り、ステップA6において、脚軸目標角速度生成部35は、制御姿勢角を、障害物有りと検知された2脚の接地点間を直線で結び、台車本体2の運動の自由度を、この直線を回転軸とする方向のみに限定する処理を行う。ステップA7において、脚軸目標角速度生成部35は、この限定を行った方向のみに関する姿勢制御を行うことによって目標姿勢角を達成することが可能であるかどうかを判定する。達成可能でないと脚軸目標角速度生成部35が判定した場合、nルートを通り、ステップA3の処理を行う。達成可能であると判定した場合、yルートを通り、ステップA8において、脚軸目標角速度生成部35は、限定方向を考慮して姿勢角速度指令値を生成する。なお、ステップA5において、ln<d2となる脚部3の数が1本以下である場合、nルートを通り、ステップA9において脚軸目標角速度生成部35は姿勢回転方向の限定はないものとする処理を行った上で、ステップA8の処理に移る。
【0056】
次に、ステップA10において、脚軸目標角速度生成部35は、現在のフットプリントエリアサイズが規定値のフットプリントエリアサイズよりも小さいかどうかを比較判定する。現在のフットプリントエリアサイズが第1の規定値So−dS1のフットプリントエリアサイズよりも大きい場合、nルートを通り、脚軸目標角速度生成部35はステップA11の処理に進む。引き続きステップA11において、現在のフットプリントエリアサイズが第2の規定値So−dS2のフットプリントエリアサイズよりも大きいかどうかを脚軸目標角速度生成部35は判定する。現在のフットプリントエリアサイズが第2の規定値のフットプリントエリアサイズよりも小さい場合、脚軸目標角速度生成部35は、現在のフットプリントエリアサイズが予め保持する範囲内の値であると判断して、nルートを通り、ステップA12の処理を行う。ステップA12において、脚軸目標角速度生成部35は係数補正の演算処理を実行し、各脚関節7の回転角速度の指令値を生成する。ステップA13において、脚軸目標角速度生成部35は、この指令値を、姿勢制御用の各脚部3の角速度指令値として出力する。この係数補正計算には後述する式(A)が用いられる。
【0057】
また、ステップA10において、現在のフットプリントエリアサイズが第1の規定値のフットプリントエリアサイズよりも小さいと判定した場合、yルートを通り、ステップA14において、脚軸目標角速度生成部35は、1本以上の脚部3について、これらの脚部3が、現在のフットプリントエリアサイズが縮小する方向へ駆動されることを不許可にする。ステップA15において、脚軸目標角速度生成部35は、障害物の存在により行った方向限定についての制限に合わせて、台車本体2に姿勢制御の自由度が残っているかどうかを判定する。自由度が残っていないと判断すると、nルートを通り、脚軸目標角速度生成部35は、ステップA3の処理を行う。ステップA15において、自由度が残っていると判断すると、yルートを通り、ステップA16において、脚軸目標角速度生成部35は、脚軸駆動制限に合わせて係数補正を行う。脚軸目標角速度生成部35はこの後ステップA12の処理を行う。
【0058】
また、ステップA11において、現在のフットプリントエリアサイズが第2の規定値のフットプリントエリアサイズよりも大きいと判定した場合、yルートを通り、ステップA17において、脚軸目標角速度生成部35は、1本以上の脚部3について、これらの脚部3が、現在のフットプリントエリアサイズが拡大する方向へ駆動されることを不許可にする。脚軸目標角速度生成部35はこの後ステップA15の処理を行う。このようにして、姿勢制御用の脚軸目標角速度指令値が生成される。また、第1の規定値及び第2の規定値は可変であり、自由に設定可能である。これによりフットプリントエリアサイズの大きさが制御される。
【0059】
換言すれば、脚軸目標角速度生成部35は、モータの回転数をどの程度にするかを決定するためのルール(駆動則)に基づき、各脚部3の角速度の目標値を生成している。この駆動則は、脚部先端と障害物との間の距離を考慮したものである。脚軸目標角速度生成部35は、各脚部先端においてこれらの脚部先端からオムニホイール4のスライド方向に存在する障害物までの距離lnに関し、lnが閾値d1よりも小さい場合、オムニホイール4のスライド時の脚部3の最大角速度出力dψMax n/dtに対して速度制限をかける。距離lnが小さくなればなるほど、dψMax n/dtが小さくなるよう速度制限が施される。またlnが閾値d2(d2<d1)よりも小さい場合、脚軸目標角速度生成部35は目標角速度の値を0にする。角速度出力が完全にカットされるように障害物補正がかかる。即ち障害物方向へ脚部先端がスライドしないように脚部3についての障害物補正が行われる。このように、コントローラ11は、障害物の存在を検出された該当脚部の関節軸の最大駆動角速度をその距離に基づき制限し、距離が一定距離以下である場合、距離がさらに小さくなる方向へ該当脚部の関節軸の角速度出力指令が出されている場合にその該当脚部の関節軸の角速度の出力をゼロとし、該当脚部以外の残りの脚部の関節軸を駆動することにより、台車本体2の姿勢及び接地力を制御している。例えば障害物が無い時の最大角速度出力がdψM n/dtであった場合、制限補正を考慮した処理が行われた後の実最大速度出力dψ′Max n/dtは、次式で記述される。
