説明

移植機

【課題】機体の側方に張出し可能な支持アームの先端に、次の植付け行程の指標を圃場面に形成する指標形成体である回転式マーカーを取付けた移植機において、圃場面に対する回転式マーカーの回転抵抗や支持アーム基端部のガタ等により、当該支持アームが機体の後方側に撓んでも次の植付け行程の指標をスムーズに形成できるようにする。
【解決手段】作業姿勢と格納姿勢とに起伏自在な支持杆22L,22Rの先端に、指標形成体である回転式マーカー24を取付けた連杆23L,23Rを後下方に向けて支持するにあたり、前記連杆23L,23Rを支持杆22L,22Rと直交する軸線Xを中心として所定の角度範囲で回動自在に支持し、以って機体進行方向Fに対する回転式マーカー24の所定量の揺動を許容するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機等の移植機において、次の植付け行程の指標を圃場面に形成するマーカーの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用型田植機等の移植機は、次の植付け行程の指標を圃場面に形成するマーカーを備えており、該マーカーは機体の側方に張出し可能な支持アームの先端から後下方に延設された揺動アームを介して指標形成体を取付けている。
【0003】
そして、この指標形成体を外周部に土掬い上げ用の複数の爪を備える接地回転体で構成し、当該接地回転体が回転すると前記爪で掬い上げられた土が圃場面に一塊づつ落ち、この落ちた土の盛り上がりが機体の進行方向に沿って一定の間隔で列状に形成されて次の植付け行程の指標となり、それによって圃場に水が深く張られていても、次の植付け行程の指標である土の盛り上がりをオペレーターが容易に認識できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3519889号公報(第3頁、図2−図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したものは、圃場面に対する接地回転体の回転抵抗や支持アーム基端部のガタ等により、支持アーム(22L)自体が図6に示す如く機体の後方側に撓み易く、しかも支持アームの先端に揺動アームを介して取り付けられる接地回転体は、支持アームに対して後下方に延設されているので内側に偏倚し、次の植付け行程の指標形成位置が、適正な位置よりも現行程側に大きくズレてしまうといった問題点を有していた。また、支持アームが後方側に撓むと接地回転体は必然的に機体の進行方向に対して前開き傾向となるので、更に接地回転体の回転抵抗が増大してスムーズな回転が行われず、次の植付け行程の指標である土の盛り上がりを機体の進行方向に沿って一定の間隔で形成できなくなるといった不具合も有していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、作業姿勢と格納姿勢とに起伏自在な支持杆の先端に、前記作業姿勢において後下方に向く連杆を支持すると共に、該連杆の先端に次の植付け行程の指標を圃場面に形成する指標形成体を設けた移植機において、前記連杆を支持杆と直交する軸線を中心として所定の角度範囲で回動自在に支持し、以って機体進行方向に対する指標形成体の所定量の揺動を許容したことを第1の特徴としている。
【0006】
また、前記指標形成体が回転式マーカーであることを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、作業姿勢と格納姿勢とに起伏自在な支持杆の先端に、後下方に向く連杆を支持すると共に、この連杆の先端に次の植付け行程の指標を圃場面に形成する指標形成体を設け、且つ前記連杆を支持杆と直交する軸線を中心として所定の角度範囲で回動可能に支持し、以って機体進行方向に対する指標形成体の所定量の揺動を許容したので、圃場面に対する指標形成体の抵抗や支持杆基端部のガタ等により、支持杆自体が機体の後方側に撓んでも、指標形成体は機体の進行方向に常時追従して揺動可能であることから、指標形成体によって形成される次の植付け行程への指標と適正な指標形成位置とのズレを少なくすることができる。
【0008】
また、請求項2の発明によれば、前記指標形成体が回転式マーカーであることから、支持杆自体が機体の後方側に撓んでも、回転式マーカーは機体の進行方向に常時追従して揺動し、それによって当該回転式マーカーはスムーズに回転するので、次の植付け行程の指標を良好に形成することができる。また、前記支持杆、連杆、及び回転式マーカーの耐久性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、移植機の一例である乗用型田植機10の平面図であって、乗用型田植機10は、走行機体11の後部にリンク機構12を介して植付装置13を昇降可能に連結すると共に、この植付装置13の左右両側に、次の植付行程の指標を田面に形成するマーカー14L,14Rを備えている。
【0010】
また、図2に示すように、リンク機構12の後端には、昇降ホルダ15が取付けてあり、この昇降ホルダ15の下部には、走行機体11の幅方向に向けて植付フレーム16を延設している。そして、植付フレーム16には、植付爪17a,17aを備えたプランタ17を作動させるチェン伝動機構を内装したプランタケース18を、走行機体11の幅方向に所定間隔で取付けている。
【0011】
また、左右のマーカー14L,14Rは、植付フレーム16の両端に設けた左右のブラケット21L,21Rを介して起伏自在に揺動する支持杆22L,22Rの先端に、下方に向く連杆23L,23Rを支持すると共に、この連杆23L,23Rの先端に次の植付け行程の指標を圃場面に形成する指標形成体である回転式マーカー24を取付けてあり、当該回転式マーカー24を支持杆22L,22Rを介して圃場面から持ち上げた格納姿勢Aと、隣接する未植付け領域における乗用型田植機10の植付け中心部に接地させた作業姿勢Bとに切換えることができるようになっている。尚、回転式マーカー24は、従来公知のように外周部に土掬い上げ用の複数の爪24a・・・を備えている。
