説明

移動用変圧器装置

【課題】取替を行う柱上変圧器の高圧側配電線が単相の場合、結線されていないケーブルの養生や取り外しといった作業を不要とすることができ、柱上変圧器の取替作業を安全かつ迅速に行うことが出来る移動用変圧器装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、三相高圧開閉器と、変圧器と、2つの低圧遮断器がそれぞれ直列に接続された回路を有する移動用変圧器装置本体を備え、前記移動用変圧器装置本体が車両の荷台に搭載された移動用変圧器装置において、前記三相高圧開閉器と前記変圧器とが接続されるw相に単相高圧開閉器を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の変圧器の交換,修理等の工事にあたり、無停電で工事を行なう場合に使用する移動用変圧器に係り、特に、柱上設置型変圧器の無停電工事に使用する移動用変圧器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータをはじめとする各種電子機器および家庭内における電子化された高性能な電化製品の普及に伴い、今日社会生活において電気に対する依存度は非常に高いものとなっており、工事停電や故障停電のみならず、一瞬の停電も許されない状況となっている。このような状況の中で、最近では、工事停電を避けるため、例えば、柱上変圧器の取替とか配電線の補修工事に際しては、移動用変圧器装置等を駆使して、需要家に対して無停電で電力供給を行いながら機器の交換や補修作業を可能とした、いわゆる無停電工法が採用されるようになった。
【0003】
無停電工法に使用する移動変圧器装置としては、高圧側遮断器の投入前に、制御装置を動作状態にして、低圧側ケーブル及び接地ケーブルの欠相及び接地ミスや、高圧側遮断器及び低圧側遮断器の投入状態を検出できることが開示されている。(特許文献1参照)
【0004】
図4を用いて従来技術について説明する。低圧側配電線に接続される低圧負荷の結線方式に応じて結線方式が選択され、低圧遮断器A8または低圧遮断器B9が投入される。単相が選択された場合には低圧遮断器A8が投入され、三相が選択された場合には低圧遮断器B9が投入される。
【0005】
高圧側配電線と低圧側配電線のそれぞれのケーブルが既設の変圧器(図示せず)に接続され、三相高圧開閉器5が投入される。
【0006】
監視制御ユニットによって検相が開始される。検相結果が正常であった場合、並行運転良が表示される。検相結果が異常であった場合は並行運転不可が表示され、作業者によって低圧側配電線の変更作業が行われた後に再度検相が実施される。
【0007】
低圧側配電線に接続される低圧負荷の結線方式に応じて、低圧遮断器C10または低圧遮断器D11が投入される。単相が選択された場合には低圧遮断器C10が投入され、三相が選択された場合には低圧遮断器D11が投入される。そして、移動変圧器装置から需要家の設備に電力が供給され、並行運転状態が保たれる。
【0008】
柱上変圧器の2次が切離され、柱上変圧器の取替作業が行われる。取替作業完了後に柱上変圧器の2次が接続され、低圧遮断器C10または低圧遮断器D11が開放される。そして、三相高圧開閉器5が開放された後に、既設の変圧器と接続されていた高圧側配電線と低圧側配電線のそれぞれのケーブルの取り外しが行われた後に、低圧遮断器A8または低圧遮断器B9が開放され作業が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−306795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
取替を行う柱上変圧器の高圧側配電線が単相の場合がある。この場合、従来の移動用変圧器装置では結線されていないケーブル(w相)が存在することになる。しかし、三相高圧開閉器5の投入は三相同時のため、結線されていないケーブルも充電状態となっていた。
【0011】
そのため、結線されていないケーブルの養生や、結線されていないケーブル自体を三相高圧開閉器5から取り外すといった作業が必要となっていた。このような処置を施さない場合、感電や高圧側配電線の停電事故の恐れがあった。
【0012】
そして、柱上変圧器の取替作業を安全かつ迅速に行うために、前述したこれらの作業は煩雑であり、時間を要するといった問題があった。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、高圧側配電線が単相の場合、結線されていないケーブルの養生や取り外しといった作業を不要とする移動用変圧器装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1に記載の移動用変圧器装置は、三相高圧開閉器と、変圧器と、2つの低圧遮断器がそれぞれ直列に接続された回路を有する移動用変圧器装置本体を備え、前記移動用変圧器装置本体が車両の荷台に搭載された移動用変圧器装置において、前記三相高圧開閉器と前記変圧器とが接続されるw相に単相高圧開閉器を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の移動用変圧器装置によれば、高圧側配電線が単相の場合、結線されていないケーブルの養生や取り外しといった作業を不要とすることができ、柱上変圧器の取替作業を安全かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の移動用変圧器装置の側面図である。
【図2】図2は本発明の移動用変圧器装置本体の回路図である。
【図3】図3は本発明の移動用変圧器装置の操作フロー図である。