【数1】

【0060】
なおd1>ln>d2の遷移区間では、脚軸目標角速度生成部35は上式のような線形な演算を行う代わりに、非線形な遷移形態をとって演算を行うようにしてもよい。また速度制限は方向性も有し、速度制限がかけられている方向とは逆向きの方向に関しては通常通りの速度出力が許可されるような処理を脚軸目標角速度生成部35は行う。
【0061】
また、角速度出力をカットするという制限を受ける脚部3の対象脚数が1脚以下である場合、ロール及びピッチの2軸姿勢が制御対象とされる。角速度出力をカットするという制限を受ける脚部3の対象脚数が2脚である場合、2脚の接地点を結ぶ直線を回転軸とする1軸の姿勢のみが制御対象とされる。制限を受ける脚部3の対象脚数が3脚以上である場合、脚軸目標角速度生成部35は台車本体2のモードを通常の動作モードから外し、この台車本体2のモードを、台車本体2がこれまで来た道を引き返す等の現状を脱却するといった特別な動作モードへ移行させる。なお特別な動作モードへ移行させる処理は、角速度出力をカットする制限が加えられる対象の脚部3の脚数が3脚未満である段階から実行させるようにしても良い。
【0062】
障害物補正に続き、フットプリントエリアサイズを考慮した各脚部3の動作制限が脚軸目標角速度生成部35により行われる。現在のフットプリントエリアサイズSが規定のサイズの範囲内に収まっているか否かを脚軸目標角速度生成部35は判定する。予め決められた規定のサイズの下限So−dS1と、予め決められた規定のサイズの上限So−dS2との間に、現在のフットプリントエリアサイズSが収まっているか(So−dS1 < S <So−dS2)が判定される。現在のフットプリントエリアサイズSが規定のサイズの範囲内に収まっている場合、脚軸目標角速度生成部35は各脚部3の動作方向に関して新たに特別な制約を設けずに、図7のステップA12の処理を行う。
【0063】
現在のフットプリントエリアサイズSが規定のサイズ値よりも大きくなってしまった場合(So−dS2 < S)、脚軸目標角速度生成部35は各脚関節7の回転を制限する。フットプリントエリアサイズSが拡大する方向への各脚関節7の動作が許可されないよう、各脚関節7の運動は1方向に制限される。同様に、現在のフットプリントエリアサイズSが規定のサイズ値よりも小さくなってしまった場合(S < So−dS1)、脚軸目標角速度生成部35は各脚関節7の回転を制限する。フットプリントエリアサイズSが縮小する方向への各脚関節7の動作が許可されないよう、各脚関節7には運動制限がかけられる。ここでSo及びdS1、dS2はフットプリントエリアサイズSが取りうる値の範囲内の任意の正数値として自由に設定をすることができる。
【0064】
以上の補正準備に続き、姿勢制御及び床面接地制御が脚軸目標角速度生成部35により行われる。脚軸目標角速度生成部35は、通常、姿勢制御を、台車本体2のロール姿勢角についての姿勢角偏差θxeと台車本体2のピッチ姿勢角についての姿勢角偏差θyeとに応じて適切な姿勢角速度指令値dθx/dt、dθy/dtを決定する。これより、
【数2】

で表されるように適当な正数係数pn、qnを乗じることで各脚関節7の関節軸の回転角速度指令値dφn/dtを生成することが可能となる。ここでは次式で表される姿勢角速度指令値dθx/dt、dθy/dtの生成のためには姿勢角軸ごとにPID(Proportional Integral Derivative)制御を使用するようにしている。
【数3】

【0065】
上記手順は、脚軸目標角速度生成部35が各脚部3の角速度を補正する準備段階において、特に各脚部3の角速度制限がなされていない通常状態における手順である。この角速度制限を行う必要が生じている場合、例えば第1脚軸(車輪番号n=1の脚軸)が、脚部3が展開される方向(脚が台車本体2の中心から外方に遠ざかる方向)に角速度制限を受けている場合、脚軸目標角速度生成部35は、その軸の出力値が制限角速度以上であるならばこの軸の出力値を制限角速度に置き換えてから出力する。
【0066】
