移植機の穿孔装置
【課題】 ヒータ性能の低下防止を図った移植機の穿孔装置を提供する。
【解決手段】 畝Rを跨いで走行する走行体3に昇降自在に支持され且つヒータ194によって加熱される金属製のヒータブロック191を備え、このヒータブロック191が下降した際に、畝Rを覆うマルチフィルムに該ヒータブロック191を接触させることで、畝Rに苗を植え付けるための植付用穴をマルチフィルムに形成するようにした移植機の穿孔装置において、ヒータブロック191の放熱を抑制する放熱抑制手段195を設ける。
【解決手段】 畝Rを跨いで走行する走行体3に昇降自在に支持され且つヒータ194によって加熱される金属製のヒータブロック191を備え、このヒータブロック191が下降した際に、畝Rを覆うマルチフィルムに該ヒータブロック191を接触させることで、畝Rに苗を植え付けるための植付用穴をマルチフィルムに形成するようにした移植機の穿孔装置において、ヒータブロック191の放熱を抑制する放熱抑制手段195を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植機の穿孔装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、畝を跨いで走行する走行体の後方側に畝に苗を植え付ける移植装置を備え、走行しながら苗を植え付ける移植機がある。
移植装置は、苗が育苗された苗トレイを載置する苗載せ台と、この苗載せ台の前方側に位置していて苗載せ台上の苗トレイから苗を取り出す苗取出し機構と、この苗取出し機構の下方側に位置していて苗を畝に植え付ける植付体と、畝を覆うマルチフィルムに、苗を植え付けるための植付用穴を形成する穿孔装置と備えている。
植付体は昇降自在で開閉自在とされており、その上下移動範囲の上死点側の苗受取り位置において、閉じた状態で苗取出し機構から苗が供給され、内部に苗を保持した状態で下降して畝に突入し、開くことにより畝に植え穴を形成し且つ該植え穴に苗を放出することにより畝に苗を植え付ける。
【0003】
穿孔装置は、走行体に昇降自在に支持され且つヒータによって加熱される金属製のヒータブロックを備え、このヒータブロックが下降した際に、畝を覆うマルチフィルムに該ヒータブロックを接触させることで、畝に苗を植え付けるための植付用穴をマルチフィルムに形成するように構成されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−9024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の移植機の穿孔装置にあっては、ヒータブロックをヒータによって高温(例えば445°〜540°)に加熱し、該ヒータブロックの下面をマルチフィルムに押し付けることにより、マルチフィルムが熱で溶かされて該マルチフィルムに植付用穴(植付体突入用の穴)が形成されるようになっているが、寒冷地で風の強い状況下ではヒータブロックの温度が下がり(例えば350°以下)、植付け作業が中断する場合がある。
また、植付け作業が中断しなくても、マルチフィルムを溶かしきれず、マルチフィルムがヒータブロックに付着して、ヒータ性能が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑みて、ヒータ性能の低下防止を図った移植機の穿孔装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、畝を跨いで走行する走行体に昇降自在に支持され且つヒータによって加熱される金属製のヒータブロックを備え、このヒータブロックが下降した際に、畝を覆うマルチフィルムに該ヒータブロックを接触させることで、畝に苗を植え付けるための植付用穴をマルチフィルムに形成するようにした移植機の穿孔装置において、
ヒータブロックの放熱を抑制する放熱抑制手段を設けたことを特徴とする。
また、放熱抑制手段は、ヒータブロックの放熱を抑制するように、ヒータブロックの上下方向中途部及び上部を覆う放熱抑制カバーによって構成される。
【0007】
また、放熱抑制カバーを断熱材によって形成してヒータブロックに外嵌するようにしてもよい。
また、ヒータブロックは、上下方向中途部及び上部が上下方向の軸芯を有する円柱状の円柱部とされていると共に下部が該円柱部から径方向外方に張り出した穴開け部とされ、放熱抑制カバーは上下方向の軸芯を有する円筒状に形成されていてヒータブロックの円柱部に外嵌されているのがよい。
また、ヒータブロックを上下方向の軸芯を有する円柱状に形成し、放熱抑制カバーを、ヒータブロックの外周面との間に隙間が空くようにヒータブロックの外周面を覆うように形成してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヒータブロックの放熱が抑制され、気温や風によってヒータ性能を大きく低下させることがなく、ヒータブロックの温度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1において、1は、畝Rの長手方向に移動しながら該畝Rに野菜等のソイルブロック苗2を所定間隔をおいて植え付ける歩行型の移植機である。
該移植機1は、畝Rを跨いで該畝Rの長手方向に走行する走行体3と、この走行体3の後方側に設けられた移植装置4と、この移植装置4を支持する支持フレーム5と、走行体3を操向する操向ハンドル7とを備えている。
走行体3は、図1〜3に示すように、走行機体9と、この走行機体9を走行可能に支持する推進機構10と、走行機体9に搭載されたエンジン11等を有する。
【0010】
走行機体9は、ミッションケース12と、このミッションケース12の前部に該ミッションケース12から前方突出状に取付固定された架台13とを備えてなり、エンジン11は架台13上の前部に搭載されている。
推進機構10は、畝間溝Mを回転して動く無限回転体として左右一対の前輪14(車輪、前部無限回転体)と左右一対のクローラベルト15(後部無限回転体)とを有する車輪・クローラ複合型の無限回転推進機構が採用されている。
この推進機構10は、前輪14と、この前輪14を支持する前輪支持アーム17と、前輪14の後方側に配置されたクローラ式走行装置18と、このクローラ式走行装置18を支持する伝動ケース19とを走行機体9の左右両側に備えている。
【0011】
左右の各前輪支持アーム17は、後方に行くに従って上方に移行する傾斜状に配置され、各前輪支持アーム17の後端側(上端側)には左右方向の軸芯を有する六角筒状の取付具20が設けられ、各前輪支持アーム17の前端側(下端側)には前輪14が左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されている。
前記架台13の後部下面側には、左右方向の軸芯を有する筒状の軸サポート22が設けられ、この軸サポート22は走行機体9(ミッションケース12及び架台13)に取付固定されたブラケット21に支持されており、該軸サポート22には、左右方向の軸芯を有する左右一対の前輪支軸23の左右方向内端側が挿入されていて、該軸サポート22に左右の前輪支軸23が左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されている。
【0012】
左右の各前輪支軸23の左右方向外端側は左右方向の軸芯を有する六角筒体によって構成されたアーム取付部24とされ、このアーム取付部24に、左右方向で同じ側にある前輪支持アーム17の取付具20を一体回動自在に外嵌することにより、前輪支持アーム17が軸サポート22に前輪支軸23の軸芯回りに上下揺動自在に支持されている。
前記アーム取付部17に対する取付具20の左右方向に関する位置は位置変更自在とされ、アーム取付部17に対して取付具20を左右方向に関して位置変更することにより、前輪14のトレッドが調整可能とされている。
【0013】
左右の各伝動ケース19は、ミッションケース12の左右両側に該ミッションケース12の側面から後方に向けて延出状とされて配置され、各伝動ケース19の前端側(一端側)は、ミッションケース12の側面にケース支持体25を介して左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されていて、該伝動ケース19の後部が上下に揺動可能とされており、伝動ケース19の後端側(他端側)にクローラ式走行装置18が設けられている。
左右の各ケース支持体25は、図2、4及び図7に示すように、ミッションケース12の側面に固定された取付部材26と、この取付部材26に支持された外筒27と、この外筒27に挿通された内筒28とを備えてなる。
【0014】
取付部材26は、ミッションケース12の側面にボルト固定されたフランジ26Aと、このフランジ26Aから左右方向外方に突出する左右方向の軸芯を有する筒状の回動支持部26Bとから構成されている。
外筒27は、左右方向の軸芯を有する六角筒状の外筒本体27Aと、前記取付部材26の回動支持部26Bに軸芯回りに回動自在に外嵌された円筒部27Bとから構成されていて、外筒27が取付部材26に左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されている。
また、外筒27の左右方向中途部は、ミッションケース12に固定の軸受フレーム29に取り付けられた軸受装置30に軸芯回りに回動自在に支持されている。
【0015】
内筒28は、外筒本体27Aに軸芯回りに一体回動自在で軸芯方向移動自在に内嵌された本体部分28Aと、この本体部分28Aの左右方向外端から外方に延出された円筒部28Bと、この円筒部28Bの左右方向内端側に固定されたフランジ28Cとから構成されている。
一方、伝動ケース19の前部の左右両側には、左右方向の軸芯を有する筒状の軸ホルダ31が固定され、左右方向内側の軸ホルダ31の左右方向外端側が伝動ケース19に固定され該軸ホルダ31の左右方向内端部にフランジ32が設けられ、左右方向内側の軸ホルダ31に前記内筒28の円筒部28Bが挿通されていると共に該軸ホルダ31の前記フランジ32に内筒28に設けられた前記フランジ28Cがボルト固定されている。
【0016】
これによって、伝動ケース19の前部がミッションケース12の側面にケース支持体25を介して左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されている。
また、外筒27と内筒28とは、例えば、外筒27に固定されたナット部材33に螺合され且つ外筒27を貫通して内筒28に接当するボルトによって左右方向の相対移動が規制され、該ボルトを緩めることにより、外筒27と内筒28との左右方向の相対移動が許容されるように構成されており、これによって、左右のクローラ式走行装置18のトレッドの調整が可能とされている。
【0017】
一方、左右の各前輪支軸23には後方側に向けて突出する第1連動ブラケット34が設けられ、左右の各ケース支持体25の外筒27には前方側に突出する第2連動ブラケット35が設けられており、左右方向で同じ側にある第1・2ブラケット34,35は連動リンク36によって連動連結されている。
また、左右の各ケース支持体25の外筒27には上方側に延出された第3連動ブラケット37が設けられている。
また、走行機体9の架台13の左右両側に形成された前後方向のガイド溝に左右方向の軸芯を有する軸サポート38が前後方向移動可能に支持され、この軸サポート38にはローリング軸39が左右両側から突出するように挿通されていると共に、該ローリング軸39は軸サポート38に左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されている。
【0018】
ローリング軸39の左右一方には上方側に向けて突出する上レバー41が設けられ、ローリング軸39の左右他方には下方側に向けて突出する下レバー42が設けられており、上下のレバー41,42と、これら上下のレバー41,42と左右方向で同じ側にある第3連動ブラケット37とは連結リンク43で連動連結されている。
また、架台13には、昇降シリンダ44とローリングシリンダ45とが設けられ、これら昇降シリンダ44とローリングシリンダ45とは油圧シリンダによって構成されている。
【0019】
昇降シリンダ44のチューブ44aは架台13に固定され、ピストンロッド44bは後方側に向けて突出されていて軸サポート38に連結されている。
また、ローリングシリンダ45のチューブ45aは架台13に前部側の枢支部46を中心として左右軸回りに回動自在に支持され、ピストンロッド45bは後方側に向けて突出されていて、ローリング軸39の左側に下方側に突出するように設けられたアーム47に枢着されている。
前記昇降シリンダ44のピストンロッド44bを進退させると軸サポート38及びローリング軸39が前後に移動し、左右の連結リンク43によって左右の第3連動ブラケット37が押し引きされて左右の伝動ケース19が共に上下に揺動すると共に、左右の第2連動ブラケット35が上下に揺動して左右の連動リンク36を介して左右の第1連動ブラケット34が押し引きされて左右の前輪支持アーム17が共に上下に揺動する(左右の伝動ケース19の上下揺動に連動して左右の前輪支持アーム17が上下揺動する)。
【0020】
これによって、左右の前輪14と左右のクローラ式走行装置18とが、同時に、走行機体9に対して相対的に上下動し且つ前輪14及びクローラベルト15が接地していることから、必然的に走行機体9が接地面に対して昇降するよう構成されている。
また、ローリングシリンダ45のピストンロッド45bを進退させるとローリング軸39が回動して、一方の連結リンク43が一方の第3連動ブラケット37を押動すると共に他方の連結リンク43が他方の第3連動ブラケット37を引動する。
これによって、左右一方の前輪14及びクローラ式走行装置18が走行機体9に対して相対的に上昇すると共に、左右他方の前輪14及びクローラ式走行装置18が走行機体9に対して相対的に下降し、走行機体9の左右方向に対する傾きを修正することができるよう構成されている。
【0021】
前記支持フレーム5はミッションケース12の後部上部側に取付固定されていて、ミッションケース12から後方側に向けて延出されると共に後端側で上方側に向けて延出されており、この支持フレーム5の後端側に操向ハンドル7が連結されている。
図5及び図6に示すように、ミッションケース12には、左右の側面から左右方向外方に突出する左右一対の出力軸49が設けられ、左右各出力軸49は左右方向で同じ側にあるケース支持体25の取付部材26及び内筒28に挿通されている。
左右の出力軸49の左右方向内端側はミッションケース12内で左右方向突合わせ状とされ、この突合わせ部分に、出力ギヤ50が左右方向の軸芯回りに回動自在に外嵌されており、この出力ギヤ50には、ミッションケース12内の動力伝達機構51を介してエンジン11からの動力が伝達され、この出力ギヤ50から左右の操向クラッチ52を介して左右の出力軸49に動力が断続自在に伝達されるよう構成されている。
【0022】
動力伝達機構51は、図5に示すように、ベルト巻掛伝動機構のプーリー53を介してエンジン11からの動力が伝達される第1軸54と、この第1軸54に平行な第2軸55(伝動軸)及び第3軸56とを有する。
第1軸54にはギヤ57が一体回転自在に設けられ、このギヤ57は第2軸55上の遊転ギヤ58に歯合しており、この遊転ギヤ58には第2軸55と一体回転自在で第2軸55上を軸方向に移動自在なクラッチギヤ59が係脱自在に係合しており、前記ギヤ57、遊転ギヤ58及びクラッチギヤ59を介して、第1軸54から第2軸55に動力が断続自在に伝達される。
【0023】
また、第2軸55には、1速ギヤ60と2速ギヤ61とバックギヤ62とが一体回転自在に設けられ、第3軸56には、該第3軸56の軸方向に移動自在で該第3軸56と一体回転するシフトギヤ63と、前記出力ギヤ50に歯合し且つ第3軸56と一体回転する伝動ギヤ64とが設けられている。
シフトギヤ63には、1速ギヤ60に歯合する第1ギヤ65と、2速ギヤ61に歯合する第2ギヤ66と、クラッチギヤ59に歯合する第3ギヤ67とが設けられ、該シフトギヤ63を軸方向に移動させることにより、第1軸54の動力が変速されて第3軸56に伝達されるように構成されていると共に、バックギヤ62に係合する図示省略の逆転ギヤ機構のギヤにシフトギヤ63の第1ギヤ65を歯合させることにより、第2軸55の回転動力が逆転されて第3軸56に伝達されるよう構成されている。
【0024】
シフトギヤ63、1速ギヤ60、2速ギヤ61、クラッチギヤ59、バックギヤ62逆転ギヤ機構等によって走行系の変速機構を構成している(本実施形態では、クラッチギヤ59が走行系の変速機構の3速ギヤを兼ねている)。