【0012】
そして、図3〜図5に示すように、支持杆22L,22Rの先端には、該支持杆22L,22Rと直交する軸線Xを有するボス31を固設してあり、このボス31に、コの字状の曲げプレートからなる支持部材32の上部に固設したピン32aを挿通した状態で、ワッシャ33を介した割ピン34によって当該支持部材32を回動可能に取付けている。
【0013】
また、回転式マーカー24を、折り曲げ成形した棒状部材である連杆23L,23Rの先端部に回転可能に螺設すると共に、この連杆23L,23Rの基端部を箱状の保持具35に螺設することによって、これら回転式マーカー24、連杆23L,23R、及び保持具35が一体的に組立てられている。
【0014】
そして、前記箱状の保持具35は、その両側に位置決め調整用のカラー36,36を介装した状態でピン37を用いて、上述したコの字状の曲げプレートからなる支持部材32の下部に装着できるようになっている。更に、箱状の保持具35には、捩りスプリング38が内装してあり、この捩りスプリング38と支持部材32の下部に固設したストッパーピン41によって、連杆23L,23Rは、図5に示す如く後下がり傾斜で接地方向に常時付勢されている。
【0015】
上述の如く一体的に組立てられた回転式マーカー24、連杆23L,23R、及び保持具35は、支持部材32に取付けられると支持杆22L,22Rと直交する軸線Xを中心として一体に回動するが、左右のマーカー14L,14R自体が格納姿勢A、または作業姿勢Bにある時、支持杆22L,22Rに接当して回転式マーカー24の不要な揺動を回避するためのストッパーピン42,42を、支持部材32の支持杆22L,22R側(機体内側)に固設している。
【0016】
即ち、前記ストッパーピン42,42によって指標形成体である回転式マーカー24は、図3に示すように機体の進行方向Fに対して所定の角度範囲θで揺動可能に支持されており、それによって、図6に示すように、圃場面に対する回転式マーカー24の回転抵抗や支持杆22Lの基端部のガタ等により、この支持杆22Lが機体の後方側に撓んでも回転式マーカー24の機体内方への偏倚を防止することができると共に、当該回転式マーカー24が図中二点鎖線で示す如く機体の進行方向Fに対して前開き傾向になることを防止できる。
【0017】
そして、回転式マーカー24の回転抵抗が増加しても、図中実線で示す如く機体の進行方向Fに追従して回転式マーカー24の所定量の揺動が許容されるので、回転式マーカー24によって形成される次の植付け行程の指標と適正な指標形成位置とのズレを少なくすることができると共に、次の植付け行程の指標を良好且つスムーズに形成することができる。更に、回転式マーカー24に無理な負荷が作用しないので前記支持杆22L,22R、連杆23L,23R、及び回転式マーカー24の耐久性が向上する。
【0018】
ところで、従来から左右のマーカー14L,14Rは、図7に示すように植付装置13を昇降させるリンク機構12の上下動に連係する図示しないワイヤを介して、両マーカー14L,14Rを構成する支持杆22L,22Rの基端部に設けた支軸52を回動支点として、格納姿勢Aと作業姿勢Bとに上下切換揺動可能に構成されている。
【0019】
しかし、回転式マーカー24を隣接する未植付け領域における乗用型田植機10の植付け中心部に接地させた作業姿勢Bから、支持杆22L,22Rを上昇揺動させて格納姿勢Aまで持ち上げる際、その上昇揺動が停止する瞬間の衝撃により回転式マーカー24に付着した泥土が跳ね上がり、この跳ね上がった泥土が機体やオペレーターに掛かるといった不具合を有していた。
【0020】
そこで、支持杆22L,22Rの基端側と先端側の上部にワイヤ51のアウタケーシング53の策端金具53a,53aを保持すると共に、ワイヤ51のインナーケーブル54を植付フレーム16の両端に設けた左右のブラケット21L,21Rと、支持杆22L,22Rの先端に回動可能に設けた連杆23L,23Rの上部に連結することによって、当該ワイヤ51の張力で連杆23L,23Rの先端に取付けた回転式マーカー24の作業姿勢Bを維持すると共に、左右のマーカー14L,14Rを作業姿勢Bから格納姿勢Aまで上昇揺動させると、その上昇揺動に連動して当該ワイヤ51のインナーケーブル54が徐々に緩み、連杆23L,23Rの先端に取付けられている回転式マーカー24は、図中のC矢印の如く下方に回動するので、上述の如く回転式マーカー24に付着した泥土の跳ね上がりを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】乗用型田植機の平面図。
【図2】植付装置の側面図。
【図3】回転式マーカーの取付け構成を示す斜視図。
【図4】回転式マーカーの取付け構成を示す正面図。
【図5】回転式マーカーの取付け構成を示す側面図。
【図6】本発明の作用効果を示す乗用型田植機の平面図。
【図7】左側マーカーの構成を示す正面図。
【符号の説明】
【0022】
22L 支持杆(左)
22R 支持杆(右)
23L 連杆(左)
23R 連杆(右)
24 指標形成体
F 機体の進行方向
X 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業姿勢と格納姿勢とに起伏自在な支持杆(22L,22R)の先端に、前記作業姿勢
において後下方に向く連杆(23L,23R)を支持すると共に、該連杆(23L,23R)の先端に次の植付け行程の指標を圃場面に形成する指標形成体(24)を設けた移植機において、前記連杆(23L,23R)を支持杆(22L,22R)と直交する軸線(X)を中心として所定の角度範囲で回動自在に支持し、以って機体進行方向(F)に対する指標形成体(24)の所定量の揺動を許容したことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記指標形成体(24)が回転式マーカーであることを特徴とする請求項1に記載の移植機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate