説明

移動壁用レール

【課題】 レールカバーの取付を簡単に行え、かつ、天井パネルの端部の加工を不要にできる移動壁用レールを提供する。
【解決手段】 レールカバー8のレール本体を覆う側の表面である裏面に上方に延びる突状80を設け、レール本体に、突状80が下方から挿入されて嵌合する嵌合部84を設け、突状80を嵌合部84に挿入してレール本体にレールカバー8を取り付けたとき、突状80と嵌合部84を互いにロック状態で係合するロック手段を設ける。嵌合部84は、レール片61の端部が延びて形成されたスリット片65とレール片61とフランジ片66の垂直部66aとから断面凹状に形成されていることが好ましく、かつ、ロック手段は、嵌合部84を形成する垂直部66a及びスリット片65の壁面にそれぞれ設けられた第1ロック部86と、突状80の垂直部66a及びスリット片65と対向する箇所にそれぞれ設けられた第2ロック部87とからなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動壁を吊り下げ支持した吊車装置が走行する移動壁用レールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベンションホール、宴会場、会議室、研修室、ギャラリー、美術館、博物館等において、広い空間を使用目的に応じて手動で移動できる移動壁で所望のサイズに間仕切りすることが行われている。移動壁は、天井に敷設されたレールに案内されて走行する吊車装置によって吊り下げ支持されている。吊車装置は、レール内を走行する直方体状の車体と、車体の下面から下方に延び移動壁を吊り下げ支持する連結部と、車体の4つの側面にそれぞれ回転可能に設けられた4つの車輪とを備えている。
【0003】
レールは、矩形筒体の下辺の中央が開口されたスリットを有する形状に形成されている。レールの両下辺の内側となる両上面が一対の走行面として形成されている。この一対の走行面上を車体の4つの側面のうち互いに平行な2つの側面に設けられた一対の車輪の一方が走行することにより、吊車装置がレールに沿って走行する。すなわち、移動壁が吊車装置とともに移動するようになっている。
【0004】
レールの両走行面を形成する下辺のスリット側の端部は、下方に互いに平行に延びスリットを形成するスリット片としてそれぞれ形成されている。これらスリット片の下端は、スリットと反対側に水平に延びるフランジ片としてそれぞれ形成されている。これらフランジ片と下辺との間に天井パネル等の天井部材が挿入されて、見た目、天井内にレールが配設された状態となる。天井から露出するフランジ片には、レールカバーが取り付けられている。レールカバーには、移動壁の上端に設けられたシール材が当接し、移動壁の上端の遮光及び遮音が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4418091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のレールでは、フランジ片へのレールカバーの取り付けは、まず、レールカバーの裏面に設けた断面凹状の嵌合部をフランジ片にフランジ片の下面を覆うように嵌合し、次いで、裏面から傾斜した状態で立設した傾斜片のネジ穴にネジを螺合させつつネジの先端をフランジ片の裏面(上面)に当接させる。これにより、フランジ片を上下から挟むようにしてレールカバーがフランジ片に取り付けられる。しかしながら、レールのフランジ片へのレールカバーの取り付けは、レールカバーを嵌合してから、さらに、ネジの取付作業を行わなければならず、しかも、ネジの取付作業は、レールカバーの裏面と天井パネルの狭い隙間で行わなければならないので、作業し難く、レールカバーを簡単に取り付けることができなかった。
本発明が解決しようとする課題は、レールカバーの取付を簡単に行えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る移動壁用レールは、上面が走行面となり等間隔をあけて直線上に延びる一対のレール片、前記一対のレール片の間の中央に開口されたスリット及び前記一対のレール片にそれぞれ設けられ下方に垂直部として延びてから前記スリットと反対側に直交する水平方向に水平部として延びてその水平部上に天井部材の端部が挿入される断面L字状のフランジ片を有するレール本体と、前記レール本体に取り付けられ前記スリットの縁部から前記フランジ片の水平部の先端までを覆うレールカバーとを備え、前記スリットを通って下方に延び移動壁を吊り下げ支持する連結部を有する吊車装置が前記一対の走行面上を走行する移動壁用レールであって、前記レールカバーの前記レール本体を覆う側の表面である裏面に上方に延びる突状を設け、前記レール本体に、前記突状が下方から挿入されて嵌合する嵌合部を設け、前記突状を前記嵌合部に挿入して前記レール本体に前記レールカバーを取り付けたとき、前記突状と前記嵌合部を互いにロック状態で係合するロック手段を設けたことを特徴とする。
