説明

移動式歯科診療装置

【課題】歯科用診療ユニットのほぼ全機能を装備可能とする着脱式歯科診療ユニットを具える移動式歯科診療装置を提供せんとする。
【解決手段】歯科診療に用いる複数の着脱可能な診療モジュールと、歯科診療に必要なエネルギーの供給を行う基幹部を含む基礎ユニットとから構成され、常設診療時は、該基礎ユニットに前記診療モジュールを装備して使用し、移動診療時には少なくとも前記診療モジュールの何れか一つ又は全部を使用し、可搬可能な移動型診療装置に再構成し得るようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯科診療ユニットを備える移動式歯科診療装置、特に、訪問歯科診療や災害時歯科診療に最適な移動式歯科診療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の歯科診療ユニットは図15に示すようにユニット本体100と診療椅子102とから成り、例えば水平方向に移動・回転自在な主アーム103の先端にドクター用診療テーブル本体104が固定され、タービン105やシリンジ106等の器材が具備されている。また、ユニット本体100には患者のうがい用の給水装置101と、うがい鉢(スピットン)107とが具備され、アシスタントが治療の補助をする器材として、シリンジ108やバキューム109、排唾器具110などが具備されたハンガー部111を有するアシスタントテーブル112が設けられ、これも水平方向に移動・回転自在な補助アーム113の先端に固定されている。
更に、ユニット本体100の底部には電気、水道、圧縮空気の供給源や排水管への接続を行う基幹部114およびこれに接続されたフットコントローラ115を具備する。また、図示されていないが、ユニット本体100にはポールを介して無影灯が設けられている。
【0003】
また、近年、高齢化社会の到来に伴い、歯科医が往診する機会が増加しており、往診時には携帯用歯科治療ユニット(例えば、特許文献1、特許文献2参照)が用いられている。
【0004】
携帯用歯科治療ユニットは、歯科用ポータブルユニットとも称され、一般的な歯科用ユニットのような歯科患者用チェアはなく、ユニット部一体又はユニット部とバキューム部等に分離されているものがある。通常、無影灯は組み込まれていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−165817号公報
【特許文献2】特開2001−245901号公報
【特許文献3】特開2009−219718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、訪問歯科診療時には診療室に常設された歯科用ユニットとは別に往診用の可搬型歯科診療用ユニットを設備しなければならなかった。
【0007】
一方、災害が発生した場合には、診療室に歯科用ユニットが設備してあっても、停電や断水などが発生すると、歯科用ユニットの駆動に必要な電気供給や水の供給ができなくなり、従って停電や断水などが復旧するまで、歯科用ユニットを作動させることができなかった。また避難救護所などで歯科診療の処置を行いたくても診療器材の手配が容易ではなかった。
【0008】
このような状況を鑑み、歯科診療ユニットからドクター用診療テーブル本体のみを着脱自在にしたテーブル本体着脱式歯科診療ユニット(例えば、特許文献3参照)も提案されているが、このテーブル本体着脱式歯科診療ユニットは、歯科診療ユニットの全機能を提供することができないだけでなく、歯牙を切削するための必要最低限の機能すら十分に提供することができなかった。特に、主診療テーブル部にはドクターの使用する治療器材が中心に設備されているため、衛生士やアシスタントがサポートする器材がなく、歯科診療ユニットの全機能を提供するためには付属の設備を別に準備しなければならなかった。
【0009】
また、テーブル部以外の付属の設備は歯科用診療ユニットの設備に付属したまま取り外して使用することができなかった。
【0010】
本発明の目的は、係る問題点に鑑み、歯科用診療ユニットのほぼ全機能を装備可能とする着脱式歯科診療ユニットを具える移動式歯科診療装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、歯科診療装置において、歯科診療に用いる複数の着脱可能な診療モジュールと、歯科診療に必要なエネルギーの供給を行う基幹部を含む基礎ユニットとから構成され、常設診療時は、該基礎ユニットに前記診療モジュールを具備して使用し、移動診療時には少なくとも前記診療モジュールの何れか一つ又は全部を使用して、用途に応じて再構成可能に、かつ可搬可能な移動型診療装置にして使用することを特徴とするものである。
