説明

移動式給湯装置

【課題】移動可能でどこでも湯水を供給することができる移動式給湯装置を提供すること。
【解決手段】移動可能な移動式給湯装置Aは、燃焼熱を被加熱水と熱交換して湯水に換えるボイラ4と、燃料を貯溜する燃料タンクTと、ポンプPを駆動させるバッテリBと、ボイラ4、燃料タンクT及びバッテリBを搭載したワゴン5と、を備えている。ワゴン5は、ボイラ4、燃料タンクT及びバッテリBを載設した下板部51と、下板部51に立設された支柱フレーム52と、を備えている。支柱フレーム52には、使用時に、支柱フレーム52よりも高い位置に配置され、移動時に、ワゴン5内に収納可能に配置され、バッテリBに電力を供給して充電を行う太陽光パネル1が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式給湯装置に係り、特に、太陽光パネルを設けた移動式給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋内外及び車両の車室内等に配置した浴槽に湯水を供給する介護用の入浴サービスや、キャンプ場、海水浴場等において使用する簡易シャワー等に湯水を供給する給湯装置としては、ボイラを移動させて使用する移動式給湯装置が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この移動式給湯装置は、ケーシング内にボイラ部(ボイラ)、給水タンク、出水ポンプ、出湯ポンプ及び貯湯タンクを収納して、ボイラのケーシング外に燃料容器、出水ヘッダー及び出湯ヘッダーを取り付けて、ケーシングの下部にキャスタを取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2794362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された移動式給湯装置は、出水ポンプ及び出湯ポンプに設けられている電動モータ等を駆動させる電源がなければ駆動しないため、戸外等の電源のない場所では使用できないという問題点があった。
【0006】
この問題点を解消する手段としては、充電式の蓄電池(以下「バッテリ」という)を搭載して、電源のないところでも給湯できるようにすることが考えられる。
しかしながら、移動式給湯装置にバッテリを搭載したとしても、使用することによってバッテリが放電してバッテリ切れを起こすため、長時間に亘って給湯することができないという問題点があった。
この場合、バッテリを大型化すればバッテリの使用可能時間を長くできるものの、装置全体の荷重が重くなり、容易に持ち運びすることができず、移動性及び搬送性が悪化するという問題点があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、移動可能でどこでも湯水を長時間に亘って供給することができる移動式給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、本発明に係る移動式給湯装置は、燃料を燃焼させて得られる燃焼熱を被加熱水と熱交換して湯水に換えるボイラと、前記燃料を貯溜する燃料タンクと、前記ボイラに内設されたポンプを駆動させるバッテリと、前記ボイラ、前記燃料タンク及び前記バッテリを搭載したワゴンと、を備えた移動可能な移動式給湯装置であって、前記ワゴンは、前記ボイラ、前記燃料タンク及び前記バッテリを載設した下板部と、前記下板部に立設された支柱フレームと、を備え、前記支柱フレームの上部には、使用時に、当該支柱フレームよりも高い位置に配置され、移動時に、前記ワゴン内に収納可能に配置され、前記バッテリに電力を供給して充電を行う太陽光パネルが設けられていることを特徴とする。

【0009】
かかる構成によれば、移動式給湯装置は、ボイラと燃料タンクとバッテリとがワゴンに搭載されているので、ワゴンを押してボイラを移動させることができるため、湯水を使用したい場所に自由に移動させて供給することができる。移動式給湯装置を移動させる際には、太陽光パネルをワゴン内に収納することが可能であることによって、太陽光パネルが他の物と接触して損傷したり、搬送時に邪魔になったりするのを防止することができる。このため、移動式給湯装置は、手で押して移動させたり、自動車等に積載して移動させたりし易い。
また、移動式給湯装置において、電気を使用するポンプやセンサ等の電気部品は、バッテリから電気が供給されるので、電源がない屋外等であっても使用することができる。移動式給湯装置は、バッテリに電力を供給して充電を行う太陽光パネルがワゴンに設けられていることにより、太陽光パネルによる太陽光発電で電力を生成してバッテリを充電することができるため、バッテリ切れするのを防止することができる。
