説明

移植機

【課題】走行機体の側部に前後方向に延設される苗移送装置を備え、該苗移送装置の下方に予備苗載台を配置した移植機において、苗移送装置の下方の予備苗載せ台に予備苗、空箱、または苗掬い板を載置する際や、取り出す際に苗移送装置に邪魔されることなく作業を行うことができる移植機を提供する。
【解決手段】前記苗移送装置と苗移送装置下方の予備苗載せ台とが上下に重合する状態と、苗移送装置に対して予備苗載せ台が機体内方に変位した状態とに相対位置変更可能にする。
また、移送装置に対して苗移送装置下方の予備苗載せ台を機体内方へ移動させることで、苗移送装置と苗移送装置下方の予備苗載せ台とを左右方向に相対的に変位させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体前方から機体上に予備苗を供給するための苗移送装置を備える乗用型田植機等の移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
前後方向に延設される苗移送装置を備え、該苗移送装置を介して、機体前方から機体上に予備苗を供給できるようにし、さらに苗移送装置の下方に多段の予備苗載せ台を重合させて備えることで、より多くの予備苗を移植機に搭載できるようにしたり、使用済みの苗箱や、苗掬い板を載置できるようにした移植機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−300820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される移植機では、予備苗載せ台から予備苗を取り出す際に、上方に位置する苗移送装置が邪魔になり、作業性の点において改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、走行機体の側部に前後方向に延設される苗移送装置を備え、該苗移送装置の下方に予備苗載台を配置した移植機において、前記苗移送装置と苗移送装置下方の予備苗載せ台とが上下に重合する状態と、苗移送装置に対して予備苗載せ台が機体内方に変位した状態とに相対位置変更可能に構成したことを特徴とする。
【0006】
また、前記苗移送装置に対して苗移送装置下方の予備苗載せ台を機体内方へ移動させることで、苗移送装置と苗移送装置下方の予備苗載せ台とを左右方向に相対的に変位させたことを第2の特徴とする。
【0007】
さらに、前記苗移送装置下方の予備苗載せ台を多段に構成し、該予備苗載せ台の各段を独立して移動可能に構成したことを第3の特徴とする。
【0008】
そして、前記苗移送装置を苗移送装置下方の予備苗載せ台に対して機体外側方へスライドさせることで、苗移送装置と苗移送装置下方の予備苗載せ台とを左右方向に相対的に変位させたことを第4の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、苗移送装置と苗移送装置下方の予備苗載せ台とが上下に重合する状態と、苗移送装置に対して予備苗載せ台が機体内方に変位した状態とに相対位置変更可能に構成したので、走行機体上から苗移送装置の下方の予備苗載せ台に予備苗、空箱、または苗掬い板を載置する際や、取り出す際に苗移送装置に邪魔されることなく作業を行うことができ、作業性が向上する。
【0010】
また、請求項2の発明によれば、苗移送装置に対して苗移送装置下方の予備苗載せ台を機体内方へ移動させることで、苗移送装置と苗移送装置下方の予備苗載せ台とを左右方向
に相対的に変位させたので、全長が長く重量がある苗移送装置を移動させることなく、軽量の予備苗載せ台を操作することで容易に苗移送装置と苗移送装置下方の予備苗載せ台とを左右方向に相対的に変位させることができる。
【0011】
また、請求項3の発明によれば、苗移送装置下方の予備苗載せ台を多段に構成し、該予備苗載せ台の各段を独立して移動可能に構成したので、より軽い操作力で操作することが可能となると共に、下段側の予備苗載せ台に作業する際にもそれよりも上段側の予備苗載せ台を前記重合位置にしておくことで、上段側の予備苗載せ台が邪魔となることがない。
【0012】
そして、請求項4の発明によれば、苗移送装置を苗移送装置下方の予備苗載せ台に対して機体外側方へスライドさせることで、苗移送装置と苗移送装置下方の予備苗載せ台とを左右方向に相対的に変位させたので、機体左右内方の作業者の移動を阻害することなく苗移送装置と苗移送装置下方の予備苗載せ台とを左右方向に相対的に変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一実施形態に係る乗用型田植機において、苗移送装置と苗移送装置下方の予備苗載せ台とが上下に重合した状態を示す全体側面図である。
【図2】同上苗移送装置に対して苗移送装置下方の予備苗載せ台を変位させた状態を示す全体側面図である。
【図3】第一実施形態に係る乗用型田植機において、苗移送装置と苗移送装置下方の予備苗載せ台とが上下に重合した状態を示す要部正面図である。
【図4】同上苗移送装置に対して苗移送装置下方の予備苗載せ台を変位させた状態を示す要部正面図である。
【図5】第二実施形態に係る乗用型田植機において、苗移送装置と苗移送装置下方の予備苗載せ台とが上下に重合した状態を示す要部正面図である。