この発明によれば、常設診療時では通常の歯科診療ユニットとして使用が可能であるが、可搬持出しが必要な際、即ち、訪問歯科診療時又は災害時歯科診療時には、歯科用診療ユニットから必要に応じて、必要なモジュール化された歯科用器材(歯科診療ユニット)を取り外して、必要に応じて組み合わせることができ、往診用の可搬型歯科用ユニットを別設する必要がなくなる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の歯科診療装置において、歯科診療に用いる複数の着脱可能な診療モジュールの制御信号及び/又はエネルギーの供給路は、基礎ユニットへの接続及び、他の診療モジュールへの接続が可能なように構成することを特徴とする。
この発明によれば、複数の診療モジュール同志の接続や、基礎ユニットと診療モジュールとの接続を行う際に特別な連結器具や複数の工具を必要とすることなく、制御部及び/又はエネルギーの供給路を接続することが可能となるため、診療先で容易に組立てることができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1および請求項2記載の歯科診療装置において、診療モジュールを複数個組み合わせることによって集合モジュールを構成し、基礎ユニットまたは移動可搬装置に接続可能とすることを特徴とする。
この発明によれば、診療モジュールを複数個組み合わせた集合診療モジュールとして、常設診療時の基礎ユニットへの着脱、及び移動診療時の移動診療装置への着脱が可能となり、集合診療モジュールごと装着が可能なため、診療先で容易に組立てることができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3記載の歯科診療装置において、診療モジュールまたは集合診療モジュールには水、エア、電気を供給する外部供給源が接続可能とすることを特徴とする。
この発明によれば、診療モジュール又は集合診療モジュールに加えて、さらに外部の可搬型のエア供給源(コンプレッサ、酸素ボンベ、手動ポンプなど)や水タンク、バッテリー等に接続することが可能なため、用途に応じた可搬可能な歯科診療装置を構成し、震災時などの水、電気等の供給源がない場合でも対応することが可能となる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4記載の歯科診療装置において、診療モジュールまたは集合診療モジュールはカートに一体に搭載して可搬及び移動が可能とすることを特徴とする。
この発明によれば、診療モジュールまたは集合診療モジュールはカートに一体に搭載が可能となるため、可搬時の移動が容易となる。また診療時にはそのまま移動可能な診療器具として使用することができる。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5記載の歯科診療装置において、診療モジュールは少なくともエネルギー供給手段を含むことを特徴とする。
この発明によれば、常設診療時の基礎ユニットに予め着脱自在なエネルギー供給手段を装着しておくことによって、移動診療時の移動診療装置への着脱が可能で移動先で速やかに使用することができる。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6記載の歯科診療装置において、診療モジュールは少なくとも排水手段を含むことを特徴とする。
この発明によれば、常設診療時の基礎ユニットに予め着脱自在な排水手段を装着しておくことによって診療時の移動診療装置への着脱が可能で移動先で速やかに使用することができる。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項1乃至請求項7記載の歯科診療装置において、診療モジュールは少なくとも移動式の診療椅子を含むことを特徴とする。
この発明によれば、常設診療時の基礎ユニットに予め移動式の診療椅子を装備しておくことによって、移動診療時の移動診療装置への装備が可能で移動先で速やかに使用することができるようになる。
【0019】