その結果、被災地等の電源がない場所であっても、バッテリがバッテリ切れし難い分、湯水を長時間に亘って連続的に供給することができる。これに伴い、バッテリを比較的小型で軽量なものであっても使用可能にすることができると共に、装置全体を小型化して移動性及び搬送性を向上させることができる。
【0010】
また、前記太陽光パネルは、一端部が、ヒンジ及びリンク部材を介在して、前記支柱フレームの上部に設けられた枠部の一端部側寄りの位置に回動自在に設けられ、他端部が、当該太陽光パネルを前記枠部の他端部側に、ロック機構を介在して保持されることが好ましい。
【0011】
かかる構成によれば、太陽光パネルは、使用する際に、一端部を、ヒンジ及びリンク部材を介在してワゴンの枠部に対して回動させて起こし、他端部を、太陽光パネルを枠部の他端部側にロック機構で保持させることによって、太陽光パネルを枠部から起こした状態にロックして使用することができる。このため、太陽光パネルは、太陽がある方向に対向するように斜めに回動させ、太陽光の集光効率を向上させることが可能となる。
【0012】
また、前記太陽光パネルは、使用時に、太陽光を受ける受光面が、前記一端部から前記他端部に亘って斜め下側に向けて傾斜して配置され、前記リンク部材は、前記太陽光パネルの一端部側の幅方向の両端部に連結された一対のアームと、前記一対のアーム間に介在されたカバー部材と、を備えると共に、前記太陽光パネルの使用時に、前記枠部の一端部側寄りの位置から上方に向けて回動した状態に配置され、前記ボイラは、排気ガスを排出する排気口を一端部方向にして前記下板部上の一端部側寄りの位置に載設されていることが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、太陽光パネルは、太陽光を受ける受光面が、一端部から他端部に亘って斜め下側に向けて傾斜して配置されていることにより、太陽がある方向に直交するように傾けて使用することが可能となり、太陽光の集光効率を向上させることができる。
ボイラは、排気ガスを排出する排気口を一端部方向にしてワゴンに載設されていることによって、太陽光パネルと反対側の一端部側にカバー部材が配置される。このため、カバー部材は、リンク部材のアームと共に一端部を中心として回動させて、太陽光パネルを使用する斜めの状態にすることにより、ボイラの排気口から排出された排気ガスが、カバー部材に向けて流れた後、カバー部材に沿って上昇するように指向されるので、その反対側にある太陽光パネル側に回り込むように流れるのを抑制することができる。
その結果、太陽光パネルが排気ガスの煙や熱の影響を受けて、変質したり、劣化したりするのを防止することができる。
【0014】
また、前記ワゴンは、前記枠部の外周部及び前記四つの支柱フレームの上部外側には、放熱孔が多数形成された側板がそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、ワゴンは、枠部の外周部及び四つの支柱フレームの上部外側に、放熱孔が多数形成された側板がそれぞれ設けられていることによって、ボイラの熱で加熱されたワゴンの上部の熱を放熱して、高温になるのを抑制し、太陽光パネルを保護することができる。
【0016】
また、前記側板の内周面には、前記側板の内周面には、前記太陽光パネルで生成された電流によって前記バッテリを充電する制御を行う充電コントローラが配置され、前記充電コントローラは、一方が前記太陽光パネルに接続され、他方が前記バッテリに接続されていることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、放熱孔が形成された側板の内周面には、太陽光パネルで生成された電流によってバッテリの充電を制御する充電コントローラが配置されていることにより、充電コントローラがボイラ熱の影響を受けるのを防止することができる。
【0018】