また、シフトギヤ63をいずれのギヤにも歯合させないことにより、中立となり、第2軸55から第3軸56への動力伝達は行われない。
第3軸56に伝達された動力は伝動ギヤ64から出力ギヤ50,操向クラッチ52を介して出力軸49へと伝達される。
【0025】
また、前記第2軸55の左端側はミッションケース12から左方に突出され、その突出部分に株間クラッチ68と第1株間センサ69とが設けられている。
第1株間センサ69は第2軸55の一端側の突出端部に設けられ、株間クラッチ68は第1株間センサ69とミッションケース12との間に配置されている。
株間クラッチ68は電磁クラッチによって構成され、該株間クラッチ68の非作動時にあっては、第2軸55から該第2軸55上に相対回転自在に外嵌されたクラッチ軸70に動力が伝達されず、該株間クラッチ68はコイル71に電流を流す(株間クラッチ68を作動させる)ことによりロータ72を磁化(励磁)してステータ73を強く吸引することにより第2軸55からクラッチ軸70に動力が伝達されるよう構成されている。
【0026】
前記クラッチ軸70には、植付動力取出ギヤ列74の駆動側ギヤ74Aが一体回転自在に外嵌され、植付動力取出ギヤ列74の被駆動側ギヤ74Bは第3軸56上に一体回転自在に設けられた支持部材75に相対回転自在に外嵌されている。
この植付動力取出ギヤ列74の被駆動側ギヤ74Bから移植装置4に動力が伝達される。
第1株間センサ69は、回転パルスセンサによって構成され、第2軸55の回転数を計測(検出)してパルスを発生させるものである。
【0027】
この第1株間センサ69は、例えば、第2軸55と一体回転するセンサシャフトの回転をMREで検出する磁気抵抗素子式の回転センサが採用される。
前記操向クラッチ52は、移植機1の進行方向を変える場合に、曲がろうとする側の動力を断つためのものであり、図6に示すように、出力軸49に外嵌されたシフタ76と、該シフタ76を左右方向外方に押圧する作動スプリング77と、出力ギヤ50に設けられた挿入孔78に挿入されたボール79とを有し、出力軸49には前記ボール79が嵌り込むボール溝80が形成されている。
【0028】
シフタ76には、ミッションケース12に支持されたシフトフォーク81が係合しており、シフトフォーク81にはクラッチアーム82の基部側が連結されている。
操向クラッチ52が操作されていない時には、図6の左側の操向クラッチ52のように、作動スプリング77によってシフタ76が押圧されて該シフタ76がボール79をボール溝80に押し込むことにより出力ギヤ50からボール79を介して出力軸49に動力が伝達され、クラッチアーム82を上方に揺動させてシフトフォーク81によってシフタ76を左右方向中央側に移動させると(操向クラッチ52が切断操作されると)、図6の右側の操向クラッチ52のように、ボール79のシフタ76による押圧が解除されて該ボール79がボール溝80から抜けるので、出力ギヤ50から出力軸49への動力伝達が行われないように構成されている。
【0029】
左右の操向クラッチ52によって、左右のクローラ式走行装置18への動力伝達がそれぞれ独立して断続可能とされている。
一方、図7に示すように、前記伝動ケース19の前部には、左右の軸ホルダ31にわたって挿通され且つ左右の軸ホルダ31にベアリングを介して左右方向の軸芯回りに回動自在に支持された入力軸83が設けられている。
前記出力軸49と入力軸83とは連結軸84によって一体回転自在に連結されている。
前記連結軸84は、出力軸49にスプライン嵌合された内側スプライン筒84Aと、入力軸83にスプライン嵌合された外側スプライン筒84Bと、これらスプライン筒84A,84Bを連結する連結筒部84Cによって構成されていて、これによってクローラ式走行装置18のトレッド調整に対応できるように構成されている。
【0030】
左右の各伝動ケース19の後端側(他端側)の左右両側には筒状の軸ホルダ86が固定され、この左右の軸ホルダ86にわたってクローラ式走行装置18を駆動する駆動軸87が挿通され、この駆動軸87は左右の軸ホルダ86にベアリングを介して左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されている。
この駆動軸87は左右方向内側の軸ホルダ86から左右方向内方に向けて突出状とされている。
伝動ケース19の前部側に設けられた前記入力軸83の左右方向中途部には、伝動ケース19内に配置された駆動側スプロケット88が一体回動自在に設けられ、伝動ケース19の後部側に設けられた前記駆動軸87の左右方向中途部には、伝動ケース19内に配置された被駆動側スプロケット89が一体回動自在に設けられており、駆動側スプロケット88と被駆動側スプロケット89とにわたってエンドレスのチェーン90が巻き掛けられ、入力軸83に伝達された動力が駆動側スプロケット88→チェーン90→被駆動側スプロケット89を経て駆動軸87に伝達されて該駆動軸87がエンジン11からの動力により回転駆動されるよう構成されている。
【0031】
なお、前記構成では入力軸83から駆動軸87にチェーン巻掛け伝動機構で動力を伝達しているが、それ以外の動力伝達機構を採用してもよい。
また、左右各伝動ケース19の前部側には操向ブレーキ91が設けられており、該操向ブレーキ91は、伝動ケース19の前部側の外側の軸ホルダ31に固定されたブレーキケース92に収納されている。
この操向ブレーキ91は、図8に示すように、本実施形態では、内部拡張式ドラムブレーキが採用され、入力軸83と一体回転するブレーキドラム93と、該ブレーキドラム93の内側に配置された一対のブレーキシュー94と、このブレーキシュー94の一端側を支持する支軸95と、ブレーキシュー94の他端側間に介在されたブレーキカム96と、ブレーキシュー94を相互に引き寄せる方向に付勢するリターンスプリング97とを有する。
【0032】
ブレーキシュー94は、前記支軸95によってブレーキケース92に揺動自在に支持されていてブレーキドラム93に対して近接離反自在とされており、ブレーキカム96には、ブレーキケース92の外側に配置されたブレーキアーム98の基部側が連結されている。
前記操向ブレーキ91にあっては、ブレーキアーム98を矢示A方向に引動することにより、ブレーキカム96が回され、これによってブレーキシュー94が外側に広がって(ブレーキドラム93内面に近接移動して)ブレーキドラム93に押しつけられ、ブレーキシュー94とブレーキドラム93との間の摩擦力によって入力軸83が制動される。これによって、左右のクローラ式走行装置18が独立して制動可能とされている。
【0033】
前記クローラ式走行装置18は、図9〜図14に示すように、上部の駆動輪99(スプロケット)と、駆動輪99の前方側で且つ下方側に配置された前アイドラ100と、駆動輪99の後方側で且つ下方側に配置された後アイドラ101と、これら駆動輪99、前後アイドラ100,101にわたって巻き掛けられた無端帯状の前記クローラベルト15と、前後アイドラ100,49が取り付けられていると共に駆動軸87の軸芯X回りに前後に揺動自在な揺動フレーム102とを有する。
前記駆動輪99は、伝動ケース19の後端側に設けられた前記駆動軸87の、軸ホルダ86から突出した部分に一体回転自在に取付固定されており、該駆動軸87が回転駆動されることにより駆動輪99が回転駆動され、これにより該駆動輪99と係合するクローラベルト15が周方向(長手方向)に循環回走(回転)され、クローラ式走行装置18が前進又は後進するよう構成されている。
【0034】
本実施形態では、クローラベルト15は芯金無しタイプで且つ幅狭タイプのクローラベルト15が採用され、該クローラベルト15の内周面の幅方向(左右方向)中央側に駆動突起103が周方向に間隔をおいて形成され、駆動輪99の外周側には、前記駆動突起103が挿入する挿入部104が駆動突起103のピッチに合わせて設けられており、駆動輪99が回転駆動することにより、挿入部104の係合壁105がクローラベルト15の駆動突起103を押圧することにより、駆動輪99から駆動突起103を介してクローラベルト15の本体部分に駆動力が伝達されて、クローラベルト15が周方向に循環回走されるよう構成されている。
【0035】
前後アイドラ100,101は、駆動突起103の左右両側に配置された左右一対のホイル部100A,101Aを有し、駆動突起103の左右両側のクローラベルト15内周面を転動する(したがって、駆動突起103はクローラベルト15の外れ(脱輪)を防止するガイドとしての機能を有する)。
揺動フレーム102は、前後アイドラ100,101を支持するメインフレーム106と、このメインフレーム106を駆動軸87の軸芯X回りに揺動自在に支持する左右方向内外一対の揺動ブラケット107,108とを有する。
【0036】
メインフレーム106は、前アイドラ100を左右軸回りに回転自在に支持する前支持ブラケット109と、後アイドラ101を左右軸回りに回転自在に支持する後支持ブラケット110と、これら前後支持ブラケット109,110の間に位置する支持フレーム111とを有する。
支持フレーム111は、前支持ブラケット109の後壁に固定された前プレート112と、この前プレート112から後方に延出された前パイプ113と、後支持ブラケット110の前面から前方に延出された後パイプ114と、この後パイプ114が下部に固定された支柱部材115と、この支柱部材115の上部に固定された連結パイプ116と、前プレート112と支柱部材115との間に設けられた間隔調整手段117と、支柱部材115の下端に設けられた底板118とから主構成されている。
【0037】
前パイプ113と後パイプ114とは前後方向の軸芯を有する六角筒体から構成され、クローラベルト15の幅方向(左右方向)中央側に配置され、前パイプ113の後部側は後パイプ114の前部側に前後方向移動自在で相対回動不能に挿通されている。
支柱部材115は、左右方向で対向する壁部と前後方向で対向する壁部とからから構成された上下方向の軸芯を有する四角筒体によって構成され、駆動輪99の下方に配置されており、後パイプ114は支柱部材115の下部を前後方向に貫通して固定されている。
連結パイプ116は、左右方向の軸芯を有する円筒体によって構成され左右方向内側が支柱部材115の上部を左右方向に貫通して固定され、左右方向外側が支柱部材115から左右方向外方に突出状とされている。
【0038】
また、連結パイプ116の内部の孔は、その左右方向外側が左右方向内側よりも径大に形成されて段付状とされている。
間隔調整手段117は、クローラベルト15の幅方向中央側に配置され、前プレート112の上端側にその前端側が取付固定されたネジ軸119と、このネジ軸119の後部が挿通され且つ支柱部材115を前後方向に貫通して固定された支持筒120とを有する。
支持筒120は連結パイプ116と後パイプ114との間に位置し、ネジ軸119には、支柱部材115の前側で螺合された前後一対のナット121が設けられている。
【0039】
後側のナット121は調整用ナットで、前側のナット121はロック用ナットである。
調整用ナット121を締め付け方向に回動させることにより、前プレート112が前方に押圧されて前アイドラ100がクローラベルト15を押圧し、該クローラベルト15に張りを与える。
底板118は、後方に行くに従って下方に移行する傾斜状に形成され、中途部が支柱部材115の下端に固着され、前端側が後パイプ114の下面前端側に固着され、後端側が後支持ブラケット110の前面下端に固着されている。
【0040】
外側の揺動ブラケット107は、伝動ケース19の後端側に設けられた内側の軸ホルダ86に軸芯回り(駆動軸87の軸芯X回り)に回動自在に外嵌された回動筒122と、この回動筒122から下方に延出された左右一対の揺動アーム123とを有する。
この外側の揺動ブラケット107の揺動アーム123の下部に、前記メインフレーム106の連結パイプ116の左右方向外側が左右方向に貫通して固着されており、これによって、メインフレーム106が外側の揺動ブラケット107と共に駆動軸87の軸芯X回りに一体的に揺動するよう構成されている。
【0041】
外側の揺動ブラケット107の左右揺動アーム123間の隙間はカバー板で閉塞されている。
内側の揺動ブラケット108は、駆動軸87の駆動輪99から左右方向内方に突出した部分にベアリングを介して駆動軸87の軸芯X回りに回動自在に支持された回動筒124と、この回動筒124から下方に延出された揺動アーム125とを有する。
この内側の揺動ブラケット108の揺動アーム125の下部には、左右方向の軸芯を有する連結軸126が左右方向外方に突出状に設けられていると共に、平面視左右方向外方に開放状のコ字形に形成された嵌合部材127が設けられている。
【0042】
連結軸126は、連結パイプ116の左右方向内側に挿通されると共に、該連結軸126に、連結パイプ116に左右方向外方側から挿入されたボルト128が螺合されており、嵌合部材127に支柱部材115の上部が内嵌状に嵌合されており、これによってメインフレーム106及び外側の揺動フレーム107と内側の揺動フレーム108とが駆動軸87の軸芯X回りに一体揺動するように連結されている。
前支持ブラケット109の上面後部側と、後支持ブラケット110の上面前部側とに固着された取付板129にスクレーパ130が取り付けられている。
【0043】
前後各スクレーパ130は、アイドラ100,101の左右ホイル部100A,101A間に挿入状とされていて、アイドラ100,101のホイル部100A,101A間に侵入した泥土等を排除する。
なお、本実施形態のクローラ式走行装置18は、駆動輪99に対する前アイドラ100の前後方向に関する距離は、駆動輪99に対する後アイドラ101の前後方向に関する距離よりも若干長くなるように構成されている。
一方、圃場には、複数の畝Rにわたってマルチフィルムが敷設され、畝間溝Mには、マルチフィルムの浮き上がりを防止する盛り土131が畝Rの長手方向に所定間隔をおいて設けられている。
【0044】
この盛り土131は、畝Rの左右両側の畝間溝Mにおいて、前後方向に関して同位置に設けられるか、または、前後方向に関して位置ズレさせて千鳥に設けられる。
盛り土131が設けられた畝間溝Mを車輪が走行する場合は、該車輪は、盛り土131から完全に下りてから盛り土131に上るので走行機体9(移植機1)の上下の動きは比較的大きいと共に、車輪は比較的短い距離で盛り土131に上り、比較的短い距離で盛り土131から下りることから、車輪が盛り土131を乗り越えることに起因する植付体158の変動は大きい。
【0045】
また、盛り土131が畝Rの左右両側の畝間溝Mにおいて、千鳥に設けられている場合は、左右の揺れも大きい。
これに対して、盛り土131が設けられた畝間溝Mを前記構成のクローラ式走行装置18が走行する場合にあっては、クローラ式走行装置18は前アイドラ100から後アイドラ101の間で接地するので車輪に比べて接地長が長く、また、前後アイドラ101は揺動フレーム102と共に地面の凹凸に追従して駆動軸87の軸芯X回りに揺動することから、図15に示すように、クローラ式走行装置18が畝間溝Mに設けられた盛り土131(コブ)を乗り越えるときには、車輪に比べて長い距離をかけて上り、また、長い距離をかけて下るので、緩やかに上下動し、このため盛り土131があることによる移植機1の前後左右の揺れの動きをゆっくりとさせることができ、クローラ式走行装置18が盛り土131を乗り越えることに起因する植付体158の変動は少ない。
【0046】
特に、本実施形態では、苗2の植付姿勢において、植付体158が左右のクローラ式走行装置18の間で且つ前後方向に関して駆動軸87(揺動支点)の近傍に位置するようにしているので、植付体158の、走行機体9の揺れに起因する上下動、前後傾斜の動きを極力少なくすることができ、苗2の植付け精度を向上させることができる。
また、盛り土131が畝Rの長手方向に所定間隔をおいて連続している所を走行する場合、車輪では、盛り土131に上った後に次の盛り土131に上る前に、一度、盛り土131から完全に下りるので、走行機体9が大きく上下動するが、クローラ式走行装置18にあっては、後部が盛り土131に位置している状態で前部が次の盛り土131に上り始めることから、車輪の場合に比べて、上下の移動高さは小さくなり、盛り土131の凹凸に起因する走行機体9の揺れを大幅に低減することができる。
【0047】
したがって、通常、クローラ式走行装置18の接地長は、盛り土131の間隔よりも大きくなるように形成される。
また、前記構成のクローラ式走行装置18にあっては、前後アイドラ101間には転輪が設けられていなく、また、クローラベルト15の前後アイドラ101間の上方側には、空間が設けられていて、クローラベルト15は前後アイドラ101間で上方に向けて湾曲状に撓み得るように構成されている。
