説明

移動支援装置

【課題】高齢者など、筋力が弱いために立ち上がり動作が難しい人や、立ち上がることができても、歩行時に転倒する危険性の高い人が、自分の力で自分を吊り上げて立ち上がり、歩行することを可能とする移動支援装置を得ることを目的とする。
【解決手段】吊り上げ動作時にロープを引く手の力を抜いても体がずり落ちることを防止することのできる逆入力防止手段と、下降動作時にロープを引く手に少しの力を加えておくだけで、ロープに手で加えた把持力の大きさに従って増減する摩擦力が発生し、急激な落下を防止することのできる摩擦力発生手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者など、筋力が弱いために立ち上がり動作が難しい人や、立ち上がることができても、歩行時に転倒する危険性の高い人が、自分の力で自分を吊り上げて立ち上がり、安全に歩行することを可能とする移動支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高齢者など、筋力が弱く、自力で立ち上がることが困難な人を移動させたり、車いす等に移乗させたりするための装置としては、特開2000−245785号広報や、特開2001−327554号広報に記載されたものが有る。これらの装置は、主に介護者が自力ではほとんど動くことのできない被介護者を移動させるために使用するものであり、電動のホイスト機構で被介護者を吊り上げて移動させるしくみになっている。
【0003】
自分の力だけでは立ち上がることが困難な使用者が自力で立ち上がることを支援する装置としては、特開2001−025492号広報に記載されたものが有る。この発明によれば、使用者は、自分の装着したスリングに結びつけられたロープを、装置の上部に固定された滑車を介して自分の手で引っ張ることにより、体重の半分の引っ張り力で自らを吊り上げることが可能であり、また、滑車に組み込まれたラチェット機構により、吊り上げ動作の途中でロープから手を離し、休むことも可能になっている。
【0004】
重い荷物を安全に下降させるための昇降装置としては、特開2009−137726号公報に記載されたものがある。この発明によれば、荷物を吊り下げたロープを、下降方向には回転しないラチェット機構を備えたキャプスタンに数回巻き付けておき、ロープの、キャプスタンに対して荷物と反対側の持ち手側を把持しておくことにより、ロープとキャプスタンの間に、把持力の大きさに応じた摩擦力を発生させ、この摩擦力で荷物の荷重の大半を支えることにより、弱い把持力で重い荷物を安全に下降させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−245785号広報
【特許文献2】特開2001−327554号広報
【特許文献3】特開2001−025492号広報
【特許文献4】特開2009−137726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1および特許文献2の発明は、介護者による使用を前提としているため、電動ホイスト機構が備えられていたり、また、電動機または介護者の力を被介護者を吊り上げる部分に伝達するための機構を頑丈に作る必要が有ったりするために、一般に、筋力の弱い使用者が自分で取り回すには重すぎるものであり、不使用時の収納や車での運搬も容易ではないものである。また、頑丈な構造が必要であるため、当然高価になるという課題が有った。
【0007】
上記特許文献3の発明は、自力では立ち上がることが困難な使用者が、自分自身の力で立ち上がることを可能にするものであり、構造が簡単で軽く、安価に製造できるものである。また、ラチェット機構により吊り上げ動作の途中でロープから手を放し、休むことも可能な設計である。しかし、この文献の図13に記載されたラチェットの構造では、手放し時に、ラチェットによって滑車の回転を止めることは可能であるが、ロープが滑車上で滑るのを防止するためには、ロープを滑車に押さえつける押さえ車に非常に大きな押さえ力を加える必要があるため、実際には頑丈で重たく、高価な機構になってしまうという課題が有った。
【0008】