また、前記ワゴン内には、前記燃料タンク及び前記バッテリの後方部位の前記下板部からこの下板部の上方に亘って前記太陽光パネルを収納するための収納空間が形成されていることが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、ワゴン内のタンク及びバッテリの後方部位の下板部からこの下板部の上方に亘って収納空間があることによって、その収納空間に太陽光パネルを収納することができるため、移動時等に太陽光パネルが邪魔になることがない。また、その移動時に、太陽光パネルが他の物に当接したり、損傷したりするのを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る移動式給湯装置によれば、移動可能でどこでも湯水を長時間に亘って連続して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る移動式給湯装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る移動式給湯装置の太陽光パネルの使用時の状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る移動式給湯装置の太陽光パネルの使用時の状態を示す左側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る移動式給湯装置の太陽光パネルの使用時の状態を示す正面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る移動式給湯装置の移動時の状態を示す平面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る移動式給湯装置の太陽光パネルの使用時の状態を示す要部斜視図である。
【図7】ボイラの内部構造の一例を示す図であり、前側パネルを取り外したときの状態を示すボイラの正面図である。
【図8】ボイラの内部構造の一例を示す図であり、側面パネルを取り外したときの状態を示すボイラの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1〜図8を参照しながら本発明の実施形態に係る移動式給湯装置の一例を説明する。
移動式給湯装置Aにおいて、便宜上、ボイラ4の排気口4a(図4参照)が配置された側を正面として説明する。また、本発明の移動式給湯装置Aで使用される燃料は、バーナ部44(図7及び図8参照)で燃焼させることが可能なものであれば、灯油、重油、軽油、ガソリン、ガス等のいずいれかであっても構わない。本発明の移動式給湯装置Aは、その一例として灯油を使用する灯油ボイラ(石油ボイラ)の場合を例に挙げて説明する。
【0023】
≪移動式給湯装置の構成≫
図1に示すように、移動式給湯装置Aは、温水(以下「湯水」という)を供給する小型の給湯装置であって、太陽光パネル1と、充電コントローラ2と、バッテリBと、DC/ACインバータ3と、ボイラ4と、燃料タンクT(図2参照)等をワゴン5に搭載して自由に移動可能な装置である。このため、移動式給湯装置Aは、屋内、屋外、車両の車室内、あるいは、電源のない場所等に配置された浴槽、シャワー等に給湯する装置であっても、適宜な場所へ自由に移動させて湯水を供給することが可能な給湯設備として使用することができる。
【0024】
この移動式給湯装置Aは、太陽光の光エネルギーを電気に変換する太陽光パネル1と、充電制御用の充電コントローラ2と、太陽光パネル1で生成された電気で充電されるバッテリBと、バッテリBの直流電流を交流電流に変換するDC/ACインバータ3と、その交流電流が供給されて駆動するボイラ4と、ボイラ4に供給する燃料を貯溜する燃料タンクTと、キャスタ58(図2参照)を有するワゴン5と、を主に備えている。
【0025】
≪太陽光パネルの構成≫
図2及び図3に示すように、太陽光パネル1は、太陽光から電気エネルギーを集めて太陽光発電を行うソーラパネルユニットであって、所謂ソーラ電池である。太陽光パネル1は、使用時に、太陽光を受ける矩形の厚平板状のパネルの受光面1cが、基端部1a(一端部)から先端部1b(他端部)に亘って斜め下側に向けて傾斜した状態でワゴン5の上部に配置されて、太陽光を集光し易い状態に配置されている。このため、太陽光パネル1は、基端部1aが、ヒンジ7及びリンク部材54を介在して枠部53の一端部側寄りの位置に回動自在に設けられ、先端部1bが、枠部53の他端部側にロック機構9を介在して保持されている。
なお、太陽光パネル1は、最も性能を発揮することができる傾斜角度θである約30度に傾斜して配置され、太陽の方向に向けて配置することが望ましい。
【0026】
図3に示すように、太陽光パネル1は、使用しないときや移動時に、リンク部材54をワゴン5の上面にある枠部53内に水平な状態にすることによって、そのリンク部材54の先端部から真下に向けて垂下してワゴン5内の収納空間5aに収納される。
【0027】
≪充電コントローラの構成≫
図1に示すように、前記充電コントローラ2は、太陽光パネル1で集めた電気をバッテリBに溜めておくための充放電を制御する太陽電池用バッテリチャージコントローラである。充電コントローラ2は、例えば、太陽光パネル1からバッテリBへの充電電圧を自動制御したり、バッテリBの過充電を防止したりする充電制御と、バッテリBの低電圧による負荷の遮断と負荷の自動再接続とを行ってバッテリBの過放電を防止する放電制御と、バッテリBから太陽光パネル1への電流の逆流を防止する逆流防止と、バッテリBの温度を感知して充電電圧を補正して最適な充電制御を行う温度補正制御と、を行う。
図3に示すように、充電コントローラ2は、ワゴン5の側板56の内壁に取り付けられた支持板57(図6参照)によって固定されて、一方が太陽光パネル1に接続され、他方がバッテリBに接続されている。
【0028】
≪バッテリの構成≫
図1に示すように、バッテリBは、太陽光パネル1で集めた電気エネルギーを溜めて置く電源であり、ボイラ4に内設されたポンプPやセンサ類(S1〜S6)等を駆動させる電力を供給する蓄電池である。このバッテリBは、太陽光パネル1で発生した電力によって充電されるようになっている。バッテリBは、一方が充電コントローラ2に接続され、他方がDC/ACインバータ3を介してボイラ4に設けられた制御装置6に接続されている。
なお、バッテリBは、リモコン61の操作によって電源が入っているときに、太陽光パネル1からの電流で自動的に充電されるようにしてもよい。
【0029】
≪DC/ACインバータの構成≫
DC/ACインバータ3は、太陽光パネル1で集めた電気(DC直流)と、バッテリBから放電された直流電流とを、例えば、家庭用電気(AC交流100V)等の交流電流に変換するユニットである。
【0030】
≪制御装置の構成≫
制御装置6は、熱交換部42(図7参照)によってボイラ熱と被加熱水とを熱交換して加熱する加熱運転を制御するものであり、被加熱水がリモコン61で設定した温度の湯水が供給されるように制御している。制御装置6には、ボイラ4にそれぞれ設けられたリモコン61、凍結予防ヒータ62、イグナイター63、ポンプP、送風機F、点火トランス45、耐震自動消化装置S1、減油感知器S2、炎検出器S3、ハイカットS4、缶体サーミスタS5、外気温サーミスタS6等が接続されている。
【0031】
≪ボイラの構成≫
図3〜図4に示すように、ボイラ4は、燃料を燃焼させて得られる燃焼熱と被加熱水とを熱交換して湯水に換える装置であり、例えば、排気ガスを排出する排気口4aを一端側(前側)方向にしてワゴン5の下板部51上の一端部(前端部)側寄りの位置に載設されている。
図7または図8に示すように、ボイラ4は、例えば、被加熱水が供給される給水口41と、湯水を生成する熱交換器42と、給水口41の被加熱水を熱交換器42に送る給水管43と、燃焼熱を発生させるバーナ部44と、バーナ部44に空気を送る送風機Fと、バーナ部44に燃料を供給するポンプPと、バーナ部44を点火させる点火トランス45と、前記制御装置6を構成する制御基板64と、制御基板64に接続されたリモコン61と、湯水を放出する出湯口46と、出湯口46と熱交換器42とを接続する出湯管47と、ワゴン5に載設されるケーシング48と、を主に備えている。
【0032】
図7及び図8に示すように、給水口41は、例えば、被加熱水としての水道水を供給する不図示の水道管に接続されたホースが接続される部位であり、被加熱水中に含まれる不純物等の混入物を除去する水ストレーナ41aが設けられている。水道水は、一般に0.3Mpa程度の水圧を有し、その水圧を減圧弁V1で適宜な圧力に減圧してボイラ4内を循環させて出湯口46から放出される。
【0033】
図7に示すように、熱交換器42は、給水口41から給水管43を介して被加熱水が供給されて、その被加熱水とバーナ部44の燃焼熱とを熱交換させて湯水を生成するものである。熱交換器42は、ケーシング48の右側半分に亘って配置された缶体からなる。
【0034】
図8に示すように、給水管43は、上流側が、水ストレーナ41aを介して給水口41に接続され、下流側が、減圧弁V1を介して熱交換器42に接続されている。
バーナ部44は、熱交換器42の外周部下側に配置され、燃料タンクT(図2参照)から供給された燃料が燃焼することによって発生した燃焼熱で熱交換器42内の被加熱水(水道水)を湯水に加熱する。バーナ部44の外周部には、バーナ部44の燃焼状態を検出する炎検出器S3が設置されている。
【0035】
送風機Fは、バーナ部44に空気を送って燃焼を良好にさせるための送風機Fである。
ポンプPは、燃料タンクT内の燃料をバーナ部44に供給する電磁ポンプからなる。
点火トランス45は、バーナ部44の点火部(図示省略)を点火可能な電圧に変化するための変圧器である。
制御基板64の上端部には、リモコン61(図1参照)に接続されたリード線が接続されるリモコン端子台が設けられている。
【0036】
リモコン61(図4参照)は、出湯口46から吐出される湯水の温度等を設定したり、ボイラ4を操作したりする制御盤であり、ケーシング48の前面パネル48aに取り付けられた開閉自在な開閉部材61a(図4参照)の内に配置されている。
送風機F、ポンプP、点火トランス45、制御基板64及びリモコン61は、前記バッテリB(図1参照)及び太陽光パネル1から供給される電流によって駆動される。
【0037】
出湯口46は、熱交換器42で加熱されて適温に調整された湯水をボイラ4から放出する部位であり、例えば、不図示のホースを介して給湯栓やシャワー等が接続されている。
出湯管47は、その出湯口46と熱交換器42との間に接続された配管である。
【0038】
移動式給湯装置A(図2参照)は、熱交換器42に連通する給水口41に、不図示の水道管に接続されたホースを接続すると共に、出湯口46にシャワー等(図示省略)を接続し、被加熱水を熱交換器42で熱交換させて適温な湯水にすることによって、電源がないあらゆる場所でも給湯を行うことができる。
【0039】
図2に示すように、ケーシング48は、ボイラ4の外周部を形成する金属製パネル材からなり、直方体形状に形成されている。ケーシング48は、ワゴン5の下板部51の前端部に幅方向に向けて配置されている。図7に示すように、ケーシング48は、前面パネル48a(図4参照)と、背面パネル48b(図2参照)と、左右の側面パネル48c,48dと、上面パネル48eと、下面パネル48fと、から構成されて、前記した熱交換器42、バーナ部44、ポンプP、送風機F、点火トランス45等が内設されている。
【0040】
図4に示すように、前面パネル48aには、バーナ部44(図7参照)で燃焼した燃料の排気ガスが放出される排気口4aと、開閉自在な開閉部材61aと、この開閉部材61aの蓋体の内側に配置されたリモコン61とが配置されている。
上面パネル48eの左右前端部の角には、保護カバ−48iがそれぞれ取り付けられている。
図2に示すように、背面パネル48bには、空気を取り入れるための所謂よろい戸状の吸気口48gが形成されている。
図3に示すように、左側の側面パネル48cには、給水口41と、出湯口46と、燃料供給配管Taとが配置されている。
図7に示すように、右側の側面パネル48dには、吸気口48gと、取っ手49と、熱交換器42の下端部に連通した排水口42aとが配置されている。
下面パネル48fの前後左右の下端部には、ケーシング48と下板部51との間を適宜な間隔に維持するためのスペーサNがそれぞれ設けられている。
【0041】
≪燃料タンクの構成≫
図2に示すように、燃料タンクTは、灯油等の燃料が貯溜される貯溜タンクであり、ワゴン5の下板部51の後寄りの位置に載設されている。燃料タンクTには、燃料を濾過するためのオイルストレーナを介してポンプP(図7参照)に接続された燃料供給配管Taが取り付けられている。
【0042】
≪ワゴンの構成≫
ワゴン5は、前記した太陽光パネル1と、ボイラ4と、燃料タンクTと、バッテリBと、仕切板59とを搭載し、下板部51に設けたキャスタ58によって自由に移動させることが可能なボイラ移動用台車である。このワゴン5は、下方に配置された矩形の下板部51と、下板部51の周部四隅にそれぞれ立設された支柱フレーム52と、支柱フレーム52の上部に設置された四角形の枠部53と、収納空間5aと、左右一対のリンク部材54と、四本の支柱フレーム52の前後左右の上部に設けられた側板56と、充電コントローラ2を支持する支持板57(図6参照)と、前記キャスタ58と、平面視してL字状に形成された仕切板59と、を主に備えている。
【0043】
<下板部の構成>
下板部51は、矩形の金属製平板部材の外周部をL字状に折曲加工して稜線で補強してなる底板部材であり、前後左右の端部に配置された支柱フレーム52の下端部にネジ止めさている。この下板部51は、下面51aの四隅にキャスタ58が配置され、上面51bに前記ボイラ4、燃料タンクT、バッテリB及び仕切板59が載設されている。
【0044】
<支柱フレームの構成>
支柱フレーム52は、上下方向へ向けて延設された四本の支柱であり、例えば、断面L字状の山形鋼(アングル材)からなる。支柱フレーム52は、下端部が下板部51の四隅に設置され、上端部が四角形の枠部53の四隅に設置されている。枠部53の外周部及び四つの支柱フレーム52の前後左右の上部外側には、放熱孔55a,56aが多数形成された側板55,55,56,56がそれぞれ設けられている。
【0045】
<枠部の構成>
図2に示すように、枠部53は、ワゴン5において、上部左側に配置されて前後方向に延設された左フレーム53aと、上部右側に配置されて前後方向に延設された右フレーム53bと、上部後側に配置されて左右方向に延設された後側フレーム53cと、上部前側に配置されて左右方向に延設された前側プレート53dと、を四角形の枠状に連設してなる。
枠部53の内周面には、移動時に、前記蝶番8を中心として枠部53の内側まで回動したリンク部材54が載置される支持板57(図3及び図6参照)が設けられている。枠部53には、枠部53に対して回動自在に配置され、バッテリBに電力を供給して充電を行う太陽光パネル1が、ヒンジ7、リンク部材54及び蝶番8を介して設けられている。
太陽光パネル1は、使用時または使用しないときに、その太陽光パネル1が枠部53よりも高い位置に配置され、移動時に、ワゴン5内に収納可能に配置される。
【0046】
図3に示すように、収納空間5aは、太陽光パネル1をワゴン5内に収納するための空間である。そのワゴン5内には、燃料タンクT及びバッテリBの後方部位の下板部51からこの下板部51の上方に亘って、太陽光パネル1を縦に向けて収納する収納空間5aが形成されている。
【0047】
<リンク部材の構成>
リンク部材54は、太陽光パネル1の使用時に、太陽光パネル1を傾斜した状態に支持して、太陽光パネル1を使用しない移動時に、太陽光パネル1をワゴン5内に収納した状態に支持する部材である。リンク部材54は、太陽光パネル1の一端部側の幅方向の両端部に連結された一対のアーム54a,54bと、一対のアーム54a,54b間に介在されたカバー部材54cと、を備えている。リンク部材54は、アーム54a,54aの下端部に蝶番8,8を介して左フレーム53a及び右フレーム53bに回動可能に連結し、アーム54a,54aの上端部にヒンジ7,7を介在して太陽光パネル1の基端部1aに連結して、蝶番8を中心として前後方向に回動する。
【0048】
つまり、図2に示すように、リンク部材54は、太陽光パネル1の使用時に、枠部53の一端部側寄りの位置から上方に向けて回動させて引き上げた状態に配置され、太陽光パネル1を傾斜状態にワゴン5の上部に配置する。
また、図3に二点差線で示すように、リンク部材54は、移動時に、枠部53の一端部側寄りの位置から後方向に向けて水平な状態に回動させて枠部53内に収納状態にすると共に、太陽光パネル1をリンク部材54の先端部のヒンジ7を中心に回動させて真下に向かって垂下した状態でワゴン5内に格納される。
【0049】
<側板及び支持板の構成>
図2に示すように、側板55,56は、ボイラ4の排気口4aから排出された排気ガスの熱や、ボイラ4から放射された熱によってワゴン5の上部が高温になるのを防止するための多数の放熱孔55a,56aを有し、その熱で太陽光パネル1が加熱されるのを抑えている。
図3及び図6に示すように、支持板57の下部には、太陽光パネル1で生成された電流によってバッテリBの充電を制御する充電コントローラ2が、側板56に沿って配置されている。
【0050】
<キャスタ及び仕切板の構成>
図2に示すように、キャスタ58は、市販製品からなり、例えば、左右前側のキャスタ58等に回転防止用のストッパ(図示省略)を設けても構わない。
仕切板59は、燃料タンクTの周囲を覆う保護カバーであり、燃料タンクTとバッテリBとの間と、燃料タンクTの後側とに配置された平面視してL字状の平板部材からなる。
【0051】
≪ヒンジ及び蝶番の構成≫
図3及び図4に示すように、ヒンジ7は、太陽光パネル1の基端部1aをリンク部材54のアーム54a,54bに回動自在に連結するための連結部材であり、例えば、アーム54a,54bに設けられた凸部7aと、太陽光パネル1の基端部1aの下面に設けられ、前記凸部7aが軸合する軸孔を有する枢支部材7bと、からなる。
図2〜図5に示すように、蝶番8は、リンク部材54のアーム54a,54bの基端部と、枠部53の前側プレート53dの左右後端部と、を回動自在に連結する部材であり、例えば、一般に市販されている市販品からなる。
【0052】
≪ロック機構の構成≫
図3に示すように、ロック機構9は、太陽光パネル1をワゴン5の上部に斜めに配置した状態をロックするための装置であり、太陽光パネル1の先端部1bに設けられ、係合孔91aを有するストッパ91と、枠部53の先端側に設置され、係合孔91aにプランジャ92aを係合させてロックするロック装置92と、を備えて構成されている。
【0053】
ストッパ91は、例えば、太陽光パネル1の先端部1bの左右端部下面にそれぞれ設けられた板状部材からなり、太陽光パネル1の幅方向に向けて穿設された係止孔91aが形成されている。
図5に示すように、ロック装置92は、係止孔91a(図3参照)に係合・離脱するプランジャ92aと、プランジャ92aの先端部を係合孔91aに内嵌させてロック状態に維持させるためのプッシュロック式のロック用ノブ92bと、ロック状態のプランジャ92aを元のアンロック状態に自動戻りさせるためのスプリング(図示省略)と、プランジャ92aのロック状態を解除させるロック解除用の解除ノブ92cと、を有している。
【0054】
≪移動式給湯装置の動作≫
次に、図1〜図8を参照しながら移動式給湯装置Aの動作について説明する。
<移動させる場合>
移動式給湯装置Aを屋外等の適宜な場所へ移動させるときには、図3で二点差線で示すように、リンク部材54を枠部53内に内嵌させるように収納すると共に、リンク部材54の先端部1bに連結された太陽光パネル1をワゴン5内の収納空間5aに、リンク部材54から真下に向かって垂下した状態に収納させてから移動させる。
【0055】
移動式給湯装置Aは、このように太陽光パネル1及びリンク部材54をワゴン5内に収納することにより、移動式給湯装置A全体の高さを低くしてコンパクトにすることができると共に、太陽光パネル1を外部の物と接触して損傷しない状態に格納することができる。このため、移動式給湯装置Aは、ワゴン5を押して安定した状態で容易に移動させることができると共に、車両の荷台等にも容易に積載することができるので、搬送性や保管性に優れている。その結果、移動式給湯装置Aは、キャンプ場や海水浴場や災害現場や電源施設のない場所等へ容易に運ぶことができる。
【0056】
<昼間使用する場合>
移動式給湯装置Aは、昼間、被災地等の電源のない屋外で移動式給湯装置Aを使用する場合、図2〜図4に示すように、リンク部材54を蝶番8を中心として上方向へ回動させて、太陽光パネル1を収納空間5aから引き上げる。次に、太陽光パネル1の先端のロック機構9の係止孔91aに、ロック用ノブ92bを押圧操作してプランジャ92aを係合させ、太陽光パネル1及びリンク部材54を側面視して三角形を形成する状態にして、その状態を保持する。そして、受光面1cが太陽と対向するようにワゴン5を移動させる。
【0057】
給水口41に、不図示のホースを介して水道管を接続する。出湯口46に、不図示のホースを介してシャワー等と接続する。そして、リモコン61を操作して電源をONすることにより、太陽光パネル1によって発電され、電流がバッテリBに流れてバッテリBが充電される。このため、バッテリBは、バッテリ切れが防止されて、長時間に亘って連続して使用することが可能となる。
【0058】
そして、リモコン61の点火スイッチを操作すると、ポンプPが燃料タンクT内の燃料を吸引してバーナ部44に送ると共に、点火トランス45によってバッテリBから電圧が高電圧に変換されてバーナ部44を点火される。
バーナ部44の燃焼による燃焼熱と被加熱水(水道水)とが熱交換器42で熱交換されて加熱される。リモコン61を操作してシャワーから放出される湯水の温度を設定し、シャワーの栓(図示省略)を解放することによって、設定された温度の湯水がシャワーから放出される。
【0059】
<夜間使用する場合>
夜間や暗い場所で移動式給湯装置Aを使用する場合、昼間充電したバッテリBからの電流を使用してボイラ4内のある送風機F等の電気を使用する電装品に電力を供給して給湯を行うことによって、長時間に亘って移動式給湯装置Aを使用することができる。
【0060】
本発明の移動式給湯装置Aは、このように、電源設備のないところであっても、電源を気にせずに、どこでも使用することができるため、特に、キャンプ場や海水浴場や災害現場や電源施設のない場所での給湯設備として有効的に使用することができる。
【0061】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0062】
前記実施形態では、ボイラ4の一例として灯油を燃料とする移動式給湯装置Aを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、ボイラ4の形式は特に限定されない(図2参照)。ボイラ4は、例えば、灯油以外の重油、軽油、ガソリンあるいはガス等を燃料とするものであっても構わない。その場合、燃料に合わせてボイラ4の構造を適合させればよい。
【0063】
また、太陽光パネル1の基端部1aと、ワゴン5の枠部53との間に介在したリンク部材54は、側面視して、一本のアーム54a,54bからなるリンク機構を形成したものを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない(図2参照)。リンク部材54は、側面視して複数のアーム54a,54bで形成したものであっても構わない。
【0064】
また、前記実施形態では、図2及び図3に示すように、リンク部材54の一例として、左右一対のアーム54a,54bの長さが固定されたものを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、リンク部材54は、アーム54a,54bを伸縮可能な部材で形成して長さを可変できるようにして、太陽光パネル1の傾斜角度θを太陽の位置に合わせて調整できるようにしても構わない。
このようにアーム54a,54bを形成すれば、アーム54a,54bを伸ばせば太陽光パネル1の傾斜角度θを大きくすることができると共に、アーム54a,54bを縮めれば太陽光パネル1の傾斜角度θを小さくすることができるため、太陽光の集光効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 太陽光パネル
1a 一端部
1b 他端部
1c 受光面
2 コントローラ
4 ボイラ
4a 排気口
5 ワゴン
5a 収納空間
7 ヒンジ
8 蝶番
9 ロック機構
51 下板部
51a 下面
51b 上面
52 支柱フレーム
53 枠部
54 リンク部材
54a,54b アーム
54c カバー部材
55,56 側板
55a,56a 放熱孔
57 支持板
58 キャスタ
B バッテリ
P ポンプ
A 移動式給湯装置
T 燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させて得られる燃焼熱を被加熱水と熱交換して湯水に換えるボイラと、
前記燃料を貯溜する燃料タンクと、
前記ボイラに内設されたポンプを駆動させるバッテリと、
前記ボイラ、前記燃料タンク及び前記バッテリを搭載したワゴンと、を備えた移動可能な移動式給湯装置であって、
前記ワゴンは、前記ボイラ、前記燃料タンク及び前記バッテリを載設した下板部と、
前記下板部に立設された支柱フレームと、を備え、
前記支柱フレームの上部には、使用時に、当該支柱フレームよりも高い位置に配置され、移動時に、前記ワゴン内に収納可能に配置され、前記バッテリに電力を供給して充電を行う太陽光パネルが設けられていることを特徴とする移動式給湯装置。
【請求項2】
前記太陽光パネルは、一端部が、ヒンジ及びリンク部材を介在して、前記支柱フレームの上部に設けられた枠部の一端部側寄りの位置に回動自在に設けられ、
他端部が、当該太陽光パネルを前記枠部の他端部側に、ロック機構を介在して保持されることを特徴とする請求項1に記載の移動式給湯装置。
【請求項3】
前記太陽光パネルは、使用時に、太陽光を受ける受光面が、前記一端部から前記他端部に亘って斜め下側に向けて傾斜して配置され、
前記リンク部材は、前記太陽光パネルの一端部側の幅方向の両端部に連結された一対のアームと、
前記一対のアーム間に介在されたカバー部材と、を備えると共に、
前記太陽光パネルの使用時に、前記枠部の一端部側寄りの位置から上方に向けて回動した状態に配置され、
前記ボイラは、排気ガスを排出する排気口を一端部方向にして前記下板部上の一端部側寄りの位置に載設されていることを特徴とする請求項2に記載の移動式給湯装置。
【請求項4】
前記枠部の外周部及び前記四つの支柱フレームの上部外側には、放熱孔が多数形成された側板がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の移動式給湯装置。
【請求項5】
前記側板の内周面には、前記太陽光パネルで生成された電流によって前記バッテリを充電する制御を行う充電コントローラが配置され、
前記充電コントローラは、一方が前記太陽光パネルに接続され、他方が前記バッテリに接続されていることを特徴とする請求項4に記載の移動式給湯装置。
【請求項6】
前記ワゴン内には、前記燃料タンク及び前記バッテリの後方部位の前記下板部からこの下板部の上方に亘って前記太陽光パネルを収納するための収納空間が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の移動式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−184887(P2012−184887A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48666(P2011−48666)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(592093899)長府工産株式会社 (3)
【Fターム(参考)】