【図6】同上苗移送装置を苗移送装置下方の予備苗載せ台に対して変位させた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第一実施形態]
次に、本発明の第一実施形態に係る乗用型田植機(移植機)を図1〜図4に基づいて説明する。図面において、1は乗用型田植機の走行機体であって、該走行機体1は、機体上の後部にオペレータが座るための座席2を備えると共に、座席2の前方に操作パネル3やステアリングハンドル4を備えている。座席2と操作パネル3との間には、フロアステップ5が形成されている。フロアステップ5の左右両端部は、走行機体1に対する乗降口となっており、その下側には、乗降を容易にする乗降ステップ6も設けられている。また、フロアステップ5の左右前方、且つ操作パネル3の左右側方には前部ステップ7が形成されており、フロアステップ5の左右後方、且つ座席2両側方には後部ステップ8が、フロアステップ5よりも一段高く形成されている。
【0015】
作業者は前部ステップ7と後部ステップ8との間をフロアステップ5を通過して自由に移動することができる。前部ステップ7とフロアステップ5と後部ステップ8とによって、走行機体1の側部(座席2より側方)に、作業者が走行機体1の前部方から後部に亘って移動する移動通路を形成している。
【0016】
走行機体1の後端部には、昇降リンク機構9を介して植付部10が昇降自在に連結されている。本実施形態の植付部10は、マット苗を載置可能な苗載台11、該苗載台11の下端部から苗を掻取って圃場に植付ける植付機構12、田面を滑走するフロート13などを備えて構成されており、複数条の植付作業が可能となっている。本実施形態の苗載台1
1は、マット苗の載置面が前高後低状に傾斜すると共に、その前端側が座席2の近傍まで延出している。
【0017】
操作パネル3の左右側方の機体側部(前部ステップ7の外側位置)には、苗載台11に補給する予備苗Mを畦際から移送する苗移送装置14が取り付けられている。
【0018】
左右の各苗移送装置14はそれぞれ、走行機体1側に固定される固定苗台14mと、固定苗台14mの前方に位置する第1苗台14fと、固定苗台14mの後方に位置する第2苗台14rとから構成されている。
【0019】
第1苗台14fと第2苗台14rは、固定苗台14mに対して回動可能に連結されている。固定苗台14mの底面側には固定板15を介して支持フレーム16 が一体的に取り
付けられている。支持フレーム16の底面側の前後には、ブラケット17が取り付けられている。
【0020】
これに対して走行機体1側には、左右両側に前部ステー18、及び後部ステー19が設けられている。両ステー18,19は、下端部分が走行機体1側に取り付けられ、上方に向かって延設された立設部18S,19Sを有している。両ステー18,19の上端側は外側に向かって湾曲し、概ね水平状態となっており、前記ブラケット17を取り付けることにより、走行機体1に前記苗移送装置14が装着される。
【0021】
本実施形態の苗移送装置14は、所定間隔を存して並列する左右の外枠20と、左右の外枠20間に所定間隔を存して回転自在に架設される複数の転動ローラ21とを備えるローラコンベアであり、その移送姿勢においては機体側部から機体前方に向けて延出すると共に、前高後低状に傾斜している。
【0022】
畔側から機体上に予備苗Mを供給する際は、まず、走行機体1から前方に延出する苗移送装置14の前端部を畦際に進入させ、しかる後、苗箱Bに収納された状態の予備苗Mを畔側から苗移送装置14上に載せる。そして、苗移送装置14に載せられた予備苗Mは、苗移送装置14の傾斜及び転動ローラ21の回転により後方に送られるので、畔側から走行機体1上に連続的に予備苗Mを供給することが可能になる。尚、苗移送装置14の後端部には、ストッパが設けられており、該ストッパによって予備苗Mの落下が規制される。
【0023】
さらに、苗移送装置14を支持する後部ステー19には、一枚程度の予備苗が載置可能な予備苗載せ台22が上下多段に配置されている。
詳述すると予備苗載せ台22は樹脂でブロー成形されており、その基端部の前後中央部にカラー23を有している。該カラー23は前記後部ステー19の上下に延設された立設部19Sに、上下移動不能、且つ水平回動可能に遊嵌されており、予備苗載せ台22を後部ステー19に対して水平回動させることにより立設部19Sの機体外方において苗移送装置14と上下に重合する重合位置と、立設部19S及び苗移送装置よりも機体内方側に突出した変位位置とに位置変更可能に構成されている。
【0024】
前記重合位置では苗移送装置14と、予備苗載せ台22とが後部ステー19の立設部19Sの外方に位置し、前部ステップ7上方に作業者が移動可能な空間を設けることができる。また、予備苗載せ台22を前記変位位置に変位させた場合には、前部ステップ7上方に予備苗載せ台14が位置し、座席2廻りや機体後部側の走行機体1上から苗移送装置14に邪魔させることなく予備苗載せ台22に予備苗、空箱、または苗掬い板を収納したり、予備苗載せ台22から予備苗を取り出すことが容易にできるようになる。
【0025】
尚、図4では、変位位置について重合姿勢から180度内方へ回動させた位置を示して
いるが、予備苗載せ台22の前部、又は後部が苗移送装置14と一部重合しない程度に回動させた位置を変位位置としても良く、苗移送装置14よりも機体内方に突出した部分から容易に予備苗等を取り出すことができる。
【0026】
また、苗移送装置14と予備苗載せ台22との相対位置を左右方向に変位させるにあたり、予備苗載せ台側22を操作して両者を変位させることにより、比較的軽い操作力で変位させることが可能である。
【0027】
さらに、複数段に配置した予備苗載せ台22(本実施形態では二段)を各段独立して回動可能に構成しており、使用したい段の予備苗載せ台22だけを回動操作することができるので、より軽い操作力で操作することが可能となると共に、下段側の予備苗載せ台22に予備苗、苗箱等を出し入れする際にもそれよりも上段側の予備苗載せ台22を前記重合位置にしておくことで、上段側の予備苗載せ台22が邪魔となることがない。
【0028】
そして、本実施形態においては、支持部材であるステー18,19の外方で、苗移送装置、及び予備苗載せ台を重合させた状態に配置しているが、予備苗載せ台を機体内方側へ変位させるにあたり、後部ステー19に対して水平回動させるため、簡単な構成でステー18,19を越えて機体内方へ変位させることができる。
【0029】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る乗用型田植機を図5及び図6に基づいて説明する。ただし、第一実施形態と共通する部分については、第一実施形態と同じ符号を付け、第一実施形態の説明を援用する。
【0030】
図5及び図6に示すように、第二実施形態の乗用型田植機は、前部ステー18、及び後部ステー19の基部をより機体外方側へ延長させており、前部ステップ7外方に位置する苗移送装置14、及び予備苗載せ台22を機体外方側から連結している。
【0031】
この構成により、苗移送装置14、及び予備苗載せ台22を支えるステー18,19が機体内方側に位置しないので走行機体1上からの苗移送装置14、及び予備苗載せ台22への作業がステー18,19によって邪魔されることがない。尚、前部ステップ7とステー18,19の立設部18S,19Sとの間の予備苗載せ台22の下方空間は肥料タンク24の配置空間として利用されている。
【0032】
本実施形態の苗移送装置14は前部ステー18、及び後部ステー19の上端部に左右スライド移動可能に装着されている。詳述すると、前部ステー18、及び後部ステー19にはその上端部にホルダ25、該ホルダ25に左右摺動可能に装着した第一レール26、該第一レール26に対して左右摺動可能に装着された第二レール27から成る二段レール機構28を備えており、該二段レール機構28に苗移送装置14の固定苗台14mの下面が装着されている。そして、前記二段レール機構28により、苗移送装置14は予備苗載せ台22と上下に重合する重合位置と、該重合位置から機体外側方にスライド移動した変位位置とに位置変更可能な構成となっている。
【0033】
また、本実施形態においては、多段の予備苗載せ台22は夫々回動支軸29を介して前記後部ステー19の立設部19Sに装着されており、予備苗載せ台22上に予備苗を載置可能な展開姿勢から、上方に各段独立して上方回動可能に構成されている。
【0034】
以上のように構成された本実施形態においては、可能前部ステップ7よりも外方に苗移送装置14と予備苗載せ台22とを上下に重合した状態に配置し、苗移送装置14の下方に位置する予備苗載せ台22への作業を容易にする際には、苗移送装置14を機体外側方
へスライド移動させるので、苗移送装置14、及び予備苗載せ台22が前部ステップ7上に位置することがなく、作業者の走行機体1上の前後移動を妨げることがない。
【0035】
また、多段の予備苗載せ台22は夫々が単独で上方回動するので、上方側の予備苗載せ台22を上方回動させることで、下段側の予備苗載せ台22への作業を上段側の予備苗載せ台22に妨げられることなく容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0036】
1 走行機体
14 苗移送装置予備苗載せ台
22 予備苗載せ台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の側部に前後方向に延設される苗移送装置を備え、該苗移送装置の下方に予備苗載台を配置した移植機において、前記苗移送装置と苗移送装置下方の予備苗載せ台とが上下に重合する状態と、苗移送装置に対して予備苗載せ台が機体内方に変位した状態とに相対位置変更可能に構成したことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記苗移送装置に対して苗移送装置下方の予備苗載せ台を機体内方へ移動させることで、苗移送装置と苗移送装置下方の予備苗載せ台とを左右方向に相対的に変位させたことを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記苗移送装置下方の予備苗載せ台を多段に構成し、該予備苗載せ台の各段を独立して移動可能に構成したことを特徴とする請求項2に記載の移植機。
【請求項4】
前記苗移送装置を苗移送装置下方の予備苗載せ台に対して機体外側方へスライドさせることで、苗移送装置と苗移送装置下方の予備苗載せ台とを左右方向に相対的に変位させたことを特徴とする請求項1に記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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