請求項9記載の発明は、請求項1乃至請求項8記載の歯科診療装置において、前記移動診療が訪問歯科診療または災害時歯科診療であることを特徴とする。
この発明によれば、前記移動診療が訪問歯科診療または災害時歯科診療であっても容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明歯科診療装置の常設診療時の形態を示す説明図
【図2】図2は基礎ユニットの構成例を示す説明図
【図3】図3はDIモジュールの構成を示す説明図
【図4】図4は本発明移動式歯科診療装置のエア回路を示す説明図
【図5】図5は椅子近傍に外部のエア供給源として、別に用意されたコンプレッサを装備した例を示す説明図
【図6】図6は小型コンプレッサの装備に代えて、酸素ボンベ(又は、小型プレッサ、或は手動ポンプ)を使用した例を示す説明図
【図7】図7aはDIモジュール、水ボトル、フットコントローラ、及び酸素ボンベ(又は、小型プレッサ、或は手動ポンプ)をキャスターが装備された小型の収納カート内に搭載したカート一体型の例を示す説明図、図7bは小型収納カートを椅子モジュールと組み合わせた訪問施設型とカート一体型との組み合わせの例を示す説明図
【図8】図8はアシスタントテーブル部にバキュームモジュールを設けた例を示す説明図
【図9】図9はバキュームモジュールの回路図
【図10】図10はスピットンを移動診療時に、基礎ユニットから分離し、携帯用の台に載せて使用する例を示す説明図
【図11】図11は移動診療時の移動の手順を説明する説明図
【図12】図12aは移動診療時の移動の手順を示す説明図、図12bは診療時におけるDIモジュールおよびバキュームモジュールの設置方策を示す説明図
【図13】図13は移動式チェアを使用しない診療体系の場合の移動方法を示す説明図
【図14】図14は使用時は患者が寝ているベッドの両脇にDIモジュール用カートと、バキュームモジュール用カートを配置して使用する例を示す説明図
【図15】図15は従来の歯科診療ユニットの構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0021】
図1は本発明歯科診療装置の常設診療時の形態を示すものである。
図2は基礎ユニットの構成例を示す説明図である。
図1および図2に示すように、本発明歯科診療装置は基礎ユニット1及び複数の診療モジュールとによって構成する。
【0022】
基礎ユニット1は移動診療時に診療に必要な診療モジュールを取り除いた状態で構成するものである。
どこまでを基礎ユニット1に設定するかどうかは、その形状、大きさ、構造に限定されるものではないが、少なくとも歯科診療を行ううえで必要なエネルギーの供給を行う基幹部2は含むものとする。
例えば、ドクター用診療テーブル3を保持する主アーム4や、診療テーブルの上下バランスを保つバランスアーム5を基礎ユニットにしても良いし、さらに、ドクター用診療テーブル3までを含めて基礎ユニット1にしても良い。
【0023】
また、衛生士やアシスタントがドクターの診療を補助するためのアシスタントテーブル6を保持する補助アーム7を基礎ユニット1に含めても良い。このアシスタントテーブル6には、バキュームチップ8やシリンジ9等を具備し、ドクター用診療テーブル3とは、患者口腔を挟んで反対側に配置して使用するものである。
基礎ユニット1の基幹部2は診療室の床に常設され、更に、床に埋設されたエネルギーの供給手段や排水手段に接続可能な構造としている。基礎ユニット1の基幹部2へのエネルギーの供給手段としては、水道水、エアコンプレッサーからの圧縮空気、電源等がある。
【0024】
水道水は、うがいの為のコップに給水する給水口10への供給や、歯科診療時に使用する歯科用インスツルメント類に使われる水として供給される。
【0025】
歯科用インスツルメント類(インスツルメントモジュール11)には、エアタービン12、スケーラ、マイクロモータ、シリンジ13等があり、これらインスツルメントには診療時の患部の冷却等を目的として、水が使用されている。また診療時に基礎ユニット1から多目的に水の使用が可能なようにドクター用診療テーブル3の下部には、水ワンタッチジョイント(図示せず)も用意されている。
【0026】
圧縮空気は、レギュレータにより一定圧力に調整されて、エアタービンやエアモータ、エアスケーラ等の動力源として供給されると共に、治療時に患部の清掃や冷却を行うシリンジにも供給される。また、診療時に基礎ユニット1から多目的にエアの使用が可能なようにドクター用診療テーブル3の下部には、エアワンタッチジョイント(図示せず)も設置されている。
