説明

移動式内装工事研修施設

【課題】 内装工の養成に好適に使用される研修施設を提供する。
【解決手段】 施設用の部屋として用意された研修室2の床に着脱自在に研修者の通路として敷設される通路ユニット3と、通路ユニット3が形成する通路の少なくも一方の側に沿って配置された複数の研修展示ユニット4,5a〜5d,6とを備えている。各研修展示ユニット4,5a〜5dは、裏面にキャスター411,511を備えたベース41,51と、ベース41,51に固定された内装材見本とから成っている。内装材見本は、破断されていて施工完了後における内装の断面構造を示しており、且つ施工手順における施工対象箇所の状態の変化を示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、店舗や住宅等における内装工事を行う内装工に対し、内装工事技術等を研修させる内装工事研修施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種店舗や住宅、オフィス等において、各種内装工事が行われている。フローリングのような床材の施工、壁面へのクロス貼りや塗装等である。
このような内装工事は、専門の職人(内装工)によって行われることが多いが、内装にはある程度熟練した技能を要するし、色々な内装材についての専門的知識も必要である。内装工を目指す者は、内装工事店や内装工事会社等(以下、内装工事会社と総称する)に見習いとして就職し、親方等の技能者から指導を受け、ある程度の期間を経た後、内装工として一人前になれるのが通常である。
尚、本明細書において、「内装工事」とは、建築物の構造部分以外の工事を広く意味しており、上記した床材や壁材等の施工の他、天井材の施工、各種電気工事、ガス工事、キッチン工事、ドアや襖等の建具工事等を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−293940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内装工事会社には小規模のものも多いが、比較的規模の大きな内装工事会社も多い。規模の大きな内装工事会社は、多くの現場を抱えており、同時進行的に作業が進められる。
会社の規模がどのようなものであれ、内装工の養成は重要な課題となっている。見習い(半人前)の状態が長く続くことは、人件費の支払いが負担となる問題がある。これは会社の規模の大小に関わらず言えることである。特に、規模の大きな会社の場合、多くの現場に迅速に内装工を配置することが必要で、より短期間に技能や知識を習得させることが重要になってきている。
【0005】
特に規模の大きな会社の場合、複数の支店やチェーン店を持ち、各支店やチェーン店から内装工を派遣して工事を行わせている場合もある。このような場合、各支店やチェーン店において内装工を迅速に養成していく必要がある。
本願の発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、内装工の養成に好適に使用される研修施設を提供する技術的意義を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、施設用の部屋として用意された研修室の床に着脱自在に研修者の通路として敷設された通路ユニットと、通路ユニットが形成する通路の少なくも一方の側に沿って配置された複数の研修展示ユニットとを備えており、
各研修展示ユニットは、裏面にキャスターを備えたベースと、ベースに固定された内装材見本とから成っており、
内装材見本は、破断されていて施工完了後における内装の断面構造を示しており、且つ施工手順における施工対象箇所の状態の変化を示しているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記研修展示ユニットは、一つの施工対象箇所に対して選択し得る異なる内装材を並べて展示しているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項1又は2の構成において、前記各研修展示ユニットは、前記研修室の出入り口を通過可能な大きさであるという構成を有する。
【発明の効果】
【0007】
以下に説明する通り、本願の各請求項の発明によれば、通路の上を研修者が歩いていき、各研修展示ユニットを見ることで内装工事に関する知識が深められる。各研修展示ユニットは、裏面にキャスターを備えたベースに内装材見本が固定されたものであるので、別の場所への移動が容易である。そして、内装材見本は、破断されていて施工完了後における内装の断面構造を示しており、且つ施工手順における施工対処う箇所の状態の変化を示しているので、内装の構造とともに内装工事の手順を同時に理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、本願発明の実施形態に係る移動式内装工事研修施設の断面概略図である。