【図4】図4は従来の移動用変圧器装置本体の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。図1は本発明の移動用変圧器装置1の側面図であり、車両2の荷台3の中央付近に移動用変圧器装置本体4が搭載された状態を示している。移動用変圧器装置本体4には、変圧器,高圧開閉器,低圧遮断器、監視制御ユニット等が収納されている。
【0018】
図2は本発明の移動用変圧器装置本体の回路図である。回路は高圧側配電線と低圧側配電線との間に設けられている。高圧側配電線に三相高圧開閉器5が設けられており、さらに、w相には単相高圧開閉器6が設けられ、変圧器7に接続されている。
【0019】
変圧器7の出力側には低圧遮断器B9が接続されており、この低圧遮断器B9と並列に低圧遮断器A8が接続されている。そして、低圧遮断器B9には低圧遮断器D11が接続されており、この低圧遮断器D11と並列に低圧遮断器C10が接続されている。
【0020】
そして、それぞれ並列に接続された低圧遮断器A8および低圧遮断器B9と、低圧遮断器C10および低圧遮断器D11との間には、ZCT12とCT13が接続されている。CT13の信号線群C1、C2、C3、C4は監視制御ユニット内の変換器ユニットに接続されている。
【0021】
低圧遮断器C10および低圧遮断器D11の入力側の信号線群u、v、w、oと、低圧遮断器C10および低圧遮断器D11の出力側の信号線群u1、v1、w1、o1も監視制御ユニット内の変換器ユニットに接続されている。
【0022】
また、監視制御ユニット内には制御ユニットも設けられており、制御ユニットは検相機能、計測機能、制御機能、表示機能を有しており、制御ユニットに接続されたタッチパネルによって制御が行えるように構成されている。
【0023】
次に、図3の操作フロー図を用いて、操作フローについて説明する。なお、図2の図中にも記載してあるが、図3内の各項目の1重枠は状態および外部作業、二重枠はタッチパネル操作、楕円枠はタッチパネル表示をそれぞれ示している。
【0024】
最初にタッチパネルによって制御電源が入れられる。そして、低圧側配電線に接続される低圧負荷の結線方式に応じて、結線選択1の結線方式が選択され、低圧遮断器A8または低圧遮断器B9が投入される。結線選択1で単相が選択された場合には低圧遮断器A8が投入され、結線選択1で三相が選択された場合には低圧遮断器B9が投入される。
【0025】
そして、作業者によって高圧側配電線と低圧側配電線のそれぞれのケーブルが既設の柱上変圧器(図示せず)に接続される。その後、三相高圧開閉器5が投入される。投入された後にタッチパネルの表示板には準備完了が表示される。
【0026】
そして、タッチパネルの操作ガイダンスにより切替作業内容選択が表示される。低圧側配電線に接続される低圧負荷の結線方式が三相の場合には結線選択2で三相が選択され、そして、単相高圧開閉器6が投入される。
【0027】
そして、検相選択により検相が開始され検相結果が表示される。検相結果が正常であった場合、並行運転良が表示される。検相結果が異常であった場合は並行運転不可が表示され、作業者によって低圧側配電線の変更作業が行われた後に再度検相が実施される。
【0028】
そして、低圧側配電線に接続される低圧負荷の結線方式に応じて、低圧遮断器C10または低圧遮断器D11が投入された後に負荷救済中が表示される。低圧遮断器C10または低圧遮断器D11のどちらが投入されるかは、前述した結線選択2で、3線が選択された場合には低圧遮断器C10が投入され、結線選択2で4線が選択された場合には低圧遮断器D11が投入される。
【0029】
そして、移動変圧器装置から需要家に対して無停電で電力供給が行われ、並行運転状態が保たれる。
【0030】
そして、柱上変圧器の2次が切離され、柱上変圧器の取替作業が行われる。取替作業終了後に柱上変圧器の2次が接続され、低圧遮断器C10または低圧遮断器D11が開放され、かつ結線選択2で三相が選択されていた場合は単相高圧開閉器6が開放される。
【0031】
そして、三相高圧開閉器5が開放され、柱上変圧器と接続されていた高圧側配電線と低圧側配電線のそれぞれのケーブルの取り外しが行われた後に、低圧遮断器A8または低圧遮断器B9が開放され、タッチパネルの制御電源が切られて作業が完了となる。
【符号の説明】
【0032】
1 移動用変圧器装置
2 車両
3 荷台
4 移動用変圧器装置本体
5 三相高圧開閉器
6 単相高圧開閉器
7 変圧器
8 低圧遮断器A
9 低圧遮断器B
10 低圧遮断器C
11 低圧遮断器D
12 ZCT
13 CT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相高圧開閉器と、変圧器と、2つの低圧遮断器がそれぞれ直列に接続された回路を有する移動用変圧器装置本体を備え、前記移動用変圧器装置本体が車両の荷台に搭載された移動用変圧器装置において、前記三相高圧開閉器と前記変圧器とが接続されるw相に単相高圧開閉器を備えたことを特徴とする移動用変圧器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−222977(P2012−222977A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87084(P2011−87084)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 松田 治 刊行物名 電気評論 3月号 巻数 第96巻 号数 第3号(第559号) 発行年月日 2011年3月10日
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【出願人】(000163419)株式会社きんでん (37)
【Fターム(参考)】