【0027】
電源は、歯科診療装置で照明として使用される無影灯(図示せず)や、診療椅子14への電力供給、歯科用インスツルメント11のマイクロモータやスケーラ、光重合器等への電力として供給される他、診療装置の制御用の電力としても供給される。
【0028】
排水手段には、診療に使用されたうがい水などをスピットン15から排水したもの、歯科診療時にバキュームチップから吸引された唾液などを、吸引時にセパレータ16にかけ、液体と気体に分離して排水する機能を持たせるようにする。
【0029】
モジュールについて:
図1に示すドクター用診療テーブル3には、モジュール化されたDIモジュール(デンタルインスツルメントモジュール)17を着脱自在に接続する。このDIモジュール17には、さらに歯科診療で使用するインスツルメントモジュールとして、エアタービン12およびシリンジ13のモジュールを接続する。インスツルメントモジュール11には、エアタービン12やシリンジ13の他、マイクロモータ、スケーラ、光重合器、口腔内観察カメラ等があり、各種モジュールの接続部は同一仕様とし、どの診療モジュールをも接続可能なように構成している。これらインスツルメントモジュール11をDIモジュール17と組み合わせることによって集合診療モジュールを構成している。又、診療椅子14にはタイヤ18およびそのストッパー19を設けている。更に、基幹部2にはフットコントローラ20を接続配置する。
【0030】
図3はDIモジュール17の構成を示す説明図である。
インスツルメントモジュール11として、エアタービン12及びシリンジ13のモジュールをDIモジュール17に接続する。
【0031】
更に、DIモジュール17には、基礎ユニット1に接続されているフットコントローラ20のモジュールを接続することができる。また、水の外部供給源として水タンク21をも接続できるようにする。これがため、エア供給源があれば、DIモジュール17は単体として可搬可能な移動型診療装置として再構成することができる。
【0032】
図5は外部のエア供給源として、別に用意されたコンプレッサ22を装備した例である。このコンプレッサ22は電源があれば圧縮空気の供給を行うことができる。
【0033】
また、患者が座る椅子モジュール14としては、基礎ユニット1から椅子モジュール14を取外して使用する。この椅子モジュール14は椅子14にタイヤ(キャスター)18が装備されており(参考:ストレッチャー車椅子)、診療時にはストッパー19を踏み込むことによってロックをかけ、椅子14が移動しないような構造とする。また、椅子14のロックは再踏み込み、またはストッパー19を跳ね上げることによって解除することができるように構成する。或いは、ストッパー19を踏み込むことでタイヤ18を下方へ押し下げると共に椅子14を上方へ押し上げて移動可能とし、再踏み込みでタイヤを上方へ押し上げると共に椅子14を下方へ押し下げ、床に固定するようにしてもよい。これら構造により、施設訪問型の診療装置を実現することができる。
【0034】
以下、図4を参照して本発明移動式歯科診療装置のエア回路について説明する。
回路(常設診療時):
DIモジュール17にはエアワンタッチジョイント23に接続するための接続チューブ25及び水ワンタッチジョイント24に接続するための接続チューブ26を設けている。エアワンタッチジョイント23は常設診療時に基礎ユニット1の診療テーブル3の下(図示せず)に設置し、ワンタッチ着脱自在な接続チューブ25と接続し得るようする。同様に、水ワンタッチジョイント24も診療テーブル3の下部(図示せず)に設置し、ワンタッチ着脱可能な接続チューブ26と接続し得るようにする。
【0035】
常設診療時には、診療室から供給されるエアはレギュレータ27を介して最適な圧力に調整した後、フットコントローラ20のドライブペダル28を踏み込むことによって、タービン12にエアを供給し、タービン12を回転させるようにする。また、シリンジ13にもエアを供給し得るようにする。
【0036】
更に、診療室から供給される水はシャトル弁29を開いてシリンジ13に供給する。また、フットコントローラ20に設けられた水切替弁30を操作すると、タービン12に水を供給し、エア回路のエアと混合してスプレー噴霧を行い得るようにする。水を供給しない場合は、チップエアとしてエアを噴霧する。さらに、シリンジ13にも水を供給し、エアと混合させることができる。