【0008】
これにより、天井から露出しているレール本体の嵌合部に下方からレールカバーの突状を挿入してレール本体にレールカバーを取り付けることで、突状と嵌合部がロック手段によって互いにロック状態で係合される。よって、レール本体に下方からレールカバーを挿入するだけの簡単な作業でレールカバーの取付を行える。
【0009】
この場合において、一対のレール片のスリット側の端部を、下方に互いに平行に延びスリットを形成するスリット片としてそれぞれ形成し、フランジ片の垂直部の上端をレール片の下面の前記スリット片から離れて取り付け、嵌合部を、スリット片とレール片と垂直部とから下方に開口された断面凹状に形成し、ロック手段を、嵌合部を形成する垂直部及びスリット片の壁面にそれぞれ設けられた第1ロック部と、突状の垂直部及びスリット片と対向する箇所にそれぞれ設けられた第2ロック部とで構成することができる。
【0010】
また、この場合において、第1ロック部が、垂直部及びスリット片の壁面からそれぞれ突出した凸部のレール片側でその壁面に対して直交する方向に延びる端面であり、突状が、嵌合部に挿入したとき、垂直部及びスリット片の壁面の近傍で各壁面に平行に挿入される弾性変形可能な一対の係合片であり、第2ロック部が、一対の係合片の垂直部及びスリット片と対向する表面の上方に表面からそれぞれ突出した係止爪の係合片の基部側でその表面に対して直交する方向に延びる端面であり、嵌合部に前記一対の係合片を挿入したとき、係止爪が凸部に接触して係合片が弾性変形し係止爪が凸部を乗り越えてから第1ロック部と第2ロック部とを係合するようにできる。第1ロック部を含む前記凸部を、レール本体の長手方向の全体に連続して設け、第2ロック部を含む前記係止爪を、レールカバーの長手方向の全体に連続して設けることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レールカバーの取付を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施形態のレールに案内されて走行する吊車装置に移動壁を吊り下げ支持した状態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態のレールに案内されて走行する吊車装置に移動壁を吊り下げ支持した状態を示す一部断面図である。
【図3】本実施形態のレールの一例を示す断面図である。
【図4】本実施形態のレールの十字状の方向転換部構造を示す分解斜視図である。
【図5】本実施形態レールに案内されて走行する吊車装置の一例を示す図で、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は正面一部断面図である。なお、図3(a)、(c)及び(d)は車輪が取り付けられた図、(b)は車輪が取り付けられていない図、また、(d)は図中の左側が車輪と車体の中央での断面で右側が中央からずれた位置での車体の断面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る移動壁用レールの一実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態の移動壁用レール(以下、「レール6」という。)は、天井に敷設され、移動壁9を吊り下げ支持する吊車装置1の走行を案内するものである。移動壁9は、例えば、コンベンションホール、宴会場、会議室、研修室、ギャラリー、美術館、博物館等において、広い空間を使用目的に応じて所望のサイズに間仕切りするのに用いられる矩形パネル状に形成されている。移動壁9の幅方向の両側の上端にそれぞれ吊車装置1が連結されている。すなわち、移動壁9は、2つの吊車装置1によって吊り下げ支持されており、手動で2つの吊車装置1とともにレール6に沿って移動することができるようになっている。また、移動壁9は方向転換部7で方向転換を行う場合には、まず、走行方向前方の吊車装置1が方向転換部7で方向転換を行ってから次に走行方向後方の吊車装置1が方向転換部7で方向転換を行うことにより、移動壁9の方向が変わるようになっている。
【0014】
吊車装置1は、図2及び図5に示すように、水平断面略正方形の略直方体状に形成された車体2と、車体2から下方に延び移動壁9を吊り下げ支持する連結部3と、車体2の四方である4つの側面の各車輪ハウス53に回転可能に収容された4つの車輪4とを備えている。車体2は、直方体状の金属製のインナーブロック21と、インナーブロック21の4つの側面の穴21aにそれぞれ圧入される圧入部22a及び車輪4を回転可能に支持する軸部22bを有する車輪軸22と、インナーブロック21を覆い車体2の外形を形成するカバー5とからなる。
