説明

移動型冷暖房装置

【課題】所望の箇所を集中的かつ快適に冷暖房できる移動型冷暖房装置を提供する。
【解決手段】複数の管部材10を並設することによって構成され、かつ、当該管部材10中に高温あるいは低温の流体を流通させることによって管部材10が熱放射する熱放射パネル2と、この熱放射パネル2をほぼ鉛直に支持する支持体3と、管部材10中に流体を供給するための供給口4および管部材10中を流れた流体を排出するための排出口5と、支持体3に取り付けられて、当該支持体3を床面で移動可能とする移動部材7とを備えているので、移動部材7によって支持体3を所望の箇所まで容易に移動させたうえで、熱放射パネル2の管部材10中に高温あるいは低温の流体を連続的に流通させて熱放射させることができるので、所望の箇所を集中的かつ快適に冷暖房できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動型冷暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱放射パネルを利用した冷暖房システムの一例として特許文献1に記載のものが知られている。
この冷暖房システムは、多数の管部材を備えて構成された冷暖房パネル(熱放射パネル)と、この冷暖房パネルの内部に高温あるいは低温の流体を流通させる流体供給装置とを備えたものである。
そして、冷暖房パネルは、例えばリビングルームと階段スペースとを仕切る位置や、トイレ室と洗面スペースとを仕切る位置に設けたり、冷暖房パネルの幅方向一端側をリビングルームの壁面に回動可能な状態で取り付け、リビングルームと食堂とを仕切る位置と、リビングルームの壁面側との間を回動可能となるようにして設けている。
このような冷暖房システムでは、夏場には、流体供給装置から冷暖房パネルに冷水を流通させることによって、当該冷暖房パネルが放射冷房パネルとして機能し、冬場には、流体供給装置から冷暖房パネルに温水を流通させることによって、当該冷暖房パネルが放射暖房パネルとして機能するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−121907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記熱放射パネルは、例えばリビングルームと階段スペースとを仕切る位置や、トイレ室と洗面スペースとを仕切る位置に設けたり、冷暖房パネルの幅方向一端側をリビングルームの壁面に回動可能な状態で取り付け、リビングルームと食堂とを仕切る位置と、リビングルームの壁面側との間を回動可能となるようにして設けているので、ほぼ固定的な使用となり、空間全体を冷暖房するのに適している。
一方、空間全体を冷暖房しなくても、人が作業等をしている場所を局所的に人とともに暖めたり、冷やしたりすることで十分な場合があるが、前記冷暖房パネルではそのような局所的な冷暖房を行うのには不向きである。
また、小型の石油ストーブやガスストーブ等による暖房の場合、放熱温度が高いため、人がその近くで作業するのには不向きであるし、冷房を行うことはできない。近年、移動型の冷房パネルが開発されているが、これも冷房だけであり、暖房を行うことはできない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、所望の箇所を集中的かつ快適に冷暖房できる移動型冷暖房装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば図1および図2に示すように、複数の管部材10を並設することによって構成され、かつ、当該管部材10中に高温あるいは低温の流体を流通させることによって前記管部材10が熱放射する熱放射パネル2と、
この熱放射パネル2の下端部に設けられて当該熱放射パネル2をほぼ鉛直に支持する支持体3と、
前記管部材10に接続されて、当該管部材10中に前記流体を供給するための供給口4および前記管部材10中を流れた流体を排出するための排出口5と、