【0037】
回路(移動診療時):
移動診療時には、DIモジュール17を分離する。エアワンタッチジョイント23及び水ワンタッチジョイント24は分離すると同時にシャトル弁29が働き、DIモジュール17内の水は外部に逆流しないように構成する。移動先での診療時に先駆けて外部に接続されたコンプレッサ装備22からのエアをDIモジュール17に接続する。エアはレギュレータ27を介し適正な圧力に調整して、開閉制御弁31を開き、エアを水タンク内に充填する。これにより、圧縮されたエアによって水圧を発生した水はシャトル弁29を開くことによってシリンジ13及びタービン12に水を供給し得るようにする。また、エアの供給は常設時のエア供給と同様に行うことができる。
【0038】
図6は、小型コンプレッサ22の装備に代えて、酸素ボンベ32を使用した例を示す。酸素ボンベ32を使用した場合には、コンプレッサ22が不要な為、電力供給源が不要となる。また酸素32ボンベではなく手動ポンプ33によって空気を加圧することにより、水タンク21内を加圧して、圧縮されたエアによって水圧を発生させても良い。更に、酸素ボンベ32ではなく小型コンプレッサ22を使用することもできる。
【0039】
図7aはDIモジュール17、水タンク21、フットコントローラ20、及び酸素ボンベ32(又は、小型コンプレッサ22、或は手動ポンプ33)をキャスター34が装備された小型の収納カート35内に搭載したカート一体型の移動式歯科診療装置の例を示す。さらに、図7bはこの収納カート35を椅子14のモジュールと組み合わせた、訪問施設型およびカート一体型の移動式歯科診療装置の組み合わせの例を示す。
【0040】
これらエネルギー供給のためのエネルギー供給路や歯科診療装置を制御するための制御信号は、エネルギー供給路及び制御信号伝達路の各入力部と出力部とを同一仕様に構成することにより、各モジュールは基礎ユニット1を介して接続可能となり、また、基礎ユニット1を介さずに各モジュール間で直接接続可能に構成することもできる。
【実施例2】
【0041】
図8はアシスタントテーブル6に代えてバキュームモジュール36を設けた例を示す。このバキュームモジュール36は、基礎ユニット1(図2参照)のアシスタント側に設けられた補助アーム7に着脱自在に装着し、さらにバキュームモジュール36の内部には、セパレータ37やバキュームモータ38を装備し、このセパレータ37をホース39、分岐接続部40、フィルター(図示せず)を介してバキュームチップ41やスピットン15と、接続し得るようにする。バキュームチップ41はバキュームモジュール36のハンガー42に設置すると共にバキュームモジュール36の外壁にはバキュームチップ41の作動をON/OFFするスイッチ43を設ける。
図9は、バキュームモジュール36の回路図である。バキュームモジュール36はバキュームモータ38を回転させることによってバキュームタンク44内を陰圧にして、バキュームチップ41やスピットン15から吸引した液体や空気をセパレータタンク45内で水と空気に分離して、空気は外部に排気し、液体はセパレータタンク45内に溜める構造としている。溜まった液体は、決められた水量以上に溜まると、フロート46を押し上げて、逆止弁47を塞ぎ、水分がバキュームモータ38のバキュームタンク44に流れ込まないように構成している。
スピットン15は常設診療時、基礎ユニット1のスピットン置台48(図2参照)に搭載するが、移動診療時には、基礎ユニット1から分離し図10に示すように携帯用の台49に載せて使用することもできる。
【0042】
図11および図12aは移動診療時の移動の手順を示す説明図である。図5に示した被災地訪問型のDIモジュール17をコンプレッサ内臓の収納ケース50の上に載置する。又、収納ケース50の内部には水タンク21およびフットコントローラ20を収納する。更に、バキュームモジュール36の上部にはスピットン15を携帯用の台49に乗せたまま搭載し、移動式チェア14の座部に載置し、椅子14に搭載した状態で車椅子仕様車に載せて移動することも可能である。収納ケース50は収納カート35の儘とすることもできる。
診療時には図12bに示すようにDIモジュール17とバキュームモジュール36とは、そのまま床に置いて診療を行うか、移動式チェア14に専用台53を現地で取り付け、その上に置いて診療を行ってもよい。
【0043】