【0015】
カバー5は、部品などの成形材料として汎用され、潤滑性、耐摩耗性、耐熱性、機械的強度に優れる合成樹脂、例えば、ポリアセタール樹脂(POM)等で成形されている。カバー5は、例えば、インナーブロック21を上下方向から挟持して嵌合した状態で覆う互いに着脱可能な上下に略2分割なアッパーカバー51とロアカバー52からなる。アッパーカバー51とロアカバー52は、インナーブロック21を上下方向から挟持して嵌合した状態で例えばビス59をロアカバー52の通し穴を通してからアッパーカバー51のネジ穴に螺合させて締め付けることにより、カバー6が形成される。また、車体2の上面でもあるアッパーカバー51の上面55には、断面凹状のガイド溝57が格子状つまり♯状に設けられている。さらに、車体2の下面でもあるロアカバー52の下面56の後述するベアリング12が摺接する箇所には、ベアリング12の径と同じ径の断面円弧状の円弧凹部58が格子状つまり♯状に設けられている。
【0016】
連結部3は、例えば、スラストベアリング32をアッパーカバー51の連通穴55aに挿入し、この連通穴55a、スラストベアリング32、インナーブロック21の貫通穴21b及びロアカバー52の連通穴56aをネジ部の先端から順次通して車体2の下面から下方にネジ部31aが突出するトロリーボルト31を備えている。このトロリーボルト31は、ネジ部31aがスペーサーチューブ33、アジャスター34及びスプリングワッシャー35を順次通されてから六角ナット36が螺合されて移動壁9に連結される。移動壁9の幅方向の両側の上端にそれぞれ吊車装置1が連結されている。これにより、移動壁9は、2つの吊車装置1によって吊り下げ支持され、かつ、各吊車装置1毎に移動壁9に対してトロリーボルト31の軸回りに回転可能になっている。
【0017】
車輪4は、合成樹脂で形成されていることが好ましく、ラジアルベアリング41を介して車体2の4つの車輪軸22の軸部22bにその軸部周りに回転可能にそれぞれ取り付けられている。このとき、4つの車輪4の下部がそれぞれ車体2の下面56から出っ張るようになっている。車輪4の幅は、後述する走行面61aの幅より小さな寸法で形成されている。これら4つの車輪4のうち同じ方向に回転する一対の車輪4の一方がレールの走行面61a上を走行するようになっている。
【0018】
レール6は、図2〜図4に示すように、レール本体である直線レール60と、レールカバー8とを備え、直線レール60を十字状、T字状、L字状の少なくとも1つの形状に連結して方向転換部7を形成してなる。直線レール60は、断面横長の略矩形筒体の下辺であるレール片61の中央が開口されたスリット62を有する形状を基本形状とし、例えば、アルミニウムの押出し型材から成形されている。なお、直線レール60の材料としては、アルミニウムに限定されず、他の材料、例えば、鉄鋼材、ステンレス等を用いてもよい。直線レール60の両レール片61の内側の面である上面が、吊車装置1の一対の車輪4の一方が走行する同一の水平面に等間隔をあけて直線状に延びる一対の走行面61aとして形成されている。直線レール60の両側辺の内面の下方には、直線レール60内での吊車装置1の走行をガイドするガイド部64がそれぞれ設けられている。
【0019】
また、直線レール60の両レール片61のスリット62側の端部は、それぞれレール片61とスリット62との間で下方に断面L字状に延びて段部63が形成されている。両段部63の端部は、下方に互いに平行に延びスリット62を形成するスリット片65としてそれぞれ形成されている。段部63の下面の幅方向の略中央部には、下方にスリット片65と平行で略同じ長さ延びてからスリット片65とは反対側に直交する方向に延びる断面L字状のフランジ片66がそれぞれ設けられている。すなわち、フランジ片66は、スリット片65と平行な垂直部66aと、レール片61と平行な水平部66bとからなり、水平部66bの下面とスリット片65の端面とが面一に形成されている。また、フランジ片66の水平部66bの先端は、段部63側すなわち上方にわずかにL字状に折り曲げられて形成されている。このフランジ片66の水平部66bと段部63との間に、天井面を形成する天井パネルや天井板等の天井部材91が挿入され、天井内にレール6が配設されるようになっている。例えば、天井部材91は、フランジ片66の水平部66bの上方に折り曲げられた端面に接するように設けられる。すなわち、天井部材91は、フランジ片66の水平部66bの上方に折り曲げられた端面上に載置された状態で配置される(特に図2参照。)。また、垂直部66aとレール片61とスリット片65とにより、下方が開口された断面凹状の嵌合部84が形成されている。
【0020】
直線レール60の上辺の中央は、上方に凸状に突出した突部68が形成されている。突部68の上面は、幅方向の両側にそれぞれ延びてフランジ69として形成されている。このフランジ69を介して直線レール60が天井内の下地等の部材92に例えばレール固定ブラケット93を介して固定されるようになっている。なお、直線レール60の下地等の部材92への固定は、レール固定ブラケットに限定されず、その他の方法、例えば、ボルトを用いたりしてもよい。また、突部68内の両側面には、互いに対向する側面側に突出する突出片70が上下方向に間隔をあけて2つそれぞれ形成されている。下方側の突出片70は、直線レール60の上辺に沿って形成され、上方側の突出片70は、突部68内の側面のほぼ中央部の位置に形成されている。
【0021】
方向転換部7は、直線レール60を十字状、T字状、L字状の少なくとも1つの形状に連結して、吊車装置1の走行方向を直交する方向に変えるものである。なお、本実施形態では、方向転換部7が十字状に形成されている場合について説明し、その他のT字状又はL字状の方向転換部については十字状の方向転換部7と作用効果が略同じであるので、説明を省略する。直線レール60を十字状に連結してなる方向転換部7は、図4に示すように、4つの直線レール60の連結する側の端部を中央が突出した平面視山型に形成して、これら4つの端部を突き合わせた状態で隣接する直線レール60の端部を互いに例えば溶接によって接合されてなる。この方向転換部7では、スリット62も十字状に形成されている。すなわち、直線レール60の端部は、2つの斜辺部60aによって突出され、これら斜辺部60aが直線レール60の幅方向に対してそれぞれ45度の角度で傾斜されている。隣接する2つの直線レール60の斜辺部60a同士を互いに突き合わせることで、直線レール60が互いに直交する方向に連結されている。また、方向転換部7の内側の角部のスリット62と走行面61aとの間、つまり、後述するベアリング12を取り付ける箇所は、直線レール60を連結した状態で、例えば、隣接する2つの直交する方向に延びる直線レール60の両端部の段部63及び走行面61aの一部に跨って矩形状に開口されている。この開口部とスリット62で後述するフリーベアユニット10が通過可能な通過穴71が形成されている。
【0022】
また、直線レール60の端部の斜辺部60aの近傍の両段部63、具体的には例えば、スリット片65とフランジ片66の間の両段部63には、フリーベアユニット10の構成要素であるL字取付板11を取り付けるための通し穴がそれぞれ設けられている。L字取付板11の両辺部が方向転換部7の内側の角部の2つの互いに隣接する直線レール60の端部の段部63にそれぞれ載置された状態で直線レール60の下方からネジ部材例えばボルト96を直線レール60の通し穴に通してL字取付板11のネジ穴11cに螺合することにより、L字取付板11が着脱可能に2つの互いに隣接して直交する直線レール60に跨った状態で取り付けられる。
【0023】
また、十字状に連結された各直線レール60の突部68内の突出片70間には、十字状の固定プレート15の4つの各片15aがそれぞれ挿入されている。固定プレート15は、例えば、鋼板で十字状に形成されている。固定プレート15は、4つの直線レール60の端部を突き合わせる際に各直線レール60の突部68内の突出片70間に4つの各片15aをそれぞれ挿入して直線レール60内に配置される。
【0024】
また、方向転換部7の互いに連結した4つの直線レール60の端部内には、固定プレート15にネジ部材例えばビス97により着脱可能に取り付けられた例えば鋼板製のガイドプレート16が配置されている。ガイドプレート16の穴16aに直線レール60内から2つのビス97を通して固定プレート15のネジ穴15bに螺合させて締め付けることにより、4つの直線レール60の端部の上部が固定プレート15とガイドプレート16により挟持されるようになっている。
【0025】
また、ガイドプレート16の固定プレート15と反対側の表面には、例えば鋼製の4つのガイドピン17が下方に突出して溶接で接合されている。4つのガイドピン17は、吊車装置1が方向転換部7を走行するときに、車体2の上面に設けられたガイド溝57内に挿入されて吊車装置1(車体2)の方向転換部7を通過する直線走行と方向転換部7で方向を変える方向転換走行の2つの走行をガイドするものである。
【0026】
また、方向転換部7には、無方向性に転動可能なベアリング12つまりフリーベアリングが設けられている。ベアリング12は、方向転換部7の内側の角部のスリット62と走行面61aとの間に配置されている。ベアリング12は、方向転換部7が十字状で形成されている場合には、4つの角部のすべてに設けられている。ベアリング12は、一端の開口部から一部が突出した状態で他端が閉塞された円筒体状のベアリングケース13に無方向性に転動可能に収容されている。ベアリングケース13の閉塞面の中央には、外周にねじ山が形成されているネジ部が同軸上に設けられており、このネジ部をL字取付板11の曲がり部の穴11aに通し例えばワッシャーを介してナット等を螺合させて、ベアリングケース13の閉塞面がL字取付板11の曲がり部の表面である取付面に面接触した状態で着脱可能に取り付けられている。すなわち、ベアリングケース13及びベアリング12は、L字取付板11を介して直線レール60に着脱可能に取り付けられている。ベアリング12は、ベアリングケース13がL字取付板11に取り付けられた状態で、走行面61aと同一面から上方に突出している。
【0027】
ベアリングケース13及びベアリング12は、移動壁9を吊り下げ支持した吊車装置1つまり車体2を水平状態に維持するもので、かつ、ベアリングケース13がスリット62に突出しないものであれば特に限定されず、走行面61aの幅と略同じ寸法の直径の寸法のベアリングケース13を用いてもよいが、方向転換部7に取り付けることができるなかで一番径の大きなものを取り付けることが好ましい。すなわち、ベアリング12及びベアリングケース13は、移動壁9を吊り下げ支持する際の荷重がかかるため、移動壁9の重量が重いものもあるので、できるだけ径の大きなものが好ましい。このように、取付可能な最大のベアリングケース13を取り付ける場合、ベアリングケース13の直径は走行面61aの幅より大きな寸法で形成されているから、方向転換部7に取り付けたとき、走行面61aの長手方向の延長上、すなわち、平面視車輪4が通過し得る位置にベアリングケース13の一部が突出する。このため、ベアリングケース13の上面を平坦に形成し、この上面を走行面61aと面一になるように形成することが好ましい。
【0028】
また、方向転換部7には、受け部14が設けられている。受け部14は、吊車装置1が方向転換部7を走行したとき、吊車装置1の車輪4がスリット62上から走行面61a上に移動し得るすべての箇所のスリット62と走行面61aとの間に取り付けられている。受け部14は、方向転換部7が十字状で形成されている場合には、方向転換部7の内側の各角部にベアリング12をはさんでL字に2つずつ合計8つ設けられている。受け部14は、例えば、直方体のブロック状に形成されている。受け部14の下面には、ネジ穴が2つ設けられており、この受け部14の下面をL字取付板11の一方の辺部の取付面に面接触した状態で、2つのビスをそれぞれ2つのビス穴を通して受け部14のネジ穴にそれぞれ螺合させることにより、受け部14の上面の一縁部が走行面61aに近接されかつその縁部と直交する側面がベアリングケース13に接触又は近接した状態で受け部14がL字取付板11に着脱可能に取り付けられている。すなわち、受け部14は、L字取付板11を介して直線レール60に着脱可能に取り付けられている。
【0029】
受け部14の高さは、L字取付板11に取り付けられた状態で、平坦面の上面が走行面61aと同一平面になる寸法で形成されている。直線レール60の幅方向の受け部14の長さは、段部63の上面の幅と同じ寸法で形成されている。直線レール60の幅方向の受け部14の長さは、走行面61aの幅と同じ寸法で形成されている。また、受け部14の上面のスリット62側となる縁部は、面取りされて面取り部が形成されている。面取りは、受け部14の上面の縁部すなわち角部を削り角面や丸面等の形状に加工するものである。受け部14は、潤滑性、耐摩耗性、耐熱性、機械的強度に優れる合成樹脂、例えば、吊車装置1の車体2のカバーと同じ材料のポリアセタール樹脂(POM)等で成形されている。
【0030】
このように、2つの受け部14と1つのベアリング12を含むベアリングケース13がL字取付板11にそれぞれ着脱可能に取り付けられて、フリーベアユニット10が形成される。このフリーベアユニット10は、直線レール60の端部に着脱可能に取り付けられ、かつ、方向転換部7の通過穴を通過可能に形成されている。これにより、受け部14が磨耗したり壊れたり、ベアリングケース13が壊れたときには、直線レール60を交換することなく、フリーベアユニット10だけ交換すればよく、しかも、壊れたりした部材だけを交換すればよい。なお、図4中、符号11dは、レール6内特に方向転換部7内の段部を見え難くするため等のL字片を示す。
【0031】
レールカバー8は、直線レール60に着脱可能に取り付けられて、スリット62の縁部からフランジ片66の水平部66bの先端までを覆うものである。具体的には、レールカバー8は、スリット片65の端面、嵌合部84の開口部、フランジ片66の水平部66bの表面を覆い、かつ、フランジ片66の水平部66bのL字に曲がった外側の表面を覆う略断面略L字状に形成されたカバー部8aと、直線レール60の嵌合部84に挿入されて嵌合される突状80とからなり、例えば、合成樹脂で一体的に形成されている。カバー部8aは、スリット62側の端面がスリット62を形成するスリット片65の表面と面一に形成されてなる。また、カバー部8aは、L字に曲がった側の端面がフランジ片66の水平部66bの上方に折り曲げられた端面上に載置された状態で配置される天井部材91の表面に接するように形成されている。すなわち、カバー部8aつまりレールカバー8は、スリット62を除く天井部材91から露出する直線レール60の下端を覆い隠すように形成されている。また、直線レール60の端部に取り付けられる側のレールカバー8の端部は、その直線レール60の端部と略同じ形状に形成されていることが好ましい。
【0032】
突状80は、カバー部8aの上面である裏面すなわち直線レール60の下端を覆い隠す側の表面にその表面から上方に延びて設けられている。突状80は、例えば、レールカバー8の幅方向に間隔をあけた一対の係合片81で形成されている。一対の係合片81は、フランジ片66の垂直部66aとスリット片65との各壁面の近傍で各壁面に平行に挿入される弾性変形可能に形成されている。一対の係合片81は、レールカバー8の長手方向に間隔をあけて複数設けてもよいが、レールカバー8の長手方向の全体に連続して設けることが好ましい。係合片81の延出長さすなわち高さは、特に限定されず、スリット片65の垂直方向の寸法より短く、例えば、その寸法の約2/3の長さに形成されている。一対の係合片81を嵌合部84に挿入して、カバー部8aの裏面がスリット片65の端面及びフランジ片66の水平部66bの表面に接触又は近接し、かつ、L字に曲がった側の端面が天井部材91の表面に接触又は近接した状態でレールカバー8を直線レール60に取り付けたとき、この状態を解除可能に保持するロック手段85が設けられている。
【0033】
ロック手段85は、例えば、嵌合部84を形成する垂直部66a及びスリット片65の壁面にそれぞれ設けられた第1ロック部86と、一対の係合片81の垂直部66a及びスリット片65と対向する箇所にそれぞれ設けられた第2ロック部87とからなる。
【0034】
第1ロック部86は、垂直部66a及びスリット片65の壁面に嵌合部84の奥行き側が傾斜した断面直角三角形状に突出された凸部88の嵌合部84の開口側の垂直面である端面である。第1ロック部86を含む凸部88は、レールカバー8の長手方向の全体に連続して設けられている。また、凸部88の形状は、断面直角三角形状に限定されず、その他の形状、例えば、嵌合部84の開口側が表面に対して直交する方向に延びる垂直面で嵌合部84の深さ側が傾斜した断面矩形状に形成してもよい。垂直部66a及びスリット片65の凸部88の第1ロック部86より奥側の表面は、第1ロック部86とともに後述する係止爪82が嵌合され得る凹部89として形成されている。
【0035】
第2ロック部87は、一対の係合片81の垂直部66a及びスリット片65とそれぞれ対向する各表面の上方にその表面から一体的に突出された係止爪82の垂直面である端面である。すなわち、係止爪82は、例えば、係合片81の基部側が表面に対して直交する方向に延びる端面である第2ロック部87で、係合片81の先端側が傾斜した傾斜面81aの断面直角三角形状に形成されている。一対の係合片81及び係止爪82は、係合片81の表面から突出した先端間の長さが嵌合部84を形成する垂直部66aとスリット片65の表面間の長さと同じか若干短い寸法で形成されてなる。第2ロック部87を含む係止爪82は、レールカバー8の長手方向に間隔をあけて設けてもよいが、レールカバー8の長手方向の全体に連続して設けることが好ましい。また、係止爪82の形状は、断面直角三角形状に限定されず、その他の形状、例えば、係合片の基部側が表面に対して直交する方向に延びる垂直面で係合片の先端側が傾斜した断面矩形状に形成してもよい。
【0036】
さて、直線レール60は、下地等の部材92にレール固定ブラケット93を介して強固に固定され、フランジ片66の水平部66bの上方に折り曲げられた端面上に天井部材91が載置された状態で配置されている。すなわち、直線レール60は、天井に敷設されており、この直線レール60にレールカバー8を取り付けるには、天井(天井部材91)から露出している直線レール60の嵌合部84に下方からレールカバー8の突状80である一対の係合片81を挿入して行う。一対の係合片81は、各係止爪82の突出先端が嵌合部84を形成する垂直部66a及びスリット片65の壁面に接触しつつ嵌合部84内の奥へと挿入される。一対の係合片81を嵌合部84内に挿入するとき、一対の係合片81の先端がそれぞれ傾斜されているすなわち係止爪82の傾斜面82aが形成されているので、一対の係合片81の嵌合部84への挿入が容易に行える。
【0037】
そして、一対の係合片81を嵌合部84内に挿入していくと、各係止爪82の傾斜面82aが凸部88の傾斜面88aに接触し、各係止爪82が嵌合部84への挿入動作に連動して凸部88の傾斜面88aに沿って一対の係合片81が自ら別の係合片81側にそれぞれ弾性力に抗して弾性変形して撓んで係止爪82の凸部88の通過を許容する。係止爪82が凸部88を通り過ぎると、係合片81は、弾性力によって撓みから復帰して凸部88の第1ロック部86と係止爪82の第2ロック部87とが互いに係合する。すなわち、係止爪82の端面が凸部88の端面に引っ掛かってレールカバー8が直線レール60から抜け落ちることが防止される。これにより、レールカバー8は、スリット片65の端面、嵌合部84の開口部、フランジ片66の水平部66bの略L字状の表面を覆い隠した状態で直線レール60にロック状態で取り付けられる。
【0038】
したがって、本実施形態のレール6は、直線レール60に下方からレールカバー8を挿入するだけの1つの簡単な作業でレールカバー8の取付を行える。また、レールカバー8の取付は、天井部材91が邪魔になることがないので、天井部材91の端部の加工は不要である。すなわち、従来は、レールのフランジ片の近傍の天井部材にレールカバーを取り付けるためのネジや傾斜片を収容する収容凹部を設けなければならず、天井部材の端部をそのまま使用することができなかったからである。
【0039】
また、保持するロック手段85を、嵌合部84内の垂直部66a及びスリット片65の壁面にそれぞれ設けた第1ロック部86と、嵌合部84内に挿入される一対の係合片81にそれぞれ設けた第2ロック部87とで構成することで、レールカバー8を直線レール60に取り付けたときには、ロック手段85が外部に露出しないので、ロック手段85による係合が解除され難い。よって、レールカバー8は、直線レール60から簡単には取れ難い状態で直線レール60に取り付けられている。
【0040】
また、レールカバー8は、スリット片65の端面、嵌合部84の開口部、フランジ片66の水平部66bの略L字状の表面を覆い隠した状態、すなわち、天井部材91から露出する直線レール60を略覆い隠すので、天井の外観を良好にすることができる。すなわち、直線レール60が例えばアルミ製であると、アルミは見た目冷たい感じがあるが、本実施形態の場合、目視できるほとんどがレールカバー8であるので、例えば、レールカバー8を合成樹脂により形成することで、外観を良好にすることができる。また、レールカバー8の長さを直線レール60より長い寸法で形成することで、直線レール60同士を直線方向に連結した際の繋ぎ目を見え難くすることができる。また、直線レール60の端部もレールカバー8が取り付けられるので、フリーベアユニット10つまりL字取付板11を直線レール60の段部63上に取り付けるためのボルトや、L字取付板11に取り付けられたベアリングケース13のネジ部、ワッシャー及びナットやL字取付板11の下面をレールカバー8によって隠すことができ、一層外観を良好にすることができる。
【0041】
また、レールカバー8には、直線レール60を走行する吊車装置1によって吊り下げ支持されている移動壁9の上端に設けられたシール材95が当接されて、遮光及び遮音が図られている。移動壁9は、1種類ではなく幅や高さが異なる多数の種類があり、シール材95も例えば移動壁9の種類によって異なる。このため、シール材95を直接直線レール60に当接する場合には、シール材95によっては直線レール60を取り換える大規模な工事をしなければならないこともあり得るが、本実施形態では、シール材95に応じた幅や厚みのレールカバー8を直線レール60に取り付けたりロック手段の係合を解除してレールカバー8を交換したりすることで、シール材95の種類に応じて簡単に対応することができる。
【0042】
また、第1ロック部86を含む凸部88が直線レール60の長手方向の全体に連続して設けられ、かつ、第2ロック部87を含む係止爪82がレールカバー8の長手方向の全体に連続して設けられていることで、レールカバー8は長手方向の全体で直線レール60に係合されているので、レールカバー8が簡単には直線レール60から外れ難く、安定してレールカバー8の直線レール60への取付状態を保持できる。また、レールカバー8は、縦断面がどの個所でも同じであるので、長尺のレールカバー8を切断して所望の長さのレールカバー8を形成する場合には、簡単に所望の長さのレールカバー8が得られる。また、レールカバー8を直線レール60に取り付けた後に、レールカバー8を取り付けた状態のまま直線レール60の長手方向にスライドできるので、レールカバー8の位置調節を簡単に行え、その結果、レールカバー8の取付作業をより簡単に行えることになる。
【0043】
本実施形態では、嵌合部84をスリット片65とレール片61と垂直部66aとから断面凹状に形成し、ロック手段85を、嵌合部84を形成するフランジ片66の垂直部66a及びスリット片65の壁面にそれぞれ設けた第1ロック部86とレールカバー8の突状80に設けた第2ロック部87とから構成したが、直線レールに下方からレールカバーを挿入するだけレールカバーの取付を行えるならば、どのように構成してもよく、例えば、直線レールのフランジ片の水平部に嵌合部としての円形やスリット状の穴を設け、この穴に嵌合されてロック状態で係合されるスナップフットタイプの弾性変形可能な係合突部をレールカバーの裏面に突出させてロック手段を構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 吊車装置
3 連結部
6 レール
8 レールカバー
9 移動壁
60 直線レール(レール本体)
61 レール片
61a 走行面
62 スリット
65 スリット片
66 フランジ片
66a 垂直部
66b 水平部
80 突状
81 係合片
82 係止爪
84 嵌合部
85 ロック手段
86 第1ロック部(端面)
87 第2ロック部(端面)
88 凸部
91 天井部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が走行面となり間隔をあけて直線上に延びる一対のレール片、前記一対のレール片の間の中央に開口されたスリット及び前記一対のレール片にそれぞれ設けられ下方に垂直部として延びてから前記スリットと反対側に直交する水平方向に水平部として延びてその水平部上に天井部材の端部が挿入される断面L字状のフランジ片を有するレール本体と、前記レール本体に取り付けられ前記スリットの縁部から前記フランジ片の水平部の先端までを覆うレールカバーとを備え、前記スリットを通って下方に延び移動壁を吊り下げ支持する連結部を有する吊車装置が前記一対の走行面上を走行する移動壁用レールであって、
前記レールカバーの前記レール本体を覆う側の表面である裏面に上方に延びる突状を設け、前記レール本体に、前記突状が下方から挿入されて嵌合する嵌合部を設け、前記突状を前記嵌合部に挿入して前記レール本体に前記レールカバーを取り付けたとき、前記突状と前記嵌合部を互いにロック状態で係合するロック手段を設けたことを特徴とする移動壁用レール。
【請求項2】
前記一対のレール片の前記スリット側の端部は、下方に互いに平行に延び前記スリットを形成するスリット片としてそれぞれ形成され、前記フランジ片の垂直部の上端が前記レール片の下面の前記スリット片から離れて取り付けられ、
前記嵌合部は、前記スリット片と前記レール片と前記垂直部とから下方に開口された断面凹状に形成され、
前記ロック手段は、前記嵌合部を形成する垂直部及びスリット片の壁面にそれぞれ設けられた第1ロック部と、前記突状の前記垂直部及び前記スリット片と対向する箇所にそれぞれ設けられた第2ロック部とからなる請求項1に記載の移動壁用レール。
【請求項3】
前記第1ロック部は、前記垂直部及び前記スリット片の壁面からそれぞれ突出した凸部の前記レール片側でその壁面に対して直交する方向に延びる端面であり、
前記突状は、前記嵌合部に挿入したとき、前記垂直部及び前記スリット片の壁面の近傍で各壁面に平行に挿入される弾性変形可能な一対の係合片であり、
前記第2ロック部は、前記一対の係合片の前記垂直部及び前記スリット片と対向する表面の上方に表面からそれぞれ突出した係止爪の前記係合片の基部側でその表面に対して直交する方向に延びる端面であり、
前記嵌合部に前記一対の係合片を挿入したとき、前記係止爪が前記凸部に接触して前記係合片が弾性変形し前記係止爪が前記凸部を乗り越えてから前記第1ロック部と前記第2ロック部とが係合するようにした請求項2に記載の移動壁用レール。
【請求項4】
前記第1ロック部を含む前記凸部は、前記レール本体の長手方向の全体に連続して設けられ、
前記第2ロック部を含む前記係止爪は、前記レールカバーの長手方向の全体に連続して設けられている請求項3に記載の移動壁用レール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−231516(P2011−231516A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102841(P2010−102841)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】