前記支持体3に取り付けられて、当該支持体3を床面で移動可能とする移動部材7とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、複数の管部材10を並設することによって構成された熱放射パネル2が支持体3によってほぼ鉛直に支持されており、この支持体3に移動部材7が取り付けられているので、移動部材7によって支持体3を所望の箇所まで容易に移動させることができ、移動先において前記供給口4および排出口5に、高温あるいは低温の流体を供給する供給管と排出する排出管とをそれぞれ接続することによって、熱放射パネル2の管部材10中に高温あるいは低温の流体を連続的に流通させて熱放射させることができるので、所望の箇所を集中的かつ快適に冷暖房できる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の移動型冷暖房装置において、
前記供給口4および前記排出口5が近接した状態で前記支持体3に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、供給口4および排出口5が近接した状態で支持体3に設けられているので、高温あるいは低温の流体を供給する供給管と排出する排出管をまとめて供給口4と排出口5に容易に接続できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の移動型冷暖房装置において、
前記支持体3の下面に凹所25が設けられ、この凹所25に前記管部材10の表面に結露した水を貯留する貯留箱26が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、貯留箱26に管部材10の表面に結露した水を貯留できるので、当該結露水が床等に流出するのを防止できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、例えば図3および図4に示すように、請求項1〜3のいずれか一項に記載の移動型冷暖房装置において、
前記熱放射パネル2は、それぞれ複数の前記管部材10が並設されてなる第1管部材群32および第2管部材群33を有し、これら第1管部材群32と第2管部材群33とは対向して配置され、
前記流体が前記第1管部材群32の管部材中を流れたうえで、前記第2管部材群33の管部材中を流れることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、高温あるいは低温の流体が第1管部材群32の管部材10中を流れたうえで、第2管部材群33の管部材10中を流れるので、第2管部材群33より、第1管部材群32の方が高温あるいは低温の熱を放射する。したがって、第1管部材群32の方を所望の箇所に向けることによって、当該箇所を効果的に暖房または冷房できる。また、第2管部材群33の方は壁に向けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、支持体に移動部材が取り付けられているので、移動部材によって支持体を所望の箇所まで容易に移動させることができ、移動先において供給口および排出口に、高温あるいは低温の流体を供給する供給管と排出する排出管とをそれぞれ接続することによって、熱放射パネルの管部材中に高温あるいは低温の流体を連続的に流通させて熱放射させることができるので、所望の箇所を集中的かつ快適に冷暖房できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る移動型冷暖房装置の一例を示すもので、その斜視図である。
【図2】同、(a)は正断面図、(b)は側断面図である。
【図3】本発明に係る移動型冷暖房装置の他の例を示すもので、その斜視図である。
【図4】同、(a)は正断面図、(b)は側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る移動型冷暖房装置の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1および図2は、本発明に係る移動型冷暖房装置の第1の実施の形態を示すもので、図1はその斜視図、図2は移動型冷暖房装置の下部の断面図である。
図1に示すように、移動型冷暖房装置1は、高さが約1300mm、幅が約700mm、厚さが約120mm程度の大きさものであり、熱放射パネル2と、支持体3と、供給口4および排出口5を備えたコンセント部6と、移動部材7とを備えている。
【0017】
熱放射パネル2は、並設された複数の管部材10を備え、かつ、当該管部材10中に高温あるいは低温の流体を流通させることによって熱放射して、暖房および冷房するものである。