また4本の脚部3のうちの1本を移動制限の生じている方向へ動かすことにより姿勢角を実現する必要がある場合、移動制限が生じている同じ方向へ動かすことを要する他の脚部3に関し、これらの他の脚部3の配置位置に応じて角速度を減速するよう脚軸目標角速度生成部35は制限を行う。この制限を行うことで、目標姿勢への収束を早めることが可能になる。例えば障害物などにより第1脚軸に速度制限がかかっている場合、ピッチ軸(Y軸まわり)正方向に台車本体2の姿勢制御を行うに際し、脚軸目標角速度生成部35は、第2脚軸に関しても第1脚軸の速度制限と同様の速度制限をかける。ロール軸(X軸まわり)正方向に台車本体2の姿勢制御を行う場合、脚軸目標角速度生成部35は第3脚軸に関しても第1脚軸の速度制限と同様の速度制限をかけるようにする。また台車姿勢角を実現するために、4本の脚部3のうちの1本を移動制限が生じている方向へ動かすとともに他の3本の脚部3をこの方向とは逆方向へ動かす必要がある場合、係数を角速度に乗じる処理を脚軸目標角速度生成部35は行う。この逆方向へ動かす必要がある他の脚部3に関し、これらの他の脚部3の配置位置に応じて増速するように係数を角速度に乗算する。このようにしても有効である。
【0067】
次に、接地力を考慮した姿勢についての脚軸角速度指令値の追加補正処理について図8を参照して説明する。図8は接地制御用の脚軸目標角速度指令値を生成する処理を説明するためのフローチャートである。図8の処理は図7の処理とは独立して行われる。移動台車1に最大の性能を発揮させる場合、脚軸目標角速度生成部35は図7及び図8の両方の処理を行うようにしている。
【0068】
ステップB1において、脚軸目標角速度生成部35は、4つのオムニホイール4についてそれぞれ車輪接地力Nnを取得する。ステップB2において、脚軸目標角速度生成部35は4つの全ての接地力が予め保持する規定値以上であるかどうかを判定する。ここで、全てのオムニホイール4の接地力Nnが規定値No以上となっている場合、各オムニホイール4は床面と十分に接地できているものと考えられる。全オムニホイール4の接地力が規定値以上であると判定された場合、yルートを通り、ステップB3において、脚軸目標角速度生成部35は特に追加補正を行わないと判定する。ステップB4において、脚軸目標角速度生成部35は、追加補正を行わずに、接地制御用の脚軸角速度指令値を生成して出力する。
【0069】
ステップB2において、いずれかのオムニホイール4の接地力が規定値以下であると判定した場合、nルートを通り、ステップB5において、脚軸目標角速度生成部35は、オムニホイール4のスライド方向の先の規定距離範囲内に障害物が存在するかどうかを判定する。障害物が存在すると判定した場合、yルートを通り、ステップB6において、脚軸目標角速度生成部35は該当する脚部3が展開方向に向かって駆動されることを不許可にする。
【0070】
また、ステップB5において障害物が存在しないと判定した場合、及びステップB6において展開方向への駆動を不許可にした場合、ステップB7において、脚軸目標角速度生成部35は、現在のフットプリントエリアサイズSが第1の規定値So−dS1よりも小さいかどうかを判定する。現在のフットプリントエリアサイズがこの第1の規定値So−dS1よりも小さいと判定した場合、yルートを通り、ステップB8において、脚軸目標角速度生成部35は、接地力が第1の規定値以下であるオムニホイール4が取付けられた脚部3の収納を不許可にする処理を行う。ステップB7において、現在のフットプリントエリアサイズが第1の規定値So−dS1よりも大きいと判定した場合、nルートを通り、ステップB9において、脚軸目標角速度生成部35は、現在のフットプリントエリアサイズが第2の規定値So−dS2よりも大きいかどうかを判定する。現在のフットプリントエリアサイズがこの第2の規定値So−dS2よりも大きいと判定した場合、yルートを通り、ステップB10において、脚軸目標角速度生成部35は、接地力が第2の規定値以上であるオムニホイール4が取付けられた脚部3の展開を不許可にする処理を行う。
【0071】
ステップB8の処理を行った場合と、ステップB10の処理を行った場合と、ステップB9において現在のフットプリントエリアサイズが第2の規定値So−dS2よりも小さいと判定した場合とにおいて、それぞれ、脚軸目標角速度生成部35は、ステップB11の処理を行う。ステップB11では、脚軸目標角速度生成部35は、駆動を許可される方向の所定範囲内において、接地力が第2の規定値So−dS2以下の脚部3を、この脚部3が収納される方向に駆動し、且つ接地力が第1の規定値So−dS1以上である脚部3をこの脚部3が展開される方向に駆動するよう、脚軸回転角速度を生成する。ステップB4において、脚軸目標角速度生成部35は、この生成した脚軸回転角速度を、接地制御用脚軸角速度指令値として出力する。
【0072】
このようにして、接地制御用の脚軸角速度指令値の追加補正が行われる。図9は補正後の脚軸角速度指令値を生成する処理を説明するためのフローチャートである。脚軸目標角速度生成部35は、図7の処理により生成された姿勢制御用の脚軸角速度指令値と、図8の処理により生成された接地制御用の脚軸角速度指令値とを足し合わせて(ステップC1)、これらの指令値を足し合わせた結果を最終脚軸角速度指令値として出力する(ステップC2)。
【0073】