これによって、凹凸路面を走行する場合において、クローラ式走行装置18が突部を乗り越える際に、路面からの押圧力を受けてクローラベルト15が前後アイドラ101間で上方に向けて撓むことにより、突部の乗り越えがスムーズに行える。
【0048】
また、本実施形態のクローラ式走行装置18にあっては、前アイドラ100の下部後方側及び後アイドラ101の下部前方側に、クローラベルト15の前後アイドラ101間の部分の内周面側から、アイドラとクローラベルト15との間に石等の異物が噛み込まれて脱輪する(クローラベルト15が外れる)のを防止する異物噛込み防止部材132が設けられている。
この異物噛込み防止部材132は、板厚方向が左右方向と一致するように配置された板材によって形成されており、前側及び後側ともに左右一対設けられていて、それぞれ駆動突起103を挟んで該駆動突起103の左右両側に配置されている。
【0049】
したがって、前側の異物噛込み防止部材132は前アイドラ100の各ホイル部100Aの後方側に位置し、後側の異物噛込み防止部材132は後アイドラ101の各ホイル部101Aの前方側に位置しており、前側の異物噛込み防止部材132の上部は、前プレート112及び前支持ブラケット109に溶接等によって固着され、後側の異物噛込み防止部材132の上部は、後支持ブラケット110に溶接等によって固着されている。
また、前側の左右の異物噛込み防止部材132間は補強板133によって連結され、後側の左右の異物噛込み防止部材132間は幅狭に形成された底板118の後端側によって連結されている
また、前後の異物噛込み防止部材132の下面132aは、クローラベルト15の内周面との間に、クローラベルト15が前後アイドラ101間で上方に撓むのを許容する隙間が設けられていると共に、該前後の異物噛込み防止部材132の下面132aは、クローラ式走行装置18の左右方向中央側(前後アイドラ101間の左右方向中央側)に行くに従って、上方に移行する傾斜する傾斜状に形成されていて、クローラベルト15が前後アイドラ101間で上方に撓むのを許容しながらも、前側の異物噛込み防止部材132の前端側及び後側の異物噛込み防止部材132の後端側をクローラベルト15の内周面に近づけている。
【0050】
また、前側の異物噛込み防止部材132の前面、及び、後側の異物噛込み防止部材132の後面は、アイドラ100,101のホイル部100A,101Aに近接させることができるようにアイドラ100,101のホイル部100A,101Aの外周面に沿った円弧状に形成されている。
前記異物噛込み防止部材132は、クローラベルト15が前後アイドラ101,101間で所定以上に(過度に)上方に撓む際に、この過度の撓みを規制する機能を有する。これによって、旋回したり突起物に乗り上げたりして、クローラベルト15が捩られるような場合に、クローラベルト15が過度に撓むことによるクローラベルト15の外れを防止することができる。
【0051】
なお、畝間溝Mの凹凸路面を走行する際における盛り土131の乗り越え時の撓みにあっては問題はない。
また、前後の異物噛込み防止部材132は駆動突起103を挟むように左右一対設けられているので、クローラベルト15が捻れて外れようとする時の規制ガイドとしての機能を有する。
また、前記構成のクローラ式走行装置18にあっては、前進走行する際において、クローラ式走行装置18に地面からの反力によって前アイドラ100側が浮き上がるような力が作用し、後アイドラ101側の接地荷重が大きくなり、柔らかい圃場では後アイドラ101側が沈み込みやすい。
【0052】
そこで、本実施形態の移植機1にあっては、揺動フレーム102を前回りに揺動させる方向に付勢する付勢手段134が設けられている。
この付勢手段134は、伝動ケース19の前部側に左右軸回りに回動自在に支持された回動軸135と、一端側がこの回動軸135を該回動軸135の軸芯に直交する方向で挿通し他端側が揺動フレーム102に駆動軸87より下側で枢支連結されたパイプからなるロッド136と、揺動フレーム102を前回りに揺動させる方向に付勢するように回動軸135とロッド136の他端側との間で該ロッド136に套嵌されたコイルバネ137とを備えて構成されている。
【0053】
回動軸135は、伝動ケース19の左右両側面に、下方突出状に固定された左右一対のブラケット138を挿通して該ブラケット138に回動自在に支持されている。
ロッド136の他端側は外側の揺動ブラケット107の外側の揺動アーム123に設けられた延設部123aに枢軸139を介して左右方向の軸芯回りに回動自在に枢支連結されている。
コイルバネ137の一端はバネ受け140を介して回動軸135に接当し、他端側はロッド136に回動軸135と枢軸139との間で套嵌されたバネ受け141に接当していると共に、該バネ受け141はロッド136に挿通された位置決めピン142(位置決め部材)によって位置決めされている。
【0054】
したがって、コイルバネ137の付勢力によってロッド136が外側の揺動ブラケット107を駆動軸87の下側で後方側に押圧することにより、揺動フレーム102が前回りに揺動する方向に付勢され、前後のアイドラ100,101の接地圧が略均等となるようにしている。
前記位置決めピンの位置142を挿通する孔をロッド136の軸芯方向に複数形成して、位置決めピン142のロッド136の軸芯方向に関する位置を変更できるようにすることにより、コイルバネ137の付勢力を調整することができる。
【0055】
また、ロッド136の他端側は、ロッド136の長手方向に位置変更自在な、その他の位置決め部材によって位置決めしてもよい。
また、前記ロッド136の一端側には、回動軸135に接当することで伝動ケース19に対する揺動フレーム102の回動を規制するストッパ143が設けられている。
このストッパ143はロッド136の一端側に設けられたネジ軸144に外嵌された座金等からなる当たり145と、この当たりを固定すべくネジ軸144に螺合された一対のナット146から構成されている。
【0056】
図16に示すように、クローラ式走行装置18の揺動フレーム102の前側が駆動軸87の軸芯Xを中心として下方に揺動すると、回動軸135と枢軸139との距離が大きくなっていき、ストッパ143が回動軸135に接当すると揺動フレーム102の下方揺動が規制される。
したがって、走行機体9を上昇させていくとストッパ143が回動軸135に接当し、さらに、上昇させて走行機体9を最上げ位置にすると、後アイドラ101側の接地部分を中心として前アイドラ100側が持ち上げられるよう構成されている。これによって、舗装路面を走行させる際等において、直進走行や旋回をスムーズに行える。
【0057】
また、揺動フレーム102の前側が駆動軸87の軸芯Xを中心として上方に揺動すると、回動軸135と枢軸139との距離が小さくなっていき、コイルバネ137が圧縮され、コイルバネ137が圧縮限界になると揺動フレーム102の上方揺動が規制される。
なお、移植機1が作業姿勢にあるときには、クローラ式走行装置18は駆動軸87の軸芯Xを中心として上下に揺動可能である。
図17に示すように、前記操向ハンドル7には左右一対の操向クラッチレバー147が設けられている。
【0058】
左右の各操向クラッチレバー147は左右方向で同じ側にある操向クラッチ52を操作するクラッチアーム82にクラッチ用ケーブル148を介して連動連結されていると共に左右方向で同じ側にある操向ブレーキ91を操作するブレーキアーム98にブレーキ用ケーブル149を介して連動連結されている。
クラッチ用ケーブル148及びブレーキ用ケーブル149はインナケーブルとアウタケーブルとを有するボーデンケーブルによって構成され、各ケーブル148,149のインナケーブルの一端側は操向クラッチレバー147に連結され、クラッチ用ケーブル148のインナケーブルの他端側はクラッチアーム82の先端側に連結され、ブレーキ用ケーブル149のインナケーブルの他端側は連動アーム150及びスプリング151を介してブレーキアーム98の先端側に連動連結されている。
【0059】
前記連動アーム150は、ベルクランク状に形成され、一端側にブレーキ用ケーブル149のインナケーブルの他端側が連結されている。
連動アーム150の中途部は伝動ケース19の前端側に固定されたブラケット152に設けられた回動支軸153に枢支され、連動アーム150の他端側にスプリング151の一端側が掛止され、スプリング151の他端側はブレーキアーム98の先端側に掛止されている。
したがって、操向クラッチレバー147を握って実線で示す位置から揺動支軸210回りに揺動操作することにより、該操作した操向クラッチレバー147と左右方向で同じ側にある操向クラッチ52が切れると共に該操作した操向クラッチレバー147と左右方向で同じ側にある操向ブレーキ91が効く(クローラ式走行装置18が制動される)ように構成されている。
【0060】
また、本実施形態では、操向クラッチレバー147を実線で示す位置から一点鎖線で示す位置に揺動操作すると、操向クラッチ52が切れると共に操向ブレーキ91が効き始め、さらに、操向クラッチレバー147を2点鎖線で示す位置にすると操向ブレーキ91が効くようになっており、操向ブレーキ91は操向クラッチ52が切断された後にクローラ式走行装置18を制動する。
この操向クラッチ52の切断に対する操向ブレーキ91の効きの遅れは、クラッチ用ケーブル148のインナケーブルの移動量とブレーキ用ケーブル149のインナケーブルの移動量との差やスプリング151の伸び等によって実現させることができる。
【0061】
前記構成の移植機1にあっては、圃場の枕地等において旋回する場合、クローラ式走行装置18の前側が浮かない程度に走行機体9を上昇させ、操向ハンドル7を押し下げて前輪14のみを地面から浮かせ、(クローラ式走行装置18の前アイドラ100側が地面から浮いていない状態で)旋回したい側の操向クラッチ52を操作して操向クラッチ52を切ると共に操向ブレーキ91を効かせて走行させることにより、移植機1の後輪の代わりにクローラ式走行装置18を採用した移植機1であっても、前輪14を押し下げる程度の軽いハンドル操作荷重で、移植機1を小回り(小さい旋回半径で)旋回させることができる。
【0062】
なお、走行機体9を最上げ位置にしてクローラ式走行装置18の前アイドラ100側を地面から浮かせると共に、操向ハンドル7を押し下げて後アイドラ101側の接地点を中心として前輪14を地面から浮かせた状態で旋回することもできる。
操向ブレーキ91を伝動ケース19の後端側に設けて駆動軸87を制動するようにしてもよいが、そうすると、スプリング151や連動アーム150やブレーキ用ケーブル149等に泥がかかりやすくなり、操向ブレーキ91の作動に支障が生じる惧れがあるが、操向ブレーキ91を伝動ケース19の前端側に設けることにより、この問題を解決することができる。
【0063】
移植装置4は、苗トレイを載置して支持する苗載せ台156と、この苗載せ台156上の苗トレイから苗2を取り出す苗取出し装置157と、この苗取出し装置157から供給された苗2を畝Rに植え付ける植付体158と、畝Rに植え付けられた苗2の左右両側を鎮圧する鎮圧輪159(覆土輪)と、圃場に敷設されたマルチフィルムに植付用穴を形成する穿孔体160と、この穿孔体160の前方側で畝Rの上面を転動する整地ローラ161(検出ローラ)とを備えている。
苗トレイは、プラスチック製で薄肉に形成されていて可撓性を有し、縦横に所定ピッチで碁盤目状に配列された多数のポット部を備えており、各ポット部の開口縁部は平板状の薄肉壁部で相互に接続されている。
【0064】
この苗トレイには、各ポット部に供給された床土に播種して育苗されたソイルブロック苗2が育成されている。
苗載せ台156は、操向ハンドル7の前方側に位置しており、前方に行くに従って下方に移行する傾斜状に設けられていて苗トレイの底部が載置されて該苗トレイを支持する載置板を有し、支持フレーム5に左右方向移動可能に支持されている。
また、苗載せ台156は横送り機構によって、苗トレイのポット部の横方向の1ピッチ分、間欠的に左右方向に往復横送り可能とされ、また、苗載せ台156には、その左右方向の移動域の左右両側の端部において、苗トレイをポット部の縦方向の1ピッチ分、下方側に縦送りする縦送り機構が備えられている。
【0065】
苗取出し装置157は、ポット部から苗2を取り出す苗取出爪162を備えると共にミッションケース12内の前記植付動力取出ギヤ列74の被駆動側ギヤ74Bからの動力によって駆動されて苗取出爪162を動作させる運動機構を備え、ポット部内の床土に対して前側から苗取出爪162を進行させて該床土を突き刺すと共に突き刺した後に苗取出爪162を後退させることによりポット部から苗2を取り出し可能としている。
また、ポット部から取り出された苗2は、苗受取り位置に位置する植付体158の上方に移送されて植付体158へと放出可能とされている。
【0066】
植付体158は、上側から苗2が供給できるように上端が開放状とされ、内部に苗2を保持でき且つ該苗2を下方に放出できるように下部が開閉自在とされている。
この植付体158は、図18に示すように、植付フレーム163に支持された昇降機構164によって昇降自在に支持され、植付フレーム163は、前端側がミッションケース12の側面に左右軸回りに回動自在に支持されていて上下揺動自在とされている。
ミッションケース12には、植付フレーム163の前端の回動軸芯と同芯状に動力取出軸165が設けられ、この動力取出軸165に前記植付動力取出ギヤ列74の被駆動側ギヤ74Bから動力が伝達されると共に、該動力取出軸165から、植付フレーム163に設けられた伝動ケース166内のチェーン巻掛伝動機構を介して前記昇降機構164に動力が伝達されて該昇降機構164が駆動される。
【0067】
植付体158は上下移動範囲の上死点又はその付近の苗受取り位置において閉じた状態で苗取出し装置157から苗2が供給され、内部に苗2を保持した状態で下降し、上下移動範囲の下死点側で畝Rに突入し且つ開くことにより、畝Rに植え穴を形成する共に該植え穴に苗2を放出する。これにより苗2が畝Rに植え付けられる。
鎮圧輪159は、植付体158の後方側に左右一対設けられていて、畝R上面の苗2の植付け位置の左右両側を転動し、植付体158で形成された植え穴に投入された苗2の左右両側の土を押圧する。
【0068】
また、鎮圧輪159は、植付フレーム163の後部側に支持機構167を介して支持されていて、該鎮圧輪159によって植付フレーム163の後部側を支持しており、鎮圧輪159と植付フレーム163との上下方向に関する距離を変えることにより、植付け深さを変更することができるよう構成されている。
整地ローラ161は、植付体158及び穿孔体160の前方側の畝R上面を転動し、畝R上面を整地すると共に畝R高さを検出するものである。
ミッションケース12の前部下端側には、その前部が支軸169を介して左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されていて後部側が前記支軸169の軸芯回りに上下揺動自在とされた揺動アーム170が設けられ、この揺動アーム17の後部側に整地ローラ161が該整地ローラ161と一体回転する回転支軸171を介して左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されていて、畝R上面に追従して該畝R上面を転動する。
【0069】
ミッションケース12に対する整地ローラ161の上下方向に関する動きは、揺動アーム170と一体揺動する第1、第2センサアーム172,173によって、ミッションケース12の上面側に設けた昇降バルブ174に伝えられ、この昇降バルブ174によって前記昇降シリンダ44を制御することにより、畝R上面との距離が一定に保たれるように走行機体9が昇降制御され、これによって植付フレーム163が畝R高さに追従して上下動して設定された植付深さで苗2が植え付けられるように構成されている。
一方、ミッションケース12に対する鎮圧輪159の上下方向に関する動きは、植付フレーム163から連動機構175を介して昇降バルブ174に伝えられ、鎮圧輪159の動きによっても畝R上面との距離が一定に保たれるように走行機体9を昇降制御できるように構成されているが、整地ローラ161が畝R高さを検知している状態では、鎮圧輪159の動きは昇降バルブ174には伝わらないようになっている。
【0070】
畝Rに苗2を植え始める時においては、例えば、整地ローラ161が畝Rで持ち上げられると、この動きが昇降バルブ174に伝えられて走行機体9が上昇し、昇降バルブ174が中立になると走行機体9の上昇が停止して、走行機体9が設定された高さとされる。このとき、植付フレーム163は、支持フレーム5側(走行機体9側)に支持されていて走行機体9と共に上昇し、所定の植付深さを保持する。この後、走行機体9を前進させて、鎮圧輪159によって植付フレーム163が支持されると鎮圧輪159で設定された植付深さで植え付けられる。
【0071】
また、畝Rの終わりでは、整地ローラ161が畝Rから外れるので、植え終わりの場合は、鎮圧輪159によって走行機体9を畝R高さに追従させて昇降制御する。
すなわち、整地ローラ161が畝Rから外れると、走行機体9は下降するが、植付フレーム163は鎮圧輪159によって支えられているので、走行機体9が少し下降すると、植付フレーム163と昇降バルブ174とを連動させる連動機構175によって昇降バルブ174が中立に切り換えられて、鎮圧輪159で設定された高さに走行機体9が保持される。
【0072】
これによって、植付体158によって、畝Rの一端から他端にわたって所定の植付深さで植え付けられる。
前記整地ローラ161を支持する揺動アーム170には、整地ローラ161の回転数を検出する第2株間センサ176が設けられている。
この第2株間センサ176は、回転パルスセンサによって構成され、整地ローラ161を支持する回転支軸171の回転数を計測(検出)してパルスを発生させるものである。
第2株間センサ176は、例えば、第1株間センサ69と同様の磁気抵抗素子式の回転センサが採用され、例えば、回転支軸171と一体回転する、スプロケット形状やギヤ形状の検出部材の凹凸を非接触センサでカウントする構造とされる。
【0073】
前記構成の移植機1にあっては、植付作業中においては、前記株間クラッチ68は、コントローラ168からのクラッチ切断指令信号によって切断された後、コントローラ168からのクラッチ接続指令信号によって接続され(株間クラッチ68はコントローラ168からの指令信号によって所要時間だけ切断され)、株間クラッチ68を所要時間だけ切断することで植付体158の植付動作が所要時間だけ停止され、植付体158の植付動作を所要時間だけ停止させることにより、苗2が所望の植付間隔(株間)で植え付けられるよう構成されている(なお、植付体158の動作を停止させずに連続的に植付動作させる場合もある)。
【0074】
植付体158が上死点(又はその近傍位置)にきたことを図示省略の位置検出センサによって検出されたときに、コントローラ168から株間クラッチ68にクラッチ切断指令信号が発信される。
また、コントローラ168から発信されるクラッチ接続指令信号は、第1株間センサ69又は第2株間センサ176のどちらか一方から発生するパルスに基づいて発信され、本実施形態では、基本的に第2株間センサ176のパルスを優先してクラッチ接続指令信号が発信される。
【0075】
すなわち、整地ローラ161の回転が所定の回転数でない場合(回転が安定しない場合、又は、回転していない場合)は、第1株間センサ69のパルス数によって株間クラッチ68の切断時間を制御し(植付間隔を制御し)、整地ローラ161の回転が安定した所定の回転数である場合は、第2株間センサ176のパルス数によって株間クラッチ68の切断時間を制御(植付間隔を制御)するようコントローラ168によって設定されている。
前記第1株間センサ69と、第2株間センサ176から発生するパルスはコントローラ168に入力され、整地ローラ161が安定した所定の回転数であるか否かは、前記コントローラ168によって第2株間センサ176の単位時間当たりのパルス数が所定以上であるか否か(所定以上の回転数であるか否か)で判別(判断)され、第2株間クラッチが発信する単位時間当たりのパルス数が所定以上である場合(整地ローラ161の回転数が所定以上である場合)に、整地ローラ161が正常に畝R上面を転動していると判断されて整地ローラ161の回転数で株間制御が行われ(第2株間センサ176のパルスに基づいて株間クラッチ68の切断時間を制御し)、第2株間センサ176の単位間当たりのパルス数が所定未満(整地ローラ161の回転数が所定未満)であれば、整地ローラ161の回転が止まっている又は不安定であると判断されて第2軸55の回転数で株間制御が行われる(第1株間センサ69のパルスに基づいて株間クラッチ68の切断時間を制御する)。
【0076】
第1株間センサ69と、第2株間センサ176からコントローラ168に入力されたパルスは、該コントローラ168にてパルス数がカウントされ、カウントされたパルス数が予め設定されたパルス数に達すると、株間クラッチ68をオフからオンに切り換えるクラッチ接続指令信号を株間クラッチ68に発信する。
これにより、設定した植付間隔で苗2が植え付けられ、第1株間センサ69又は第2株間センサ176からのパルスのカウント数を変更して株間クラッチ68の切断時間を変更することにより、植付間隔を調整することができる。
【0077】
なお、整地ローラ161が水平面を転動すると共に走行体3が水平路面を走行する場合に、整地ローラ161と走行体3が同じ距離移動した場合における、第1株間センサと第2株間センサとが発生するパルス数は同じパルス数となるように設定されており、したがって、第1株間センサ69又は第2株間センサ176のどちらのパルスのカウント数によっても理論上は(通常は)同じ株間で苗2が植え付けられるようになっている。
畝間溝Mに盛り土131がある場合など、畝間溝Mが凹凸路面である場合、移植機1がデコボコ状態の畝間溝Mを走行すると、移植機1の水平移動距離と、走行体3の推進機構10が盛り土を乗り越えるときの道程とが異なるので、走行系の動力伝達経路の伝動軸である第2軸55の回転数を検出して株間クラッチ68の切断時間を制御するようにしていると、株間にばらつきが生じるが、整地ローラ161は畝Rの上面を転動するので、基本的に整地ローラ161の回転数によって株間を制御することにより、株間を正確に制御することができる。
【0078】
また、畝Rは一端側から他端側にかけて畝成形器を移動させることにより成形されるので、畝Rの成形終わり側の上面の形状が乱れている場合がある。このような場合に整地ローラ161がスリップなどして正常に回転しない場合があり、苗2が正常に植え付けられないことが考えられる。
また、畝Rの終わり(1畝における植付作業の終端側)では、整地ローラ161が畝Rから外れるので、整地ローラ161の回転数を検出して株間を制御するという設定にしておくと、畝Rの終わりでは、植付作業が行えないこととなり、手植えをしなければならないという問題がある。
【0079】
また、植付作業を行う前に、苗トレイの最初の横一列の一番端の苗2を苗取出位置に位置させるために移植装置4(苗載せ台156、苗取出爪162、植付体158等)を動かす(苗トレイを空送りする)ことがあるが、この場合において、シフトギヤ63を中立位置にして、走行しないで移植装置4を動かすが、この場合においても、整地ローラ161の回転数を検出して苗2を植え付けるという設定にしておくと、整地ローラ161が回転しないので、苗トレイの空送り作業が行えないこととなる。
また、畝Rの一端側から他端側の間の部分において、何らかの原因(例えば、整地ローラの回転部分に泥が詰まった場合など)で整地ローラが回転しない又は回転抵抗が大きくスリップして正常に回転しない場合にも、整地ローラ161の回転数を検出して苗2を植え付けるという設定にしておくと、正常な植付作業が行えないこととなる。
【0080】
したがって、本実施形態では、整地ローラ161が回転しない又は正常に回転しない場合を想定し、この場合には、走行系の伝動軸である第2軸55の回転数を検出して株間の制御を行うようにしている。
前述したように、畝Rの大部分での植付作業については整地ローラ161の回転数を検出して株間クラッチ68を制御するので、畝間溝Mが凹凸路面であってもその影響を受けずに精度のよい植付間隔で植付作業が行え(凹凸路面を走行しながら植付作業する際において、植付間隔が大きく変化する(ばらつく)のを防止することができ)、整地ローラ161によって植付作業が行えない場合には、走行系の伝動軸である第2軸55の回転数を検出して株間クラッチ68を制御するので、整地ローラ161の回転数が安定しない場合であっても植付作業が行える。
【0081】
穿孔体160は、図19〜21に示すように、昇降機構177を介して植付フレーム163に昇降自在に支持されており、整地ローラ161の後方側で且つ植付体158の前方側に配置され、下降した際にマルチフィルムに接触させることで、熱の作用でマルチフィルムを溶かすことにより、苗2を植えるための(植付体158を畝Rに突入させるための)植付用穴をマルチフィルムに形成する。
植付体158は、このマルチフィルムに穿孔された植付用穴を挿通して畝Rに突入する。
【0082】
昇降機構177は、下部に穿孔体160が取り付けられた取付プレート178と、この取付プレート178を上下動自在に支持する上下一対のヒータアーム179と、植付体158の昇降機構177を駆動する動力によって回転駆動されるヒータカム180と、上側のヒータアーム179に取り付けられていて前記ヒータカム180の外周を転動するカムローラ181とを有し、カムローラ181がヒータカム180の凹陥部182に落ち込むことにより取付プレート178と共に穿孔体160が下降するように構成されている。
なお、穿孔体160がマルチフィルムに植付用穴を形成した後はカムローラ181がヒータカム180の凹陥部182から離脱して取付プレート178と共に穿孔体160が上昇し、カムローラ181がヒータカム180の凹陥部182以外の部分を転動することにより、穿孔体160が上死点側の待機位置に保持される。
【0083】
穿孔体160は、ヒータ金具183によって取付プレート178に取り付けられており、このヒータ金具183は、穿孔体160が取り付けられる穿孔体支持壁184と、取付プレート178に取り付けられる取付壁185とを有する。
取付壁185は、取付プレート178の下端側に枢軸186を介して左右方向の軸芯回りに回動自在に取り付けられていて穿孔体160が前後揺動自在とされ、バネ187によって前方側に揺動する方向に付勢されると共に、ヒータ金具183の取付壁185に形成された長孔188に挿通された取付プレート178側に固定のピン189によって穿孔体160の姿勢が保持されており、穿孔体160は前記バネ187の付勢力に抗して後方側に揺動可能とされている。
【0084】
穿孔体160は、マルチフィルムに接触するヒータブロック191と、このヒータブロック191と穿孔体支持壁184との間に介在されたスペーサ192と、このスペーサ192及び前記ヒータブロック191を穿孔体支持壁184に取り付けるための複数の取付ボルト193と、ヒータブロック191を加熱するための複数のグロープラグ194(ヒータ、加熱手段)と、ヒータブロック191の放熱を抑制する放熱抑制カバー195(放熱抑制手段)とを有する。
ヒータブロック191は金属製で穿孔体支持壁184の下方側に位置し、スペーサ192はセラミック等の断熱材によって上下方向の軸芯を有する円柱状に形成され、取付ボルト193を穿孔体支持壁184及びスペーサ192を貫通させてヒータブロック191に形成したネジ孔に螺合させることにより、穿孔体支持壁184にスペーサ192及びヒータブロック191が取付固定されている。
【0085】
また、穿孔体支持壁184には、グロープラグ194の発熱部196が挿通可能で且つグロープラグ194のネジ部197が螺合可能なネジ孔198が形成され、スペーサ192には、グロープラグ194の発熱部196を挿通するための挿通孔199が上下方向に貫通形成されている。
ヒータブロック191は、上下方向中途部及び上部(上部側の大部分)が上下方向の軸芯を有する円柱状の円柱部200とされている共に、下部が円柱部200から径方向外方に張り出した穴開け部201とされている。
【0086】
このヒータブロック191の円柱部200には、グロープラグ194の発熱部196が挿入される、上方開放状で有底の挿入孔202が形成されている。
グロープラグ194の発熱部196は、穿孔体支持壁184のネジ孔198及びスペーサ192の挿通孔199を挿通してヒータブロック191の円柱部200の挿入孔202に挿入されていて、該グロープラグ194によってヒータブロック191が加熱されるように構成されている。
なお、本実施形態では、グロープラグ194は3本設けられ、これらグロープラグ194はコネクションプレート203によって連結されている。
【0087】
放熱抑制カバー195は、セラミック等の断熱材によって円筒状に形成され、外径はスペーサ192の外径と略同径に形成されていると共に内径はヒータブロック191の円柱部200の外径と略同径に形成され、軸芯方向の寸法はヒータブロック191の円柱部200の軸芯方向の寸法と略同じ寸法に形成されており、ヒータブロック191の円柱部200に外嵌されている。
この放熱抑制カバー195によって、ヒータブロック191の放熱が大幅に抑制され、気温や風によってヒータ性能を大きく低下させることがなく、ヒータブロック191の温度を確保することができる。
【0088】
図22は、穿孔体160に他の形態の放熱抑制カバー195を設けたものを示している。
この図22におけるヒータブロック191は円柱部200と穴開け部201とが、スペーサ192の外径と同径に形成されている。
放熱抑制カバー195は、上壁204と、ヒータブロック191の外周を覆う円筒壁205とを有し、上壁204がスペーサ192とヒータブロック191との間に介装されて固定されており、円筒壁205は、ヒータブロック191の外周面との間に隙間が空くようにヒータブロック191の外周面を覆っている。
【0089】
なお、ヒータブロック191の放熱を抑制する放熱抑制手段としては、穿孔体160の上下移動範囲の前後及び左右を覆う風よけカバーによって構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】移植機の全体側面図である。
【図2】走行体の平面図である。
【図3】走行体の側面図である。
【図4】走行体の背面断面図である。
【図5】ミッションケースの背面断面図である。
【図6】走行クラッチの背面図である。
【図7】クローラ式走行装置の動力伝達系を示す背面断面図である。
【図8】操向ブレーキの側面図である。
【図9】クローラ式走行装置の側面概略図である。
【図10】クローラ式走行装置の側面断面図である。
【図11】クローラ式走行装置の背面断面図である。
【図12】揺動フレームの平面断面図である。
【図13】クローラ式走行装置の平面断面図である。
【図14】(a)はクローラ式走行装置の下部の正面断面図、(b)はクローラ式走行装置の下部の背面断面図、(c)は付勢手段のロッド支持部分の背面一部断面図である。
【図15】クローラ式走行装置が盛り土を乗り越えるときの状態を示す側面図である。
【図16】走行機体を上下させた状態を示す側面図である。
【図17】操向クラッチレバーと操向クラッチ及び操向ブレーキとの連動関係を示す概略図である。
【図18】植付機構を示す側面概略図である。
【図19】穿孔装置の側面図である。
【図20】穿孔装置の平面図である。
【図21】穿孔体の側面断面図である。
【図22】他の形態の穿孔体の側面断面図である。
【符号の説明】
【0091】
3 走行体
191 ヒータブロック
194 ヒータ
195 放熱抑制手段(放熱抑制カバー)
200 円柱部
201 穴開け部
R 畝
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植機の穿孔装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、畝を跨いで走行する走行体の後方側に畝に苗を植え付ける移植装置を備え、走行しながら苗を植え付ける移植機がある。
移植装置は、苗が育苗された苗トレイを載置する苗載せ台と、この苗載せ台の前方側に位置していて苗載せ台上の苗トレイから苗を取り出す苗取出し機構と、この苗取出し機構の下方側に位置していて苗を畝に植え付ける植付体と、畝を覆うマルチフィルムに、苗を植え付けるための植付用穴を形成する穿孔装置と備えている。
植付体は昇降自在で開閉自在とされており、その上下移動範囲の上死点側の苗受取り位置において、閉じた状態で苗取出し機構から苗が供給され、内部に苗を保持した状態で下降して畝に突入し、開くことにより畝に植え穴を形成し且つ該植え穴に苗を放出することにより畝に苗を植え付ける。
【0003】
穿孔装置は、走行体に昇降自在に支持され且つヒータによって加熱される金属製のヒータブロックを備え、このヒータブロックが下降した際に、畝を覆うマルチフィルムに該ヒータブロックを接触させることで、畝に苗を植え付けるための植付用穴をマルチフィルムに形成するように構成されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−9024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の移植機の穿孔装置にあっては、ヒータブロックをヒータによって高温(例えば445°〜540°)に加熱し、該ヒータブロックの下面をマルチフィルムに押し付けることにより、マルチフィルムが熱で溶かされて該マルチフィルムに植付用穴(植付体突入用の穴)が形成されるようになっているが、寒冷地で風の強い状況下ではヒータブロックの温度が下がり(例えば350°以下)、植付け作業が中断する場合がある。
また、植付け作業が中断しなくても、マルチフィルムを溶かしきれず、マルチフィルムがヒータブロックに付着して、ヒータ性能が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑みて、ヒータ性能の低下防止を図った移植機の穿孔装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、畝を跨いで走行する走行体に昇降自在に支持され且つヒータによって加熱される金属製のヒータブロックを備え、このヒータブロックが下降した際に、畝を覆うマルチフィルムに該ヒータブロックを接触させることで、畝に苗を植え付けるための植付用穴をマルチフィルムに形成するようにした移植機の穿孔装置において、
ヒータブロックの放熱を抑制する放熱抑制手段を設けたことを特徴とする。
また、放熱抑制手段は、ヒータブロックの放熱を抑制するように、ヒータブロックの上下方向中途部及び上部を覆う放熱抑制カバーによって構成される。
【0007】
また、放熱抑制カバーを断熱材によって形成してヒータブロックに外嵌するようにしてもよい。
また、ヒータブロックは、上下方向中途部及び上部が上下方向の軸芯を有する円柱状の円柱部とされていると共に下部が該円柱部から径方向外方に張り出した穴開け部とされ、放熱抑制カバーは上下方向の軸芯を有する円筒状に形成されていてヒータブロックの円柱部に外嵌されているのがよい。
また、ヒータブロックを上下方向の軸芯を有する円柱状に形成し、放熱抑制カバーを、ヒータブロックの外周面との間に隙間が空くようにヒータブロックの外周面を覆うように形成してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヒータブロックの放熱が抑制され、気温や風によってヒータ性能を大きく低下させることがなく、ヒータブロックの温度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1において、1は、畝Rの長手方向に移動しながら該畝Rに野菜等のソイルブロック苗2を所定間隔をおいて植え付ける歩行型の移植機である。
該移植機1は、畝Rを跨いで該畝Rの長手方向に走行する走行体3と、この走行体3の後方側に設けられた移植装置4と、この移植装置4を支持する支持フレーム5と、走行体3を操向する操向ハンドル7とを備えている。
走行体3は、図1〜3に示すように、走行機体9と、この走行機体9を走行可能に支持する推進機構10と、走行機体9に搭載されたエンジン11等を有する。
【0010】
走行機体9は、ミッションケース12と、このミッションケース12の前部に該ミッションケース12から前方突出状に取付固定された架台13とを備えてなり、エンジン11は架台13上の前部に搭載されている。
推進機構10は、畝間溝Mを回転して動く無限回転体として左右一対の前輪14(車輪、前部無限回転体)と左右一対のクローラベルト15(後部無限回転体)とを有する車輪・クローラ複合型の無限回転推進機構が採用されている。
この推進機構10は、前輪14と、この前輪14を支持する前輪支持アーム17と、前輪14の後方側に配置されたクローラ式走行装置18と、このクローラ式走行装置18を支持する伝動ケース19とを走行機体9の左右両側に備えている。
【0011】
左右の各前輪支持アーム17は、後方に行くに従って上方に移行する傾斜状に配置され、各前輪支持アーム17の後端側(上端側)には左右方向の軸芯を有する六角筒状の取付具20が設けられ、各前輪支持アーム17の前端側(下端側)には前輪14が左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されている。
前記架台13の後部下面側には、左右方向の軸芯を有する筒状の軸サポート22が設けられ、この軸サポート22は走行機体9(ミッションケース12及び架台13)に取付固定されたブラケット21に支持されており、該軸サポート22には、左右方向の軸芯を有する左右一対の前輪支軸23の左右方向内端側が挿入されていて、該軸サポート22に左右の前輪支軸23が左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されている。
【0012】
左右の各前輪支軸23の左右方向外端側は左右方向の軸芯を有する六角筒体によって構成されたアーム取付部24とされ、このアーム取付部24に、左右方向で同じ側にある前輪支持アーム17の取付具20を一体回動自在に外嵌することにより、前輪支持アーム17が軸サポート22に前輪支軸23の軸芯回りに上下揺動自在に支持されている。
前記アーム取付部17に対する取付具20の左右方向に関する位置は位置変更自在とされ、アーム取付部17に対して取付具20を左右方向に関して位置変更することにより、前輪14のトレッドが調整可能とされている。
【0013】
左右の各伝動ケース19は、ミッションケース12の左右両側に該ミッションケース12の側面から後方に向けて延出状とされて配置され、各伝動ケース19の前端側(一端側)は、ミッションケース12の側面にケース支持体25を介して左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されていて、該伝動ケース19の後部が上下に揺動可能とされており、伝動ケース19の後端側(他端側)にクローラ式走行装置18が設けられている。
左右の各ケース支持体25は、図2、4及び図7に示すように、ミッションケース12の側面に固定された取付部材26と、この取付部材26に支持された外筒27と、この外筒27に挿通された内筒28とを備えてなる。
【0014】
取付部材26は、ミッションケース12の側面にボルト固定されたフランジ26Aと、このフランジ26Aから左右方向外方に突出する左右方向の軸芯を有する筒状の回動支持部26Bとから構成されている。
外筒27は、左右方向の軸芯を有する六角筒状の外筒本体27Aと、前記取付部材26の回動支持部26Bに軸芯回りに回動自在に外嵌された円筒部27Bとから構成されていて、外筒27が取付部材26に左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されている。
また、外筒27の左右方向中途部は、ミッションケース12に固定の軸受フレーム29に取り付けられた軸受装置30に軸芯回りに回動自在に支持されている。
【0015】
内筒28は、外筒本体27Aに軸芯回りに一体回動自在で軸芯方向移動自在に内嵌された本体部分28Aと、この本体部分28Aの左右方向外端から外方に延出された円筒部28Bと、この円筒部28Bの左右方向内端側に固定されたフランジ28Cとから構成されている。
一方、伝動ケース19の前部の左右両側には、左右方向の軸芯を有する筒状の軸ホルダ31が固定され、左右方向内側の軸ホルダ31の左右方向外端側が伝動ケース19に固定され該軸ホルダ31の左右方向内端部にフランジ32が設けられ、左右方向内側の軸ホルダ31に前記内筒28の円筒部28Bが挿通されていると共に該軸ホルダ31の前記フランジ32に内筒28に設けられた前記フランジ28Cがボルト固定されている。
【0016】
これによって、伝動ケース19の前部がミッションケース12の側面にケース支持体25を介して左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されている。
また、外筒27と内筒28とは、例えば、外筒27に固定されたナット部材33に螺合され且つ外筒27を貫通して内筒28に接当するボルトによって左右方向の相対移動が規制され、該ボルトを緩めることにより、外筒27と内筒28との左右方向の相対移動が許容されるように構成されており、これによって、左右のクローラ式走行装置18のトレッドの調整が可能とされている。
【0017】
一方、左右の各前輪支軸23には後方側に向けて突出する第1連動ブラケット34が設けられ、左右の各ケース支持体25の外筒27には前方側に突出する第2連動ブラケット35が設けられており、左右方向で同じ側にある第1・2ブラケット34,35は連動リンク36によって連動連結されている。
また、左右の各ケース支持体25の外筒27には上方側に延出された第3連動ブラケット37が設けられている。
また、走行機体9の架台13の左右両側に形成された前後方向のガイド溝に左右方向の軸芯を有する軸サポート38が前後方向移動可能に支持され、この軸サポート38にはローリング軸39が左右両側から突出するように挿通されていると共に、該ローリング軸39は軸サポート38に左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されている。
【0018】
ローリング軸39の左右一方には上方側に向けて突出する上レバー41が設けられ、ローリング軸39の左右他方には下方側に向けて突出する下レバー42が設けられており、上下のレバー41,42と、これら上下のレバー41,42と左右方向で同じ側にある第3連動ブラケット37とは連結リンク43で連動連結されている。
また、架台13には、昇降シリンダ44とローリングシリンダ45とが設けられ、これら昇降シリンダ44とローリングシリンダ45とは油圧シリンダによって構成されている。
【0019】
昇降シリンダ44のチューブ44aは架台13に固定され、ピストンロッド44bは後方側に向けて突出されていて軸サポート38に連結されている。
また、ローリングシリンダ45のチューブ45aは架台13に前部側の枢支部46を中心として左右軸回りに回動自在に支持され、ピストンロッド45bは後方側に向けて突出されていて、ローリング軸39の左側に下方側に突出するように設けられたアーム47に枢着されている。
前記昇降シリンダ44のピストンロッド44bを進退させると軸サポート38及びローリング軸39が前後に移動し、左右の連結リンク43によって左右の第3連動ブラケット37が押し引きされて左右の伝動ケース19が共に上下に揺動すると共に、左右の第2連動ブラケット35が上下に揺動して左右の連動リンク36を介して左右の第1連動ブラケット34が押し引きされて左右の前輪支持アーム17が共に上下に揺動する(左右の伝動ケース19の上下揺動に連動して左右の前輪支持アーム17が上下揺動する)。
【0020】
これによって、左右の前輪14と左右のクローラ式走行装置18とが、同時に、走行機体9に対して相対的に上下動し且つ前輪14及びクローラベルト15が接地していることから、必然的に走行機体9が接地面に対して昇降するよう構成されている。
また、ローリングシリンダ45のピストンロッド45bを進退させるとローリング軸39が回動して、一方の連結リンク43が一方の第3連動ブラケット37を押動すると共に他方の連結リンク43が他方の第3連動ブラケット37を引動する。
これによって、左右一方の前輪14及びクローラ式走行装置18が走行機体9に対して相対的に上昇すると共に、左右他方の前輪14及びクローラ式走行装置18が走行機体9に対して相対的に下降し、走行機体9の左右方向に対する傾きを修正することができるよう構成されている。
【0021】
前記支持フレーム5はミッションケース12の後部上部側に取付固定されていて、ミッションケース12から後方側に向けて延出されると共に後端側で上方側に向けて延出されており、この支持フレーム5の後端側に操向ハンドル7が連結されている。
図5及び図6に示すように、ミッションケース12には、左右の側面から左右方向外方に突出する左右一対の出力軸49が設けられ、左右各出力軸49は左右方向で同じ側にあるケース支持体25の取付部材26及び内筒28に挿通されている。
左右の出力軸49の左右方向内端側はミッションケース12内で左右方向突合わせ状とされ、この突合わせ部分に、出力ギヤ50が左右方向の軸芯回りに回動自在に外嵌されており、この出力ギヤ50には、ミッションケース12内の動力伝達機構51を介してエンジン11からの動力が伝達され、この出力ギヤ50から左右の操向クラッチ52を介して左右の出力軸49に動力が断続自在に伝達されるよう構成されている。
【0022】
動力伝達機構51は、図5に示すように、ベルト巻掛伝動機構のプーリー53を介してエンジン11からの動力が伝達される第1軸54と、この第1軸54に平行な第2軸55(伝動軸)及び第3軸56とを有する。
第1軸54にはギヤ57が一体回転自在に設けられ、このギヤ57は第2軸55上の遊転ギヤ58に歯合しており、この遊転ギヤ58には第2軸55と一体回転自在で第2軸55上を軸方向に移動自在なクラッチギヤ59が係脱自在に係合しており、前記ギヤ57、遊転ギヤ58及びクラッチギヤ59を介して、第1軸54から第2軸55に動力が断続自在に伝達される。
【0023】
また、第2軸55には、1速ギヤ60と2速ギヤ61とバックギヤ62とが一体回転自在に設けられ、第3軸56には、該第3軸56の軸方向に移動自在で該第3軸56と一体回転するシフトギヤ63と、前記出力ギヤ50に歯合し且つ第3軸56と一体回転する伝動ギヤ64とが設けられている。
シフトギヤ63には、1速ギヤ60に歯合する第1ギヤ65と、2速ギヤ61に歯合する第2ギヤ66と、クラッチギヤ59に歯合する第3ギヤ67とが設けられ、該シフトギヤ63を軸方向に移動させることにより、第1軸54の動力が変速されて第3軸56に伝達されるように構成されていると共に、バックギヤ62に係合する図示省略の逆転ギヤ機構のギヤにシフトギヤ63の第1ギヤ65を歯合させることにより、第2軸55の回転動力が逆転されて第3軸56に伝達されるよう構成されている。
【0024】
シフトギヤ63、1速ギヤ60、2速ギヤ61、クラッチギヤ59、バックギヤ62逆転ギヤ機構等によって走行系の変速機構を構成している(本実施形態では、クラッチギヤ59が走行系の変速機構の3速ギヤを兼ねている)。
また、シフトギヤ63をいずれのギヤにも歯合させないことにより、中立となり、第2軸55から第3軸56への動力伝達は行われない。
第3軸56に伝達された動力は伝動ギヤ64から出力ギヤ50,操向クラッチ52を介して出力軸49へと伝達される。
【0025】
また、前記第2軸55の左端側はミッションケース12から左方に突出され、その突出部分に株間クラッチ68と第1株間センサ69とが設けられている。
第1株間センサ69は第2軸55の一端側の突出端部に設けられ、株間クラッチ68は第1株間センサ69とミッションケース12との間に配置されている。
株間クラッチ68は電磁クラッチによって構成され、該株間クラッチ68の非作動時にあっては、第2軸55から該第2軸55上に相対回転自在に外嵌されたクラッチ軸70に動力が伝達されず、該株間クラッチ68はコイル71に電流を流す(株間クラッチ68を作動させる)ことによりロータ72を磁化(励磁)してステータ73を強く吸引することにより第2軸55からクラッチ軸70に動力が伝達されるよう構成されている。
【0026】
前記クラッチ軸70には、植付動力取出ギヤ列74の駆動側ギヤ74Aが一体回転自在に外嵌され、植付動力取出ギヤ列74の被駆動側ギヤ74Bは第3軸56上に一体回転自在に設けられた支持部材75に相対回転自在に外嵌されている。
この植付動力取出ギヤ列74の被駆動側ギヤ74Bから移植装置4に動力が伝達される。
第1株間センサ69は、回転パルスセンサによって構成され、第2軸55の回転数を計測(検出)してパルスを発生させるものである。
【0027】
この第1株間センサ69は、例えば、第2軸55と一体回転するセンサシャフトの回転をMREで検出する磁気抵抗素子式の回転センサが採用される。
前記操向クラッチ52は、移植機1の進行方向を変える場合に、曲がろうとする側の動力を断つためのものであり、図6に示すように、出力軸49に外嵌されたシフタ76と、該シフタ76を左右方向外方に押圧する作動スプリング77と、出力ギヤ50に設けられた挿入孔78に挿入されたボール79とを有し、出力軸49には前記ボール79が嵌り込むボール溝80が形成されている。
【0028】
シフタ76には、ミッションケース12に支持されたシフトフォーク81が係合しており、シフトフォーク81にはクラッチアーム82の基部側が連結されている。
操向クラッチ52が操作されていない時には、図6の左側の操向クラッチ52のように、作動スプリング77によってシフタ76が押圧されて該シフタ76がボール79をボール溝80に押し込むことにより出力ギヤ50からボール79を介して出力軸49に動力が伝達され、クラッチアーム82を上方に揺動させてシフトフォーク81によってシフタ76を左右方向中央側に移動させると(操向クラッチ52が切断操作されると)、図6の右側の操向クラッチ52のように、ボール79のシフタ76による押圧が解除されて該ボール79がボール溝80から抜けるので、出力ギヤ50から出力軸49への動力伝達が行われないように構成されている。
【0029】
左右の操向クラッチ52によって、左右のクローラ式走行装置18への動力伝達がそれぞれ独立して断続可能とされている。
一方、図7に示すように、前記伝動ケース19の前部には、左右の軸ホルダ31にわたって挿通され且つ左右の軸ホルダ31にベアリングを介して左右方向の軸芯回りに回動自在に支持された入力軸83が設けられている。
前記出力軸49と入力軸83とは連結軸84によって一体回転自在に連結されている。
前記連結軸84は、出力軸49にスプライン嵌合された内側スプライン筒84Aと、入力軸83にスプライン嵌合された外側スプライン筒84Bと、これらスプライン筒84A,84Bを連結する連結筒部84Cによって構成されていて、これによってクローラ式走行装置18のトレッド調整に対応できるように構成されている。
【0030】
左右の各伝動ケース19の後端側(他端側)の左右両側には筒状の軸ホルダ86が固定され、この左右の軸ホルダ86にわたってクローラ式走行装置18を駆動する駆動軸87が挿通され、この駆動軸87は左右の軸ホルダ86にベアリングを介して左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されている。
この駆動軸87は左右方向内側の軸ホルダ86から左右方向内方に向けて突出状とされている。
伝動ケース19の前部側に設けられた前記入力軸83の左右方向中途部には、伝動ケース19内に配置された駆動側スプロケット88が一体回動自在に設けられ、伝動ケース19の後部側に設けられた前記駆動軸87の左右方向中途部には、伝動ケース19内に配置された被駆動側スプロケット89が一体回動自在に設けられており、駆動側スプロケット88と被駆動側スプロケット89とにわたってエンドレスのチェーン90が巻き掛けられ、入力軸83に伝達された動力が駆動側スプロケット88→チェーン90→被駆動側スプロケット89を経て駆動軸87に伝達されて該駆動軸87がエンジン11からの動力により回転駆動されるよう構成されている。
【0031】
なお、前記構成では入力軸83から駆動軸87にチェーン巻掛け伝動機構で動力を伝達しているが、それ以外の動力伝達機構を採用してもよい。
また、左右各伝動ケース19の前部側には操向ブレーキ91が設けられており、該操向ブレーキ91は、伝動ケース19の前部側の外側の軸ホルダ31に固定されたブレーキケース92に収納されている。
この操向ブレーキ91は、図8に示すように、本実施形態では、内部拡張式ドラムブレーキが採用され、入力軸83と一体回転するブレーキドラム93と、該ブレーキドラム93の内側に配置された一対のブレーキシュー94と、このブレーキシュー94の一端側を支持する支軸95と、ブレーキシュー94の他端側間に介在されたブレーキカム96と、ブレーキシュー94を相互に引き寄せる方向に付勢するリターンスプリング97とを有する。
【0032】
ブレーキシュー94は、前記支軸95によってブレーキケース92に揺動自在に支持されていてブレーキドラム93に対して近接離反自在とされており、ブレーキカム96には、ブレーキケース92の外側に配置されたブレーキアーム98の基部側が連結されている。
前記操向ブレーキ91にあっては、ブレーキアーム98を矢示A方向に引動することにより、ブレーキカム96が回され、これによってブレーキシュー94が外側に広がって(ブレーキドラム93内面に近接移動して)ブレーキドラム93に押しつけられ、ブレーキシュー94とブレーキドラム93との間の摩擦力によって入力軸83が制動される。これによって、左右のクローラ式走行装置18が独立して制動可能とされている。
【0033】
前記クローラ式走行装置18は、図9〜図14に示すように、上部の駆動輪99(スプロケット)と、駆動輪99の前方側で且つ下方側に配置された前アイドラ100と、駆動輪99の後方側で且つ下方側に配置された後アイドラ101と、これら駆動輪99、前後アイドラ100,101にわたって巻き掛けられた無端帯状の前記クローラベルト15と、前後アイドラ100,49が取り付けられていると共に駆動軸87の軸芯X回りに前後に揺動自在な揺動フレーム102とを有する。
前記駆動輪99は、伝動ケース19の後端側に設けられた前記駆動軸87の、軸ホルダ86から突出した部分に一体回転自在に取付固定されており、該駆動軸87が回転駆動されることにより駆動輪99が回転駆動され、これにより該駆動輪99と係合するクローラベルト15が周方向(長手方向)に循環回走(回転)され、クローラ式走行装置18が前進又は後進するよう構成されている。
【0034】
本実施形態では、クローラベルト15は芯金無しタイプで且つ幅狭タイプのクローラベルト15が採用され、該クローラベルト15の内周面の幅方向(左右方向)中央側に駆動突起103が周方向に間隔をおいて形成され、駆動輪99の外周側には、前記駆動突起103が挿入する挿入部104が駆動突起103のピッチに合わせて設けられており、駆動輪99が回転駆動することにより、挿入部104の係合壁105がクローラベルト15の駆動突起103を押圧することにより、駆動輪99から駆動突起103を介してクローラベルト15の本体部分に駆動力が伝達されて、クローラベルト15が周方向に循環回走されるよう構成されている。
【0035】
前後アイドラ100,101は、駆動突起103の左右両側に配置された左右一対のホイル部100A,101Aを有し、駆動突起103の左右両側のクローラベルト15内周面を転動する(したがって、駆動突起103はクローラベルト15の外れ(脱輪)を防止するガイドとしての機能を有する)。
揺動フレーム102は、前後アイドラ100,101を支持するメインフレーム106と、このメインフレーム106を駆動軸87の軸芯X回りに揺動自在に支持する左右方向内外一対の揺動ブラケット107,108とを有する。
【0036】
メインフレーム106は、前アイドラ100を左右軸回りに回転自在に支持する前支持ブラケット109と、後アイドラ101を左右軸回りに回転自在に支持する後支持ブラケット110と、これら前後支持ブラケット109,110の間に位置する支持フレーム111とを有する。
支持フレーム111は、前支持ブラケット109の後壁に固定された前プレート112と、この前プレート112から後方に延出された前パイプ113と、後支持ブラケット110の前面から前方に延出された後パイプ114と、この後パイプ114が下部に固定された支柱部材115と、この支柱部材115の上部に固定された連結パイプ116と、前プレート112と支柱部材115との間に設けられた間隔調整手段117と、支柱部材115の下端に設けられた底板118とから主構成されている。
【0037】
前パイプ113と後パイプ114とは前後方向の軸芯を有する六角筒体から構成され、クローラベルト15の幅方向(左右方向)中央側に配置され、前パイプ113の後部側は後パイプ114の前部側に前後方向移動自在で相対回動不能に挿通されている。
支柱部材115は、左右方向で対向する壁部と前後方向で対向する壁部とからから構成された上下方向の軸芯を有する四角筒体によって構成され、駆動輪99の下方に配置されており、後パイプ114は支柱部材115の下部を前後方向に貫通して固定されている。
連結パイプ116は、左右方向の軸芯を有する円筒体によって構成され左右方向内側が支柱部材115の上部を左右方向に貫通して固定され、左右方向外側が支柱部材115から左右方向外方に突出状とされている。
【0038】
また、連結パイプ116の内部の孔は、その左右方向外側が左右方向内側よりも径大に形成されて段付状とされている。
間隔調整手段117は、クローラベルト15の幅方向中央側に配置され、前プレート112の上端側にその前端側が取付固定されたネジ軸119と、このネジ軸119の後部が挿通され且つ支柱部材115を前後方向に貫通して固定された支持筒120とを有する。
支持筒120は連結パイプ116と後パイプ114との間に位置し、ネジ軸119には、支柱部材115の前側で螺合された前後一対のナット121が設けられている。
【0039】
後側のナット121は調整用ナットで、前側のナット121はロック用ナットである。
調整用ナット121を締め付け方向に回動させることにより、前プレート112が前方に押圧されて前アイドラ100がクローラベルト15を押圧し、該クローラベルト15に張りを与える。
底板118は、後方に行くに従って下方に移行する傾斜状に形成され、中途部が支柱部材115の下端に固着され、前端側が後パイプ114の下面前端側に固着され、後端側が後支持ブラケット110の前面下端に固着されている。
【0040】
外側の揺動ブラケット107は、伝動ケース19の後端側に設けられた内側の軸ホルダ86に軸芯回り(駆動軸87の軸芯X回り)に回動自在に外嵌された回動筒122と、この回動筒122から下方に延出された左右一対の揺動アーム123とを有する。
この外側の揺動ブラケット107の揺動アーム123の下部に、前記メインフレーム106の連結パイプ116の左右方向外側が左右方向に貫通して固着されており、これによって、メインフレーム106が外側の揺動ブラケット107と共に駆動軸87の軸芯X回りに一体的に揺動するよう構成されている。
【0041】
外側の揺動ブラケット107の左右揺動アーム123間の隙間はカバー板で閉塞されている。
内側の揺動ブラケット108は、駆動軸87の駆動輪99から左右方向内方に突出した部分にベアリングを介して駆動軸87の軸芯X回りに回動自在に支持された回動筒124と、この回動筒124から下方に延出された揺動アーム125とを有する。
この内側の揺動ブラケット108の揺動アーム125の下部には、左右方向の軸芯を有する連結軸126が左右方向外方に突出状に設けられていると共に、平面視左右方向外方に開放状のコ字形に形成された嵌合部材127が設けられている。
【0042】
連結軸126は、連結パイプ116の左右方向内側に挿通されると共に、該連結軸126に、連結パイプ116に左右方向外方側から挿入されたボルト128が螺合されており、嵌合部材127に支柱部材115の上部が内嵌状に嵌合されており、これによってメインフレーム106及び外側の揺動フレーム107と内側の揺動フレーム108とが駆動軸87の軸芯X回りに一体揺動するように連結されている。
前支持ブラケット109の上面後部側と、後支持ブラケット110の上面前部側とに固着された取付板129にスクレーパ130が取り付けられている。
【0043】
前後各スクレーパ130は、アイドラ100,101の左右ホイル部100A,101A間に挿入状とされていて、アイドラ100,101のホイル部100A,101A間に侵入した泥土等を排除する。
なお、本実施形態のクローラ式走行装置18は、駆動輪99に対する前アイドラ100の前後方向に関する距離は、駆動輪99に対する後アイドラ101の前後方向に関する距離よりも若干長くなるように構成されている。
一方、圃場には、複数の畝Rにわたってマルチフィルムが敷設され、畝間溝Mには、マルチフィルムの浮き上がりを防止する盛り土131が畝Rの長手方向に所定間隔をおいて設けられている。
【0044】
この盛り土131は、畝Rの左右両側の畝間溝Mにおいて、前後方向に関して同位置に設けられるか、または、前後方向に関して位置ズレさせて千鳥に設けられる。
盛り土131が設けられた畝間溝Mを車輪が走行する場合は、該車輪は、盛り土131から完全に下りてから盛り土131に上るので走行機体9(移植機1)の上下の動きは比較的大きいと共に、車輪は比較的短い距離で盛り土131に上り、比較的短い距離で盛り土131から下りることから、車輪が盛り土131を乗り越えることに起因する植付体158の変動は大きい。
【0045】
また、盛り土131が畝Rの左右両側の畝間溝Mにおいて、千鳥に設けられている場合は、左右の揺れも大きい。
これに対して、盛り土131が設けられた畝間溝Mを前記構成のクローラ式走行装置18が走行する場合にあっては、クローラ式走行装置18は前アイドラ100から後アイドラ101の間で接地するので車輪に比べて接地長が長く、また、前後アイドラ101は揺動フレーム102と共に地面の凹凸に追従して駆動軸87の軸芯X回りに揺動することから、図15に示すように、クローラ式走行装置18が畝間溝Mに設けられた盛り土131(コブ)を乗り越えるときには、車輪に比べて長い距離をかけて上り、また、長い距離をかけて下るので、緩やかに上下動し、このため盛り土131があることによる移植機1の前後左右の揺れの動きをゆっくりとさせることができ、クローラ式走行装置18が盛り土131を乗り越えることに起因する植付体158の変動は少ない。
【0046】
特に、本実施形態では、苗2の植付姿勢において、植付体158が左右のクローラ式走行装置18の間で且つ前後方向に関して駆動軸87(揺動支点)の近傍に位置するようにしているので、植付体158の、走行機体9の揺れに起因する上下動、前後傾斜の動きを極力少なくすることができ、苗2の植付け精度を向上させることができる。
また、盛り土131が畝Rの長手方向に所定間隔をおいて連続している所を走行する場合、車輪では、盛り土131に上った後に次の盛り土131に上る前に、一度、盛り土131から完全に下りるので、走行機体9が大きく上下動するが、クローラ式走行装置18にあっては、後部が盛り土131に位置している状態で前部が次の盛り土131に上り始めることから、車輪の場合に比べて、上下の移動高さは小さくなり、盛り土131の凹凸に起因する走行機体9の揺れを大幅に低減することができる。
【0047】
したがって、通常、クローラ式走行装置18の接地長は、盛り土131の間隔よりも大きくなるように形成される。
また、前記構成のクローラ式走行装置18にあっては、前後アイドラ101間には転輪が設けられていなく、また、クローラベルト15の前後アイドラ101間の上方側には、空間が設けられていて、クローラベルト15は前後アイドラ101間で上方に向けて湾曲状に撓み得るように構成されている。
これによって、凹凸路面を走行する場合において、クローラ式走行装置18が突部を乗り越える際に、路面からの押圧力を受けてクローラベルト15が前後アイドラ101間で上方に向けて撓むことにより、突部の乗り越えがスムーズに行える。
【0048】
また、本実施形態のクローラ式走行装置18にあっては、前アイドラ100の下部後方側及び後アイドラ101の下部前方側に、クローラベルト15の前後アイドラ101間の部分の内周面側から、アイドラとクローラベルト15との間に石等の異物が噛み込まれて脱輪する(クローラベルト15が外れる)のを防止する異物噛込み防止部材132が設けられている。
この異物噛込み防止部材132は、板厚方向が左右方向と一致するように配置された板材によって形成されており、前側及び後側ともに左右一対設けられていて、それぞれ駆動突起103を挟んで該駆動突起103の左右両側に配置されている。
【0049】
したがって、前側の異物噛込み防止部材132は前アイドラ100の各ホイル部100Aの後方側に位置し、後側の異物噛込み防止部材132は後アイドラ101の各ホイル部101Aの前方側に位置しており、前側の異物噛込み防止部材132の上部は、前プレート112及び前支持ブラケット109に溶接等によって固着され、後側の異物噛込み防止部材132の上部は、後支持ブラケット110に溶接等によって固着されている。
また、前側の左右の異物噛込み防止部材132間は補強板133によって連結され、後側の左右の異物噛込み防止部材132間は幅狭に形成された底板118の後端側によって連結されている
また、前後の異物噛込み防止部材132の下面132aは、クローラベルト15の内周面との間に、クローラベルト15が前後アイドラ101間で上方に撓むのを許容する隙間が設けられていると共に、該前後の異物噛込み防止部材132の下面132aは、クローラ式走行装置18の左右方向中央側(前後アイドラ101間の左右方向中央側)に行くに従って、上方に移行する傾斜する傾斜状に形成されていて、クローラベルト15が前後アイドラ101間で上方に撓むのを許容しながらも、前側の異物噛込み防止部材132の前端側及び後側の異物噛込み防止部材132の後端側をクローラベルト15の内周面に近づけている。
【0050】
また、前側の異物噛込み防止部材132の前面、及び、後側の異物噛込み防止部材132の後面は、アイドラ100,101のホイル部100A,101Aに近接させることができるようにアイドラ100,101のホイル部100A,101Aの外周面に沿った円弧状に形成されている。