管部材10は例えばアルミニウムなどの熱伝導性材料にて押出し成形によって形成されており、軸直交方向における断面形状が長方形状とされている。また、管部材10は四角筒状に形成されており、その上下端面は閉塞されている。管部材10は図1において前面側に例えば18本をほぼ鉛直に向け、かつ、左右にほぼ一定間隔で一列に前側に並設することによって管部材群11を構成し、この管部材群11と対向して後側に例えば18本をほぼ鉛直に向け、かつ、左右にほぼ一定間隔で一列に後側に並設することによって管部材群12を構成している。
【0018】
管部材群11,12の上端部間には、上部ヘッダ13がほぼ水平に設けられ、前後方向に対向する管部材10,10の上部側面に固定されている。上部ヘッダ13は管部材群11,12をそれぞれ構成する管部材10の並設方向に長尺なもので、四角筒状に形成されている。上部ヘッダ13の左右両端面は閉塞され、当該上部ヘッダ13の左右側面にそれぞれ管部材群11を構成する管部材10の側面と、管部材群12を構成する管部材10の側面とが当接されている。管部材10と上部ヘッダ13の当接面において、管部材10の内部と上部ヘッダ13の内部とが連通している。例えば、前記当接面にそれぞれ貫通孔を形成し、この貫通孔を合致させるとともに、貫通孔の周囲をシールすることによって管部材10の内部と上部ヘッダ13の内部とが連通している。
【0019】
前記支持体3は、図1および図2に示すように、正面視下向きコ字形の箱状の本体部15とこの本体部15の内部に設けられた支持部16とを備えている。
支持部16は、本体部15の内部の底面に立設された2本の支持柱16a,16aと、この支持柱16a,16aの上端部によって水平に支持された支持プレート16bとから構成されている。
支持柱16aは四角筒または円筒状のものであり、その下端部にはフランジ部が設けられている。そして、このフランジ部を本体部15の底面に固定することによって、支持柱16aがほぼ鉛直に立設されている。また、支持柱16a,16aは本体部15の内部の左右両端部に配置されている。
支持プレート16bは長方形板状のものであり、その長辺を本体部15の長手方向(図2(a)において左右方向)に向けて配置されている。支持プレート16bの長辺に沿う両縁部にはそれぞれ立上り壁16cが形成されている。そして、この支持プレート16bは前記熱放射パネル2の直下に、支持柱16a,16aによって支持されてほぼ水平に配置されている。また、支持プレート16bの外周縁部と本体部15の内周壁面との間には管部材10の表面に結露して当該管部材10の表面を下方に流れ落ちた結露水を下方に落下させるための隙間が設けられている。
【0020】
前記本体部15の上端開口部には、矩形枠状の枠体15aが設けられている。この枠体15aの側壁は下方に向かうほど内側に傾斜しており、枠体15aの下端開口の大きさ、形状が、本体部15の上端開口の大きさ、形状と一致している。そして、この枠体15aは、管部材10の表面に結露して、当該管部材10の表面を下方に流れ落ちる結露水を外側に落下させることなく、本体部15の内部に導くようになっている。なお、この枠体15aは本体部15の上端開口部に当該本体15と一体的に形成してもよい。
並設された複数(本実施の形態では18本×2=36本)の管部材10の下端部はそれぞれ前記枠体15aの内側を貫通して、本体部15の上端部まで達しており、その下端面は前記支持プレート16bに固定されている。また、管部材10の外側を向く側面は、図2(b)に示すように、支持プレート16bに形成された立上り壁16cに当接固定されている。
【0021】
前記本体部15内には、その上部に下部ヘッダ20がほぼ水平に設けられている。下部ヘッダ20は前記管部材10の並設方向(図2(a)において左右方向)に長尺なもので、四角筒状に形成されている。また、下部ヘッダ20の両端面は閉塞され、さらに当該両端面と本体部15の長手方向において対向する内壁面との間には隙間が設けられている。
また、枠体15aの下端から下方に突出している管部材群11,12の下端部間に、下部ヘッダ20が水平に配置されており、この下部ヘッダ20は前記支持プレート16bに設置されて支持されている。そして、熱放射パネル2の厚さ方向(図2(b)において左右方向)に配置されている管部材10,10の対向する下端部側面が下部ヘッダ20の側面に当接固定されている。
このように、管部材10は下部ヘッダ20と前記立上り壁16cに挟まれてほぼ鉛直に支持されている。したがって、並設された複数の管部材10を備えてなる熱放射パネル2は、支持プレート16bと支持柱16a,16aによって構成された支持部16によってほぼ鉛直に支持されている。