一般に車輪が4個以上存在する台車が床面を走行する場合、床面の形状に対し、各脚軸の関節角度が床面形状に対応して適切に与えられていないと、4個中幾つかの脚軸が十分に床面に接していない、もしくは床面から宙に浮いた状態になってしまう可能性がある。この場合、台車は3点接地となっている可能性があり、n−3軸(本実施例の制御システム18では1軸)が不十分な接地状態になる可能性を制御システムが持つことになる。また瞬間的には2点接地となる可能性もあり、3輪の台車でもこの接地状態と同様の非接地状態になるという問題はつきまとう。
【0074】
これに対して、本実施形態に係る移動台車1では、いずれか第i軸(1<i<n)の車輪の接地力Niが規定値No以下であった場合(Ni<No)、脚軸目標角速度生成部35は、第i軸の脚を、これらの脚が折りたたまれる方向(収納方向)へ駆動させるような回転速度値a(a<0:各脚軸展開方向を正方向とする)をその脚軸の速度出力に足し込むようにしている。回転速度補正値aの大きさは、目標接地力と現在の接地力との差が大きいほど大きくなるように与えられる。
【0075】
また脚部3の接地力を大きくするためには前述のように該当する脚を収納方向へ駆動させるほかに、該当する脚以外の接地している脚の脚軸を展開方向へ駆動させることによっても実現できる。つまり脚を展開する方向へ駆動させるような回転角速度値b(b>0)を予め脚軸目標角速度生成部35は用意しておき、この回転角速度値bを、該当脚以外の脚の脚部3の角速度出力に足し込むようにする。ここでの回転角速度補正値bの大きさは、該当脚の目標接地力と現在の接地力との差が大きいほど大きくなるように与えられる。
【0076】
ここでの接地力の制御は、姿勢の制御と同様に、脚軸先端がスライドする方向に障害物が無く、且つフットプリントエリアサイズの値も規定範囲内である場合、該当脚の収納と、それ以外の脚の展開との両方について脚軸の駆動を実行することになる。脚軸先端がスライドする方向に障害物が存在する場合、もしくはフットプリントエリアサイズSについてS>So−dS2となっている場合、該当脚が収納される方向の補正のみを脚軸目標角速度生成部35が実行する。フットプリントエリアサイズSについてS<So−dS1となっている場合、該当脚以外の脚が展開される方向の補正のみを脚軸目標角速度生成部35が実行することで接地力の制御が行われる。
【0077】
このように、本実施形態に係る移動台車1によれば、脚関節7の関節軸の冗長自由度を利用し、姿勢及び接地力の制御をその周囲の障害物やフットプリントエリアサイズによって切り替えることができる。姿勢及び接地力の制御をその周囲の障害物やフットプリントエリアサイズによって切り替えることができるため、各オムニホイール4が障害物等に接触することなく、かつ安定して移動台車1が移動することを実現することができるようになる。
【0078】
制御システム18では、車軸目標角速度生成部28において、各脚部3の関節角度を常にフィードバックさせている。姿勢(各脚軸角度)が変わると、移動中心(略ロボット重心)から各オムニホイール4の床面接地点までの位置関係が変わってくるため、同じ並進速度や旋回速度を実現する場合でも、各オムニホイール4が出力しなくてはならない回転速度が変わってくる。車軸目標角速度生成部28は、脚長やオムニホイール半径等の既知な幾何パラメータをもとに、現在の接地点位置を算出し、台車移動旋回目標計算部27は並進及び旋回(ヨー軸)方向の位置・姿勢制御に必要な速度v、及び旋回角速度ωを生成し、これらのv、ωを実現するための各オムニホイール4の回転軸の回転速度を算出することで、移動台車1のロール・ピッチ軸姿勢制御と同時に位置及び旋回方位姿勢の制御が可能となる。
【0079】
以上のように、本実施形態に係る移動台車1は、台車本体2と各車輪部8との間に稼動用の各脚部3を有し、脚部稼動時には各脚部3が垂直面内で床面を垂直に切るような脚関節軸配置を有する。この移動台車1は、その脚部先端に、接地点でのフリーローラ10の自由回転面と、脚部3が移動する稼動面とが並行に配置された全方向車輪を配置している。つまり接地点において脚部駆動により、床面とフリーローラ10との間に生じる力ベクトルが、フリーローラ自由回転軸ベクトルと常に直交関係になるように全方向車輪が配置されている。これによって、脚関節7が駆動制御され、常に台車本体2が任意の姿勢角になるよう保ちつつ、オムニホイール4を駆動させることにより同時に台車本体2が任意の移動を行う。このようにして、機敏性を損うことなく、自由度及び通行性能の高い移動台車1が提供される。
【0080】
また、移動台車1は、脚軸角速度指令値を生成する脚軸目標角速度生成部35を設けてもよい。更に移動台車1は、この脚軸目標角速度生成部35と、床面との接地力を計測可能な圧力センサ16と、脚関節7の関節軸周りに生じるモーメントを計測可能なトルクセンサ17aと、脚部3周りのトルクの大きさの検知や接地力の大きさの推定のための電流センサ17bと、これらのセンサ17a、17bからのセンサ値を入力され、各脚部先端のオムニホイール4及び床面の接地力を計測する状態オブザーバとを備えてもよい。このようにすれば、脚関節7の関節軸周りに生じるモーメントから各脚部先端のオムニホイール接地状態を推定することができ、各オムニホイール4が床面と密着するよう軸関節角度を調整しつつ、目的の姿勢及び移動出力を維持するよう制御を行うことができる。
【0081】
また、この移動台車1では、周囲の障害物の存在状況や現在のフットプリントエリアのサイズに応じて、床面接地力を確保し、または姿勢制御のための脚軸の動作方法を変更させることもできるようになる。
【0082】
(第2の実施形態)
脚軸先端に取付けられた全方向移動用車輪は、図2の例のオムニホイール4に限られるものではなく、例えば特許文献2に記載の全方向移動車用車輪や、メカナムホイールといったオムニホイール4の構造とは別の構造を有するフリーローラ構成のものを用いてもよい。
【0083】
図10は本発明の第2の実施形態に係る移動台車に用いられる全方向移動車用車輪と脚軸アクチュエータ5との配置関係を示す図である。同図には、4脚の脚部3のうちの1脚分の脚部3等を上方から見た状態が示されている。上述した符号と同じ符号を持つ要素はそれらと同じ要素である。
【0084】
全方向移動車用車輪39は、複数の第1の樽型フリーローラ40と複数の第2の樽型フリーローラ41とを有し、第2の樽型フリーローラ41に形成された空所に第1の樽型フリーローラ40の一部が位置するようにして、軸方向が駆動軸に対して直交するとともに外形が円周を形成するようにして互いに交互に配置されている。樽型フリーローラ40及び樽型フリーローラ41はいずれも床面と接地する。全方向移動車用車輪39は、樽型フリーローラ40又は樽型フリーローラ41の自由回転による自由回転軸ベクトルと、脚関節7の関節軸の回転による脚関節軸回転ベクトルとが平行になるように台車本体2に配置されている。脚軸アクチュエータ5によって生成される回転駆動力が、接地点における樽型フリーローラ40又は樽型フリーローラ41の回転に影響を及ぼさないように全方向移動車用車輪39が配置されている。脚部3が脚軸アクチュエータ5により回転駆動されているときに、床面に接地している樽型フリーローラ40又は樽型フリーローラ41の回転軸と、全方向移動用車輪39の車輪回転軸とが平行に配置されることにより、脚部3の回動運動に対して、全方向移動用車輪39の移動とこの全方向移動用車輪39のスライド動作とが互いに干渉しないようになっている。
【0085】
また、図11は本実施形態に係る移動台車に用いられるメカナムホイールと脚軸アクチュエータ5との配置関係を示す図である。同図でも、既出の符号はそれらと同じ要素を表し、4脚の脚部3のうちの1脚分の脚部3等を上方から見た状態が示されている。メカナムホイール42は、車輪の外周にそれぞれの回転軸方向がこの車輪の回転軸に対して傾斜した状態で配置された複数のフリーローラ43を設けてなる。メカナムホイール42は、フリーローラ43の自由回転による自由回転軸ベクトル(小回転体の自由回転による回転ベクトル)と、脚関節7の関節軸の回転による脚関節軸回転ベクトル(関節軸周りの回転ベクトル)とが平行になるように台車本体2に配置されている。脚部3が脚軸アクチュエータ5により回転駆動されているときに、接地点におけるフリーローラ43の回転軸と、メカナムホイール42の車輪回転軸とが平行に配置されることによって、メカナムホイール42の移動とこのメカナムホイール42のスライド動作とが互いに干渉しないようにされている。
【0086】
図10や図11の配置構造を有する本実施形態に係る移動台車は、制御システムにより、第1の実施形態の例と同様に姿勢制御を受ける。
【0087】
本発明のこの実施形態に係る移動台車によれば、2つのベクトルの向きが同じになるように配置されているため、脚軸アクチュエータ5による回転駆動力が、車輪接地点において床面からフリーローラ43へ作用する推進力に影響を与えずに、この移動台車は移動を行える。
【0088】
(第3の実施形態)
上記の第1の実施形態では、脚軸目標角速度生成部35へ入力される規定接地力Nrn及び規定フットプリントサイズSrは基本的には一定値でよく、一定の規定接地力Nrn及び規定フットプリントサイズSrが用いられていたが、脚軸目標角速度生成部35へ入力されるこれらの規定接地力Nrn及び規定フットプリントサイズSrは動的に値が変更するものであってもよい。本発明の第3の実施形態に係る移動台車の構成も、第1の実施形態に係る移動台車1の構成と同じである。
【0089】
例えばフットプリントエリアサイズが一般走行時用のサイズ値では通行できない狭所にロボットが遭遇した場合、脚軸目標角速度生成部35は、フットプリントエリアサイズに、通常時のサイズ値よりも小さな値を指定することで、ロボットの最大横幅を小さくし、ロボットが狭所を通行可能とすることができる。このような通路が通行エリアの1ヶ所にでも存在すると、従来例のロボットでは立ち往生してしまいその先に進めず、たちまち移動範囲が非常に小さくなってしまっていた。本実施形態に係る移動台車によれば、台車本体2の最大横幅を小さくすることができ、この移動台車を備えたロボットが狭所を走破することができるようになり、移動可能エリアを格段に広げることが可能となる。
【0090】
またこのとき、フットプリントエリアサイズが縮小される動作と、フットプリントエリアサイズが拡大される動作とに連動して、脚軸目標角速度生成部35が移動台車1の許容最大速度及び許容最大加速度も小さくすることによって、フットプリントエリアサイズの変化により低下することのある安定性を補償することができるようになる。逆に移動台車1の進行方向の前方に見通し空間が存在し、移動台車1がこの見通し空間中を高速に移動する場合、脚軸目標角速度生成部35はより大きなフットプリントエリアサイズを指定するようにして、安定性を確保した上で許容最大速度及び許容最大加速度を大きくすることも可能である。
【0091】
このように、本発明のこの実施形態に係る移動台車によれば、制御システムによって、移動台車の許容最大速度及び許容最大加速度をフットプリントエリアサイズが大きいときには大きくし、また同サイズが小さいときには小さくなるように、フットプリントエリアサイズに応じて動的に変化させることができるようになる。
【0092】
(第4の実施形態)
また、凹凸や傾斜がない平坦な床面を移動台車1が移動する場合、脚軸アクチュエータの駆動方向を床面と平行にした状態で関節軸7を駆動するようにこの脚軸アクチュエータを配置してもよい。図12は本発明の第4の実施形態に係る移動台車に用いられるオムニホイール4と脚軸アクチュエータとの配置関係を示す図である。同図には、4脚の脚部3のうちの1脚分のオムニホイール4及び脚軸アクチュエータを上方から見た状態が示されている。同図に示す符号のうち上述した符号と同じ符号を有する要素はそれらと同じ要素を表す。
【0093】
脚軸アクチュエータ44は直動機構である。この脚軸アクチュエータ44には電流制御によって伸縮駆動される直動機構駆動用アクチュエータが用いられる。脚軸アクチュエータ44は、この脚軸アクチュエータ44の体軸が床面と平行になるように、取付具45を介在させて台車本体2の台車下面に取付けられている。オムニホイール4は、脚車輪接地点でのフリーローラ10の自由回転による自由回転軸ベクトルの方向と、脚軸アクチュエータ44の伸縮動作によって駆動力が伝達される方向とが直交するように脚部先端に配置されている。脚軸アクチュエータ44によって生成される伸縮駆動力が、接地点におけるフリーローラ10の回転に影響を及ぼさないようにされている。本実施形態に係る移動台車は、床面と平行な水平方向に伸縮駆動される図示しない他の3本の脚軸アクチュエータ44も設けている。
【0094】
このような構成の本実施形態に係る移動台車が、平坦な移動領域を走行する場合、また移動台車1自身の姿勢制御の必要も無い場合などには、床面に平行且つ脚軸アクチュエータ44の体軸を含む平面内において接地点でのフリーローラ10の自由回転ベクトルと直交する方向に脚軸アクチュエータ44は伸縮する。
【0095】
本発明のこの実施形態に係る移動台車によれば、直動型の脚軸機構を用いることによっても、フットプリントエリアサイズのみを移動動作と干渉することなく、所望の値に変更でき、これによって、台車本体2の自由な姿勢制御及び移動制御が可能となる。
【0096】
(その他)
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記実施形態では、脚数は4であったが、本発明の実施の形態に係る移動台車は、脚数が3でもよい。脚数は5以上であってもよい。3脚又は5脚以上の脚を移動台車が有する場合でも、各脚については、関節軸周りの回転ベクトルおよび床面に接地している小回転体の回転ベクトルとがほぼ平行に配置される。床面に接地している小回転体の回転軸と、全方向移動用車輪の車輪部回転軸とが平行に配置されることにより、脚部3の回動運動に対して、全方向移動用車輪の移動とこの全方向移動用車輪のスライド動作とが互いに干渉しないようにでき、この移動台車はスムーズな移動を行うことができる。
【0097】
上記の実施形態では、脚軸制御のために参照される変数を、フットプリントエリアサイズでなく、移動台車1の進行方向に関する最大横幅(ほぼ車幅)で指定しても良い。このとき、制御システム18は、指定した横幅で移動台車1が指定した姿勢をとりつつ実現可能な最大フットプリントエリアサイズを取りうる脚軸角度配置を脚軸目標角速度生成部35が出力し、同時に同フットプリントエリアサイズに応じた許容最大速度出力を計算するようなシステム構成としても良い。
【0098】
上記の実施形態では、移動台車は床面上を移動していたが、屋外ではこの移動台車は地面を接地面とする。
【0099】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る移動台車の平面図であり、(b)は同移動台車の正面図である。
【図2】オムニホイール単体の分解斜視図である。
【図3】オムニホイールと回転駆動手段との配置関係を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る移動台車の並進3軸成分及び回転3軸成分を示す図である。
【図5】サスペンション機構の概略構成図である。
【図6】制御システムのブロック図である。
【図7】姿勢制御用の脚軸目標角速度指令値を生成する処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】接地制御用の脚軸目標角速度指令値を生成する処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】補正後の脚軸角速度指令値を生成する処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る移動台車に用いられる全方向移動車用車輪と回転駆動手段との配置関係を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る移動台車に用いられる全方向移動用車輪と回転駆動手段との配置関係を示す図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る移動台車に用いられる全方向移動用車輪と回転駆動手段との配置関係を示す図である。
【符号の説明】
【0101】
1…移動台車、2…台車本体、3…脚部、4…オムニホイール(全方向移動用車輪)、5…脚軸アクチュエータ(回転駆動手段)、6…車軸アクチュエータ、7…脚関節、8…車輪部、9…車輪回転軸、10,43…フリーローラ(小回転体)、11…コントローラ(制御部)、12a…回転角度センサ、12b…位置センサ、12c…姿勢センサ、12d…距離センサ、13…サスペンション機構、14a…固定部材、14b…可動部材、15…緩衝部材、16…圧力センサ、17a…トルクセンサ、17b…電流センサ、18…制御システム、19a…車軸部ユニット、19b…脚軸部ユニット、20…接地力推定部、21…位置推定部、22…姿勢推定部、23,24…サブシステム、25…目標位置・旋回姿勢出力部、26,29,33,34,37…演算部、27…台車移動旋回目標計算部、28…車軸目標角速度生成部、30…車軸回転制御部、31…目標姿勢角出力部、32…目標フットプリントエリアサイズ出力部、35…脚軸目標角速度生成部、36…微分演算部、38…脚軸回転制御部、39…全方向移動車用車輪、40…第1の樽型フリーローラ(小回転体)、41…第2の樽型フリーローラ(小回転体)、42…メカナムホイール(全方向移動用車輪)、脚軸アクチュエータ(直動機構)、45…取付具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車本体と、
この台車本体にこの台車本体を床面に対して任意の高さに保持するように一端が前記台車本体に関節軸を介して枢着された少なくとも3個の脚部と、
これらの脚部の他端に設けられ、車輪部およびこの車輪部周囲に回転可能に設けられた複数の小回転体からなる少なくとも3個の全方向移動用車輪と、
前記台車本体および前記脚部の一端間に設けられた前記関節軸を回動駆動して前記脚部の枢着角度を変化させる複数の回転駆動手段と、を備え、
前記関節軸周りの回転ベクトル、および前記複数の小回転体のうち、前記床面に接地している小回転体の回転ベクトルとがほぼ平行に配置されていることを特徴とする移動台車。
【請求項2】
前記床面に接地している小回転体の回転軸と、前記全方向移動用車輪の前記車輪部の回転軸とが平行に配置されることにより、前記脚部の回動運動に対して、前記全方向移動用車輪の回転移動とこの全方向移動用車輪の前記床面上での前記回転移動方向に直交する方向でのスライド動作とが互いに干渉しないことを特徴とする請求項1記載の移動台車。
【請求項3】
前記台車本体に設けられ、この台車本体の姿勢角を計測可能な姿勢センサと、前記台車本体の並進移動量を計測可能な位置センサと、これらの姿勢センサ及び位置センサからのセンサ情報に基づいて各関節軸の駆動制御を行う制御部と、を備え、
この制御部が前記各関節軸の回転角速度の目標値を生成し、各回転駆動手段がこの目標値に基づき前記各関節軸を駆動することにより、任意のタイミングで、前記台車本体の姿勢が任意の姿勢に変更され、前記各全方向移動用車輪の前記床面との接地点によって形成されるフットプリントエリアのサイズが任意の値に変更されることを特徴とする請求項2記載の移動台車。
【請求項4】
前記台車本体に設けられ、前記台車本体の姿勢角を計測可能な姿勢センサと、前記台車本体の並進移動量を計測可能な位置センサと、これらの姿勢センサ及び位置センサからのセンサ情報に基づいて各関節軸の駆動制御を行う制御部と、を備え、
この制御部は、前記各全方向移動用車輪の前記床面との接地点によって形成されるフットプリントエリアのサイズが規定値以下である場合、前記複数の回転駆動手段に対して前記各脚部が前記台車本体の内方に向かって収納される方向へこれらの脚部を駆動することを不許可とし、また前記フットプリントエリアのサイズが既定値以上である場合、前記複数の回転駆動手段に対して前記各脚部が前記台車本体から外方へ拡げられる方向へこれらの脚部を駆動することを不許可とし、この不許可とされた方向以外の方向について残された駆動自由度を使用して前記台車本体の姿勢を制御し、前記各全方向移動用車輪及び前記床面との接地力が確保されるように前記各関節軸を制御することを特徴とする請求項1記載の移動台車。
【請求項5】
前記制御部は、前記台車本体の許容最大速度及び前記台車本体の許容最大加速度を、前記フットプリントエリアのサイズに応じて変化させることを特徴とする請求項4記載の移動台車。
【請求項6】
台車本体と、
この台車本体にこの台車本体を床面に対して任意の高さに保持するように一端が前記台車本体に関節軸を介して枢着された少なくとも3個の脚部と、
これらの脚部の他端に設けられ、車輪部およびこの車輪部周囲に回転可能に設けられた複数の小回転体からなる少なくとも3個の全方向移動用車輪と、
前記台車本体および各脚部の一端間に設けられ、これらの脚部を、前記床面に平行な面内で直動駆動する複数の直動機構と、を備え、
これらの直動機構による駆動時に、これらの脚部が伸縮する方向、および前記複数の小回転体のうち、前記床面に接地している小回転体の回転ベクトルの方向とがほぼ直交することを特徴とする移動台車。
【請求項7】
前記台車本体に設けられ、前記台車本体の姿勢角を計測可能な姿勢センサまたはこの姿勢角を間接的に推定する第1状態オブザーバと、前記台車本体の並進移動量を計測可能な位置センサまたはこの並進移動量を間接的に推定する第2状態オブザーバと、この姿勢センサまたは第1状態オブザーバの出力、及びこの位置センサまたは第2状態オブザーバの出力に基づき各関節軸および各全方向移動用車輪の回転軸の駆動制御を行う制御部と、を備え、
この制御部は、前記台車本体のロール方向及びピッチ方向の各軸周りの回転角が目的の角度になるよう前記各関節軸を駆動制御し、前記台車本体のヨー方向の軸周りの回転角及び前記並進移動量が目的の角度及び位置になるよう前記各全方向移動用車輪の回転を制御することを特徴とする請求項1記載の移動台車。
【請求項8】
各脚部に設けられ、各全方向移動用車輪と前記床面との接地力を計測可能な圧力センサまたはこの接地力を間接的に推定する状態オブザーバと、この圧力センサまたは状態オブザーバの出力に基づいて各関節軸の駆動制御を行う制御部とを備え、
この制御部は、各接地力が全て規定値以上になるよう前記各関節軸を駆動制御し、これらの関節軸の冗長自由度を利用して前記台車本体のロール方向及びピッチ方向の各軸周りの回転角が同時に目的角度になるように前記各関節軸を駆動制御することを特徴とする請求項1記載の移動台車。
【請求項9】
各関節軸に設けられこれらの関節軸周りに生じる回転モーメントを計測可能なトルクセンサと、前記複数の回転駆動手段へ電流を出力することによりこれらの回転駆動手段へ駆動指令を与える駆動指令出力手段及びこの駆動指令手段が出力する電流の大きさを計測する電流センサとのうちのいずれか一方と、このトルクセンサまたは電流センサからのセンサ値を入力され各全方向移動用車輪と前記床面との接地力を推定する状態オブザーバとを備えることを特徴とする請求項1記載の移動台車。
【請求項10】
各脚部に設けられ、各関節軸の駆動時に前記床面上で各全方向移動用車輪がスライドする方向に障害物が存在することを検出し、この障害物及び各脚部の前記他端の間の距離を計測する障害物検出部と、前記各関節軸の駆動制御を行う制御部とを有し、
この制御部は、前記少なくとも3個の脚部のうち、前記障害物の存在を検出された該当脚部の関節軸の最大駆動角速度を前記距離に基づき制限し、前記距離が一定距離以下である場合、前記距離がさらに小さくなる方向へ前記該当脚部の関節軸の角速度出力指令が出されている場合にその該当脚部の関節軸の角速度の出力をゼロとし、前記該当脚部以外の残りの脚部の関節軸を駆動することにより、前記台車本体の姿勢及び接地力を制御することを特徴とする請求項1記載の移動台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−76630(P2010−76630A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248043(P2008−248043)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)