本実施形態に内装工事研修施設は、ある大きな建物1の内部に設けられることが予定されている。この建物には、実施形態の研修施設用の用意された部屋(以下、研修室と呼ぶ)2がある。研修室2は、その目的のために当初から建築されているものである必要はない。通常のオフィスビルのような建物の中の比較的大きな部屋であったり、倉庫のような建物内の部屋であったりしても良い。研修室としては、例えば100〜150平米程度あれば好適である。
【0009】
本実施形態の内装工事研修施設は、上記研修室に配置されるものであるが、この配置は固定的なものではなく、別の場所の研修室に移動して配置することができるものとなっている。この点が大きな特徴点の一つとなっており、この意味で「移動式内装工事研修施設」と名付けられている。
本実施形態の研修施設は、多くの要素がユニット化されており、各ユニットを研修室内に持ち込んで設置することで出来上がるようになっている。即ち、各ユニットは、研修室2の出入り口21を通過できる大きさのものである。これらユニットの一つは、研修者の通路として敷設される通路ユニット3である。
【0010】
図2は、通路ユニット3の斜視概略図である。
図1及び図2から解るように、通路ユニット3は長方形のパネル状で、例えば縦横が450×900mm程度の大きさである。通路ユニット3は、図1に示すように、研修者の通路となるべき位置に複数並べて敷設される。図2に示すように、通路ユニット3は、軽量化のために中空の構造となっており、断面コ状31に補強用の梁32が設けられた構造である。通路ユニット3の上面には、滑り止め等のためのフェルト製のシート(不図示)が貼り付けられている。尚、図1に示すように、本実施形態では、通路ユニット3は、周回路を形成した部分(以下、周回路部)301と、周回路部に向けたアプローチの部分(以下、アプローチ部)302とを形成している。
【0011】
一方、本実施形態の研修施設が備えた主要なユニットの一つが、研修展示ユニットである。研修展示ユニットは複数設けられており、図1に示すように通路ユニット3が形成する通路に沿って配置されている。
各研修展示ユニットは、内装工を志す者に対して見せることで内装技術の詳細を理解させるものである。各研修展示ユニットは、内装工事に用いられる内装材の見本(以下、内装材見本)を備えており、内装の構造や施工対象箇所の状態の変化を見せることで内装技術を理解させるものである。
【0012】
このような各研修展示ユニットは、すべて下面にキャスターを備えたベース上に研修展示ユニットを設けている。したがって、各研修展示ユニットは移動自在なものである。
前述したように内装技術は多岐に亘るため、それに応じて研修展示ユニットも色々なタイプのものが設けられている。本実施形態では、内装工事を系統立てて理解してもらうため、幾つかのカテゴリーに分けて内装工事を解説するようにしている。即ち、図1に示すように、足場設置のような付帯工事に関して理解してもらうためのエリア(以下、付帯工事エリア)A1、厨房工事に関して理解してもらうためのエリア(以下、厨房工事エリア)A2、床や壁の仕上げ工事に関して理解してもらうためのエリア(以下、床壁仕上げ工事エリア)A3、扉や障子のような開口部の工事に関して理解してもらうためのエリア(以下、開口部工事エリア)A4、壁面棚のような造り付け家具の工事に関して理解してもらうためのエリア(以下、家具工事エリア)A5等に分かれている。
【0013】
研修展示ユニットは、これらのエリアA1〜A6にそのエリアの目的に応じたものが配置されている。以下、幾つかの研修展示ユニットについて例示的に説明する。まず、一例として、床壁仕上げ工事エリアA3に配置された研修見本ユニット(以下、床壁仕上げ用研修展示ユニット)について説明する。図3は、床壁仕上げ用研修展示ユニット4の斜視概略図である。
図3に示す床壁仕上げ用研修展示ユニット4は、下面にキャスター411を備えたベースフレーム41と、ベースフレーム41上に固定された内装材見本421〜423,431〜434とより成っている。図3に示す研修展示ユニットは、床部分の内装材見本と壁部分の内装材見本とを一つのベースフレーム41上に固定している。この点も大きな特徴点となっている。
【0014】
まず、床部分の内装材見本について説明する。図3に示す研修展示ユニット4は、施工完了状態の床を展示した部分と、工事途中の状態を示した部分とがある。床部分は、複数の床材を積層する工事がされる。複数の床材421〜423は、一部又は全部が破断されたものとなっており、図3に示すように段々畑状になっている。
通路ユニット3は手前側に配置されており、段々畑状の床材は手前側が低く、奥側に向けて徐々に高くなっている。床部分のうちの、最も手前側の部分は、床仕上げを行う前の床部分の露出部材421が設けられている。露出部材421は、ベースフレーム41に嵌め込まれている。そして、その奥側には、防音材のような床下地材422が設けられ、その奥側にはフローリングのような床表面材423が設けられている。このような展示構造においては、研修者は、床部分の内装工事の手順と、施工完了後の内装の構造とを同時に理解することができる。
【0015】
また、壁部分についても、垂直な状態で展示をしているだけであり、床部分の展示構造と基本的に同様である。壁面に対し、複数の壁面材を積層した構造が展示されている。複数の壁面材431〜433は、ベースフレーム41に立設された不図示の背面ベースに固定されている。背面ベースは、壁面材を取り付けるためのフレームとして部材であり、内装材見本ではない。
各壁面材431〜433は、同様に破断した状態で展示されている。各壁面材431〜433は、奥側にいくに従って徐々に高さが高くなっている。最も手前側の高さの低い壁面材が施工完了後の状態を示す壁表面材431である。そして、その奥側で少しずつ高くなっているのが、防音材等の壁下地材432である。最も奥側に設けられているのが、施工前の壁面の露出部材433である。この例では、壁面に目地が形成されており、まずコーキング材434で目地を塞ぐ工事をするようになっている。その後、壁下地材432、壁表面材431を順に貼り付けるようになっている。
上記説明から解るように、この壁部分においても、研修者は、壁部分の内装工事の手順と、施工完了後の内装の構造とを同時に理解することができるようになっている。
【0016】
また、図3に示すように、床壁用研修展示ユニット4が複数横に並べて設けられている。各床壁用研修展示ユニット4は、奥行きや高さが同じ寸法となっている。これらの床壁用研修展示ユニット4は、使用している床材や壁面材が異なっており、それに応じて異なった施工手順を展示している部分がある。例えば、床部分であれば、砂利を敷いた後にコンクリートを打ち、その上にタイルを敷設するような手順を展示している。また、壁部分については、下地材等の貼り付けについて接着材の塗布状態を示している部分などがある。
研修者は、各床壁用研修展示ユニット4を通路に沿って見ていくことで、床材や壁面材の色々なバリエーションを確認することができ、またそれぞれの床材や壁面材についての施工手順を理解することができる。
【0017】
次に、別のエリアに配置された研修展示ユニットの一例として、厨房工事エリアA2に配置された研修展示ユニット(厨房用研修展示ユニット)5a〜5dについて説明する。図4は、厨房用研修展示ユニット5a〜5dの斜視概略図である。
図4に示す厨房用研修展示ユニット5a〜5dは、一例として、厨房の床工事の研修展示ユニットとなっている。こられの厨房用研修展示ユニット5a〜5dも、下面にキャスター511を備えたベースフレーム51と、ベースフレーム51上に設けた各種内装材見本とより成っている。
【0018】
厨房工事エリアA2では、厨房の床工事について構造と手順を示すため、同様に複数の研修展示ユニット5a〜5dを並べて配置している。以下、複数の厨房用研修展示ユニットを、並んでいる順に第一ユニット5a、第二ユニット5b、……第五ユニット5bとする。
図4に示す厨房用研修展示ユニット5a〜5dは、主として排水溝の工事について展示している。即ち、第一ユニット5aは、ベースフレーム51の上に下地モルタル52が設けられた構造を展示している。下地モルタル52は、排水溝となるべきスペースを空けた状態で設けられている。そして、排水溝となる部分を確保するため、一対の枠板53が設けられている。枠板53の間には梁54を設けて枠板53が倒れないようにしている。
【0019】
第二ユニット5bでは、下地モルタル52の上に上部モルタル55が施工された状態が展示されている。上部モルタル55も排水溝となるべきスペースを空けて設けられている。尚、下地モルタル52と上部モルタル55の間には、不図示の防水シートが敷かれている。
第三ユニット5cでは、上部モルタル55の上にカラクリート56が設けられた構造が展示されている。そして、排水溝を塞ぐようにしてグレーティング57が嵌め込まれた構造が併せて展示されている。
【0020】
第四ユニット5dは、工事手順を示すものではないが、各種の床仕上げ材58のバリエーションについて展示している。第四ユニットでは、下地モルタル、防水シート、上部モルタルの順に積層されており、その上が四つの方形な領域に区画され、それぞれに異なる床仕上げの状態が展示されている。タイル貼り仕上げや塗床仕上げ等である。
こられの厨房用研修展示ユニットにおいても、研修者は第一ユニット5aから第四ユニット5dを順に見ていくことで、厨房の床構造が理解でき、また排水溝を形成しながら行う床部分の内装工事の手順を理解することができる。さらには、床仕上げ材58のバリエーション等についても知ることができる。
【0021】
次に、さらに別のエリアに配置された研修展示ユニットの一例として、開口部工事エリアA4に配置された研修展示ユニット(以下、開口部用研修展示ユニット)の一例について説明する。図5は、開口部用研修展示ユニット6の斜視概略図である。
図5に示す開口部用研修展示ユニット6は、上述した各研修展示ユニットとは異なり、裏面にキャスターを備えたベースフレームは有していない。この開口部用研修展示ユニット6は、組み上げ式となっており、作業者が研修室2に持ち込んで組み上げるものとなっている。
【0022】