また、この発明では、ラチェット機構をON・OFFさせる機能を備えているが、吊り上げ、または下降動作中に片手を放してON・OFFスイッチを操作することは困難であるし、仮に可能だとしても、ラチェット機構をOFFしたとたんに急に落下が始まるので危険である。したがって、下降動作中は常にOFFにしておく必要があるため、体重の半分は常にロープを引く手で支え続けておく必要があった。
【0009】
また、吊り上げ動作中、あるいは下降動作中には装置が転倒しやすくなるため、広い支持基底面が必要であるが、支持基底面を広くすると移動させるときにはじゃまになるので移動用には適さず、固定された場所での使用を前提とした装置になってしまうという課題があった。
【0010】
上記特許文献4の発明では、ロープには、ロープをキャプスタンに押しつける力に摩擦係数を乗じた摩擦力が働くだけなので、持ち手側の力をゼロにすると、ロープをキャプスタンに押しつける力もゼロになり、摩擦力は全く働かなくなる。したがって、持ち手側のロープ自体が重くて自然に持ち手側の引っ張り力となる場合を除いて、原理的に荷重の全てを摩擦力で支えることはできない。このため、完全な手放しにすると、荷物が落ちてしまうという課題があった。
【0011】
本発明は、特許文献3で想定するよりもさらに筋力の弱い使用者も対象とし、手の力が非常に弱い使用者でも安全に自分自身を吊り上げたり下降動作を行ったりすることのできる移動支援装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による移動支援装置は、吊り上げ動作時にロープを引く手の力を抜いても体がずり落ちることを防止することのできる逆入力防止手段と、下降動作時にロープを引く手に少しの力を加えておくだけで、ロープに手で加えた把持力の大きさに従って増減する摩擦力が発生し、急激な落下を防止することのできる摩擦力発生手段を備えることを最も大きな特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の移動支援装置を用いると、筋力が弱り、器具無しでは自力で立ち上がることが困難な使用者でも自分自身の力で立ち上がり、トイレ等、最小限の自分の世話は自分でできるようになる。これにより、介護者の負担を大きく軽減し、被介護者の尊厳を保つことができるだけでなく、被介護者の自助努力を促し、寝たきりになるのを防ぐ効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は移動支援装置の、下降動作状態における機構部内部を示す側面図である。(実施例1)
【図2】図2は移動支援装置の下降動作状態を示す側面図である。(実施例1)
【図3】図は移動支援装置の、歩行動作状態における機構部内部を示す側面図である。(実施例1)
【図4】図4は移動支援装置の歩行動作状態を示す側面図である。(実施例1)
【図5】図5は移動支援装置の歩行動作状態を示す側面図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0015】
簡単な構造で、極めて筋力の弱い使用者でも自力で立ち上がり、移動することを可能とする移動支援装置を実現した。
【実施例1】
【0016】
図2は、本発明の実施例1の移動支援装置を用いて、使用者が立位からベッド2への下降動作を行っている状態を示す側面図、図1は、図2の状態における、機構部30の内部を拡大して示す側面図である。図2において、55は使用者1をサポートするスリング、56はスリングの座部、54は使用者の左右から上方に伸びるスリング55の上端をひっかけるために、肩幅程度の幅を持ったハンガー、53はハンガー54の上部に固定された、2個のシーブを備えたダブルブロック、51は使用者を吊り上げるためのロープ、30はロープの動きを制御する機構部、21は機構部30を保持する角管状のアームである。
【0017】
10は、それぞれ2本の円管状の支柱12と角管状のベース11からなる概3角形の左右のサブモジュールを、梁部材を用いて相互に連結することによって構成されたフレームであり、運搬時や不使用時には簡単にサブモジュール単位に分解できるようになっている。
【0018】
使用時には、左右のサブモジュールは、左右のベース11を上から見るとハの字型に、後方がやや広がった配置になるように組み立てられている。
【0019】
22は、アーム21をフレーム10に回動可能かつ取り外し可能に接続するアーム接続部、24はアーム21の先端をフレーム10と接続し、アーム21が使用者に引っ張られて回転するのを防止するためのコードである。コード24の長さを調整することにより、機構部30の位置を調整することができる。
【0020】
13aは左右のベース11の前方にそれぞれ備えられた、進行方向が自在に変わる前輪、13bは左右のベースの後方にそれぞれ備えられた、進行方向が前方向に固定された後輪、14は歩行時に手でつかむためのハンドル、15はベッドその他に柔らかく接触するための、スポンジ等でできた緩衝器である。
【0021】
図1において、52はロープ51の一端を機構部30に固定する固定部であり、ロープ51は、固定部52からブレーキ力を発生するシーブ71,ダブルブロック53の第1のシーブ53aを通り、機構部の第1のシーブ31aを通り、さらにダブルブロック53の第1のシーブ53aの向こう側に備えられた第2のシーブ53bを通り、機構部の第1のシーブ31aの向こう側に備えられた第2のシーブ31bを通り、摩擦車39を1回転と1/4回または2回転と1/4回巻いた後に下に垂らされ、持ち手側を使用者の手に把持されている。このダブルブロックの作用により、使用者がロープを引く力の4倍の力でハンガー54を吊り上げることができる。
【0022】
摩擦車39はワンウェイクラッチ40を介して機構部30に固定された軸に設置されており、図において左回転方向には自由に回転するが、右回転方向には回転しないようになっている。この状態では、使用者はロープ51を引く手の力を緩めながら下降しているので、摩擦車には右方向に回そうとする力が働くため、摩擦車の動きはロックされている。したがって、ロープ51と摩擦車39の間には、使用者がロープを引く力に応じた摩擦力が発生し、荷重の多くを摩擦力で受けることができるため、使用者はわずかな力でロープを引いておくだけで自分を吊り上げておくことが可能であると同時に、手の力を弱めれば摩擦力も同時に弱まるため、思い通りの速度で安全に下降することができる。ワンウェイクラッチはラチェットよりも動作がなめらかで遊びも小さいので使用感が良い。
【0023】
32は軸33で回動可能に機構部30に固定されたカム、34はカム32をロープに押しつける方向の引っ張り力を発生するバネ、35はカムの反対側を引っ張るための紐、36は紐35の途中に固定された小球状のストッパ、37と38は、機構部30の底面に開けられた、ストッパよりも小さい小穴とストッパよりも大きい大穴であり、ひょうたん型に連結している。この状態ではストッパ36は小穴37に引っかけられており、紐35を引っ張っているので、カム32はバネ34の引っ張り力に抗してロープ51から引き離されている。
【0024】
72はシーブ71を支持するスライダ、73はスライダ72をスライド可能に支持するスライドベース、74は、インナーケーブルがスライダ72に接続され、アウターケーブルがスライドベース73に固定されたブレーキケーブルであり、角管状のアーム21の内部を通り、アーム内部で2本に分割され、それぞれ左右の角管状のベース11の内部を通り、左右の後輪13bにそれぞれ備えられたブレーキ機構75に導かれている。
【0025】
図1の状態では、ロープ51に張力がかかっているのでスライダ72およびそれに接続されたブレーキケーブル74のインナーケーブルが引かれており、ブレーキ機構75によって左右の後輪にはブレーキがかかっている。
【0026】
61は、左右のベース11にそれぞれ2本の、両端が回動可能な足リンク62で接続された角管状の延長足であり、前後の下面にゴム製の滑り止めが設けられている。図2は延長足61を後方に延ばした状態である。延長足の、後輪13bが当たる部分の上面には、後輪に当たらないように穴が開けられており、後輪13bは延長足61の角管の底面を踏んでいる。
【0027】
63は左右の延長足61の前部に回動可能に固定された、延長足の出し入れ操作をするための取手、64は取手63が前方に倒れるのを防止するようにフレーム10の上部から吊している伸縮可能なショックコードである。
【0028】
左右のベース11は、ハの字型に後方が広がっているので、延長足61を延ばした状態では、延長足の後端はベース11の後端よりもさらに左右に広がっており、支持基底面を後方だけではなく左右方向にも拡大させている。
【0029】
下降動作時には、移動支援装置が後方に引っ張られて倒れやすくなるが、足リンク62で接続された左右の延長足61を後輪13bで踏む構造により、簡単な構造で支持基底面を拡大させ、移動支援装置を安定させることができる。
【0030】
なお、足リンク62は、後方のものが前方のものよりやや長目になっており、延長足を延ばした状態では、延長足の後端により大きな荷重がかかるようになっている。
【0031】
図4は、本発明の実施例1の移動支援装置を用いている使用者が歩行中に立ち止まった状態を示す側面図、図3は、図4の状態における、機構部30の内部を拡大して示す側面図である。歩行時には延長足61はじゃまになるので、取手63を操作してベース11の下に収納されている。収納状態では、延長足61は取手63に接続されたショックコード64に引っ張られてベース11の下面に密着している。ロープ51と紐35もじゃまなのでクリート23に巻き付けられている。
【0032】
使用者は、ハンドル14につかまりながら自力で立っているので、スリング55には体重がかかっていない。図3において、ロープ51には張力がかかっていないので、ブレーキ機構75に備えられたバネによってブレーキケーブル74のインナーケーブルがブレーキ機構側に引かれ、スライダ72はスライドベース73に引き込まれている。この状態ではブレーキがかかっていない状態になっており、使用者がバランスを崩すなどしてスリングに体重がかかると自動的にブレーキがかかって転倒を防止する仕組みになっている。
【0033】
歩行中はストッパ36は小穴37から外されて、大穴38を通って機構部30の中に引き込まれている。このため、カム32はバネ34に引かれて軸33を軸として回転し、ロープ51に押しつけられている。したがって、公知のカムクリートと同様に、この状態で使用者がスリングに体重をかけても、カム32がさらにロープ51に食い込む方向に動いて強くロックされるので、スリングが下降することはない。
【0034】
ストッパ36が小穴37から外されている状態でロープ51の持ち手側をクリート23から外して引っ張ると、摩擦車39に備えられたワンウェイクラッチ40はフリーに回る方向なので、摩擦車39は抵抗にならない。また、カム32も押しつけ力が弱まる方向に動かされるので、ほとんど抵抗にならず、ロープを引っ張る手の力は無駄なく使用者を吊り上げることに使われる。
【0035】
また、吊り上げ動作の途中で使用者が完全にロープを引く手を放して休憩しても、カム32がロープ51に食い込む方向に動くため、使用者が降下してしまうことは無い。
【0036】
さらに、吊り上げ動作の途中で降下したくなった場合にも、ロープ51を片手で引いた状態でもう一方の手で紐35を操作してストッパ36を小穴37に引っかければ、摩擦車39の働きにより荷重の多くを摩擦で受けてくれるので、急激に落下が始まることがなく、なめらかに下降動作に移行することができる。
【0037】
上記実施例では、ダブルブロックを使って手の力を4倍に増幅したが、さらに力の弱い使用者の場合にはトリプルブロックを使ってもよく、また、手の力が強い使用者の場合はシングルブロックを使ったり、ブロックによる力の増幅を行わず、ロープ51を摩擦車39を巻回した後に直接ハンガー54に接続しても良い。力の増幅倍率を下げるに従ってロープの持ち手側の引き量に対する荷重側の吊り上げ量の比が大きくなり、速く吊り上げることができるようになる。
【0038】
また、上記実施例では、簡易的なスリングを用い、歩行中はスリングに体重をかけないようにしたが、さらに力の無い使用者の場合には、体を支える機能の高いスリングを用い、スリングに体重がかかるとブレーキが作動する機構を外すことにより、歩行中にも常時スリングに体重をかけておけるようにしても良い。この場合は、スリング荷重によるブレーキの代わりに、自転車のブレーキレバーと同様な手動のブレーキレバーを設けても良い。このようにすれば、かなり力の衰えた使用者でも自立して基本的な生活を送ることができるようになる。
【0039】
また、上記実施例では使用者が自分で操作する例を示したが、介護者が被介護者を移動させるために用いても良い。介護者が被介護者を吊り上げる場合には、介護者が片手でロープ51を持ち替えながら引っ張っても、カム32の働きにより、ロープから手を放したときに被介護者が落下することがないので、介護者はもう片方の手で被介護者を支えておくことができ、被介護者の安心感を高めることができる。
【0040】
介護者が操作することを前提とする場合は、ハンドル14をさらに後方に延ばし、介護者が持ちやすいようにしてもよい。また、フレーム10に足置きを備え、移動中には被介護者の足を足置きの上に載せるようにしても良い。
【0041】
図2において、介護者が重度の被介護者をベッドに寝かせようとする場合、被介護者の腰をベッドまで降下させた後に、さらに上体がベッドに横たわるまでスリングを降下させる必要がある。このとき、装置全体がスリングにより図の右方向に引っ張られて転倒しやすくなるが、被介護者の足をフレーム前方に備えられた足置きの上に載せておけば、スリングと反対方向の回転モーメントを発生する重りとなり、転倒を防止する役目も果たす。
【0042】
また、上記実施例では動力は用いなかったが、ロープ51の持ち手側を動力付きのウインチで引っ張るようにしても良い。その場合でも、カム32や摩擦車39の働きにより、ウインチの負担を大きく減ずることが可能であり、ウインチを小型軽量のものですませることができる。
【0043】
また、上記実施例では人の移動を支援する例を示したが、荷物を運ぶために用いても良い。
【実施例2】
【0044】
実施例1では、概3角形の左右のサブモジュールを、梁部材を用いて相互に連結することによってフレームを構成したが、カメラ用の3脚と同様にワンタッチでたためるようにしても良い。しかし、カメラ用の3脚を大型化しただけでは移動用には適さないため、歩行のじゃまにならないように内側が広く、かつ、狭い場所も通れるように外形の前後左右の幅がコンパクトなものでなければならない。
【0045】
図5において、81はセンターポール、82はセンターポールを支持するボス、12は、ヒンジ85によってボスに回動可能に接続され、斜め左右前方と斜め左右後方の4方に広がる円管状の支柱、13aと13bは、上部の突起を支柱の円管内に挿入して固定するタイプの前輪と後輪、83はセンターポール81に沿ってスライドさせることのできるスライダ、84は各支柱とスライダ83を接続する、両端の接続部で回動可能な4本のステーである。
【0046】
支柱12は、使用者の脚のじゃまにならないようにボスの付け根から外側に大きく拡げておく必要がある。しかし、日本のトイレのドアの幅は60Cm程度であることが多いので、装置全体の幅がそれ以下に収まるように、支柱12は途中で内側に折れ曲がった形状にしてある。また、センターポールを含むフレームの上部を、鉛直線に対して上方が使用者から遠ざかる方向に傾けることにより、使用者に近い側のステー84を歩行のじゃまにならない位置まで上げることができた。
【0047】
収納時や運搬時には、カメラ用の3脚と同様に、スライダ83をセンターポールに沿って引き上げることによってワンタッチで4本の支柱を内側に縮めることができる。センターポールを傾けた構造によって、後方の支柱の方が前方の支柱よりも長くなっており、縮めたときには車輪13aと13bが段違いの位置になって干渉しないため、よりコンパクトに収納することができる。
【0048】
実施例2では、左右の延長足61は、それぞれ前後の下面にゴム製の滑り止めが設けられた底面と左右の側壁からなる、断面がコの字型の形状をしており、1本の足リンク62で後方の支柱12に接続されている。図5は収納状態であり、延長足は取手63に接続されたショックコード64に引っ張られて後方の支柱12の後方に密着している。
【0049】
使用時には取手63を操作して足リンクを回転させ、足リンク62と延長足61の接続部が後輪13bより前方に来るように動かし、実施例1と同じく、後輪13bで延長足61の底面を踏むようにする。また、実施例1と同じく、左右の延長足61は後方やや斜め外向きに開くように配置されており、支持基底面を後方および左右方向に拡大させ、移動支援装置を安定させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
筋力が弱り、器具無しでは自力で立ち上がることが困難な使用者を支援可能であるとともに、荷物その他を安全に運搬することにも利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 フレーム
11 ベース
12 支柱
13a 前輪
13b 後輪
14 ハンドル
15 緩衝器
21 アーム
22 アーム接続部
23 クリート
24 コード
30 機構部
31 シーブ
32 カム
33 軸
34 バネ
35 紐
36 ストッパ
37 小穴
38 大穴
39 摩擦車
40 ワンウェイクラッチ
51 ロープ
52 固定部
53 ブロック
54 ハンガー
55 スリング
56 座部
61 延長足
62 足リンク
63 取手
64 ショックコード
71 シーブ
72 スライダ
73 スライドベース
74 ブレーキケーブル
75 ブレーキ機構
81 センターポール
82 ボス
83 スライダ
84 ステー
85 ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機構部と、機構部に通されたロープを備え、ロープの、人や荷物の荷重が加わる側を荷重側、人や駆動装置が力を加える側を持ち手側とするとき、機構部に、ロープを荷重側に繰り出すときには働かせず、荷重側のロープを引き込むときには、持ち手側から引っ張れば荷重側のロープを引き込むことができるが、持ち手側の力をゼロにしても荷重側からの力によってロープが荷重側に引き出されることのない逆入力防止手段と、荷重側のロープを引き込むときには働かず、ロープを荷重側に繰り出すときにのみロープに対して持ち手側から入力した力に比例した摩擦力を発生する摩擦力発生手段を備えたことを特徴とする移動支援装置。
【請求項2】
摩擦力発生手段として、ロープが巻回される摩擦車を備え、摩擦車は、荷重側のロープを引き込む方向に回されるときにはフリーに動き、ロープを荷重側に繰り出す方向に回されるときにはロックされて動かないワンウェイクラッチを備えたことを特徴とする請求項1に記載の移動支援装置。
【請求項3】
機構部を吊り上げる高さよりも高い位置に支えるフレームと、ロープの荷重側に接続された、人を吊り上げるための吊り具とを備え、筋力の弱った使用者がロープの持ち手側を引っ張ることにより自分自身を吊り上げ、ベッドや車椅子から立ち上がったり、ベッドや車椅子に安全に降下することができるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の移動支援装置。
【請求項4】
車輪を備えたフレームと、吊り上げ動作時、および降下動作時に一時的にフレームの支持基底面を拡大させてフレームの転倒を防止するための、収納可能な延長足と、使用者が立位のまま延長足を出し入れ可能な取手とを備え、使用時には延長足を車輪で踏みつけることによって固定するリンク構造を備えたことを特徴とする請求項3に記載の移動支援装置。
【請求項5】
ロープに荷重がかかると、その力によって車輪にブレーキがかかるブレーキ機構を備えたことを特徴とする請求項3に記載の移動支援装置。
【請求項6】
鉛直線に対し、上方が使用者から遠ざかる方向に傾いたセンターポールと、センターポールを支持するボスと、ボスを中心に、一般的なカメラ用の3脚と同様に回動可能に固定された、3本または4本の支柱と、センターポールに沿ってスライドさせることのできるスライダと、スライダと各支柱を接続するステーを備え、使用時には支柱がボス付け根から外側に大きく拡がっているが、途中で内側に折れ曲がることにより、装置全体の幅が広くなりすぎない形状になっており、収納時にはカメラ用の3脚と同様に支柱を縮めることができるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の移動支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−170563(P2012−170563A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34057(P2011−34057)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(707002802)