また、管部材10の下端部側面と下部ヘッダ20の側面との当接面において、管部材10の内部と下部ヘッダ20の内部とが連通している。例えば、前記当接面にそれぞれ貫通孔を形成し、この貫通孔を合致させるとともに、貫通孔の周囲をシールすることによって管部材10の内部と下部ヘッダ20の内部とが連通している。
さらに、下部ヘッダ20の長さ方向中央部には、隔壁20aが形成されており、この隔壁20aによって、下部ヘッダ20はその内部が長さ方向において二分されることによって、左下部ヘッダ20bと右下部ヘッダ20cとによって構成されている。
【0022】
また、本体部15内には、前記下部ヘッダ20の下側に、供給配管21と排出配管22とが上下に離間し、かつ、下部ヘッダ20とほぼ平行に配置されている。
供給配管21の先端部は、上方に曲げられて支持プレート16bを貫通したうえで、左下部ヘッダ20bの長さ方向中央部に、供給配管21の内部と左下部ヘッダ20bの内部とが連通するように接続されている。
供給配管21の基端部は本体部15の前面側の壁部に向けて曲げられており、当該壁部に達している。一方、本体部15の前面には、図1および図2(b)に示すように、供給口4および排出口5を備えたコンセント部6が設けられている。このコンセント部6では、供給口4および排出口5が上下に近接した状態で本体部15の前面に取り付けられている。そして、供給配管21の基端部は前記供給口4に接続されている。
また、排出配管22の先端部は、上方に曲げられて支持プレート16bを貫通したうえで、右下部ヘッダ20cの長さ方向中央部に、排出配管22の内部と右下部ヘッダ20cの内部とが連通するように接続されている。
排出配管22の基端部は本体部15の前面側の壁部に向けて曲げられており、当該壁部に達している。そして、排出配管22の基端部は前記排出口5に接続されている。
【0023】
そして、上記のような構成の熱放射パネル2では、供給口4から高温あるいは低温の流体を供給すると、この流体が左下部ヘッダ20bを流通して、左下部ヘッダ20bに接続されている左半分(9本×2列)の管部材10を下方から上方に流通したうえで、上部ヘッダ13に流入する。上部ヘッダ13に流入した流体は、この上部ヘッダ13を右側に流通して、上部ヘッダ13の右半分側に接続されている右半分(9本×2列)の管部材10を上方から下方に流通したうえで、右下部ヘッダ20cに流入し、この右下部ヘッダ20cを排出口5に向けて流通し、この排出口5から排出されるようになっている。そして、流体が管部材10を流通することによって、各管部材10から熱放射され、これによって、熱放射パネル2が熱放射するようになっている。
なお、前記供給口4および排出口5とにはそれぞれ外部に設けられた流体供給装置からの供給管と排出管とが接続され、供給管から供給口に流体が供給され、排出口5から排出された流体は排出管を流通して前記流体供給装置に戻されるようになっている。
【0024】
また、前記本体部15の下面には、図1および図2に示すように、矩形状の凹所25が形成され、この凹所25の上面は開口している。この凹所25には管部材10の表面に結露した水を貯留する貯留箱26が着脱可能に設けられている。貯留箱26は上面が開口した箱状のものであり、その長手方向の両側の縁部には、フランジ部26aが形成されている。一方、本体部15の前面には凹所25の両側に溝25aが形成されている。
そして、貯留箱26を本体部15の前面側から凹所25にフランジ部26aを溝25aに差し込んで押し込むことによって、当該貯留箱26は凹所25に奥側に向けてスライドしながら挿入されて嵌め込まれ、一方、貯留箱26の前面に設けられた取手26bを掴んで引き出すことによって、貯留箱26は凹所25から取り外せるようになっている。
【0025】
また、本体部15内には、図2に示すように、前記排出配管22の下方でかつ貯留箱26の上方にドレンパン27が設けられている。ドレンパン27は平面視の形状が本体部15の平面視の形状とほぼ等しい長方形状となっており、当該ドレンパン27の周縁部には立上壁27aが形成され、この立上壁27aが本体部15の内壁面に固定されている。ドレンパン27の上面中央部には水抜き孔27bが形成されており、ドレンパン27の上面には水抜き孔27b側に向けて若干の下り水勾配が付されている。したがって、管部材10の表面に結露した結露水や供給配管21および排出配管22の表面に結露した結露水は、下方に落下してドレンパン27で受け止められ、ドレンパン27の水抜き孔27bから下方に落下して、貯留箱26に貯留するようになっている。なお、ドレンパン27を前記支持柱16aが貫通しているが、この貫通している部分は水漏れがないようにシールされている。