具体的に説明すると、開口部用研修展示ユニット6は、枠材61と、枠材61の内部に設けた内装材見本621〜623と、二つの枠材61を連結する連結具63とから成っている。枠材61や連結具63は、内装材見本621〜623の展示のためのものであり、内装材として設けられているものではない。枠材61は方形であり、その内側に内装材621〜623が取り付けられている。
連結具63は、図5に示すように、断面がコ状で直角に折れ曲がったL字状の部材であり、枠材61の幅に丁度適合したものとなっている。図5に示すように、二つの開口部用研修展示ユニット6を立てて互いに直角に配置し、その状態で連結具63を枠材61の上片の当接部分に嵌め込むようにする。これで二つの開口部用研修展示ユニット6が連結された状態となる。尚、連結具63を補強のためネジ止めすることもある。
【0023】
この開口部用研修展示ユニット6は、一つのみでは自立できないが、このように連結すると自立した状態となる。この例では二つの開口部用研修展示ユニット6がL字状に配置されているが、三つのものをT字状に配置したり、四つのものを十の字状に配置することもある。このように連結したいずれかのユニットに対して面一に別のユニットを連結することも可能であり、この場合には直線状の連結具が用いられることになる。
図5に示す例では、一方の開口部用研修展示ユニット6では、内装材見本として上側に障子621が設けられ、下側に引き戸622が設けられている。また、他方の開口部用研修展示ユニットには、パーティション623が設けられている。
【0024】
上記のような構造を有する本実施形態の移動式内装工事研修施設では、通路の上を研修者が歩いていき、各研修展示ユニットを見ることで内装工事に関する知識が深められる。通路に沿って、研修者が歩くべき順路を表示した順路ボードや、各研修展示ユニットにおいて文字や写真等で内装工事を解説した解説ボードなどが必要に応じて設けられる。さらには、各研修展示ユニットには、展示内容を音声で解説するスピーカや音源等が設けられる場合もある。
【0025】
通路ユニット3や各研修展示ユニット、上記ボード類等は、研修室に運び込まれてセッティングされ、一定期間、研修に用いた後、他の場所に移動したり、撤去して倉庫にしまったりすることができる。例えば、全国に支店を展開する規模の大きな内装工事会社の場合、支店毎に順次研修を行うようにすることが可能である。また、新入社員が入社した当初に、社屋内のある場所に設置して研修を行い、研修終了後は倉庫にしまうことで、その場所を別の目的で使用することができ、スペースの有効利用が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上説明したように、本願発明によれば、内装工の養成に極めて好適に利用することができる研修施設が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本願発明の実施形態に係る移動式内装工事研修施設の断面概略図である。
【図2】通路ユニットの斜視概略図である。
【図3】床壁仕上げ用研修展示ユニットの斜視概略図である。
【図4】厨房用研修展示ユニットの斜視概略図である。
【図5】開口部用研修展示ユニットの斜視概略図である。
【符号の説明】
【0028】
1 建物
2 研修室
3 通路ユニット
4 床壁用研修展示ユニット
41 ベースフレーム
5a〜5d 厨房用研修展示ユニット
51 ベースフレーム
6 開口部用研修展示ユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設用の部屋として用意された研修室の床に着脱自在に研修者の通路として敷設された通路ユニットと、通路ユニットが形成する通路の少なくも一方の側に沿って配置された複数の研修展示ユニットとを備えており、
各研修展示ユニットは、裏面にキャスターを備えたベースと、ベースに固定された内装材見本とから成っており、
内装材見本は、破断されていて施工完了後における内装の断面構造を示しており、且つ施工手順における施工対象箇所の状態の変化を示していることを特徴とする移動式内装工事研修施設。
【請求項2】
前記研修展示ユニットは、一つの施工対象箇所に対して選択し得る異なる内装材を並べて展示していることを特徴とする請求項1記載の移動式内装工事研修施設。
【請求項3】
前記各研修展示ユニットは、前記研修室の出入り口を通過可能な大きさであることを特徴とする請求項1又は2記載の移動式内装工事研修施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−256639(P2010−256639A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107211(P2009−107211)
【出願日】平成21年4月25日(2009.4.25)
【出願人】(507410571)カツトシ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】