前記異物噛込み防止部材132は、クローラベルト15が前後アイドラ101,101間で所定以上に(過度に)上方に撓む際に、この過度の撓みを規制する機能を有する。これによって、旋回したり突起物に乗り上げたりして、クローラベルト15が捩られるような場合に、クローラベルト15が過度に撓むことによるクローラベルト15の外れを防止することができる。
【0051】
なお、畝間溝Mの凹凸路面を走行する際における盛り土131の乗り越え時の撓みにあっては問題はない。
また、前後の異物噛込み防止部材132は駆動突起103を挟むように左右一対設けられているので、クローラベルト15が捻れて外れようとする時の規制ガイドとしての機能を有する。
また、前記構成のクローラ式走行装置18にあっては、前進走行する際において、クローラ式走行装置18に地面からの反力によって前アイドラ100側が浮き上がるような力が作用し、後アイドラ101側の接地荷重が大きくなり、柔らかい圃場では後アイドラ101側が沈み込みやすい。
【0052】
そこで、本実施形態の移植機1にあっては、揺動フレーム102を前回りに揺動させる方向に付勢する付勢手段134が設けられている。
この付勢手段134は、伝動ケース19の前部側に左右軸回りに回動自在に支持された回動軸135と、一端側がこの回動軸135を該回動軸135の軸芯に直交する方向で挿通し他端側が揺動フレーム102に駆動軸87より下側で枢支連結されたパイプからなるロッド136と、揺動フレーム102を前回りに揺動させる方向に付勢するように回動軸135とロッド136の他端側との間で該ロッド136に套嵌されたコイルバネ137とを備えて構成されている。
【0053】
回動軸135は、伝動ケース19の左右両側面に、下方突出状に固定された左右一対のブラケット138を挿通して該ブラケット138に回動自在に支持されている。
ロッド136の他端側は外側の揺動ブラケット107の外側の揺動アーム123に設けられた延設部123aに枢軸139を介して左右方向の軸芯回りに回動自在に枢支連結されている。
コイルバネ137の一端はバネ受け140を介して回動軸135に接当し、他端側はロッド136に回動軸135と枢軸139との間で套嵌されたバネ受け141に接当していると共に、該バネ受け141はロッド136に挿通された位置決めピン142(位置決め部材)によって位置決めされている。
【0054】
したがって、コイルバネ137の付勢力によってロッド136が外側の揺動ブラケット107を駆動軸87の下側で後方側に押圧することにより、揺動フレーム102が前回りに揺動する方向に付勢され、前後のアイドラ100,101の接地圧が略均等となるようにしている。
前記位置決めピンの位置142を挿通する孔をロッド136の軸芯方向に複数形成して、位置決めピン142のロッド136の軸芯方向に関する位置を変更できるようにすることにより、コイルバネ137の付勢力を調整することができる。
【0055】
また、ロッド136の他端側は、ロッド136の長手方向に位置変更自在な、その他の位置決め部材によって位置決めしてもよい。
また、前記ロッド136の一端側には、回動軸135に接当することで伝動ケース19に対する揺動フレーム102の回動を規制するストッパ143が設けられている。
このストッパ143はロッド136の一端側に設けられたネジ軸144に外嵌された座金等からなる当たり145と、この当たりを固定すべくネジ軸144に螺合された一対のナット146から構成されている。
【0056】
図16に示すように、クローラ式走行装置18の揺動フレーム102の前側が駆動軸87の軸芯Xを中心として下方に揺動すると、回動軸135と枢軸139との距離が大きくなっていき、ストッパ143が回動軸135に接当すると揺動フレーム102の下方揺動が規制される。
したがって、走行機体9を上昇させていくとストッパ143が回動軸135に接当し、さらに、上昇させて走行機体9を最上げ位置にすると、後アイドラ101側の接地部分を中心として前アイドラ100側が持ち上げられるよう構成されている。これによって、舗装路面を走行させる際等において、直進走行や旋回をスムーズに行える。
【0057】
また、揺動フレーム102の前側が駆動軸87の軸芯Xを中心として上方に揺動すると、回動軸135と枢軸139との距離が小さくなっていき、コイルバネ137が圧縮され、コイルバネ137が圧縮限界になると揺動フレーム102の上方揺動が規制される。
なお、移植機1が作業姿勢にあるときには、クローラ式走行装置18は駆動軸87の軸芯Xを中心として上下に揺動可能である。
図17に示すように、前記操向ハンドル7には左右一対の操向クラッチレバー147が設けられている。
【0058】
左右の各操向クラッチレバー147は左右方向で同じ側にある操向クラッチ52を操作するクラッチアーム82にクラッチ用ケーブル148を介して連動連結されていると共に左右方向で同じ側にある操向ブレーキ91を操作するブレーキアーム98にブレーキ用ケーブル149を介して連動連結されている。
クラッチ用ケーブル148及びブレーキ用ケーブル149はインナケーブルとアウタケーブルとを有するボーデンケーブルによって構成され、各ケーブル148,149のインナケーブルの一端側は操向クラッチレバー147に連結され、クラッチ用ケーブル148のインナケーブルの他端側はクラッチアーム82の先端側に連結され、ブレーキ用ケーブル149のインナケーブルの他端側は連動アーム150及びスプリング151を介してブレーキアーム98の先端側に連動連結されている。
【0059】
前記連動アーム150は、ベルクランク状に形成され、一端側にブレーキ用ケーブル149のインナケーブルの他端側が連結されている。
連動アーム150の中途部は伝動ケース19の前端側に固定されたブラケット152に設けられた回動支軸153に枢支され、連動アーム150の他端側にスプリング151の一端側が掛止され、スプリング151の他端側はブレーキアーム98の先端側に掛止されている。
したがって、操向クラッチレバー147を握って実線で示す位置から揺動支軸210回りに揺動操作することにより、該操作した操向クラッチレバー147と左右方向で同じ側にある操向クラッチ52が切れると共に該操作した操向クラッチレバー147と左右方向で同じ側にある操向ブレーキ91が効く(クローラ式走行装置18が制動される)ように構成されている。
【0060】
また、本実施形態では、操向クラッチレバー147を実線で示す位置から一点鎖線で示す位置に揺動操作すると、操向クラッチ52が切れると共に操向ブレーキ91が効き始め、さらに、操向クラッチレバー147を2点鎖線で示す位置にすると操向ブレーキ91が効くようになっており、操向ブレーキ91は操向クラッチ52が切断された後にクローラ式走行装置18を制動する。
この操向クラッチ52の切断に対する操向ブレーキ91の効きの遅れは、クラッチ用ケーブル148のインナケーブルの移動量とブレーキ用ケーブル149のインナケーブルの移動量との差やスプリング151の伸び等によって実現させることができる。
【0061】
前記構成の移植機1にあっては、圃場の枕地等において旋回する場合、クローラ式走行装置18の前側が浮かない程度に走行機体9を上昇させ、操向ハンドル7を押し下げて前輪14のみを地面から浮かせ、(クローラ式走行装置18の前アイドラ100側が地面から浮いていない状態で)旋回したい側の操向クラッチ52を操作して操向クラッチ52を切ると共に操向ブレーキ91を効かせて走行させることにより、移植機1の後輪の代わりにクローラ式走行装置18を採用した移植機1であっても、前輪14を押し下げる程度の軽いハンドル操作荷重で、移植機1を小回り(小さい旋回半径で)旋回させることができる。
【0062】
なお、走行機体9を最上げ位置にしてクローラ式走行装置18の前アイドラ100側を地面から浮かせると共に、操向ハンドル7を押し下げて後アイドラ101側の接地点を中心として前輪14を地面から浮かせた状態で旋回することもできる。
操向ブレーキ91を伝動ケース19の後端側に設けて駆動軸87を制動するようにしてもよいが、そうすると、スプリング151や連動アーム150やブレーキ用ケーブル149等に泥がかかりやすくなり、操向ブレーキ91の作動に支障が生じる惧れがあるが、操向ブレーキ91を伝動ケース19の前端側に設けることにより、この問題を解決することができる。
【0063】
移植装置4は、苗トレイを載置して支持する苗載せ台156と、この苗載せ台156上の苗トレイから苗2を取り出す苗取出し装置157と、この苗取出し装置157から供給された苗2を畝Rに植え付ける植付体158と、畝Rに植え付けられた苗2の左右両側を鎮圧する鎮圧輪159(覆土輪)と、圃場に敷設されたマルチフィルムに植付用穴を形成する穿孔体160と、この穿孔体160の前方側で畝Rの上面を転動する整地ローラ161(検出ローラ)とを備えている。
苗トレイは、プラスチック製で薄肉に形成されていて可撓性を有し、縦横に所定ピッチで碁盤目状に配列された多数のポット部を備えており、各ポット部の開口縁部は平板状の薄肉壁部で相互に接続されている。
【0064】
この苗トレイには、各ポット部に供給された床土に播種して育苗されたソイルブロック苗2が育成されている。
苗載せ台156は、操向ハンドル7の前方側に位置しており、前方に行くに従って下方に移行する傾斜状に設けられていて苗トレイの底部が載置されて該苗トレイを支持する載置板を有し、支持フレーム5に左右方向移動可能に支持されている。
また、苗載せ台156は横送り機構によって、苗トレイのポット部の横方向の1ピッチ分、間欠的に左右方向に往復横送り可能とされ、また、苗載せ台156には、その左右方向の移動域の左右両側の端部において、苗トレイをポット部の縦方向の1ピッチ分、下方側に縦送りする縦送り機構が備えられている。
【0065】
苗取出し装置157は、ポット部から苗2を取り出す苗取出爪162を備えると共にミッションケース12内の前記植付動力取出ギヤ列74の被駆動側ギヤ74Bからの動力によって駆動されて苗取出爪162を動作させる運動機構を備え、ポット部内の床土に対して前側から苗取出爪162を進行させて該床土を突き刺すと共に突き刺した後に苗取出爪162を後退させることによりポット部から苗2を取り出し可能としている。
また、ポット部から取り出された苗2は、苗受取り位置に位置する植付体158の上方に移送されて植付体158へと放出可能とされている。
【0066】
植付体158は、上側から苗2が供給できるように上端が開放状とされ、内部に苗2を保持でき且つ該苗2を下方に放出できるように下部が開閉自在とされている。
この植付体158は、図18に示すように、植付フレーム163に支持された昇降機構164によって昇降自在に支持され、植付フレーム163は、前端側がミッションケース12の側面に左右軸回りに回動自在に支持されていて上下揺動自在とされている。
ミッションケース12には、植付フレーム163の前端の回動軸芯と同芯状に動力取出軸165が設けられ、この動力取出軸165に前記植付動力取出ギヤ列74の被駆動側ギヤ74Bから動力が伝達されると共に、該動力取出軸165から、植付フレーム163に設けられた伝動ケース166内のチェーン巻掛伝動機構を介して前記昇降機構164に動力が伝達されて該昇降機構164が駆動される。
【0067】
植付体158は上下移動範囲の上死点又はその付近の苗受取り位置において閉じた状態で苗取出し装置157から苗2が供給され、内部に苗2を保持した状態で下降し、上下移動範囲の下死点側で畝Rに突入し且つ開くことにより、畝Rに植え穴を形成する共に該植え穴に苗2を放出する。これにより苗2が畝Rに植え付けられる。
鎮圧輪159は、植付体158の後方側に左右一対設けられていて、畝R上面の苗2の植付け位置の左右両側を転動し、植付体158で形成された植え穴に投入された苗2の左右両側の土を押圧する。
【0068】
また、鎮圧輪159は、植付フレーム163の後部側に支持機構167を介して支持されていて、該鎮圧輪159によって植付フレーム163の後部側を支持しており、鎮圧輪159と植付フレーム163との上下方向に関する距離を変えることにより、植付け深さを変更することができるよう構成されている。
整地ローラ161は、植付体158及び穿孔体160の前方側の畝R上面を転動し、畝R上面を整地すると共に畝R高さを検出するものである。
ミッションケース12の前部下端側には、その前部が支軸169を介して左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されていて後部側が前記支軸169の軸芯回りに上下揺動自在とされた揺動アーム170が設けられ、この揺動アーム17の後部側に整地ローラ161が該整地ローラ161と一体回転する回転支軸171を介して左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されていて、畝R上面に追従して該畝R上面を転動する。
【0069】
ミッションケース12に対する整地ローラ161の上下方向に関する動きは、揺動アーム170と一体揺動する第1、第2センサアーム172,173によって、ミッションケース12の上面側に設けた昇降バルブ174に伝えられ、この昇降バルブ174によって前記昇降シリンダ44を制御することにより、畝R上面との距離が一定に保たれるように走行機体9が昇降制御され、これによって植付フレーム163が畝R高さに追従して上下動して設定された植付深さで苗2が植え付けられるように構成されている。
一方、ミッションケース12に対する鎮圧輪159の上下方向に関する動きは、植付フレーム163から連動機構175を介して昇降バルブ174に伝えられ、鎮圧輪159の動きによっても畝R上面との距離が一定に保たれるように走行機体9を昇降制御できるように構成されているが、整地ローラ161が畝R高さを検知している状態では、鎮圧輪159の動きは昇降バルブ174には伝わらないようになっている。
【0070】
畝Rに苗2を植え始める時においては、例えば、整地ローラ161が畝Rで持ち上げられると、この動きが昇降バルブ174に伝えられて走行機体9が上昇し、昇降バルブ174が中立になると走行機体9の上昇が停止して、走行機体9が設定された高さとされる。このとき、植付フレーム163は、支持フレーム5側(走行機体9側)に支持されていて走行機体9と共に上昇し、所定の植付深さを保持する。この後、走行機体9を前進させて、鎮圧輪159によって植付フレーム163が支持されると鎮圧輪159で設定された植付深さで植え付けられる。
【0071】
また、畝Rの終わりでは、整地ローラ161が畝Rから外れるので、植え終わりの場合は、鎮圧輪159によって走行機体9を畝R高さに追従させて昇降制御する。
すなわち、整地ローラ161が畝Rから外れると、走行機体9は下降するが、植付フレーム163は鎮圧輪159によって支えられているので、走行機体9が少し下降すると、植付フレーム163と昇降バルブ174とを連動させる連動機構175によって昇降バルブ174が中立に切り換えられて、鎮圧輪159で設定された高さに走行機体9が保持される。
【0072】
これによって、植付体158によって、畝Rの一端から他端にわたって所定の植付深さで植え付けられる。
前記整地ローラ161を支持する揺動アーム170には、整地ローラ161の回転数を検出する第2株間センサ176が設けられている。
この第2株間センサ176は、回転パルスセンサによって構成され、整地ローラ161を支持する回転支軸171の回転数を計測(検出)してパルスを発生させるものである。
第2株間センサ176は、例えば、第1株間センサ69と同様の磁気抵抗素子式の回転センサが採用され、例えば、回転支軸171と一体回転する、スプロケット形状やギヤ形状の検出部材の凹凸を非接触センサでカウントする構造とされる。
【0073】
前記構成の移植機1にあっては、植付作業中においては、前記株間クラッチ68は、コントローラ168からのクラッチ切断指令信号によって切断された後、コントローラ168からのクラッチ接続指令信号によって接続され(株間クラッチ68はコントローラ168からの指令信号によって所要時間だけ切断され)、株間クラッチ68を所要時間だけ切断することで植付体158の植付動作が所要時間だけ停止され、植付体158の植付動作を所要時間だけ停止させることにより、苗2が所望の植付間隔(株間)で植え付けられるよう構成されている(なお、植付体158の動作を停止させずに連続的に植付動作させる場合もある)。
【0074】
植付体158が上死点(又はその近傍位置)にきたことを図示省略の位置検出センサによって検出されたときに、コントローラ168から株間クラッチ68にクラッチ切断指令信号が発信される。
また、コントローラ168から発信されるクラッチ接続指令信号は、第1株間センサ69又は第2株間センサ176のどちらか一方から発生するパルスに基づいて発信され、本実施形態では、基本的に第2株間センサ176のパルスを優先してクラッチ接続指令信号が発信される。
【0075】
すなわち、整地ローラ161の回転が所定の回転数でない場合(回転が安定しない場合、又は、回転していない場合)は、第1株間センサ69のパルス数によって株間クラッチ68の切断時間を制御し(植付間隔を制御し)、整地ローラ161の回転が安定した所定の回転数である場合は、第2株間センサ176のパルス数によって株間クラッチ68の切断時間を制御(植付間隔を制御)するようコントローラ168によって設定されている。
前記第1株間センサ69と、第2株間センサ176から発生するパルスはコントローラ168に入力され、整地ローラ161が安定した所定の回転数であるか否かは、前記コントローラ168によって第2株間センサ176の単位時間当たりのパルス数が所定以上であるか否か(所定以上の回転数であるか否か)で判別(判断)され、第2株間クラッチが発信する単位時間当たりのパルス数が所定以上である場合(整地ローラ161の回転数が所定以上である場合)に、整地ローラ161が正常に畝R上面を転動していると判断されて整地ローラ161の回転数で株間制御が行われ(第2株間センサ176のパルスに基づいて株間クラッチ68の切断時間を制御し)、第2株間センサ176の単位間当たりのパルス数が所定未満(整地ローラ161の回転数が所定未満)であれば、整地ローラ161の回転が止まっている又は不安定であると判断されて第2軸55の回転数で株間制御が行われる(第1株間センサ69のパルスに基づいて株間クラッチ68の切断時間を制御する)。
【0076】
第1株間センサ69と、第2株間センサ176からコントローラ168に入力されたパルスは、該コントローラ168にてパルス数がカウントされ、カウントされたパルス数が予め設定されたパルス数に達すると、株間クラッチ68をオフからオンに切り換えるクラッチ接続指令信号を株間クラッチ68に発信する。
これにより、設定した植付間隔で苗2が植え付けられ、第1株間センサ69又は第2株間センサ176からのパルスのカウント数を変更して株間クラッチ68の切断時間を変更することにより、植付間隔を調整することができる。
【0077】
なお、整地ローラ161が水平面を転動すると共に走行体3が水平路面を走行する場合に、整地ローラ161と走行体3が同じ距離移動した場合における、第1株間センサと第2株間センサとが発生するパルス数は同じパルス数となるように設定されており、したがって、第1株間センサ69又は第2株間センサ176のどちらのパルスのカウント数によっても理論上は(通常は)同じ株間で苗2が植え付けられるようになっている。
畝間溝Mに盛り土131がある場合など、畝間溝Mが凹凸路面である場合、移植機1がデコボコ状態の畝間溝Mを走行すると、移植機1の水平移動距離と、走行体3の推進機構10が盛り土を乗り越えるときの道程とが異なるので、走行系の動力伝達経路の伝動軸である第2軸55の回転数を検出して株間クラッチ68の切断時間を制御するようにしていると、株間にばらつきが生じるが、整地ローラ161は畝Rの上面を転動するので、基本的に整地ローラ161の回転数によって株間を制御することにより、株間を正確に制御することができる。
【0078】
また、畝Rは一端側から他端側にかけて畝成形器を移動させることにより成形されるので、畝Rの成形終わり側の上面の形状が乱れている場合がある。このような場合に整地ローラ161がスリップなどして正常に回転しない場合があり、苗2が正常に植え付けられないことが考えられる。
また、畝Rの終わり(1畝における植付作業の終端側)では、整地ローラ161が畝Rから外れるので、整地ローラ161の回転数を検出して株間を制御するという設定にしておくと、畝Rの終わりでは、植付作業が行えないこととなり、手植えをしなければならないという問題がある。
【0079】
また、植付作業を行う前に、苗トレイの最初の横一列の一番端の苗2を苗取出位置に位置させるために移植装置4(苗載せ台156、苗取出爪162、植付体158等)を動かす(苗トレイを空送りする)ことがあるが、この場合において、シフトギヤ63を中立位置にして、走行しないで移植装置4を動かすが、この場合においても、整地ローラ161の回転数を検出して苗2を植え付けるという設定にしておくと、整地ローラ161が回転しないので、苗トレイの空送り作業が行えないこととなる。
また、畝Rの一端側から他端側の間の部分において、何らかの原因(例えば、整地ローラの回転部分に泥が詰まった場合など)で整地ローラが回転しない又は回転抵抗が大きくスリップして正常に回転しない場合にも、整地ローラ161の回転数を検出して苗2を植え付けるという設定にしておくと、正常な植付作業が行えないこととなる。
【0080】
したがって、本実施形態では、整地ローラ161が回転しない又は正常に回転しない場合を想定し、この場合には、走行系の伝動軸である第2軸55の回転数を検出して株間の制御を行うようにしている。
前述したように、畝Rの大部分での植付作業については整地ローラ161の回転数を検出して株間クラッチ68を制御するので、畝間溝Mが凹凸路面であってもその影響を受けずに精度のよい植付間隔で植付作業が行え(凹凸路面を走行しながら植付作業する際において、植付間隔が大きく変化する(ばらつく)のを防止することができ)、整地ローラ161によって植付作業が行えない場合には、走行系の伝動軸である第2軸55の回転数を検出して株間クラッチ68を制御するので、整地ローラ161の回転数が安定しない場合であっても植付作業が行える。
【0081】
穿孔体160は、図19〜21に示すように、昇降機構177を介して植付フレーム163に昇降自在に支持されており、整地ローラ161の後方側で且つ植付体158の前方側に配置され、下降した際にマルチフィルムに接触させることで、熱の作用でマルチフィルムを溶かすことにより、苗2を植えるための(植付体158を畝Rに突入させるための)植付用穴をマルチフィルムに形成する。
植付体158は、このマルチフィルムに穿孔された植付用穴を挿通して畝Rに突入する。
【0082】
昇降機構177は、下部に穿孔体160が取り付けられた取付プレート178と、この取付プレート178を上下動自在に支持する上下一対のヒータアーム179と、植付体158の昇降機構177を駆動する動力によって回転駆動されるヒータカム180と、上側のヒータアーム179に取り付けられていて前記ヒータカム180の外周を転動するカムローラ181とを有し、カムローラ181がヒータカム180の凹陥部182に落ち込むことにより取付プレート178と共に穿孔体160が下降するように構成されている。
なお、穿孔体160がマルチフィルムに植付用穴を形成した後はカムローラ181がヒータカム180の凹陥部182から離脱して取付プレート178と共に穿孔体160が上昇し、カムローラ181がヒータカム180の凹陥部182以外の部分を転動することにより、穿孔体160が上死点側の待機位置に保持される。
【0083】
穿孔体160は、ヒータ金具183によって取付プレート178に取り付けられており、このヒータ金具183は、穿孔体160が取り付けられる穿孔体支持壁184と、取付プレート178に取り付けられる取付壁185とを有する。
取付壁185は、取付プレート178の下端側に枢軸186を介して左右方向の軸芯回りに回動自在に取り付けられていて穿孔体160が前後揺動自在とされ、バネ187によって前方側に揺動する方向に付勢されると共に、ヒータ金具183の取付壁185に形成された長孔188に挿通された取付プレート178側に固定のピン189によって穿孔体160の姿勢が保持されており、穿孔体160は前記バネ187の付勢力に抗して後方側に揺動可能とされている。
【0084】
穿孔体160は、マルチフィルムに接触するヒータブロック191と、このヒータブロック191と穿孔体支持壁184との間に介在されたスペーサ192と、このスペーサ192及び前記ヒータブロック191を穿孔体支持壁184に取り付けるための複数の取付ボルト193と、ヒータブロック191を加熱するための複数のグロープラグ194(ヒータ、加熱手段)と、ヒータブロック191の放熱を抑制する放熱抑制カバー195(放熱抑制手段)とを有する。
ヒータブロック191は金属製で穿孔体支持壁184の下方側に位置し、スペーサ192はセラミック等の断熱材によって上下方向の軸芯を有する円柱状に形成され、取付ボルト193を穿孔体支持壁184及びスペーサ192を貫通させてヒータブロック191に形成したネジ孔に螺合させることにより、穿孔体支持壁184にスペーサ192及びヒータブロック191が取付固定されている。
【0085】
また、穿孔体支持壁184には、グロープラグ194の発熱部196が挿通可能で且つグロープラグ194のネジ部197が螺合可能なネジ孔198が形成され、スペーサ192には、グロープラグ194の発熱部196を挿通するための挿通孔199が上下方向に貫通形成されている。
ヒータブロック191は、上下方向中途部及び上部(上部側の大部分)が上下方向の軸芯を有する円柱状の円柱部200とされている共に、下部が円柱部200から径方向外方に張り出した穴開け部201とされている。
【0086】
このヒータブロック191の円柱部200には、グロープラグ194の発熱部196が挿入される、上方開放状で有底の挿入孔202が形成されている。
グロープラグ194の発熱部196は、穿孔体支持壁184のネジ孔198及びスペーサ192の挿通孔199を挿通してヒータブロック191の円柱部200の挿入孔202に挿入されていて、該グロープラグ194によってヒータブロック191が加熱されるように構成されている。
なお、本実施形態では、グロープラグ194は3本設けられ、これらグロープラグ194はコネクションプレート203によって連結されている。
【0087】
放熱抑制カバー195は、セラミック等の断熱材によって円筒状に形成され、外径はスペーサ192の外径と略同径に形成されていると共に内径はヒータブロック191の円柱部200の外径と略同径に形成され、軸芯方向の寸法はヒータブロック191の円柱部200の軸芯方向の寸法と略同じ寸法に形成されており、ヒータブロック191の円柱部200に外嵌されている。
この放熱抑制カバー195によって、ヒータブロック191の放熱が大幅に抑制され、気温や風によってヒータ性能を大きく低下させることがなく、ヒータブロック191の温度を確保することができる。
【0088】
図22は、穿孔体160に他の形態の放熱抑制カバー195を設けたものを示している。
この図22におけるヒータブロック191は円柱部200と穴開け部201とが、スペーサ192の外径と同径に形成されている。
放熱抑制カバー195は、上壁204と、ヒータブロック191の外周を覆う円筒壁205とを有し、上壁204がスペーサ192とヒータブロック191との間に介装されて固定されており、円筒壁205は、ヒータブロック191の外周面との間に隙間が空くようにヒータブロック191の外周面を覆っている。
【0089】
なお、ヒータブロック191の放熱を抑制する放熱抑制手段としては、穿孔体160の上下移動範囲の前後及び左右を覆う風よけカバーによって構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】移植機の全体側面図である。
【図2】走行体の平面図である。
【図3】走行体の側面図である。
【図4】走行体の背面断面図である。
【図5】ミッションケースの背面断面図である。
【図6】走行クラッチの背面図である。
【図7】クローラ式走行装置の動力伝達系を示す背面断面図である。
【図8】操向ブレーキの側面図である。
【図9】クローラ式走行装置の側面概略図である。
【図10】クローラ式走行装置の側面断面図である。
【図11】クローラ式走行装置の背面断面図である。
【図12】揺動フレームの平面断面図である。
【図13】クローラ式走行装置の平面断面図である。
【図14】(a)はクローラ式走行装置の下部の正面断面図、(b)はクローラ式走行装置の下部の背面断面図、(c)は付勢手段のロッド支持部分の背面一部断面図である。
【図15】クローラ式走行装置が盛り土を乗り越えるときの状態を示す側面図である。
【図16】走行機体を上下させた状態を示す側面図である。
【図17】操向クラッチレバーと操向クラッチ及び操向ブレーキとの連動関係を示す概略図である。
【図18】植付機構を示す側面概略図である。
【図19】穿孔装置の側面図である。
【図20】穿孔装置の平面図である。
【図21】穿孔体の側面断面図である。
【図22】他の形態の穿孔体の側面断面図である。
【符号の説明】
【0091】
3 走行体
191 ヒータブロック
194 ヒータ
195 放熱抑制手段(放熱抑制カバー)
200 円柱部
201 穴開け部
R 畝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
畝(R)を跨いで走行する走行体(3)に昇降自在に支持され且つヒータ(194)によって加熱される金属製のヒータブロック(191)を備え、このヒータブロック(191)が下降した際に、畝(R)を覆うマルチフィルムに該ヒータブロック(191)を接触させることで、畝(R)に苗を植え付けるための植付用穴をマルチフィルムに形成するようにした移植機の穿孔装置において、
ヒータブロック(191)の放熱を抑制する放熱抑制手段(195)を設けたことを特徴とする移植機の穿孔装置。
【請求項2】
ヒータブロック(191)の上下方向中途部及び上部を、ヒータブロック(191)の放熱を抑制するように放熱抑制カバー(195)によって覆ったことを特徴とする請求項1に記載の移植機の穿孔装置。
【請求項3】
放熱抑制カバー(195)は断熱材から構成されていてヒータブロック(191)に外嵌されていることを特徴とする請求項2に記載の移植機の穿孔装置。
【請求項4】
ヒータブロック(191)は、上下方向中途部及び上部が上下方向の軸芯を有する円柱状の円柱部(200)とされていると共に下部が該円柱部(200)から径方向外方に張り出した穴開け部(201)とされ、放熱抑制カバー(195)は上下方向の軸芯を有する円筒状に形成されていてヒータブロック(191)の円柱部(200)に外嵌されていることを特徴とする請求項3に記載の移植機の穿孔装置。
【請求項5】
ヒータブロック(191)は上下方向の軸芯を有する円柱状に形成され、放熱抑制カバー(195)は、ヒータブロック(191)の外周面との間に隙間が空くようにヒータブロック(191)の外周面を覆っていることを特徴とする請求項2に記載の移植機の穿孔装置。
【請求項1】
畝(R)を跨いで走行する走行体(3)に昇降自在に支持され且つヒータ(194)によって加熱される金属製のヒータブロック(191)を備え、このヒータブロック(191)が下降した際に、畝(R)を覆うマルチフィルムに該ヒータブロック(191)を接触させることで、畝(R)に苗を植え付けるための植付用穴をマルチフィルムに形成するようにした移植機の穿孔装置において、
ヒータブロック(191)の放熱を抑制する放熱抑制手段(195)を設けたことを特徴とする移植機の穿孔装置。
【請求項2】
ヒータブロック(191)の上下方向中途部及び上部を、ヒータブロック(191)の放熱を抑制するように放熱抑制カバー(195)によって覆ったことを特徴とする請求項1に記載の移植機の穿孔装置。
【請求項3】
放熱抑制カバー(195)は断熱材から構成されていてヒータブロック(191)に外嵌されていることを特徴とする請求項2に記載の移植機の穿孔装置。
【請求項4】
ヒータブロック(191)は、上下方向中途部及び上部が上下方向の軸芯を有する円柱状の円柱部(200)とされていると共に下部が該円柱部(200)から径方向外方に張り出した穴開け部(201)とされ、放熱抑制カバー(195)は上下方向の軸芯を有する円筒状に形成されていてヒータブロック(191)の円柱部(200)に外嵌されていることを特徴とする請求項3に記載の移植機の穿孔装置。
【請求項5】
ヒータブロック(191)は上下方向の軸芯を有する円柱状に形成され、放熱抑制カバー(195)は、ヒータブロック(191)の外周面との間に隙間が空くようにヒータブロック(191)の外周面を覆っていることを特徴とする請求項2に記載の移植機の穿孔装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図11】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−75144(P2010−75144A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249782(P2008−249782)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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