【0026】
また、支持体3を構成する本体部15の下面には、左右両側にそれぞれ2個ずつ合計4個の前記移動部材7が取り付けられている。移動部材7は支持体3を床面で移動可能とするものであり、キャスター7によって構成されている。このキャスター7は車輪7aが水平軸回りに回転可能であるともに、車輪7aが鉛直軸まわりに回動可能である。したがって、これらキャスター7によって、支持体3は床面で前後左右に移動自在となっている。
【0027】
上記構成の移動型冷暖房装置1は、熱放射パネル2を支持する支持体3をキャスター7によって所望の箇所まで移動させる。この箇所には、図1に示すように、例えば建物の外部に設けられた図示しない流体供給装置に接続された冷温水ホース30が配備されている。冷温水ホース30は、高温あるいは低温の流体を供給するための供給管と、熱放射パネル2を流通してきた流体を排出するための排出管の双方が一体的にまとめられて外筒内に挿入されてなるもので、可撓性を有するともに、断熱性を有している。
冷温水ホース30の先端部にはコンセントプラグ30aが取り付けられており、このコンセントプラグ30aを移動型冷暖房装置1のコンセント部6に接続することによって、供給管が供給口4に接続されるとともに排出管が排出口5に接続される。
そして、この状態で流体供給装置を作動させることによって、上述したようにして、高温あるいは低温の流体が供給管から供給口4に供給されて熱放射パネル2の管部材10を流通するとによって、当該熱放射パネル2が放熱する。管部材10を流通した流体は排出口5から排出管に排出されて流体供給装置に戻され、この流体供給装置で再冷却または再加熱されて再び供給管から供給口4に供給される。これによって、熱放射パネル2が連続的に熱放射する。
【0028】
本実施の形態によれば、並設された複数の管部材10を備えた熱放射パネル2が支持体3の支持部16によってほぼ鉛直に支持されており、この支持体3の本体部15に移動部材(キャスター)7が取り付けられているので、移動部材7によって支持体3を所望の箇所まで容易に移動させることができ、移動先において供給口4および排出口5に、高温あるいは低温の流体を供給する供給管と排出する排出管とをそれぞれ接続することによって、熱放射パネル2の管部材10中に高温あるいは低温の流体を連続的に流通させて熱放射させることができるので、所望の箇所を集中的かつ快適に冷暖房できる。
【0029】
また、供給口4および排出口5が近接した状態で支持体3の本体部15に設けられているので、高温あるいは低温の流体を供給する供給管と排出する排出管をまとめて供給口4と排出口5に容易に接続できる。
さらに、支持体3の本体部15の下面に凹所25が設けられ、この凹所25に貯留箱26が設けられているので、この貯留箱に管部材の表面に結露した水を貯留でき、よって当該結露水が床等に流出するのを防止できる。
【0030】
(第2の実施の形態)
図3および図4は、本発明に係る移動型冷暖房装置の第2の実施の形態を示すもので、図3はその斜視図、図4は移動型冷暖房装置の下部の断面図である。
図3に示すように、本実施の形態の移動型冷暖房装置31は、前記第1の実施の形態の移動型冷暖房装置1と同様に、熱放射パネル2と、支持体3と、供給口4および排出口5を備えたコンセント部6と、移動部材7とを備えている。
この移動型冷暖房装置31が前記移動型冷暖房装置1と異なる点は、熱放射パネル2の上端部と下端部の構成であるので、以下ではこの点について詳しく説明し、前記移動型冷暖房装置1と共通部分には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0031】
図3に示すように、この移動型冷暖房装置31は、前側に複数(例えば18本)の管部材10が左右に一定間隔で並設されてなる第1管部材群32と、後側に複数(例えば18本)の管部材10が左右に一定間隔で並設されてなる第2管部材群33とを有し、第1管部材群32と第2管部材群33とは対向して配置されている。
また、熱放射パネル2の厚さ方向に配置されている2本の管部材10,10どうしは上部ヘッダ34によって接続されている。つまり、第1管部材群32を構成する複数の管部材10と、第2管部材群33を構成する複数の管部材10とは複数の上部ヘッダ34によって接続されている。
上部ヘッダ34は四角筒状のものであり、一端部が前側の管部材10の上端部に、上部ヘッダ34の内部と管部材10の内部とを連通するようにして接続され、他端部が後側の管部材10の上端部に、上部ヘッダ34の内部と管部材10の内部とを連通するようにして接続されている。例えば、管部材10の上端部の側面に貫通孔を形成し、この貫通孔と上部ヘッダ34の端部開口を合致させるとともに、貫通孔の周囲をシールすることによって管部材10の内部と上部ヘッダ34の内部とが連通している。
【0032】
また、図4に示すように、前記本体部15内の上部でかつ第1管部材群32の下方には、第1下部ヘッダ35がほぼ水平に設けられている。第1下部ヘッダ35は管部材10の並設方向(図4(a)において左右方向)に長尺なもので、四角筒状に形成され、その両端面は閉塞され、さらに当該両端面と本体部15の長手方向において対向する内壁面との間には隙間が設けられている。
また、第1管部材群32を構成する管部材10の下端部は前記枠体15aから下方に突出しており、この突出している管部材10の下端部が第1下部ヘッダ35に、管部材10の内部と第1下部ヘッダ35の内部とが連通するようにして接続されている。例えば、第1下部ヘッダ35の上面に貫通孔を第1下部ヘッダ35の長手方向に一定間隔で複数形成し、各貫通孔と管部材10の下端部開口を合致させるとともに、貫通孔の周囲をシールすることによって管部材10の内部と第1下部ヘッダ35の内部とが連通している。
【0033】
また、前記本体部15内の上部でかつ第2管部材群33の下方には、第2下部ヘッダ36がほぼ水平に設けられている。第2下部ヘッダ36は第1下部ヘッダ35と同形状でかつ管部材10の並設方向(図4(a)において左右方向)に長尺なもので、四角筒状に形成され、その両端面は閉塞され、さらに当該両端面と本体部15の長手方向において対向する内壁面との間には隙間が設けられている。
また、第2管部材群33を構成する管部材10の下端部は前記枠体15aから下方に突出しており、この突出している管部材10の下端部が第2下部ヘッダ36に、管部材10の内部と第2下部ヘッダ36の内部とが連通するようにして接続されている。例えば、第2下部ヘッダ36の上面に貫通孔を第2下部ヘッダ36の長手方向に一定間隔で複数形成し、各貫通孔と管部材10の下端部開口を合致させるとともに、貫通孔の周囲をシールすることによって管部材10の内部と第2下部ヘッダ36の内部とが連通している。
【0034】
前記第1下部ヘッダ35および第2下部ヘッダ36は前記支持プレート16bに設置固定され、さらに、前記第1下部ヘッダ35および第2下部ヘッダ36の外側を向く側面は、図4(b)に示すように、支持プレート16bに形成された立上り壁16cに当接固定されている。このように、複数の管部材10は第1下部ヘッダ35および第2下部ヘッダ36を介してほぼ鉛直に支持されている。したがって、並設された複数の管部材10を備えてなる熱放射パネル2は、支持プレート16bと支持柱16a,16aによって構成された支持部16によってほぼ鉛直に支持されている。
また、本体部15内には、前記第1下部ヘッダ35の下側に供給配管37が第1下部ヘッダ35とほぼ平行に配置され、前記第2下部ヘッダ36の下側に排出配管38が第2下部ヘッダ36とほぼ平行に配置されている。また、排出配管38は供給配管37の下側に配置されている。
供給配管37の先端部は、上方に曲げられて支持プレート16bを貫通したうえで、第1下部ヘッダ35の長さ方向中央部に、供給配管37の内部と第1下部ヘッダ35の内部とが連通するように接続されている。
供給配管37の基端部は本体部15の前面側の壁部に向けて曲げられており、当該壁部に達している。そして、供給配管37の基端部は前記供給口4に接続されている。
また、排出配管38の先端部は、上方に曲げられて支持プレート16bを貫通したうえで、第2下部ヘッダ36の長さ方向中央部に、排出配管38の内部と第2下部ヘッダ36の内部とが連通するように接続されている。
排出配管38の基端部は本体部15の前面側の壁部に向けて曲げられており、当該壁部に達している。そして、排出配管38の基端部は前記排出口5に接続されている。
【0035】
そして、上記のような構成の熱放射パネル2では、供給口4から高温あるいは低温の流体を供給すると、この流体が第1下部ヘッダ35を流通して、当該第1下部ヘッダ35に接続されている第1管部材群32の複数(18本)の管部材10を下方から上方に流通したうえで、上部ヘッダ34に流入する。上部ヘッダ34に流入した流体は、上部ヘッダ34に接続されている第2管部材群33の複数(18本)の管部材10を上方から下方に流通したうえで、第2下部ヘッダ36に流入し、この第2下部ヘッダ36を排出口5に向けて流通し、この排出口5から排出されるようになっている。そして、流体が管部材10を流通することによって、各管部材10が熱放射し、これによって、熱放射パネル2が熱放射するようになっている。
このように、熱放射パネル2では、流体が第1管部材群32の管部材10中を流れたうえで、第2管部材群33の管部材10中を流れるので、第1管部材群32の方が第2管部材群33より熱放射量が多くなる。
【0036】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られる他、高温あるいは低温の流体が第1管部材群32の管部材10中を流れたうえで、第2管部材群33の管部材10中を流れるので、第2管部材群33より、第1管部材群32の方が高温あるいは低温の熱を放射する。したがって、第1管部材群33の方を所望の箇所に向けることによって、当該箇所を効果的に暖房または冷房できる。また、第2管部材群33の方は壁に向けることができる。
【0037】
なお、熱放射パネル2に流体を流通させる場合、上記二つの実施の形態に限ることはない。例えば、複数の管部材10中を一筆書きのようにして流体を流通させてもよい。また第1の実施の形態において、管部材群11,12のそれぞれの上下端部を上部ヘッダと下部ヘッダとで接続し、二つの下部ヘッダまたは上部ヘッダに供給口4から供給配管を介して流体を流入させて管部材10中を上方または下方に向けて流通させ、この流通した流体を二つの上部ヘッダまたは下部ヘッダから排出配管を介して排出口から排出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1,31 移動型冷暖房装置
2 熱放射パネル
3 支持体
4 供給口
5 排出口
7 キャスター(移動部材)
25 凹所
26 貯留箱
32 第1管部材群
33 第2管部材群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の管部材を並設することによって構成され、かつ、当該管部材中に高温あるいは低温の流体を流通させることによって前記管部材が熱放射する熱放射パネルと、
この熱放射パネルの下端部に設けられて当該熱放射パネルをほぼ鉛直に支持する支持体と、
前記管部材に接続されて、当該管部材中に前記流体を供給するための供給口および前記管部材中を流れた流体を排出するための排出口と、
前記支持体に取り付けられて、当該支持体を床面で移動可能とする移動部材とを備えたことを特徴とする移動型冷暖房装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動型冷暖房装置において、
前記供給口および前記排出口が近接した状態で前記支持体に設けられていることを特徴とする移動型冷暖房装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の移動型冷暖房装置において、
前記支持体の下面に凹所が設けられ、この凹所に前記管部材の表面に結露した水を貯留する貯留箱が設けられていることを特徴とする移動型冷暖房装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の移動型冷暖房装置において、
前記熱放射パネルは、それぞれ複数の前記管部材が並設されてなる第1管部材群および第2管部材群を有し、これら第1管部材群と第2管部材とは対向して配置され、
前記流体が前記第1管部材群の管部材中を流れたうえで、前記第2管部材群の管部材中を流れることを特徴とする移動型冷暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−36692(P2013−36692A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173540(P2011−173540)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】