図13は移動式チェア14を使用しない診療体系の場合の移動方法である。コンプレッサ内臓の専用カート50に内装したDIモジュール17とバキュームモジュール專用カート51にバキュームモジュール36を搭載しベルト52などで連結して移動する。使用時は図14に示すように患者が寝ているベッド53の両脇にDIモジュール用カート50と、バキュームモジュール用カート51とを配置して診療を行う。
【符号の説明】
【0044】
1 基礎ユニット
2 基幹部
3 ドクター用診療テーブル
4 主アーム
5 バランスアーム
6 アシスタントテーブル
7 補助アーム
8 バキュームチップ
9 シリンジ
10 給水口
11 インスツルメントモジュール
12 エアタービン
13 シリンジ
14 椅子
15 スピットン
16 セパレータ
17 DIモジュール
18 タイヤ
19 ストッパー
20 フットコントローラ
21 水タンク
22 小型コンプレッサ
23 エアワンタッチジョイン
24 水ワンタッチジョイント
25 接続チューブ
26 接続チューブ
27 レギュレータ
28 ドライブペダル
29 シャトル弁
30 水切替弁
32 酸素ボンベ
33 手動ポンプ
34 キャスター
35 収納カート
36 バキュームモジュール
37 セパレータ
38 バキュームモータ
39 ホース
40 分岐接続部
41 バキュームチップ
42 ハンガー
43 スイッチ
44 バキュームタンク
45 セパレータタンク
46 フロート
47 逆止弁
48 スピットン置台
49 携帯用の台
50 収納ケース
51 バキュームモジュール専用カート
52 ベルト
53 ベッド
100 ユニット本体
101 給水装置
102 診療椅子
103 主アーム
104 診療テーブル本体
105 タービン
106 シリンジ
107 スピットン
108 シリンジ
109 バキューム
110 排唾器具
111 ハンガー部
112 アシスタントテーブル
113 補助アーム
114 基幹部
115 フットコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科診療に用いる複数の着脱可能な診療モジュールと、歯科診療に必要なエネルギーの供給を行う基幹部を含む基礎ユニットとから構成され、常設診療時は、該基礎ユニットに前記診療モジュールを装備して使用し、移動診療時には少なくとも前記診療モジュールの何れか一つ又は全部を使用し、可搬可能な移動型診療装置に再構成することを特徴とする移動式歯科診療装置。
【請求項2】
前記歯科診療に用いる複数の着脱可能な診療モジュールの制御信号及び/又はエネルギーの供給路は、基礎ユニットへの接続及び、他の診療モジュールへの接続が可能なように構成することを特徴とする請求項1記載の移動式歯科診療装置。
【請求項3】
前記診療モジュールを複数個組み合わせて集合モジュールを構成し、前記基礎ユニットまたは移動可搬装置に接続可能とすることを特徴とする請求項1および請求項2に記載の移動式歯科診療装置。
【請求項4】
前記診療モジュールまたは集合モジュールには水、エア、電気を供給する外部供給源を接続可能とすることを特徴とする請求項1乃至3に記載の移動式歯科診療装置。
【請求項5】
前記診療モジュールまたは集合モジュールは、カートに一体に搭載して可搬及び移動可能とすることを特徴とする請求項1乃至4に記載の移動式歯科診療装置。
【請求項6】
前記診療モジュールは少なくともエネルギーの供給手段を含むことを特徴とする請求項1乃至4に記載の移動式歯科診療装置。
【請求項7】
前記診療モジュールは少なくとも排水手段を含むことを特徴とする請求項1乃至4に記載の移動式歯科診療装置。
【請求項8】
前記診療モジュールは少なくとも移動式の診療椅子を含むことを特徴とする請求項1乃至4に記載の移動式歯科診療装置。
【請求項9】
前記移動診療は訪問歯科診療または災害時歯科診療とすることを特徴とする請求項1乃至8に記載の移動式歯科診療装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−85594(P2013−85594A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226489(P2011−226489)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000141598)株式会社吉田製作所 (117)
【Fターム(参考)】